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課題
解決手段
概要
背景
従来、Ni、Ni合金及びNi複合材等のめっき膜は基材の保護等に用いられている。このようなNi等の金属めっき膜は、大気雰囲気下、水溶媒中で電解めっき又は無電解めっきいずれかの方法で形成されていた(特許文献1)。一方、溶融塩溶媒や有機溶媒のような非水溶媒中では、Ni等の金属ナノ粒子を作る報告は多数あるが(特許文献2)、非水溶媒中の電解めっき方法に関する報告はごく少数であり、例えば、Ni(非特許文献1−4)、NiCo(非特許文献5−7)、La−Ni(非特許文献8)、Ni−Zn(非特許文献9)であり、熱又は電流を印加することにより、Niカチオンを少なくする方法(非特許文献10)、アクチベーターやセンシタイザー材料を用いた基板表面前処理を実施して、基板表面を活性化・高感度化する方法(非特許文献11)等があるが、非水溶媒中の無電解めっき方法に関する報告はこれまでなかった。
概要
本発明は、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成する方法を提供することを課題とする。不活性ガス34雰囲気とした容器30内に被成膜用基体20を配置し、非水溶媒32を充填してから、非水溶媒32に金属錯体からなるルイス塩基と第13族元素ハロゲン化物からなるルイス酸を混合して、被成膜用基体20の表面に金属膜10を成膜する無電解めっき方法を用いることにより、前記課題を解決できる。
目的
本発明は、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成する方法を提供する
効果
実績
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請求項1
不活性ガス雰囲気とした容器内に被成膜用基体を配置し、非水溶媒を充填してから、非水溶媒に金属錯体からなるルイス塩基と第13族元素ハロゲン化物からなるルイス酸を混合して、前記被成膜用基体の表面に金属膜を成膜することを特徴とする非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項2
前記ルイス塩基に対する前記ルイス酸のモル比を0.8以上1.2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項3
前記非水溶媒が有機溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項4
前記有機溶媒がエーテルであることを特徴とする請求項3に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項5
前記金属錯体が0価金属錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項6
前記0価金属錯体がNi(0)金属錯体であることを特徴とする請求項5に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項7
前記Ni金属錯体がbi(cyclooctadiene)Ni(0)であることを特徴とする請求項6に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
請求項8
前記第13族元素ハロゲン化物がAlCl3、Al2Cl6、BF3のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水溶媒中の無電解めっき方法。
技術分野
背景技術
0002
従来、Ni、Ni合金及びNi複合材等のめっき膜は基材の保護等に用いられている。このようなNi等の金属めっき膜は、大気雰囲気下、水溶媒中で電解めっき又は無電解めっきいずれかの方法で形成されていた(特許文献1)。一方、溶融塩溶媒や有機溶媒のような非水溶媒中では、Ni等の金属ナノ粒子を作る報告は多数あるが(特許文献2)、非水溶媒中の電解めっき方法に関する報告はごく少数であり、例えば、Ni(非特許文献1−4)、NiCo(非特許文献5−7)、La−Ni(非特許文献8)、Ni−Zn(非特許文献9)であり、熱又は電流を印加することにより、Niカチオンを少なくする方法(非特許文献10)、アクチベーターやセンシタイザー材料を用いた基板表面前処理を実施して、基板表面を活性化・高感度化する方法(非特許文献11)等があるが、非水溶媒中の無電解めっき方法に関する報告はこれまでなかった。
0003
無電解ニッケルめっき液及びめっき方法;特開平8−269726;内田 廣記/木曽 雅之/中村孝之/清水浩一郎/傳 燕雲;上村工業株式会社
ニッケルナノ粒子の製造方法 特開2009−24254(P2009−24254A);李永日/鄭在祐/崔準洛/李貴鍾;Samsung
先行技術
0004
Shrestha,N.K.and T.Saji,Non−aqueous composite plating of Ni−ceramic particles using ethanol bath and anti−wear performance of the coatings.Surface and Coatings Technology,2004.186(3):p.444−449.
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Kuntyi,O.I.,E.V.Okhremchuk,and M.S.Khoma,Electrochemical Deposition of Nickel in Aprotic Solvents.Materials Science,2003.39(6):p.885−888.
Chow,G.M.,et al.,Electroless polyol synthesis and properties of nanostructured NixCo100−x films.Materials Science and Engineering:A,2001.304−306:p.194−199.
Zhang,J.and L.Chen,NiCo films with perpendicular magnetization anisotropy deposited on dielectric substrate by using polyol process.Materials Letters,2011.65(19−20):p.2944−2946.
Tatsuko,T.,The Electrodepositions of Copper and Nickel from Their Trifluoroacetate-Formamide Baths. Bulletin of the Chemical Society of Japan,1974.47: p.249−256.
An,M.Z.,J.L.Wang,and D.Z.Sun, Electrodeposition of La-Ni alloy films in a nonaqueous system.Journal of Applied Electrochemistry,2001.31(8):p.891−896.
Gou,S.−P.and I.W.Sun,Electrodeposition behavior of nickel and nickel-zinc alloys from the zinc chloride−1−ethyl−3−methylimidazolium chloride low temperature molten salt.Electrochimica Acta,2008.53(5):p.2538−2544.
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Chen,W.−D.,et al.,The preparation of thermo−responsive palladium catalyst with high activity for electroless nickel deposition.Surface and Coatings Technology,2010.204(14):p.2130−2135.
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
0006
本願発明者は、試行錯誤しながら、非水溶媒中でNiナノ粒子等の金属ナノ粒子を作る実験を繰り返していたところ、SrTiO3基板に何ら表面前処理することなく、不活性ガス雰囲気下、非水溶媒(非プロトン性溶媒)中、ニッケル金属錯体(bis(cyclooctadiene)−Nickel(0):Ni(cod)2)と塩化アルミニウム(aluminium chloride:AlCl3)を混合することにより容易に、無電解Niめっきが可能であることを発見し、本研究を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
0007
(1)不活性ガス雰囲気とした容器内に被成膜用基体を配置し、非水溶媒を充填してから、非水溶媒に金属錯体からなるルイス塩基と第13族元素ハロゲン化物からなるルイス酸を混合して、前記被成膜用基体の表面に金属膜を成膜することを特徴とする無電解めっき方法。
0008
(2)前記ルイス塩基に対する前記ルイス酸のモル比を0.8以上1.2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき方法。
(3)前記非水溶媒が有機溶媒であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の無電解めっき方法。
0009
(4)前記有機溶媒がエーテルであることを特徴とする(3)に記載の無電解めっき方法。
(5)前記金属錯体が0価金属錯体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の無電解めっき方法。
(6)前記0価金属錯体がNi(0)金属錯体であることを特徴とする(5)に記載の無電解めっき方法。
0010
(7)前記Ni金属錯体がbi(cyclooctadiene)Ni(0)であることを特徴とする(6)に記載の無電解めっき方法。
(8)前記第13族元素ハロゲン化物がAlCl3、Al2Cl6、BF3のいずれかであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の無電解めっき方法。
発明の効果
0011
本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法は、不活性ガス雰囲気とした容器内に被成膜用基体を配置し、非水溶媒を充填してから、非水溶媒に金属錯体からなるルイス塩基と第13族元素ハロゲン化物からなるルイス酸を混合して、前記被成膜用基体の表面に金属膜を成膜する構成なので、水に強い基体だけでなく、水に弱い基体でも、無電解めっきによりその表面に均一な膜厚で均質な金属膜を形成できる。
図面の簡単な説明
0012
本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法の一例を示すフローチャート図である。
本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法の一例を示す工程図である。
本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法を説明する概略図である。
本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法におけるNi(cod)2とAlCl3との配位子交換化学反応である。
本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法で成膜した無電解めっき膜の一例を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
実施例2サンプル(N1サンプル)のpXRDパターンである。
実施例1〜3及び比較例1サンプルのSEM像(a、c、e、g)、断面BSE−SEM像(b、d、f、h)及びサンプル写真(b、d、f、hの挿入写真)である。(a)、(b)比較例1サンプル(N0サンプル)、(c)、(d)実施例1サンプル(N0.5サンプル)、(e)、(f)実施例2サンプル(N1サンプル)、(g)、(h)実施例3サンプル(N3サンプル)である。
無電解Niめっき膜の厚さとAlCl3/Ni(cod)2モル比の関係を示すグラフである。
0013
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法について説明する。
0014
(本発明の実施形態)
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、被成膜用基体浸漬工程S1と、ルイス酸及びルイス塩基混合工程S2とを有する。
図1は、本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法の一例を示すフローチャート図である。図2は、本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法の一例を示す工程図である。図3は、本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法を説明する概略図である。図4は、無電解めっき方法でのNi(cod)2とAlCl3との配位子交換化学反応である。
0015
<被成膜用基体浸漬工程S1>
図2(a)に示すように、まず、2管付き丸底フラスコ30内に棒状の被成膜用基体(substrate)20を配置し、非水溶媒32を入れてから、バルブ36を介して一管をシュレンカーラインに接続し、他管を膜38で封止する。
非水溶媒32とは、非プロトン溶媒であり、有機溶媒であり、例えば、エーテルであり、テトラヒドロフラン(THF)である。
次に、バルブ36を開け、2管付き丸底フラスコ30内を不活性ガス雰囲気とする。
0016
<ルイス酸及びルイス塩基混合工程S2>
次に、注射器にいれた金属錯体からなるルイス塩基分散溶液を、膜38を介して、2管付き丸底フラスコ30内に注入する。ルイス塩基は、金属錯体である。例えば、Ni(cod)2であり、これを有機溶媒に分散して、ルイス塩基分散溶液とすることができる。codはcyclooctadieneの略称である。これにより、図3(a)に示すように、被成膜用基体20の近傍に、Ni(cod)2分子が存在する。
0017
次に、注射器にいれた第13族元素ハロゲン化物からなるルイス酸分散溶液を、膜38を介して、2管付き丸底フラスコ30内に注入する。ルイス酸は、第13族元素ハロゲン化物である。例えば、AlCl3、Al2Cl6、BF3であり、これを有機溶媒に分散して、ルイス酸分散溶液とすることができる。これにより、図3(b)に示すように、被成膜用基体20の近傍に、Ni(cod)2分子に加えて、AlCl3分子が共存する。
0018
ルイス塩基分散溶液とルイス酸分散溶液をよく混合することにより、図4に示すように、ルイス酸塩基反応が生じ、図3(c)に示すように、AlCl3(cod)2錯体が生成されるとともに、被成膜用基体20の表面にNi(0)からなる無電解めっき膜を形成することができる。なお、2管付き丸底フラスコ30内壁面にも無電解めっき膜が形成される。
0019
混合は室温でよい。加熱してもよい。加熱により、成膜速度を上げることができる。
すべての工程を、不活性ガス雰囲気下、実施することを要する。
0020
ルイス塩基に対してルイス酸を0.8モル等量以上1.2モル等量以下にすることが好ましく、等モル量にすることがより好ましい。これにより、過剰量のルイス塩基又はルイス酸の影響を排除して、ルイス酸塩基反応を効率よく実施することができ、短時間で厚い膜を形成できる。
ルイス塩基に対してルイス酸を0.8モル等量未満又は1.2モル等量超として、ルイス塩基又はルイス酸を他方に対して過剰にした場合には、ルイス酸塩基反応が非効率となり、膜厚が薄くなるとともに、密度が低減する場合が生じる。
0021
図5は、本発明の非水溶媒中の無電解めっき方法で成膜した無電解Niめっき膜の一例を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
例えば、棒状の被成膜用基体20を用いた場合には、全面に均一の厚さtの高純度の金属Ni(0)からなる無電解めっき膜10が形成される。
0023
被成膜用基体20としては、上記無機酸化物に限られるものではなく、水溶性物質を用いてもよい。すなわち、例えば、NaClや砂糖等の水に弱い物質からなる基材を用いてもよい。これらの基材は、水溶媒中では崩壊するので、従来の水溶媒中の電解又は無電解めっき方法では、基材の表面にNi等の金属めっき膜を形成することができなかった。しかし、本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法では、非水溶媒を用いる構成なので、NaClや砂糖等の水に弱い物質からなる基材の表面にNi等の金属めっき膜を形成できる。
0024
また、被成膜用基体20として、例えば、Pb等からなる基材を用いてもよい。これらの基材は、水溶媒中で表面にPbO等の酸化物を形成するので、従来の水溶媒中の電解又は無電解めっき方法では、基材自体、すなわち、Pb等の金属の表面にNi等の金属めっき膜を形成することはできなかった。しかし、本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法では、非水溶媒を用いる構成なので、Pb等からなる基材自体、すなわち、Pb等の金属の表面にNi等の金属めっき膜を形成できる。
0025
被成膜用基体20の形状は棒状に限られるものではなく、どのような形状でも良い。
膜厚が薄く、均一な厚さの膜を形成できるので、微細なグレーティングが形成された表面であっても、カバレッジ浴膜を形成できる。
0026
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、不活性ガス34雰囲気とした容器30内に被成膜用基体20を配置し、非水溶媒32を充填してから、非水溶媒32に金属錯体からなるルイス塩基と第13族元素ハロゲン化物からなるルイス酸を混合して、被成膜用基体20の表面に金属膜10を成膜する構成なので、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0027
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、前記ルイス塩基に対する前記ルイス酸42のモル比を0.8以上1.2以下とする構成なので、効率的に、水に強い基体だけでなく、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0028
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、非水溶媒32が有機溶媒である構成なので、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0029
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、前記有機溶媒がエーテルである構成なので、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0030
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、前記金属錯体が0価金属錯体である構成なので、水に強い基体だけでなく、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0031
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、前記0価金属錯体がNi(0)金属錯体である構成なので、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0032
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、前記Ni金属錯体がbi(cyclooctadiene)Ni(0)である構成なので、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0033
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、前記第13族元素ハロゲン化物がAlCl3、Al2Cl6、BF3のいずれかである構成なので、非水溶性基体だけでなく、水溶性基体でも、無電解めっきによりその表面に均質な金属膜を形成することができる。
0034
本発明の実施形態である非水溶媒中の無電解めっき方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
0035
(実施例1)
<無電解めっき工程>
以下、無電解めっき工程は、グローブボックス中で不活性ガス雰囲気下、実施した。
まず、Ni(cod)2(98+%、Strem Chemicals Inc.製)とAlCl3(99.999%、Aldrich製)を用意した。
次に、有機溶媒として、テトラヒドロフラン(THF:99.5%、Kishida Chemicals製)、トルエン(96%、Kishida Chemicals製)、メタノール(99.8%、Kishida Chemicals製)を用意した。
次に、基板として、3mm(横)×5mm(縦)×0.3mm(厚さ)のSrTiO3単結晶基板を用意した。
0036
次に、SrTiO3単結晶基板の表面をアセトン洗浄してから、過剰な蒸留水ですすいで、不純物とグリースを除去した。
次に、30mlびんにいれた10mlのTHFにNi(cod)2(前駆体)を溶解して、0.015M濃度の前駆体溶液を調製した。
0037
次に、前駆体溶液を無電解めっき槽に入れ、Ni(cod)2に対するAlCl3のモル比を0.5、すなわち、AlCl3/Ni(cod)2=0.5となるようにAlCl3を追加してから、SrTiO3単結晶基板を無電解めっき槽に浸漬し、1時間、200−300rev(回転)/minでかき回した。これにより、無電解めっき槽の内壁面とともに、SrTiO3単結晶基板の表面が無電解めっきされ、銀鏡コーティングされた。
0038
次に、無電解めっきされたSrTiO3単結晶基板を無電解めっき槽から取り出し、グローブボックスの外で、無電解めっきされたSrTiO3単結晶基板をトルエンですすぎ、非極性溶質やメタノールを除去した。
これにより、実施例1サンプル(N0.5サンプル)を作成した。
0039
(実施例2)
Ni(cod)2に対するAlCl3のモル比を1、すなわち、AlCl3/Ni(cod)2=1となるようにAlCl3を追加した他は実施例1と同様にして、実施例2サンプル(N1サンプル)を作成した。
0040
(実施例3)
Ni(cod)2に対するAlCl3のモル比を3、すなわち、AlCl3/Ni(cod)2=3となるようにAlCl3を追加した他は実施例1と同様にして、実施例3サンプル(N3サンプル)を作成した。
0041
(比較例1)
Ni(cod)2に対するAlCl3のモル比を0、すなわち、AlCl3/Ni(cod)2=0となるようにAlCl3を追加しなかった他は実施例1と同様にして、比較例1サンプル(N0サンプル)を作成した。
0042
<評価>
プレーティング溶液槽として用いられたびんから収集された無電解Niめっき膜が酸化される前に、無電解めっき膜を粉末状に削り取り、pXRD(powder X−ray diffractometry)(CuKα radiation,RIGAKURINT 2000;λ=0.1548nm)で結晶構造を調べた。
0043
無電解めっき膜の表面及び断面の形態はscanning electron microscopy(SEM,Hitachi S4700)で観察した。
0044
無電解めっき膜の厚さは、SEMで断面観察して測定した。
0045
<結果>
図6は、実施例2サンプル(N1サンプル)のpXRDパターンである。
散乱ピークは、シミュレートしたpXRDパターンも示すように(非特許文献12)、FCC−Ni(Fm3(−)m,a=0.3524nm)の(111)、(200)、(220)、(311)、(222)に対応していた。酸化物や他の元素のピークは観測されず、結晶構造化された純Ni膜のピークのみであった。
すなわち、pXRDデータから、無電解Niめっき膜がNi膜だけであることが明らかとなった。
0046
図7は、実施例1〜3及び比較例1サンプルのSEM像(a、c、e、g)、断面BSE−SEM像(b、d、f、h)及びサンプル写真(b、d、f、hの挿入写真)である。(a)、(b)比較例1サンプル(N0サンプル)、(c)、(d)実施例1サンプル(N0.5サンプル)、(e)、(f)実施例2サンプル(N1サンプル)、(g)、(h)実施例3サンプル(N3サンプル)である。
0047
図7(a)、(b)に示すように、比較例1サンプル(N0サンプル)には、無電解Niめっき膜が形成されなかった。2μmのサイズのNi酸化物が凝集していた。THF溶媒中のNi(cod)2が空気に曝され、Ni酸化物が形成され、それがトルエンですすいだ後も、基板上に残った一方、AlCl3が存在しないことにより、無電解Niめっき膜が形成されなかったと推察した。
0048
Ni(cod)2は、四面体のNi(0)が2つのcod配位子のアルケン基に結合した反磁性配錯体であり、Ni(0)とcod配位子との間の結合は酸素に対して高感度であり、湿った空気中の酸素でcod配位子が容易に置換され、Ni酸化物(NiO)を形成する。
0049
図7(c)、(d)に示すように、実施例1サンプル(N0.5サンプル)では、基板上に金属Niからなる無電解Niめっき膜が形成された。
図7(d)から見積もると、無電解Niめっき膜の平均厚さは2μmであった。
0051
図7(e)、(f)に示すように、実施例2サンプル(N1サンプル)でも、基板上に金属Niからなる無電解Niめっき膜が形成された。
図7(f)から見積もると、無電解Niめっき膜の平均厚さは5μmであった。
断面BSE−SEM像から、密な膜であり、基板とも密着していた。
また、挿入写真に示すように、均一な膜であり、鏡面を呈した。
AlCl3が十分な量であり、接着力が強く、蒸着速度も速かった。
0052
図7(g)、(h)に示すように、実施例3サンプル(N3サンプル)でも、基板上に金属Niからなる無電解Niめっき膜が形成された。
図7(h)から見積もると、無電解Niめっき膜の平均厚さは3μmであった。
断面BSE−SEM像から、低密度の膜であり、基板との密着は弱かった。
また、挿入写真に示すように、鏡面を呈した。
AlCl3が過剰な量であり、無電解Niめっき膜の化学反応が高められ、接着力が弱く、蒸着速度も遅かった。
0053
図8は、無電解Niめっき膜の厚さとAlCl3/Ni(cod)2モル比との関係を示すグラフである。
図8から分かるように、Ni前駆体に対して等モル量となるまでは、AlCl3の濃度の増加とともに、無電解Niめっき膜の膜厚は増加した。一方、Ni前駆体に対して等モル量となった後は、AlCl3の濃度の増加とともに、無電解Niめっき膜の膜厚は減少した。
実施例
0054
<結論>
1)不活性雰囲気下、非常に単純な非水無電解プレーティングを用いて、AlCl3によって活性化されたNi(cod)2前駆体から、SrTiO3基体上にNi薄膜を成膜することに成功した。
2)AlCl3濃度を制御することにより、密なニッケルを接着性高く成膜できた。
プレーティング溶液中のAlCl3とNi(cod)2のモル比を1とすることにより、密で接着性の高い膜とすることができた。
0056
10…金属膜、20…基体(被成膜用基体)、30…容器、32…非水溶媒、34…不活性ガス、36…バルブ、38…膜、41…ルイス塩基分散溶液、42…ルイス酸分散溶液、S1…被成膜用基体浸漬工程、S2…ルイス酸及びルイス塩基混合工程。