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技術 固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池

出願人 日産自動車株式会社
発明者 伊藤淳史大澤康彦蕪木智裕山本伸司押原建三
出願日 2013年2月1日 (7年4ヶ月経過) 出願番号 2013-018282
公開日 2013年9月9日 (6年9ヶ月経過) 公開番号 2013-179044
状態 特許登録済
技術分野 電池の電極及び活物質 重金属無機化合物(II)
主要キーワード 通過粒径 熱圧着層 ケイ素ナノ粒子 外部保護層 非導電性高分子材料 網目形状 非導電性高分子 レドックスメディエーター
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年9月9日)のものです。
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図面 (7)

課題

解決手段

固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式:Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3(式中、a,b,c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する。リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位とを有する。リチウム含有遷移金属酸化物は、スピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

概要

背景

近年、大気汚染地球温暖化対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車EV)やハイブリッド電気自動車HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっている。そのため、これらの実用化の鍵となるモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。

モータ駆動用二次電池としては、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極、負極及びこれらの間に位置する電解質が、電池ケース収納された構成を有する。なお、正極は正極活物質を含む正極スラリー集電体の表面に塗布して形成され、負極は負極活物質を含む負極スラリー負極集電体の表面に塗布して形成される。

そして、リチウムイオン二次電池の容量特性及び出力特性などの向上のためには、各活物質選定が極めて重要である。

従来、式(a)Liy[M1(1−b)Mnb]O2又は(b)Lix[M1(1−b)Mnb]O1.5+cを有するリチウムイオンバッテリカソード組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、式中、0≦y<1、0<b<1、及び0<c<0.5であり、M1は一種以上の金属元素を表す。ただし、(a)の場合、M1は、クロム以外の金属元素である。そして、この組成物は、所定の完全充放電サイクルサイクル動作を行ったときにスピネル結晶構造への相転移を起こさないO3結晶構造を有する単一相の形態を有している。

概要

高い初期放電容量及び容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、並びにそれを用いた非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池を提供する。固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式:Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3(式中、a,b,c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する。リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位とを有する。リチウム含有遷移金属酸化物は、スピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

目的

そして、その目的は、高い初期放電容量及び容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、並びにそれを用いた非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

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請求項1

化学式:Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3(式中、Liはリチウム、Niはニッケル、Coはコバルト、Mnはマンガン、Oは酸素を示し、a,b,c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を含有し、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位とを有し、前記スピネル構造に変化する部位たる層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合のスピネル構造変化割合を1としたとき、前記リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満であることを特徴とする固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項2

前記化学式のa、b、c及びdは、0<a<1.35、0≦b<1.35、0<c<1.35、0.15<d≦0.35、1.15≦a+b+c<1.35の関係を満足し、前記スピネル構造変化割合が0.4以上0.9未満であることを特徴とする請求項1に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項3

前記化学式のa、b、c及びdは、0<a<1.3、0≦b<1.3、0<c<1.3、0.15<d≦0.35、1.2≦a+b+c<1.3の関係を満足し、前記スピネル構造変化割合が0.6以上0.8以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項4

前記リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積は、1m2/g以上8.0m2/g以下であり、前記リチウム含有遷移金属酸化物における窒素で測定した細孔容積は、相対圧が0.98〜0.99であるとき、0.025cm3/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項5

前記リチウム含有遷移金属酸化物のメディアン径(D50)は、15μm未満であり、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、1μm未満の粒径粒子を含むことを特徴とする請求項4に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項6

前記リチウム含有遷移金属酸化物におけるN−メチル−2−ピロリドン吸液量が0.5cm3/g以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項7

前記リチウム含有遷移金属酸化物の真密度が4.1g/cm3以上4.6g/cm3以下であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項8

前記リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が1m2/g以上9m2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項9

前記リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が2m2/g以上8m2/g以下であることを特徴とする請求項2に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項10

前記リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が3m2/g以上6m2/g以下であることを特徴とする請求項3に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項11

前記リチウム含有遷移金属酸化物は、BET比表面積が1.0m2/g以上4.0m2/g以下である第一リチウム含有遷移金属酸化物と、BET比表面積が4.0m2/g超8.0m2/g以下である第二リチウム含有遷移金属酸化物とを含むことを特徴とする請求項1に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項12

前記リチウム含有遷移金属酸化物における窒素で測定した細孔容積は、相対圧が0.98〜0.99であるとき、0.025cm3/g以下であることを特徴とする請求項11に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項13

前記第一リチウム含有遷移金属酸化物のメディアン径は、15μm未満であり、前記第二リチウム含有遷移金属酸化物のメディアン径は、10μm未満であり、前記第一リチウム含有遷移金属酸化物及び第二リチウム含有遷移金属酸化物の少なくとも一方は、1μm未満の粒径の粒子を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項14

前記第一リチウム含有遷移金属酸化物及び前記第二リチウム含有遷移金属酸化物のN−メチル−2−ピロリドンの吸液量は、0.5cm3/g以下であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項15

前記第一リチウム含有遷移金属酸化物及び前記第二リチウム含有遷移金属酸化物の真密度は、4.1g/cm3以上4.6g/cm3以下であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物。

請求項16

請求項1乃至15のいずれか一項に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極

請求項17

前記所定の電位範囲における正極の最高電位が、リチウム金属対極換算して4.3V以上4.8V未満である充電又は充放電を行うことにより、前記固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、前記スピネル構造変化割合を得ることを特徴とする請求項16に記載の非水電解質二次電池用正極。

請求項18

請求項16又は17に記載の非水電解質二次電池用正極と、負極と、を備えたことを特徴とする非水電解質二次電池

技術分野

背景技術

0002

近年、大気汚染地球温暖化対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車EV)やハイブリッド電気自動車HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっている。そのため、これらの実用化の鍵となるモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。

0003

モータ駆動用二次電池としては、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極、負極及びこれらの間に位置する電解質が、電池ケース収納された構成を有する。なお、正極は正極活物質を含む正極スラリー集電体の表面に塗布して形成され、負極は負極活物質を含む負極スラリー負極集電体の表面に塗布して形成される。

0004

そして、リチウムイオン二次電池の容量特性及び出力特性などの向上のためには、各活物質選定が極めて重要である。

0005

従来、式(a)Liy[M1(1−b)Mnb]O2又は(b)Lix[M1(1−b)Mnb]O1.5+cを有するリチウムイオンバッテリカソード組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、式中、0≦y<1、0<b<1、及び0<c<0.5であり、M1は一種以上の金属元素を表す。ただし、(a)の場合、M1は、クロム以外の金属元素である。そして、この組成物は、所定の完全充放電サイクルサイクル動作を行ったときにスピネル結晶構造への相転移を起こさないO3結晶構造を有する単一相の形態を有している。

先行技術

0006

特表2004−538610号公報

0007

しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献1のカソード組成物を用いたリチウムイオンバッテリであっても、高い放電容量及び容量維持率を実現することができていないという問題点があった。

0008

本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、その目的は、高い初期放電容量及び容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、並びにそれを用いた非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池を提供することにある。

0009

本発明の態様に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式
Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3
(式中、Liはリチウム、Niはニッケル、Coはコバルト、Mnはマンガン、Oは酸素を示し、a,b,c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する。リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位とを有する。スピネル構造に変化する部位たる層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合のスピネル構造変化割合を1としたとき、リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

図面の簡単な説明

0010

図1は、スピネル構造変化割合の定義を説明するグラフである。
図2は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例を示す概略断面図である。
図3は、第一実施形態の実施例1におけるスピネル構造変化割合と放電容量との関係を示すグラフである。
図4は、第一実施形態の実施例1におけるスピネル構造変化割合と容量維持率との関係を示すグラフである。
図5は、第三実施形態の実施例3におけるBET比表面積と容量維持率との関係を示すグラフである。
図6は、第三実施形態の実施例3におけるBET比表面積と放電容量との関係を示すグラフである。

0011

以下、本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに制限されない。また、図面の寸法比率は説明の都合誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。

0012

本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることが好適である。そこで、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池については、それぞれリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。

0013

[第一実施形態]
本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式(1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物(以下、単に遷移金属酸化物ともいう。)を含有する。
Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3 …(1)
式(1)中、Liはリチウム、Niはニッケル、Coはコバルト、Mnはマンガン、Oは酸素を示す。また、a、b、c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する。

0014

そして、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位(層状構造のLi2MnO3)とを有する。

0015

さらに、当該リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に変化する。そして、層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合の割合を1としたとき、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

0016

このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、高い放電容量及び容量維持率を実現し得るため、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。その結果、車両の駆動電源用や補助電源用のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、家庭用携帯機器用のリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。

0017

本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、化学式(1)において、a、b、c及びdが0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する必要がある。この数式を満足しない場合は、リチウム含有遷移金属酸化物の結晶構造が安定化しない可能性がある。

0018

ここで、本明細書において「スピネル構造変化割合」とは、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に変化した割合を規定するものである。つまり、本実施形態におけるリチウム含有遷移金属酸化物は、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する層状構造のLi2MnO3と、スピネル構造に変化しない層状構造部位(LiMO2)とを有する。そして、当該リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合のスピネル構造変化割合を1とする。なお、「所定の電位範囲」とは、例えば4.3〜4.8Vとすることができる。スピネル構造変化割合は、具体的には、下記数式1にて定義される。

0019

0020

「スピネル構造変化割合」の定義について、図1に示す場合を例に挙げて説明する。図1は、リチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質とした正極を用いて組み立てた電池に対する電位と容量との関係を示すグラフである。当該電池に対し、充電開始前初期状態Aから4.5Vまで充電された状態を充電状態Bとする。さらに、充電状態Bからプラトー領域を経て4.8Vまで充電された状態を過充電状態Cとし、さらに2.0Vまで放電された状態を放電状態Dとする。そして、上記数式1における「プラトー領域の実測容量」は、図1のプラトー領域におけるリチウム含有遷移金属酸化物の実測容量を計測すればよい。なお、プラトー領域は、具体的には4.5Vから4.8Vまでの領域であり、結晶構造が変化していることに起因する領域である。そのため、充電状態Bから過充電状態Cまでの領域BCにおける電池の実測容量VBCが、プラトー領域の実測容量に相当する。

0021

実際には、化学式(1)の遷移金属酸化物において、初期状態Aから4.5Vまで充電された充電状態Bまでの領域ABの実測容量VABは、スピネル構造に変化しない層状構造のLiMO2の組成比(y)とLiMO2の理論容量(VL)の積に相当する。また、4.5Vまで充電された充電状態Bから4.8Vまで充電された過充電状態Cの領域BCの実測容量VBCは、スピネル構造部位であるLi2MnO3の組成比(x)とLi2MnO3の理論容量(VS)の積に相当する。そのため、初期状態Aから所定のプラトー領域までに計測した実測容量(VT)を(VT=VAB+VBC)とすると、VAB=y×(VL)、VBC=x×(VS)×Kであるので、スピネル構造変化割合は下記数式2を用いて計算することもできる。なお、上述の化学式LiMO2のMは、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)からなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。

0022

0023

なお、「リチウム含有遷移金属酸化物中のLi2MnO3の組成比」は、リチウム含有遷移金属酸化物の化学式(1)から算出することができる。具体的には、後述する実施例1−7の正極活物質7(Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3(a+b+c+d=1.5、d=0.3、a+b+c=1.2))の場合、化学式(1)に準じ、Li2MnO3の組成比は0.6となる。また、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(=Li1.5Ni0.5Mn0.5Co0.5O3)の組成比は0.4となる。

0024

リチウム含有遷移金属酸化物における、スピネル構造に変化しない層状構造部位(LiMO2)とスピネル構造部位(Li2MnO3)の有無は、X線回折分析(XRD)よる層状構造部位及びスピネル構造に特異なピークの存在により判定することができる。また、層状構造部位とスピネル構造部位の割合は、上述したような容量の計測・計算から判定することができる。

0025

リチウム含有遷移金属酸化物において、スピネル構造変化割合が1.0となることはない。つまり、リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化することはない。また、スピネル構造変化割合が0.25未満の場合は、高くても従来と同程度の放電容量や容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物が得られるだけである。

0026

なお、本明細書において、「充電」とは、連続的又は段階的に電極間の電位差を大きくする操作のことをいう。また、「充放電」とは、連続的又は段階的に電極間の電位差を大きくする操作の後に、連続的又は段階的に電極間の電位差を小さくする操作、又はこれを適宜繰り返す操作のことをいう。

0027

化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.35、0≦b<1.35、0<c<1.35、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.15≦a+b+c<1.35の関係を満足することが好ましい。さらに、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.4以上0.9未満であることが好適である。このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質に用いた場合、より高い放電容量や容量維持率を得ることが可能となる。

0028

さらに、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.3、0≦b<1.3、0<c<1.3、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.2≦a+b+c<1.3の関係を満足することがより好ましい。また、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.6以上0.8以下であることがより好適である。このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、より高い放電容量及び容量維持率を実現し得るため、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池により好適に用いられる。

0029

次に、本発明の第一実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物(リチウム含有遷移金属酸化物)の製造方法について説明する。

0030

まず、リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体として、硫酸塩や硝酸塩などのリチウム化合物ニッケル化合物コバルト化合物及びマンガン化合物を含む原料を混合して混合物を調製する。次いで、得られた混合物を不活性ガス雰囲気下、800〜1000℃で6〜24時間焼成する。これにより、リチウム含有遷移金属酸化物を調製することができる。なお、不活性ガスとしては、窒素アルゴンを用いることが好ましい。

0031

また、他の製造方法としては、まず、リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体として、硫酸塩や硝酸塩などのリチウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物及びマンガン化合物を含む原料を混合して混合物を調製する。次いで、得られた混合物を800〜1000℃で6〜24時間焼成して焼成物を得る。この後、得られた焼成物を不活性ガス雰囲気下、600〜800℃で熱処理する。これにより、リチウム含有遷移金属酸化物を調製することができる。

0032

なお、所望のスピネル構造変化割合を得るためには、次のような処理を行うことが好ましい。詳細は後述するが、上記固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池において、所定の電位範囲における正極の最高電位が、リチウム金属対極換算して4.3V以上4.8V未満である充電又は充放電を行う(電気化学前処理)。これにより、スピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることができる。

0033

本実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法について、さらに詳細に説明する。

0034

リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体の製造方法は、炭酸塩法(複合炭酸塩法)を適用することができる。具体的には、まず、出発物質としてニッケル、コバルト、マンガンの各硫酸塩、硝酸塩などを準備し、これらを所定の量を量した後、混合水溶液を調製する。

0035

次いで、この混合水溶液にアンモニア水をpH7になるまで滴下して、さらに炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液を滴下して、Ni−Co−Mnの複合炭酸塩を沈殿させる。なお、Na2CO3水溶液を滴下している間は、アンモニア水を用いて混合水溶液のpHを7に保持する。

0036

そして、沈殿した複合炭酸塩を吸引濾過し、水洗した後、乾燥し、仮焼成する。乾燥条件としては、不活性ガス雰囲気中、100〜150℃で2〜10時間程度(例えば120℃にて5時間)乾燥すればよいが、この範囲に制限されるものではない。仮焼成条件としては、不活性ガス雰囲気中、360〜600℃で3〜10時間(例えば、500℃にて5時間)仮焼成すればよいが、この範囲に制限されるものではない。

0037

さらに、仮焼成した粉末に、小過剰の水酸化リチウム(LiOH・H2O)を加えて混合する。この後、本焼成することにより、リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体を作製することができる。本焼成条件としては、例えば、不活性ガス雰囲気中、800〜1000℃(例えば、800〜900℃)で6〜24時間程度(例えば、12時間)行えばよい。なお、好ましくは本焼成した後、液体窒素を用いて急速冷却する。本焼成後、液体窒素等を用いて急冷することが、反応性及びサイクル定性のために好ましいためである。

0038

そして、本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、上記前駆体を酸化処理することにより得ることができる。酸化処理としては、例えば、(1)所定の電位範囲での充電又は充放電(電気化学前処理、充放電前処理)、(2)充電に対応する酸化剤での酸化、(3)レドックスメディエーターを用いての酸化などを挙げることができる。ここで、(1)所定の電位範囲での充電又は充放電は、詳しくはリチウム含有遷移金属酸化物の結晶構造の大幅な変化を最初から引き起こすことのない低い電位領域からの充電又は充放電をいう。また、(2)充電に対応する酸化剤としては、例えば、臭素塩素などのハロゲンを挙げることができる。

0039

ここで、上記(1)〜(3)の酸化処理の中で比較的簡便な方法は、上記(1)の酸化処理方法である。そして、(1)の酸化処理としては、上述のようにして得られたリチウム含有遷移金属酸化物の前駆体を用いて電池を作成した後、所定の最高電位を超えないようにして、充電又は充放電をすること、つまり電位を規制した電気化学前処理が有効である。なお、上述のようにして得られたリチウム含有遷移金属酸化物の前駆体を用いて正極又は正極相当の構造体を作成した後、所定の最高電位を超えないようにして、充電又は充放電を行ってもよい。これにより、高い放電容量と容量維持率を実現した正極活物質を得ることができる。

0040

電位を規制した電気化学前処理法としては、対極としてのリチウム金属に対する所定の電位範囲の最高電位(リチウム金属に換算した充放電の上限電位)が4.3V以上4.8V以下となる条件下で、充放電を1〜30サイクル行うことが望ましい。より好ましくは4.4V以上4.6V以下となる条件下で充放電を1〜30サイクル行うことが望ましい。この電位範囲内で充放電による酸化処理を行うことにより、高い放電容量と容量維持率を実現し得る。なお、上記リチウム金属に換算した電位は、リチウムイオンが1mol/L溶解した電解液中でリチウム金属が示す電位を基準とした電位に相当する。

0041

また、対極としてのリチウム金属に対する上記所定の電位範囲の充放電を1〜30サイクル行った後、さらに、充放電における所定の電位範囲の最高電位を段階的に上げていくのが望ましい。特に、4.7V、4.8Vvs.Liという高電位の容量まで使用する場合において、酸化処理での充放電電位の最高電位を段階的に上げていくことで、短時間の酸化処理でも電極耐久性を改善することができる。

0042

充放電の最高電位(上限電位)を段階的に上げていく際、各段階の充放電に必要なサイクル回数は、1〜10回の範囲が効果的である。また、充放電の最高電位を段階的に上げていく際の総充放電サイクル回数、つまり各段階の充放電に必要なサイクル回数を足し合わせた回数は、4回〜20回の範囲が効果的である。

0043

また。充放電の最高電位を段階的に上げていく際、各段階の電位の上げ幅(上げ代)は、0.05V〜0.1Vが効果的である。

0044

さらに、充放電の最高電位を段階的に上げていく際、最終的な最高電位(終止最高電位)は、4.6V〜4.9Vとするのが効果的である。ただし、上記範囲に制限されるものではなく、上記効果を奏することができるものであれば、より高い終止最高電位まで電気化学前処理を行ってもよい。

0045

充放電における所定の電位範囲の最低電位は、対極としてのリチウム金属に対して2V以上3.5V未満、より好ましくは2V以上3V未満である。上記範囲内で充電又は充放電による酸化処理を行うことにより、高い放電容量と容量維持率を実現し得る。なお、上記充放電の電位(V)は、単セル当たりの電位を指すものとする。

0046

酸化処理として充放電する電極の温度は、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、任意に設定することができる。なお、経済性の観点からは、特段加熱冷却を要しない室温下(25℃)で行うのが望ましい。一方、より大きな容量を発現でき、短時間の充放電処理により容量維持率を向上させるという観点からは、室温より高い温度で行うのが望ましい。

0047

酸化処理(電気化学前処理)を適用する工程としては、特に制限されるものではない。例えば、このような酸化処理は、上記のように、電池を構成した状態や正極又は正極相当の構成にて行うことができる。すなわち、正極活物質粉体の状態での適用、正極の状態での適用、負極と合わせて電池を組んでからの適用のいずれであってもよい。電池への適用に際しては、組み合わせる負極の電気容量電位プロファイルを考慮して、酸化処理条件を決定することが好ましい。

0048

ここで、電池を構成した状態の場合には、個々の正極又は正極相当の構成ごとに行うよりも、一度にまとめて多くの正極の酸化処理が行える点で優れている。一方、個々の正極又は正極相当の構成ごとに行う場合には、電池を構成した状態よりも、酸化電位等の条件の制御が容易である。また、個々の正極ごとに行う方法は、個々の正極への酸化度合いのバラツキが生じ難い点で優れている。

0049

なお、上記(2)の酸化処理方法で用いられる酸化剤としては、例えば、臭素、塩素などのハロゲンを用いることができる。これらの酸化剤は単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。酸化剤による酸化は、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が溶解しない溶媒にリチウム含有遷移金属酸化物の微粒子を分散させて、その分散溶液に酸化剤を吹き込んで溶解させて徐々に酸化させることができる。

0050

次に、本発明の第一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池について図面を参照しながら詳細に説明する。

0051

<リチウムイオン二次電池の構成>
図2では、本発明の第一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例を示す。なお、このようなリチウムイオン二次電池は、ラミネート型リチウムイオン二次電池と呼ばれる。

0052

図2に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、正極リード21及び負極リード22が取り付けられた電池素子10がラミネートフィルムで形成された外装体30の内部に封入された構成を有している。そして、本実施形態においては、正極リード21及び負極リード22が、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。なお図示しないが、正極リード及び負極リードが、外装体の内部から外部に向かって、同一方向に導出されていてもよい。また、このような正極リード及び負極リードは、例えば超音波溶接抵抗溶接などにより後述する正極集電体及び負極集電体に取り付けることができる。

0053

<正極リード及び負極リード>
正極リード21及び負極リード22は、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、これらの合金ステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成されている。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用リードとして用いられている従来公知の材料を用いることができる。なお、正極リード及び負極リードは、同一材質のものを用いてもよく、異なる材質のものを用いてもよい。

0054

また、本実施形態のように、別途準備したリードを後述する正極集電体及び負極集電体に接続してもよいし、後述する各正極集電体及び各負極集電体をそれぞれ延長することによってリードを形成してもよい。図示しないが、外装体から取り出された部分の正極リード及び負極リードは、周辺機器配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。

0055

また図示しないが、電池外部に電流を取り出す目的で、集電板を用いてもよい。集電板は集電体やリードに電気的に接続され、電池の外装材であるラミネートフィルムの外部に取り出される。集電板を構成する材料は、特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料を用いることができる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料が好ましく、軽量、耐食性高導電性の観点からアルミニウム(Al)、銅(Cu)などがより好ましい。なお、正極集電板負極集電板とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。

0056

<外装体>
外装体30は、例えば、小型化、軽量化の観点から、フィルム状の外装材で形成されたものであることが好ましい。ただ、外装体はこれに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の外装体に用いられている従来公知の材料を用いることができる。すなわち、金属缶ケースを適用することもできる。

0057

なお、高出力化冷却性能に優れ、電気自動車、ハイブリッド電気自動車の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、外装体としては、熱伝導性に優れた高分子金属複合ラミネートフィルムを挙げることができる。より具体的には、熱圧着層としてのポリプロピレン金属層としてのアルミニウム、外部保護層としてのナイロンをこの順に積層して成る三層構造のラミネートフィルムで形成された外装体を好適に用いることができる。

0058

なお、外装体は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造、例えば金属材料を有さないラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルム又は金属フィルムなどにより構成してもよい。

0059

ここで、外装体の一般的な構成は、外部保護層/金属層/熱圧着層の積層構造で表すことができる。ただし、外部保護層及び熱圧着層は複数層で構成されることがある。なお、金属層としては、耐透湿性バリア膜として機能すれば十分であり、アルミニウム箔のみならず、ステンレス箔ニッケル箔メッキを施した鉄箔などを使用することができる。ただ、金属層としては、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることができる。

0060

外装体として、使用可能な構成を(外部保護層/金属層/熱圧着層)の形式で列挙すると、ナイロン/アルミニウム/無延伸ポリプロピレンポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート・無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート・ナイロン/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート・ナイロン/アルミニウム/ナイロン・無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート・ナイロン/アルミニウム/ナイロン・ポリエチレン、ナイロン・ポリエチレン/アルミニウム/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート・低密度ポリエチレン、及びポリエチレンテレフタレート・ナイロン/アルミニウム/低密度ポリエチレン・無延伸ポリプロピレンなどがある。

0061

<電池素子>
図2に示すように、電池素子10は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極活物質層11Bが形成された正極11と、電解質層13と、負極集電体12Aの両方の主面上に負極活物質層12Bが形成された負極12とを複数積層した構成を有している。このとき、一の正極11における正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極活物質層11Bと一の正極11に隣接する負極12における負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極活物質層12Bとが電解質層13を介して向き合う。このようにして、正極、電解質層、負極の順に複数積層されている。

0062

これにより、隣接する正極活物質層11B、電解質層13及び負極活物質層12Bは、1つの単電池層14を構成する。したがって、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、単電池層14が複数積層されることにより、電気的に並列接続された構成を有するものとなる。なお、正極及び負極は、各集電体の一方の主面上にのみ各活物質層が形成されているものであってもよい。本実施形態においては、例えば、電池素子10の最外層に位置する負極集電体12aには、片面のみに負極活物質層12Bが形成されている。

0063

図示しないが、単電池層の外周には、隣接する正極集電体や負極集電体の間を絶縁するための絶縁層が設けられていてもよい。このような絶縁層は、電解質層などに含まれる電解質を保持し、単電池層の外周に電解質の液漏れを防止する材料により形成されることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)、ポリフッ化ビニリデンPVDF)、ポリスチレン(PS)などの汎用プラスチック熱可塑オレフィンゴムなどを使用することができる。また、シリコーンゴムを使用することもできる。

0064

<正極集電体及び負極集電体>
正極集電体11A及び負極集電体12Aは、導電性材料から構成される。集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定することができる。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。集電体の形状についても特に制限されない。図2に示す電池素子10では、集電箔のほか、網目形状エキスパンドグリッド等)等を用いることができる。なお、負極活物質の一例である薄膜合金をスパッタ法等により負極集電体12A上に直接形成する場合には、集電箔を用いるのが望ましい。

0065

集電体を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料導電性フィラーが添加された樹脂を採用することができる。具体的には、金属としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)、銅(Cu)などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、又はこれらの金属を組み合わせためっき材などを用いることが好ましい。また、金属表面にアルミニウムが被覆された箔であってもよい。中でも、電子伝導性や電池作動電位等の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケルが好ましい。

0066

また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリンポリピロールポリチオフェンポリアセチレンポリパラフェニレンポリフェニレンビニレンポリアクリロニトリルポリオキサジアゾールなどが挙げられる。このような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化又は集電体の軽量化の点において有利である。

0067

非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴムSBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレートPMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。このような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性又は耐溶媒性を有する。

0068

上記導電性高分子材料又は非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーを添加することができる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性又はリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属、導電性カーボンなどが挙げられる。

0069

導電性フィラーとして用いられる金属としては、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)及びカリウム(K)からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を挙げることができる。また、これらの金属を含む合金又は金属酸化物も好適例として挙げることができる。

0070

また、導電性カーボンとしては、アセチレンブラックバルカンブラックパールカーボンナノファイバーケッチェンブラックカーボンナノチューブカーボンナノホーンカーボンナノバルーン及びフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも一種を好適例として挙げることができる。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の集電体として用いられている従来公知の材料を用いることができる。

0071

<正極活物質層>
正極活物質層11Bは、正極活物質として、本発明の第一実施形態及び後述する第二乃至第四実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の少なくとも一種を含んでいる。そして、必要に応じてバインダー導電助剤を含んでいてもよい。

0072

結着剤(バインダー)としては、特に限定されるものではないが、以下の材料が挙げられる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、セルロースカルボキシメチルセルロースCMC)、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンジエン共重合体、スチレン−ブタジエンスチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びその水素添加物などの熱可塑性高分子が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。さらに、ビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムや、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダーは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位負極電位双方に安定であり正極活物質層及び負極活物質層に使用が可能である。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用のバインダーとして従来用いられている公知の材料を用いることができる。これらのバインダーは、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。

0073

正極活物質層に含まれるバインダー量は、正極活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではない。ただ、バインダー量は、好ましくは正極活物質層に対して0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。

0074

導電助剤とは、正極活物質層の導電性を向上させるために配合されるものである。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラックグラファイト気相成長炭素繊維などの炭素材料を挙げることができる。正極活物質層が導電助剤を含むと、正極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与し得る。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の導電助剤として用いられている従来公知の材料を用いることができる。これらの導電助剤は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。

0075

また、上記導電助剤と結着剤の機能を併せ持つ導電性結着剤をこれら導電助剤と結着剤に代えて用いてもよいし、又はこれら導電助剤と結着剤の一方若しくは双方と併用してもよい。導電性結着剤としては、例えば、市販の宝株式会社製TAB−2を用いることができる。

0076

さらに、正極活物質層の密度は、2.5g/cm3以上3.0g/cm3以下であることが好適である。正極活物質層の密度が2.5g/cm3以上である場合には、単位体積当たりの重量(充填量)が増加し、放電容量を向上させることが可能となる。また、正極活物質層の密度が3.0g/cm3以下の場合には、正極活物質層の空隙量の減少を防止し、非水電解液浸透性やリチウムイオン拡散性を向上させることができる。

0077

<負極活物質層>
負極活物質層12Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料を含んでおり、必要に応じて、バインダーや導電助剤を含んでいてもよい。なお、バインダーや導電助剤は上述のものを用いることができる。

0078

リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト人造グラファイト等)、低結晶性カーボンソフトカーボンハードカーボン)、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックランプブラックオイルファーネスブラックサーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料を挙げることができる。なお、当該炭素材料は、10質量%以下のケイ素ナノ粒子を含有するものを含む。また、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、水素(H)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、ガリウム(Ga)、タリウム(Tl)、炭素(C)、窒素(N)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、塩素(Cl)等のリチウムと合金化する元素単体、及びこれらの元素を含む酸化物一酸化ケイ素(SiO)、SiOx(0<x<2)、二酸化スズ(SnO2)、SnOx(0<x<2)、SnSiO3など)及び炭化物炭化ケイ素(SiC)など)等を挙げることができる。さらに、リチウム金属等の金属材料やリチウム−チタン複合酸化物チタン酸リチウム:Li4Ti5O12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物を挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の負極活物質として用いられている従来公知の材料を用いることができる。これらの負極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。

0079

また、本実施形態においては、炭素材料は、非晶質炭素層で被覆され、かつ、鱗片状ではない黒鉛材料からなることが好適である。また、炭素材料のBET比表面積が0.8m2/g以上1.5m2/g以下であり、かつ、タップ密度が0.9g/cm3以上1.2g/cm3以下であることが好適である。非晶質炭素層で表面が被覆され、かつ、鱗片状ではない黒鉛材料からなる炭素材料は、黒鉛層状構造へのリチウムイオン拡散性が高く好ましい。また、このような炭素材料のBET比表面積が0.8m2/g以上1.5m2/g以下であると、さらに容量維持率を向上させることができる。さらに、このような炭素材料のタップ密度が0.9g/cm3以上1.2g/cm3以下であると、単位体積当たりの重量(充填量)を向上させることができ、放電容量を向上させることができる。

0080

さらに、本実施形態においては、炭素材料及び結着剤を少なくとも含む負極活物質層のBET比表面積が2.0m2/g以上3.0m2/g以下であることが好適である。負極活物質層のBET比表面積が2.0m2/g以上3.0m2/g以下であることにより、非水電解液の浸透性を向上させることができ、さらに容量維持率を向上させ、非水電解液の分解によるガス発生を抑制できる。

0081

また、本実施形態においては、炭素材料及び結着剤を少なくとも含む負極活物質層の加圧成型後のBET比表面積が2.01m2/g以上3.5m2/g以下であることが好適である。負極活物質層の加圧成形後のBET比表面積が2.01m2/g以上3.5m2/g以下とすることにより、非水電解液の浸透性を向上させることができ、さらに容量維持率を向上させ、非水電解液の分解によるガス発生を抑制できる。

0082

さらに、本実施形態においては、炭素材料及び結着剤を少なくとも含む負極活物質層の、加圧プレス成型前後におけるBET比表面積の増加分が、0.01m2/g以上0.5m2/g以下であることが好適である。これにより、負極活物質層の加圧成形後のBET比表面積が2.01m2/g以上3.5m2/g以下とすることができるため、非水電解液の浸透性を向上させることができ、さらに容量維持率を向上させ、非水電解液の分解によるガス発生を抑制できる。

0083

また、各活物質層(集電体片面活物質層)の厚さについても特に限定されるものではなく、電池についての従来公知の知見を適宜参照することができる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、電池の使用目的(出力重視エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮し、通常1〜500μm程度、好ましくは2〜100μmである。

0084

さらに、活物質それぞれ固有の効果を発現する上で、最適な粒径が異なる場合には、それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒径同士を混合して用いればよい。そのため、全ての活物質の粒径を均一化させる必要はない。例えば、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物からなる正極活物質として粒子形態のものを用いる場合、平均粒子径は、既存の正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径と同程度であればよく、特に制限されない。高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmの範囲であればよい。なお、「粒子径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡TEM)などの観察手段を用いて観察される活物質粒子観察面)の輪郭線上における任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。他の構成成分の粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。

0085

ただ、平均粒子径はこのような範囲に何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を有効に発現できるものであれば、この範囲を外れていてもよい。

0086

<電解質層>
電解質層13としては、例えば、後述するセパレータに保持させた電解液や高分子ゲル電解質固体高分子電解質を用いて層構造を形成したもの、さらには、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質を用いて積層構造を形成したものなどを挙げることができる。

0087

電解液としては、例えば、通常リチウムイオン二次電池で用いられるものであることが好ましく、具体的には、有機溶媒支持塩リチウム塩)が溶解した形態を有する。リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF6)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li2B10Cl10)等の無機酸陰イオン塩の中から選ばれる少なくとも一種類のリチウム塩等を挙げることができる。また、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li(CF3SO2)2N)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(C2F5SO2)2N)等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる少なくとも一種類のリチウム塩等を挙げることができる。その中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が好ましい。また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類ジメチルカーボネートDMC)、メチルエチルカーボネートEMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類γ−ブチロラクトン等のラクトン類アセトニトリル等のニトリル類プロピオン酸メチル等のエステル類ジメチルホルムアミド等のアミド類酢酸メチル蟻酸メチルの中から選ばれる少なくとも一種類を用いることができる。なお、セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンからなる微多孔膜多孔質平板、さらには不織布を挙げることができる。

0088

高分子ゲル電解質は、イオン伝導性を有する固体高分子電解質に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる上記電解液を含有させたものである。しかしながら、これに限定されるものではなく、リチウムイオン伝導性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン伝導性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできる。ただ、ここでは、ポリアクリロニトリル及びポリメチルメタクリレートは、リチウムイオン伝導性を持たない高分子として例示したものである。

0089

固体高分子電解質は、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)などに上記リチウム塩が溶解して成る構成を有し、有機溶媒を含まないものを挙げることができる。したがって、電解質層が固体高分子電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上させることができる。

0090

電解質層の厚みは、内部抵抗を低減させるという観点からは薄い方が好ましい。電解質層の厚みは、通常1〜100μmであり、好ましくは5〜50μmである。

0091

なお、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現させることができる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマーに対して熱重合紫外線重合放射線重合電子重合等の重合処理を施せばよい。なお、重合性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドを挙げることができる。

0092

<リチウムイオン二次電池の製造方法>
次に、上述した本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法の一例について説明する。

0093

まず、正極を作製する。例えば粒状の正極活物質を用いる場合には、上述した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、正極用スラリーを作製する。次いで、この正極用スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層を形成する。

0094

また、負極を作製する。例えば粒状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、負極用スラリーを作製する。この後、この負極用スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成する。

0095

次いで、正極に正極リードを取り付けるとともに、負極に負極リードを取り付けた後、正極、セパレータ及び負極を積層する。さらに、積層したものを高分子−金属複合ラミネートシートで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状の外装体とする。この後に、上記電解液を準備し、外装体の開口部から内部に注入して、外装体の開口部を熱融着し封入する。これにより、ラミネート型のリチウムイオン二次電池が完成する。

0096

さらに、リチウムイオン二次電池の製造方法の他の例を説明する。まず、上述と同様に正極及び負極を作成する。次いで、正極に正極リードを取り付けるとともに、負極に負極リードを取り付けた後、正極、セパレータ及び負極を積層する。さらに、積層したものを高分子−金属複合ラミネートシートで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状の外装体とする。

0097

この後に、上記電解液を準備し、外装体の開口部から内部に注入して、外装体の開口部を熱融着し封入する。さらに上述した電気化学前処理を行う。これにより、ラミネート型のリチウムイオン二次電池が完成する。

0098

以下、実施例及び比較例により本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例では、以下に記載の操作を行い、図2に示したようなラミネート型リチウムイオン二次電池を作製し、その性能を評価した。

0099

[実施例1−1]
<正極活物質1の合成>
正極活物質1として、以下の化学式のリチウム含有遷移金属酸化物を、複合炭酸塩法を用いて合成した。出発物質にはニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩を使用し、2mol/Lのニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を調製した。沈殿剤には2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を使用し、pH調整剤には0.2mol/Lのアンモニア水溶液を用いた。

0100

まず、ニッケル、コバルト及びマンガンが以下に示す化学式の割合となるように、ニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を混合して、複合硫酸塩水溶液を調製した。そして、マグネチックスターラー攪拌されている複合硫酸塩水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を滴下して、前駆体を沈殿させた。その後、吸引濾過を行い、濾紙上に堆積した沈殿物を乾燥することにより、複合水酸化物の前駆体を得た。

0101

その後、得られた複合水酸化物の前駆体と炭酸リチウムを、以下に示す化学式の割合となるように混合した。そして、混合物を500℃で仮焼成し、不活性ガス雰囲気中、800℃で12時間本焼成することにより目的の試料を得た。

0102

化学式:Li1.5[Ni0.3Co0.3Mn0.7[Li]0.2]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.2、a+b+c=1.3)

0103

<正極用スラリーの組成
正極活物質1:Li1.5[Ni0.3Co0.3Mn0.7[Li]0.2]O3(90重量部)
導電助剤:鱗片状黒鉛(1重量部)、アセチレンブラック(4重量部)
バインダー:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(5重量部)
溶剤:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)

0104

<正極用スラリーの製造・塗布・乾燥>
正極活物質90重量部と、導電助剤としての鱗片状黒鉛1重量部及びアセチレンブラック4重量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合した。さらに、この混合物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混合して、正極用スラリーとした。

0105

次に、集電体としてのアルミニウム箔上に、得られた正極用スラリーを単位面積100mm2当たりの活物質量が6mgとなるように塗布し、100℃にて真空乾燥させた。そして、正極活物質層の密度が2.75g/cm3となるように、ロールプレス機を用いてプレスした。さらに円形状に打ち抜き、直径が15mmの正極を得た。

0106

<リチウムイオン二次電池の作製>
正極と、金属リチウムからなる負極とを対向させ、この間にセパレータを2枚配置した。次いで、この負極、セパレータ、正極の積層体コインセルの底部側に配置した。さらに、正極と負極の間の絶縁性を保つためのガスケットを装着し、下記電解液をシリンジを用いて注入した。その後、スプリング及びスペーサーを積層し、コインセルの上部側を重ね合わせ、かしめることにより密閉した。このようにして、本実施例のリチウムイオン二次電池を作製した。なお、使用したセパレータは、材質がポリプロピレンであり、厚みが20μmである。コインセルとしてはCR2032規格を用い、材質はステンレス鋼(SUS316))である。電解液としては、有機溶媒に、支持塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度が1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。当該有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DEC=1:2(体積比)の割合で混合したものを用いた。

0107

<電気化学前処理>
まず、上記リチウムイオン二次電池の充電と放電を行った。充電は、電池の最高電圧が4.2Vとなるまで0.1Cレートで充電した後、約24時間保持する定電流定電圧充電(CCCV)法で行った。また、放電は、電池の最低電圧が2.5Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流放電(CC)法で行った。

0108

次に、表2に示すように、最高電圧が4.5Vとなるまで0.1Cレートで充電した後、最低電圧が2.0Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流充放電サイクルを2回行った(パターン1)。次に、最高電圧が4.6Vとなるまで0.1Cレートで充電した後、最低電圧が2.0Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流充放電サイクルを1回行った(パターン2)。さらに、最高電圧が4.7Vとなるまで0.1Cレートで充電した後、最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで放電する定電流充放電サイクルを1回行った(パターン3)。いずれのパターンも室温下(25℃)で行った。このようにして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。正極活物質の仕様の一部を表1に示す。

0109

0110

0111

[実施例1−2〜実施例1−14、比較例1−1及び比較例1−2]
表1に示す正極活物質2〜正極活物質16を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の操作を繰り返して、各例のリチウムイオン二次電池を得た。

0112

[電池の性能評価
<スピネル構造変化割合(K)>
各実施例及び比較例に対し、4.5Vから4.8Vまでの領域(プラトー領域)の実測容量を測定した。さらに、プラトー領域におけるリチウム含有遷移金属酸化物中のLi2MnO3に起因する理論容量及び各実施例の化学式からLi2MnO3の組成比を算出した。そして、プラトー領域の実測容量、理論容量及び組成比から、数式1に基づいてスピネル構造変化割合を求めた。プラトー領域におけるLi2MnO3に起因する理論容量、Li2MnO3の組成比、プラトー領域の実測容量、及びスピネル構造変化割合を表1に示す。

0113

<電池の容量>
上記各例のリチウムイオン二次電池に対して、下記の充放電処理を55℃で100サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合([100サイクル目の放電容量]/[1サイクル目の放電容量]×100)を容量維持率とした。表1に1サイクル目の放電容量と容量維持率を併記する。

0114

図3は、スピネル構造変化割合と1サイクル目の放電容量との関係を示すグラフである。さらに、図4は、スピネル構造変化割合と100サイクル後の容量維持率との関係を示すグラフである。なお、図3又は図4において、二点鎖線で囲んだ範囲は放電容量又は容量維持率の観点から好ましい範囲を示し、一点鎖線で囲んだ範囲は放電容量又は容量維持率の観点からより好ましい範囲を示す。さらに、図3又は図4において、実線で囲んだ範囲は放電容量又は容量維持率の観点からさらに好ましい範囲を示す。

0115

<充放電処理>
充電は、1.0Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで充電した後、約1時間〜1.5時間保持する定電流定電圧充電法とした。さらに、放電は、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流放電法で行った。いずれも、室温下(25℃)で行った。

0116

表1、図3及び図4より、本発明の範囲に属する実施例1−1〜実施例1−14は、本発明外の比較例1−1及び比較例1−2と比較して、高い放電容量及び容量維持率を有することが分かる。

0117

また、図3より、初期放電容量は、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物中のLi2MnO3の組成比が0.2から0.6までは増加する傾向を示し、組成比が0.7から0.8までは低下する傾向を示すことが分かる。また、初期放電容量は、スピネル構造変化割合が増加するにしたがって、増加する傾向を示すことが分かる。この結果から、放電容量は、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物中のLi2MnO3の組成比とスピネル構造変化割合の両方に依存することが分かる。

0118

さらに図4より、100サイクル後の容量維持率は、取り出される放電容量にも依存する傾向があるため、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物中のLi2MnO3の組成比についてはその傾向を一概に述べることはできない。しかしながら、100サイクル後の容量維持率は、スピネル構造変化割合に対しては一定の傾向を示し、スピネル構造変化割合が増加するにしたがって、低下する傾向を示すことが分かる。

0119

これらの結果から、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の放電容量と容量維持率は、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の組成とスピネル構造変化割合に依存することが分かる。

0120

なお、各例のリチウムイオン二次電池を分解して取り出した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物に対しX線回折分析を行った結果、層状構造部位及びスピネル構造に依存する特異なピークを観測した。そのため、各例の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位とスピネル構造部位を有することを確認した。

0121

[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池について詳細に説明する。

0122

まず、本発明の第二実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物について詳細に説明する。本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、第一実施形態と同様に、化学式(1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する。
Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3 …(1)
式(1)中、Liはリチウム、Niはニッケル、Coはコバルト、Mnはマンガン、Oは酸素を示す。また、a、b、c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する。

0123

そして、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位(層状構造のLi2MnO3)とを有する。

0124

また、当該リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に変化する。そして、層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合の割合を1としたとき、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

0125

さらに、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、BET比表面積が1m2/g以上8.0m2/g以下である。

0126

さらにまた、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、窒素で測定した細孔容積が、相対圧が0.98〜0.99であるとき、0.025cm3/g以下である。

0127

このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、高い放電容量及び容量維持率を実現し得るため、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。その結果、車両の駆動電源用や補助電源用のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、家庭用や携帯機器用のリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。

0128

第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdが0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する必要がある。この数式を満足しない場合は、リチウム含有遷移金属酸化物の結晶構造が安定化しない可能性がある。

0129

第一実施形態と同様に、スピネル構造変化割合が1.0となることはない。さらに、スピネル構造変化割合が0.25未満の場合は、高くても従来と同程度の放電容量や容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物が得られるだけである。

0130

さらに、第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.35、0≦b<1.35、0<c<1.35、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.15≦a+b+c<1.35の関係を満足することが好ましい。さらに、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合は、0.4以上0.9未満であることが好適である。このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質に用いた場合、より高い放電容量や容量維持率を得ることが可能となる。

0131

また、第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.3、0≦b<1.3、0<c<1.3、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.2≦a+b+c<1.3の関係を満足することがより好ましい。さらに、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合は、0.6以上0.8以下であることがより好適である。

0132

本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、BET比表面積が1m2/g以上8.0m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積がこの範囲である場合には、リチウム含有遷移金属酸化物におけるリチウムイオン拡散性が向上し、高いレートでの充放電において、放電容量を向上させることが可能となる。なお、BET比表面積は、日本工業規格JIS Z8830に基づき測定することができる。

0133

また、リチウム含有遷移金属酸化物における窒素で測定した細孔容積は、相対圧が0.98〜0.99であるとき、0.025cm3/g以下であることが好ましい。細孔容積が0.025cm3/g以下の場合には、従来のよりも高い放電容量や容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることが可能となる。なお、細孔容積は、日本工業規格JIS Z8831−2に基づき測定することができる。

0134

なお、第一実施形態と同様に、所望のスピネル構造変化割合を得るためには、次のような処理を行うことが好ましい。上記固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池において、所定の電位範囲における正極の最高電位が、リチウム金属対極に換算して4.3V以上4.8V未満である充電又は充放電を行う。これにより、スピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることができる。

0135

本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、50%通過粒径メディアン径、D50)が15μm未満であることが好適である。さらに、リチウム含有遷移金属酸化物は、1μm未満の粒径の粒子を有することが好適である。このような粒子径のリチウム含有遷移金属酸化物を用いることにより、正極活物質層の空隙率を制御し易くなり、非水電解液の浸透性を向上させることができる。そして、非水電解液の浸透性が向上するため、正極活物質層の直流抵抗を低減することが可能となる。なお、50%通過粒径は、動的光散乱法により測定した粒度分布から求めることができる。

0136

本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、N−メチル−2−ピロリドンの吸液量が0.5cm3/g以下であることが好適である。前記リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が1m2/g以上8.0m2/g以下であり、細孔容積が0.025cm3/g以下である場合には、N−メチル−2−ピロリドンの吸液量が0.5cm3/g以下となりやすい。この場合、リチウム含有遷移金属酸化物内での非水電解液の浸透性やリチウムイオン拡散性が向上するため、放電容量及び容量維持率をより向上させることが可能となる。

0137

本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、真密度が4.1g/cm3以上4.6g/cm3以下であることが好適である。当該真密度が4.1g/cm3以上の場合には、リチウム含有遷移金属酸化物の単位体積当たりの重量(充填量)が増加し、放電容量を向上させることが可能となる。また、当該真密度が4.6g/cm3以下の場合には、正極活物質層の空隙量が増加し、非水電解液の浸透性やリチウムイオン拡散性を向上させることができる。なお、真密度は、液相置換法ピクノメーター法)により求めることができる。

0138

次に、本発明の第二実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物(リチウム含有遷移金属酸化物)の製造方法について詳細に説明する。

0139

まず、リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体として、硫酸塩や硝酸塩などのリチウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物及びマンガン化合物を含む原料を混合し、結晶子サイズが10nm以上100nm以下の混合物を調製する。次いで、得られた混合物を不活性ガス雰囲気下、800〜1000℃で6〜24時間焼成する。これにより、リチウム含有遷移金属酸化物を調製することができる。なお、不活性ガスとしては、窒素やアルゴンを用いることが好ましい。

0140

また、他の製造方法としては、まず、リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体として、硫酸塩や硝酸塩などのリチウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物及びマンガン化合物を含む原料を混合し、結晶子サイズが10nm以上100nm以下の混合物を調製する。次いで、得られた混合物を800〜1000℃で6〜24時間焼成して焼成物を得る。この後、得られた焼成物を不活性ガス雰囲気下、600〜800℃で熱処理する。これにより、リチウム含有遷移金属酸化物を調製することができる。

0141

なお、所望のスピネル構造変化割合を得るためには、第一実施形態と同様に、次のような処理を行うことが好ましい。上記固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池において、所定の電位範囲における正極の最高電位が、リチウム金属対極に換算して4.3V以上4.8V未満である充電又は充放電を行う(電気化学前処理)。これにより、スピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることができる。

0142

本実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法について、さらに詳細に説明する。

0143

リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体の製造方法は、第一実施形態と同様に、炭酸塩法(複合炭酸塩法)を適用することができる。具体的には、まず、出発物質としてニッケル、コバルト、マンガンの各硫酸塩、硝酸塩などを準備し、これらを所定の量を秤量した後、混合水溶液を調製する。

0144

次いで、第一実施形態と同様に、この混合水溶液にアンモニア水をpH7になるまで滴下して、さらに炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液を滴下して、Ni−Co−Mnの複合炭酸塩を沈殿させる。そして、沈殿した複合炭酸塩を吸引濾過し、水洗した後、乾燥し、仮焼成する。乾燥条件及び仮焼成条件は、第一実施形態と同様である。

0145

さらに、仮焼成した粉末に、小過剰の水酸化リチウム(LiOH・H2O)を加えて混合する。この際、混合物の結晶子サイズが10nm以上100nm以下であることが好ましい。そして、この混合物を本焼成することにより、リチウム含有遷移金属酸化物の前駆体を作製することができる。本焼成条件も第一実施形態と同様である。

0146

そして、本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、第一実施形態と同様に、上記前駆体を酸化処理することにより得ることができる。

0147

本発明の第二実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の構成は、上述の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を用いること以外は第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。

0148

以下、実施例及び比較例により本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例では、以下に記載の操作を行い、図2に示したようなラミネート型リチウムイオン二次電池を作製し、その性能を評価した。

0149

[実施例2−1]
<正極活物質1の合成>
正極活物質1として、以下の化学式のリチウム含有遷移金属酸化物を、複合炭酸塩法を用いて合成した。出発物質にはニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩を使用し、2mol/Lのニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を調製した。沈殿剤には2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を使用し、pH調整剤には0.2mol/Lのアンモニア水溶液を用いた。

0150

まず、ニッケル、コバルト及びマンガンが以下に示す化学式の割合となるように、ニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を混合して、複合硫酸塩水溶液を調製した。そして、マグネチックスターラーで攪拌されている複合硫酸塩水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を滴下して、前駆体を沈殿させた。その後、吸引濾過を行い、濾紙上に堆積した沈殿物を乾燥することにより、複合水酸化物の前駆体を得た。

0151

その後、得られた複合水酸化物の前駆体と炭酸リチウムを、以下に示す化学式の割合となるように混合した。そして、混合物を500℃で仮焼成し、不活性ガス雰囲気中、800℃で12時間本焼成することにより目的の試料を得た。

0152

化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.3、a+b+c=1.2)
細孔容積:0.008cm3/g
BET比表面積:1.07m2/g
平均粒径(D50):6.6μm
真密度:4.2g/cm3

0153

<正極用スラリーの組成>
正極活物質:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3(100重量部)
導電助剤:燐片状黒鉛(1.0重量部)、アセチレンブラック(3.0重量部)
バインダー:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(3.0重量部)
溶剤:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(65重量部)

0154

<正極用スラリーの製造>
上記組成の正極用スラリーを次のように調製した。まず、バインダー3.0重量部をNMP30重量部に溶解してバインダー溶液を作製した。次に、導電助剤4.0重量部と正極活物質粉100重量部の混合粉に、上記バインダー溶液33.0重量部を加え、プラネタリーミキサー(浅田鉄工株式会社製、PVM100)にて混合した。その後、混合物にNMP35重量部を加えて、正極用スラリーを調製した。なお、正極用スラリーの固形分濃度は、62質量%であった。

0155

<正極用スラリーの塗布・乾燥>
厚さが20μmのアルミニウム箔からなる集電体を走行速度1m/分で走行させながら、集電体の片面に上記正極用スラリーをダイコーターにより塗布した。次いで、この正極用スラリーを塗布した集電体を熱風乾燥炉にて乾燥させ、電極活物質層残留するNMP量を0.02質量%以下とした。なお、乾燥温度は100℃〜110℃とし、乾燥時間は3分間とした。さらに、アルミニウム箔の裏面にも同様に正極用スラリーを塗布し、乾燥させた。これにより、両面に正極活物質層を有するシート状正極を形成した。

0156

<正極のプレス>
シート状正極にローラープレスをかけて圧縮し、切断した。これにより、片面の活物質層の重量が約10mg/cm2、厚さが約40μm、密度が2.80g/cm3の正極を作製した。以下、この正極を「正極C1」ともいう。正極C1の表面を観察したところ、クラックの発生は見られなかった。

0157

<正極C1の加熱処理
次に、上記手順で作製した正極C1を、真空乾燥炉にて加熱処理を行った。具体的には、乾燥炉内部に正極C1を設置した後、室温(25℃)にて減圧し、乾燥炉内の空気を100mmHg(1.33×104Pa)となるまで除去した。次いで、窒素ガス流通しながら、10℃/分で120℃まで昇温した。窒素ガスの流通速度は、100cm3/分とした。その後、真空炉内を120℃で100mmHgまで再度減圧し、炉内の窒素を排気したまま12時間保持した後、室温まで降温した。このようにして、本実施例の正極を作製した。本実施例の正極を以下「正極C11」ともいう。

0158

<負極用スラリーの組成>
負極活物質:天然グラファイト粉(100重量部)
導電助剤:アセチレンブラック(1.0重量部)
バインダー:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(5.0重量部)
溶剤:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(97重量部)

0159

<負極用スラリーの製造>
上記組成の負極用スラリーを次のように調製した。まず、バインダー5.0重量部をNMP50重量部に溶解してバインダー溶液を作製した。次に、導電助剤1.0重量部と天然グラファイト粉100重量部の混合粉に、上記バインダー溶液55.0重量部を加え、プラネタリーミキサー(浅田鉄工株式会社製、PVM100)にて混合した。その後、混合物にNMP47重量部を加えて、負極用スラリーを調製した。なお、負極用スラリーの固形分濃度は、52質量%であった。

0160

<負極用スラリーの塗布・乾燥>
厚さが10μmの電解銅箔からなる集電体を走行速度1.5m/分で走行させながら、集電体の片面に、上記負極用スラリーをダイコーターにより塗布した。次いで、この負極用スラリーを塗布した集電体を、熱風乾燥炉にて乾燥させ、電極活物質層に残留するNMP量を0.02質量%以下とした。なお、乾燥温度は100℃〜110℃とし、乾燥時間は2分間とした。さらに、電解銅箔の裏面にも同様に負極用スラリーを塗布し、乾燥させた。これにより、両面に負極活物質層を有するシート状負極を形成した。

0161

<負極のプレス>
シート状負極にローラープレスをかけて圧縮し、切断した。これにより、片面の活物質層の重量が約10mg/cm2、厚さが約50μm、密度が1.45g/cm3の負極を作製した。以下、この負極を「負極A1」ともいう。負極A1の表面を観察したところ、クラックの発生は見られなかった。

0162

<負極A1の加熱処理>
次に、上記手順で作製した負極A1を用い真空乾燥炉にて乾燥処理を行った。具体的には、乾燥炉内部に負極A1を設置した後、室温(25℃)にて減圧し、乾燥炉内の空気を100mmHg(1.33×104Pa)となるまで除去した。次いで、窒素ガスを流通しながら、10℃/分で135℃まで昇温した。窒素ガスの流通速度は、100cm3/分とした。その後、真空炉内を135℃で100mmHgまで再度減圧し、炉内の窒素を排気したまま12時間保持した後、室温まで降温した。このようにして、本実施例の負極を作製した。本実施例の負極を以下「負極A11」ともいう。

0163

<電池の作製>
まず、正極活物質層の面積が縦3.4cm、横5.0cmの正極C11を準備し、この正極C11の集電体部分に正極リードを溶接した。また、負極活物質層の面積が縦3.8cm、横5.5cmの負極A11を準備し、この負極A11の集電体部分に負極リードを溶接した。

0164

次に、縦4.5cm、横6.0cm、厚さ25μm、空孔率55%の多孔質ポリプロピレン製セパレータ(S)を準備した。そして、上述のリードを溶接した負極A11と正極C11との間に、多孔質ポリプロピレン製セパレータを挟んで5層からなる積層体を作製した。つまり、負極A11−セパレータ(S)−正極C11−セパレータ(S)−負極A11の順に積層して、当該積層体を作製した。

0165

次いで、アルミラミネートフィルムで当該積層体の両側を挟み込み、3辺を熱圧着することにより、上記積層体を2枚のアルミラミネートフィルムの内部に収納した。なお、アルミラミネートフィルムは、縦5.0cm、横6.5cmのものを用いた。

0166

このアルミラミネートフィルムの内部に、電解液を0.5cm3注入した後、残りの1辺を熱圧着封止して、ラミネート型セルを作製した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液に、1.0mol/Lの濃度でLiPF6を溶解したものを用いた。

0167

<電気化学前処理>
実施例1−1と同様にして、電気化学前処理を行った。このようにして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。正極活物質の仕様の一部を表3に示す。

0168

0169

[実施例2−2〜2−10]
実施例2−2〜2−10は、それぞれ表3に示す正極活物質2〜10を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、各例のリチウムイオン二次電池を得た。
なお、実施例2−2〜2−10の正極をそれぞれ「C12〜C20」ともいう。

0170

[比較例2−1]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C31」ともいう。
化学式:LiMn2.0O4.0(スピネル構造)
細孔容積:0.007cm3/g
BET比表面積:0.8m2/g
平均粒径(D50):9.1μm
真密度:4.2g/cm3

0171

[比較例2−2]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C32」ともいう。
化学式:LiNi(1/3)Co(1/3)Mn(1/3)O4.0(層状構造)
細孔容積:0.05cm3/g
BET比表面積:3.5m2/g
平均粒径(D50):3.2μm
真密度:4.3g/cm3

0172

[参考例2−1]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C33」ともいう。
化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
細孔容積:0.04cm3/g
BET比表面積:1.5m2/g
平均粒径(D50):6.8μm
真密度:4.16g/cm3

0173

[参考例2−2]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C34」ともいう。
化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
細孔容積:0.02cm3/g
BET比表面積:9.2m2/g
平均粒径(D50):14.6μm
真密度:4.16g/cm3

0174

[参考例2−3]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例2−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C35」ともいう。
化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
細孔容積:0.1cm3/g
BET比表面積:9.8m2/g
平均粒径(D50):21.4μm
真密度:4.14g/cm3

0175

[電池の性能評価]
<スピネル構造変化割合(K)>
各実施例の正極活物質に関し、実施例1と同様に、プラトー領域におけるLi2MnO3に起因する理論容量、Li2MnO3の組成比、プラトー領域の実測容量、及びスピネル構造変化割合を求めた。これらを表3に示す。
<電池の容量>
上記各例のリチウムイオン二次電池に対して、下記の充放電処理を55℃で100サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合([100サイクル目の放電容量]/[1サイクル目の放電容量]×100)を容量維持率とした。表4に1サイクル目の放電容量と容量維持率を併記する。

0176

<充放電処理>
充電は、1.0Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで充電した後、約1時間〜1.5時間保持する定電流定電圧充電法とした。さらに、放電は、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流放電法で行った。いずれも、室温下(25℃)で行った。

0177

0178

表4より、本発明の範囲に属する実施例2−1〜実施例2−10は、本発明外の比較例2−1〜比較例2−2と比較して、高い放電容量及び容量維持率を有することが分かる。

0179

なお、各実施例及び参考例のリチウムイオン二次電池を分解して取り出した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物に対しX線回折分析を行った結果、層状構造部位及びスピネル構造に依存する特異なピークを観測した。そのため、各実施例及び参考例の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位とスピネル構造部位を有することを確認した。

0180

[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池について詳細に説明する。

0181

まず、本発明の第三実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物について詳細に説明する。本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、第一実施形態と同様に、化学式(1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を含有する。
Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3 …(1)
式(1)中、Liはリチウム、Niはニッケル、Coはコバルト、Mnはマンガン、Oは酸素を示す。また、a、b、c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する。

0182

そして、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位(層状構造のLi2MnO3)とを有する。

0183

また、当該リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に変化する。そして、スピネル構造に変化する部位(層状構造のLi2MnO3)がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合の割合を1としたとき、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

0184

さらに、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、BET比表面積が1m2/g以上9m2/g以下である。

0185

このようなリチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、高い放電容量及び容量維持率を実現し得るため、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。その結果、車両の駆動電源用や補助電源用のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、家庭用や携帯機器用のリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。

0186

第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdが0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する必要がある。この数式を満足しない場合は、リチウム含有遷移金属酸化物の結晶構造が安定化しない可能性がある。

0187

また、第一実施形態と同様に、スピネル構造変化割合が1.0となることはない。さらに、スピネル構造変化割合が0.25未満の場合は、高くても従来と同程度の放電容量や容量維持率を実現し得るリチウム含有遷移金属酸化物が得られるだけである。

0188

さらに、本実施形態のリチウム含有遷移金属酸化物は、BET比表面積が1m2/g以上9m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積がこの範囲である場合には、リチウム含有遷移金属酸化物におけるリチウムイオン拡散性が向上し、高い放電容量を得ることが可能となる。なお、BET比表面積は、第二実施形態と同様に、日本工業規格JIS Z8830に基づき測定することができる。

0189

また、第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.35、0≦b<1.35、0<c<1.35、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.15≦a+b+c<1.35の関係を満足することが好ましい。さらに、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合は、0.4以上0.9未満であることが好適である。加えて、リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積は、2m2/g以上8m2/g以下であることが好適である。

0190

さらに、第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.3、0≦b<1.3、0<c<1.3、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.2≦a+b+c<1.3を満足することが好ましい。また、当該リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.6以上0.8以下であることがより好適である。加えて、リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が3m2/g以上6m2/g以下であることがより好適である。このようなリチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、より高い放電容量及び容量維持率を実現し得るため、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池により好適に用いられる。

0191

本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、第二実施形態と同様の方法で調製することができる。

0192

本発明の第三実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の構成は、上述の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を用いること以外は第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。

0193

以下、実施例及び比較例により本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例では、以下に記載の操作を行い、図2に示したようなラミネート型リチウムイオン二次電池を作製し、その性能を評価した。

0194

[実施例3−1]
<正極活物質1の合成>
正極活物質1として、以下の化学式のリチウム含有遷移金属酸化物を、複合炭酸塩法を用いて合成した。出発物質にはニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩を使用し、2mol/Lのニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を調製した。沈殿剤には2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を使用し、pH調整剤には0.2mol/Lのアンモニア水溶液を用いた。

0195

まず、ニッケル、コバルト及びマンガンが以下に示す化学式の割合となるように、ニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を混合して、複合硫酸塩水溶液を調製した。そして、マグネチックスターラーで攪拌されている複合硫酸塩水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を滴下して、前駆体を沈殿させた。その後、吸引濾過を行い、濾紙上に堆積した沈殿物を乾燥することにより、複合水酸化物の前駆体を得た。

0196

その後、得られた複合水酸化物の前駆体と炭酸リチウムを、以下に示す化学式の割合となるように混合した。そして、混合物を500℃で仮焼成し、不活性ガス雰囲気中、800℃で12時間本焼成することにより目的の試料を得た。

0197

化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.3、a+b+c=1.2)
BET比表面積:1.4m2/g

0198

<正極用スラリーの組成>
正極活物質1:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3(90重量部)
導電助剤:鱗片状黒鉛(1重量部)、アセチレンブラック(4重量部)
バインダー:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(5重量部)
溶剤:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)

0199

<正極用スラリーの製造・塗布・乾燥>
正極活物質90重量部と、導電助剤としての鱗片状黒鉛1重量部及びアセチレンブラック4重量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合した。さらに、この混合物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混合して、正極用スラリーとした。

0200

次に、集電体としてのアルミニウム箔上に、得られた正極用スラリーを単位面積100mm2当たりの活物質量が6mgとなるように塗布し、100℃にて真空乾燥させた。そして、正極活物質層の密度が2.75g/cm3となるように、ロールプレス機を用いてプレスした。さらに、円形状に打ち抜き、直径が15mmの正極を得た。

0201

<リチウムイオン二次電池の作製>
正極と、金属リチウムからなる負極とを対向させ、この間にセパレータを2枚配置した。次いで、この負極、セパレータ、正極の積層体をコインセルの底部側に配置した。さらに、正極と負極の間の絶縁性を保つためのガスケットを装着し、下記電解液をシリンジを用いて注入した。その後、スプリング及びスペーサーを積層し、コインセルの上部側を重ね合わせ、かしめることにより密閉した。このようにして、本実施例のリチウムイオン二次電池を作製した。なお、使用したセパレータは、材質がポリプロピレンであり、厚みが20μmである。コインセルとしてはCR2032規格を用い、材質はステンレス鋼(SUS316))である。電解液としては、有機溶媒に、支持塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度が1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。当該有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DEC=1:2(体積比)の割合で混合したものを用いた。

0202

<電気化学前処理>
実施例1−1と同様にして、電気化学前処理を行った。このようにして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。正極活物質の仕様の一部を表5に示す。

0203

0204

[実施例3−2〜3−6]
表5に示す正極活物質2〜正極活物質6を用いたこと以外は、実施例3−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。

0205

[電池の性能評価]
<スピネル構造変化割合(K)>
各実施例の正極活物質に関し、実施例1と同様に、プラトー領域におけるLi2MnO3に起因する理論容量、Li2MnO3の組成比、プラトー領域の実測容量、及びスピネル構造変化割合を求めた。これらを表5に示す。

0206

<電池の容量>
上記各例のリチウムイオン二次電池に対して、下記の充放電処理を55℃で100サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合([100サイクル目の放電容量]/[1サイクル目の放電容量]×100)を容量維持率とした。

0207

図5は、各例のBET比表面積と100サイクル後の容量維持率との関係を示す。さらに、図6に、各例のBET比表面積と1サイクル目の放電容量との関係を示す。なお、図5又は図6において、二点鎖線で囲んだ範囲は容量維持率又は放電容量の観点から好ましい範囲を示し、一点鎖線で囲んだ範囲は容量維持率又は放電容量の観点からより好ましい範囲を示す。さらに、図5又は図6において、実線で囲んだ範囲は容量維持率又は放電容量の観点から特に好ましい範囲を示す。

0208

<充放電処理>
充電は、1.0Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで充電した後、約1時間〜1.5時間保持する定電流定電圧充電法とした。さらに、放電は、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流放電法で行った。いずれも、室温下で行った。

0209

図5及び図6より、本発明の範囲に属する実施例3−1〜実施例3−6は、高い放電容量及び容量維持率を有することが分かる。また、図5より、BET比表面積と100サイクル後の容量維持率との好適な範囲が分かる。さらに図6より、BET比表面積と初期放電容量との好適な範囲が分かる。

0210

これらの結果から、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の放電容量と容量維持率は、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の組成とスピネル構造変化割合とBET比表面積とに依存することが分かる。

0211

なお、各例のリチウムイオン二次電池を分解して取り出した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物に対しX線回折分析を行った結果、層状構造部位及びスピネル構造に依存する特異なピークを観測した。そのため、各例の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位とスピネル構造部位を有することを確認した。

0212

[第四実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池について詳細に説明する。

0213

まず、本発明の第四実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物について詳細に説明する。本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式(1)で表される第一リチウム含有遷移金属酸化物及び第二リチウム含有遷移金属酸化物を含有する。
Li1.5[NiaCobMnc[Li]d]O3 …(1)
式(1)中、Liはリチウム、Niはニッケル、Coはコバルト、Mnはマンガン、Oは酸素を示す。また、a、b、c及びdは、0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する。

0214

そして、本実施形態の第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位と、所定の電位範囲における充電又は充放電を行うことによりスピネル構造に変化する部位(層状構造のLi2MnO3)とを有する。

0215

また、当該第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物における層状構造のLi2MnO3がスピネル構造のLiMn2O4に変化する。そして、スピネル構造に変化する部位(層状構造のLi2MnO3)がスピネル構造のLiMn2O4に全て変化した場合の割合を1としたとき、第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である。

0216

そして、本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、第一リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が1.0m2/g以上4.0m2/g以下であり、第二リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積が4.0m2/g超8.0m2/g以下である。このように、BET比表面積が異なる二種類のリチウム含有遷移金属酸化物を含有することにより、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物におけるリチウムイオン拡散性が向上し、高いレートでの充放電において、放電容量を高めることが可能となる。これは、第一リチウム含有遷移金属酸化物が放電容量を向上させるために有効であり、第二リチウム含有遷移金属酸化物がレート特性を向上させるために有効であるためである。

0217

なお、第一リチウム含有遷移金属酸化物及び第二リチウム含有遷移金属酸化物は、同一組成であってもよく、異なる組成であってもよい。つまり、本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、少なくともBET比表面積が異なる二種類のリチウム含有遷移金属酸化物を含有するものである。

0218

このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、1.0Cや2.5Cなどの高いレートでの充放電において、高い放電容量及び容量維持率を実現し得る。そのため、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。その結果、車両の駆動電源用や補助電源用のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、家庭用や携帯機器用のリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。

0219

第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdが0<a<1.4、0≦b<1.4、0<c<1.4、0.1<d≦0.4、a+b+c+d=1.5、1.1≦a+b+c<1.4の関係を満足する必要がある。この数式を満足しない場合は、第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物の結晶構造が安定化しない可能性がある。

0220

また、第一実施形態と同様に、スピネル構造変化割合が1.0となることはない。さらに、スピネル構造変化割合が0.25未満の場合は、高くても従来と同程度の放電容量や容量維持率を実現し得る第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物が得られるだけである。

0221

また、第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.35、0≦b<1.35、0<c<1.35、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.15≦a+b+c<1.35の関係を満足することが好ましい。さらに、所定の電位範囲における充電又は充放電を行った場合、当該第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合は、0.4以上0.9未満であることが好適である。

0222

さらに、第一実施形態と同様に、化学式(1)において、a、b、c及びdは、0<a<1.3、0≦b<1.3、0<c<1.3、0.15<d≦0.35、a+b+c+d=1.5、1.2≦a+b+c<1.3を満足することが好ましい。また、当該第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物のスピネル構造変化割合が0.6以上0.8以下であることがより好適である。

0223

また、本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、窒素で測定した細孔容積が、相対圧が0.98〜0.99であるとき、0.025cm3/g以下である第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物を含有することが好適である。細孔容積が0.025cm3/g以下の場合には、従来のよりも高い放電容量や容量維持率を実現し得る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることが可能となる。なお、細孔容積は、第二実施形態と同様に、日本工業規格JIS Z8831−2に基づき測定することができる。

0224

さらに、上記第一リチウム含有遷移金属酸化物は50%通過粒径(メディアン径、D50)が15μm未満であり、第二リチウム含有遷移金属酸化物は50%通過粒径が10μm未満であることが好ましい。さらに、当該固溶体リチウム含有遷移金属酸化物が1μm未満の粒径の粒子を含むことが好ましい。つまり、第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物の少なくとも一方は、1μm未満の粒径の粒子を含むことが好ましい。このような粒子径のリチウム含有遷移金属酸化物を用いることにより、正極活物質層の空隙率を制御し易くなり、非水電解液の浸透性を向上させることができる。そして、非水電解液の浸透性が向上するため、正極活物質層の直流抵抗を低減することが可能となる。なお、50%通過粒径は、第二実施形態と同様に、動的光散乱法により測定した粒度分布から求めることができる。

0225

また、第一リチウム含有遷移金属酸化物及び第二リチウム含有遷移金属酸化物は、N−メチル−2−ピロリドンの吸液量が0.5cm3/g以下であることが好適である。この場合、リチウム含有遷移金属酸化物内での非水電解液の浸透性やリチウムイオン拡散性が向上するため、放電容量及び容量維持率をより向上させることが可能となる。

0226

さらに、第一リチウム含有遷移金属酸化物及び第二リチウム含有遷移金属酸化物の真密度は、4.1g/cm3以上4.6g/cm3以下であることが好適である。当該真密度が4.1g/cm3以上の場合には、リチウム含有遷移金属酸化物の単位体積当たりの重量(充填量)が増加し、放電容量を向上させることが可能となる。また、当該真密度が4.6g/cm3以下の場合には、正極活物質層の空隙量が増加し、非水電解液の浸透性やリチウムイオン拡散性を向上させることができる。なお、真密度は、第二実施形態と同様に、液相置換法(ピクノメーター法)により求めることができる。

0227

本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、第二実施形態と同様の方法で調製することができる。なお、第一及び第二リチウム含有遷移金属酸化物のBET比表面積は、原料の混合物の結晶子サイズを10nm以上100nm以下にすることで、調整することが可能である。

0228

なお、所望のスピネル構造変化割合を得るためには、第一実施形態と同様に、次のような処理を行うことが好ましい。上記固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池において、所定の電位範囲における正極の最高電位が、リチウム金属対極に換算して4.3V以上4.8V未満である充電又は充放電を行う。これにより、スピネル構造変化割合が0.25以上1.0未満である固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることができる。

0229

本発明の第四実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の構成は、上述の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を用いること以外は第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。

0230

以下、実施例及び比較例により本実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例では、以下に記載の操作を行い、図2に示したようなラミネート型リチウムイオン二次電池を作製し、その性能を評価した。

0231

[実施例4−1]
<正極活物質1及び正極活物質2の合成>
正極活物質1及び正極活物質2として、以下の化学式のリチウム含有遷移金属酸化物を、複合炭酸塩法を用いて合成した。出発物質にはニッケル、コバルト、マンガンの硫酸塩を使用し、2mol/Lのニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を調製した。沈殿剤には2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を使用し、pH調整剤には0.2mol/Lのアンモニア水溶液を用いた。

0232

まず、ニッケル、コバルト及びマンガンが以下に示す化学式の割合となるように、ニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を混合して、複合硫酸塩水溶液を調製した。そして、マグネチックスターラーで攪拌されている複合硫酸塩水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を滴下して、前駆体を沈殿させた。その後、吸引濾過を行い、濾紙上に堆積した沈殿物を乾燥することにより、複合水酸化物の前駆体を得た。

0233

その後、得られた複合水酸化物の前駆体と炭酸リチウムを、以下に示す化学式の割合となるように混合した。そして、混合物を500℃で仮焼成し、不活性ガス雰囲気中、800℃で12時間本焼成することにより目的の試料を得た。

0234

<正極活物質1の組成及び物性>
化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.3、a+b+c=1.2)
細孔容積:0.008cm3/g
BET比表面積:1.07m2/g
平均粒径(D50):6.6μm
真密度:4.2g/cm3

0235

<正極活物質2の組成及び物性>
化学式:Li1.5[Ni0.2Co0.2Mn0.8[Li]0.3]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.3、a+b+c=1.2)
細孔容積:0.024cm3/g
BET比表面積:7.2m2/g
平均粒径(D50):14.4μm
真密度:4.1g/cm3

0236

<正極用スラリーの組成>
正極活物質:正極活物質1(50重量部)、正極活物質2(50重量部)
導電助剤:燐片状黒鉛(1.0重量部)、アセチレンブラック(3.0重量部)
バインダー:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(3.0重量部)
溶剤:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(65重量部)

0237

<正極用スラリーの製造>
上記組成の正極用スラリーを次のように調製した。まず、バインダー3.0重量部をNMP30重量部に溶解してバインダー溶液を作製した。次に、導電助剤4.0重量部と正極活物質粉100重量部の混合粉に、上記バインダー溶液33.0重量部を加え、プラネタリーミキサー(浅田鉄工株式会社製、PVM100)にて混合した。その後、混合物にNMP35重量部を加えて、正極用スラリーを調製した。なお、正極用スラリーの固形分濃度は、62質量%であった。

0238

<正極用スラリーの塗布・乾燥>
厚さが20μmのアルミニウム箔からなる集電体を走行速度1m/分で走行させながら、集電体の片面に、上記正極用スラリーをダイコーターにより塗布した。次いで、この正極用スラリーを塗布した集電体を、熱風乾燥炉にて乾燥させ、電極活物質層に残留するNMP量を0.02質量%以下とした。なお、乾燥温度は100℃〜110℃とし、乾燥時間は3分間とした。さらに、アルミニウム箔の裏面にも同様に正極用スラリーを塗布し、乾燥させた。これにより、両面に正極活物質層を有するシート状正極を形成した。

0239

<正極のプレス>
シート状正極にローラープレスをかけて圧縮し、切断した。これにより、片面の活物質層の重量が約10mg/cm2、厚さが約40μm、密度が2.80g/cm3の正極を作製した。以下、この正極を「正極C1」ともいう。正極C1の表面を観察したところ、クラックの発生は見られなかった。

0240

<正極C1の加熱処理>
次に、上記手順で作製した正極C1を、真空乾燥炉にて加熱処理を行った。具体的には、乾燥炉内部に正極C1を設置した後、室温(25℃)にて減圧し、乾燥炉内の空気を100mmHg(1.33×104Pa)となるまで除去した。次いで、窒素ガスを流通しながら、10℃/分で120℃まで昇温した。窒素ガスの流通速度は、100cm3/分とした。その後、真空炉内を120℃で100mmHgまで再度減圧し、炉内の窒素を排気したまま12時間保持した後、室温まで降温した。このようにして、本実施例の正極を作製した。本実施例の正極を以下「正極C11」ともいう。

0241

<電池の作製>
まず、正極活物質層の面積が縦3.4cm、横5.0cmの正極C11を準備し、この正極C11の集電体部分に正極リードを溶接した。また、負極活物質層の面積が縦3.8cm、横5.5cmである、実施例2で使用した負極A11を準備し、この負極A11の集電体部分に負極リードを溶接した。

0242

次に、実施例2で使用した多孔質ポリプロピレン製セパレータ(S)を準備した。そして、実施例2と同様に、負極A11−セパレータ(S)−正極C11−セパレータ(S)−負極A11の順に積層して、当該積層体を作製した。

0243

次いで、実施例2で使用したアルミラミネートフィルムで当該積層体の両側を挟み込み、3辺を熱圧着することにより、上記積層体を2枚のアルミラミネートフィルムの内部に収納した。このアルミラミネートフィルムの内部に、実施例2で使用した電解液を0.5cm3/セルを注入した後、残りの1辺を熱圧着封止して、ラミネート型セルを作製した。

0244

<電気化学前処理>
実施例1−1と同様にして、電気化学前処理を行った。このようにして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。正極活物質の仕様の一部を表6に示す。

0245

0246

[実施例4−2]
正極活物質1を30重量部とし、正極活物質2を70重量部としたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C12」ともいう。

0247

[実施例4−3]
正極活物質1を70重量部とし、正極活物質2を30重量部としたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C13」ともいう。

0248

[実施例4−4]
以下に示す正極活物質3を正極活物質2に代えて用いたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C14」ともいう。正極活物質3は、リチウム、ニッケル、コバルト及びマンガンが以下に示す化学式の割合となるように、炭酸リチウム、ニッケル硫酸塩水溶液、コバルト硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を混合した以外は、正極活物質1と同様に調製した。

0249

<正極活物質3の組成及び物性>
化学式:Li1.5[Ni0.25Co0.25Mn0.73[Li]0.27]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.27、a+b+c=1.23)
細孔容積:0.007cm3/g
BET比表面積:1.2m2/g
平均粒径(D50):5.8μm
真密度:4.3g/cm3

0250

[実施例4−5]
以下に示す正極活物質4を正極活物質2に代えて用いたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C15」ともいう。なお、正極活物質4も、リチウム、ニッケル及びマンガンが以下に示す化学式の割合となるように、炭酸リチウム、ニッケル硫酸塩水溶液及びマンガン硫酸塩水溶液を混合した以外は、正極活物質1と同様に調製した。

0251

<正極活物質4の組成及び物性>
化学式:Li1.5[Ni0.46Mn0.86[Li]0.18]O3
(a+b+c+d=1.5、d=0.18、a+b+c=1.32)
細孔容積:0.015cm3/g
BET比表面積:2.6m2/g
平均粒径(D50):5.8μm
真密度:4.3g/cm3

0252

[比較例4−1]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C31」ともいう。
化学式:LiMn2.0O4.0(スピネル構造)
細孔容積:0.01cm3/g
BET比表面積:0.8m2/g
平均粒径(D50):9.1μm
真密度:4.20g/cm3

0253

[比較例4−2]
以下に示す正極活物質を用いたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C32」ともいう。
化学式:LiNi(1/3)Co(1/3)Mn(1/3)O4.0(層状構造)
細孔容積:0.05cm3/g
BET比表面積:3.5m2/g
平均粒径(D50):3.2μm
真密度:4.3g/cm3

0254

[参考例4−1]
正極活物質2を用いず、正極活物質1を100重量部用いたこと以外は、実施例4−1と同様の操作を繰り返して、本例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、本例で用いた正極を「正極C33」ともいう。

0255

[電池の性能評価]
<電池の容量>
上記各例のリチウムイオン二次電池を2つずつ準備した。そして、リチウムイオン二次電池の一方に対し、下記の充放電処理1を55℃で100サイクル繰り返した。さらに、リチウムイオン二次電池の他方に対し、下記の充放電処理2を55℃で100サイクル繰り返した。充放電処理1を施したリチウムイオン二次電池に関し、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合([100サイクル目の放電容量]/[1サイクル目の放電容量]×100)を容量維持率とした。各例のリチウムイオン二次電池の仕様と共に、充放電処理1を施したリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量及び容量維持率、並びに充放電処理2を施したリチウムイオン二次電池の1サイクル目の放電容量を表7に示す。

0256

<充放電処理1>
充電は、1.0Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで充電した後、約1時間〜1.5時間保持する定電流定電圧充電法とした。さらに、放電は、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで1.0Cレートで放電する定電流放電法で行った。いずれも、室温下(25℃)で行った。

0257

<充放電処理2>
充電は、1.0Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで充電した後、約1時間〜1.5時間保持する定電流定電圧充電法とした。さらに、放電は、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで2.5Cレートで放電する定電流放電法で行った。いずれも、室温下(25℃)で行った。

0258

0259

表7より、本発明の範囲に属する実施例4−1〜実施例4−5は、本発明外の比較例4−1〜比較例4−2と比較して、高い放電容量及び容量維持率を有することが分かる。

0260

なお、各実施例及び参考例のリチウムイオン二次電池を分解して取り出した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物に対しX線回折分析を行った結果、層状構造部位及びスピネル構造に依存する特異なピークを観測した。そのため、各実施例及び参考例の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造部位とスピネル構造部位を有することを確認した。

0261

以上、実施形態及び実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。

0262

すなわち、上記実施形態及び実施例においては、リチウムイオン二次電池として、ラミネート型電池コイン型電池を例示したが、これに限定されるものではない。つまり、ボタン型電池角形円筒形などの缶型電池など従来公知の形態・構造についても適用することができる。

0263

また、本発明は、上述した積層型(扁平型)電池だけでなく、巻回型円筒型)電池など従来公知の形態・構造についても適用することができる。

0264

さらに、本発明は、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態電極構造)で見た場合、上述した通常型(内部並列接続タイプ)電池だけでなく、双極型(内部直列接続タイプ)電池など従来公知の形態・構造についても適用することができる。なお、双極型電池における電池素子は、一般的に、集電体の一方の表面に負極活物質層が形成され、他方の表面に正極活物質層が形成された双極型電極と、電解質層とを複数積層した構成を有している。

実施例

0265

特願2012−019849号(出願日:2012年2月1日)、特願2012−019857号(出願日:2012年2月1日)、特願2012−019873号(出願日:2012年2月1日)及び特願2012−019876号(出願日:2012年2月1日)の全内容は、ここに援用される。

0266

本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、上述の構成を有することにより高い放電容量及び容量維持率を実現し得る。さらに、本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を用いた非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池は、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド電気自動車のモータ等の駆動用電源補助電源に用いることができる。

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