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技術 フジツボ類幼生用フェロモントラップとその製造方法

出願人 一般財団法人電力中央研究所
発明者 野方靖行遠藤紀之グンチェンピン黒川孝幸室崎喬之
出願日 2012年5月21日 (7年9ヶ月経過) 出願番号 2012-115881
公開日 2013年12月5日 (6年3ヶ月経過) 公開番号 2013-241369
状態 特許登録済
技術分野 捕獲、駆除 突然変異または遺伝子工学 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード 圧縮破断 シリコンスペーサー 相互独立 フジツボ幼生 使用量制限 海水濃度 生体軟組織 環境科学
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課題

海水中での安定性の保持と魚類等からの捕食による破壊の防止のための十分な強度の確保と、フジツボ類拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能とを両立することのできる担体により構成されるフジツボ類幼生フェロモントラップを得る。

解決手段

脆性ゲル及び軟伸性ゲルの混合相と軟伸性ゲルの単相からなる親水性ダブルネットワークゲルの、少なくとも混合相側にフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含むものとした。

概要

背景

フジツボ類は臨海発電施設冷却水路系における代表的な汚損付着生物である。冷却水路系に付着したフジツボ類は、冷却水流動抵抗の増加に伴う流量の低下、管の閉塞腐食促進等の問題を引き起こす(非特許文献1及び2を参照)。

フジツボ類の付着を防止するために、塩素等の薬剤注入が多くの発電所で行われている。しかしながら、薬剤の有害性から、放出口で検出されないこと等といった使用量制限があり、十分な効果が得られない場合がある(非特許文献3を参照)。また、亜酸化銅系塗料も薬剤注入と共に広く用いられているが、環境中に残留した成分が生物に悪影響を与える可能性があるとして、国外においては一部で規制動きも出始めている。

ところで、フジツボ類のキプリス幼生の同種認識には,フェロモンが重要な役割を果たしている可能性が指摘されている(非特許文献5及び6を参照)。このフェロモンをフジツボ類幼生に対するフェロモントラップ、即ちフェロモンを誘引源としてフジツボ類幼生を捕獲する装置として応用することができれば、臨海発電所の冷却水路系における付着被害を大幅に低減できる可能性がある。

フジツボ類のキプリス幼生が付着、変態して幼体となる一連過程着生と称されているが、この着生を誘起するフェロモン(着生フェロモン)には岸壁等の基盤上に吸着した状態で幼生の着生を誘起する基盤吸着性のものと、海水中に拡散した状態で効果を発現する拡散性のものの2種類が存在すると考えられている(非特許文献7を参照)。

概要

海水中での安定性の保持と魚類等からの捕食による破壊の防止のための十分な強度の確保と、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能とを両立することのできる担体により構成されるフジツボ類幼生用フェロモントラップを得る。硬脆性ゲル及び軟伸性ゲルの混合相と軟伸性ゲルの単相からなる親水性ダブルネットワークゲルの、少なくとも混合相側にフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含むものとした。

目的

本発明は、海水中での安定性の保持と魚類等からの捕食による破壊の防止のための十分な強度の確保と、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能とを両立することのできる担体により構成されるフジツボ類幼生用フェロモントラップとその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

脆性ゲル及び軟伸性ゲルの混合相と前記軟伸性ゲルの単相からなる親水性ダブルネットワークゲルの、少なくとも前記混合相側にフジツボ類拡散性着生フェロモンタンパク質を含むことを特徴とするフジツボ類幼生フェロモントラップ

請求項2

前記拡散性着生フェロモンタンパク質は、以下の(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体により産生されるタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生トラップするものである請求項1に記載のフジツボ類幼生用フェロモントラップ。(a)配列番号1、2又は3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(b)前記(a)のポリヌクレオチドもしくはこれと相補的なポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質をコードするポリヌクレオチド

請求項3

前記拡散性着生フェロモンタンパク質は、以下の(c)又は(d)に記載のタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生をトラップするものである請求項1に記載のフジツボ類幼生用フェロモントラップ。(c)配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列により表されるタンパク質(d)前記(c)のタンパク質と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質

請求項4

前記硬脆性ゲルを構成する第一のポリマーが、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸とN,N’−メチレンビスアクリルアミド架橋重合体であり、前記第二のポリマーがアクリルアミドとN,N’−メチレンビスアクリルアミドの架橋重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフジツボ類幼生用フェロモントラップ。

請求項5

以下の工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法。(1)フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質、第一のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化して硬脆性ゲルを調製する工程(2)前記硬脆性ゲルを粉砕して微粒子を得る工程(3)前記微粒子、第二のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化する工程

請求項6

前記拡散性着生フェロモンタンパク質は、以下の(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体により産生されるタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生をトラップするものである請求項5に記載のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法。(a)配列番号1、2又は3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド(b)前記(a)のポリヌクレオチドもしくはこれと相補的なポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質をコードするポリヌクレオチド

請求項7

前記拡散性着生フェロモンタンパク質は、以下の(c)又は(d)に記載のタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生をトラップするものである請求項5に記載のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法。(c)配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列により表されるタンパク質(d)前記(c)のタンパク質と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質

請求項8

前記第一のモノマーが2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸であり、前記第二のモノマーがアクリルアミドであり、前記架橋剤がN,N’−メチレンビスアクリルアミドである請求項5〜7のいずれか1項に記載のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、フジツボ類幼生フェロモントラップとその製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、代表的な汚損付着生物であるフジツボ類幼生を、捕捉回収するのに好適なフジツボ類幼生用フェロモントラップとその製造方法に関する。

背景技術

0002

フジツボ類は臨海発電施設冷却水路系における代表的な汚損性付着生物である。冷却水路系に付着したフジツボ類は、冷却水流動抵抗の増加に伴う流量の低下、管の閉塞腐食促進等の問題を引き起こす(非特許文献1及び2を参照)。

0003

フジツボ類の付着を防止するために、塩素等の薬剤注入が多くの発電所で行われている。しかしながら、薬剤の有害性から、放出口で検出されないこと等といった使用量制限があり、十分な効果が得られない場合がある(非特許文献3を参照)。また、亜酸化銅系塗料も薬剤注入と共に広く用いられているが、環境中に残留した成分が生物に悪影響を与える可能性があるとして、国外においては一部で規制動きも出始めている。

0004

ところで、フジツボ類のキプリス幼生の同種認識には,フェロモンが重要な役割を果たしている可能性が指摘されている(非特許文献5及び6を参照)。このフェロモンをフジツボ類幼生に対するフェロモントラップ、即ちフェロモンを誘引源としてフジツボ類幼生を捕獲する装置として応用することができれば、臨海発電所の冷却水路系における付着被害を大幅に低減できる可能性がある。

0005

フジツボ類のキプリス幼生が付着、変態して幼体となる一連過程着生と称されているが、この着生を誘起するフェロモン(着生フェロモン)には岸壁等の基盤上に吸着した状態で幼生の着生を誘起する基盤吸着性のものと、海水中に拡散した状態で効果を発現する拡散性のものの2種類が存在すると考えられている(非特許文献7を参照)。

先行技術

0006

山下司・神谷享子(2006)、発電所とフジツボ.フジツボ類の最新学(日本付着生物学会編、恒星厚生)、pp.209−224.
坂口勇(2003)、発電所の汚損生物対策技術展望、Sessile Organisms 20, 15-19.
電力中央研究所報告V10004
野克和・野方靖行(2006)、フジツボに対する付着阻害物質探索方法および利用検討.フジツボ類の最新学(日本付着生物学会編、恒星社厚生閣)、pp.225−246.
Crisp DJ, Meadows PS (1962) The chemical basis of gregariousness in cirripedes. Proc. R. Soc. Lond. B 156, 500-520.
Crisp DJ, Meadows PS (1963) Adsorbed layers: the stimulus to settlement in barnacles. Proc. R. Soc. Lond. B 158, 364-387.
Clare AS, Matsumura K (2000) Nature and perception of barnacle settlement pheromones. Biofouling 15, 57-71.

発明が解決しようとする課題

0007

海水中に拡散した状態で効果を発現する拡散性の着生フェロモンタンパク質をフェロモントラップに用いることによって、海水中を浮遊するフジツボ幼生広範囲誘引して捕捉することができる極めて有効なフェロモントラップの提供が可能になるものと考えられる。そして、このようなフェロモントラップの実用化に際しては、魚類等からの捕食による破壊が引き起こされることなく海水中で安定に存在できる十分な強度の確保と、拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能とを両立することのできる担体の提供が望まれる。

0008

本発明は、海水中での安定性の保持と魚類等からの捕食による破壊の防止のための十分な強度の確保と、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能とを両立することのできる担体により構成されるフジツボ類幼生用フェロモントラップとその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

かかる課題を解決するため、本願発明者は、10〜60MPaという非常に高い圧縮破断応力を示すことで知られている超高強度親水性ダブルネットワークゲル(Gong JP, Katsuyama Y, Kurokawa T, Osada Y (2003) Double-network hydrogels with extremely high mechanical strength. Adv. Mater. 15, 1155-1158.)に注目し、この親水性ダブルネットワークゲルと本願発明者がタテジマフジツボについて鋭意研究した結果得られた拡散性着生フェロモンタンパク質とにより、フェロモントラップを作製することについて鋭意研究を行った。その結果、親水性ダブルネットワークゲルの製造工程における硬脆性ゲル調製の際に拡散性着生フェロモンタンパク質を添加することで、拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能を親水性ダブルネットワークゲルに付与でき、しかも親水性ダブルネットワークゲルの強度低下も生じないことを知見した。一方で、親水性ダブルネットワークゲルの製造工程における硬脆性ゲル調製の後に拡散性着生フェロモンタンパク質を添加しても、拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能を親水性ダブルネットワークゲルに付与できず、しかも親水性ダブルネットワークゲルの強度低下を引き起こす可能性があることを知見した。本願発明者は、これらに知見に基づいてさらに種々検討を重ね、本発明を完成するに至った。

0010

即ち、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップは、硬脆性ゲル及び軟伸性ゲルの混合相と軟伸性ゲルの単相からなる親水性ダブルネットワークゲルの、少なくとも混合相側にフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含むものとしている。

0011

ここで、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップにおいて、拡散性着生フェロモンタンパク質は、例えば以下の(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体により産生されるタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生トラップするものとすることが好ましい。
(a)配列番号1、2又は3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のポリヌクレオチドもしくはこれと相補的なポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質をコードするポリヌクレオチド

0012

また、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップにおいて、拡散性着生フェロモンタンパク質は、例えば以下の(c)又は(d)に記載のタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生をトラップするものとすることが好ましい。
(c)配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列により表されるタンパク質
(d)前記(c)のタンパク質と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質

0013

さらに、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップにおいて、硬脆性ゲルを構成する第一のポリマーが、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸とN,N’−メチレンビスアクリルアミド架橋重合体であり、第二のポリマーがアクリルアミドとN,N’−メチレンビスアクリルアミドの架橋重合体であることが好ましい。

0014

次に、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を含むようにしている。
(1)フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質、第一のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化して硬脆性ゲルを調製する工程
(2)硬脆性ゲルを粉砕して微粒子を得る工程
(3)微粒子、第二のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化する工程

0015

ここで、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法において、拡散性着生フェロモンタンパク質は、例えば以下の(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体により産生されるタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生をトラップするものとすることが好ましい。
(a)配列番号1、2又は3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のポリヌクレオチドもしくはこれと相補的なポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質をコードするポリヌクレオチド

0016

また、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法において、拡散性着生フェロモンタンパク質は、例えば以下の(c)又は(d)に記載のタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質であり、タテジマフジツボ幼生をトラップするものとすることが好ましい。
(c)配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列により表されるタンパク質
(d)前記(c)のタンパク質と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質

0017

さらに、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法において、第一のモノマーが2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸であり、第二のモノマーがアクリルアミドであり、架橋剤がN,N’−メチレンビスアクリルアミドであることが好ましい。

発明の効果

0018

本発明によれば、親水性ダブルネットワークゲルに、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能を付与することが可能となる。しかも、親水性ダブルネットワークゲルの特徴である強度の高さを、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含ませない場合と同等のレベルで維持することができるので、魚類等からの捕食による破壊が引き起こされることなく海水中で安定に存在することができる。したがって、海水中での実際の利用に極めて好適なフジツボ類幼生のフェロモントラップの提供が可能となる。

図面の簡単な説明

0019

組換え体WSPを含むDNゲルの幼生着生誘起効果の検討結果を示す図である。
組換え体WSPの幼生着生誘起活性を示す図である。
タテジマフジツボ成体から抽出・精製したWSPの幼生着生誘起活性を示す図である。
タテジマフジツボ成体から抽出・精製したWSPを含むアガロースゲルの幼生着生誘起効果の検討結果を示す図である。
解析したcDNA塩基配列と対応するアミノ酸配列を示す図である。
AMPS含量の異なるDNゲルを用いた幼生着生誘起効果の確認試験結果である。

0020

以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。

0021

本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップは、硬脆性ゲル及び軟伸性ゲルの混合相と軟伸性ゲルの単相からなる親水性ダブルネットワークゲル(以下、単にDNゲルと呼ぶこともある)の、少なくとも混合相側にフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含むものとしている。

0022

DNゲルは、相互独立高分子網目構造を有する二種類の高分子ゲルから構成され、硬くて脆いゲル(硬脆性ゲル)と軟らかくて伸びるゲル(軟伸性ゲル)との混合相中に多量の軟伸性ゲルを配置することにより、親水性ゲルとしては驚異的な高強度を有するものである(Gong JP, Katsuyama Y, Kurokawa T, Osada Y (2003) Double-network hydrogels with extremely high mechanical strength. Adv. Mater. 15, 1155-1158.)。

0023

本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップは、以下の工程(1)〜(3)により製造される。
(1)フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質、第一のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化して硬脆性ゲルを調製する工程
(2)硬脆性ゲルを粉砕して微粒子を得る工程
(3)微粒子、第二のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化する工程

0024

DNゲル自体の製造方法は、例えば、特開2008−163055号等に開示されている方法に準拠すればよい。本発明では、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を工程(1)において添加する点に特徴がある。この工程よりも後にフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を添加しても、フェロモントラップに所望の機能を付与できないばかりか、DNゲル自体の強度も低下させてしまうことになる。以下、本発明のフジツボ類幼生用フェロモントラップの製造方法について、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質を用いてタテジマフジツボ幼生用フェロモントラップを製造する場合を例に挙げて説明する。

0025

<工程(1)>
工程(1)では、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質、第一のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化して硬脆性ゲルを調製する

0026

タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質は、以下の(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体を用いて生産することができる。
(a)配列番号1、2又は3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のポリヌクレオチドもしくはこれと相補的なポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質をコードするポリヌクレオチド

0027

このように形質転換体を用いることで、拡散性着生フェロモンタンパク質を、タテジマフジツボ成体から抽出する場合よりも効率よく生産することができる。

0028

形質転換体は、上記(a)又は(b)に記載のポリヌクレオチドをベクターに挿入し、大腸菌酵母昆虫細胞等の宿主中で発現させることにより得られる。そして、得られた形質転換体を培養することにより、目的のタンパク質を培養物蓄積させることで生産することができる。ベクターシステムとしては、例えば、pET系(Invitrogen、Novagen)、pYES系(Invitrogen)、pIZT系(Novagen)、BacVector系(Novagen)、BaculoDirectバキュロウイルス発現系(Invitrogen)などが挙げられ、好適にはpTE100/D−TOPO(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、宿主としては、例えばBL21 Star(DE3)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、別のタンパク質生産方法として、無細胞タンパク質発現系が挙げられる。無細胞タンパク質発現系の例としては、例えば、ラピッドトランスレーションステム(ロッシュ社)等を挙げることができる。

0029

本発明のポリヌクレオチドは例えば以下の様にして得ることが可能である。まず、タテジマフジツボからtotalRNA抽出を行い、これを用いてmRNAを精製した後、市販のキットによりcDNAライブラリ−を構築する。totalRNAの抽出法としては、QuickGene−Mini80およびQuickGene RNA tissue kit SII(FUJIFILM Corporation)を用いた方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。mRNAを精製する方法としては、例えばOligotex−dT30<Super> mRNA Purification kit(TaKaRa Bio)を用いたpoly(A)+RNA精製法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。cDNAライブラリ−の構築は、SMARTRACE cDNA Amplification Kit(クロンテック)等を用いて行うことができるが、これを用いた方法に限定されるものではない。

0030

形質転換体により生産されたタンパク質は、例えば固定化金属イオンアフィニティーカラム及びイオン交換カラムクロマトグラフィーにより分画し、精製するようにしてもよい。

0031

尚、上記(b)に記載の「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドは形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それよりも相同性の低いDNA同士がハイブリダイズしない条件が挙げられる。この条件をより具体的に示すと、例えば「1xSSC、0.1%SDS、37℃」程度、好ましくは「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに好ましくは「0.2xSSC、0.1%SDS、65℃」程度が挙げられる。

0032

上記の形質転換体を用いることで、以下の(c)又は(d)に記載のタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質が得られる。
(c)配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列により表されるタンパク質
(d)前記(c)のタンパク質と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質

0033

詳細には、配列番号1又は2のポリヌクレオチドを含む形質転換体を用いることによって、配列番号4に記載のタンパク質、またはこのタンパク質と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質が得られる。また、配列番号3のポリヌクレオチドを含む形質転換体を用いることによって、配列番号5に記載のタンパク質、またはこのタンパク質と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質が得られる。

0034

さらに詳細には、配列番号5に記載のタンパク質は、配列番号4に記載のタンパク質から、シグナルペプチド(15残基)を除いたものであることから、配列番号5に記載のタンパク質、またはこのタンパク質と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列により表され、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとして機能するタンパク質を用いることが好適であり、このタンパク質を生産する上では、配列番号3のポリヌクレオチドを含む形質転換体を用いることが好適である。但し、シグナルペプチドを含んでいてもタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンとしての機能に相違はなく、配列番号1又は2のポリヌクレオチドを含む形質転換体を用いても構わない。尚、配列番号2に記載の塩基配列は、配列番号4に記載の251残基のアミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)である。

0035

ここで、上記(d)における「70%以上の同一性」とは、配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列に、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/又は付加された状態で、配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列と70%以上の同一性が確保されているという意味である。同一性の範囲は、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。

0036

尚、上記(c)又は(d)に記載のタテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質は、上述した形質転換体を用いる場合よりも生産効率落ちるものの、タテジマフジツボ成体から抽出・精製することもできる。具体的には、タテジマフジツボ成体抽出物をタンパク質濃縮処理した後、カラムクロマトグラフィーを利用してタンパク質精製を行うことで得られる。

0037

タテジマフジツボ成体抽出物は、タテジマフジツボ成体の全組織をTris−HCl緩衝液中でホモジナイズした後、遠心分離により上清を回収することにより得られる。このタテジマフジツボ成体抽出物には、本発明のタンパク質を含む複数のタンパク質が混在している。

0038

タンパク質濃縮は、例えば硫酸アンモニウムを用いた塩析処理により行うことができる。

0039

カラムクロマトグラフィーは、ゲルろ過陰イオン交換クロマトグラフィーハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーの順で行う。陰イオン交換クロマトグラフィーの溶出液にはNaCl溶液を用いればよい。また、ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーの溶出液にはKH2PO4溶液を用いればよい。

0040

ゲルろ過に用いるゲル粒子としては、例えばTOYOPEARL登録商標) HW−55F(Tosoh Corporation)を用いることができるが、これに限定されるものではない。

0041

陰イオン交換クロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えばTOYOPEARL(登録商標) SuperQ−650M(Tosoh Corporation)を用いることができるが、これに限定されるものではない。

0042

ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えばCHT(登録商標) ceramic hydroxyapatiteカラム(type I; 40μm particle size; 10 ×180 mm; Bio−Rad Laboratories)を用いることができるが、これに限定されるものではない。

0043

尚、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質の溶媒への添加量は、特に限定されるものではないが、このタンパク質の海水中の濃度が1.0μg/mL未満の場合には、タテジマフジツボ幼生の着生を十分に誘起できない。したがって、フェロモントラップ周辺海水濃度が1.0μg/mL以上、好ましくは10μg/mL以上となるように、添加量を決定することが好ましい。例えば、10μg/mL〜50μg/mL程度とすることが好ましい。

0044

第一のモノマー分子は、例えば、正又は負に荷電し得る基を有する不飽和モノマー、好適には酸性基(例えば、カルボキシル基リン酸基及びスルホン酸基)や塩基性基(例えば、アミノ基)を有する不飽和モノマーであり、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸メタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられるが、好ましくは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。

0045

架橋剤としては、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられるが、これに限定されるものではない。

0046

溶媒としては、例えば水等が挙げられるが、これに限定されるものではない。

0047

溶媒中の第一のモノマー分子の濃度は、1M(mol/L)程度が好適であるが、この濃度に限定されるものではない。

0048

溶媒中の架橋剤の濃度は、40mM程度が好適であるが、この濃度に限定されるものではない。

0049

ゲル化は、第一のモノマー分子を架橋及び重合することで生じる。第一のモノマー分子を架橋及び重合する方法としては、例えば紫外線照射などが挙げられるが、これに限定されるものではない。

0050

<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた硬脆性ゲルを粉砕して微粒子を得る。ここで、粉砕は凍結乾燥を経てから行うことが好ましい。この場合、微粒子を得やすいものとできる。また、微粒子を多孔質化させて次工程において第二モノマーと架橋剤を含む溶媒を侵入させやすいものとして、微粒子内で第二モノマーの架橋及び重合を進行させやすくできる。

0051

凍結乾燥は、定法にしたがって行えばよい。また、粉砕は、例えば凍結乾燥品乳鉢等に入れてすりつぶすことにより行うことができる。

0052

尚、上述したタテジマフジツボの着生フェロモンタンパク質は、数回の凍結融解、及び90℃で10分間の加熱後においても活性を維持することが本願発明者の実験により確認されている。したがって、このように凍結乾燥工程を経るような場合においても、活性を十分に維持することができるという利点がある。

0053

但し、凍結乾燥を経ることなく、物理的な粉砕処理によって粉砕を行うようにしても構わない。

0054

<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で得られた微粒子、第二のモノマー分子、及び架橋剤を含む溶媒をゲル化する。これにより、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含むDNゲルが得られる。

0055

第二のモノマー分子は、例えば、電気的に中性な基を有する不飽和モノマーであり、具体的には、ジメチルシロキサンスチレン、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−ジメチル−アクリルアミド、ビニルピリジンメチルメタクリレートトリフルオロエチルアクリレート等のフッ素含有不飽和モノマー、ヒドロキシエチルアクリレート又は酢酸ビニル等が挙げられるが、好ましくは、アクリルアミドである。

0056

架橋剤としては、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、工程(1)とは別の架橋剤としてもよいし、同じ架橋剤としてもよい。

0057

溶媒としては、例えば水等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、工程(1)とは別の溶剤としてもよいし、同じ溶剤としてもよい。

0058

溶媒中の第二のモノマー分子の濃度は、4M程度が好適であるが、この濃度に限定されるものではない。

0059

溶媒中の架橋剤の濃度は、40mM程度が好適であるが、この濃度に限定されるものではない。

0060

第二のモノマー分子と架橋剤とを含む溶媒に対する微粒子の添加量は、DNゲルの強度が確保される限り、特に限定されるものではないが、0.1%〜15%(v/w)程度添加するのが好適であり、0.5%〜15%程度添加するのがより好適である。また、強度を最大限に高める上では、1%〜10%とすることが好適であり、1%〜5%とすることがより好適であり、1.5%〜2.5%とすることがさらに好適である。因みに、このように微粒子が少なく、DNゲル全体に対するフェロモン含有量が相対的に低下してしまう場合においても、フェロモントラップとしての活性は十分に維持される。つまり、DNゲルの強度を最大限に高めながらも、フェロモントラップとしての活性は十分に維持することが可能である。

0061

ゲル化は、第二のモノマー分子を架橋及び重合することで生じる。第二のモノマー分子を架橋及び重合する方法としては、例えば紫外線照射などが挙げられるが、これに限定されるものではない。このゲル化の際に、第二のモノマー分子が架橋及び重合することで形成される分子鎖が微粒子中の架橋網目構造(第一のモノマー分子を架橋及び重合することで得られる第一のポリマーにより構成される架橋網目構造)に侵入する。これにより、硬脆性ゲル及び軟伸性ゲルの混合相と軟伸性ゲルの単相からなるDNゲルが形成される。

0062

フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質は、工程(1)で添加するようにしているので、少なくともDNゲルの混合相に含まれることになり、単相には実質的には殆ど含まれないことになる。

0063

以上の工程により得られたDNゲルは、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質を安定に保持しながらも拡散させることができる機能が付与されている。しかもDNゲルの特徴である強度の高さを、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質を含ませない場合と同等のレベルで維持することができるので、魚類等からの捕食による破壊が引き起こされることなく海水中で安定に存在することができる。したがって、海水中での実際の利用に極めて好適なフジツボ類幼生のフェロモントラップの提供が可能となる。

0064

上記DNゲルは、フジツボ幼生を捕捉するための海洋中の所望の位置に配置してフェロモントラップとして用いるようにしてもよいし、フジツボ幼生を付着させるための基体や網などに配置して、これを海洋中に沈め、フェロモントラップとして用いるようにしてもよい。

0065

上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、タテジマフジツボの拡散性着生フェロモンタンパク質を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、他のフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を用いるようにしてもよい。また、フジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質は、フジツボ成体試料等から抽出したもの、形質転換体により産生されたもの、活性部位を見出してフェロモン活性を有するオリゴペプチドのような形で化学的に合成されたもの等を単独であるいは組み合わせてもちいてもよい。

0066

また、DNゲルには、一種類のフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質だけでなく、二種類以上のフジツボ類の拡散性着生フェロモンタンパク質を含ませて、複数種のフジツボ類を同時に誘引するフェロモントラップとしてもよい。

0067

以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。

0068

尚、以降の説明では、拡散性着生フェロモンタンパク質をWSP(Waterborne Settlement Pheromone)と略記する。

0069

[実施例1]
<1.フジツボ試料>
本実施例において使用したフジツボ成体は、(静岡県)の牡蠣養殖場で用いられている竹筒に付着していたタテジマフジツボ成体であり、当該竹筒に付着していたタテジマフジツボ以外の他種生物を取り除いた後に濾過海水(0.2μmフィルター濾過)で洗浄し、電力中央研究所環境科学研究所実験室内の水槽に収容して、文献1(野方靖行等 (2011)、 日本沿岸産フジツボ4種の幼生付着に与える塩分の影響、Sessile Organisms 28, 47-54.)の方法に従って飼育したものである。

0070

また、本実施例において使用したフジツボ幼生は、上記タテジマフジツボ成体から孵化したノープリウス幼生を文献2(吉えり奈等(2006)、フジツボ幼生の簡便な飼育方法について、Sessile Organisms 23, 39-42.)の方法に従って飼育、変態させたものである。

0071

<2.組換え体によるWSP生産>
(1)組換え体の作製
発現産物抽出精製およびスケールアップが比較的容易である大腸菌とプラスミドベクターを用いた系を採用し、Champion pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits with pTE100/D-TOPO(登録商標) vector (Invitrogen Corporation)を用いて発現系を構築した。WSPは6×His-tag融合タンパク質として発現させた。

0072

鋳型として用いるfirst strandcDNAは、以下の方法により合成した。タテジマフジツボ生体軟組織からQuickGene-Mini80およびQuickGene RNA tissue kit SII (FUJIFILM Corporation)を用いてtotal RNAを抽出した. 得られたtotal RNAからOligotex-dT30mRNAPurification kit (TaKaRa Bio Inc.) を用いてpoly (A)+ RNAを精製し、SMARTRACE cDNA Amplification Kit (Clontech Laboratories Inc.) を用いてfirst strand cDNAを合成した。

0073

合成したfirst strandcDNAを鋳型とし、EMBL/Genbank/DDBJデータベースに登録されているタテジマフジツボのWSPのcDNA塩基配列情報(AB695090)に基づいて設計された拡散性フェロモンcDNAの全ORF(配列番号3)を増幅させるプライマーセット(配列番号6及び7)とKOD-Plus-DNA Polymerase (TOYOBO Corporation, Ltd.)を用いて増幅を行った。尚、配列番号6の5’末端から4bpまでの塩基は、pTE100/D-TOPO vector挿入のためのオーバーハングである。増幅は、「94℃、2分間」を1サイクル、「94℃、15秒間」→「55℃、30秒間」→「68℃、4.5分間」を30サイクルの条件で行った。

0074

増幅されたDNA断片は、2%アガロースゲル電気泳動に供した後、SYBR Safe(Invitrogen Corporation)により染色し、DNAバンド可視化した。DNA断片をQIAquick(登録商標) Gel Extraction Kit (Qiagen)を用いて精製し、pET100/D-TOPO(登録商標) vectorおよびOne Shot(登録商標) TOP10 Chemically Competent E. coli (Invitrogen Corporation)を用いてサブクローニングした。

0075

次に、Miniprep DNA Purification Kit (TaKaRa Bio Inc)を用いてプラスミドを精製し、発現用大腸菌BL21 Star (DE3) One Shot(登録商標) Chemically Competent E. coli (Invitrogen Corporation)に形質転換した。形質転換後の大腸菌を100μg/mLのアンピシリンを含む1リットルのLuria-Bertani培地でOD600nm=0.5に達するまで37℃で振とう培養した。その後、培養液に0.5mMのイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を添加し、37℃で4時間発現誘導を行った。

0076

(2)組換え体により生産されたWSPの精製
発現誘導を行った大腸菌を遠心分離(5,000×g、4℃、10分間)により集め、菌体ペレットにCelLytic B (Sigma-Aldrich)を加え15分間激しく攪拌することで完全に溶菌させた。遠心分離(21,000×g、4℃、15分間)により不溶物を除去し、上清を限外濾過(Amicon Ultra(登録商標)-15, 10kDa cutoff; Millipore Corporation)により濃縮した。次に0.5MNaClを含む20mMリン酸ナトリウム(pH 7.4) (以下、buffer Dと呼ぶ)に対して透析を行った後、同緩衝液平衡化したNi Sepharose High Performanceカラム(16×110mm; GE Healthcare)に添加した。非吸着部をbuffer Dを用いて流速2mL/分で洗浄後、吸着部をbuffer D中のイミダゾールの直線濃度勾配(0−20mM)により溶出させた。タンパク質の溶出を280nmにおける吸光度モニターし、得られたタンパク質画分の幼生着生誘起活性をそれぞれ測定した。

0077

尚、幼生着生誘起活性は、24−ウェルポリスチレンプレートを用いた試験により測定した。試料(0,0.1,1.0および10μg)とキプリス幼生(2日齢)約10個体を純水で80%に希釈した濾過海水(80%濾過海水、総量1mL)と共にウェル中に収容し、暗条件、25℃で3時間静置した。静置後、幼生の総数付着数および死亡数実体顕微鏡下でカウントし、付着率{付着数/(総数−死亡数)}を算出した。試験はフェロモンの各濃度につき3ウェルを用い、異なる幼生バッチを使用して3回繰り返した。測定結果はSteel−Dwassの多重比較による検定を行い、危険率5%における有意差を判定した。

0078

活性の認められた画分を限外濾過で濃縮後、50mM Tris-HCl(pH 7.5)(以下、buffer Aと呼ぶ)に対して透析を行い、同緩衝液で平衡化したTOYOPEARL(登録商標) Super Q-650Sカラム(20×100mm; Tosoh Corporation)に添加した。非吸着部をbuffer Aを用いて流速2mL/分で洗浄した後、吸着部をbuffer A中のNaClの直線濃度勾配(0−500mM)により溶出させた。

0079

そして、得られたタンパク質画分の幼生着生誘起活性を測定し、活性を示した画分をWSPとして得た。以降の説明では、このWSPを「精製組換え体WSP」と呼ぶこととする。

0080

以上の手順により、培養液1リットル(菌体ペレット湿重量約14g)当たり3.01mgの精製組換え体WSPを得た。

0081

また、SDS−PAGEから推定された分子量は28,100±400であり、配列番号5に記載のアミノ酸配列(配列番号4に記載のアミノ酸配列からシグナルペプチドを除いたもの)から算出された分子量である27,140.4とほぼ一致することも明らかとなった。また、配列番号5に記載のアミノ酸配列の理論的pIは6.39であった。

0082

さらに、24−ウェルポリスチレンプレートを用いた幼生着生誘起活性測定を行った結果、精製した組換え体WSPは1.0μg/mL以上で幼生の付着率を有意に上昇させ、10μg/mL添加した場合の付着率は無添加時3倍程度まで上昇した(図2)。

0083

<3.WSP含有ダブルネットワーク(DN)ゲルの作製>
(1)製法
水を溶媒として、35μg/mLの精製組換え体WSPを含む1M 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)/40mM N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)の水溶液を調製し、この水溶液を2枚のガラス板に3mmのシリコンスペーサーを挟み込むことにより形成された空間に流し込んだ。そして、紫外線照射下で一晩重合させ、精製組換え体WSPを含むPAMPS(Poly−AMPS)ゲルを得た。

0084

精製組換え体WSPを含むPAMPSゲルを細断した後、凍結乾燥させてからさらに微粉末状に粉砕した。

0085

次に、水を溶媒として、4Mアクリルアミド(AAm)/40mM MBAAmの水溶液を調製し、上記で得られたゲル粉末を15%(v/w)添加した。これを2枚のガラス板に0.5mmのシリコンスペーサーを挟み込むことにより形成された空間に流し込んだ。そして、紫外線照射により一晩重合させ、精製組換え体WSP含有DNゲルを得た。

0086

精製組換え体WSP含有DNゲルをbuffer Aと共に透析膜に収容し、buffer Aに対して室温で2日間透析することで未重合モノマーを除去した。未重合モノマー除去後の精製組換え体WSP含有DNゲルをWSPゲルAとして以下の実験に用いた。

0087

また、同様の手法で、35μg/mLの精製組換え体WSPの代わりに、35μg/mLのウシ血清アルブミンBSA)を使用してゲルを作製し、これをBSAゲルAとして以下の実験に用いた。

0088

(2)製法2
水を溶媒として、1MAMPS/40mM MBAAmの水溶液を調製し、製法1と同様の手法で重合粉砕することで、PAMPSゲル粉末を得た。

0089

次に、水を溶媒として、35μg/mLの精製組換え体WSPを含む4M AAm/40mM MBAAmの水溶液を調製し、上記で得られたゲル粉末を15%(v/w)添加した。これを製法1と同様の手法で重合させ、未重合モノマーを除去し、WSPゲルBとして後述する実験に用いた。

0090

また、同様の手法で、35μg/mLの精製組換え体WSPの代わりに、35μg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を使用してゲルを作製し、これをBSAゲルBとして後述する実験に用いた。

0091

(3)幼生着生誘起効果の検討
ガラス製シャーレ(φ120mm)にゲル(1.5cm×1.5cm)を2枚を重ねて一箇所に設置し、100mLの80%濾過海水と共にキプリス幼生約100個体を収容した。.暗条件、25℃で48時間静置した後、幼生の総数、付着数および死亡数を実体顕微鏡下でカウントし、総付着率{総付着数/(総数−死亡数)}を算出した。また、ゲルを設置したシャーレの領域(シャーレ1/3領域,図1(b)を参照)をゲル周辺とし、ゲル周辺への付着率{(ゲル周辺への付着数+ゲルへの付着数)/総付着数}を算出した

0092

試験は、5種類のゲル(WSPゲルA、WSPゲルB、BSAゲルA、BSAゲルB、及びコントロールゲル)それぞれについて行い、異なる幼生バッチを使用して3−6回繰り返した。またゲルを用いない試験についても同様の方法で行い、比較対照とした。

0093

尚、コントロールゲルとは、WSPやBSA等のタンパク質を添加せずに、製法1(または製法2)と同様の手法で作製されたゲルである。

0094

実験結果を図1及び表1に示す。

0095

0096

図1中、(a)がゲルを使用せずに試験した結果であり、(b)がコントロールゲルを使用して試験した結果であり、(c)がBSAゲルAを使用して試験した結果であり、(d)がWSPゲルAを使用して試験した結果であり、(e)がBSAゲルBを使用して試験した結果であり、(f)がWSPゲルBを使用して試験した結果である。

0097

各種試験における幼生の死亡率は何れも1%以下であった。また、ゲルを設置しない試験とコントロールゲルを用いた試験の幼生の総付着率はそれぞれ約13%および16%であり、DNゲルを設置したことによる変化は認められなかった。

0098

ゲルを用いない試験およびWSPゲルA以外のゲルを用いた試験のゲル周辺への付着率は、何れも40%以下であった。 一方、WSPゲルAを用いた試験の幼生の総付着率は他の試験区よりも有意に高く、約60%であった。また、WSPゲルAを用いた試験におけるゲル周辺への付着率は最も高く、総付着個体の約80%が密集して付着している様子が確認された。

0099

以上の結果から、製法1で作製したWSP含有DNゲルを用いることで、フェロモントラップとして優れた効果が発揮されることが明らかとなった。

0100

尚、WSPゲルA及びBSAゲルAの強度は、コントロールゲルの強度と同等であり、タンパク質を含有することによる強度低下は認められなかった。一方で、WSPゲルB及びBSAゲルBは、コントロールゲル、WSPゲルA及びBSAゲルAと比較して脆い傾向にあり、試験終了後にシャーレ中に千切れたゲル破片がしばしば観察された。この点からも、製法1で作製したWSP含有DNゲルを用いることの優位性が示された。

0101

<4.フジツボ成体からのWSPの抽出及び精製>
(1)抽出及び精製
WSPの抽出及び精製の全行程は0−4℃で行った。タテジマフジツボ成体を竹筒からはがし取り、全組織(200g wet wt)をブレンダーで細断した。2倍量(v/w)のbuffer Aを加えホモジナイズし、遠心分離(10,000×g、4℃、30分間)を行った。遠心分離後の上清に粉末硫安を用いて0−70%飽和硫安分画し、遠心分離(10,000×g、4℃、30分間)により得られた沈殿を0.2M NaClを含むbuffer A (以下、buffer Bと呼ぶ)に再溶解した。得られた粗抽出液をbuffer Bで平衡化したTOYOPEARL(登録商標) HW-55Fカラム(15×940mm;Tosoh Corporation)に添加し、流速1mL/分で溶出した。タンパク質の溶出を280nmにおける吸光度でモニターし、得られたタンパク質画分の幼生着生誘起活性をそれぞれ測定した。幼生着生誘起活性の測定は、<2.組換え体WSP生産>の欄で説明した通りとした。

0102

比較的高い活性を示した画分をSDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法)に供し、SIPC(Settlement Inducing Protein Complex)とは異なる分子であることを確認した。SDS-PAGEは、Bio-Rad Laboratories製プレキャストゲル(Mini-PROTEAN(登録商標) TGX、4−20%グラジエントゲル)を用い、Laemmliの方法(Laemmli UK (1970) Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature 227, 680-685.)に従って行った。泳動後のゲルはクーマシーブリリアントブルー(CBB R-250)染色, または銀染色(Silver StainII Kit, Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)によりタンパク質バンドを可視化した。

0103

次に、限外濾過(Amicon Ultra(登録商標)-15, 10kDa cutoff; Millipore Corporation)により濃縮した。濃縮されたタンパク質溶液をbuffer Aに対して透析し、脱塩した後、同緩衝液で平衡化したTOYOPEARL(登録商標) Super Q-650Sカラム(20×100mm; Tosoh Corporation)に添加した。非吸着部を流速2mL/分で洗浄後、吸着部をbuffer A中のNaClの直線濃度勾配(0−400mM、2mL/分)により溶出させた。活性を示したタンパク質画分を限外濾過で濃縮後、5mMリン酸カリウム(pH 6.8) (以下、buffer Cと呼ぶ)に対して透析を行った。次に、同緩衝液で平衡化したCHT(登録商標) ceramic hydroxyapatiteカラム(type I; 40μm particle size; 10×180mm;Bio-Rad Laboratories)に添加した。非吸着部を流速1mL/分で洗浄後、吸着部をbuffer Cのリン酸カリウムの直線濃度勾配(5−400mM、1mL/分)により溶出させた。活性を示したタンパク質画分を集め、フジツボ成体から抽出した精製WSPを得た。

0104

以上の手順により、タテジマフジツボ成体全組織200gから1.2mgの精製WSPを得た。尚、SDS−PAGEによる分析から、この精製WSPの分子量は31,600±500と推定された。

0105

また、TSKG3000SWカラム(21.5×300mm; Tosoh Corporation) を利用して、以下の手順により、精製WSPの非還元条件下での分子量の推定を行った。0.2M NaClを含む20mMリン酸カリウム(pH 7.2) を緩衝液に用い、流速は0.2mL/分とした。標準タンパク質には心筋チトクロームc (12,400 Da)、酵母ミオキナーゼ(32,000 Da)、酵母エノラーゼ(67,000 Da)、心筋乳酸脱水素酵素(142,000 Da)および酵母グルタミン酸脱水素酵素(290,000 Da)を用いた(Oriental Yeast Corporation, Ltd)。その結果、非還元条件下での分子量は、41,800±900と推定された。以上の結果から、WPSは単量体であると考えられた。

0106

さらに、24−ウェルポリスチレンプレートを用いた幼生着生誘起活性測定結果から、WSPを1.0μg/mL以上添加することで、幼生の付着率は有意に上昇し、10μg/mL添加した場合の付着率はWSP無添加時の4倍程度まで上昇した(図3)。以上の結果から、タテジマフジツボ成体から得られたWSPは上記組換え体から得られたWSPと同等の活性を有することが明らかとなった。

0107

また、3種類のレクチン(レンズマメレクチン,小麦胚芽レクチンおよびコンカナバリンA)による活性阻害について検討した結果、活性阻害は認められなかった。このことから、WSPは糖鎖修飾を受けていないか、または幼生着生誘起活性発現糖鎖関与していない可能性が示唆された。

0108

(2)幼生着生誘起活性の検討
(2−1)実験方法
WSPの海水中への拡散および幼生着生誘起効果を、アガロースゲルを用いた試験により検証した。精製WSPを10μg添加した80%濾過海水(最終液量1mL)を、1%アガロースにより固化させた。これをWSPを含まない1%アガロースゲル2個と共にガラス製シャーレ(φ120mm)に等間隔で固定した。シャーレに100mLの80%濾過海水と共にキプリス幼生約50個体を収容し、暗条件、25℃で24時間静置した。静置後、幼生の総数、総付着数、死亡数を実体顕微鏡下でカウントし、総付着率{総付着数/(総数−死亡数)}を算出した。次に、シャーレを各アガロースゲルの周囲3領域に120°角で等分割し、WSPを含むアガロースゲル周辺への付着率{(WSPを含むアガロースゲル周辺への付着数+WSPを含むアガロースゲルへの付着数)/総付着数}を算出した。WSPを含まない1%アガロースゲル3個を用いた試験(コントロール試験)も同時に行い、異なる幼生バッチを使用してそれぞれ3回繰り返した。試験結果はSteel-Dwassの多重比較による検定を行い、危険率5%における有意差を判定した。

0109

(2−2)実験結果
実験結果を表2及び図4に示す。

0110

0111

コントロール試験の総付着率は何れも30%程度であり、また特定の箇所に密集する傾向は認められなかった。一方、精製WSPを含むアガロースゲルを設置した試験の幼生の総付着率は何れも60%以上であり、また付着した幼生の約85%が精製WSPを含むアガロースゲル周辺に付着していた。以上の結果から、精製WSPがアガロースゲルから海水中に徐々に拡散し、アガロースゲル周囲への幼生の着生を誘起したことが示唆された。したがって、フジツボ成体から抽出したWSPを用いて、<3.WSP含有ダブルネットワーク(DN)ゲルの作製>の(1)製法1と同様の手法でDNゲルを作製した場合にも、組換え体WSPを用いた場合と同様の効果が奏され得るものと考えられた。

0112

<5.フジツボ成体から抽出・精製されたWSPの遺伝子的解析>
(1)解析方法
精製WSPをジチオトレイトールおよびモノヨード酢酸を用いて還元S−カルボキシメチル化し(文献3:Crestfield AM, Moore S, Stein WH (1963) The preparation and enzymatic hydrolysis of reduced and S-carboxymethylated proteins. J. Biol. Chem. 238, 622-627.)、酵素基質モル比が1/100になるようにリシルエンドペプチダーゼ(Achromobacter proteinase I)を加え、37℃、15時間消化した。その後、TSKgelODS-120Tカラム(4.6×250mm;Tosoh Corporation)を用いた逆相HPLCに供し、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの直線濃度勾配(10−80%、1mL/分)により溶出した。逆相HPLCからのペプチドの溶出を215nmの吸光度でモニターし、ペプチドを手動分取した。得られた各ペプチドを文献4(Hirano H, Watanabe T (1990) Microsequencing of proteins electrotransferred onto immobilizing matrices from polyacrylamide gel electrophoresis: application to an insoluble protein. Electrophoresis 11, 573-580.)の方法に従ってpolyvinylidene fluoride(PVDF)膜にブロットし、PPSQ-21A automated gas-phase protein/peptide sequencer(Shimadzu Corporation)を用いてアミノ酸配列を解析した。また未消化の還元S−カルボキシメチル化WSPをPPSQ-21A automated gas-phase protein/peptide sequencerに供し、N末端アミノ酸配列を解析した。これにより得られた部分アミノ酸配列を基に、縮重プライマーを設計した。縮重プライマーの塩基配列を配列番号8及び9に示す。

0113

次に、タテジマフジツボ生体軟組織からQuickGene-Mini80およびQuickGene RNA tissue kit SII(FUJIFILM Corporation)を用いてtotal RNAを抽出した。得られたtotal RNAからOligotex-dT30mRNAPurification kit(TaKaRa Bio Inc.)を用いてpoly(A)+ RNAを精製し、SMARTRACEcDNAAmplification Kit(Clontech Laboratories Inc.)を用いてfirst strand cDNAを合成した。得られたfirst strand cDNAを鋳型とし、設計した縮重プライマーおよびAdvantage(登録商標) 2PCRKit(Clontech Laboratories,Inc.)を用いたreverse transcription polymerase chain reactionを行った。反応にはTaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(登録商標) T600(TaKaRa Bio Inc.)を用い、「95℃、1分間」を1サイクル、「95℃、30秒間」→「55℃、30秒間」→「68℃、30秒間」を35サイクル繰り返した後、「68℃、3分間」を1サイクルの条件で行った。

0114

増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動に供した後、SYBR Safe(Invitrogen Corporation)により染色し、DNAバンドを可視化した。DNA断片をQIAquick(登録商標) Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いて精製し、pCR(登録商標)2.1-TOPO(登録商標) vectorおよびOne Shot(登録商標) TOP10 Chemically Competent Escherichia coli (Invitrogen Corporation)を用いてサブクローニングした。Miniprep DNA Purification Kit(TaKaRa Bio Inc)を用いてプラスミドを精製し、プラスミドに挿入されたDNA断片の塩基配列をM13 forward (-20)、M13 reverseプライマー、BigDye terminator cycle sequencing kit ver.3.1(Applied Biosystems)およびABIPrism(登録商標) 3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて解析した。

0115

cDNAの3’−および5’末端の解析には、RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法を用いた。上記で得られた部分cDNA塩基配列を基に3’−および5’−RACE法に用いるプライマーを設計し(配列番号10及び11を参照)、SMARTRACE cDNA Amplification Kitを用いてcDNAの3’−および5’−末端の増幅を行った。増幅産物はRT−PCRと同様の方法でサブクローニングおよび塩基配列解析を行い、拡散性フェロモンの全cDNA塩基配列を解析した。

0116

尚、表3に、本実施例で使用したプライマーを示しておく。

0117

0118

(2)解析結果
解析したcDNA塩基配列(配列番号1)と対応するアミノ酸配列(配列番号3)を図5に示す。クローニングしたcDNAは907bp(配列番号1)からなり、251残基のアミノ酸(配列番号4)をコードする753bp(配列番号2)のオープンリーディングフレーム(ORF)を含んでいた。cDNAから推定されたアミノ酸配列には、解析した部分アミノ酸配列が全て含まれていた。またSignalP 4.0 Server(Petersen TN, Brunak S, von Heijne G, Nielsen H (2011) SignalP 4.0: discriminating signal peptides from transmembrane regions. Nat. Methods8, 785-786., 573-580.)を用いた解析の結果から、このアミノ酸配列はN末端に15残基のシグナルペプチドを有する分泌タンパク質と推測された。この結果に従いシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列のN末端は、タテジマフジツボ成体から抽出・精製したWSPのN末端と一致した。以上の結果から、クローニングしたcDNAはWSPをコードしているものと判断された。また、シグナルペプチドを除いた236残基のタンパク質(配列番号5)の分子量は27,140.4と算出された。

0119

[実施例2]
実施例1の<3.WSP含有ダブルネットワーク(DN)ゲルの作製>の「(1)製法1」と同様の方法で、ゲル粉末(PAMPSゲル)の添加量を、0.5%、1.5%、2.5%(v/w)として、精製組換え体WSP含有DNゲルを作製した。作製したDNゲルを用いて、実施例1の<3.WSP含有ダブルネットワーク(DN)ゲルの作製>の「(3)幼生着生誘起効果の検討」と同様の方法で、実験を行った。

0120

実験結果を図6及び表4に示す。

0121

0122

図6中、(a)はDNゲル無しで実験した結果であり、(b)はPAMPSゲル粉末含量0.5%の精製組換え体WSP含有DNゲルを用いた実験結果であり、(c)はPAMPSゲル粉末含量1.5%の精製組換え体WSP含有DNゲルを用いた実験結果であり、(d)はPAMPSゲル粉末含量2.5%の精製組換え体WSP含有DNゲルを用いた実験結果である。

0123

精製組換え体WSP含有DNゲルを用いた場合には、ゲル周辺への付着率が70%〜90%と極めて高いものとなることが確認された。実施例1におけるPAMPSゲル粉末含量15%の精製組換え体WSP含有DNゲルと比較すると、実施例2における精製組換え体WSP含有DNゲルは、PAMPS含量を減らした結果としてDNゲル全体における精製組換え体WSP含量が低下していることになるが、本実施例における結果から、このような場合にもいても、フェロモントラップとして優れた効果が発揮されることが明らかとなった。また、特にPAMPS含量を1.5%、2.5%とすることは、DNゲル自体の強度(硬さの確保と脆弱性の解消)の面で極めて有利であることもわかった。

実施例

0124

以上、実施例2の実験結果から、DNゲル自体の強度を高めやすいPAMPS含量においても、フェロモントラップとしての優れた効果が十分に発揮されることが明らかとなった。

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