図面 (/)

技術 超微細マルテンサイト高硬度鋼とその製造方法

出願人 国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者 花村年裕鳥塚史郎
出願日 2012年2月24日 (8年11ヶ月経過) 出願番号 2012-038191
公開日 2013年9月5日 (7年5ヶ月経過) 公開番号 2013-173970
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 全ひずみ 微小析出物 歪み加工 マルテンサイト変態開始点 強靭鋼 衝撃エネルギー吸収能 極限条件 全応力
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年9月5日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (9)

課題

本発明は、従来技術では解決することができない各種の問題点、即ち、建造物橋梁等の構造物自動車足回り鋼、機械歯車部品に使用される鋼として、高に優れた厚鋼板形鋼異形棒鋼棒鋼及び鋼線等の鋼を製造するに当たって、高価な合金元素を添加しないで、低炭素鋼化学成分組成を有する鋼を使用して、製造設備に過大な負荷をかけることなく現有の製造ラインにおいて、多資源高エネルギーでかつ多工程のために安価かつ所望の鋼を製造することができないという問題を解決しようとするものである。

解決手段

本発明は、以上の点に鑑みて、従来技術では解決することができない上記各種の問題点、即ち、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用される鋼として、高硬度の鋼を製造するために、安価なMn及びSiを添加した低C鋼を素材とし、短時間焼鈍処理により、マルテンサイト粒径を制御した超微細組織を有する鋼を提供する。

概要

背景

近年、構造物の大型化や自動車部品の軽量化に伴って、これまで以上に高性能な鋼が求められている。これに加えて当該鋼を製造するに当たり、省資源かつ省エネルギーであることも重要な課題である。そして、当該鋼を製造するに当たっては設備増設ないし新設することなく、しかも従来の製造工程よりも省工程で目的とする鋼を製造できることが望まれている。

従来、高強度鋼板は多数開発されてきている。例えば、特許文献1には、高強度と高延性両立させ、プレス成形性衝撃エネルギー吸収能に優れた自動車用冷延鋼板に関する技術が開示されている。これは高価な合金元素添加量を抑制してフェライト結晶粒微細化によりを上昇させ、しかもプレス成形性に重要となると延性とのバランスに優れた薄鋼板である。そしてその製造工程では熱間圧延の後、冷間圧延を行ない、適切な焼鈍を行なうというものである。しかしながら、この技術によれば、MoやNi等の高価な合金元素が少量ではあるが添加必須元素であり、薄鋼板に圧延後、焼鈍処理を必要としている。

また、非特許文献1には、高価な合金元素を添加せずにMnとSi含有量を高めた0.1%C−5%Mn−2%Siという低炭素鋼に準じる化学成分組成鋼を用い、焼鈍後の低温再加熱処理において高含有量のMnにより残留オーステナイトの分率を高めると同時に、高含有量のSiによりフェライト中からオーステナイトへ排出されたCにより残留オーステナイトを安定化させることによる加工硬化指数を高めた鋼板(NewTRIP鋼と称される)が開示されている。しかし、このプロセスは薄鋼板に圧延後に複雑なプロセスである焼鈍処理及び低温再加熱処理を必要としており、省エネルギーの観点からの問題が解決されていない。そして、薄鋼板を製造対象鋼としているので、熱間圧延に加えて冷間圧延工程も必須としている。

一方、製造対象鋼として薄鋼板を除く構造物等に使用される高強度、高強靭鋼についても多数開発されている。例えば、特許文献2には、高強度、高延性で、耐遅れ破壊特性に優れ、しかも靭性飛躍的に向上した高強度鋼に関する技術が開示されている。この技術によれば、引張強さが1660〜1800MPa、伸び全伸び)が18.5〜19.2%であって、室温におけるVノッチシャルピー試験衝撃吸収エネルギーで305〜382J/cm2を有する鋼が例示されている(特許文献2の表6の実施例1及び実施例17参照)。しかし、この技術においても、化学成分組成として高価格のMoを1.0%程度含有させ、製造工程として、所定の温度及び時間の条件下において焼鈍、焼戻し及び時効処理のいずれかを施した後、350℃以上(AC1−20℃)以下の温度で加工をする(温間加工をする)工程が必要である。
以上のように、これまでに開示されている技術では省資源、省エネルギーの問題が解決されておらず、また、比較的低温領域における温間加工を実施するために通常の製造ラインにおいては加工装置に大きな負担を強いることになり、工業的に幅広く利用するには問題がある。

概要

本発明は、従来技術では解決することができない各種の問題点、即ち、建造物橋梁等の構造物、自動車足回り鋼、機械歯車部品に使用される鋼として、高に優れた厚鋼板形鋼異形棒鋼棒鋼及び鋼線等の鋼を製造するに当たって、高価な合金元素を添加しないで、低炭素鋼の化学成分組成を有する鋼を使用して、製造設備に過大な負荷をかけることなく現有の製造ラインにおいて、多資源・高エネルギーでかつ多工程のために安価かつ所望の鋼を製造することができないという問題を解決しようとするものである。本発明は、以上の点に鑑みて、従来技術では解決することができない上記各種の問題点、即ち、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用される鋼として、高硬度の鋼を製造するために、安価なMn及びSiを添加した低C鋼を素材とし、短時間焼鈍処理により、マルテンサイト粒径を制御した超微細組織を有する鋼を提供する。

目的

これに加えて当該鋼を製造するに当たり、省資源かつ省エネルギーであることも重要な課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

化学成分組成が、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなる高硬度鋼であって、ミクロ組織平均結晶粒径2.6μm以下の超微細マルテンサイト組織であり、前記マルテンサイと組織ビッカース硬度が490以上であることを特徴とする高硬度鋼。

請求項2

請求項1の高硬度鋼の製造方法であって、前記化学成分の素材を1200℃で均一に加熱後、600℃〜400℃の温度域に冷却し、その温度域で一回鍛造により塑性相当歪1.1以上の加工を施した後、室温まで空冷することを特徴とする高硬度鋼の製造方法である。

技術分野

0001

本発明は、建造物橋梁等の構造物自動車足回り鋼、機械歯車部品に使用される鋼であって、特に高硬度鋼に関するものである。

背景技術

0002

近年、構造物の大型化や自動車部品の軽量化に伴って、これまで以上に高性能な鋼が求められている。これに加えて当該鋼を製造するに当たり、省資源かつ省エネルギーであることも重要な課題である。そして、当該鋼を製造するに当たっては設備増設ないし新設することなく、しかも従来の製造工程よりも省工程で目的とする鋼を製造できることが望まれている。

0003

従来、高強度鋼板は多数開発されてきている。例えば、特許文献1には、高強度と高延性両立させ、プレス成形性衝撃エネルギー吸収能に優れた自動車用冷延鋼板に関する技術が開示されている。これは高価な合金元素添加量を抑制してフェライト結晶粒微細化によりを上昇させ、しかもプレス成形性に重要となると延性とのバランスに優れた薄鋼板である。そしてその製造工程では熱間圧延の後、冷間圧延を行ない、適切な焼鈍を行なうというものである。しかしながら、この技術によれば、MoやNi等の高価な合金元素が少量ではあるが添加必須元素であり、薄鋼板に圧延後、焼鈍処理を必要としている。

0004

また、非特許文献1には、高価な合金元素を添加せずにMnとSi含有量を高めた0.1%C−5%Mn−2%Siという低炭素鋼に準じる化学成分組成鋼を用い、焼鈍後の低温再加熱処理において高含有量のMnにより残留オーステナイトの分率を高めると同時に、高含有量のSiによりフェライト中からオーステナイトへ排出されたCにより残留オーステナイトを安定化させることによる加工硬化指数を高めた鋼板(NewTRIP鋼と称される)が開示されている。しかし、このプロセスは薄鋼板に圧延後に複雑なプロセスである焼鈍処理及び低温再加熱処理を必要としており、省エネルギーの観点からの問題が解決されていない。そして、薄鋼板を製造対象鋼としているので、熱間圧延に加えて冷間圧延工程も必須としている。

0005

一方、製造対象鋼として薄鋼板を除く構造物等に使用される高強度、高強靭鋼についても多数開発されている。例えば、特許文献2には、高強度、高延性で、耐遅れ破壊特性に優れ、しかも靭性飛躍的に向上した高強度鋼に関する技術が開示されている。この技術によれば、引張強さが1660〜1800MPa、伸び全伸び)が18.5〜19.2%であって、室温におけるVノッチシャルピー試験衝撃吸収エネルギーで305〜382J/cm2を有する鋼が例示されている(特許文献2の表6の実施例1及び実施例17参照)。しかし、この技術においても、化学成分組成として高価格のMoを1.0%程度含有させ、製造工程として、所定の温度及び時間の条件下において焼鈍、焼戻し及び時効処理のいずれかを施した後、350℃以上(AC1−20℃)以下の温度で加工をする(温間加工をする)工程が必要である。
以上のように、これまでに開示されている技術では省資源、省エネルギーの問題が解決されておらず、また、比較的低温領域における温間加工を実施するために通常の製造ラインにおいては加工装置に大きな負担を強いることになり、工業的に幅広く利用するには問題がある。

0006

特開2007−321207号公報
国際公開WO2007/058364

先行技術

0007

H.Takechi,JOM.December 2008,p.22

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、以上の点に鑑みて、従来技術では解決することができない上記各種の問題点、即ち、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用される鋼として、高強度(本願においては、引張強さ(TS))を指標とするものである。この鋼は、例えば、前記非特許文献1に記載されている。)に優れた厚鋼板形鋼異形棒鋼棒鋼及び鋼線等の鋼を製造するに当たって、高価な合金元素を添加しないで、低炭素鋼の化学成分組成を有する鋼を使用して、製造設備に過大な負荷をかけることなく現有の製造ラインにおいて、多資源・高エネルギーでかつ多工程のために安価かつ所望の鋼を製造することができないという問題を解決しようとするものである。

0009

本発明は、以上の点に鑑みて、従来技術では解決することができない上記各種の問題点、即ち、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用される鋼として、高強度に優れた厚鋼板、形鋼、異形棒鋼、棒鋼及び鋼線等の鋼を製造するために、安価なMn及びSiを添加した低C鋼を基盤とした処理により、更には、所定条件の圧延のままで焼鈍処理を施さなくてもマルテンサイトを制御した超微細マルテンサイト組織を有する鋼を提供することにより解決しようとするものである。

0010

製造対象とする鋼の材料特性値に関しては、機械的性質として、ビッカース硬度が490以上であることを特徴とするに優れた高硬度鋼を得ることである。

課題を解決するための手段

0011

本発明者は上記の課題を解決するために、鋼のミクロ組織形態の新規組合せの相及びその構成比率と材料特性値との関係を鋭意研究した、しかもかかる組織を得るための製造条件を研究した結果、本発明を完成するに至った。本発明は以下の特徴を有する。

0012

第1に、化学成分組成が、質量%で、C :0.05〜0.20%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなり、ミクロ組織がマルテンサイト組織であり、機械的性質として、ビッカース硬度が490以上であることを特徴とする硬度に優れた高硬度鋼である。

0013

第2に、上記第1の発明の硬度に優れた高硬度鋼において、前記高硬度鋼のミクロ組織は、圧延方向に平行な断面において、前記マルテンサイトの平均結晶粒径が2.6μm以下である高硬度鋼を提供する。

0014

第3に、第1の発明の化学成分組成の高硬度鋼を、1200℃で均一に加熱後、600℃〜400℃の温度域に冷却し、その温度域で一回鍛造により減面率88%以上の加工後、室温まで空冷する高硬度鋼の製造方法を提供する。

発明の効果

0015

本発明の硬度に優れた高硬度鋼の製造方法によれば、本発明鋼品質特性に近い水準の特性を備えた鋼を得るためには、従来高価な合金元素の添加が必要とされていたが、従来法では発現できなかった超微細マルテンサイトという組織を用いることにより、高価な合金元素を含有しない通常の鋼組成で目的を達成し、しかも得られる鋼の品質特性は、従来の鋼では得られていない優れた機械的性質を備えた鋼が得られる。

図面の簡単な説明

0016

前組織光顕写真HV421)。
25ton熱間加工シミュレータにおける試料アンビルの構成。
実験条件ひずみ速度10/s 50%圧縮加工加工温度900,600,400℃。
試料の加熱加工状態における時間−荷重記録。
試料の加工状態における塑性相当歪み分布状態(FEM計算による) 。
組織のHv硬さ。
試料の平均粒径と硬度の関係。
実施例と比較例の組織比較:EBSD測定による大角粒界(15度以上)の線を表示。

0017

以下、本発明に係る鋼の化学成分組成、顕微鏡組織及び機械的性質の特徴、並びに当該鋼の製造方法の特徴について詳細に説明する。

0018

<鋼の化学成分組成>
本発明に係る高硬度鋼における化学成分組成の範囲は以下の通りである(以下、成分の%はすべて質量%を示す)。

0019

C:0.05〜0.20%とする。Cは引張を確保するために必要であるが、0.05%未満では本発明に係る鋼の引張を十分に満たさないおそれがあるため、0.05%以上に規定する。一方、0.20%を超えると、鋼の延性の低下傾向及び溶接性の低下傾向を示すので、上限を0.20%に規定する。

0020

Si:1.0〜3.5%とする。Siは、材質を大きく硬質化する置換型固溶体強化元素であり、鋼の硬さを上昇させるのに有効な元素であり、1.0%以上が望ましい。しかしながら、Si含有量が過度に高くなると熱間加工時の加熱中にSiスケールが多く発生しスケール除去に余分のコストがかかることや、スケールによる表面疵が発生し易くなる問題が生じる。そこで、上限を3.5%とする。

0021

Mn:4.5〜5.5%とする。
本材の特性である400℃以上の低温域加工でマルテンサイトを生成させるためにはオーステナイトの高度な安定化が必要であり、それを確保するために、高いMn含有量が効果的作用を発揮する。

0022

この作用効果を十分に発揮させるためには、Mn含有量を4.5%以上とすることが望ましい。一方、Mnが高濃度になると、鋼の低温靭性劣化させること、及び過度に高濃度になると凝固時の鋼中Mnの偏析が過大となり材料内部の均一性を害する。また、素材の調製工程における熱間加工工程において表面割れが発生し易くなる。よって、上限を5.5%とする。

0023

Al:0.001〜0.080%とする。Alは溶鋼脱酸のために添加するが、真空溶解炉を使用した場合でも、0.001%未満ではその効果が不十分となる。転炉精錬の場合には、十分な脱酸をするためには、通常、0.010%以上が望ましい。一方、0.080%を超えると、AlNの生成により脆化の問題が起こる可能性がある他に、酸化物系介在物が増加して靭性を損なう可能性があるので、上限を0.080%とする。なお、本願発明においては、鋼の溶製工程としては、通常の工業的量産方法である転炉製鋼法電気炉製鋼法を前提条件とし、真空精錬をしなくてもよい場合の他に、真空溶解炉をしようする少量生産の場合をも想定して下限値を規定している。

0024

P:0.030%以下とする。Pは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、靭性を低下させるので、その含有量の上限を0.030%に制限する。また、P含有量のより一層望ましい上限は、0.015%以下である。下限値は特に限定しないが、コストを考慮し適宜決めればよい。

0025

S:0.020%以下とする。Sは、Pと同様に鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、加工性及び靭性を損うので、その含有量の上限を0.020%に制限する。また、Sのより一層望ましい上限は、0.05%である。下限値は特に限定しないが、コストを考慮し適宜決めればよい。

0026

N:0.010%以下とする。Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、積極的に低減するためには脱ガス精錬等を必要とするので、製造コスト高を招く。また、Nは電気炉製鋼法による場合は特に原料中のN含有量にも依存するので、特に下限は規定しない。一方、N含有量が0.0080%を超えると、窒化物が増加して靭性を損なうので、上限を0.010%とする。

0027

Nb:0.045%以下とする。Nbは、鋼中に炭化物微細分散させて組織を微細化させる効果がある。これはNbが鋼中性分のCと反応してNbCを生成し、この微小析出物高温のγ域におけるγ粒の成長粒界ピニングにより抑えることによるものである。0.045%以上入れると鋼中の炭素消費してしまい、マルテンサイト変態駆動力下げ、鋼の特性を劣化させる危険がある。

0028

<ミクロ組織と機械的特性値
次に、本発明に係る高鋼のミクロ組織について説明する。
本発明に係る高鋼のミクロ組織は、主相がマルテンサイトであり、その粒径が2.6μm以下と通常のマルテンサイト(>100μm)と比べて格段に小さいのが特徴である。特に、600℃加工のものは2.55μm、400℃加工のものは1.60μmであり、この微細構造により、マルテンサイトそのものの状態でかなり高いが更に高くなるのを特徴とする。ビッカース硬度で比較すると4.30μm径の微細組織ではHV=448であるのに対し、2.55μmではHV=495、1.60μmではHV=504となり、高価な合金元素を添加しなければ達成できない高硬度化通常組成のまま達成できることが特徴である。
かかるミクロ組織を有することは、所要の機械的特性値を満たすための必要条件の一つであり、そのためには上述した鋼の化学成分組成を満たすことを前提条件とするものである。

0029

本発明に係る高硬度鋼は、その機械的特性値として、下記(1)式:



を満たすものである。

0030

上記化学成分組成を有する鋼であって、かかる機械的特性値を備えた鋼は、これまで見当たらない。

0031

供試材の製造方法>
次に、本発明の鋼を得るための供試材の製造方法を説明する。
(1)素材(0.1%C−2%Si−5%Mn鋼)の熱間塑性加工条件について
素材の熱間における塑性加工方式としては、工業的に行われている厚鋼板製造ラインにおける平ロール圧延極厚鋼板製造ラインにおける鍛造、棒鋼又は鋼線材製造ラインにおける溝ロール圧延、及び条鋼又は形鋼製造ラインにおける形ロール圧延の内のいずれであってもよい。これらいずれかの加工方式により、素材に対して所望の塑性相当ひずみを与える。

0032

上記の加工方式により、素材に導入される圧縮ひずみせん断ひずみ入り方は異なる。そこで、全応力成分や全ひずみ成分の量や分布に関して理論的塑性ひずみを算出する方法として、有限要素法(finite element methode:FEM)がある。塑性ひずみの計算については、参考文献(海佳三郎、他「有限要素法入門」(共立出版(株):1990年3月15日)に詳述されている。しかしここでは、工業的に簡便に用いることができる塑性相当ひずみを用いてもよい。有限要素法計算で得られる塑性ひずみを用いれば一層望ましいが、ここでは工業的に簡便な、下記式(2)で定義される塑性相当ひずみ(e)を塑性ひずみの指標とする。



ただし、Rは減面率(%)であり、素材の長手方向に垂直な面の断面積をS0とし、熱間加工後の方向に垂直な面の断面積をSとすると、下記式(3)で表される。

0033

後述する実施例1の試験において、前記化学成分組成範囲内にある0.1%C−2%Si−5%Mnの15mm角鋼塊(素材)を1200℃で3分加熱後、5K/sで冷却し、600℃又は400℃の温度で5s保持後、7.5mm厚まで圧縮したときに得られた中心部塑性相当歪み1.1の場所におけるミクロ組織は、主相がほぼ100体積%マルテンサイトから成る平均粒径が2.55μm(600℃加工)および1.60μm(400℃加工)であった。

0034

以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって制限されず、前記及び後記の趣旨に適合し得る範囲で適切な改変を行って実施することも可能であり、これらはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれる。

0035

<実施例1、2>
実施例1及び2における本願発明に係る高鋼の調製方法を説明する概略調製工程を図1に示す。同図に基づき以下、詳細に説明する。

0036

(1)実施例1、2の供試材調整:素材を熱間鍛造
電解鉄電解Mn及び金属Siを溶解用主原料として使用し、高周波真空誘導溶解炉を用いて溶製し、縦95mm×横95mm×高さ450mmの鋼塊に鋳造して、これを素材とした。素材の化学成分組成を表1に示す。

0037

0038

上記95mm角の素材(鋼塊)を加熱昇温し、1200℃で1時間加熱保持した後、上記の縦95mm×横95mmの角形状断面の素材に対して、途中で再加熱することなく縦と横とを交互に1回ずつセットのプレス鍛造を6セット行い、縦38mm×横38mmの角形状断面(38mm角という。以降、これに準じた表記をすることがある)まで鍛造し、そして最後に材料全体を直線状に矯正して、38mm角の棒材とした。この熱間鍛造において、95mm角から38mm角に至る減面率(R)は、R=84.0%であり、塑性相当ひずみ(e)は、e=1.83であり、鍛造終了温度は680℃であった。その後直ちに空冷し、室温まで冷却して、棒材とした。
ここで、減面率(R)及び塑性相当ひずみ(e)は、下記式(6)及び(7)式で算出した。S0は素材の圧延に垂直方向(C方向)の断面積であり、Sは熱間鍛造後の圧延に垂直方向(C方向)の断面積である。






この熱間鍛造により得られた38mm角の棒材のミクロ組織は、主相が95体積%以上を占めるラスマルテンサイトであった。この組織のSEM写真を図1に示す。この組織状態において、硬度HV421であった。この棒鋼をベース材として 15mm角の棒を切り出し、発明材製造のプロセスの供試材とした。

0039

(2) 実施例1、2のプロセス:15mm角棒材の25tシミュレータによる組織制御
熱間鍛造で得られた38mm角の棒材から切り出した15mm角の棒材を試料として25tシミュレータにより組織制御を行った。用いた25tシミュレータは試料を急速加熱、急速大歪み加工急速冷却ができる装置であり、極限条件における組織制御を可能とする装置である。実際に行った組織制御の概要図2に示す。ここでは25tシミュレータ実験時における試料とアンビルの形状、サイズ、位置関係を示している。試料は15mm角柱であり、その上下に幅25mm、深さ30mm、試料接触部15mm幅のアンビルが挟む位置関係となっている。

0040

組織制御における行程を表わしたものを図3に示す。条件は3種類あり、これら3種類中において基本的な工程は同じで唯一加工温度が400、600、900℃と異なるのみである。ここで、400℃加工のものを実施例1、600℃加工のものを実施例2、900℃加工のものを比較例1、無加工のものを比較例2とする。まず、試料を5K/sで加熱し、1200℃に到達した後、1200℃に3分保定し、5K/sで400、600、900℃のいずれかの温度に冷却し、その温度で5s保定後、歪速度10/sで50%圧縮し、空冷(AC)する。この圧縮加工中の反力を時間の関数で記録したグラフを400℃、600℃、900℃加工の各々の場合で比較プロットしたものを図4に示す。これより、加工温度が低いほど反力の値が高いことが分かる。加工反力が高いということは転位消滅が少ないことに匹敵すると考えるとこれらの中でより低温であるほど結晶粒径が微細になることが期待される。因みに、400℃では141kN、600℃では100N、900℃では56Nであった。

0041

50%加工における試料断面中の塑性相当歪分布をFIM(有限要素法)計算した結果(鉄と鋼 Vol.86 (2000) No.12)を図5に示す。これから50%圧縮においては試料中心部の塑性相当歪は1.1になることが分かる。これより、本発明材製造に必要な条件である付加すべき加工歪量として塑性相当歪1.1という値が導かれる。

0042

実施例1,2のプロセス後の試料のビッカース硬度分布を図6に示す。これより、中心部のHVは400℃加工(実施例1)で508、600℃加工(実施例2)で495、900℃加工(比較例1)で488と低温で加工したものが大きい値を示していることが分かる。これは1200℃でγ化したままで加工を経ない試料(比較例2)がHV=423であることを考慮すれば加工による効果が明らかである。

0043

試料の平均粒径と硬度の関係を図7に示す。ここで、粒径の−1/2乗と硬度とが線形関係にあり、粒径を小さくするほど、硬度が上昇することが分かる。粒径を決定したEBSD測定からの大角粒(方位差角>15度)を図8に示す。これより、実施例1、2(400℃及び600℃加工)の粒径は比較例1(600℃加工)の粒径より圧倒的に細かいことが見られる。
このように本発明において従来得られなかった超微細粒のマルテンサイト組織が得られた理由を次に述べる。本発明で用いた組成は0.1%C−2%Si−5%Mnが基本であるが、この組成はオーステナイト(γ)の安定性を非常に高めることが我々の実験から明らかになった。すなわち、1200℃で完全に試料全体をγ化し、冷却によって400℃に温度を下げた時点においても組織は100%γ状態である。ここで50%の圧下をかけるわけであるが、通常の鋼であればこの加工によりγ→α変態が進行してしまうところを、この鋼は非常にγ安定度が高いために、相変態が起こらない。この後、空冷により、340℃付近に冷却され、初めてMS点(マルテンサイト変態開始点)に達し、マルテンサイト化する。γ粒の微細化は加工温度がより低温であるほど、より微細に再結晶化することを想定すると、本発明鋼は超微細γ組織から340℃付近でマルテンサイト化するために、粗大化が抑制され、超微細組織を保ったままマルテンサイト組織が得られたと考えられる。

実施例

0044

実験結果のまとめを表2に示す。このように本発明鋼は比較鋼に比べ、小さい粒径を有し、高い硬度を有していることが明らかに認められる。

0045

本発明は、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用される鋼であって、特に高に優れた厚鋼板や棒鋼・鋼線等の非調質鋼に関するものである。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ