図面 (/)

技術 熱電変換材料及び熱電変換素子並びに熱電変換モジュール

出願人 株式会社日立製作所
発明者 籔内真岡本政邦早川純黒崎洋輔西出聡悟
出願日 2012年4月10日 (8年7ヶ月経過) 出願番号 2012-089104
公開日 2013年10月24日 (7年1ヶ月経過) 公開番号 2013-219218
状態 未査定
技術分野 熱電素子
主要キーワード d軌道 リング状パターン 試料両端 占有数 エネルギー総量 キャリアタイプ 価電子数 カスケード型
関連する未来課題
重要な関連分野

NEWこの技術のポテンシャルをビッグデータで簡単査定!

特許:約8,000万件, クラウドファンディング:約100万年件, 科研費・グラントデータ:約500万件, 発明者・研究者情報:約600万人

この項目の情報は公開日時点(2013年10月24日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (14)

課題

環境負荷低コストを実現可能で、高効率なp型熱電変換材料を提供する。

解決手段

FeおよびSを主成分とすることにより、自然界に多く存在する原材料熱電変換素子構築することができる。また、パイライト構造のFeS2はFe由来d軌道価電子帯に有し、高い状態密度を有するため、この材料系に添加元素を加えることによりp型半導体特性を発現させ熱電変換素子として高い性能を実現する。

概要

背景

近年、環境・エネルギー問題資源枯渇背景に、化石燃料に依存せず、温室効果ガスの発生を伴わない、太陽光風力地熱等の自然エネルギーの積極的活用が望まれている。環境負荷が低い太陽光発電風力発電などの普及が行われる中、熱エネルギーの有効利用も注目されている。実際、身近に存在するゴミ焼却所、地下鉄変電所において排出されている熱エネルギーは膨大な量である。ゴミ焼却場などにおいて排出される排熱は300〜600℃と高く、地下鉄や変電所における排熱は40〜80℃と低い。比較的低い(200℃以下の)排熱のエネルギー総量は膨大であるが、有効なエネルギー回収技術は確立されていない。排熱のエネルギー利用方法の一つとして、古くから知られる熱電変換素子が存在する。熱電変換では、駆動部がなく温度差から電気直接発生させるため、火力原子力の熱から水蒸気を発生しタービンを回し発電する方法より損失が少ない。さらに、老廃物を発生しないため環境にもやさしい。また、熱電変換素子の両端に電圧をかけると温度差が発生し、この熱電変換のゼーベック効果は1821年に発見されていたが、変換効率が低いことが問題であった。現在、200℃以下の温度で比較的効率の良い熱電変換材料としてBi2Te3が実用化されている。また、Bi−Teの様に室温近傍で変換効率の良い熱電変換材料はペルチェ素子として、冷却素子としても使うことが可能であり、冷媒を用いない環境負荷の少ない冷却装置利用可能である。

このような熱電変換材料の性能は無次元性能指数(ZT)で評価される。

ここで、σは電気伝導率、Sはゼーベック係数κ熱伝導率、Tは温度である。Z自体の単位は(K−1)である。図6に熱電変換効率と温度との関係を示す。カルノー効率は、理論上の上限の効率である。一般に、ZTが高いものほど性能が良いため、式(1)より、ゼーベック係数および電気伝導率が高く、熱伝導率の低い材料が熱電変換材料として望ましい。Bi−Te系材料はp型としてもn型としても性能指数ZT>1と変換効率が高いが、BiおよびTeはともに高価であり、Teは極めて毒性が強いため、大量生産低コスト化環境負荷低減のために、Bi2Te3に代わる高効率熱電変換材料が求められている。

環境低負荷である材料系として、フルホイスラー合金Fe2VAlを基本とした熱電変換材料が特許文献1に報告されている。これは、Fe、V、Alなど環境低負荷でかつ比較的低コスト元素によって構成されており、Bi−Te系材料のように有毒レアメタルを使用しないため、産業応用上価値のある材料系である。しかしながら、200℃以下の温度領域において、Bi−Te系を超える熱電変換特性には至っておらず、今後より一層の研究開発が必要となる。

また、優れた変換効率を持つ熱電材料として、特にTiを含むCdI2型層状構造を有する材料が特許文献2に報告されている。特許文献2は、TiS2の結晶構造と同様の構造であり、室温近傍温度領域でも高い熱電変換効率を示す材料が示されているが、いずれもn型の結果であり、p型で効率の良い材料系は示されていない。従って、低環境負荷および低コストで、p型を示す熱電変換効率の高い材料系が求められている。

また、低環境負荷で低コスト化の可能性のある熱電変換材料としてFeやNiなどの遷移金属硫化物非特許文献1で報告されている。しかしながら、非特許文献1では、遷移金属硫化物へのドーピング元素種および濃度の依存性キャリア密度の制御が行われていないため、高い熱電変換特性を発現させるために、より最適なドーピング元素の選択とキャリア密度の制御が必要である。

概要

低環境負荷で低コストを実現可能で、高効率なp型熱電変換材料を提供する。FeおよびSを主成分とすることにより、自然界に多く存在する原材料で熱電変換素子を構築することができる。また、パイライト構造のFeS2はFe由来d軌道価電子帯に有し、高い状態密度を有するため、この材料系に添加元素を加えることによりp型半導体特性を発現させ熱電変換素子として高い性能を実現する。

目的

近年、環境・エネルギー問題や資源枯渇を背景に、化石燃料に依存せず、温室効果ガスの発生を伴わない、太陽光や風力、地熱等の自然エネルギーの積極的活用が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

パイライト構造を有し、組成がFe1−xMxS2−yTyで表わされ、元素MはV、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれる少なくとも一種類の元素であり、元素TはB、C、Al、Si、Ge、Sn、N、O、P、Biから選ばれる少なくとも1種類の元素であり、各元素の合計の組成の値であるxおよびyがそれぞれ0<x<0.5、0<y<1の範囲であり、導電型がp型であることを特徴とする熱電変換材料

請求項2

請求項1記載の熱電変換材料において、前記熱電変換材料の主成分が前記Fe1−xMxS2−yTyであり、前記Fe1−xMxS2−yTyの主成分はFeおよびSであることを特徴とする熱電変換材料。

請求項3

請求項1記載の熱電変換材料において、組成が前記Fe1−xMxS2−yTyで表わされる材料のキャリア密度が1×1018〜1×1022cm−3の範囲であることを特徴とする熱電変換材料。

請求項4

請求項1記載の熱電変換材料において、前記熱電変換材料は、室温以上、700℃以下の温度で使用されるものであることを特徴とする熱電変換材料。

請求項5

熱電変換材料層と、前記熱電変換材料層を挟んで設けられた第1上部電極及び第1下部電極とを有する熱電変換素子において、前記熱電変換材料層は、組成がFeS2で表わされるパイライト構造を有し、FeとSの少なくとも一部が添加元素により置換されたp型の材料層であることを特徴とする熱電変換素子。

請求項6

請求項5記載の熱電変換素子において、前記FeとSの少なくとも一部が添加元素により置換されたp型の材料層の材料の組成はFe1−xMxS2−yTyで表わされ、添加元素MはV、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれる少なくとも一種類の元素であり、添加元素TはB、C、N、O、Al、Si、P、Ge、Sn、Biから選ばれる少なくとも1種類の元素であり、各元素の合計の組成の値であるxおよびyがそれぞれ0<x<0.5、0<y<1の範囲であることを特徴とする熱電変換素子。

請求項7

請求項5記載の熱電変換素子において、前記熱電変換材料層に隣接して設けられ、前記熱電変換材料層とは導電型が異なる他の熱電変換材料層と、前記他の熱電変換材料層を挟んで設けられた第2上部電極及び第2下部電極とを有し、前記第1上部電極と前記第2上部電極とは電気的に接続されていることを特徴とする熱電変換素子。

請求項8

複数の型の熱電変換素子を備えた熱電変換モジュールにおいて、複数の前記熱電変換素子のうちのp型の熱電変換素子は、請求項1記載の熱電変換材料を用いて形成されたものであることを特徴とする熱電変換モジュール。

請求項9

絶縁性基板上に離間して複数配列され、互いに隣接するp型熱電変換材料層とn型熱電変換材料層とが直列接続された熱電変換モジュールにおいて、前記p型熱電変換材料層は、組成がFeS2で表わされるパイライト構造を有し、FeとSの少なくとも一部が添加元素により置換されたp型の材料層であることを特徴とする熱電変換モジュール。

請求項10

請求項9記載の熱電変換モジュールにおいて、前記FeとSの少なくとも一部が添加元素により置換されたp型の材料層の材料の組成はFe1−xMxS2−yTyで表わされ、添加元素MはV、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれる少なくとも一種類の元素であり、添加元素TはB、C、N、O、Al、Si、P、Ge、Sn、Biから選ばれる少なくとも1種類の元素であり、各元素の合計の組成の値であるxおよびyがそれぞれ0<x<0.5、0<y<1の範囲であることを特徴とする熱電変換モジュール。

請求項11

請求項9記載の熱電変換モジュールにおいて、前記直列接続された前記p型熱電変換材料層と前記n型熱電変換材料層とが配列された前記絶縁性基板が積層されていることを特徴とする熱電変換モジュール。

技術分野

0001

本発明は、熱電変換材料及び熱電変換素子並びに熱電変換モジュールに関する。

背景技術

0002

近年、環境・エネルギー問題資源枯渇背景に、化石燃料に依存せず、温室効果ガスの発生を伴わない、太陽光風力地熱等の自然エネルギーの積極的活用が望まれている。環境負荷が低い太陽光発電風力発電などの普及が行われる中、熱エネルギーの有効利用も注目されている。実際、身近に存在するゴミ焼却所、地下鉄変電所において排出されている熱エネルギーは膨大な量である。ゴミ焼却場などにおいて排出される排熱は300〜600℃と高く、地下鉄や変電所における排熱は40〜80℃と低い。比較的低い(200℃以下の)排熱のエネルギー総量は膨大であるが、有効なエネルギー回収技術は確立されていない。排熱のエネルギー利用方法の一つとして、古くから知られる熱電変換素子が存在する。熱電変換では、駆動部がなく温度差から電気直接発生させるため、火力原子力の熱から水蒸気を発生しタービンを回し発電する方法より損失が少ない。さらに、老廃物を発生しないため環境にもやさしい。また、熱電変換素子の両端に電圧をかけると温度差が発生し、この熱電変換のゼーベック効果は1821年に発見されていたが、変換効率が低いことが問題であった。現在、200℃以下の温度で比較的効率の良い熱電変換材料としてBi2Te3が実用化されている。また、Bi−Teの様に室温近傍で変換効率の良い熱電変換材料はペルチェ素子として、冷却素子としても使うことが可能であり、冷媒を用いない環境負荷の少ない冷却装置利用可能である。

0003

このような熱電変換材料の性能は無次元性能指数(ZT)で評価される。

0004

0005

ここで、σは電気伝導率、Sはゼーベック係数κ熱伝導率、Tは温度である。Z自体の単位は(K−1)である。図6熱電変換効率と温度との関係を示す。カルノー効率は、理論上の上限の効率である。一般に、ZTが高いものほど性能が良いため、式(1)より、ゼーベック係数および電気伝導率が高く、熱伝導率の低い材料が熱電変換材料として望ましい。Bi−Te系材料はp型としてもn型としても性能指数ZT>1と変換効率が高いが、BiおよびTeはともに高価であり、Teは極めて毒性が強いため、大量生産低コスト化環境負荷低減のために、Bi2Te3に代わる高効率熱電変換材料が求められている。

0006

環境低負荷である材料系として、フルホイスラー合金Fe2VAlを基本とした熱電変換材料が特許文献1に報告されている。これは、Fe、V、Alなど環境低負荷でかつ比較的低コスト元素によって構成されており、Bi−Te系材料のように有毒レアメタルを使用しないため、産業応用上価値のある材料系である。しかしながら、200℃以下の温度領域において、Bi−Te系を超える熱電変換特性には至っておらず、今後より一層の研究開発が必要となる。

0007

また、優れた変換効率を持つ熱電材料として、特にTiを含むCdI2型層状構造を有する材料が特許文献2に報告されている。特許文献2は、TiS2の結晶構造と同様の構造であり、室温近傍温度領域でも高い熱電変換効率を示す材料が示されているが、いずれもn型の結果であり、p型で効率の良い材料系は示されていない。従って、低環境負荷および低コストで、p型を示す熱電変換効率の高い材料系が求められている。

0008

また、低環境負荷で低コスト化の可能性のある熱電変換材料としてFeやNiなどの遷移金属硫化物非特許文献1で報告されている。しかしながら、非特許文献1では、遷移金属硫化物へのドーピング元素種および濃度の依存性キャリア密度の制御が行われていないため、高い熱電変換特性を発現させるために、より最適なドーピング元素の選択とキャリア密度の制御が必要である。

0009

特開2004−253618号公報
特開2002−270907号公報

先行技術

0010

IEEE 22nd International Conference on Thermoelectrics 376 (2003)

発明が解決しようとする課題

0011

今後、環境・エネルギー問題はより一層重要となり、化石燃料に依存しないクリーンな発電システム移行して行くと思われる。その中で、地熱や排熱などこれまでにあまり利用されていないエネルギー源を活用する必要性がある。しかしながら、比較的低温(200℃以下)の熱電変換材料として実用化されているBi−Te系のような有毒性のあるレアメタルを用いた熱電変換素子では、大量に安価で安定的に市場に供給できないため、一般に広く普及させられる可能性は低い。また、特許文献1や2、非特許文献1に記載の材料系では、低環境負荷、低コスト化、高いゼーベック係数、高いp型のキャリア密度を両立することが困難である。

0012

本発明の目的は、低環境負荷および低コスト化可能で高いゼーベック係数と高いキャリア密度を両立可能なp型の熱電変換材料及び変換効率の高い熱電変換素子並びに熱電変換モジュールを提供することにある。

課題を解決するための手段

0013

上記目的を達成するための一実施形態として、パイライト構造を有し、組成がFe1−xMxS2−yTyで表わされ、元素MはV、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれる少なくとも一種類の元素であり、元素TはB、C、Al、Si、Ge、Sn、N、O、P、Biから選ばれる少なくとも1種類の元素であり、各元素の合計の組成の値であるxおよびyがそれぞれ0<x<0.5、0<y<1の範囲であり、導電型がp型であることを特徴とする熱電変換材料とする。

0014

また、熱電変換材料層と、前記熱電変換材料層を挟んで設けられた第1上部電極及び第1下部電極とを有する熱電変換素子において、前記熱電変換材料層は、組成がFeS2で表わされるパイライト構造を有し、FeとSの少なくとも一部が添加元素により置換されたp型の材料層であることを特徴とする熱電変換素子とする。

0015

また、絶縁性基板上に離間して複数配列され、互いに隣接するp型熱電変換材料層とn型熱電変換材料層とが直列接続された熱電変換モジュールにおいて、前記p型熱電変換材料層は、組成がFeS2で表わされるパイライト構造を有し、FeとSの少なくとも一部が添加元素により置換されたp型の材料層であることを特徴とする熱電変換モジュールとする。

発明の効果

0016

低環境負荷および低コスト化可能で高いゼーベック係数と高いキャリア密度を両立可能なp型の熱電変換材料及び変換効率の高い熱電変換素子並びに熱電変換モジュールを提供することができる。

図面の簡単な説明

0017

パイライト(FeS2)の結晶構造を説明するための概念図である。
パイライト(FeS2)のバンド図である。
パイライト(FeS2)の状態密度化学ポテンシャル依存性(上図)とゼーベック係数の化学ポテンシャル依存性(下図)を示す図である。
本発明の実施の形態に係る熱電変換材料であるパイライト(FeS2)のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
本発明の実施の形態に係る熱電変換材料であるパイライト(FeS2)のゼーベック係数のホールキャリア密度依存性を示す図である。
本発明の実施の形態に係る熱電変換材料であるパイライト(FeS2)のゼーベック係数と価電子数変化の関係を示す図である。
本発明の実施の形態に係る熱電変換材料であるパイライト(FeS2)のゼーベック係数と添加量との関係を示す図である。
本発明の実施の形態に係る熱電変換材料であるパイライト(FeS2)のゼーベック係数と添加量との関係を示す図である。
熱電変換効率と温度との関係を示す図である。
第2の実施例に係る熱電変換素子の一例を示す概略断面図である。
第2の実施例に係る熱電変換素子の他の例を示す概略断面図である。
第3の実施例に係る熱電変換モジュールの一例を示す概略全体斜視図(一部省略)である。
第3の実施例に係る熱電変換モジュールの他の例を示す概略断面図である。

0018

発明者等は、低環境負荷、低コスト化、高いゼーベック係数、高いp型のキャリア密度を両立できる材料系について検討を行った。以下、その結果及び得られた知見について説明する。

0019

高い熱起電力は、物質電子状態に依存し、フェルミレベル近傍の状態密度の変化が急峻な材料が良い。状態密度の変化が大きい材料としては、局在した電子状態である必要があるため、遷移金属のようなd軌道電子がフェルミレベル近傍の電子状態に寄与している材料系が一つの候補となる。

0020

安価で毒性の無い遷移金属としては、鉄(Fe)が挙げられる。このFeの3dに由来する状態がフェルミレベル近傍にある材料系を母相とする材料系であれば、地殻埋蔵量が多く、低環境負荷の熱電変換材料の作製が可能となる。そこで、パイライト構造のFeS2に着目した。

0021

図1にパイライトの結晶構造を示す。パイライト構造の化合物はFeS2の他に、AuSb2、CaC2、CoS2、MnS2、NiS2、NiSe2、OsS2、OsTe2、PdAs2、PtAs2、PtBi2、RhSe2、RuS2などが知られている。従って、FeとCo、Mn、Niなどの遷移金属の置換を行うことが可能であり、Feと価電子数の異なる元素をドープすることによってd軌道由来のバンド(d-バンド)の占有数変調することが期待できる。

0022

図2に、第一原理計算によって得られたパイライト構造のFeS2のバンド構造を示す。図2に示すように、価電子帯の頂上付近(Γ近傍の部分)はフラットなバンド構造となっている。これは、Feの3d軌道に由来した電子状態であり、s軌道p軌道よりも局在性が強いため、このようなフラットなバンド構造が現れる。図3の上図に第一原理計算によって得られたパイライト構造のFeS2の状態密度(DOS)とエネルギーの関係を示す。図3の上図に示すように、価電子帯頂上の状態密度の変化は、伝導帯に比べ極めて急峻に変化している。このパイライト構造のFeS2のように価電子帯の状態密度が急峻に変化する材料系は、p型の熱電変換素子として高効率を実現可能である。また、系の電子状態はその結晶構造に強く依存するため、フラットな電子状態が現れるパイライト構造は極めて重要である。

0023

次に、その熱起電力がフェルミレベルの制御によって、ゼーベック係数(Seebeck Coefficient)の変調の可能性を検討するために、第一原理計算によって化学ポテンシャルを変化させた時の室温でのゼーベック係数の変化を図3の下図に示す。なお、ゼーベック係数は式(1)に示したようにZに対して二乗で効くため、熱電変換効率向上に有効である。図3の下図に示すように、ドーピング等によってキャリア密度が変化し、フェルミレベルが価電子帯近傍に近づくことによりp型伝導特性を示し、ゼーベック係数は正の値を示す。また、図3の下図より、最大で1000μV/Kを超える値を示し、価電子帯頂上近傍のエネルギーにおいても250μV/K程度のゼーベック係数を示している。これは、非常に高いホールキャリア密度においても高いゼーベック係数を示す可能性を示唆しており、高いキャリア密度による高電気伝導率と高ゼーベック係数を両立可能な材料系である。

0024

計算によって得られた各ホールキャリア密度におけるゼーベック係数(Seebeck Coefficient)の温度依存性を図4Aに、室温におけるゼーベック係数のホールキャリア密度(hole density)依存性を図4Bに示す。図4Bより、1×1018cm−3のホールキャリア密度において、室温で800μV/Kを超える高いゼーベック係数を示し、1×1021cm−3のホールキャリア密度においても300μV/Kの高いゼーベック係数を示すことがわかる。また1×1022cm−3以上のキャリア密度になると100μV/K以上の高いゼーベック係数が得られにくくなるため、高いゼーベック係数を得るためには1×1022cm−3以下のキャリア密度にする必要がある。

0025

上記のようなキャリア密度に制御するために、適切なドーピングを行う必要があるが、その設計指針として、価電子数密度VEC)を使うことが可能である。FeS2の化学量論組成における総価電子数は、Feの価電子数nFe=8、Sの価電子数nS=6よりVEC=nFe+2ns=20となる。また、FeおよびSとは異なる元素M、Tを導入したFe1−xMxS2−yTyを作ることによってVECを制御することが可能である。各元素の価電子数を表1に示す。

0026

0027

VECを20以下にすることにより、p型の性質を発現させることが可能となる。計算によって得られたVECの変化(ΔVEC)と室温でのゼーベック係数の関係を図5Aに、FeS2に対するP或いはCoのドーピング量とゼーベック係数との関係を図5Bおよび図5Cに示す。図5A図5Cより、VECを減少させることによって(硫黄Sに対するリンPの置換量を増加させることに対応)、正のゼーベック係数を示す材料系を作製できることがわかる。また、VECを1以上変化させると、高いゼーベック係数を得ることが可能な1×1022cm−3以下のキャリア密度にすることが難しくなる。また、母相であるFe以上およびSよりも多くなるとパイライト構造を保つことが難しくなるため、Fe1−xMxS2−yTyのx、yは(0<x<0.5、0<y<1:それぞれ添加量が0を超え50%未満)の範囲であることが望ましい。

0028

次に、これらパイライトに添加する元素について説明する。上記のようにVECを調節することによって、フェルミレベルを制御可能である。表1より、3d遷移金属であるV、Cr、MnはFeに比べ価電子数が少ないため、Feを置換しVECを下げるのに有効である。MnはMnS2がパイライト構造をとることが知られており、Feと置換しやすい。Mn、Cr、Vの順にFeとの価電子数の差が増加するため、価電子数がFeと比較し大きく異ならない元素ほど良い。表1より、4d遷移金属であるZr、Nb、Moも同様にFeに比べ価電子数が少ないため、VECを下げるのに有効である。また、Mo、Nb、Zrの順にFeとの価電子数の差が増加するため、価電子数が大きく異ならない元素ほど良い。またこれら4d遷移金属はFeと比較し質量が大きく異なるためVECの制御だけでなく、熱伝導率低減に効果がある。表1より、5d遷移金属であるHf、Ta、Wも同様にFeに比べ価電子数が少ないため、VECを下げるのに有効である。また、W、Ta、Hfの順にFeとの価電子数の差が増加するため、価電子数が大きく異ならない元素ほど良い。またこれら5d遷移金属はFeと比較し、大きく質量が異なるため、4d遷移金属以上に熱伝導率低減に効果がある。次に、典型元素のドープについて説明する。FeS2は、FeだけでなくSを置換することによってもVECを制御可能である。典型元素の中で、比較的安価で無毒もしくは低毒性の元素は、B、C、N、O、Al、Si、P、Ge、Snが挙げられる。これらの中でB、C、N、Oは価電子数に応じてVECの制御ができるが、Sとは原子半径が大きく異なるため、添加を多くすることはできない。しかし、質量がSと比べ大きく異なる軽元素であるため、格子熱伝導阻害する効果が期待できる。P、Si、AlはP、Si、Alの順にSとの価電子数の差が増加するため、価電子数がSと比較し大きく異ならない元素ほど良い。Snは質量がSと比較し重いため、格子熱伝導率低減に効果が期待できる。また、比較的希少な材料ではあるがBiは、表1中で最も重い元素であり、価電子数もSと1しか異ならないため、VEC制御および格子熱伝導率低減に有効である。

0029

また、パイライトは高温での熱安定性が低いため、750℃以上ではNiAs構造のFeSとSのガスに分解してしまう可能性が高いため、700℃以下の環境で使うことが望ましい。また、熱電変換効率の観点からは室温以上での使用が望ましい。

0030

パイライト構造を有する熱電変換材料の結晶構造は、X線回折(XRD)によって容易に確認ができる。また、TEM(Transmission Electron Miroscop)などの電子顕微鏡により格子像を観察することや電子線回折像においてスポットパターンリング状パターンから単結晶もしくは多結晶の結晶構造を確認することができる。組成分布はEDX(Energy Dispersive X-ray spectroscopy)などのEPMA(Electron Probe MicroAnalyser)や、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer)、X線光電子分光、ICP(Inductively Coupled Plasma)ななどの手法を用いて確認できる。また、材料の状態密度の情報に関しては、紫外線光電子分光法やX線光電子分光などによって確認できる。電気伝導率およびキャリア密度は4端子法を用いた電気測定およびホール効果測定によって確認できる。ゼーベック係数は、試料両端に温度差をつけ、両端の電圧差を測定することによって確認できる。熱伝導率はレーザーフラッシュ法によって確認できる。

0031

本発明は上記検討結果及びそれにより得られた新たな知見により生まれたものであり、パイライト構造を有する化合物に適切なドーピングを行うことにより価電子数および質量の異なる元素を導入し、キャリア密度、電気伝導率および熱伝導率を制御することにより、優れた熱電変換特性を発現させることを特徴とする。具体的には、例えば、FeおよびSを主成分としたパイライト構造のFeS2を主成分とする材料系である。

0032

本発明によれば、ドーピングによる価電子数の違う元素の添加し、化合物の価電子数を制御することにより、d−バンドの電子占有数を変化させ、フェルミレベルにおける電子状態を変調し、目的に合わせてキャリアタイプとキャリア密度を調整することができる。また、FeおよびSに比べ軽い元素と重い元素をドープすることによって熱伝導率の低減が可能である。

0033

以下実施例により説明する。

0034

第1の実施例では、試料作製の一例を示す。ここで作製例は一例であって、当該作製条件に限定されるものではないことは云うまでも無い。
(試料作製例1)
純度99.9%の金属Fe粉末Mn粉末とS粉末を99:1:200の組成比となる割合で混合し、公知のメカニカルアロイング法により、合金を作製した後、作製した組成Fe0.99Mn0.01S2からVECを計算すると19.99となる(Mn添加量:1%)。
(試料作製例2)
純度99.9%の金属Fe粉末とMn粉末とS粉末を7:3:20の組成比となる割合で混合し、石英管に入れ、真空雰囲気におい700℃で24時間熱処理を行い、その後、ボールミルを用いて試料粉砕した。その粉末試料のX線回折を行って構造解析した結果、パイライト構造であった。以上のプロセスにより、Fe0.7Mn0.3S2の粉末試料からVECを計算すると19.7となる(Mn添加量:30%)。
(試料作製例3)
純度99.9%の金属Fe粉末とP粉末とS粉末を100:1:199の組成比となる割合で混合し、石英管に入れ、真空雰囲気におい700℃で24時間熱処理を行い、その後、ボールミルを用いて試料を粉砕した。その粉末試料のX線回折を行って構造解析した結果、パイライト構造であったプロセスにより、FeS1.99P0.01の粉末試料からVECを計算すると19.99となる(P添加量:0.05%)。
(試料作製例4)
試料作製例2と同様の方法で、FeをV、Cr、Zr、Mo、Hf、Ta、Wに置き換えFe0.99V0.01S2、Fe0.99Cr0.01S2、Fe0.99Zr0.01S2、Fe0.99Mo0.01S2、Fe0.99Hf0.01S2、Fe0.99Ta0.01S2、Fe0.99W0.01S2、を作製した。これらの組成よりVECを計算するとそれぞれ19.97、19.98、19.96、19.98、19.96、19.97、19.98となる(各添加量:1%)。
(試料作製例5)
熱酸化膜を有するSi基板に、FeとSの組成が1:2の混合ターゲットを用いて、スパッタリングすることにより300nm程度の膜厚薄膜を作製し、窒素雰囲気中で600℃の条件で、1時間熱処理を行った。薄膜のX線回折を行って構造解析した結果、パイライト構造のピーク観測できた。
試料測定例1)
作製例1と作製例2で作製した試料に室温と20℃の温度差を作り、ゼーベック係数を測定した。その結果、それぞれ350μV/K、100μV/Kの高いゼーベック係数を得た。従って本実施例1に示した方法によってドーピング量を変えた試料を作製することによりVECを変化させ、ゼーベック係数を変調でき、p型として高い熱起電力を有する材料系であることが確認できた。また、熱伝導率はそれぞれ10mW/Kcm、15mW/Kcmであった。

0035

試料作製方法は、本実施例以外の分子線エピタキシーのような真空蒸着法でも、遷移金属錯体などを用いた化学気相成長を用いても良い。また、硫黄を加熱して、蒸気化し、それをアルゴン等のような不活性ガスキャリアガス鉄板装入してある反応室送り、鉄板と反応させる方法でも良い。

0036

本実施例によれば、ドーピングによる価電子数の違う元素の添加し、化合物の価電子数を制御することにより、d−バンドの電子占有数を変化させ、フェルミレベルにおける電子状態を変調し、高い熱起電力を実現できる。また、安価で枯渇の懸念が少ない材料を組み合わせることによって、Bi−Te系と比較し劇的なコスト低減が可能となる。

0037

以上説明したように本実施例によれば、低環境負荷および低コスト化可能で高いゼーベック係数と高いキャリア密度を両立可能なp型の熱電変換材料を提供することができる。

0038

第2の実施例について図7Aおよび図7Bを用いて説明する。なお、実施例1に記載され本実施例に未記載の事項特段事情が無い限り本実施例にも適用することができる。図7Aおよび図7Bは熱電変換素子の全体図の一例であり、図7Aは熱電変換素子としてn型半導体或いはp型半導体を用いた場合の構成を、図7Bは熱電変換素子としてn型半導体及びp型半導体の両者を用いた場合の構成を示す。p型半導体素子はパイライト構造のFeS2において、実施例1で示した方法を用いてFeの一部をMn等で置換することにより作製した。n型半導体としては公知のTiS2(未添加)を用いることができるが、これに限定されない。

0039

図7Aに示すようにp型半導体層103或いはn型半導体層104の対向面に電極102を設けた熱電変換素子の構造では、p型半導体層103を用いて熱電変換素子の電極102の間に温度差を与えた場合、電流の流れる方向130は高温側から低温側へ向かう。一方n型半導体層104を用いた場合には、電流の流れる方向120は低温側から高温側へ向かう。

0040

図7Bに示すようにp型半導体層103とn型半導体層104の上部を電極102で接続し、それぞれの下部にそれぞれ電極102を接続したπ型構造の熱電変換素子では、上部の電極102を高温側とした場合、n型半導体層内部では低温側から高温側に電流が流れ、p型半導体層内部では高温側から低温側に電流が流れ、それらの電流の流れる方向120、130を一致させることができる。

0041

図7A(p型半導体層の場合)及び図7Bに示す構造で、ホールキャリア密度を1×1019cm−3とした場合、従来のBi、Teを用いた熱電変換素子に比べ、室温程度(<200℃)において熱電変換効率を3倍程度高めることができた。

0042

以上、本実施例によれば、室温程度(<200℃)でも変換効率の高い熱電変換素子を提供することができる。

0043

第3の実施例について図8Aおよび図8Bを用いて説明する。なお、実施例1又は実施例2に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。図8A及び図8Bは熱電変換モジュールを示す図であり、図8Aはπ型構造の熱電変換素子を多数並べた熱電変換モジュールの概略全体斜視図(一部省略)、図8Bカスケード型の熱電変換モジュールの概略断面図を示す。符号101は絶縁体膜基板)を示す。

0044

実施例2で示したπ型熱電変換素子を、図8A及び図8Bに示すように所望の数だけ直列接続、並列接続することにより、所望の電圧、電流を得ることができる。図8A及び図8Bに示す構造で、ホールキャリア密度を1×1019cm−3とした場合、従来のBi、Teを用いた熱電変換素子に比べ、室温程度(<200℃)において熱電変換効率を3倍程度高めることができ、所望の電圧、電流を効果的に得ることができた。特に、図8Bに示す構造の場合には、高温側と低温側とで温度差が大きい場合や、温度分布が異なる場合にも適用できる。

0045

以上、本実施例によれば、室温程度(<200℃)でも変換効率の高い熱電変換モジュールを提供することができる。また、熱電変換素子を直列並列に並べることにより所望の電圧・電流を得ることができる。

実施例

0046

なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。

0047

101…絶縁体膜(基板)、
102…電極、
103…p型半導体層、
104…n型半導体層、
120…n型半導体を用いた場合の電流の流れる方向、
130…p型半導体を用いた場合の電流の流れる方向。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • エルジー・ケム・リミテッドの「 熱電材料およびこれを含む熱電素子」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題・解決手段】本発明による熱電材料は、熱電性能を低下させる成分が最少化され、これを含む熱電素子で有用に使用することができる。... 詳細

  • 株式会社KELKの「 熱電モジュール及び光モジュール」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題】電気的短絡又は断線の発生を抑制できる熱電モジュールを提供する。【解決手段】熱電モジュール1は、基板2の第1面2Aに設けられる電極4と、電極4と熱電素子3との間に配置される第1拡散防止層5と、電... 詳細

  • 三菱電機株式会社の「 半導体装置」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題】短絡動作時に信号の送受信をせずともゲート電圧を抑制できるため、短絡から保護動作開始までの時間を短縮可能な半導体装置を提供する。【解決手段】半導体装置100は、ドリフト層6の表面に配設されたベー... 詳細

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ

特許:約8,000万件, クラウドファンディング:約100万年, 科研費・グラントデータ:約500万件, 発明者・研究者情報:約600万人