図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2013年9月26日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (0)

図面はありません

課題

アミノグリコシド抗生物質、その製造法、およびその医薬としての提供。

解決手段

下記一般式(I)で表される化合物、およびストレプトマイセス属に属するカナマイシン生産菌株であって、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素不活化されているカナマイシン生産菌株を用いる製造方法。(式中、Rはアミノ基または水酸基を表す)

概要

背景

アミノグリコシド抗生物質とは、アミノ糖またはアミノサイクリトールを含む配糖体抗生物質の総称であり、マクロライドヌクレオシドおよびアントラサイクリンなどの抗生物質群は除外される。これまでに数多くのアミノグリコシド抗生物質が放線菌や細菌の培養物から発見されているが、このうちストレプトマイシンネオマイシンカナマイシンゲンタミシンリボスタマイシントブラマイシンなどが有用な化学療法剤として使用されている。一方、臨床で広範に使用されるが故、アミノグリコシド抗生物質に耐性を示す菌が出現し問題となっている。

カナマイシン(カナマイシンA、カナマイシンB、カナマイシンC)は、ストレプトミセスカナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)が生産するアミノグリコシド系抗生物質である。カナマイシンは広範囲抗菌力を示すが、多くの感染菌が速やかに耐性化するため、近年は、臨床適応結核症を中心に限られたものとなっている。

カナマイシンにおいては耐性機構に関する研究に基づき、耐性菌にも有効なジベカシンアミカシンおよびアルベカシンといったカナマイシン誘導体が開発されているが、これらの薬剤に対する耐性菌も出現しつつある。このような現状の下、耐性菌に有効でありかつアミノグリコシド抗生物質に共通な問題である腎毒性が低減され得る、新規アミノグリコシド抗生物質の開発が期待されている。

2−デオキシストレプタミンを構成糖の一つとするアミノグリコシド抗生物質に関し、2−デオキシストレプタミン依存的にアミノグリコシド抗生物質を生産する変異株を取得し、これに2−デオキシストレプタミンアナログを添加培養することによって、新規なアミノグリコシド抗生物質を生産させる研究が行われてきた。カナマイシンにおいても、2−デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産の表現型を示す変異株が取得され、2−エピストレプタミンを添加培養した時に、カナマイシンとは異なる抗生物質が生産されることが報告されている(US3,669,838号公報)。また、2−デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産の表現型を示す変異株に、1−N−メチル-デオキシストレプタミンまたはmyo−イノサジアミン−1,3(2−エピストレプタミン)を添加培養した時に、4−O−(α−D−グルコピラノシル)6−O−(3−アミノ−3-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)1−N−メチル-2-デオキシストレプタミンまたは4−O−(α−D−グルコピラノシル)6−O−(3−アミノ−3-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)2−エピ-ストレプタミンがそれぞれ生産されること(Kojima,M.およびSatoh,A著,「ジャーナルオブアンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),1973年,第26巻,p.784−786)が報告されている。さらに、2−デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産の表現型を示す変異株に、ストレプタミンを添加培養した時に、4−O−(6−アミノ−6-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)6−O−(3−アミノ−3−デオキシ-α−D−グルコピラノシル)ストレプタミン(LL-BM27α)および4−O−(6−アミノ−6-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)6−O−(α−D−グルコピラノシル)ストレプタミン(LL-BM27β)が生産されること(Borders,D.B.ら著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),1982年,第35巻,p.1107−1110)が報告されている。ここで、LL-BM27αは、2−ヒドロキシカナマイシンAと同義である。

しかしながら、これらの添加培養によって得られるアミノグリコシド抗生物質は微量で産業上の実用性は低い。したがって、臨床上有用な、優れた抗菌活性を有する新規アミノグリコシド抗生物質が依然として求められているといえる。

概要

アミノグリコシド抗生物質、その製造法、およびその医薬としての提供。下記一般式(I)で表される化合物、およびストレプトマイセス属に属するカナマイシン生産菌株であって、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素不活化されているカナマイシン生産菌株を用いる製造方法。(式中、Rはアミノ基または水酸基を表す)なし

目的

本発明は、優れた抗菌活性を有する新規なアミノグリコシド抗生物質およびその製造方法の提供をその目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。(式中、Rはアミノ基または水酸基を表す)

請求項2

Rがアミノ基である、請求項1記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。

請求項3

Rが水酸基である、請求項1記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。

請求項4

請求項1に記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含んでなる、医薬組成物

請求項5

請求項1に記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含んでなる、抗菌組成物

請求項6

請求項1に記載の化合物を産生しうる、ストレプトマイセス属に属するカナマイシン生産菌株であって、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素不活化されている、カナマイシン生産菌株。

請求項7

2−デオキシストレプタミン依存性である、請求項6に記載のカナマイシン生産菌株。

請求項8

以下の(a)〜(d)から選択されるポリペプチドをコードする遺伝子が組み込まれてなる、請求項6に記載のカナマイシン生産菌株:(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、136番目アスパラギン酸アスパラギンへの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)(a)に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換欠失、付加または挿入しているアミノ酸配列からなり、前記(a)に記載のポリペプチドと機能的に同等な活性を有する、ポリペプチド、(c)(a)に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、前記(a)に記載のポリペプチドと機能的に同等な活性を有する、ポリペプチド。

請求項9

前記(b)または(c)に記載のポリペプチドが、前記(a)に記載の変異を保持しているものである、請求項8に記載の菌株。

請求項10

前記(b)における1以上のアミノ酸の範囲が、1〜40個である、請求項8に記載の菌株。

請求項11

前記(c)における相同性が90%以上である、請求項8に記載の菌株。

請求項12

S. Kanamyceticus-DOSである、請求項6に記載の菌株。

請求項13

式(I)で表される化合物の製造方法であって、(式中、Rはアミノ基または水酸基を表す)ストレプトマイセス属に属するカナマイシン生産菌株を、ストレプタミンおよび/またはmyo−イノシトールを含む培地中で培養し、前記化合物を産生することを含んでなる、方法。

請求項14

前記カナマイシン生産菌株における2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活化されている、請求項13に記載の方法。

請求項15

前記カナマイシン生産菌株が、請求項7〜12のいずれか一項に記載の菌株である、請求項14に記載の方法。

請求項16

前記培地がストレプタミンを含んでなる、請求項14記載の方法。

請求項17

式(I)で表される化合物を、2−ヒドロキシカナマイシンAとともに産生する、請求項16に記載の方法。

請求項18

前記培地がmyo−イノシトールを含んでなる、請求項14記載の方法。

請求項19

Rが水酸基である、請求項18に記載の方法。

請求項20

請求項1に記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物の有効量を、ヒトを含む動物投与すること含んでなる、感染症治療または予防方法

請求項21

前記感染症が、黄色ブドウ球菌大腸菌または緑膿菌に起因するものである、請求項20に記載の方法。

請求項22

医薬組成物の製造のための、請求項1に記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物の使用。

請求項23

抗菌剤の製造のための、請求項1に記載の化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物の使用。

関連出願の参照

0001

本特許出願は、2007年11月30日に出願された日本国特許出願2007−310618号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。

発明の背景

0002

本発明は、新規アミノグリコシド抗生物質、その製造法およびその医薬用途に関する。

背景技術

0003

アミノグリコシド抗生物質とは、アミノ糖またはアミノサイクリトールを含む配糖体抗生物質の総称であり、マクロライドヌクレオシドおよびアントラサイクリンなどの抗生物質群は除外される。これまでに数多くのアミノグリコシド抗生物質が放線菌や細菌の培養物から発見されているが、このうちストレプトマイシンネオマイシンカナマイシンゲンタミシンリボスタマイシントブラマイシンなどが有用な化学療法剤として使用されている。一方、臨床で広範に使用されるが故、アミノグリコシド抗生物質に耐性を示す菌が出現し問題となっている。

0004

カナマイシン(カナマイシンA、カナマイシンB、カナマイシンC)は、ストレプトミセスカナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)が生産するアミノグリコシド系抗生物質である。カナマイシンは広範囲抗菌力を示すが、多くの感染菌が速やかに耐性化するため、近年は、臨床適応結核症を中心に限られたものとなっている。

0005

カナマイシンにおいては耐性機構に関する研究に基づき、耐性菌にも有効なジベカシンアミカシンおよびアルベカシンといったカナマイシン誘導体が開発されているが、これらの薬剤に対する耐性菌も出現しつつある。このような現状の下、耐性菌に有効でありかつアミノグリコシド抗生物質に共通な問題である腎毒性が低減され得る、新規アミノグリコシド抗生物質の開発が期待されている。

0006

2−デオキシストレプタミンを構成糖の一つとするアミノグリコシド抗生物質に関し、2−デオキシストレプタミン依存的にアミノグリコシド抗生物質を生産する変異株を取得し、これに2−デオキシストレプタミンアナログを添加培養することによって、新規なアミノグリコシド抗生物質を生産させる研究が行われてきた。カナマイシンにおいても、2−デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産の表現型を示す変異株が取得され、2−エピストレプタミンを添加培養した時に、カナマイシンとは異なる抗生物質が生産されることが報告されている(US3,669,838号公報)。また、2−デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産の表現型を示す変異株に、1−N−メチル-デオキシストレプタミンまたはmyo−イノサジアミン−1,3(2−エピストレプタミン)を添加培養した時に、4−O−(α−D−グルコピラノシル)6−O−(3−アミノ−3-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)1−N−メチル-2-デオキシストレプタミンまたは4−O−(α−D−グルコピラノシル)6−O−(3−アミノ−3-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)2−エピ-ストレプタミンがそれぞれ生産されること(Kojima,M.およびSatoh,A著,「ジャーナルオブアンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),1973年,第26巻,p.784−786)が報告されている。さらに、2−デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産の表現型を示す変異株に、ストレプタミンを添加培養した時に、4−O−(6−アミノ−6-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)6−O−(3−アミノ−3−デオキシ-α−D−グルコピラノシル)ストレプタミン(LL-BM27α)および4−O−(6−アミノ−6-デオキシ−α−D−グルコピラノシル)6−O−(α−D−グルコピラノシル)ストレプタミン(LL-BM27β)が生産されること(Borders,D.B.ら著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),1982年,第35巻,p.1107−1110)が報告されている。ここで、LL-BM27αは、2−ヒドロキシカナマイシンAと同義である。

0007

しかしながら、これらの添加培養によって得られるアミノグリコシド抗生物質は微量で産業上の実用性は低い。したがって、臨床上有用な、優れた抗菌活性を有する新規アミノグリコシド抗生物質が依然として求められているといえる。

0008

本発明者らは、今般、ストレプトマイシン属由来のカナマイシン生産株を特定の2−デオキシストレプタミンアナログとともに培養することにより、優れた抗菌活性を有する新規なアミノグリコシド抗生物質を得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。

0009

したがって、本発明は、優れた抗菌活性を有する新規なアミノグリコシド抗生物質およびその製造方法の提供をその目的とする。

0010

そして、本発明によるアミノグリコシド抗生物質は、式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物である。



(式中、Rはアミノ基または水酸基を表す)

0011

また、本発明による式(I)で表される化合物の製造方法は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属するカナマイシン生産菌株を、ストレプタミンおよび/またはmyo−イノシトールを含む培地中で培養し、上記化合物を産生することを含んでなる。

0012

本発明による化合物は、種々の感染症の起因菌に対して優れた抗菌活性を有し、感染症の治療において有利に利用することができる。また、本発明による製造方法によれば、上記化合物を簡易かつ安定に供給することが可能となる。

発明の具体的説明

0013

寄託
本発明による菌株S. Kanamyceticus-DOSは、原寄託日を平成19(2007)年11月1日として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号FERM BP-11052のもと寄託されている。

0014

定義
本明細書において、「2−ヒドロキシカナマイシンA」とは、カナマイシンAの2位に水酸基が導入された化合物をいう。また、「2−ヒドロキシカナマイシン」とは、カナマイシン(カナマイシンA、カナマイシンBおよびカナマイシンC)の2位に水酸基が導入された一群の化合物をいい、具体的には、2−ヒドロキシカナマイシンA、2-ヒドロキシカナマイシンBおよび2−ヒドロキシカナマイシンCを包含する。

0015

また、本明細書において、「デオキシストレプタミン依存性」であるカナマイシン生産菌株とは、カナマイシン生産菌のうち、デオキシストレプタミンを添加することにより、カナマイシンを生産する能力回復するようになった変異株をいう。

0016

また、本明細書において、「機能的に同等な活性を有する」ポリペプチドとは、以下のものをいう。
ポリペプチドには、これをコードする遺伝子の多型や変異の他、修飾反応等によって、アミノ酸配列中に構造的な変異が起こりうる。しかしながら、これら変異を有するにもかかわらず、変異を有しないポリペプチドと実質的に同等の生理生物学的活性を示すものがあることが知られている。このように、構造的に差異があっても、その機能については大きな違いが認められないものを「機能的に同等な活性を有する」ポリペプチドという。

0017

式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物
本発明による式(I)で表される化合物は、カナマイシンBまたはCにおいて、その2位に水酸基が導入されていることを一つの特徴とする。かかる構造を有する上記化合物は、グラム陽性菌から緑膿菌を含むグラム陰性菌までの幅広抗菌スペクトラムを有し、優れた抗菌活性を示すことができる。

0018

そして、本発明の一つの態様によれば、式(I)で表される化合物において、Rはアミノ基である。かかる化合物(以下、「ヒドロキシカナマイシンB」という)の構造は、下記式(1)の通りである。

0019

0020

また、本発明の別の態様によれば、式(I)で表される化合物において、Rは水酸基である。かかる化合物(以下、「2−ヒドロキシカナマイシンC」という)の構造は、下記式(2)の通りである。

0021

0022

また、式(I)で表される化合物は、塩として存在することができる。その塩としては、例えば、薬学的に許容される塩が挙げられる。それらの塩の具体例としては、フッ化水素酸塩、塩酸塩臭化水素酸塩またはヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩硫酸塩、リン酸塩過塩素酸塩または炭酸塩等の無機酸塩酢酸塩トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩ヒドロキシ酢酸塩、乳酸塩クエン酸塩酒石酸塩シュウ酸塩安息香酸塩マンデル酸塩酪酸塩マレイン酸塩プロピオン酸塩ギ酸塩またはリンゴ酸塩等のカルボン酸塩アルギニン酸塩アスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩等のアミノ酸塩、あるいはメタンスルホン酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等が挙げられ、好ましくは、塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩、硫酸塩等の無機酸塩である。

0023

また、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、それらの溶媒和物として存在することができる。溶媒和物の好適な例としては、水和物、メタノール和物またはエタノール和物等が挙げられる。

0024

生産菌株
また、式(I)で表される化合物は、種々の方法により製造することが可能であるが、上述の通り、ストレプトマイセス属に属するカナマイシン生産菌株を、ストレプタミンおよび/またはmyo−イノシトールを含む培地中で培養することにより、製造することができる。

0025

そして、上記生産菌株の好適な例としては、デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産菌株が挙げられるが、グルコース−6−リン酸から2−デオキシストレプタミン生合成の最初の反応を触媒する2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素不活化されているストレプトマイセス属に属する菌株がより好ましい。かかる菌株をデオキシストレプタミンアナログとともに培養する場合、カナマイシンを産生することなく、本発明による化合物を選択的に生産しうることは、意外な事実である。
したがって、本発明の別の態様によれば、式(I)で表される化合物を産生しうる、ストレプトマイセス属に属するカナマイシン生産菌株であって、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活化されているカナマイシン生産菌株が提供される。

0026

上記のような変異生産菌株は、例えば、ストレプトミセス・カナマイセティカスをはじめとするストレプトマイセス属由来のカナマイシン生産菌を、紫外線(UV)照射ニトロソグアニジンNTG)をはじめとする人工的変異方法などで処理することによって取得することができる。所望の変異株が取得できたことの確認は、例えば、デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産菌株を取得した後、各変異株の細胞内の2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素活性を公知の方法(クドウ(Kudo,F.)ら著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),1999年,第52巻,p.81−88)に基づいて測定し、酵素活性を示さない変異株を選択する方法が挙げられる。

0027

また、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活化されている上記カナマイシン生産菌株は、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素をコードする遺伝子が既に明らかにされている(特開2004−173537号公報)ことから、遺伝子組換え技術を用いても取得することも可能である。例えば、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素をコードする遺伝子を破壊することによって所望の変異株を取得してもよい。また、不活性型の2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素となるようなアミノ酸置換を有する変異遺伝子を作成し、これを染色体上の野生型遺伝子遺伝子置換することによっても上記変異株を得ることができる。遺伝子を破壊若しくは置換する方法としては、放線菌で一般的に使用される手法が利用でき(プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年,p.311−338)、かる文献の内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。

0028

2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活性化される変異の一例としては、例えば、配列番号1で表される上記合成酵素のアミノ酸配列の136番目アスパラギン酸アスパラギンに置換する変異が挙げられる。よって、式(I)で表される化合物を生産しうる上記菌株は、上記変異を有するポリペプチドまたはそれと機能的に同等なアナログをコードする遺伝子を菌株に組み込むことによって、取得しうる。

0029

そして、本発明の好ましい態様によれば、式(I)で表される化合物を生産しうる、カナマイシン生産菌株は、以下の(a)〜(c)から選択されるポリペプチドをコードする遺伝子が組み込まれてなる:
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、136番目のアスパラギン酸のアスパラギンへの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)(a)に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、欠失、付加または挿入しているアミノ酸配列からなり、前記(a)に記載のポリペプチドと機能的に同等な活性を有する、ポリペプチド、
(c)(a)に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、前記(a)に記載のポリペプチドと機能的に同等な活性を有する、ポリペプチド。

0030

上記(a)に対応するカナマイシン生産菌株の好適な例としては、S. Kanamyceticus-DOSが挙げられる。

0031

また、上記(b)において、「1以上のアミノ酸」の範囲は、好ましくは1〜40個であり、より好ましくは1〜8個であり、さらに好ましくは1〜4個である。

0032

また、上記(d)において、相同性は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。

0033

また、式(I)に記載の化合物の安定な産生を考慮すれば、上記(b)または(c)に記載のポリペプチドは、(a)に記載のアミノ酸配列における136番目またはこれに相当する位置のアスパラギン酸のアスパラギンへの変異を、保持していることが好ましい。なお、(a)〜(c)に記載のアミノ酸配列における変異の有無や配列相同性の決定は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と、(a)〜(c)のそれとを公知手法により比較することにより、当業者によって適宜決定される。

0034

また、上記(b)または(c)に記載のポリペプチドと、上記(a)に記載のポリペプチドとの機能的な同等性は、例えば、これらポリペプチドがいずれも、上述のクドウ(Kudo,F.)ら著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),1999年,第52巻,p.81−88に記載の手法に従い、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素活性を測定し、測定結果を比較することにより確認することができる。また、間接的には、上記ポリペプチドをコードする遺伝子が組み込まれたカナマイシン生産菌株について、実施例2または試験例1に記載の手法により、デオキシストレプタミン依存性または抗菌活性を測定し、統計学的に測定結果を比較して、機能的同等性の確認することもできる。

0035

製造方法
本発明による式(I)で表される化合物は、上述の通り、ストレプトマイシン属由来のカナマイシン生産菌株を、ストレプタミンおよびmyo−イノシトールから選択される2−デオキシストレプタミンアナログを含む培地中で培養することにより産生しうる。

0036

ストレプトマイシン属由来のカナマイシン生産菌株は、式(I)で表される化合物の選択的な製造を案すれば、上述の通り、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活性化されたカナマイシン生産株が好ましいが、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活性化されていないカナマイシン生産菌株を用いることもできる。2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活化されていない菌株の好適な例としては、ストレプトミセス・カナマイセティカス等が挙げられる。

0037

また、本発明による製造方法においては、カナマイシン生産菌株および培地に添加する2−デオキシストレプタミンアナログの組合せは、所望の目的化合物の種類を考慮して適宜決定することができる。
本発明の一つの態様によれば、カナマイシン生産株は、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活性化されたものであり、培地はストレプタミンを含んでなる。上記態様によれば、式(I)で表される化合物を、2−ヒドロキシカナマイシンAとともに産生させることができ、2−ヒドロキシカナマイシン(2−ヒドロキシカナマイシンA〜C)を同時に製造する上で有利である。また、本発明の別の態様によれば、カナマイシン生産株は、2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素が不活性化されたものであり、培地はmyo−イノシトールを含んでなる。上記態様によれば、式(I)におけるRが水酸基である2−ヒドロキシカナマイシンCを選択的に製造することができる。

0038

また、ストレプタミンまたはmyo−イノシトールの添加量はそれぞれ、培養条件によって適宜変更することができるが、好ましくは100〜50,000μg/mlであり、より好ましくは1,000〜10,000μg/mlである。

0039

また、本発明による製造方法における培地成分としては、適宜公知物質を添加することができる。
ストレプタミンおよびmyo−イノシトール以外の培地成分としては、例えば炭素源としてはグルコース、シュクロース水飴デキストリン澱粉グリセロール糖蜜、動・植物油等が使用できる。また、窒素源としては大豆粉小麦胚芽コーンスティープリカー綿実粕、肉エキスポリペプトンマルトエキスイーストエキス硫酸アンモニウム硝酸ナトリウム尿素等が使用できる。その他必要に応じ、ナトリウムカリウムカルシウムマグネシウムコバルト塩素、リン酸(リン酸水素2カリウム等)、硫酸(硫酸マグネシウム等)およびその他のイオンを生成することのできる無機塩類を添加することも有効である。また、必要に応じてチアミンチアミン塩酸塩等)等の各種ビタミングルタミン酸グルタミン酸ナトリウム等)、アスパラギン(DL−アスパラギン等)等のアミノ酸、ヌクレオチド等の微量栄養素、抗生物質等の選抜薬剤を添加することもできる。さらに、菌の発育を助け、2−ヒドロキシカナマイシンBおよび2−ヒドロキシカナマイシンCの生産を促進するような有機物および無機物を適当に添加することができる。
また、培地のpHは、pH5.5〜pH9程度が好ましい。

0040

培養法としては、好気的条件での固体培養法振とう培養法、通気撹拌培養法または深部好気培養法により行うことができるが、深部好気培養法が好ましい。
また、培養の適当な温度としては、例えば、15℃〜40℃であるが、多くの場合25℃〜35℃付近で生育する。
なお、式(I)で表される化合物の生産量は、培地および培養条件、使用した培養法に応じて異なるが、例えば、2日〜15日間で最高に達する。
そして、好ましくは、培地中の式(I)で表される化合物の量が最高になった時に培養を停止し、培養物から上記化合物を採取、精製する。

0041

培養物から本発明の化合物を採取するためには、その性状を利用した通常の分離手段を用いることができる。分離手段としては、例えば、溶剤抽出法イオン交換樹脂法、吸着または分配カラムクロマトグラフィー法ゲル濾過法透析法沈殿法結晶化法、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、上記培養物をろ過して得られたろ液アンバーライトIRC-50やFPC3500などの陽イオン交換樹脂に吸着し、アンモニア水溶離する。溶離液はさらにダウエックス50WやアンバーライトCG-50などの陽イオン交換樹脂を用いて精製し、必要に応じてダウエックス1を用いたイオン排除クロマトグラフィーやHP20ssを用いた吸着クロマトグラフィーで精製を行うことにより、式(I)で表される各2−ヒドロキシカナマイシンを単離することができる。

0042

用途
また、本発明による化合物は、優れた抗菌活性を有し、ヒトを含む動物医薬として投与することが有用である。したがって、本発明の好ましい態様によれば、式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含んでなる、医薬組成物が提供される。また、上記組成物は、好ましくは抗菌剤として用いられる。
また、本発明の別の好ましい態様によれば、医薬組成物の製造における、式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物の使用が提供される。また、さらに別の態様によれば、抗菌剤の製造における、式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物の使用が提供される。

0043

本発明による化合物を医薬組成物として用いる場合、種々の投与形態あるいは使用形態に合わせて、常法に従い製剤化することができる。経口投与のための製剤としては、錠剤丸剤顆粒剤カプセル剤散剤液剤懸濁剤シロップ剤下剤等が挙げられる。また非経口投与のための製剤としては、注射剤経皮吸収剤吸入剤坐剤等が挙げられる。製剤化に際しては、界面活性剤賦形剤安定化剤湿潤剤崩壊剤溶解補助剤等張剤、緩衝剤着色料着香料等の医薬用添加剤を適宜使用する。

0044

また、上記医薬組成物における担体としては、製薬学上許容されるものを用いることができ、その種類および組成投与経路投与方法によって適宜決定することができる。例えば、液状担体として水、アルコール大豆油ゴマ油などを用いることができる。固体担体として、マルトーススクロースなどの糖類、リジンなどのアミノ酸類シクロデキストリンなどの多糖類ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩類ヒドロキシルプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を使用できる。

0045

また、抗菌活性を有する本発明による化合物は、感染症の治療または予防に好ましく用いられる。したがって、本発明の別の態様によれば式(I)で表される化合物、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物の有効量を、ヒトを含む動物に投与すること含んでなる、感染症の治療または予防方法が提供される。ここで、「治療」とは、確立された病態を改善することを意味する。また、「予防」とは、将来における病態の確立を防止することを意味する。

0046

また、本発明による化合物は、種々の感染症に起因菌に対して適用することが可能である。そして、感染症の起因菌としては、例えば、黄色ブドウ球菌表皮ブドウ球菌腸球菌大腸菌、緑膿菌、枯草菌サルモネラまたはアシネトバクター等が挙げられるが、好ましくは黄色ブドウ球菌、大腸菌または緑膿菌である。

0047

また、式(I)で表される化合物が2−ヒドロキシカナマイシンBである場合、上記感染症の起因菌は、好ましくは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌、緑膿菌、枯草菌、サルモネラまたはアシネトバクターであり、より好ましくは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌、枯草菌、サルモネラまたはアシネトバクターであり、さらに好ましくは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、サルモネラまたはアシネトバクターである。

0048

また、式(I)で表される化合物が2−ヒドロキシカナマイシンCである場合、上記感染症の起因菌は、好ましくは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、サルモネラまたはアシネトバクターであり、より好ましくは表皮ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌、サルモネラまたはアシネトバクターであり、さらに好ましくは表皮ブドウ球菌、枯草菌、サルモネラまたはアシネトバクターである。

0049

また、本発明による化合物の有効量としては、患者年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路に応じて医師により適宜決定されるが、ヒトに経口投与する場合には、例えば、成人一人当たり一日に0.01〜1000mg/kg、静脈投与の場合には同じく0.001〜100 mg/kgの範囲内で投与することができる。

0050

以下、本発明を実施例によって、より具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。

0051

なお、以下の実施例に用いたLC/MSの分析条件は、下記の通りである。
LC/MSの分析条件
HPLC部:Waters 2690)
カラム: Capcell Pak C18 MG 、4.6×150mm、5μm(資生堂社製)
移動相: A:0.2%ペンタフルオロプロピオン酸水溶液
B:アセトニトリル
C:H2O
直線グラジェント:0分(A/B/C=10/10/80)→15分(A/B/C=10/30/60)
流速:0.4 ml/分、温度:30℃

0052

(MS部:Waters ZQ)ESI法
Ion source Temp.:100℃
Desolvation Temp.:380℃
Desolvation Gas Flow:350L/hr
Cone Gas Flow:50L/hr
Capillary電圧:3.5kV
Cone電圧:Positive:30V

0053

実施例1:ストレプトマイセス・カナマイセティカスの2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素遺伝子(orf11)変異導入プラスミドpDDOIの構築
2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素(配列番号1)は基質、グルコース6-リン酸への結合に重要なアミノ酸残基として保存されている136番目のアスパラギン酸をアスパラギンに換えることにより、酵素タンパクの不活化を図ることとし、pKM9(特開2004−173537号公報、実施例2、FERM P−19117参照)を鋳型としてPCR法により作成した。
利用したカナマイシン生合成クラスター領域は、配列番号2に示す。
プライマーは、以下のようにHind III、またはXba I消化部位を含むものと、DOI synthase遺伝子の開始コドンから136番目のアスパラギン酸(GAT)の位置がアスパラギン(AAC)に変異されるようにデザインしたものを用いた。

0054

Km-Mu-Hind III
5 ’-GGGAAGCTTGACCTTGGAGGTATGTGT-3’(配列番号3)
Km-Mu-L
5 ’-GTTCAGCATGGCCACCACGGTGGT-3’(配列番号4)
下線部は変異導入部分を示す)
Km-Mu-R
5 ’-TCGGTGCTCTCGCTCAAGCAG-3’(配列番号:5)
Km-Mu-Xba I
5 ’-GGGTCTAGATGCCGTCCTGGTGGTAGT-3’(配列番号:6)

0055

PCR反応は、プライマーKm-Mu-Hind III(配列番号3)とKm-Mu-L(配列番号4)、Km-Mu-R (配列番号5)とKm-Mu-Xba I(配列番号6)の組み合わせでそれぞれ行った。反応条件は、約1μgのゲノムDNAと0.3μMの各プライマー、KODPlusDNAポリメラーゼ東洋紡績株式会社製)を使用して、94℃・2分間、(94℃・15秒間、50℃・30秒間、68℃・1分30秒間)×25回のサイクル条件で行った。その結果、それぞれ約1.5kbpのDNA断片が特異的に増幅された。各DNA断片は、QIAquickPCRPurification Kit(キアゲン株式会社製)を用いて精製し、平滑末端リン酸化し(ニッポンジーン社製)、Hind IIIおよびXba Iでそれぞれ消化しpUC119のHind IIIおよびXba I部位にクローニングした。クローニングしたDNA断片の塩基配列解析を行い、目的とするアスパラギンへの置換が挿入された2−デオキシ−scyllo−イノソース合成酵素(orf11)遺伝子(配列番号7)を含むDNA断片であることを確認した。

0056

放線菌の接合伝達用プラスミドpSET152(ビアマン(Bierman,M.)ら著,「ジーン(Gene)」,(蘭国),1992年,第116巻,p.43−49)をSphI消化し、T4DNAポリメラーゼで平滑化した後、HindIIIリンカー(宝酒造株式会社製)を連結してpSET153を構築した。pSET153由来の約2.8kbpのHindIII−XbaI断片と、アミノ酸置換された遺伝子を含む約3kbpのHindIII−XbaI断片を連結して、接合伝達可能なorf11遺伝子変異導入用プラスミド pDDOIを得た。

0057

実施例2:orf11遺伝子変異導入用プラスミドpDDOIによるデオキシストレプタミン非生産株の創出
カナマイシン生産菌のストレプトマイセス・カナマイセティカスをMS寒天培地(2%S大豆粉、2%マンニトール、2%寒天)に塗布し、28℃にて3日培養した。培養後、20%グリセロール3mlで菌糸をかきとり、回収し、宿主の菌糸液を調製した。

0058

一方、プラスミドpDDOIを保持する大腸菌(Escherichia coli)ET12567/pUZ8002株をクロラムフェニコール、カナマイシンおよびアプラマシンをそれぞれ25μg/ml 、25μg/ml および50μg/mlの濃度で含む100mlのLB液体培地(1%ディフコバクトリプトン、0.5%ディフコイーストエキストラクト、0.5%NaCl、0.1%グルコース)に植菌し、37℃で一晩培養して前培養液を調製した。前培養液を終濃度1%となるように前培養時と同一の液体培地に植菌し、37℃で約4時間培養した後、LB液体培地で2回洗浄し、最終的に10mlのLB液体培地に懸濁して大腸菌液とした。

0059

上記の通り調製した宿主の菌糸液500μlと大腸菌液500μlを混合して集菌した後、終濃度10mMとなるようにMgCl2を添加したMS寒天培地に塗布した。28℃、20時間培養後、アプラマイシン1mgおよびナリジキシン酸1.5mgを含む滅菌水1mlを重層し、さらに28℃、5日間培養してアプラマイシン耐性株を得た。

0060

得られたアプラマイシン耐性株よりMagExtractorゲノムDNA抽出機器(東洋紡績株式会社製)を用いてプロトコールに従ってゲノムDNAを調製し、pDDOIが相同組換えにより染色体に挿入されていることをPCRおよびサザンブロット解析で確認した。

0061

記相同組換え体改変EME培地(50ml)に植菌し28℃、2日間振とう培養し、その1mlをさらに新たな改変YEME培地(50ml)に植菌して継代培養した。この操作を5回繰り返した後、適当な生菌数となるように希釈した培養液をMS寒天培地に塗布し、28℃で4日培養した。生育したコロニーを20μg/mlのアプラマイシンを含むMS寒天培地と無添加のMS寒天培地にレプリカし、アプラマイシン含有培地では生育できない、アプラマイシン感受性株を18株選抜した。

0062

得られたアプラマイシン感受性株のゲノムDNAを調製し、プライマーKm33(5'-CTTCGTGAATCCCCCTT-3':配列番号8)とKm35(5'-GCCCACCGCCTCGATCA-3':配列番号9)の組合せでPCR反応を行い、約3.5kbpの増幅DNA断片を得た。これらの増幅DNA断片の塩基配列の解析を行った。その結果、1株がデザイン通りにアスパラギンに置換された変異株であり、17株は元の塩基配列のままであった。

0063

また、これらの株についてカナマイシンの生産性を確認するため、250ml容三角フラスコに調製した液体生育培地ウメザワ(Umezawa,H.)ら著,「ザ・ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(The Journal of Antibiotics)」,(日本),1977年,第30巻,p.181−188)30mlに植菌し、28℃で2日培養後、培養液1mlを液体生産培地スターチを1.2%から6%に増量)30mlに植菌し、26℃、7日間振とう培養した。生産物を解析するため、培養液を50%H2SO4でpH2.5に調製し、1.5mlのエッペンチューブにいれ、17,400×g、10分間遠心し、その上清をLC/MS分析に供した。その結果、1株のorf11変異導入株についてはカナマイシン類の生産は認められず、親株と同一の塩基配列に戻った17株は、カナマイシンA(保持時間8.2分、m/z485)およびカナマイシンB(保持時間10.4分、m/z 484)を生産していた。

0064

次に、このカナマイシン非生産株を、1/2に希釈した上述の液体培地に濃度200μg/mlになるようにデオキシストレプタミンを添加したアガー培地に、塗布し、28℃、7日間培養した。その後、アガーを凍結融解することにより生産物質を抽出し、生物検定を行った。検定菌はBacillus subtilisATCC6633を用いた。その結果、無添加培養区では抗菌活性を示さなかったのに対し、デオキシストレプタミン添加培養区は抗菌活性を示す阻止円を検出した。よって、LC/MS分析に供した。その結果、カナマイシンAおよびカナマイシンBを検出することができた。よって、orf11の136番目のアミノ酸置換によりデオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産菌株S. Kanamyceticus-DOSを創出したことを確認した。

0065

実施例3:デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産株を利用したストレプタミン添加培養
実施例2で得られたデオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産株を上述の液体生産培地にて26℃、7日間培養した。その間2、3日目に、終濃度2,000μg/mlになるように調製したストレプタミンを添加した。

0066

培養液2,000Lにラヂオライト#800を加えてろ過し、得られたろ液を50ml容量のアンバーライトFPC3500(NH4+型、ロームアンドハース社)に吸着した。樹脂水洗後、0.5Nアンモニア水で溶離した。溶離液をpH6に調整後、50ml容量のダウエックス50W(NH4+型、ムロマチテクノス社)に吸着し、0.04N〜0.2Nのアンモニア水で溶離して、2−ヒドロキシカナマイシンA 57.6mg、2−ヒドロキシカナマイシンB 32.8mgおよび2−ヒドロキシカナマイシンC 513.2mgを得た。それぞれの構造は、HR-FAB/MS(JEOL JMS-700、日本電子)およびNMR(JEOL JNM-LA400、日本電子)スペクトルの解析によって決定した。

0067

実施例4:デオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産株を利用したmyo−イノシトール添加培養
実施例2で得られたデオキシストレプタミン依存性カナマイシン生産株を、濃度500μg/mlになるようにmyo−イノシトールを添加した上述のアガー培地に塗布し、28℃、7日間培養した。その後、アガーを凍結融解し生産物質を抽出し、LC/MSで解析した。その結果、2−ヒドロキシカナマイシンC(保持時間8.3分、m/z 501)のピークを検出した。

0068

実施例5:カナマイシン生産菌におけるストレプタミンまたはmyo−イノシトール添加培養
カナマイシン生産菌(ストレプトマイシン・カナマイセティカス)において、濃度500μg/mlのストレプタミンまたはmyo−イノシトール添加のアガー培養を実施例4と同様の方法で行い、生産物質をLC/MSで解析した。その結果、いずれの添加においてもカナマイシンA(保持時間8.2分、m/z 485)およびカナマイシンB(保持時間10.4分、m/z 484)の他に、2−ヒドロキシカナマイシンB(保持時間10.7分、m/z 500)および2−ヒドロキシカナマイシンC(保持時間8.3分、m/z 501)を生産していることを検出した。

0069

実施例6:ヒドロキシカナマイシンBおよびCの物理化学的性状の確認
実施例3〜5において取得された、ヒドロキシカナマイシンBおよびCの物理化学的性状を確認したところ、以下の通りであった。

0070

2−ヒドロキシカナマイシンBの物理化学的性状
(1) 色および性状:無色粉末
(2)分子式:C18H37N5O11
(3)マススペクトル(HR-FAB/MS):実測値500.2563 (M+H)+、計算値500.2568
(4)比旋光度:[α]D25 = + 127.1° (c = 1, H2O)
(5)紫外線吸収スペクトルλmax nm:末端吸収 (H2O)
(6)赤外線吸収スペクトルνmax cm-1 (KBr):3351, 2910, 1585, 1477,1368,1032

0071

(7) 1H-NMRスペクトル(400MHz, D2O) δ(ppm):2.87 (1H, dd, H-1), 3.14 (1H, dd, H-2), 2.84 (1H, dd, H-3), 3.40 (1H, dd, H-4), 3.77 (1H, dd, H-5), 3.32 (1H, dd,H-6), 5.37 (1H, d, H-1’), 2.79 (1H, dd, H-2’), 3.58 (1H, dd, H-3’), 3.32 (1H, dd, H-4’), 3.81 (1H, m, H-5’), 2.84 (1H, dd, H-6’a), 3.06 (1H, m, H-6’b), 5.05 (1H, d, H-1”), 3.52 (1H, dd, H-2”), 3.02 (1H, dd, H-3”), 3.35 (1H, dd, H-4”), 3.93 (1H, dt, H-5”), 3.78 (2H, br d, H-6”)
[TSP = 0 ppm]

0072

(8) 13C-NMRスペクトル(100MHz, D2O) δ(ppm):57.0 (d, C-1), 73.5 (d, C-2), 55.7 (d, C-3), 82.9 (d, C-4), 74.7 (d, C-5), 84.7 (d, C-6), 100.7 (d, C-1’), 55.9 (d, C-2’), 74.1 (d, C-3’), 72.0 (d, C-4’), 73.3 (d, C-5’), 42.1 (t, C-6’), 100.7 (d, C-1”), 72.4 (d, C-2”), 54.9 (d, C-3”), 69.8 (d, C-4”), 72.7 (d, C-5”), 60.9 (t, C-6”)
[dioxane = 67.4 ppm]
(9)溶解性:水に可溶、酢酸エチルクロロホルムに不溶

0073

2−ヒドロキシカナマイシンCの物理化学的性状
(1) 色および性状:無色粉末
(2)分子式:C18H36N4O12
(3)マススペクトル(HR-FAB/MS):実測値501.2398 (M+H)+、計算値501.2408
(4)比旋光度:[α]D25 = + 114.3° (c = 1, H2O)
(5)紫外線吸収スペクトルλmax nm:末端吸収 (H2O)
(6)赤外線吸収スペクトルνmax cm-1 (KBr):3358, 2920, 1591, 1457, 1369, 1032

0074

(7) 1H-NMRスペクトル(400MHz, D2O) δ(ppm):2.88 (1H, dd, H-1), 3.14 (1H, dd, H-2), 2.83 (1H, dd, H-3), 3.39 (1H, dd, H-4), 3.76 (1H, dd, H-5), 3.33 (1H, dd,H-6), 5.32 (1H, d, H-1’), 2.81 (1H, dd, H-2’), 3.60 (1H, dd, H-3’), 3.41 (1H, dd, H-4’), 3.86 (1H, m, H-5’), 3.76 (1H, dd, H-6’a), 3.88 (1H, m, H-6’b), 5.06 (1H, d, H-1”), 3.54 (1H, dd, H-2”), 3.04 (1H, dd, H-3”), 3.37 (1H, dd, H-4”), 3.94 (1H, dt, H-5”), 3.79 (2H, br d, H-6”)
[TSP = 0 ppm]

0075

(8) 13C-NMRスペクトル(100MHz, D2O) δ(ppm):57.1 (d, C-1), 73.5 (d, C-2), 56.0 (d, C-3), 83.6 (d, C-4), 74.8 (d, C-5), 84.8 (d, C-6), 101.1 (d, C-1’), 56.1 (d, C-2’), 74.3 (d, C-3’), 70.6 (d, C-4’), 73.7 (d, C-5’), 61.4 (t, C-6’), 100.9 (d, C-1”), 72.4 (d, C-2”), 55.1 (d, C-3”), 69.7 (d, C-4”), 72.8 (d, C-5”), 60.9 (t, C-6”)
[dioxane = 67.4 ppm]
(9)溶解性:水に可溶、酢酸エチル、クロロホルムに不溶

0076

試験例1:2−ヒドロキシカナマイシンBおよび2−ヒドロキシカナマイシンCの抗菌活性
2−ヒドロキシカナマイシンBおよび2−ヒドロキシカナマイシンCの抗菌活性を、寒天希釈法による最小発育阻止濃度MIC)として測定した。増殖用培地で一夜培養した試験菌を106 cells/mlに調整し、その1白金耳を、2−ヒドロキシカナマイシンBまたは2−ヒドロキシカナマイシンCを含むミュラーヒントンアガー培地(Difco社製)に接種し、3 7℃で18〜20時間培養した。
結果を表1に示す。

0077

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ