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図面 (15)

課題

真核細胞での細胞表層提示又は細胞外分泌に適した糖加水分解酵を得ることができる、加水分解酵素の細胞表層提示又は細胞外分泌の増強剤を提供する。

解決手段

特定のアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドを、糖加水分解酵素に融合させて用いる、糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤。

概要

背景

現在、バイオマス原料資源化する様々な試みがなされている。例えば、CBP(Consolidated Bioprocessing:統合バイオプロセス糖化発酵同時進行)がある。CBPは、バイオマス原料を糖化するとともに、その糖化物酵母等で発酵させて有用物質生産することを目的としている。

この場合、酵母で糖の分解活性の高い糖加水分解酵素を大量に細胞外分泌したり細胞表層提示させたりすることが必要である。しかしながら、酵母において外来タンパク質を細胞外に分泌させたり細胞表層に提示させたりするには、困難性があるとされている。こうした背景から、例えば、Trichoderma harzianum(トリコデルマハージャナム)のエンドグルカナーゼIIのセルロース結合ドメイン(CBD)とリンカーとを融合させると当該リパーゼの分泌が促進されることが記載されている(非特許文献1)。

概要

真核細胞での細胞表層提示又は細胞外分泌に適した糖加水分解酵を得ることができる、加水分解酵素の細胞表層提示又は細胞外分泌の増強剤を提供する。特定のアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドを、糖加水分解酵素に融合させて用いる、糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤。なし

目的

そこで、本明細書の開示は、真核細胞での細胞外発現に適した糖加水分解酵素を得ることができる、糖加水分解酵素の細胞外発現の増強剤及びその利用を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

糖加水分解酵素真核細胞における細胞外発現増強剤であって、前記糖加水分解酵素に融合されるペプチドであり、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドである、増強剤。

請求項2

前記第1のアミノ酸配列を2以上有する、請求項1に記載の増強剤。

請求項3

前記第1のアミノ酸配列は、Trichoderma (トリコデルマ)属のエンドグルカナーゼにおけるセルロース結合ドメイン触媒ドメインとのリンカー配列である、請求項1又は2に記載の増強剤。

請求項4

前記糖加水分解酵素は、セルラーゼである、請求項1〜3のいずれかに記載の増強剤。

請求項5

前記セルラーゼは、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼのいずれかである、請求項1〜4のいずれかに記載の増強剤。

請求項6

前記真核細胞は、酵母である、請求項1〜5のいずれかに記載の増強剤。

請求項7

糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤であって、前記糖加水分解酵素に融合されるペプチドであり、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドをコードするポリヌクレオチドである、増強剤。

請求項8

配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドと、糖加水分解酵素と、の融合タンパク質

請求項9

前記第1のアミノ酸配列を2以上有する、請求項8に記載の融合タンパク質。

請求項10

前記第1のアミノ酸配列は、Trichoderma (トリコデルマ)属のエンドグルカナーゼにおけるセルロース結合ドメインと触媒ドメインとのリンカー配列である、請求項8又は9に記載の融合タンパク質。

請求項11

前記糖加水分解酵素は、セルラーゼである、請求項8〜10のいずれかに記載の融合タンパク質。

請求項12

前記セルラーゼは、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼのいずれかである、請求項8〜11のいずれかに記載の融合タンパク質。

請求項13

前記糖加水分解酵素は、基質結合ドメインと触媒ドメインとを備えており、前記第1のアミノ酸配列を前記基質結合ドメインと前記触媒ドメインとの間に備える、請求項8〜12のいずれかに記載の融合タンパク質。

請求項14

請求項8〜13のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。

請求項15

請求項8〜13のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能である真核細胞。

請求項16

請求項15に記載の真核細胞を培養して、前記融合タンパク質を細胞外発現させる、糖加水分解酵素の生産方法

請求項17

糖加水分解酵素に対して、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上付与することで、前記糖加水分解酵素の細胞外発現性を改変する方法。

請求項18

糖加水分解酵素に対して、同種又は異種の糖加水分解酵素が備えている基質結合ドメインと触媒ドメインとのリンカー配列から選択される1又は2以上のリンカー配列を1又は2以上有する被験アミノ酸配列を融合した被験融合タンパク質を細胞外発現可能な真核細胞を準備する工程と、当該準備した真核細胞による前記被験融合タンパク質の細胞外発現量を測定する工程と、を備える、糖加水分解酵素のスクリーニング方法

請求項19

セルロース分解産物の生産方法であって、セルラーゼと、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドとの融合タンパク質をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能な真核細胞の生産するセルラーゼとセルロースとを接触させる工程、を備える、生産方法。

請求項20

有用物質の生産方法であって、セルラーゼと配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドとの融合タンパク質をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能であって、前記有用物質の生産能を有する真核細胞を、セルロースの存在下に培養する工程、を備える、生産方法。

請求項21

前記真核細胞は酵母である、請求項に20記載の生産方法。

技術分野

0001

本明細書の開示は、糖加水分解酵素細胞外発現増強剤及びその利用に関する。

背景技術

0002

現在、バイオマス原料資源化する様々な試みがなされている。例えば、CBP(Consolidated Bioprocessing:統合バイオプロセス糖化発酵同時進行)がある。CBPは、バイオマス原料を糖化するとともに、その糖化物酵母等で発酵させて有用物質生産することを目的としている。

0003

この場合、酵母で糖の分解活性の高い糖加水分解酵素を大量に細胞外分泌したり細胞表層提示させたりすることが必要である。しかしながら、酵母において外来タンパク質を細胞外に分泌させたり細胞表層に提示させたりするには、困難性があるとされている。こうした背景から、例えば、Trichoderma harzianum(トリコデルマハージャナム)のエンドグルカナーゼIIのセルロース結合ドメイン(CBD)とリンカーとを融合させると当該リパーゼの分泌が促進されることが記載されている(非特許文献1)。

先行技術

0004

J. K. Junら、Appl. Microbiol. Biotechnol(2004)64, 833-839

発明が解決しようとする課題

0005

非特許文献1では、T. harzianumのエンドグルカナーゼのCBDとリンカーとの双方に融合タンパク質の分泌促進の可能性があると言及し、これらの組み合わせがS. cerevisiaeにおける分泌促進に有用であるとしている。

0006

しかしながら、非特許文献1にはこれ以上の記載はなく、さらなる分泌性の向上については全く記載も示唆もされていない。

0007

そこで、本明細書の開示は、真核細胞での細胞外発現に適した糖加水分解酵素を得ることができる、糖加水分解酵素の細胞外発現の増強剤及びその利用を提供することを一つの目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、糖加水分解酵素について種々の修飾を試みていたところ、ある種のアミノ酸配列を付加することで、糖加水分解酵素の真核細胞の細胞外発現量が増強されるという知見を得た。また、こうしたアミノ酸配列を多重付加することでさらにその作用が高まるという知見を得た。本明細書の開示は、これらの知見に基づいて提供される。

0009

本明細書の開示によれば、糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤が提供される。この増強剤は、前記糖加水分解酵素に融合されるペプチドであり、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドである。

0010

増強剤は、前記第1のアミノ酸配列を2以上有していてもよいし、前記第1のアミノ酸配列は、Trichoderma (トリコデルマ)属のエンドグルカナーゼにおけるセルロース結合ドメインと触媒ドメインとのリンカー配列であってもよい。さらに、前記糖加水分解酵素は、セルラーゼであってもよく、セルラーゼは、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼのいずれかであってもよい。さらに、前記真核細胞は、酵母であってもよい。

0011

本明細書の開示によれば、糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤が提供される。この増強剤は、前記糖加水分解酵素に融合されるペプチドであり、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドをコードするポリヌクレオチドである。

0012

本明細書の開示によれば、融合タンパク質も提供される。この融合タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドと、糖加水分解酵素と、を備えている。

0013

融合タンパク質において、前記糖加水分解酵素は、基質結合ドメインと触媒ドメインとを備えており、1又は2以上の前記第1のアミノ酸配列を前記基質結合ドメインと前記触媒ドメインとの間に備えることができる。

0014

本明細書の開示によれば、ポリヌクレオチドも提供される。このポリヌクレオチドは、上記融合タンパク質をコードしている。

0015

本明細書の開示によれば、前記融合タンパク質をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能である真核細胞が提供される。

0016

本明細書の開示によれば、前記真核細胞を培養して、前記融合タンパク質を細胞外発現させる、糖加水分解酵素の生産方法が提供される。

0017

本明細書の開示によれば、糖加水分解酵素に対して、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上付与することで、前記糖加水分解酵素の細胞外発現性を改変する方法が提供される。

0018

本明細書の開示によれば、糖加水分解酵素に対して、同種又は異種の糖加水分解酵素が備えている基質結合ドメインと触媒ドメインとのリンカー配列から選択される1又は2以上のリンカー配列を1又は2以上有する被験アミノ酸配列を融合した被験融合タンパク質を細胞外発現可能な真核細胞を準備する工程と、当該準備した真核細胞による前記被験融合タンパク質の細胞外発現量を測定する工程と、を備える、糖加水分解酵素のスクリーニング方法が提供される。

0019

本明細書の開示によれば、セルロース分解産物の生産方法であって、セルラーゼと、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドとの融合タンパク質をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能な真核細胞の生産するセルラーゼとセルロースとを接触させる工程、を備える、生産方法が提供される。

0020

本明細書の開示によれば、有用物質の生産方法であって、セルラーゼと配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドとの融合タンパク質をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能であって、前記有用物質の生産能を有する真核細胞を、セルロースの存在下に培養する工程、を備える、生産方法が提供される。

図面の簡単な説明

0021

リンカーの多重連結法概要を示す図である。
酵母における分泌発現ベクターを示す図である。
ThCBD1-PcCD分泌発現ベクターを示す図である。
リンカーを1又は複数個連結したThCBD1-PcCD断片を示す図である。
リンカーを1又は複数個連結したThCBD1-PcCD断片で形質転換した酵母培養上清のPSC分解活性評価結果を示す図である。
リンカーを1又は複数個連結したThCBD1-PcCD断片で形質転換した酵母での分泌発現量の評価結果を示す図である。
ThCBD1-TrEG2分泌発現ベクターを示す図である。
リンカーを1又は複数個連結したThCBD1-TrEG2断片を示す図である。
リンカーを1又は複数個連結したThCBD1-TrEG2断片で形質転換した酵母培養上清のPSC分解活性評価結果を示す図である。
リンカーを1又は複数個連結したThCBD1-TrEG2断片で形質転換した酵母での分泌発現量の評価結果を示す図である。
野生型PcCBH2及び野生型TrEG2のリンカー多重化による分泌発現量の変化とPSC分解活性の評価結果を示す図である。
野生型ThEG2及び野生型TrEG2のリンカーのアミノ酸配列の比較結果を示す図である。
野生型ThEG2のリンカーのBLAST解析による相同性検索結果を示す図である。
ThCBD1-PcCD断片とTrichoderma virideのエンドグルカナーゼIIリンカーを挿入したThCBD1-TvLinker-PcCD断片を示す図である。
ThCBD1-PcCD断片とTrichoderma virideのエンドグルカナーゼIIリンカーを挿入したThCBD1-TvLinker-PcCD断片でそれぞれ形質転換した酵母でのPSC分解活性の評価結果を示す図である。

0022

本明細書の開示は、糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤及びその利用に関する。本明細書に開示されるこの増強剤は、糖加水分解酵素に融合されて用いられるペプチドであり、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドである。

0023

本増強剤を用いることで、糖加水分解酵素を真核細胞で生産させたときにその細胞外発現、すなわち、例えば、細胞表層提示又は細胞外分泌を増強することができる。このため、真核細胞を用いて糖加水分解酵素を細胞外で機能させたい場合において、あるいは、真核細胞を用いて、細胞外で糖加水分解酵素を回収したい場合において、有用である。さらに、こうした真核細胞の糖加水分解酵素を用いて細胞外において糖を分解し、その分解産物を真核細胞に代謝させて有用物質を生産する発酵に有用である。

0024

従来、外来タンパク質の細胞外発現の増強には、宿主細胞の改変が行われることや、分泌発現システムや細胞表層提示システムの改変があったが、本明細書の開示によれば、糖加水分解酵素サイドで細胞外発現を増強するような改変を実現できた。

0025

以下、本明細書に開示される増強剤及びその利用、すなわち、増強剤を用いた、融合タンパク質、真核細胞、糖加水分解酵素の生産方法、セルロース分解産物の生産方法、有用物質の生産方法等について詳細に説明する。

0026

(増強剤)
本明細書に開示される増強剤は、糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現の増強剤である。本明細書において細胞外発現とは、特に限定されないが、真核細胞の細胞表層に提示する形態や細胞外に分泌する形態が挙げられる。

0027

(糖加水分解酵素)
本明細書において糖加水分解酵素は、多糖オリゴ糖三糖二糖などを加水分解する酵素をいう。分解対象である糖としては、特に限定されない。典型的には、セルロース、キシランアラビノキシランキシログルカンマンナングルコマンナングルクノキシランなどのヘミセルロースキチンキトサンアガロースペクチンアミロースアミロペクチンなどの多糖が挙げられる。多糖としては、バイオマス資源を有効利用の観点からは、セルロース、ヘミセルロース、アガロース、ペクチン、キチンが挙げられる。糖加水分解酵素としては、こうした糖を加水分解する酵素が好ましい。典型的には、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼなどのセルラーゼ(セルロース分解用)、キシラナーゼガラクタナーゼなどのヘミセルラーゼ(ヘミセルロース分解用)、α−アミラーゼβ−アミラーゼグルコアミラーゼデンプン分解用)などが挙げられる。

0028

セロビオヒドロラーゼとしては、例えば、Phanerochaete chrysosporium由来のセロビオヒドロラーゼI(GHF7)、セロビオヒドロラーゼII(GHF6)が挙げられる。また、Phanerochaete chrysosporium以外の他起源のセロビオヒドロラーゼも挙げられる。

0029

エンドグルカナーゼとしては、たとえば、GHF5に属するエンドグルカナーゼが挙げられる。GHF5に分類されるエンドグルカナーゼのなかでも、好ましくは、Trichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼ、Aspergillus oryzae由来のエンドグルカナーゼ及びAspergillus niger由来のエンドグルカナーゼを好ましく用いることができる。より好ましくはTrichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼAspergillus niger由来のエンドグルカナーゼである。GHF5に分類されるエンドグルカナーゼは、こうしたエンドグルカナーゼから選択される1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。

0030

エンドグルカナーゼとしては、GHF12に属するエンドグルカナーゼも挙げられる。なかでも、Trichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼ、Aspergillus niger由来のエンドグルカナーゼ及びAspergillus oryzae由来のエンドグルカナーゼが挙げられる。こうしたエンドグルカナーゼから選択される1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。エンドグルカナーゼとしては、GHF7及びGHF45に属するエンドグルカナーゼであってもよい。なかでも、Trichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼを好ましく用いることができる。

0031

糖加水分解酵素は、天然の糖加水分解酵素のほか、適宜改変を加えたものであってもよい。糖加水分解酵素は、当業者であれば、目的に応じて酵素(タンパク質)のアミノ酸配列や当該アミノ酸配列をコードする塩基配列入手することができる他、変異体も取得できる。

0032

(真核細胞)
本明細書において真核細胞とは、酵母、麹菌等の真核微生物が挙げられるが、特に限定されない。酵母としては、特に限定されないで、サッカロマイセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属の酵母、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属の酵母、キャンディダ・シェハーテ(Candida shehatae)等のキャンディダ属の酵母、ピヒアスティピティス(Pichia stipitis)等のピヒア属の酵母、ハンセヌラ(Hansenula)属の酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属の酵母、ブレタノマイセス(Brettanomyces)属の酵母、パチソレン(Pachysolen)属の酵母、ヤマダジマ(Yamadazyma)属の酵母、クルイベロマイセス・マーキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)等のクルイベロマイセス属の酵母が挙げられる。なかでも、工業的利用性等の観点からサッカロマイセス属酵母が好ましい。なかでも、サッカロマイセス・セレビジエが好ましい。

0033

また、麹菌としては、アスペルギルスオリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・アキュリータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus soya)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)等が挙げられる。

0034

また、他の真核微生物としては、セルラーゼ生産微生物である、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)などのトリコデルマ属菌や、白色腐朽菌などを含む木材腐朽菌が挙げられる。セルラーゼ生産微生物を宿主とすることで、これらの微生物が生産うるセルラーゼ、ヘミセルラーゼ等と同時に本タンパク質を生産できる。

0035

本増強剤は、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドである

0036

第1のアミノ酸配列の構成要素である配列番号1で表されるアミノ酸配列は、トリコデルマ・ハージャナム(Trichoderma harsianum)のエンドグルカナーゼIIのセルロース結合ドメイン(CBD)と触媒ドメイン(CD)との間に配置されるリンカー配列である。

0037

第1のアミノ酸配列は、また、配列番号1で表されるアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってもよい。以下の表に示すように、配列番号1で表されるアミノ酸配列を後述するBLAST検索を用いて公知の配列を検索すると、55%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。本発明者らは、配列番号1で表されるアミノ酸配列と、64%の同一性を有するTrichoderma reeseiのエンドグルカナーゼIIにおけるCBDとCDとの間のリンカー配列(配列番号4)及び同55%の同一性を有するTrichoderma virideのエンドグルカナーゼIIにおけるCBDとCDとの間のリンカー配列(配列番号7)についても、その増強効果を確認している。

0038

0039

本明細書において、同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性 ”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、AltschulSF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, MaddenTL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic AcidsRes. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。

0040

配列番号1で表されるアミノ酸配列に対して55%同一性の範囲内において、1又は数個アミノ酸欠失、置換もしくは付加された態様が挙げられる。置換や付加されるアミノ酸としては、(セリントレオニンン)をはじめする、(グリシンアラニン)(バリンイソロイシンロイシン)(セリン、トレオニン)(リジンアルギニン)(フェニルアラニンチロシン)等の保存的置換が挙げられるほか、セリン(S)及びトレオニン(T)による置換あるいは付加が好ましい。

0041

本明細書の開示を限定するものではないが、第1のアミノ酸配列は、以下の示す特徴の一つ以上を有しているといえる。
(1)セリン(S)とスレオニン(T)の比率が全アミノ酸配列において55%以上である。
(2)アスパラギン酸(N)を含んでいない。
(3)Trichoderma属のエンドグルカナーゼに由来し、CBDとCDとのリンカー配列である。

0042

推論であって本明細書の開示を拘束するものではないが、こうした特徴から、第1のアミノ酸配列は、アスパラギン酸(N)を介したN型糖鎖修飾が回避又は抑制されるか、セリン(S)又はスレオニン(T)を介したO型糖鎖修飾のみが可能となっているものと考えられる。

0043

本増強剤は、こうした第1のアミノ酸配列を1又は2以上を備えている。好ましくは、2以上を備えている。第1のアミノ酸配列を2以上繰り返して有する(タンデムリピート)ことで、一つ有する場合に比較して糖加水分解酵素の細胞外発現量を増大できる。第1のアミノ酸配列は、細胞外発現量を増大できる程度の複数個備えられている。第1のアミノ酸配列の好適な量は、対象とする糖加水分解酵素に第1のアミノ酸配列に1又は2以上を付与して、細胞外発現量を評価することで取得することができる。第1のアミノ酸配列は、例えば、3個以上6個以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3個以上5個以下である。

0044

第1のアミノ酸配列を2以上有する場合、2以上のアミノ酸配列は同一であっても異なっていてもよい。また、第1のアミノ酸配列を2以上有する場合、隣り合う第1のアミノ酸配列間には、アミド結合によるアミノ酸残基を備えていなくてもよいし、1又は2以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列を備えていてもよい。例えば、遺伝子工学的に第1のアミノ酸配列を複数個連結させたペプチドを取得するには、第1のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAに対してアミノ酸に翻訳可能な塩基配列であって制限酵素配列を含む塩基配列を連結部位をとして備えさせることが行われることもある。なお、第1のアミノ酸配列を複数個連結する場合において、当該連結部位には、アミノ酸配列を含まないことが好ましい。

0045

第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドは、糖加水分解酵素に融合(連結)されて用いられるペプチドである。こうしたペプチドを糖加水分解酵素に対して連結することで、この糖加水分解酵素を公知の細胞外発現システム(後述)を用いて細胞外発現させるとき、その細胞外発現量を向上させることができる。

0046

糖加水分解酵素(触媒ドメインのみで機能する場合には当該ドメインのみであってもよい。)に対するかかるペプチドの融合部位は、特に限定しないで、そのN末端であってもよいし、C末端であってもよい。糖加水分解酵素の活性等を考慮すると、N末端側であることが好ましい。また、糖加水分解酵素が、セルラーゼ等のように、CBD等の基質結合ドメインと触媒ドメイン(CD)を備えるものであっても、同様であるが、好ましくは、基質結合ドメインと触媒ドメインとの間に第1のアミノ酸配列を1又は2以上備えることが好ましい。典型的には、触媒ドメインのN末端側であってかつ基質結合ドメインのC末端側である。そのN末端であることが好ましい。

0047

こうした融合タンパク質は、糖加水分解酵素のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列をコードする塩基配列並びに第1のアミノ酸配列を知得できれば、当業者であれば、遺伝子工学ないしはタンパク質工学に基づき取得することができる。

0048

本明細書に開示される増強剤は、また、第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドをコードするポリヌクレオチドであってもよい。かかる増強剤は、真核細胞の形質転換に有用である。ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよい。形質転換のためのコンストラクトとしては、DNAの形態として用いるのが好ましい。ペプチドをコードするコドン用法は、使用する真核細胞の種類等に応じて適宜決定される。

0049

ポリヌクレオチド形態の本増強剤は、DNA断片などのポリヌクレオチド断片の形態のほか、各種ベクターに挿入された形態であってもよく、その形態は特に限定されない。ポリヌクレオチド形態の本増強剤は、主として適当な宿主細胞の形質転換を意図した発現ベクターとしての形態を採ることができる。形質転換の手法や宿主細胞における当該ポリヌクレオチドの保持形態染色体に導入する形態や染色体外に保持する形態等)に応じて、上記コード領域以外の構成要素が適宜決定される。典型的には、真核細胞などの形質転換細胞において作動可能プロモーターの制御下に、増強剤をコードする塩基配列が単独であるいは糖加水分解酵素をコードする塩基配列とともに連結され、さらにターミネーター等が連結されていることが好ましい。

0050

(融合タンパク質)
本明細書に開示される融合タンパク質は、第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドと糖加水分解酵素との融合タンパク質である。本融合タンパク質は、糖加水分解酵素としての活性を有するとともに、公知の細胞外発現システムにおける細胞外分泌性及び細胞表層提示性等が向上されている。

0051

本融合タンパク質における、糖加水分解酵素、第1のアミノ酸配列は、本増強剤の実施形態について説明した内容をそのまま適用できる。また、第1のアミノ酸配列と糖加水分解酵素との融合形態も、増強剤の実施形態において既に説明したとおりである。

0052

本融合タンパク質は、当業者であれば、遺伝子工学的又は化学的合成方法でも取得できる。好ましくは、後述するように、真核細胞における細胞外発現性を利用して、本融合タンパク質をコードするDNAを発現可能に保持するように真核細胞を形質転換して、真核細胞に本融合タンパク質を生産させる。

0053

好ましい本融合タンパク質は、糖加水分解酵素が、セロビオヒドロラーゼ又はエンドグルカナーゼであって、基質結合ドメインとしてのセルロース結合ドメインと触媒ドメインとを有するセルラーゼである。そして、第1のアミノ酸配列の1又は2以上が、基質結合ドメインと触媒ドメインとの間に配置されている。

0054

(融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)
本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、本融合タンパク質をコードしている。ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよいが、形質転換を考慮するとDNAであることが好ましい。融合タンパク質をコードするコドン用法は、使用する真核細胞の種類等に応じて適宜決定される。ポリヌクレオチド形態の本増強剤は、DNA断片などのポリヌクレオチド断片の形態のほか、各種ベクターに挿入された形態であってもよく、その形態は特に限定されない。ベクターに挿入された形態においては、真核細胞などの形質転換細胞において作動可能なプロモーターの制御下に連結されていることが好ましく、さらにターミネーター等が連結されていることが好ましい。

0055

(本融合タンパク質をコードするDNAを保持する真核細胞)
本明細書に開示される真核細胞は、本融合タンパク質をコードするDNAを保持し、細胞外発現可能である真核細胞である。本真核細胞によれば、細胞外発現性に優れる糖加水分解酵素を生産し、細胞外発現することができる。本真核細胞は、本融合タンパク質をコードするDNAを含むベクター等で宿主となる真核細胞を周知の方法で形質転換して取得できる。本融合タンパク質に実際に細胞外分泌性や細胞表層提示性を付与するには、公知の分泌シグナル表層提示用のシステムを用いることができる。例えば、分泌シグナルや凝集性タンパク質又はその一部のアミノ酸配列が付与される。分泌シグナルとしては、例えば、Rhizopus oryzaeやC. albicansのグルコアミラーゼ遺伝子の分泌シグナル、酵母インベルターゼリーダーα因子リーダーなどが挙げられる。また、凝集性タンパク質としては、α−アグルチニンをコードするSAG1遺伝子の5’領域の320アミノ酸残基からなるペプチドが挙げられる。また、所望のタンパク質を細胞表層に提示するためのポリペプチドや手法は、WO01/79483号公報や、特開2003−235579号公報、WO2002/042483号パンフレット、WO2003/016525号パンフレット、特開2006−136223号公報、田らの文献(藤田ら,2004. Appl Environ Microbiol 70:1207-1212および藤田ら, 2002. Appl Environ Microbiol 68:5136-5141.)、井ら, 1998. Appl Environ Microbiol 64:4857-4861.に開示されている。

0056

本真核細胞は、2以上の糖加水分解酵素を本融合タンパク質の形態で細胞外発現可能であることが好ましい。多糖などの分解においては、多くの場合、2以上の糖加水分解酵素が協動して作用して効率的な分解が可能となるからである。多糖がセルロースの場合には、本真核細胞は、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ及びβ−グルコシダーゼから選択される2種以上を融合タンパク質として細胞外発現可能であることが好ましい。多糖がデンプンの場合には、本真核細胞は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ及びグルコアミラーゼから選択される2種以上を融合タンパク質として細胞外発現可能であることが好ましい。

0057

(糖加水分解酵素の生産方法)
本明細書に開示される糖加水分解酵素の生産方法は、本真核細胞を培養して、糖加水分解酵素を細胞表層に提示又は細胞外に分泌させる工程を備えることができる。本生産方法によれば、糖加水分解酵素を効率的に生産することができ、酵素製剤の使用量を低減又は回避することができる。こうした生産工程は、後述するセルロースの分解方法における分解工程や有用物質の生産方法における分解工程としても実施される。

0058

(糖加水分解酵素の改変方法
本明細書に開示される糖加水分解酵素の生産方法は、糖加水分解酵素に対して、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上付与することで、前記糖加水分解酵素の真核細胞における細胞外発現性を改変する方法である。

0059

この方法は、公知の糖加水分解酵素の細胞外発現性を増強するための方法であり、細胞外発現性が増強されるように改変された糖加水分解酵素の生産方法(取得方法)でもある。従来、糖加水分解酵素の細胞外発現性を向上等するには、宿主側の遺伝子を改変したり、あるいは、分泌シグナル等の改変等したりすることが考えられるが、本方法によれば、酵素自体を改変することで、従来の細胞外発現システムを使用しつつ細胞外発現性を向上させることができる。

0060

なお、改変にあたっては、例えば以下のように行うことができる。所望の糖加水分解酵素に対して、1又は2以上の第1のアミノ酸配列を、糖加水分解酵素のいずれかの位置に融合させたいくつかの融合タンパク質をそれぞれ発現可能な真核細胞を作製し、当該融合タンパク質の分泌発現量や培養上清の糖加水分解活性等を評価し、当該評価に基づいて、所望の糖加水分解酵素に対する第1のアミノ酸配列の連結個数連結位置を決定することができる。

0061

(糖加水分解酵素のスクリーニング方法)
本明細書に開示される糖加水分解酵素のスクリーニング方法は、糖加水分解酵素に対して、同種又は異種の糖加水分解酵素が備えている基質結合ドメインと触媒ドメインとのリンカー配列から選択される1又は2以上のリンカー配列を1又は2以上有する被験アミノ酸配列を融合した被験融合タンパク質を発現可能な真核細胞を準備する工程と、当該準備した真核細胞による前記被験融合タンパク質の細胞外発現量を測定する工程と、を備えることができる。本スクリーニング方法によれば、公知のリンカー配列から、所望の糖加水分解酵素に有用な更なる他のリンカー配列やその個数、さらにはその融合(連結)形態をスクリーニングできる。

0062

スクリーニング対象となる被験融合タンパク質は以下のようにして設計する。まず、1又は2以上のリンカー配列が、糖加水分解酵素において知られているリンカー配列から選択することができる。選択されたリンカー配列を単数あるいは複数個連結して被験アミノ酸配列を設計し、糖加水分解酵素のアミノ酸配列のいずれかの位置に連結した被験融合タンパク質のアミノ酸配列を設計する。

0063

こうして設計したアミノ酸配列をコードするDNAを保持するベクターを構築し、当該ベクターで真核細胞を形質転換し、当該真核細胞の培養実験を行い、被験融合タンパク質の細胞外発現量を測定する。細胞外発現量は、細胞外に分泌発現されるように融合タンパク質が設計されている場合には、培養上清における融合タンパク質量を測定し、細胞表層に提示されるように設計されている場合には、培養細胞を用いた糖加水分解活性等を測定する。

0064

細胞外発現量に基づいて、有効なリンカー配列とその個数や加水分解酵素に対するリンカー配列の連結位置を決定することができる。

0065

(セルロース分解産物の生産方法)
セルロースの分解産物の生産方法は、セルラーゼと、配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドとの融合タンパク質(セルラーゼ改変体)をコードするDNAを保持し前記融合タンパク質を細胞外発現可能な真核細胞の生産するセルラーゼとセルロースとを接触させる工程、を備えることができる。本生産方法によれば、細胞外発現されるセルラーゼによってセルロースを分解することができる。

0066

この接触工程においては、前記真核細胞がセルラーゼ改変体を分泌発現するように構築されているときには、培養上清とセルロース含有材料とを接触させてもよい。また、この場合、前記真核細胞をセルロース含有材料の存在下で培養することとしてもよい。この場合、真核細胞は、セルロースを加水分解しつつ増殖等することが可能である。さらに、前記真核細胞が、細胞表層にセルラーゼ改変体を提示可能に構築されている場合には、前記真核細胞細胞をセルロース含有材料の存在下に培養することができる。

0067

なお、セルラーゼとしては、セロビオヒドロラーゼとエンドグルカナーゼとを用いることが好ましい。これらの相乗作用としてセルロースを効率的に分解できる。これらのセルラーゼは、いずれも細胞外発現されることが好ましく、2種を一つの真核細胞で同時発現させることが好ましいが、他の態様であってもよく、いずれか一方を、前記真核細胞外から供給してもよい。

0068

接触工程における処理温度や時間等の条件は、用いるセルラーゼの種類及びセルロースの供給形態によって適宜設定することができる。

0069

本明細書において、セルロースとは、バイオマスから他の成分から分離工程を経たセルロースとして供給されてもよいし、リグニン、ヘミセルロース及び/又はペクチンが共存する未処理あるいは部分的な前処理を施したバイオマスなどセルロースを含有する材料として供給されてもよい。セルロースを含む材料としては、稲ワラ、麦ワラバガス、枯れ草等の廃棄資源のほか、未利用資源であってもよく、セルロースを含んでいれば特に限定されない。また、本明細書において、セルロース分解産物としては、セルロースの低分子化物であればよく、グルコース、そのオリゴマーセロビオース等が挙げられる。

0070

(有用物質の生産方法)
本明細書に開示される有用物質の生産方法は、セルラーゼと配列番号1で表されるアミノ酸配列又はこのアミノ酸配列と55%以上の同一性を有するアミノ酸配列である第1のアミノ酸配列を1又は2以上有するペプチドとの融合タンパク質(セルラーゼ改変体)をコードするDNAを保持し、前記融合タンパク質を細胞外発現可能であって、前記有用物質の生産能を有する真核細胞を、セルラーゼの存在下に培養する工程、を備えることができる。

0071

本生産方法によれば、前記真核細胞がセルラーゼ改変体を効果的に細胞外発現するため、セルラーゼを効率的に糖化でき、分解産物をそのまま前記真核細胞が代謝し、前記真核細胞を有する発酵能(有用物質の生産能)に基づき、有用物質を生産することができる。

0072

本生産方法によれば、いわゆる糖化・発酵同時プロセス(CBP)を効率的に行うことができる。なお、前記真核細胞は、セルロースの分解に必要なセロビオヒドロラーゼとエンドグルカナーゼとの双方を細胞外発現するように構築されていることが好ましいが、いずれか一方のみを発現している場合には、他方を外部から供給してもよい。

0073

前記培養工程で用いる真核細胞は、既に説明した真核細胞を用いるが、酵母などのエタノール生産微生物や麹菌等の真核微生物を好ましく用いることができる。真核微生物は、人工的に取得された微生物であってもよい。例えば、グルコースからの代謝系の1種又は2種以上の酵素を遺伝子組換えにより置換、追加等して得られる本来の代謝物でない化合物を産生可能に遺伝子工学的に改変したものであってもよい。このような真核微生物を用いることで、例えば、イソプレノド合成経路の追加によるファインケミカルコエンザイムQ10、ビタミン及びその原料等)、解糖系の改変によるグリセリンの生産、プラスチック化成品原料を生産するなどのバイオリファイナリー技術に適用できる。有用物質としては特に限定しないが、グルコースを利用して微生物が生成可能なものが好ましく、上記したように、バイオリファイナリー技術全般にわたる物質を対象とすることができる。

0074

以上説明した本明細書に開示される実施形態は、いずれも、モレキュラークローニング第3版、カレントプロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載されている方法に準じて実施することができる。真核微生物などの宿主細胞の形質転換のためのベクター及びその構築方法は、当業者において周知であって、上記書籍等に開示されている。また、形質転換にあたり、従来公知の各種方法、例えば、トランスフォーメーション法や、トランスフェクション法接合法プロトプラスト法、エレクトロポレーション法リポフェクション法、酢酸リチウム法等を用いることも、同様に当業者において周知である。

0075

本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

0076

以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に述べる遺伝子組換え操作は既出のMolecular Cloningに従い行った。

0077

(リンカーを多重に連結したDNA断片(リンカー多重連結断片)の構築)
本実施例では、図1に示す方法で図4に示すリンカー多重連結断片を作製した。具体的には、Trichoderma harzianumのエンドグルカナーゼIIのリンカー(配列番号1)をコードする102bpからなる塩基配列(配列番号8)(ただし、酵母におけるコドン用法による。)を含むオリゴヌクレオチドとこのオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド(5'末端リン酸化修飾されている)を、両端が9bpずれる形で合成した。なお、ずらした9bpはライゲーション時において粘着末端となるように相補的な配列にデザインした。

0078

合成したオリゴヌクレオチドを95℃で5分熱変性後、ゆっくり室温まで温度を低下させることでアニールさせ、2本鎖を形成させた。次に、作製した二本鎖オリゴヌクレオチドを、DNAライゲーションキットVer2.1を利用してライゲーションにより多重に連結し、アガロース電気泳動後、500bp以上の長さの断片をゲルから切り出した。さらに、In-Fusion AdvantagePCRCloning Kit(タカラバイオ)を用いてpUC19へサブクローニングして、各種のマルチリンカーベクターを作製した。

0079

マルチリンカーベクターを鋳型として2種類のプライマーペアでPCRを行い、様々な長さのリンカー断片を作製後、In-Fusion Advantage PCR Cloning Kitを用いて挿入することで、任意のCBD-CD間にリンカー多重連結断片を挿入したDNAコンストラクトを構築した。

0080

(多重連結リンカーを含むThCBD1-PcCD断片を保持したベクターの構築)
セロビオヒドロラーゼのモデル遺伝子として、Phanerochaete chrysosporiumのセロビオヒドロラーゼII(PcCBH2)のCBDを、Trichoderma harzianumのエンドグルカナーゼIIのCBDに置換したDNA断片(ThCBD1-PcCD)を用いた。S. cerevisiaeでの分泌発現ベクターには、pAUR112(タカラバイオ)のSmaIサイトにTDH3プロモーター−Rhizopus orizaeのグルコアミラーゼのシグナル配列(MQLFNLPLKVSFFLVLSYFSLLVSAA)−CYCターミネータを挿入したpAUR112-GAPSSRG(図2)を用いた。pAUR112-GAPSSRGを、SphI、ClaIで制限酵素処理し、In-Fusion AdvantagePCRCloning Kitを用いて,Rhizopus oryzaeのグルコアミラーゼ由来のシグナル配列下流にThCBD1-PcCDが来るように、サブクローニングし、図3に示すpAUR112-GAPSSRG-ThCBD1-PcCDを作製した。このとき、挿入したDNA断片のC末端にテトラシステティンタグ(TC:Cys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cys)を挿入することで、TC-FLASH Expression Anaysis Detection kits(Iinvitrogen)を用いて、培養上清の酵素量を測定できるように設計した。

0081

次に、実施例1の手法を用いて、pAUR112-GAPSSRG-ThCBD1-PcCDのCBD-CD間にTrichoderma harzianumのエンドグルカナーゼIIのリンカーを多重連結し、多重連結リンカー断片を挿入したベクターを作製した。作製したベクターをFrozen-EZ Yeast Transforamation II Kit(Zymo Research)を用いてBJ5465株に形質転換した。

0082

(多様なリンカー長を有するThCBD1-PcCDのS. cerevisiaeでの分泌発現と培養上清を用いたPSC(リン酸膨潤セルロース)の分解活性評価
培養は、96穴ディープウェルプレートを用いて行った。生育した菌体コロニーを500μlのSD−URA液体培地(Yeast Nitorogen Base without amino acid without sulfate 1.7g、カザミノ酸10g、-URAアミノ酸mix0.77g、グルコース10g、脱イオン水1000ml)に殖菌し、30℃、20時間培養した菌液前培養液とした。100μlの前培養液を新たに500μlのSD-URA液体培地に殖菌し、30℃、20時間培養し本培養を行った。遠心分離により得られた培養上清を粗酵素液として用いてセルロース分解試験を行った。

0083

基質には、0.5%PSCを用いた。基質200μlに対して、各DNA断片由来の培養上清を15μl加え、40℃で24時間反応後に、遠心上清中の還元糖量をTZアッセイ法により測定した。全ての測定は3連で行った。結果を図5に示す。

0084

図5に示すようにリンカー長に応じてPSC分解活性が向上していることがわかった。また、挿入リンカー数が5のときに最大活性を呈することがわかった。

0085

(多様なリンカー長を有するThCBD1-PcCDのS. cerevisiaeでの分泌発現量評価)
実施例3で活性測定した培養上清に含まれるThCBD1-PcCDの量をTC-FLASH Expression Anaysis Detection kitsを用いて測定した。結果を図6に示す。SDS-PAGE後の画像からゾーンデシメトリーにより発現量を数値化し、リンカー挿入なしの場合を1としたときの相対比で示した。図6に示すように、リンカー数に応じて酵母での分泌発現量が向上しており、発現量のピークは挿入リンカー数が5のときであった。この結果は、実施例3で示したPSC分解活性と相関がみられた。

0086

(多重連結リンカーを含むThCBD1-TrEG2CD断片を保持したベクターの構築)
エンドグルカナーゼのモデル遺伝子として、Trichoderma reeseiのエンドグルカナーゼII(TrEG2)のCBDをTrichoderma harzianumのエンドグルカナーゼIIのCBDに置換したDNA断片(ThCBD1-TrEGIICD)を用いた。実施例2と同様に、図7に示したベースとなるベクターを構築した後、実施例1と同様の手法を用いて、CBD-CDの間にTrichoderma harzianumのエンドグルカナーゼIIのリンカー(配列番号1)をコードする塩基配列(配列番号8)を0、1、3、4及び5個挿入したDNA断片を構築した(図8)。構築したベクターをFrozen-EZ Yeast Transformation II Kit(Zymo Research)を用いてBJ5465株に形質転換した。

0087

(多様なリンカー長を有するThCBD1-TrEGIICDのS. cerevisiaeでの分泌発現と培養上清を用いたPSC(リン酸膨潤セルロース)の分解活性評価)
前培養及び本培養を実施例3と同様に行った。本培養の遠心分離により得られた培養上清を粗酵素液として用いて、実施例3と同様にしてセルロース分解試験を行った。結果を図9に示す。

0088

図9に示すように、PcCBH2のみならず、TrEG2であっても、リンカー長に応じて酵母でのPSC分解活性が向上していることがわかった。また、挿入リンカー数が4のとき最大活性を示すことがわかった。

0089

(多様なリンカー長を有するThCBD1-TrEG2のS. cerevisiaeでの分泌発現量評価)
実施例4と同様の手法を用いて、分泌発現量を測定した。結果を図10に示す。図10に示すように、リンカー数に応じて酵母での分泌発現量が向上しており、発現量のピークは挿入リンカー数が5のときであった。

0090

(野生型PcCBH2、TrEGIIのリンカー多重化の効果の評価)
本実施例では、野生型PcCBH2、TrEGIIにおいて、これら本来的に備えているリンカー(アミノ酸配列:配列番号15、4、塩基配列:配列番号16(ただし、酵母におけるコドン用法による。)、11(ただし、酵母におけるコドン用法による。))をインバースPCR法により2個、3個に多重化して伸長したDNA断片を構築し、実施例2と同様にして、ベクターを構築し、同様にしてBJ5465株に形質転換した。さらに、実施例3、4と同様の手法を用いて培養上清のPSC分解活性と分泌発現量とを測定した。結果を図11に示す。

0091

図11に示すように、PcCBH2のリンカーを多重化しても分解活性も分泌発現量も増加せず、むしろ減少する傾向があった。これに対して、TrEG2のリンカーでは、リンカー多重化に応じて発現量及びPSC分解活性も向上した。

0092

(各種リンカーの配列比較
ThEG2、TrEG2,PcCBH2のCBD-CD間にあるリンカーアミノ酸配列を比較した。結果を図12に示す。図12に示すように、ThEG2及びTrEG2の配列は非常に高い同一性を示したのに対し、てPcCBH2のリンカーは他の2種に対して低い同一性しか持っていなかった。また、BLAST検索により、ThEG2のリンカーとの相同性検索を行った結果を図13に示す。図13に示すように、Trichoderma属のエンドグルカナーゼのCBD−CD間のリンカー配列は、高い同一性を持ち、他のセルラーゼのCBD-CD間に多重化して挿入することで酵母における分泌発現量並びに活性を向上できることがわかった。

0093

(Trichoderma virideのエンドグルカナーゼIIリンカーによる発現量の向上)
実施例9において、Trichoderma harzianumのエンドグルカナーゼIIリンカーと相同性が55%であったTrichoderma virideのエンドグルカナーゼIIのリンカーを、ThCBD1とPcCBH2のCDの間に挿入し、酵母における分泌発現量が向上するか否かを確認した。ThCBD1とPcCDとの間にLinkerを備えたDNA断片ThCBD1-TvLinker−PcCDを作製し、図14に示すようにして、pAUR112-GAPSSRGへサブクローニングした。実施例2,3と同様に、酵母に形質転換した後、PSC分解活性を測定し、挿入前と比較した。結果を図15に示す。

実施例

0094

図15に示すように、TvLinkerを挿入したThCBD1−TvLinker−PcCDでは、挿入前のThCBD1−PcCDと比較して、1.2倍程度PSC分解活性が向上しており、TvLinkerでも分泌量が向上することが確認できた。

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