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技術 振動装置、該振動装置を有する駆動装置、及び光学機器

出願人 キヤノン株式会社
発明者 大橋海史浦上俊史伊福俊博清水康志古田達雄松田堅義久保田純林潤平
出願日 2012年3月21日 (8年0ヶ月経過) 出願番号 2012-063898
公開日 2013年9月30日 (6年5ヶ月経過) 公開番号 2013-193048
状態 特許登録済
技術分野 清浄化一般
主要キーワード 電圧振幅比 時間位相差 応答位相 微小交流 ディグリー ペロフスカイト構造 被駆動対象物 振動対象物
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (18)

課題

振動によって塵埃を含む被駆動対象物を、効率よく所定の方向に移動させることが可能となる振動装置を提供する。

解決手段

鉛の含有量が1000ppm未満である圧電材料電極とを備えた少なくとも1つの電気機械エネルギ変換素子を有する振動体と、前記電気機械エネルギ変換素子に少なくとも2つの駆動電圧印加し、前記振動体に、次数が互いに異なる複数の定在波時間位相差を設けて発生させることにより前記複数の定在波が合成された合成振動を生成させる制御手段と、を含む振動装置であって、 前記制御手段は、前記合成振動の振幅分布を変化させるべく、前記少なくとも2つの駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させる。

概要

背景

近年の撮像装置においては、光学センサ分解能の向上とともに、使用中に光学系に付着するゴミ撮影画像に影響を及ぼすようになってきた。

特に、ビデオカメラスチルカメラ撮像素子の分解能はめざましく向上していることから、撮像素子に近くの光路上に配置されている光学素子塵埃が付着すると、画像欠陥を生じることになる。

例えば、赤外線カットフィルタ光学ローパスフィルタなどに、外部からの埃や、内部の機械的な摺擦面で生ずる摩耗粉などが付着すると、撮像素子面での像のぼけが少ないため、撮影画像に埃の写り込みなどが生じる。

一方、コピーファクシミリスキャナーなどの撮像部は、ラインセンサスキャン、またはラインセンサに近接させた原稿をスキャンすることによって平面原稿を読み取っている。

そして、ラインセンサへの光線入射部に埃が付着すると、スキャン画像写り込んでしまう場合がある。

また、原稿をスキャンする方式の機器、ファクシミリの読み取り部や、コピー機自動原稿送り装置からの原稿を搬送中に読み取る、いわゆる流し読みの方式では、1つの埃が原稿送り方向へ連続する線画像となって写り込む場合がある。

これにより、画像の品質が大きく損なわれるという問題が生じる。

これらの塵埃を人手によって拭き取ることで画像品位回復するが、使用中に付着した埃は撮影後に確認する他ない。

その間に撮影、スキャンした画像については塵埃の画像が映りこむため、ソフトウェアでの画像処理による修正が必要となるほか、複写機では同時に紙メディアに出力されてしまうため修正には多大な労力がかかる。

このような問題に対し、従来では、振動を付与することによってゴミを画像読み取り部から移動させる塵埃除去装置、及び、これを搭載した光学機器が提案されている(特許文献1参照)。

図13(a)は、特許文献1に開示された従来の塵埃除去装置の振動装置の構成を示す図である。
振動装置300は、受光した被写体像電気信号に変換して画像データを作成する撮像素子301に設けられている。
振動装置300と撮像素子301とで、撮像素子301の表(おもて)面の空間が密封されている。即ち、撮像素子301の表面側に振動装置300がシール部材等を介して間の空間を密封するように接合される。
振動装置300は、矩形の板状を有する光学素子302、およびその両端部に接着によって固着された電気機械エネルギ変換素子である一対の圧電素子303a、303bから構成されている。
圧電素子303aには、駆動電圧として交番電圧Vaが印加され、圧電素子303bには駆動電圧として交番電圧Vbが印加されている。

図13(b)中のAは1次の面外曲げ振動(定在波)の変位分布を表しており、Bは2次の面外曲げ振動(定在波)の変位分布を表している。
縦軸は、振動装置300の撮像素子301が配置されている側とは反対側の表面の面外方向変位で、撮像素子301側の向きを負としている。横軸は、図示しているように振動装置300の長手方向の位置と対応している。
交番電圧Vaと交番電圧Vbは共に、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の共振現象応答を有する周期の交番電圧となっていて、さらに交番電圧Vaと交番電圧Vbとは時間的な位相が異なっている。
これらによって、振動装置300には時間位相の異なる1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の2つの振動が合成された合成振動励起される。

図14、図15、図16、図17は2つの振動の時間的位相差が90°かつ振幅が1:1である場合の1次の面外曲げ振動、2次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位及び変位速度を、時間位相毎に示すグラフである。
縦軸は、変位及び変位速度で、撮像素子301側の向きを負としている。横軸は、図13(b)に示したのと同じく、振動装置300の長手方向の位置と対応している。

図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示している。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示している。
波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動装置300の変位を示す。
波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動装置300の変位を示している。
波形Fは振動装置300における正規化された変位速度を示している。
塵埃除去装置を動作させた場合には、光学素子302の表面に付着した塵埃は、光学素子302が塵埃を面外(図14〜図17の縦軸の正の向き)に突き上げる時、光学素子302の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。

つまり、各時間位相で、変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動装置300の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。光学素子302を一定の角度(典型的には垂直)に立てた状態で上記変位を与えた場合には、光学素子302表面に付着している塵埃が光学素子302の表面の法線方向の力を受けて弾かれた場合には、一定の確率で再付着せずに、重力により落下する。

図14〜図17の矢印hは、塵埃が移動する向きを示している。

図14〜図17を見てみると、光学素子302の位置60から300において、振動の1周期の間では、横軸の負の向きに塵埃を移動させる振動の量より、正の向きに塵埃を移動させる振動の量が相対的に多い。
そのため、塵埃は横軸の正の向きに移動させることが可能になっている。
撮像素子301に対する光学素子302の有効部(光学有効部ともいう)が位置60から位置300の範囲であった場合に、有効部から塵埃を除去することが可能となっている。ここで、有効部とは、光学素子を撮像素子の光路上に配置した場合に、撮像素子に入射する光が、光学素子を透過する範囲を意味する。

概要

振動によって塵埃を含む被駆動対象物を、効率よく所定の方向に移動させることが可能となる振動装置を提供する。 鉛の含有量が1000ppm未満である圧電材料電極とを備えた少なくとも1つの電気機械エネルギ変換素子を有する振動体と、前記電気機械エネルギ変換素子に少なくとも2つの駆動電圧を印加し、前記振動体に、次数が互いに異なる複数の定在波を時間位相差を設けて発生させることにより前記複数の定在波が合成された合成振動を生成させる制御手段と、を含む振動装置であって、 前記制御手段は、前記合成振動の振幅分布を変化させるべく、前記少なくとも2つの駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させる。

目的

本発明は、上記課題に鑑み、不要な振動モードの振動応答を考慮した駆動方法とすることで、塵埃を含む被駆動対象物を効率よく所定の方向に移動させることが可能となる振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

鉛の含有量が1000ppm未満である圧電材料電極とを備えた少なくとも1つの電気機械エネルギ変換素子を有する振動体と、前記電気機械エネルギ変換素子に少なくとも2つの駆動電圧印加し、前記振動体に、次数が互いに異なる複数の定在波時間位相差を設けて発生させることにより前記複数の定在波が合成された合成振動を生成させる制御手段と、を含む振動装置であって、前記制御手段は、前記合成振動の振幅分布を変化させるべく、前記少なくとも2つの駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させることを特徴とする振動装置。

請求項2

前記合成振動の振幅分布及び位相分布を変化させるべく、前記駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させることを特徴とする請求項1に記載の振動装置。

請求項3

前記制御手段には、前記振動体の第1〜第n(nは2以上の整数)の領域毎に、少なくとも2つの交番電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方が設定されており、前記第1の領域に対して設定された、前記交番電圧同士の電圧振幅比を第1の電圧振幅比とし、前記交番電圧同士の時間位相差を第1の時間位相差とし、前記第nの領域に設定された、前記交番電圧同士の電圧振幅比を第nの電圧振幅比とし、前記交番電圧同士の時間位相差を第nの時間位相差とした場合、前記制御手段は、前記駆動電圧同士の電圧振幅比を、前記第1の電圧振幅比から前記第nの電圧振幅比まで時系列で順次変化させる制御と、前記駆動電圧同士の時間位相差を、前記第1の時間位相差から前記第nの時間位相差まで時系列で順次変化させる制御と、のうち少なくとも一方を行うこと特徴とする請求項1又は2に記載の振動装置。

請求項4

前記制御手段は、前記駆動電圧同士の電圧振幅比を、前記第1の電圧振幅比から前記第nの電圧振幅比まで所定時間単位で時系列に順次切り替える制御と、前記駆動電圧同士の時間位相差を、前記第1の時間位相差から前記第nの時間位相差まで所定時間単位で時系列に順次切り替える制御と、のうち少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項3に記載の振動装置。

請求項5

前記圧電材料がチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動装置。

請求項6

前記圧電材料が下記一般式(1)一般式(1)(Ba1−xCax)(Ti1−yZry)O3(0.02≦x≦0.30、0.020≦y≦0.095であり、かつy≦x)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項5に記載の振動装置。

請求項7

前記圧電材料が、前記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記金属酸化物にMnが含有されており、前記Mnの含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることを特徴とする請求項6に記載の振動装置。

請求項8

請求項1乃至7のいずれか1項に記載の振動装置と、被駆動体とを有し、前記振動装置によって前記被駆動体が駆動されることを特徴とする駆動装置

請求項9

前記合成振動により、前記振動体上の塵埃を移動させて塵埃を除去する塵埃除去装置として機能することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の振動装置。

請求項10

前記振動体が光路上に設けられた請求項9に記載の塵埃除去装置である振動装置と、前記振動体を透過した光が入射する撮像素子と、を有することを特徴とする光学機器

技術分野

0001

本発明は、振動装置、該振動装置を有する駆動装置、及び光学機器に関する。
特に、カメラファクシミリスキャナープロジェクター複写機レーザビームプリンター、インクジェットプリンターレンズ双眼鏡画像表示装置などの光学機器に関する。また、このような光学機器の塵埃除去装置に用いる振動装置、振動によって被駆動体を駆動させる駆動装置に関する。

背景技術

0002

近年の撮像装置においては、光学センサ分解能の向上とともに、使用中に光学系に付着するゴミ撮影画像に影響を及ぼすようになってきた。

0003

特に、ビデオカメラスチルカメラ撮像素子の分解能はめざましく向上していることから、撮像素子に近くの光路上に配置されている光学素子塵埃が付着すると、画像欠陥を生じることになる。

0004

例えば、赤外線カットフィルタ光学ローパスフィルタなどに、外部からの埃や、内部の機械的な摺擦面で生ずる摩耗粉などが付着すると、撮像素子面での像のぼけが少ないため、撮影画像に埃の写り込みなどが生じる。

0005

一方、コピー、ファクシミリ、スキャナーなどの撮像部は、ラインセンサスキャン、またはラインセンサに近接させた原稿をスキャンすることによって平面原稿を読み取っている。

0006

そして、ラインセンサへの光線入射部に埃が付着すると、スキャン画像写り込んでしまう場合がある。

0007

また、原稿をスキャンする方式の機器、ファクシミリの読み取り部や、コピー機自動原稿送り装置からの原稿を搬送中に読み取る、いわゆる流し読みの方式では、1つの埃が原稿送り方向へ連続する線画像となって写り込む場合がある。

0008

これにより、画像の品質が大きく損なわれるという問題が生じる。

0009

これらの塵埃を人手によって拭き取ることで画像品位回復するが、使用中に付着した埃は撮影後に確認する他ない。

0010

その間に撮影、スキャンした画像については塵埃の画像が映りこむため、ソフトウェアでの画像処理による修正が必要となるほか、複写機では同時に紙メディアに出力されてしまうため修正には多大な労力がかかる。

0011

このような問題に対し、従来では、振動を付与することによってゴミを画像読み取り部から移動させる塵埃除去装置、及び、これを搭載した光学機器が提案されている(特許文献1参照)。

0012

図13(a)は、特許文献1に開示された従来の塵埃除去装置の振動装置の構成を示す図である。
振動装置300は、受光した被写体像電気信号に変換して画像データを作成する撮像素子301に設けられている。
振動装置300と撮像素子301とで、撮像素子301の表(おもて)面の空間が密封されている。即ち、撮像素子301の表面側に振動装置300がシール部材等を介して間の空間を密封するように接合される。
振動装置300は、矩形の板状を有する光学素子302、およびその両端部に接着によって固着された電気機械エネルギ変換素子である一対の圧電素子303a、303bから構成されている。
圧電素子303aには、駆動電圧として交番電圧Vaが印加され、圧電素子303bには駆動電圧として交番電圧Vbが印加されている。

0013

図13(b)中のAは1次の面外曲げ振動(定在波)の変位分布を表しており、Bは2次の面外曲げ振動(定在波)の変位分布を表している。
縦軸は、振動装置300の撮像素子301が配置されている側とは反対側の表面の面外方向変位で、撮像素子301側の向きを負としている。横軸は、図示しているように振動装置300の長手方向の位置と対応している。
交番電圧Vaと交番電圧Vbは共に、1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の共振現象応答を有する周期の交番電圧となっていて、さらに交番電圧Vaと交番電圧Vbとは時間的な位相が異なっている。
これらによって、振動装置300には時間位相の異なる1次の面外曲げ振動と2次の面外曲げ振動の2つの振動が合成された合成振動励起される。

0014

図14図15図16図17は2つの振動の時間的位相差が90°かつ振幅が1:1である場合の1次の面外曲げ振動、2次の面外曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位及び変位速度を、時間位相毎に示すグラフである。
縦軸は、変位及び変位速度で、撮像素子301側の向きを負としている。横軸は、図13(b)に示したのと同じく、振動装置300の長手方向の位置と対応している。

0015

図中、波形Cは1次の面外曲げ振動の変位を示している。波形Dは2次の面外曲げ振動の変位を示している。
波形Eはこれら2つの振動が重ね合わされた振動装置300の変位を示す。
波形Gは波形Eの時間位相30°前の振動装置300の変位を示している。
波形Fは振動装置300における正規化された変位速度を示している。
塵埃除去装置を動作させた場合には、光学素子302の表面に付着した塵埃は、光学素子302が塵埃を面外図14図17の縦軸の正の向き)に突き上げる時、光学素子302の表面の法線方向の力を受けて弾かれるように移動していく。

0016

つまり、各時間位相で、変位速度を示す波形Fが正の値であるとき、塵埃は面外に突き上げられ、この時間位相における振動装置300の変位を示す波形Eの法線方向の力を受け、塵埃は移動していく。光学素子302を一定の角度(典型的には垂直)に立てた状態で上記変位を与えた場合には、光学素子302表面に付着している塵埃が光学素子302の表面の法線方向の力を受けて弾かれた場合には、一定の確率で再付着せずに、重力により落下する。

0017

図14図17の矢印hは、塵埃が移動する向きを示している。

0018

図14図17を見てみると、光学素子302の位置60から300において、振動の1周期の間では、横軸の負の向きに塵埃を移動させる振動の量より、正の向きに塵埃を移動させる振動の量が相対的に多い。
そのため、塵埃は横軸の正の向きに移動させることが可能になっている。
撮像素子301に対する光学素子302の有効部(光学有効部ともいう)が位置60から位置300の範囲であった場合に、有効部から塵埃を除去することが可能となっている。ここで、有効部とは、光学素子を撮像素子の光路上に配置した場合に、撮像素子に入射する光が、光学素子を透過する範囲を意味する。

先行技術

0019

特開2008−207170号公報

発明が解決しようとする課題

0020

しかし、上記した振動装置においては、以下に述べるような解決すべき課題を有している。
特許文献1による振動装置300では、駆動に用いる二つの振動モードの共振周波数付近に多数の振動モードがある。駆動に用いる振動モードを大きくするために、この共振周波数の付近の振動を励起すると、その他の不要な振動モードも応答(励起、又は励振ともいう)してしまう。
不要な振動モードにおける振幅がない節位置(変位しない位置)では、不要な振動モードの振動の影響を受けることなく、良好な振動状態を実現できる。しかし、それ以外の位置では不要な振動モードの振動の影響を受けるため、振幅分布位相分布乱れてしまう。

0021

これによって、光学素子302表面の塵埃(被駆動対象物)を面外にたたき上げる(突き上げるともいう)時の面内方向の向きが逆方向になってしまう位置や、面内方向の成分が小さい位置が発生する場合がある。

0022

上記のように設計とは異なる振動状態となった場合に位置によっては、面内の移動方向が向き合って塵埃が移動できない、或いは塵埃の付着力に対し移動力が小さくなり、塵埃を移動させる効率が低くなる場合がある。

0023

本発明は、上記課題に鑑み、不要な振動モードの振動応答を考慮した駆動方法とすることで、塵埃を含む被駆動対象物を効率よく所定の方向に移動させることが可能となる振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器を提供することを目的とするものである。

課題を解決するための手段

0024

本発明は上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果完成に至ったものであり、本発明の振動装置は、鉛の含有量が1000ppm未満である圧電材料電極とを備えた少なくとも1つの電気機械エネルギ変換素子を有する振動体と、前記電気機械エネルギ変換素子に少なくとも2つの駆動電圧を印加し、前記振動体に、次数が互いに異なる複数の定在波を時間位相差を設けて発生させることにより前記複数の定在波が合成された合成振動を生成させる制御手段と、を含む振動装置であって、
前記制御手段は、
前記合成振動の振幅分布を変化させるべく、前記少なくとも2つの駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させることを特徴とする。

発明の効果

0025

本発明によれば、振動によって塵埃を含む被駆動対象物を、効率よく所定の方向に移動させることが可能となる。

図面の簡単な説明

0026

本発明の実施形態1におけるカメラの図である。
本発明の実施形態1における振動装置の図である。
(a)は本発明の実施形態1における第1の振動モードでの光学素子の変形形状の斜視図であり、(b)は第2の振動モードでの光学素子の変形形状の斜視図である。
本発明の実施形態1における第1の振動モード及び第2の振動モードの節線と各圧電素子の配置及び電極パターンの対応を示す図である。
(A)は加振電圧周波数単位電圧あたりの各振動モードの振動の応答ゲインを表す図である。(B)は加振電圧の周波数と各振動モードの振動の応答位相を表す図である。
(a−1)は本発明の実施形態1における第3の振動モードの光学素子の変形形状を示す斜視図、(a−2)は第1の方向Aから見た図である。また、(b−1)は本発明の実施形態1における第4の振動モードの光学素子の変形形状を示す斜視図、(b−2)は第1の方向Aから見た図である。
(A)は本発明の実施形態1における領域を規定する範囲と、領域と交番電圧の設定との対応を示す図である。また、(B)は本発明の実施形態1における第3の振動モードでの、光学素子の変形形状の斜視図、(C)は第1の方向Aから見た図であり、領域の配置を示している。
本発明の実施形態1における各々の交番電圧の設定の算出に用いた第1から第4の振動モードの振動の振動応答の値を示した図である。
(A)は本発明の実施形態1における各々の交番電圧の設定に用いる10次及び11次振動の振動応答の値を示した図である。また、(B)は、加振電圧の大きさと位相を示した図で、(C)は交番電圧の大きさ及び位相と、これの電圧振幅比及び時間位相差を示した図である。
本発明の実施形態1における領域境界での振動状態の算出に用いた第1から第4の振動モードの振動の応答の値を示した図である。
本発明の実施形態1における領域境界での振動状態の算出に用いた10次及び11次振動の応答の値を示した図である。
(A)は本発明の実施形態1における領域境界での振動状態を示した図である。(B)は振動状態の10次振動と11次振動の振幅比と時間位相差の値を示した図である。
(a)は従来の振動装置の構成を示す図であり、(b)は従来の振動装置の振動体の面外1次曲げ振動と面外2次曲げ振動の変位分布と圧電素子の配置を示す図である。
従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。
従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。
従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。
従来の振動装置の、2つの振動の時間的位相差が90°である場合の面外1次曲げ振動、面外2次曲げ振動、およびこれらの振動が重ね合わされた振動体の変位を、時間位相毎に示すグラフである。

0027

本発明は、少なくとも2つの駆動電圧を上述した不要な振動モードの振動応答を考慮した設定とし、駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させる。

0028

本発明において振動体とは、弾性体である光学素子と、圧電素子と、を接着材等により接合することで一体化したものを意味する。

0029

本発明は、以下に述べる構成の振動装置、該振動装置を有する駆動装置と塵埃除去装置と光学機器を提供するものである。以下に、本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。

0030

(実施形態1)
図1は光学機器のカメラである。11はカメラ本体で、12はレンズ筐体である。

0031

図2を用いて、実施形態1におけるカメラに装備された振動装置の構成例について説明する。

0032

本実施形態の振動装置は、塵埃を移動させて除去する塵埃除去装置として機能する。また塵埃除去装置は、光学機器の光路上に配置される。

0033

図2において、1は光学素子で、2枚の電気機械エネルギ変換素子である圧電素子2(2a、2b)が接着によって撮像素子4と同じ側に固着されている。ただし、本発明において圧電素子の数は、特許文献1と同様、2つに限定されず、少なくとも1つあればよい。圧電素子が1つの場合は、その圧電素子上に個別の電極を設け、夫々の電極に異なる駆動電圧を印加するとよい。また、本発明の圧電素子は、鉛の含有量が1000ppm未満である圧電材料と電極とを備えている。圧電材料の詳細は後述する。

0034

制御回路100は電源101の発生する駆動電圧としての交番電圧の周波数及び電圧値及び時間位相を設定する。電源101は圧電素子2a、2bと電気的に接続されている。制御手段1000は、制御回路100と電源101とで構成される。本発明の駆動電圧は、少なくとも2つあればよい。

0035

光学素子1と圧電素子2とで振動体3を構成している。振動体3は、受光素子である撮像素子4の表面の空間が密封されるように撮像素子4に取り付けられている。被写体からの光が、光学素子1を透過し、撮像素子4に入射する。このときの撮像素子に入射する光が、光学素子1を透過する範囲が、光学有効部5である。

0036

本実施形態においても特許文献1と同様に、同方向に節線が並ぶ次数の異なる2つの面外曲げ振動(定在波)を、時間位相差を設けて励起することにより、2つの面外曲げ振動が合成された合成振動を振動体に生成させる。本発明における上記節線とは、弾性体である振動対象物(例えば光学素子)の所定の面に振動を与えて当該振動対象物の面上に定在波を発生させた場合に定在波の節となる部分を結んだ際に形成される仮想的線をいう。

0037

本実施形態では、制御回路100は電源101の発生する駆動電圧の周波数を、紙面の左右方向(第1の方向、図中A)に節線が並び次数の異なる面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の両方に応答があって、両方の応答が略同じ周波数としている。ここで「応答がある」とは、振動が励起される、又は励振されることを意味する。

0038

図3(a)は、第1の振動モードの光学素子1の変形形状の斜視図であり、図3(b)は第2の振動モードの光学素子1の変形形状の斜視図である。図3(a)及び3(b)において、Aは第1の方向で、Bは第1の方向と交差する第2の方向である。

0039

本実施形態では第1の方向Aと第2の方向Bは直交している。Cは振動モードにおける節線である。第1の振動モードと第2の振動モードは、第1の方向Aに並ぶ複数の節線を有している。また、第1の方向Aに並ぶ節線の数は、第1の振動モードで11であり、第2の振動モードで12であり、異なる。第1の振動モードは、面外曲げ変形の次数が第2の振動モードよりも少なく、波長が長いために、第2の振動モードよりも固有振動数が低い。

0040

制御回路100は電源101の発生する2つの駆動電圧の時間位相差を設定している。これによって、振動体3に面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)が異なる時間位相で生成される。

0041

これらの合成された振動については、先行技術(特許文献1)と同様に、塵埃等の被駆動対象物を面外にたたき上げる時の面内方向の向きが、光学素子1の表面のほぼ全領域において同じとなる。これによって、振動によって移動させられる全ての被駆動対象物に面内の一方向の力を付与し、一方向の移動を実現することが可能となっている。

0042

図4を用いて、本実施形態の面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)及び面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の節線と各圧電素子2の配置及び電極パターンの対応を説明する。

0043

プロット6に、振動体3に励起する第1の振動モードの変位分布(図中7)と、同じく第2の振動モードの変位分布(図中8)を示している。縦軸は光学素子1の面外方向の変位で、撮像素子4が配置されている側と反対側を正としている。横軸は図中の光学素子1の左右方向の位置と対応している。また、本実施形態では、この2つの振動の曲げ中立面が光学素子1の内部になっている。

0044

変位の正の箇所に配置されている圧電素子2には左右方向に伸縮の変形が生じ、変位の負の箇所に配置されている圧電素子2には逆位相(180°)の左右方向の伸縮の変形が生じる。左右の両端の圧電素子2aと2bは矩形板形状で、左右方向(第1の方向A)においては、光学素子1の端から光学有効範囲5まで配置されており、上下方向(第2の方向B)においては、光学素子1の両端まで配置されている。

0045

圧電素子2aと2bは、光学素子1と結合されている裏面には全面に一様な電極を有しており、反対面の表面には複数に分割された電極(以下、分割電極9)を有している。

0046

分割電極9の分割箇所は、図中の破線で対応を示しているように、第1の振動モードの変位分布7での変位がほぼゼロとなる節の箇所と、第2の振動モードの変位分布8での変位がほぼゼロとなる節の箇所との中間の位置となっている。

0047

分極時には、裏面の電極をグラウンド電位とし、表面の分割電極9には図中の+及び−で示しているように、隣合う電極には異なる極性電位を印加している。左の圧電素子2aの分割電極には左端から+−+−の極性が与えられ、右の圧電素子2bには右端から+−+−の極性が与えられている。分極方向は圧電素子2の厚さ方向で、図4中では紙面に直交した方向である。

0048

分極後には導電性を有する導電性塗料10を、分割電極9を跨るように施していて、分割電極9のいずれかの箇所に電圧を印加すると、一つの圧電素子2の分割電極9の全てが同電位となるようになっている。

0049

圧電素子2は分極時の電位の極性と同じ電位の極性を与えると分極方向との直交方向に伸びる力が発生し、分極時の電位と異なる電位の極性を与えると縮む特性をもっている。交番電圧を印加した際には、交番電圧の周期と一致した周期的な伸縮力を発生する。また、交番電圧では分極時の極性によって、交番電圧に対する伸縮力の位相(0°または180°)が決定される。

0050

交番電圧である駆動電圧E(1)=V(1)×COS(2πft)を左の圧電素子2aに印加する。駆動電圧E(1)は本発明における第1の駆動電圧であり、V(1)は電圧の大きさ(振幅)で、fは周波数で、tは時間である。これとは時間位相がディグリー(degree)単位でδだけ異なる交番電圧である駆動電圧E(2)=V(2)×COS(2πft+δ×π/180)を右の圧電素子2bに印加する。駆動電圧E(2)は本発明における第2の駆動電圧であり、V(2)は電圧の大きさ(振幅)である。
このとき、圧電素子2aと2bが逆位相の曲げ変形となる面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード7)に主に寄与する電圧は、駆動電圧E(1)とE(2)の差の成分を左右の圧電素子2aと2bに振り分けたE(差)であり、E(差)=E(1)/2−E(2)/2で定義される。

0051

一方、圧電素子2aと2bが同位相の曲げ変形となる面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード8)に主に寄与する電圧は、駆動電圧E(1)とE(2)の和の成分を左右の圧電素子2aと2bに振り分けたE(和)で、E(和)=E(1)/2+E(2)/2で定義される。

0052

ここで、E(差)による圧電素子2で発生する伸縮力の位相について、E(差)を位相の基準として述べる。左の圧電素子2aの伸縮力の位相の分布は、分割電極9に対応して左端から、0°、180°、0°、180°となる。右の圧電素子2bでは右端から、180°、0°、180°、0°となる。
この伸縮力の位相の分布は、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の変位分布7による圧電素子2の伸縮の変形の位相の分布とほぼ合致する。
このため、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の大きな振動を得ることが可能となっている。

0053

一方、伸縮力の位相の分布は、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の変位分布8と、左の圧電素子2aでほぼ合致し、右の圧電素子2bでほぼ逆転している。
E(差)による面外11次曲げ振動(第2の振動モード)では、左の圧電素子2aによって励起される振動と、右の圧電素子2bによって励起される振動とが、大きさが等しく逆位相であるため、これらが打ち消し合って大きさがほぼゼロとなる。このため、E(差)では面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の振動は発生しない。
また、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と左右方向の節数が異なる他の振動モードに対しても、伸縮力の位相の分布と変形の位相分布が異なり、振動を打ち消す効果によって、振動を小さくできる。

0054

つぎに、E(和)による圧電素子2で発生する伸縮力の位相についてE(和)を位相の基準として述べる。左の圧電素子2aの伸縮力の位相の分布は、分割電極9に対応して左端から、0°、180°、0°、180°となる。同様に右の圧電素子2bでは右端から、0°、180°、0°、180°となる。

0055

この伸縮力の位相の分布は、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)の変位分布8による圧電素子2の伸縮の変形の位相の分布とほぼ合致する。このため、面外11次曲げ振動(第2の振動モード)の大きな振動を得ることが可能となっている。

0056

この伸縮力による位相分布は、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の変位分布7と、左の圧電素子2aでほぼ合致し、右の圧電素子2bでほぼ逆転している。
E(和)による面外10次曲げ振動(第1の振動モード)では、左の圧電素子2aによって励起される振動と、右の圧電素子2bによって励起される振動とが、大きさが等しく逆位相であるため、これらが打ち消し合って大きさがほぼゼロとなる。このため、E(和)では面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)の振動は発生しない。
また、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)とは左右方向の節数が異なる他の振動モードに対しても、伸縮力の位相の分布と変形の位相分布とが異なり、振動を打ち消す効果によって、振動を小さくできる。

0057

ここで、第1の振動モードの振動及び第2の振動モードの振動と、駆動電圧E(1)及び駆動電圧E(2)の関係を、上述した加振電圧E(差)及び加振電圧E(和)に加えて、振動応答(応答振幅ゲインと応答位相)を考慮して、改めて述べる。

0058

加振電圧E(差)に対する第1の振動モードの振動応答の、応答振幅のゲインをα(1)とし、応答位相をβ(1)とする。同様に、加振電圧E(和)に対する第2の振動モードの振動応答の、応答振幅のゲインをα(2)とし、応答位相をβ(2)とする。応答振幅のゲインα(1)及びα(2)は、図4に示した第1及び第2の振動モードの変位分布の中で、最大変位の箇所で算出した値としている。この最大振幅の箇所は、1波長ごとに1箇所あり、これらの位置では同じ振幅値となっている。

0059

各々の振動モードでの応答位相の分布は、変位が正の箇所で一定値となっている。また、変位が負の箇所でも一定値となり、正の箇所の応答位相に対し、180°異なる逆位相となっている。応答位相β(1)及びβ(2)は、変位が正の箇所で、応答位相を算出した値としている。
α(1)、β(1)、α(2)、β(2)は、レーザドップラー振動計などを用いて測定し、既知の値となる。併せて、ここでは、駆動電圧E(1)、駆動電圧E(2)、加振電圧E(差)、加振電圧E(和)の大きさを、順にV(1)、V(2)、V(差)、V(和)とし、時間位相を順に、θ(1)、θ(2)、θ(差)、θ(和)とする。

0060

第1の振動モードの振動は、大きさX(1)と時間位相φ(1)とするためのV(差)とθ(差)が、下記の式(1)(2)のように求められる。大きさX(1)は、第1の振動モードの変位分布の中で、最大変位の箇所の振幅の値である。時間位相φ(1)は、変位が正の箇所の応答位相の値である。
V(差)=X(1)/α(1) ・・・式(1)
θ(差)=φ(1)−β(1) ・・・式(2)

0061

同様に、第2の振動モードの振動は、大きさX(2)と時間位相φ(2)とするためのV(和)とθ(和)が、下記の式(3)(4)のように求められる。大きさX(2)は、第2の振動モードの変位分布の中で、最大変位の箇所の振幅の値である。時間位相φ(2)は、変位が正の箇所の応答位相の値である。
V(和)=X(2)/α(2) ・・・式(3)
θ(和)=φ(2)−β(2) ・・・式(4)

0062

また、駆動電圧E(1)は、E(和)とE(差)を足したものとなり、E(2)は、E(和)からE(差)を引いたものとなり、V(1)、θ(1)、V(2)、θ(2)は、下記の式(5)〜(8)で求められる。
V(1)=[{V(和)×cosθ(和)+V(差)×cosθ(差)}2+{V(和)×sinθ(和)+V(差)×sinθ(差)}2]0.5・・・式(5)
θ(1)=TAN−1[{V(和)×sinθ(和)+V(差)×sinθ(差)}/{V(和)×cosθ(和)+V(差)×cosθ(差)}]
・・・式(6)
V(2)=[{V(和)×cosθ(和)−V(差)×cosθ(差)}2+{V(和)×sinθ(和)−V(差)×sinθ(差)}2]0.5・・・式(7)
θ(2)=TAN−1[{V(和)×sinθ(和)−V(差)×sinθ(差)}/{V(和)×cosθ(和)−V(差)×cosθ(差)}]
・・・式(8)

0063

本発明において、より効率よく塵埃など(振動によって移動させられる全ての物体)を移動させるには、第1の振動モードの振動と第2の振動モードの振動が、同じ大きさで、かつ、時間位相差が90°であると良い。つまり、X(1)=X(2)=X(0)、φ(1)−φ(2)=90°の条件である。X(0)は、事前に移動させる物体の移動状態をみて設定すべき振幅の大きさである。この条件を満足するV(1)とV(2)及びθ(1)とθ(2)が、式(1)〜(8)を用いて求められる。

0064

X(0)をγ倍にするには、V(1)とV(2)を共にγ倍にすれば良く、V(1)とV(2)との電圧振幅比ε=V(2)/V(1)は変わらない。また、θ(1)を時間位相の基準とすると、時間位相差δは、δ=θ(2)−θ(1)となる。すなわち、より効率よく塵埃などを移動するには、電圧振幅比εと時間位相差δを式(1)〜(8)とX(1)=X(2)の式(9)とφ(1)−φ(2)=90°の式(10)を用いて算出できる。

0065

ここで、本発明の理解を高めるために、上記した従来技術(特許文献1)における課題について、更に詳細に説明する。図5(A)は、加振電圧の周波数と単位電圧(1V)当たりの各振動モードの振動の応答ゲインを表すグラフである。図5(B)は、加振電圧の周波数と各振動モードの振動の応答位相を表すグラフである。

0066

図5(A)中において、プロットDは先に説明した交番電圧である加振電圧E(差)が単位電圧(1V)の場合の第1の振動モードの振動の応答ゲインのα(1)を示している。そして、プロットEは交番電圧である加振電圧E(和)が単位電圧(1V)の場合の第2の振動モードの振動の応答ゲインα(2)を示している。図5(B)中において、プロットDはE(差)に対する第1の振動モードの振動の応答位相β(1)を示し、プロットEはE(和)に対する第2の振動モードの振動の応答位相β(2)を示している。

0067

振動体3にはこれら振動モードの固有振動数の付近に、他にも多くの振動モードが存在する(図5(A)中、プロットのF及びG及びH)。

0068

これらは、第1の振動モードDや第2の振動モードEと変位の分布が異なり、生成される振動の振幅分布や位相分布を変化させる振動モードである。

0069

図5(A)中のプロットFの振動モードは、左右方向(第1の方向A)の曲げ次数が第1の振動モードDと同じく面外10次曲げ変形であり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外1次曲げ変形となる振動モード(第3の振動モード)である。第3の振動モードは、上下方向(第2の方向B)の中央部と上下端部において、応答ゲインの最大値を持ち、Fはこの応答ゲインの最大値のE(差)が単位電圧(1V)の場合の大きさを示している。図5(B)中のプロットFは、E(差)に対する第3の振動モードの振動の応答位相を示している。

0070

図6(a−1)は、第3の振動モードFの光学素子1の変形形状を示す斜視図で、図6(a−2)は第1の方向Aから見た図である。

0071

第3の振動モードFの変形形状は、第1の振動モードDの変形形状に加えて上下方向(第2の方向B)にも変形がある。このため、第3の振動モードは、第1の振動モードDよりもやや高い固有振動数を有する。

0072

多くの不要な振動モードの中でも、第3の振動モードFの振動が特に大きくなる。

0073

第3の振動モードFの振動が特に大きくなる理由について、ここで述べる。

0074

第1の振動モードDの振動と第2の振動モードEの振動を発生させるために、圧電素子2a及び2bに駆動電圧を印加して、左右方向(第1の方向A)に伸縮力を発生させ、振動体3の方向の曲げ変形力を発生させている。
前述したように、分割電極9の分割位置は、第1の振動モードD及び第2の振動モードEの節線の位置に近くなっている。

0075

一方、第3の振動モードFも、第1の方向Aでの伸縮変形の位相分布が、圧電素子2の発生する伸縮力の位相分布に近くなっている。
このため、第3の振動モードFの振動が大きくなる。さらに、圧電素子2では、上下方向(第2の方向B)も分極方向と直交した方向であり、この方向にも伸縮力を発生して、振動体3に対して曲げ変形力を発生する。

0076

第3の振動モードFは、この上下方向(第2の方向B)に曲げ変形がある振動モードである。これにより、第3の振動モードFの振動はさらに大きくなる。
同様に、図5中のGに振動の大きさを示している左右方向(第1の方向A)の曲げ次数が第2の振動モードと同じ面外11次曲げ変形となり、かつ、上下方向(第2の方向B)に面外1次曲げ変形となる振動モード(第4の振動モード)の振動も、特に大きくなる。第4の振動モードは、上下方向(第2の方向B)の中央部と上下端部において、応答ゲインの最大値を持ち、Gはこの応答ゲインの最大値のE(和)が単位電圧(1V)の場合の大きさを示している。図5(B)中のプロットGは、E(和)に対する第4の振動モードの振動の応答位相を示している。

0077

図6(b−1)は、第4の振動モードGの光学素子1の変形形状を示す斜視図で、図6(b−2)は第1の方向Aから見た図である。

0078

第4の振動モードGの変形形状は、第2の振動モードEの変形形状に加えて上下方向(第2の方向B)にも変形がある。このため、第4の振動モードGは、第2の振動モードEよりもやや高い固有振動数を有する。

0079

第3の振動モードFや第4の振動モードGは、塵埃を移動させる為に励起する第1の振動モードD及び第2の振動モードEと、上下方向(第2の方向B)の変位分布が異なる。このため、これらの第3の振動モードFや第4の振動モードGの振動が大きいと、塵埃などを移動させるための振動の、振幅分布や位相分布が変化してしまう。そして、塵埃を移動できない箇所や移動力が小さい箇所が発生し、塵埃を移動させる効率が低くなってしまう。

0080

ここで、特に大きくなってしまう第3の振動モードの振動と第4の振動モードの振動の応答を加味して、振幅分布と位相分布の応答を述べる。図6の節線Cの箇所は、第3の振動モード及び第4の振動モードの振幅がゼロである箇所であるため、第3の振動モードの振動及び第4の振動モードの振動の影響を全く受けない。しかし、それ以外の箇所は振幅があるため、影響を受けてしまう。

0081

第1の振動モードと第3の振動モードは左右方向(第1の方向A)の変位分布が共に面外10次曲げとなっている。これら振動モードの振動が合成された振動を10次振動とする。この大きさをX(10、b)とし、時間位相をφ(10、b)とする。さらに、第3の振動モードについて、応答振幅のゲインをα(3、b)とし、応答位相をβ(3、b)とする。第3の振動モードは第2の方向Bにおいて、応答振幅及び応答位相が分布を持つ。()内のbは第2の方向の位置で、α(3、b)及びβ(3、b)を位置bの関数とする。伴って、10次振動も第2の方向Bにおいて、応答振幅及び応答位相が分布を持つため、X(10、b)及びφ(10、b)でも同様に、()内のbを第2の方向の位置とした関数としている。

0082

応答振幅のゲインα(3、b)は、第3の振動モードの位置bでの変位分布の中で、最大変位の箇所で算出した値としている。この最大振幅の箇所は、第1の方向Aの1波長ごとに1箇所あり、これらの位置では同じ振幅値となっている。第3の振動モードでの応答位相の分布は、同じ位置bの中で変位が正の箇所において一定値となっている。また、変位が負の箇所においては、正の箇所の応答位相に対し、180°異なる逆位相の一定値となっている。応答位相β(3、b)は、位置bにおいて、変位が正の箇所で、応答位相を算出した値としている。また、第1の振動モードの振動と第3の振動モードの振動とが、合成された振動の、E(差)に対する応答振幅のゲインをα(10、b)とし、応答位相をβ(10、b)とする。これらは、第2の方向の位置bの関数となっている。

0083

α(10、b)及びβ(10、b)はE(差)のみを印加した状態でレーザドップラー振動計などを用いて測定し、既知の値となる。また、有限要素法を用いた数値解析モード解析を行うことによって、第3の振動モードの応答ゲインがゼロである節位置を特定することができる。この節位置では、第3の振動モードの影響が無いため、上述の測定によって、第1の振動モードの振動の応答振幅のゲインα(1)及び応答位相β(1)を測定することができる。第1の振動モードは、第2の方向Bに同じ応答を持っている。測定したα(10、b)及びβ(10、b)からα(1)及びβ(1)を数学的なベクトル分解を行うことで、α(3、b)及びβ(3、b)を既知の値とできる。

0084

10次振動の大きさX(10、b)と時間位相φ(10、b)は下記の式(11)〜(14)で表わされる。
X(10、b)=α(10、b)×V(差) ・・・式(11)
α(10、b)=[{α(1)×sinθ(1)+α(3、b)×sinθ(3、b)}2+{α(1)×cosθ(1)+α(3、b)×cosθ(3、b)}2]0.5
・・・式(12)
φ(10、b)=β(10、b)+θ(差) ・・・式(13)
β(10、b)=tan−1[{α(1)×sinθ(1)+α(3、b)×sinθ(3、b)}/{α(1)×cosθ(1)+α(3、b)×cosθ(3、b)}]
・・・式(14)

0085

同様に、第2の振動モードと第4の振動モードは左右方向(第1の方向A)の変位分布が共に面外11次曲げとなっている。これら振動モードの振動が合成された振動を11次振動とする。この大きさをX(11、b)とし、時間位相をφ(11、b)とする。さらに、第4の振動モードについて、応答振幅のゲインをα(4、b)とし、応答位相をβ(4、b)とする。第4の振動モードも11次振動も、第2の方向Bにおいて、応答振幅及び応答位相が分布を持つ。()内のbは第2の方向の位置で、α(4、b)及びβ(4、b)とX(11、b)及びφ(11、b)を位置Bの関数としている。α(4、b)とβ(4、b)とα(11、b)とβ(11、b)の定義は、上述のα(3、b)とβ(3、b)とα(10、b)とβ(10、b)と同様である。α(2)、β(2)、α(4、b)、β(4、b)、α(11、b)、β(11、b)はE(和)のみを印加した状態でレーザドップラー振動計による測定やモード解析の結果やベクトル分解などを用いて、既知の値とできる。

0086

11次振動の大きさX(11、b)と時間位相φ(11、b)は下記の式(15)〜(18)で表わされる。
X(11、b)=α(11、b)×V(和) ・・・式(15)
α(11、b)=[{α(2)×sinθ(2)+α(4、b)×sinθ(4、b)}2+{α(2)×cosθ(2)+α(4、b)×cosθ(4、b)}2]0.5
・・・式(16)
φ(11、b)=β(11、b)+θ(和) ・・・式(17)
β(11、b)=tan−1[{α(2)×sinθ(2)+α(4、b)×sinθ(4、b)}/{α(2)×cosθ(2)+α(4、b)×cosθ(4、b)}]
・・・式(18)

0087

先に述べた第1振動モードと第2の振動モードのみを考慮した場合と同様に、これらの式(11)〜(18)と式(5)〜(8)とX(0)=X(10、b)=X(11、b)の式(19)とφ(10、b)−φ(11、b)=90°の式(20)から、より効率よく塵埃などを移動させるE(1)とE(2)の電圧振幅比εと時間位相差δを用いて算出し設定するべきである。X(0)は、事前に移動させる物体の移動状態をみて設定すべき振幅の大きさである。

0088

従来技術(特許文献1)では、主に励起する二つの振動モード(本実施形態では、第1の振動モードと第2の振動モードに相当する)の振動のみを考慮して、印加する駆動電圧を設定している。しかしながら、他の振動モードの応答は起こるものの、これを考慮したものにはなっていない。移動させる向きを切替えるために、電圧設定を変更することは述べられているが、移動させる向きが同じであれば、2つの駆動電圧の組み合わせはひとつの設定となっている。つまり、移動させる向きが同じであれば、2つの駆動電圧の時間位相差は、ある特定の組み合わせとなっている。もちろん2つの駆動電圧の電圧振幅比も、ある特定の組み合わせとなっている。このため、第3の振動モードと第4の振動モードがともに振幅がゼロの節線となっている箇所付近のみが、最良な振動状態になっており、他の箇所は塵埃を移動させる能力が低くなってしまっている。つまり、振動体に生じる合成振動の振幅分布は変化せず、一定となっている。

0089

本発明は、第3や第4の振動モードなどの不要な振動モードの振動の応答も考慮し、広範囲をより効率よく塵埃などを移動させるものである。

0090

ここで、本実施形態での振動応答と駆動方法及びその効果について述べる。

0091

駆動電圧E(1)及びE(2)の周波数は、E(差)とE(和)の大きさが同じであった場合に、第1及び第2の振動モードの振動が同じ大きさとなる周波数であり、図5(A)中ではfとしている。E(1)及びE(2)の周波数がfであると、E(差)とE(和)の周波数もfとなる。

0092

周波数fでは、第3の振動モードの振動の大きさの最大値Fは、第1及び第2の振動モードの振動の大きさの半分となっている。また、第4の振動モードの振動の大きさの最大値Gは、第1及び第2の振動モードの振動の大きさの4分の1となっている。

0093

第1の振動モードの振動の大きさで、これら振動の大きさを正規化すると、α(1)=1、α(2)=1、α(3、b)の最大値は0.5、α(4、b)の最大値は0.25となる。

0094

また、E(差)に対する第1の振動モードDの応答位相β(1)は−165°で、E(和)に対する第2の振動モードEの応答位相β(2)は−15°となっている。E(差)に対する第3の振動モードFの応答位相β(3、b)は、図6(a−1)中の第1の方向Aに平行な二つの節線Cに挟まれる領域では−157°で、その外側では反転した23°となっている。

0095

E(和)に対する第4の振動モードGの応答位相β(4、b)は、図6(b−1)中の第1の方向Aに平行な二つの節線Cに挟まれる領域では−12°で、その外側では反転した168°となっている。

0096

ここで、従来技術に基づく、具体的な電圧設定と振動状態を述べる。

0097

電圧設定の電圧振幅比εと時間位相差δの算出には、式(1)〜(10)と、α(1)及びα(2)の値、β(1)及びβ(2)の値を用いる。
式(1)にα(1)=1を代入すると、V(差)=X(1)となる。式(3)にα(2)=1を代入すると、V(和)=X(2)となる。これらと式(9)から、V(差)=V(和)となる。
式(2)にβ(1)=−165°を代入すると、θ(差)=φ(1)+165°となる。式(4)にβ(2)=−15°を代入すると、θ(和)=φ(2)+15°となる。これらと式(10)から、θ(差)−θ(和)=240°となる。ここで、θ(差)を時間位相の基準としてθ(差)=0°とすると、θ(和)=−240°となる。
式(5)〜(8)にV(差)=V(和)とθ(差)=0°とθ(和)=−240°を代入して計算すると、V(1)=V(差)、V(2)=1.732×V(差)、θ(1)=60°、θ(2)=150°となる。これらから、電圧振幅比ε=V(2)/V(1)=1.732、及び、時間位相差δ=90°と設定される。この電圧振幅比ε及び時間位相差δによって、第1の振動モードの振動と第2の振動モードの振動とが、同じ大きさ、かつ、90°時間位相差の振動状態となる。例えば、設定すべき振幅の大きさX(0)=100とすると、電圧設定はV(1)=100、V(2)=173.2、E(2)のE(1)に対する時間位相差δ=90°となり、振動状態は、X(0)=X(1)=X(2)=100、φ(1)−φ(2)=90°となる。

0098

しかしながら、上述したように第3及びと第4の振動モードの振動の影響があるために、第3及び第4の振動モードの振動の節線の位置以外では、10次振動と11次振動は、同じ大きさ、かつ、90°時間位相差の状態では無くなっている。

0099

ここで、例として、同じ電圧設定での、上下方向(第2の方向B)の中央部と上下端部の10次振動と11次振動の応答を述べる。

0100

上下方向(第2の方向B)の中心部の10次振動と11次振動の応答は、式(11)〜(14)と、上述のV(差)=V(和)とθ(差)=0°とθ(和)=−240°と、α(3、b)=0.5とβ(3、b)=−165°とα(4、b)=0.25とβ(4、b)=−12°から求められる。これらから、X(10、b)=150、φ(10、b)=−162°、X(11、b)=125、φ(11、b)=−254°となる。このように、X(10、b)とX(11、b)は同じ大きさとなっておらず、かつ、φ(10、b)とφ(11、b)は90°時間位相差にもなっておらず、塵埃を移動させる能力が低くなってしまっている。また、X(10、b)とX(11、b)は設定すべき振幅の大きさX(0)=100と大きく異なってしまっている。

0101

同様に、上下方向(第2の方向B)の上下端部については、式(11)〜(14)と、上述のV(差)=V(和)とθ(差)=0°とθ(和)=−240°と、α(3、b)=0.5とβ(3、b)=−165°とα(4、b)=0.25とβ(4、b)=−12°から求められる。これらから、X(10、b)=51、φ(10、b)=−173°、X(11、b)=75、φ(11、b)=−256°となる。このように、X(10、b)とX(11、b)は同じ大きさとなっておらず、かつ、φ(10、b)とφ(11、b)は90°時間位相差にもなっておらず、塵埃を移動させる能力が低くなってしまっている。また、X(10、b)とX(11、b)は設定すべき振幅の大きさX(0)=100と大きく異なってしまっている。

0102

本実施形態では、特に大きくなる第3の振動モード及び第4の振動モードの応答(励起/励振)も考慮して、制御手段は、駆動電圧E(1)及びE(2)の電圧振幅比εと時間位相差δを変化させている。つまり、駆動電圧E(1)及びE(2)の電圧振幅比εと時間位相差δを、所定時間単位で時系列に変化させている。第3及び第4の振動モードの振動の応答は、上述のとおり、第2の方向Bに分布を持っている。これを考慮して、第3の振動モードの振動の応答振幅のゲインα(3、b)と応答位相β(3、b)を閾値として、図7(A)に示すように、光学素子1を上下方向(第2の方向)に、10個の領域(領域1〜10)に仮想的に分割している。図7(B)は、第3の振動モードの光学素子1の変形形状を示す斜視図である。図7(C)は第1の方向Aから第1から見た図で、領域1〜10の配置を示している。

0103

本発明は、これら領域ごとに最適な交番電圧の設定があることに着目し、合成振動の振幅分布を変化させるべく、駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させる。このような駆動電圧により、理想的には、最適な振動状態となる領域が順次時系列で切り替わり、1回の制御期間中に、全領域が最適な振動状態を経験することを実現するものである。

0104

第1から第4の振動モードの応答振幅のゲイン及び応答位相の分布は、いずれも、上下方向に対称な関係になっている。従って、図7(A)に示すように、領域1から10と交番電圧の設定との組合せは、領域1から領域10の上下対称な領域を同一の交番電圧を設定する(印加する)一組の領域としている。そして、この一組の同一の交番電圧を設定する領域に対して、第1から第5の交番電圧を設定する。即ち、本発明において、「同一の交番電圧を設定する領域」とは、必ずしも1つの物理的に連続する領域だけではなく、物理的に離れた位置であっても、同一の交番電圧を設定する領域であれば、「同一の交番電圧を設定する領域」となる。従って、「同一の交番電圧を設定する第1の領域」と「同一の交番電圧を設定する第2の領域」というように区別する場合には、各々の領域は、物理的に連続した1つの領域の場合もあれば少なくとも一方の領域が物理的に離れた領域の集合体の場合もあり得る。そして第1の領域又は第2の領域に含まれる領域は各々同一の交番電圧が設定され、第1の領域の交番電圧と第2の領域の交番電圧とは互いに異なる交番電圧の設定となる。

0105

また本発明において、設定(仮想的に分割)される領域は少なくとも2つ存在すれば本発明の効果は得られるが、設定する(分割する)領域の数は、2つに限られず、設定する振動の状態に応じて、2以上の領域に設定(分割)することもできる。つまり、第1〜第nの領域(nは2以上の整数)に仮想的に分割して、夫々の領域ごとに最適な交番電圧の設定を算出するとよい。

0106

また各領域の設定(分割)の仕方は、設定する振動の状態や振動対象物の形状に基づいて適宜定められる。例えば方形の振動対象物であれば、振動対象物の長手方向と垂直な方向に複数のライン状に領域を設定(分割)することができる。同様に振動対象物の長手方向と平行な方向に複数のライン状に領域を設定(分割)することもできる。また振動対象物の長手方向と垂直な方向及び平行な方向に格子状に複数のライン状に領域を設定(分割)することができる。円形状の振動対象物であれば、方形の振動対象物と同様にライン状に複数の領域を設定することもできるが、同心円状に複数の領域を設定することもできる。

0107

本実施形態においては、領域5と領域6とを合わせて、同一の交番電圧である第1の交番電圧を設定する第1の領域としている。同様に領域4と領域7とを合わせて、同一の交番電圧である第2の交番電圧を設定する第2の領域としている。同様に領域3と領域8とを合わせて、同一の交番電圧である第3の交番電圧を設定する第3の領域としている。同様に領域2と領域9とを合わせて、同一の交番電圧である第4の交番電圧を設定する第4の領域としている。同様に領域1と領域10とを合わせて、同一の交番電圧である第5の交番電圧を設定する第5の領域としている。そして第1の交番電圧乃至第5の交番電圧は互いに電圧振幅比と時間位相差との少なくとも一方の値が異なる。

0108

本発明の制御装置には、これら第1から第5の領域ごとに最適な交番電圧が設定されており、第1から第5の領域ごとに順次最適な振動状態を実現するものである。領域と交番電圧の設定の対応は、図7(A)に示すとおりである。第1の領域を最適な振動状態とするために、前記したように第1の交番電圧の設定がある。第2の領域を最適な振動状態とするために、第2の交番電圧の設定がある。第3の領域を最適な振動状態とするために、第3の交番電圧の設定がある。第4の領域を最適な振動状態とするために、第4の交番電圧の設定がある。第5の領域を最適な振動状態とするために、第5の交番電圧の設定がある。ここで上記において、「第1の交番電圧の設定」として表現しているのは、圧電素子が2つ設けられている場合は、「第1の領域」を最適な振動状態とするため、第1の圧電素子と第2の圧電素子とに夫々印加する交番電圧の「組み合わせ」のことである。つまり、第1の交番電圧の設定には、第1の圧電素子と第2の圧電素子とに夫々印加する交番電圧同士の振幅比(第1の電圧振幅比)と時間位相差(第1の時間位相差)がある。同じように、第2の交番電圧の設定には、第2の電圧振幅比と第2の時間位相差がある。同様に、第3から第5の交番電圧の設定には、第3から第5の電圧振幅比と第3から第5の時間位相差がある。つまり、第nの領域に対応する第nの交番電圧の設定は、交番電圧同士の振幅比(第nの電圧振幅比)と時間位相差(第nの時間位相差)で表現される。

0109

交番電圧の設定の算出には、図8に示す値を用いている。各々の交番電圧の設定の算出には、対応する各領域のα(3、b)の中間値を用いている。第1及び第2の振動モードの振動の応答は、上下方向(第2の方向B)に応答が均一である。全ての領域において、α(1)=1、α(2)=1、β(1)=−165°、β(2)=−15°となっている。第1の交番電圧を設定する第1の領域である領域5と領域6では、α(3、b)は0.3〜0.5で、この中間値0.4を用いている。その他の交番電圧の設定においても、同様にα(3、b)の範囲の中間値を用いている。β(3、b)は、図7(B)の第1の方向Aに平行な二つの節線Cに挟まれる領域では、−157°で、その他の外側では23°である。これに対応して、図8に示すβ(3、b)の値となっている。第3の交番電圧を設定する第3の領域である領域3及び領域8の交番電圧の設定値は、−157°または23°と記載しているが、ここで用いる応答振幅のゲインα(3、b)がゼロであるので、実質的な意味を持たない。

0110

第4の振動モードの上下方向(第2の方向B)の変位分布は、第3の振動モードと同じとなるので、α(4、b)∝α(3、b)となる。α(3、b)もα(4、b)も上下方向(第2の方向B)の中心部と上下端部で最大値を持ち、前者が0.5で、後者が0.25である。これらのことから、α(4、b)=0.5×α(3、b)となる。β(4、b)は、図7(B)の第1の方向Aに平行な二つの節線Cに挟まれる領域では、−12°で、その他の外側では168°である。これに対応して、図8に示すβ(4、b)の値となっている。第3の交番電圧を設定する第3の領域である領域3及び領域8の交番電圧の設定値は、−12°または168°と記載しているが、ここで用いる応答振幅のゲインα(4、b)がゼロであるので、実質的な意味を持たない。

0111

図8に示す値と式(5)〜(8)と式(11)〜(20)とを用いて、上述の従来技術に基づく具体的な電圧設定と同じくX(0)=100として、各々の交番電圧の設定を算出している。

0112

図8に示した値と式(12)(14)(16)(18)から、各々の交番電圧の設定に用いる、α(10、b)、β(10、b)、α(11、b)、β(11、b)の値は図9(A)に示すとおりとなる。図9(A)に示した値と式(11)(13)(15)(17)(19)(20)から、V(差)、θ(差)、V(和)、θ(和)は図9(B)に示すとおりとなる。図9(B)に示した値と式(5)〜(8)から、V(1)、θ(1)、V(2)、θ(2)は図9(C)に示すとおりとなる。また、電圧振幅比εと時間位相差δの値も図9(C)に示す。第1から第5の電圧振幅比εは、互いに異なった値となっている。第1から第5の時間位相差δも、互いに異なった値となっている。

0113

ここで、各交番電圧の設定において、対応する領域内の振動状態について述べる。

0114

各々の領域で、対応する交番電圧の設定の算出に用いた箇所は、X(10)=X(11)=X(0)=100、かつ、φ(1)−φ(2)=90°となっており、最良の振動状態となっている。ここから離れる程に、振動状態は悪化していき、領域内では、領域の境界(以下、領域境界)が最も振動状態が悪い状態となっている。

0115

この領域境界での振動状態を算出する。図10に、領域境界でのα(1)、β(1)、α(2)、β(2)、α(3、b)、β(3、b)、α(4、b)、β(4、b)の値を示す。図10に示した値と式(12)(14)(16)(18)から、各々の領域境界での、α(10、b)、β(10、b)、α(11、b)、β(11、b)の値は図11に示すとおりとなる。図11の値と、図9(B)の交番電圧の設定の値と、式(11)(13)(15)(17)から、各々の交番電圧の設定における領域境界での振動状態は、図12(A)のとおりとなる。

0116

ここで、従来技術に対しての本実施形態での効果について、述べる。

0117

これまで述べてきたとおり、塵埃などを効率よく移動させる最良の振動状態は、10次振動と11次振動が、同じ大きさで、かつ90°時間位相差となっている状態である。この指標として、X(10、b)/X(11、b)の値と、φ(10、b)−φ(11、b)の値を用いることができる。X(10、b)/X(11、b)が1に近いほど良く、併せてφ(10、b)−φ(11、b)が90°に近いほど良い。

0118

先に述べた従来技術による駆動電圧の設定は、光学素子1の全体に対して一組の交番電圧の設定を用いている。つまり、2つの駆動電圧の電圧振幅比と時間位相差は一定である。第3及び第4の振動モードの第1の方向Aに平行な節線の位置では、X(1)=X(2)=X(10、b)=X(11、b)となり、X(10、b)/X(11、b)が1となる。また、φ(1)=φ(10、b)、φ(2)=φ(11、b)でφ(1)−φ(2)=90°であるので、φ(10、b)−φ(11、b)=90°となる。しかし、例えば、α(3、b)やα(4、b)が最大値のなる上下方向(第2の方向B)の中心部や上下端部では、これと振動状態が大きく異なってしまう。上述したように、この中心部では、X(10、b)=150、φ(10、b)=−162°、X(11、b)=125、φ(11、b)=−254°となっている。これらから、X(10、b)/X(11、b)=150/125=1.2で、φ(10、b)−φ(11、b)=−162°−(−254°)=92°である。上下端部では、X(10、b)=51、φ(10、b)=−173°、X(11、b)=75、φ(11、b)=−256°となっている。これらから、X(10、b)/X(11、b)=51/75=0.68で、φ(10、b)−φ(11、b)=−173°−(−256°)=83°である。より悪い振動状態は、上下端部のX(10、b)/X(11、b)=0.68で、φ(10、b)−φ(11、b)=83°である。ここでは、最良の状態に対し、X(10、b)/X(11、b)が32%の差異があり、φ(10、b)−φ(11、b)が7°の差異がある。

0119

一方、本実施形態での駆動電圧の設定では、同一の交番電圧を設定する領域を構成する各領域境界でのX(10、b)/X(11、b)とφ(10、b)−φ(11、b)を算出すると、図12(B)となる。算出には、先に示した図12(A)のX(10、b)、X(11、b)、φ(10、b)、φ(11、b)を用いている。

0120

本実施形態の駆動手順は、駆動電圧の設定を、第1から第5の交番電圧の設定まで、所定時間単位で順次時系列に切替え、振動体に生成する合成振動の振幅分布と位相分布を時系列に切替えるものである。つまり、本発明では、駆動電圧同士の電圧振幅比を、第1の交番電圧同士の電圧振幅比から第nの交番電圧同士の電圧振幅比まで、時系列で変化させたり、駆動電圧同士の位相差を、第1の交番電圧同士の位相差から第nの交番電圧同士の位相差まで、時系列で変化させたり、している。これによって、各々の交番電圧の設定に対応する領域を、良好な振動状態にする。各対応する領域での最も悪い振動状態の箇所は、領域境界の位置で、図12(B)である。図12(B)のとおり、その中で最も悪い振動状態は、第5の交番電圧の設定における領域1及び領域10の上下端部で、X(10、b)/X(11、b)=0.90で、φ(10、b)−φ(11、b)=87.6°である。最良の状態である、X(10、b)/X(11、b)=1かつφ(10、b)−φ(11、b)=90°に対し、X(10、b)/X(11、b)が10%の差異となり、φ(10、b)−φ(11、b)が2.4°の差異となっている。

0121

駆動手順が完了した際には、光学素子1の全ての箇所が、これ以上に良好な振動状態を経験している。従来技術では、最良の状態である、X(10、b)/X(11、b)=1かつφ(10、b)−φ(11、b)=90°に対し、X(10、b)/X(11、b)が32%の差異があり、φ(10、b)−φ(11、b)が7°の差異であるので、本実施形態の方が、X(10、b)/X(11、b)はより良くなっており、φ(10、b)−φ(11、b)もより良くなっているので、光学素子1の全ての箇所として、より効率よく塵埃などを移動させることができている。また領域境界においても、X(10、b)及びX(11、b)が従来技術に比較し目標値X(0)=100に近い値とできている。

0122

ここで、本発明においては、合成振動の振幅分布を変化させるべく、駆動電圧同士の電圧振幅比と時間位相差とのうち少なくとも一方を変化させるだけでもよいが、本実施形態のように、電圧振幅比と時間位相差をどちらも変化させることが好ましい。

0123

また、本発明においては、合成振動の振幅分布を時系列に変化させるだけでなく、合成振動の位相分布も時系列で変化してもよい。

0124

さらに、駆動電圧同士の電圧振幅比や時間位相差を時系列で変化させる際は、なだらかに変化させてもよいし、瞬時に切替え(スイッチ)してもよい。

0125

(圧電材料)
本発明の圧電素子に用いられる圧電材料としては、鉛の含有量が1000ppm未満である。従来の塵埃除去装置において、圧電材料はそのほとんどがジルコン酸チタン酸鉛を主成分とする圧電セラミックスである。このため、例えば塵埃除去装置が廃却され酸性雨を浴びたり、過酷な環境に放置されたりした際、圧電材料中鉛成分土壌溶け出し生態系に害を成す可能性が指摘されている。しかし、鉛の含有量が1000ppm未満であれば、例えば塵埃除去装置470が廃却され酸性雨を浴びたり、過酷な環境に放置されたりしても、圧電材料431中の鉛成分が環境に悪影響を及ぼす可能性は低い。

0126

圧電材料の鉛の含有量は、例えば蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析により定量された圧電材料の総重量に対する鉛の含有量によって評価することができる。

0127

本発明の圧電材料はチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスであることが好ましい。このような非鉛圧電セラミックスでは、現状、各種諸特性がジルコン酸チタン酸鉛を主成分とする圧電セラミックスに匹敵するような優れた材料の実現には未だ至っていない。しかし、例えば圧電材料がチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスである場合は、弾性率がジルコン酸チタン酸鉛より大きくなる。本発明の振動装置は、圧電素子2a,2bの長さ方向に伸縮振動により、弾性体である光学素子1に面外振動を発生させるが、圧電素子2a,2bの弾性率が大きければ、圧電定数等の圧電諸特性がジルコン酸チタン酸鉛に多少及ばなくても、光学素子1に従来と同等の面外振動を発生させることができることがわかった。このため、本発明の圧電材料は、環境面も考慮し、チタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスであることが好ましい。

0128

なお、本明細書中においてセラミックスとは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子凝集体バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を表す。焼結後に加工されたものも含まれる。

0129

本発明の圧電材料は下記一般式(1)
一般式(1) (Ba1−xCax)(Ti1−yZry)O3
(0.02≦x≦0.30、0.020≦y≦0.095であり、かつy≦x)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とすることが好ましい。

0130

本発明において、ペロブスカイト型金属酸化物とは、岩波理化学辞典第5版(岩波書店1998年2月20日発行)に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト構造ペロフスカイト構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト構造を持つ金属酸化物は一般にABO3の化学式で表現される。ペロブスカイト型金属酸化物において、元素A、Bは各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素は立方体頂点、B元素は体心に位置する。O元素は酸素陰イオンとして立方体の面心位置を占める。

0131

前記一般式(1)で表わされる金属酸化物は、Aサイトに位置する金属元素がBaとCa、Bサイトに位置する金属元素がTiとZrであることを意味する。ただし、一部のBaとCaがBサイトに位置してもよい。同様に、一部のTiとZrがAサイトに位置してもよい。

0132

一般式(1)における、Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3であるが、モル比が若干ずれた場合(例えば、1.00対2.94〜1.00対3.06)でも、金属酸化物がペロブスカイト構造を主相としていれば、本発明の範囲に含まれる。

0133

金属酸化物がペロブスカイト構造であることは、例えば、X線回折電子線回折による構造解析から判断することができる。

0134

一般式(1)において、AサイトにおけるCaのモル比を示すxは、0.02≦x≦0.30の範囲である。xが0.02より小さいと誘電損失(tanδ)が増加する。誘電損失が増えると、圧電素子430に電圧を印加して駆動させた際に発生する発熱が増え、駆動効率が低下する恐れがある。一方で、xが0.30より大きいと圧電特性が充分でなくなる恐れがある。

0135

一般式(1)において、BサイトにおけるZrのモル比を示すyは、0.020≦y≦0.095の範囲である。yが0.020より小さいと、圧電特性が充分でなくなる。一方で、yが0.095より大きいとキュリー温度(Tc)が85℃未満と低くなり、高温において圧電特性が消失する恐れがある。

0136

本明細書において、キュリー温度とは、強誘電性が消失する温度をいう。その特定方法は、測定温度を変えながら強誘電性が消失する温度を直接測定する方法に加えて、微小交流電界を用いて測定温度を変えながら誘電率を測定し誘電率が極大を示す温度から求める方法がある。

0137

一般式(1)において、Caのモル比xとZrのモル比yはy≦xの範囲である。y>xであると、誘電損失が増加したり、絶縁性が充分でなくなったりする。また、これまで示したxとyの範囲を同時に満たすと、相転移温度Tを室温付近から実用温度以下に移動させることが可能となり、広い温度領域において安定に圧電素子430を駆動させることが可能となる。

0138

また、一般式(1)において、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTiとZrのモル量との比を示すA/Bは、1.00≦A/B≦1.01の範囲でることが好ましい。A/Bが1.00より小さいと異常粒成長が生じ易くなり、圧電材料の機械的強度が低下してしまう。一方で、A/Bが1.01より大きくなると粒成長に必要な温度が高くなり過ぎ、一般的な焼成炉では密度が充分に大きくならなかったり、圧電材料内にポア欠陥が多数存在してしまったりする。

0139

本発明の圧電材料は、前記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記金属酸化物にMnが含有されており、前記Mnの含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることが好ましい。

0140

前記範囲のMnを含有すると、絶縁性や機械的品質係数Qmが向上する。絶縁性と機械的品質係数の向上は、TiやZrと価数が異なるMnによって欠陥双極子が導入されて内部電界が発生することに由来すると考えられる。内部電界が存在すると、圧電素子に電圧を印加し駆動させた際に、圧電素子の信頼性が確保できる。

0141

ここで、Mnの含有量を示す金属換算とは、圧電材料から蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などにより測定されたBa、Ca、Ti、ZrおよびMnの各金属の含有量から、一般式(1)で表わされる金属酸化物を構成する元素を酸化物換算し、その総重量を100としたときに対するMn重量との比によって求められた値を表す。

0142

Mnの含有量が0.02重量部未満であると、圧電素子の駆動に必要な分極処理の効果が充分でなくなる。一方、Mnの含有量が0.40重量部より大きくなると、圧電特性が充分でなくなることや、圧電特性に寄与しない六方晶構造結晶発現するので好ましくない。

0143

Mnは金属Mnに限らず、Mn成分として圧電材料に含まれていれば良く、その含有の形態は問わない。例えば、Bサイトに固溶していても良いし、粒界に含まれていてもかまわない。または、金属、イオン、酸化物金属塩錯体などの形態でMn成分が圧電材料に含まれていても良い。より好ましい含有の形態は、絶縁性や焼結容易性という観点からBサイトに固溶することである。Bサイトに固溶された場合、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTi、ZrおよびMnのモル量の比をA/Bとすると、好ましいA/Bの範囲は0.993≦A/B≦0.998である。A/Bがこれらの範囲にある圧電素子は、圧電素子の長さ方向に伸縮振動が大きく、また、機械的品質係数が高いため、塵埃除去性能に優れ、かつ、耐久性に優れた塵埃除去装置を得ることができる。また、本発明の圧電材料は、前記一般式(1)およびMn以外の成分(副成分)を特性が変動しない範囲で含んでいてもよい。

0144

以下に実施例を挙げて、上述した本実施形態の圧電素子に用いられる圧電材料を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。

0145

(製造例1)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)、平均粒径300nmのチタン酸カルシウム(堺化学工業製:CT−03)、平均粒径300nmのジルコン酸カルシウム(堺化学工業製:CZ−03)をモル比で83.0対10.5対6.5になるように量した(表1参照)。

0146

次に、これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で0.18重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。

0147

次に、得られた造粒粉金型充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。この成形体は冷間等方加圧成型機を用いて、更に加圧しても構わない。

0148

得られた成形体を電気炉に入れ、1340℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。

0149

次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、(Ba0.830Ca0.170)(Ti0.935Zr0.065)O3の化学式で表わすことができる組成にMnが0.18重量部含有されていることが分かった。これは秤量した組成と焼結後の組成が一致していることを意味する。また、Ba、Ca、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。

0150

さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては正方晶、−70℃においては斜方晶結晶相であることがわかった。

0151

(比較用の製造例1)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)を造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で0.12重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。

0152

次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を電気炉に入れ、1380℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。

0153

次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、BaTiO3の化学式で表わすことができる組成にMnが0.12重量部含有されていることが分かった。また、Ba、Ca、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。

0154

さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては正方晶、−70℃においては斜方晶の結晶相であることがわかった。

0155

(比較用の製造例2)
ジルコン酸チタン酸鉛の焼結体を用意した。さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては正方晶、−70℃においても正方晶の結晶相であることがわかった。

0156

(実施例1および比較例1)
製造例1および比較用の製造例1の圧電材料を用いて実施例1および比較例1の圧電素子を作製した。

0157

圧電材料を厚さ0.5mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さで形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。

0158

次に、これらの圧電素子を10.0mm×2.5mm×0.5mmに切断加工した後、これらの圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は100℃、印加電界は1kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、これらの圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。

0159

さらに、実施例1、比較例1の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは実施例1、比較例1でそれぞれ−32℃、6℃であった。

0160

(比較例2)
比較用の製造例2の圧電材料を用いて比較例2の圧電素子を作製した。

0161

圧電材料を厚さ0.25mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さで形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。

0162

次に、この圧電素子を10.0mm×2.5mm×0.5mmに切断加工した後、直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は200℃、印加電界は1.7kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。

0163

さらに、比較例2の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、少なくとも−60℃から50℃の範囲には相転移温度Tは存在しなかった。

0164

(実施例1および比較例1および比較例2の圧電素子の評価)
次に、共振反共振法により、実施例1、比較例1、比較例2の圧電素子の圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数を求めた。測定は30℃をスタートとし、昇温、降温、30℃まで昇温、という順序で温度を変化させながら測定した。測定は恒温槽内で行い、それぞれの温度で一定時間保持し、温度が安定した後に各温度での圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数を評価した。

0165

ここで、実施例1の圧電素子は低温になるにつれ、圧電定数が大きくなり、弾性定数が小さくなり、共振周波数が低くなった。一方、比較例1の圧電素子は、5℃近辺に特性の変極点が存在し、5℃近辺で圧電定数は最も大きくなり、弾性定数は最も小さくなり、共振周波数は最も低くなった。また、比較例2の圧電素子は、各物性とも温度に依存せずほぼ一定となった。

0166

(製造例2から27)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)、平均粒径300nmのチタン酸カルシウム(堺化学工業製:CT−03)、平均粒径300nmのジルコン酸カルシウム(堺化学工業製:CZ−03)を表1に示すモル比になるように秤量した。

0167

次に、これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で表1の重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。

0168

次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。この成形体は冷間等方加圧成型機を用いて、更に加圧しても構わない。

0169

得られた成形体を電気炉に入れ、1350℃から1480℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。最高温度はCaの量が多くなるほど高くした。

0170

次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、(Ba1−xCax)(Ti1−yZry)O3の化学式で表わすことができる組成(x,yは表2に記載)にMnが表1の重量部含有されていることが分かった。また、Ba、Ca、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。

0171

さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、すべての実施例においてペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、すべての実施例において25℃においては正方晶、−70℃においては斜方晶の結晶相であることがわかった。

0172

(実施例2から27)
製造例2から27の圧電材料を用いて実施例2から27の圧電素子を作製した。

0173

圧電材料を厚さ0.5mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さで形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。

0174

次に、これらの圧電素子を10.0mm×2.5mm×0.5mmに切断加工した後、これらの圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は100℃、印加電界は1kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、これらの圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。

0175

さらに、実施例2から27の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは表2で示される温度であった。

0176

0177

0178

(その他の実施形態)
実施形態1の振動装置及び駆動方法を、他の光学機器である複写機のスキャナー部に配して塵埃除去に用いてもよいし、粉体であるトナーを移動させる駆動装置に用いても良い。広範囲の領域に位置する塵埃や粉体を効率よく移動させることができ、薄型の塵埃除去装置や駆動装置を実現できる。本発明の塵埃除去装置は、移動させる対象物(被駆動体)としては、塵埃や粉体に限るものではなく、固体気体液体も移動させることができる。また本発明の駆動装置は、被駆動体を本発明の振動装置によって駆動するものである。被駆動体の例としては、駆動させたい構造体(例えばレンズを保持するホルダ等の構造体)、シート材等が挙げられる。実施形態1では、考慮すべき振動モードを第1から第4の振動モードとしたが、これに他の振動モードを加えて交番電圧の設定値を算出すると、本発明の効果は更に増す。また、不要な振動モードの中で、最も影響の大きい振動モードは第3の振動モードであり、これと比べると第4の振動モードの影響度合いは相対的に小さい。従って第4の振動モードを交番電圧の設定の算出の際に、必要に応じて計算から省略しても本発明の効果は得られる。また、塵埃の移動に主に寄与する振動モードとして、実施形態1では、面外10次曲げ振動モード(第1の振動モード)と、面外11次曲げ振動モード(第2の振動モード)を用いたが、本発明はこれら振動モードの組合せに限定されるものではない。例えば、面外1次曲げモードと面外2次曲げモードを組合せても良い。また、面外m次曲げモードと面外n次曲げモードとを組合せても良い。この場合には、mとnが異なる自然数であれば良い。いずれの塵埃の移動に主に寄与する振動モードの組合せであっても、その他の振動モードの応答を考慮して、領域並びに交番電圧の設定をして駆動することで、本発明の効果を得ることができる。

0179

実施形態1では、領域を10個として、振動応答の対称性を鑑みて、振動応答が同じ領域を選択し、これらの振動応答が同じ領域を合わせた領域であるひとつの領域に同一の交番電圧を設定する。そして交番電圧の異なる5つの領域を設定している。しかし、本発明においては、前記同一の交番電圧を設定する領域の数は5つに限定されるものではない。交番電圧の異なる領域が2つ以上あれば、領域ごとに最適な振動状態を実現して、塵埃を含む被駆動対象物を効率よく所定の方向に移動させる本発明の効果を得ることができる。

0180

また、「交番電圧の設定」は、交番電圧の電圧振幅比と、交番電圧の時間位相差とを含む。振動体の第1の領域に対して、第1の電圧振幅比と第1の時間位相差とを有する第1の交番電圧の設定を決める。振動体の第1の領域とは異なる第2の領域に対して、第2の電圧振幅比と第2の時間位相差とを有する第2の交番電圧の設定を決める。この上で、第1の電圧振幅比と第2の電圧振幅比、または、第1の時間位相差と第2の時間位相差、の少なくとも一方が異なっている。第1の交番電圧の設定と第2の交番電圧の設定とを切替えて、前記振動体を駆動することで、領域ごとに最適な振動状態を実現して、塵埃を含む被駆動対象物を効率よく所定の方向に移動させる本発明の効果を得ることができる。このように本発明においては、領域の数も実施形態で例示した数に限定されない。また、実施形態1では、不要な振動モードとして、左右方向(第1の方向A)の変位分布が第1や第2の振動モードと同じ、第3の振動モードと第4の振動モードを考慮した。このため、光学素子1に励起される振動は、第3及び第4の振動モードの振動によって、左右方向(第1の方向)の変位分布が変化しなかった。従って、左右方向(第1の方向)に分割された領域を設けてはいない。しかし、実施形態1とは異なって、不要な振動モードとして、主に塵埃の移動に寄与する第1及び第2の振動モードの左右方向(第1の方向)の変位分布とは異なる振動モードの振動が大きい場合もある。この場合には、必要に応じて前述した不要な振動モードを考慮して、光学素子1を左右方向(第1の方向A)にも仮想的に分割した領域を設けると良い。この駆動方法によれば、不要な振動モードの振動によって、左右方向(第1の方向A)の変位分布が変化した場合でも、領域ごとに最適な振動状態を実現して、塵埃を含む被駆動対象物を効率よく所定の方向に移動させる本発明の効果を得ることができる。

実施例

0181

また、実施形態1においては、設定すべきφ(10、b)−φ(11、b)を90°としたが、本発明は90°に限定されず、上述した10次振動と11次振動の時間位相差が異なっていればよい。また、φ(10、b)−φ(11、b)を−180°より大きく、0°より小さい値とすると、塵埃などを移動させる向きを逆向きにすることが可能である。また、駆動電圧E(1)を右の圧電素子2bに印加し、E(2)を左の圧電素子2aに印加する様に、駆動電圧と印加する圧電素子2の組合せを入れ替えても、塵埃などを移動させる方向を逆向きにすることが可能である。このような逆向きの交番電圧の設定を、駆動手順に加えても良い。

0182

1光学素子
2、2a、2b、2c、2d圧電素子
3振動体
4撮像素子
5光学有効範囲(光学有効部)
6振動モードの変位分布
7 第1の振動モードの変位分布
8 第2の振動モードの変位分布
9分割電極
10導電性塗料
100制御回路
101 電源

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