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技術 銅合金線及び銅合金線の製造方法

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 中本斉石田徳和牧一誠森広行芦田哲哉
出願日 2012年7月30日 (8年4ヶ月経過) 出願番号 2012-168908
公開日 2014年2月6日 (6年10ヶ月経過) 公開番号 2014-025136
状態 特許登録済
技術分野 非絶縁導体 非鉄金属または合金の熱処理 導電材料 電線ケーブルの製造(1)
主要キーワード ベルトホイール ダブルブリッジ法 最終熱処理後 硬質銅 歪み取り 銅線材 析出強化型合金 時効熱処理後
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

導電率、及び、繰り返し曲げ特性に優れ、ロボットアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等、曲げひねり等が繰り返し負荷される部位において使用される配線ケーブルに適した銅合金線及び銅合金線の製造方法を提供する。

解決手段

Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなり、時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物平均粒径が15nm以上であり、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされており、当該時効熱処理の後、冷間加工されたことを特徴とする。

概要

背景

上述のロボットアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等で使用される配線ケーブルにおいては、曲げひねり等が繰り返し負荷されることになるため、繰り返し曲げが負荷されても破断しにくいこと(以下、繰り返し曲げ特性)が求められている。また、通電を行うことから、高い導電性も要求される。
ここで、通常、通電のための配線ケーブルにおいては、導電性が良好なタフピッチ銅からなる銅線が広く使用されているが、強度が低く、繰り返し曲げ特性が不十分であった。

そこで、上述の使用用途には、例えば特許文献1に示すSn入り銅、特許文献2に示すIn入り銅等の固溶強化銅合金からなる銅合金線が使用されている。これら特許文献1,2に記載された固溶強化型銅合金においては、強度が高いことから、タフピッチ銅に比べて繰り返し曲げ特性が向上することになる。具体的には、繰り返し曲げ特性の評価指標である耐屈曲試験において、同一条件で破断までの繰り返し曲げ回数が、タフピッチ銅の1.3〜2.5倍程度となる。
しかし、最近では、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCの小型化及び薄肉化等に伴い、上述の銅合金線には、さらなる繰り返し曲げ特性の向上が求められている。

さらに耐屈曲性を向上させた銅合金線として、例えば特許文献3、4に示すCu−Fe−P合金、特許文献5に示すCu−Cr−Zr合金等の析出強化型合金からなる銅合金線が提案されている。
これらの析出強化型銅合金は、銅の母相中析出物を均一に分散させることにより、固溶強化型銅合金よりも優れた繰り返し曲げ特性を得ることが可能である。

概要

導電率、及び、繰り返し曲げ特性に優れ、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等、曲げやひねり等が繰り返し負荷される部位において使用される配線ケーブルに適した銅合金線及び銅合金線の製造方法を提供する。Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなり、時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径が15nm以上であり、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされており、当該時効熱処理の後、冷間加工されたことを特徴とする。なし

目的

この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、導電率、及び、繰り返し曲げ特性に優れ、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等、曲げやひねり等が繰り返し負荷される部位において使用される配線ケーブルに適した銅合金線及び銅合金線の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

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請求項1

Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなり、時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物平均粒径が15nm以上であり、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされており、当該時効熱処理の後、冷間加工されたことを特徴とする銅合金線

請求項2

前記析出強化型銅合金の組成が、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅合金線。

請求項3

前記析出強化型銅合金は、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含むことを特徴とする請求項2に記載の銅合金線。

請求項4

前記析出強化型銅合金は、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の銅合金線。

請求項5

Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなる銅合金線の製造方法であって、時効熱処理工程と、この時効熱処理工程の後に実施される冷間加工工程と、を有し、前記時効熱処理工程を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径を15nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の80%以上とすることを特徴とする銅合金線の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、導電性及び繰り返し曲げ特性に優れ、ロボットアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等の配線ケーブルに適した銅合金線及び銅合金線の製造方法に関するものである。

背景技術

0002

上述のロボットのアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等で使用される配線ケーブルにおいては、曲げひねり等が繰り返し負荷されることになるため、繰り返し曲げが負荷されても破断しにくいこと(以下、繰り返し曲げ特性)が求められている。また、通電を行うことから、高い導電性も要求される。
ここで、通常、通電のための配線ケーブルにおいては、導電性が良好なタフピッチ銅からなる銅線が広く使用されているが、強度が低く、繰り返し曲げ特性が不十分であった。

0003

そこで、上述の使用用途には、例えば特許文献1に示すSn入り銅、特許文献2に示すIn入り銅等の固溶強化銅合金からなる銅合金線が使用されている。これら特許文献1,2に記載された固溶強化型銅合金においては、強度が高いことから、タフピッチ銅に比べて繰り返し曲げ特性が向上することになる。具体的には、繰り返し曲げ特性の評価指標である耐屈曲試験において、同一条件で破断までの繰り返し曲げ回数が、タフピッチ銅の1.3〜2.5倍程度となる。
しかし、最近では、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCの小型化及び薄肉化等に伴い、上述の銅合金線には、さらなる繰り返し曲げ特性の向上が求められている。

0004

さらに耐屈曲性を向上させた銅合金線として、例えば特許文献3、4に示すCu−Fe−P合金、特許文献5に示すCu−Cr−Zr合金等の析出強化型合金からなる銅合金線が提案されている。
これらの析出強化型銅合金は、銅の母相中析出物を均一に分散させることにより、固溶強化型銅合金よりも優れた繰り返し曲げ特性を得ることが可能である。

先行技術

0005

特許第3348501号公報
特開平09−056632号公報
特開昭61−064835号公報
特開昭62−214146号公報
特開平11−181560号公報

発明が解決しようとする課題

0006

ところで、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部に使用される配線ケーブルは、一般的に、単線で直径0.08mm以下の極細線が使用されている。
上述のように、析出強化型銅合金においては、時効熱処理によって析出物を析出・分散させることにより、導電率及び強度が向上することになる。
ここで、時効熱処理後冷間加工を実施した場合には、粒径の小さな析出物は、冷間加工時に発生する転位によってせん断され、銅の母相中に再固溶し、導電率が低下してしまうことが指摘されている。特に、上述のように、直径0.08mm以下の極細線の場合には、時効熱処理後の冷間加工の加工率が高く、導電率の低下が顕著であって、所望の導電率を確保することができないおそれがあった。

0007

この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、導電率、及び、繰り返し曲げ特性に優れ、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等、曲げやひねり等が繰り返し負荷される部位において使用される配線ケーブルに適した銅合金線及び銅合金線の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

前記の課題を解決するために、本発明に係る銅合金線は、Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなり、時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径が15nm以上であり、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされており、当該時効熱処理の後、冷間加工されたことを特徴としている。

0009

上述した本発明に係る銅合金線においては、Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなり、時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径が15nm以上であり、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされているので、Co及びPを含む化合物からなる粒径の小さな析出物の個数が少なく、その後の冷間加工における析出物の再固溶を抑制でき、導電率を確保することが可能となる。
すなわち、時効熱処理によって析出した粒径5nm未満のCo及びPを含む化合物からなる析出物は、時効熱処理後の冷間加工時に、転位によってせん断されてさらに細分化され、最終的には銅の母中に再固溶してしまう。そこで、時効熱処理後で冷間加工前状態において、粒径5nm未満の析出物の個数を、観察される析出物全体の20%未満とすることで、析出物の再固溶を抑制することが可能となるのである。
また、Co及びPを含む化合物からなる析出物の平均粒径が15nm以上とされているので、析出物が十分に析出されており、導電性を向上させることができるとともに、強度及び繰り返し曲げ特性の向上を図ることが可能となる。

0010

ここで、前記析出強化型銅合金の組成が、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物とされていることが好ましい。
この構成の銅合金線においては、銅の母相中にCo及びPを含む化合物からなる析出物が分散されることになり、強度、導電率の向上を図ることが可能となる。
なお、Co及びPが下限値を下回ると析出物の個数が不足し、強度及び繰り返し曲げ特性を充分に向上させることができない。一方、Co及びPが上限値を超えると、強度の向上に寄与しない元素が多く存在してしまい、導電率の低下等を招くおそれがある。このため、Co及びPは、上述の範囲内に設定することが望ましい。
また、Snは、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させる作用を有する元素である。また、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させる効果や、耐熱性耐食性の向上を図ることもできる。このような作用効果を確実に奏功せしめるためには、Snの含有量を0.005質量%以上とする必要がある。また、Snが過剰に添加された場合には導電率の低下を招くため、Snの含有量は0.70質量%以下とすることが望ましい。

0011

また、前記析出強化型銅合金は、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含むことが好ましい。
この構成の銅合金線においては、Niを上述の範囲内で含有しているので、結晶粒の粗大化を抑制でき、強度及び繰り返し曲げ特性をさらに向上させることができる。

0012

また、前記析出強化型銅合金は、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含むことが好ましい。
この構成の銅合金線においては、Zn,Mg,Ag,Zrのいずれか1種または2種以上を上述の範囲で含有しているので、これらの元素が硫黄(S)と化合物を形成することにより、銅の母相中に硫黄(S)が固溶することを抑制でき、強度等の機械的特性劣化を抑制することができる。

0013

本発明の銅合金線の製造方法は、Co,P及びSnを含有する析出強化型銅合金からなる銅合金線の製造方法であって、時効熱処理工程と、この時効熱処理工程の後に実施される冷間加工工程と、を有し、前記時効熱処理工程を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径を15nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の80%以上とすることを特徴としている。

0014

上述した本発明に係る銅合金線の製造方法においては、時効熱処理工程と、この時効熱処理工程の後に実施される冷間加工工程と、を有し、前記時効熱処理工程を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径を15nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の80%以上としていることから、冷間加工工程において、析出物が再固溶することを抑制でき、導電率に優れた銅合金線を製造することができる。

0015

なお、冷間加工工程によって得られた複数の銅合金線を撚り合わせて撚線とする撚り線工工程を備えていてもよい。
また、冷間加工工程によって得られた銅合金線に対して、歪み取りのための最終熱処理工程を実施してもよい。この最終熱処理工程においては、熱処理温度を400℃以下とすることが好ましい。さらに、この最終熱処理工程は、銅合金線(単線)の状態で実施してもよいし、上述の撚り線加工工程の後に撚り線の状態で実施してもよい。

発明の効果

0016

本発明によれば、導電率、及び、繰り返し曲げ特性に優れ、ロボットのアーム部、携帯端末及びPCのヒンジ部等、曲げやひねり等が繰り返し負荷される部位において使用される配線ケーブルに適した銅合金線及び銅合金線の製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0017

本発明の実施形態である銅合金線の製造方法及びケーブル導体の製造方法のフロー図である。
本発明の実施形態である銅合金線の製造方法及びケーブル導体の製造方法で用いられる連続鋳造圧延設備の概略説明図である。
実施例で実施した屈曲試験方法の概略説明図である。

0018

以下に、本発明の実施形態に係る銅合金線の製造方法について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である銅合金線は、ロボットのアーム部等の配線ケーブルの素線として用いられるものである。
このロボット用の配線ケーブルは、複数の銅合金線が撚り合わされてなるケーブル導体と、このケーブル導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を備えている。

0019

ここで、本実施形態である銅合金線は、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物とされた組成の銅合金で構成されている。
なお、この銅合金においては、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含んでいてもよい。また、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含んでいてもよい。
以下に、各元素の含有量を上述の範囲内に設定した理由について説明する。

0020

(Co及びP)
CoとPは、銅の母相中に分散する析出物を形成する元素である。
ここで、Coの含有量が0.12質量%未満及びPの含有量が0.04質量%未満の場合には、析出物の個数が不足し、強度及び繰り返し曲げ特性を充分に向上させることができないおそれがある。一方、Coの含有量が0.40質量%超え及びPの含有量が0.16質量%超えの場合には、強度の向上に寄与しない元素が多く存在してしまい、導電率の低下等を招くおそれがある。
このため、Coの含有量を0.12質量%以上0.40質量%以下、Pの含有量を0.040質量%以上0.16質量%以下の範囲内に設定することが望ましい。

0021

(Sn)
Snは、銅の母相中に固溶することによって強度を向上させる作用を有する元素である。また、CoとPとを主成分とする析出物の析出を促進させる効果や、耐熱性、耐食性を向上させる作用も有する。
ここで、Snの含有量が0.005質量%未満の場合には、上述した作用効果を確実に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Snの含有量が0.70質量%を超える場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Snの含有量を0.005質量%以上0.70質量%以下の範囲内に設定することが望ましい。

0022

(Ni)
Niは、Coの一部を代替することができ、結晶粒の粗大化を抑制する作用効果を有する元素である。
ここで、Niの含有量が0.01質量%未満の場合には、上述した作用効果を確実に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Niの含有量が0.15質量%を超える場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Niを含有する場合には、Niの含有量を0.01質量%以上0.15質量%以下の範囲内とすることが好ましい。

0023

(Zn,Mg,Ag,Zr)
Zn,Mg,Ag,Zrといった元素は、硫黄(S)と化合物を生成し、銅の母相中への硫黄(S)の固溶を抑制する作用効果を有する元素である。
ここで、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素の含有量がそれぞれ上述の下限値より少ない場合には、銅の母相中への硫黄(S)の固溶を抑制する作用効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素の含有量がそれぞれ上述の上限値より多い場合には、導電率を確保できなくなるおそれがある。
このため、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素を含有する場合には、それぞれ上述の範囲内とすることが好ましい。

0024

そして、本実施形態である銅合金線においては、後述する時効熱処理工程S03を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径が15nm以上であり、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされており、この時効熱処理工程S03の後、冷間加工(2次冷間加工工程S04)されて製造されたものとされている。
ここで、析出物の観察は、次のようにして実施した。透過型電子顕微鏡によって倍率15万倍および75万倍で観察し、当該析出物の面積を算出してその円相当径を粒径として算出した。なお、倍率15万倍で11〜100nmの粒径の析出物を、倍率75万倍で1〜10nmの粒径の析出物を測定した。倍率75万倍での観察では1nm未満の析出物は明確に判別できないことから、観察される析出物全体の個数は粒径1nm以上の析出物の個数となる。また、透過型電子顕微鏡による観察は、倍率15万倍の場合は視野面積約4×105nm2 、倍率75万倍の場合は視野面積約2×104nm2 で実施した。

0025

次に、上述の銅合金線の製造方法及びケーブル導体の製造方法について説明する。図1に本発明の実施形態である銅合金線の製造方法及びケーブル導体の製造方法のフロー図を示す。
まず、上記銅合金からなる銅荒引線50を連続鋳造圧延法によって連続的に製出する(連続鋳造圧延工程S01)。この連続鋳造圧延工程S01においては、例えば図2に示す連続鋳造圧延設備が用いられる。

0026

図2に示す連続鋳造圧延設備は、溶解炉Aと、保持炉Bと、鋳造樋Cと、ベルトホイール式連続鋳造機Dと、連続圧延装置Eと、コイラーFとを有している。

0027

溶解炉Aとして、本実施形態では、円筒形の炉本体を有するシャフト炉を用いている。炉本体の下部には円周方向に複数のバーナ(図示なし)が上下方向に多段状に配備されている。そして、炉本体の上部から原料である電気銅装入され、前記バーナの燃焼によって溶解され、銅溶湯が連続的に製出される。

0028

保持炉Bは、溶解炉Aでつくられた銅溶湯を、所定の温度で保持したままで一旦貯留し、一定量の銅溶湯を鋳造樋Cに送るためのものである。

0029

鋳造樋Cは、保持炉Bから送られた銅溶湯を、ベルトホイール式連続鋳造機Dの上方に配置されたタンディッシュ11にまで移送するものである。この鋳造樋Cは、例えばAr等の不活性ガス又は還元性ガスシールされている。なお、この鋳造樋Cには、不活性ガスによって銅溶湯を攪拌して溶湯中酸素等を除去する脱ガス手段(図示なし)が設けられている。

0030

タンディッシュ11は、ベルトホイール式連続鋳造機Dに銅溶湯を連続的に供給するために設けられた貯留槽である。このタンディッシュ11の銅溶湯の流れ方向終端側には、注湯ノズル12が配置されており、この注湯ノズル12を介してタンディッシュ11内の銅溶湯がベルトホイール式連続鋳造機Dへと供給される構成とされている。

0031

ここで、本実施形態では、鋳造樋C及びタンディッシュ11に合金元素添加手段(図示なし)が設けられており、銅溶湯中に、上述の元素(Co,P、Sn等)が添加される構成とされている。

0032

ベルトホイール式連続鋳造機Dは、外周面に溝が形成された鋳造輪13と、この鋳造輪13の外周面の一部に接触するように周回移動される無端ベルト14とを有している。このベルトホイール式連続鋳造機Dにおいては、前記溝と無端ベルト14との間に形成された空間に注湯ノズル12を介して銅溶湯が注入され、この銅溶湯を冷却・固化することで、棒状の鋳造銅材21を連続的に鋳造するものである。

0033

このベルトホイール式連続鋳造機Dの下流側には、連続圧延装置Eが連結されている。この連続圧延装置Eは、ベルトホイール式連続鋳造機Dから製出された鋳造銅材21を連続的に圧延して、所定の外径の銅荒引線50を製出するものである。
この連続圧延装置Eから製出された銅荒引線50は、洗浄冷却装置15及び探傷器16を介してコイラーFに巻き取られる。
ここで、上述の連続鋳造圧延設備によって製出される銅荒引線50の外径は、例えば8mm以上40mm以下とされており、本実施形態では8mmとされている。
そして、この連続鋳造圧延工程S01では、鋳造銅材21が、例えば800℃から1000℃の比較的高温で保持されることから、Co、Pといった元素が銅の母相中に多く固溶することになる。

0034

次に、図1に示すように連続鋳造圧延工程S01によって製出された銅荒引線50に対して、冷間加工を実施する(1次冷間加工工程S02)。この1次冷間加工工程S02においては、複数段の加工が実施され、外径0.1mm以上8.0mm以下の範囲内の銅線材とする。本実施形態では、外径0.9mmの銅線材とされている。

0035

次に、1次冷間加工工程S02後の銅線材に対して時効熱処理を実施する(時効熱処理工程S03)。この時効熱処理工程S03によって、CoとPとを主成分とする化合物からなる析出物を析出させる。
ここで、時効熱処理工程S03では、熱処理温度が400℃以上600℃以下、保持時間が0.5時間以上6.0時間以下の条件で実施される。

0036

次に、時効熱処理工程S03後の銅線材に対して、冷間加工を実施し、所定の断面形状の銅合金線とする(2次冷間加工工程S04)。
この2次冷間加工工程S04においては、複数段の加工が実施され、外径0.015mm以上0.2mm以下の範囲内の銅合金線とする。本実施形態の銅合金線は、外径0.08mmとされている。

0037

次に、上述のようにして得られた銅合金線を、複数本(本実施形態では40本)を撚り合わせてケーブル導体を成形する(撚り線加工工程S05)。本実施形態では、撚り線加工工程S05における撚りのピッチが、4mm以上24mm以下に設定されている。

0038

そして、撚り線加工工程S05によって得られたケーブル導体に対して、歪み取りを目的として、バッチ式で100℃以上400℃以下で30分以上300分以下の熱処理を行う(最終熱処理工程S06)。
この最終熱処理工程S06は、バッチ式の熱処理の他に、線材を通過させる管状炉を使った熱処理、通電焼鈍等の各種手段を用いることができる。

0039

以上のような構成とされた本実施形態である銅合金線によれば、時効熱処理工程S03を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径を15nm以上とし、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数を、観察される析出物全体の80%以上としていることから、粒径の小さな析出物の個数が少なく、その後の2次冷間加工工程S04において、析出物が再固溶することを抑制でき、導電率に優れた銅合金線を製造することができる。
また、析出物の平均粒径が15nm以上とされているので、析出物が十分に析出されており、導電性を向上させることができるとともに、強度及び繰り返し曲げ特性の向上を図ることができる。
よって、ロボットのアーム部等の曲げやひねり等が繰り返し負荷される部位における配線ケーブルとして使用することが可能となる。

0040

本実施形態においては、銅合金線の組成が、Co;0.12質量%以上0.40質量%以下、P;0.040質量%以上0.16質量%以下、Sn;0.005質量%以上0.70質量%以下を含み、残部がCu及び不可避不純物とされているので、銅の母相中にCoとPとの化合物からなる析出物が分散されることになり、強度、導電率の向上を図ることが可能となる。また、Snを0.005質量%以上0.70質量%以下の範囲内で含有しているので、固溶強化によって強度の更なる向上を図ることができ、強度及び繰り返し曲げ特性を向上させることができる。また、耐熱性、耐食性も向上することになる。

0041

さらに、本実施形態では、さらにNi;0.01質量%以上0.15質量%以下を含んでいるので、結晶粒の粗大化を抑制でき、強度及び繰り返し曲げ特性をさらに向上させることができる。
また、本実施形態では、さらにZn;0.002質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.002質量%以上0.25質量%以下、Ag;0.002質量%以上0.25質量%以下、Zr;0.001質量%以上0.1質量%以下のうち、いずれか1種または2種以上を含んでいるので、Zn,Mg,Ag,Zrといった元素が硫黄(S)と化合物を形成することにより、銅の母相中に硫黄(S)が固溶することを抑制でき、銅合金線の強度等の機械的特性の劣化を抑制することができる。

0042

また、本実施形態では、2次冷間加工工程S04の後、複数の銅合金線を撚り合わせてケーブル導体とする撚り線加工工程S05と、このケーブル導体に対して、歪み取りのための熱処理を行う最終熱処理工程S06と、を備えているので、最終熱処理工程S06により、2次冷間加工工程S04及び撚り線加工工程S05で蓄積された歪みを解放することができ、曲げ性伸び等を向上させることが可能となる。なお、この最終熱処理工程S06においては、熱処理温度を100℃以上400℃以下の範囲内に設定しているので、銅合金線同士が密着してしまうおそれはない。

0043

さらに、本実施形態では、連続鋳造圧延工程S01によって銅荒引線50を製出しているので、効率良く銅荒引線50を製出することができる。また、例えば800〜1000℃の高温状態で一定時間保持されることになるので、CoやP等の元素が銅の母相中に固溶されることになり、別途溶体化処理を行う必要がない。

0044

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ロボット用の配線ケーブルを構成する銅合金線として説明したが、これに限定されることはなく、携帯端末及びPCのヒンジ部等に用いられる配線ケーブルであってもよい。

0045

また、本実施形態では、連続鋳造圧延工程によって銅荒引線を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、円柱状の鋳塊ビレット)を製出し、この鋳塊を押出・冷間加工することで銅荒引線を製出してもよい。但し、押出法によって銅荒引線を製出した場合には、別途溶体化処理を行う必要がある。さらに、連続鋳造圧延工程によって製造された場合であっても、銅荒引線に対して溶体化処理を実施してもよい。
また、本実施形態では、連続鋳造圧延工程を図2に示すベルトホイール鋳造機を用いて実施するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の連続鋳造法を採用してもよい。

0046

以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。

0047

(本発明例及び比較例)
ベルトホイール式連続鋳造機を備えた連続鋳造圧延設備を用いて、表1に示す組成の銅合金からなる銅荒引線(直径8mm)を製出した。この銅荒引線に対して、1次冷間加工を実施して直径0.9mmとした後に、表1記載の条件で時効熱処理を施した。その後、2次冷間加工を実施して直径0.08mmとし、表1記載の条件で最終熱処理を施した。

0048

(従来例)
従来例1として、外径0.08mmのタフピッチ銅の軟質銅を準備した。
従来例2として、外径0.08mmのSn入り銅の硬質銅を準備した。
従来例3として、外径0.08mmのSn入り銅の軟質銅を準備した。

0049

(時効熱処理後の析出物観察)
本発明例について、時効熱処理後の銅線材を用いて析出物の観察を行った。析出物の観察は、透過型電子顕微鏡(機種名:TEM日立製作所製、H−800、HF−2000、HF−2200および日本電子製 JEM−2010F)の透過電子像を用いて各析出物の面積から相当粒径を算出した。なお、倍率は15万倍、75万倍とし、それぞれ測定視野約4×105nm2、約2×104nm2 で、観察を実施した。そして、析出物の平均粒径、及び、観察される析出物のうち粒径5nm以上の析出物の割合を算出した。結果を表2に示す。

0050

屈曲性
本発明例、比較例、従来例の銅合金線(外径0.08mm)を用いて、屈曲性を評価した。屈曲性試験は、図3に示す屈曲試験方法を用いて、曲げ部61のRを5mm、荷重62)を20gとし、180°曲げを行って元の位置まで戻った回数を2回とし、破断が発生するまで曲げを繰り返した。評価結果を表2に示す。

0051

(導電率)
最終熱処理後の本発明例、比較例、従来例の銅合金線(外径0.08mm)を用いて、導電率を測定した。導電率は、JIS H 0505に準拠して、ダブルブリッジ法によって測定した。評価結果を表2に示す。

0052

0053

実施例

0054

本発明例に1−19においては、いずれも時効熱処理を実施した直後の断面組織観察により観察される析出物の平均粒径が15nm以上、かつ、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%以上とされていることが確認される。屈曲性は、従来例1,2に比べて優れており、導電率も70%IACS以上とされている。
これに対して、粒径5nm以上の析出物の個数が、観察される析出物全体の80%未満とされた比較例1−3(比較例2,3においては、析出物の平均粒径が15nm未満)においては、屈曲性及び導電率が悪い。
以上のことから、本発明例によれば、導電率、及び、繰り返し曲げ特性に優れた銅合金線を得られることが確認された。

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