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技術 物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用

出願人 クオンタムバイオシステムズ株式会社
発明者 川合知二筒井真楠谷口正輝
出願日 2012年1月30日 (9年0ヶ月経過) 出願番号 2012-017325
公開日 2013年8月15日 (7年6ヶ月経過) 公開番号 2013-156167
状態 拒絶査定
技術分野 微生物・酵素関連装置 酵素、微生物を含む測定、試験 電気化学的な材料の調査、分析
主要キーワード 高感度センサー 熱酸化被膜 部マーク キャピラリー状 重ね描画 減速効果 分子直径 ナノギャップ電極
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年8月15日)のものです。
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図面 (10)

課題

物質の移動速度を精度良く制御し得るとともに、デバイス耐久性を向上させ得る、物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用を提供する。

解決手段

互いに交わる方向に形成された第1の電界および第2の電界によって形成された移動経路によって、電荷を有する物質を移動させる。

概要

背景

現在、様々な分野において、物質(例えば、タンパク質核酸など)の移動速度を精度良く所望の速度へ制御できる技術の開発が求められている。

例えば、DNAの塩基配列解読するためのシーケンサーでは、DNAを移動させながら、当該DNAの塩基配列を読解することになる。このとき、泳動速度が速すぎると、DNAの塩基配列を精度良く決定することができない。一方、泳動速度が遅すぎると、DNAの塩基配列を読解するために、非常に長い時間を要することになる。それ故に、シーケンサーの分野においても、物質の移動速度を精度良く所望の速度へ制御できる技術の開発が、求められている。

特に、近年、個々の個性にかなったテーラーイド医療に注目が集まっている。当該テーラーメイド医療を実現するためには、個人ゲノムの塩基配列を短時間で精度良く読解し、個人のゲノムの塩基配列における特徴点を正確に把握する必要がある。このことからも、物質の移動速度を精度良く所望の速度へ制御できる技術の開発は、急務であるといえる。

上述した状況を踏まえて、従来から、脂質二重膜膜タンパク質担持させたデバイスにおいて、1対の電極間を通過するように核酸を電気泳動することによって、当該核酸の塩基配列を解読する技術が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。具体的に、非特許文献1に記載の技術では、α−ヘモリシン(α−haemolysin)によって形成された孔の中を通過するように核酸を電気泳動して核酸の移動速度を調節するとともに、このときのイオン電流計測することによって、孔を通過している核酸の塩基配列を決定している。

概要

物質の移動速度を精度良く制御し得るとともに、デバイスの耐久性を向上させ得る、物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用を提供する。互いに交わる方向に形成された第1の電界および第2の電界によって形成された移動経路によって、電荷を有する物質を移動させる。

目的

本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、物質の移動速度を精度良く制御し得るとともに、デバイスの耐久性を向上させ得る、物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

第1の電極対によって形成された第1の電界に沿って、電荷を有する物質を移動させる移動工程を有する、物質の移動速度の制御方法であって、上記物質の移動経路の少なくとも一部には、第2の電極対によって、上記第1の電界と交わる方向に第2の電界が形成されていることを特徴とする制御方法。

請求項2

上記第1の電界の方向と上記第2の電界の方向とは、互いに直交していることを特徴とする請求項1に記載の制御方法。

請求項3

上記物質は、少なくとも上記物質が有する電荷とは逆の電荷を有するイオンを含む、液体またはゲルの少なくとも一方の中を移動することを特徴とする請求項1または2に記載の制御方法。

請求項4

上記物質を複数個移動させたときに、当該物質の移動速度が複数の正規分布に分かれることを検出する検出工程を有することを特徴とする請求項3に記載の制御方法。

請求項5

上記物質は、核酸タンパク質花粉ウイルス細胞有機粒子または無機粒子であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の制御方法。

請求項6

第1の電極対の間に設けられている流路と、上記流路の少なくとも一部に設けられている第2の電極対と、を備え、上記第1の電極対によって形成される第1の電界の方向と、上記第2の電極対によって形成される第2の電界の方向とは、互いに交わっていることを特徴とする、電荷を有する物質の移動速度の制御装置

請求項7

上記第1の電界の方向と上記第2の電界の方向とは、互いに直交していることを特徴とする請求項6に記載の制御装置。

請求項8

上記流路には、少なくとも上記物質が有する電荷とは逆の電荷を有するイオンを含む、液体またはゲルの少なくとも一方が配置されていることを特徴とする請求項6または7に記載の制御装置。

請求項9

上記物質を複数個移動させたときに、当該物質の移動速度が複数の正規分布に分かれることを検出する検出手段を有することを特徴とする請求項8に記載の制御装置。

請求項10

請求項6〜9の何れか1項に記載の制御装置を備えていることを特徴とするポリヌクレオチドヌクレオチド配列を決定する装置。

技術分野

0001

本発明は、物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用に関し、特に、電荷を有する物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用に関する。

背景技術

0002

現在、様々な分野において、物質(例えば、タンパク質核酸など)の移動速度を精度良く所望の速度へ制御できる技術の開発が求められている。

0003

例えば、DNAの塩基配列解読するためのシーケンサーでは、DNAを移動させながら、当該DNAの塩基配列を読解することになる。このとき、泳動速度が速すぎると、DNAの塩基配列を精度良く決定することができない。一方、泳動速度が遅すぎると、DNAの塩基配列を読解するために、非常に長い時間を要することになる。それ故に、シーケンサーの分野においても、物質の移動速度を精度良く所望の速度へ制御できる技術の開発が、求められている。

0004

特に、近年、個々の個性にかなったテーラーイド医療に注目が集まっている。当該テーラーメイド医療を実現するためには、個人ゲノムの塩基配列を短時間で精度良く読解し、個人のゲノムの塩基配列における特徴点を正確に把握する必要がある。このことからも、物質の移動速度を精度良く所望の速度へ制御できる技術の開発は、急務であるといえる。

0005

上述した状況を踏まえて、従来から、脂質二重膜膜タンパク質担持させたデバイスにおいて、1対の電極間を通過するように核酸を電気泳動することによって、当該核酸の塩基配列を解読する技術が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。具体的に、非特許文献1に記載の技術では、α−ヘモリシン(α−haemolysin)によって形成された孔の中を通過するように核酸を電気泳動して核酸の移動速度を調節するとともに、このときのイオン電流計測することによって、孔を通過している核酸の塩基配列を決定している。

先行技術

0006

Clarke, J., Wu, H.-C., Jayasinghe, L., Patel, A., Reid, S. & Bayley, H. Continuous base identification for single-molecule nanopore DNA sequencing. Nat. Nanotechnol. 4, 265-270(2009)

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、上述のような従来技術は、1分子の移動速度を精度良く制御することが困難であるという問題点を有している。特に、上述のような従来技術は、分子の移動速度を遅くすることが困難であるという問題点を有している。

0008

また、上述のような従来技術は、デバイスの材料としてタンパク質を用いているために、デバイスの耐久性が低いという問題点を有している。

0009

本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、物質の移動速度を精度良く制御し得るとともに、デバイスの耐久性を向上させ得る、物質の移動速度の制御方法および制御装置、並びに、これらの利用を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

本発明の制御方法は、上記課題を解決するために、第1の電極対によって形成された第1の電界に沿って、電荷を有する物質を移動させる移動工程を有する、物質の移動速度の制御方法であって、上記物質の移動経路の少なくとも一部には、第2の電極対によって、上記第1の電界と交わる方向に第2の電界が形成されていることを特徴としている。

0011

本発明の制御方法では、上記第1の電界の方向と上記第2の電界の方向とは、互いに直交していることが好ましい。

0012

本発明の制御方法では、上記物質は、少なくとも上記物質が有する電荷とは逆の電荷を有するイオンを含む、液体またはゲルの少なくとも一方の中を移動することが好ましい。

0013

本発明の制御方法は、上記物質を複数個移動させたときに、当該物質の移動速度が複数の正規分布に分かれることを検出する検出工程を有することが好ましい。

0014

本発明の制御方法では、上記物質は、核酸、タンパク質、花粉ウイルス細胞有機粒子または無機粒子であることが好ましい。

0015

本発明の制御装置は、上記課題を解決するために、第1の電極対の間に設けられている流路と、上記流路の少なくとも一部に設けられている第2の電極対と、を備え、上記第1の電極対によって形成される第1の電界の方向と、上記第2の電極対によって形成される第2の電界の方向とは、互いに交わっていることを特徴としている。

0016

本発明の制御装置では、上記第1の電界の方向と上記第2の電界の方向とは、互いに直交していることが好ましい。

0017

本発明の制御装置では、上記流路には、少なくとも上記物質が有する電荷とは逆の電荷を有するイオンを含む、液体またはゲルの少なくとも一方が配置されていることが好ましい。

0018

本発明の制御装置は、上記物質を複数個移動させたときに、当該物質の移動速度が複数の正規分布に分かれることを検出する検出手段を有することが好ましい。

0019

本発明のポリヌクレオチドヌクレオチド配列を決定する装置は、上記課題を解決するために、本発明の制御装置を備えていることを特徴としている。

発明の効果

0020

本発明は、物質の移動速度を精度良く制御することができるという効果を奏する。特に、本発明は、物質の移動速度を減速させることができるという効果を奏する。

0021

本発明は物質の移動速度を精度良く制御することができるので、当該物質に関する様々な測定を精度良く行うことができるという効果を奏する。例えば、DNAの塩基配列の読解を例に挙げれば、本発明によればDNAの移動速度を減速させることができるので、DNAを構成する塩基毎に検出されるシグナル(例えば、電流のシグナル、蛍光のシグナルなど)が重なることを防ぐことができる。その結果、DNAの塩基配列を正確に決定することができるという効果を奏する。

図面の簡単な説明

0022

本発明の移動速度の制御方法における、制御理論を示す図である。
本発明の実施例の制御装置における、走査型電子顕微鏡の像を示す図である。
本発明の実施例の第2電極対の正極と負極との間に形成されたギャップの形態を示す図である。
本発明の実施例の制御装置に印加される電圧、および、制御装置を流れる電流の状態を示す図である。
本発明の実施例の制御装置の封止状態を示すグラフである。
(a)および(b)は、本発明の実施例の制御装置において、Ag/AgCl電極間の電圧をVlong=0.5Vとし、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間の電圧をVtrans=0Vとした場合の、イオン電流と時間との関係を示すグラフである。
(a)および(b)は、本発明の実施例の制御装置において、Ag/AgCl電極間の電圧をVlong=0.5Vとし、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間の電圧をVtrans=0.5Vとした場合の、イオン電流と時間との関係を示すグラフである。
本発明の実施例の制御装置における、物質の移動時間分布を示すグラフである。
本発明の実施例の制御装置の製造工程を示す図である。

0023

以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。なお、本明細書中で「A〜B」と記載した場合、「A以上B以下」を意図する。

0024

〔1.移動速度の制御方法〕
まず、図1を用いて、本発明の移動速度の制御方法の制御理論について説明する。なお、図1では、負の電荷を有する物質(具体的にはDNA)を例として制御理論を説明しているが、当業者であれば、本明細書を読めば、本発明であれば正の電荷を有する物質であっても移動速度を制御し得ることを容易に理解できるであろう。

0025

図1に示すように、本発明の移動速度の制御方法では、第1の電極対(図1紙面の上下に設けられた電極対)によって、電荷を有する物質を移動させる。つまり、第1の電極対の負極側(図1の紙面上側)から第1の電極対の正極側(図1の紙面下側)に向かって、負の電荷を有している物質が移動することになる。当該移動方向が、物質を移動させるべき方向となり、本発明では、当該方向への移動速度を制御することになる。

0026

図1に示すように、物質の移動経路には、第1の電極対とは別に第2の電極対(図1の紙面左右に設けられた電極対)が形成されている。

0027

第2の電極対の正極と、負の電荷を有する物質との間では、静電相互作用が生じる。そして、当該静電相互作用によって、第1の電極対の負極側から第1の電極対の正極側に向かって移動している物質の移動速度を減速させることができる。

0028

上記物質が正の電荷を有する物質である場合、当該物質は、第1の電極対の正極側(図1の紙面下側)から第1の電極対の負極側(図1の紙面上側)に向かって移動することになる。

0029

この場合、第2の電極対の負極と、正の電荷を有する物質との間で、静電相互作用が生じる。そして、当該静電相互作用によって、第1の電極対の正極側から第1の電極対の負極側に向かって移動している物質の移動速度を減少させることができる。

0030

物質の移動経路中にイオンが存在する場合には、上記静電相互作用による減速効果に加えて、更に、電気浸透流による減速効果も期待できる。当該電気浸透流による減速効果について、以下に説明する。

0031

図1に示すように、物質の移動経路に陰イオン(例えばCl−)および陽イオン(例えばK+)が存在する場合、第2の電極対の正極の表面には、陰イオンによる電気浸透流が発生し、第2の電極対の負極の表面には、陽イオンによる電気浸透流が発生する。なお、陰イオンによる電気浸透流は、第1の電極対の負極側から正極側へ向かって流れ、陽イオンによる電気浸透流は、第1の電極対の正極側から負極側へ向かって流れる。

0032

負の電荷を有する物質を移動させる場合、第2の電極対の負極の表面に発生する電気浸透流は、物質の移動方向とは逆向きへ流れることになる。したがって、上述した静電相互作用とは別に、当該電気浸透流によっても、負の電荷を有する物質の移動速度を減速させることができる。

0033

一方、正の電荷を有する物質を移動させる場合、第2の電極対の正極の表面に発生する電気浸透流は、物質の移動方向とは逆向きへ流れることになる。したがって、上述した静電相互作用とは別に、当該電気浸透流によっても、正の電荷を有する物質の移動速度を減速させることができる。

0034

以上に本発明の移動速度の制御方法の制御理論について説明したので、以下では、当該制御理論に基づいた、移動速度の制御方法の実施形態について説明する。

0035

本実施の形態の移動速度の制御方法は、第1の電極対によって形成された第1の電界に沿って、電荷を有する物質を移動させる移動工程を有している。つまり、本実施の形態の移動速度の制御方法では、第1の電極対と電荷を有する物質との静電相互作用によって、当該物質を所望の方向に向かって移動させており、第1の電極対によって形成された第1の電界(第1の電極対の正極から負極に向かう電界)に沿って、物質の移動経路が形成されることになる。

0036

上記物質は電荷を有しているものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、原子、分子、ポリマー、または、これらの複合体であってもよい。上記物質が電荷を有していることにより、第1の電極対によって当該物質を目的の方向へ移動させることができるとともに、第2の電極対によって当該物質の移動速度を制御することができる。

0037

上記物質が有する電荷は、負の電荷であってもよいし、正の電荷であってもよい。上記物質が有する電荷が負の電荷である場合には、上記物質は、第1の電極対の負極側から正極側に向かって移動することになり、上記物質が有する電荷が正である場合には、上記物質は、第1の電極対の正極側から負極側に向かって移動することになる。

0038

上記物質が、物質Aと物質Bとの複合体である場合には、物質Aおよび物質Bの少なくとも一方が電荷を有していればよい。勿論、物質Aと物質Bとの両方が電荷を有していてもよい。

0039

物質Aと物質Bとの両方が電荷を有している場合には、物質Aが有する電荷と物質Bが有する電荷とが、共に正または負の電荷であってもよいし、一方が正の電荷であり他方が負の電荷であってもよい。上記複合体の中で部分的に電荷を打ち消し合ったとしても、上記複合体を全体としてみた場合に当該複合体が電荷を有していれば良い。換言すれば、上記複合体は、第1の電極対によって移動され得るとともに、第2の電極によって移動速度を制御され得る程度の電荷を有していればよい。

0040

上記物質が、物質Aと物質Bとの複合体である場合には、物質Aと物質Bとは、移動中に互いが遊離しない程度の力にて、互いに結合していればよい。例えば、物質Aと物質Bとは、共有結合イオン結合水素結合疎水結合、または、これらから選択される複数の結合を介して互いに結合していればよい。

0041

上記物質Aまたは物質Bとしては、例えば、イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム塩)、帯電した有機粒子または帯電した無機粒子を用いることが可能である。これらの物質は自身が電荷を有しているので、他の物質と複合体を形成した場合に、当該複合体に対して電荷を付与することが可能である。つまり、これらの物質を用いれば、容易に電荷を有する複合体を形成することができる。

0042

上述したイオン性界面活性剤は、自身が形成するミセル中に、所望の物質を容易に含有させることができる。それ故に、複合体を形成する成分の1つとしてイオン性界面活性剤を用いれば、容易に電荷を有する複合体を形成することができる。

0043

上記説明から明らかなように、本願発明であれば、元々は電荷を有していない物質であったとしても、電荷を有する他の物質と複合体を形成させることによって、移動速度を制御することができる。

0044

上記電荷を有する物質の具体例としては、核酸(DNAまたはRNA)、アミノ酸、タンパク質、花粉、ウイルス、細胞、有機粒子または無機粒子を挙げることができるが、本発明は、これらに限定されない。

0045

上記第1の電極対の具体的な構成としては特に限定されず、適宜、公知の電極対を用いることができる。なお、本実施の形態の移動速度の制御方法では、当該第1の電極対の正極と負極との間に、物質が移動する移動経路が形成されることになる。

0046

上記第1の電極対の具体的な構成としては特に限定されず、適宜、公知の電極を用いることが可能である。例えば、Ag/AgCl電極などを用いることが可能であるが、本発明は、これに限定されない。

0047

上記第1の電極対における正極と負極との間の距離は特に限定されず、適宜、設定することができる。例えば、物質の電荷、第1の電極対に印加する電圧、第2の電極対の長さなどを考慮して、適宜設定することができる。

0048

本実施の形態の移動速度の制御方法では、上記物質の移動経路の少なくとも一部に、第2の電極対によって、上記第1の電界と交わる方向に第2の電界が形成されている。つまり、本実施の形態の移動速度の制御方法では、第1の電極対によって、第1の電極対の正極から負極へ向かう方向の第1の電界が形成されており、第2の電極対によって、第2電極対の正極から負極へ向かう方向の第2の電界が形成されている。そして、第1の電界の方向と第2の電界の方向とが交わるように、第1の電界および第2の電界が形成されている。

0049

上記構成であれば、上記物質が、第1の電極対によって形成されている第1の電界によって移動している時に、その移動過程の少なくとも一部において、第2の電極対によって形成されている第2の電界の中を通過することになる。そして、この第2の電界の中を通過するときに、物質の移動速度が減速されることになる。

0050

第1の電界の方向と第2の電界の方向とが交わる角度は特に限定されず、所望の角度に設定することができる。例えば、第1の電界の方向と上記第2の電界の方向とが互いに直交するように構成することも可能である。当該構成であれば、第2の電極対によって、物質に対して効果的に静電相互作用を作用させて、効果的に物質を減速させることができる。また、当該構成であれば、第2の電極対によって、効果的に電気浸透流を発生させて、当該電気浸透流によって効果的に物質を減速させることができる。

0051

上記第2の電極対の正極と負極との間にギャップを形成し、当該ギャップによって移動経路の一部を形成することができる。そして、当該ギャップを物質が通過しているときに、物質に対して静電相互作用を作用させることができる。このようにして形成されたギャップのサイズは特に限定されず、適宜、所望のサイズに設定することができる。

0052

例えば、図3に、対向する第2の電極対の正極と負極とによって形成されるギャップの一例を示している。図3では、当該ギャップは、幅(W)、高さ(H)、および、長さ(L)を有する直方体の形状にて示されている。上記幅(W)は、第2の電極対の正極と負極との間の距離に相当する。そして、物質は、上記長さ(L)に沿って移動することになる。つまり、物質は、図3の紙面の奥から紙面の手前に向かって、または、図3の紙面の手前から紙面の奥に向かって移動することになる。なお、図3では図示されていないが、上記ギャップの上側は、必要に応じて封止することができる。

0053

上記幅(W)、高さ(H)および長さ(L)の各々のサイズは特に限定されず、適宜、所望のサイズに設定することができる。

0054

上記幅(W)のサイズは特に限定されず、物質の種類、物質の移動経路に配置する液体やゲルなどに応じて、適宜、設定することができる。例えば、1nm〜1000nmであってもよく、1nm〜100nmであってもよく、1nm〜60nmであってもよく、50nm〜60nmであってもよい。勿論、上記幅(W)は、1nm以下のサイズであってもよいし、1000nm以上のサイズであってもよい。

0055

例えば、ヌクレオチド分子直径は当業者に公知であるため、当該分子直径に基づいて上記幅(W)のサイズを設定することも可能である。例えば、一リン酸の形態のヌクレオチドの分子直径は約1nmであるため、上記幅(W)を、例えば0.5nm〜2nm、1nm〜1.5nm、または、1nm〜1.2nmに設定することも可能である。

0056

物質の速度を効果的に減速させるという観点からは、幅(W)は、狭い方が好ましいといえる。

0057

また、上記幅(W)のサイズは、第2の電極対の正極および負極の表面で生じる電気二重層図1参照)と上記物質とが重ならない程度のサイズであってもよい。つまり、第2の電極対の正極および負極の表面で生じる電気二重層の厚さ(第2の電極対の正極と負極とを結ぶ方向の長さ)を各々「X」および「Y」とし、第2の電極対の正極と負極との間を移動しているときの物質の幅(第2の電極対の正極と負極とを結ぶ方向の長さ)を「Z」とした場合に、W>X+Y+Zであってもよい。

0058

なお、電気二重層の厚さは、当該電気二重層を形成するイオンの濃度に依存することが知られている。したがって、上記「X」および「Y」は、移動経路中に存在するイオンの濃度などに応じて適宜設定することができる。

0059

また、上記物質の形状を直鎖に近似できる場合には、当該直鎖の短手方向の長さを上記「Z」とすることができる。勿論、当該直鎖の長手方向の長さを上記「Z」とすることも可能であり、直鎖の短手方向の長さと短手方向の長さとの平均値を上記「Z」とすることもできる。より確実に第2の電極対の正極および負極の表面で生じる電気二重層と上記物質とが重ならないようにするという観点からは、直鎖の長手方向の長さを上記「Z」とすることが好ましいといえる。また、上記物質の形状を球に近似できる場合には、当該球の直径の長さを上記「Z」とすることができる。しかしながら、上述した「Z」の規定は一例に過ぎず、本発明は、これらに限定されない。

0060

上述したW>X+Y+Zを満たす構成であれば、物質を複数個移動させたときに、これらの物質の移動速度を、より正確に正規分布に近づけることができる。つまり、当該構成であれば、物質の移動速度をより精度良く制御することができる。

0061

上記高さ(H)のサイズは特に限定されず、物質の種類、物質の移動経路に配置する液体やゲルなどなどに応じて、適宜、設定することができる。例えば、1nm〜1000nmであってもよく、1nm〜100nmであってもよく、1nm〜60nmであってもよく、50nm〜60nmであってもよい。勿論、上記高さ(H)は、1nm以下のサイズであってもよいし、1000nm以上のサイズであってもよい。

0062

上記高さ(H)のサイズは、上述した幅(W)と同様に、0.5nm〜2nm、1nm〜1.5nm、または、1nm〜1.2nmに設定することも可能である。

0063

上記長さ(L)のサイズは特に限定されず、物質の種類、物質の移動経路に配置する液体やゲルなどなどに応じて、適宜、設定することができる。例えば、1nm〜1000nmであってもよく、100nm〜500nmであってもよく、100nm〜200nmであってもよい。勿論、上記長さ(L)は、1nm以下のサイズであってもよいし、1000nm以上のサイズであってもよい。

0064

物質の速度を効果的に減速させるという観点からは、長さ(L)は、長い方が好ましいといえる。

0065

上記第2の電極対に印加する電圧は特に限定されず、適宜、所望の電圧を印加することができる。例えば、0.10V〜1.00Vであってもよく、0.25V〜0.75Vであってもよく、0.50Vであってもよい。

0066

上記第2の電極対の具体的な構成としては特に限定されず、適宜、公知の電極を用いることが可能である。例えば、Pt/Au/Pt/SiO2電極などを用いることが可能であるが、本発明は、これに限定されない。

0067

上記物質が移動する移動経路の少なくとも一部には、液体およびゲルの少なくとも一方を配置することも可能である。勿論、液体およびゲルの両方を配置することも可能である。なお、液体およびゲルの少なくとも一方を移動経路に配置する場合には、少なくとも、第2電極対の正極と負極とによって形成されるギャップ中に配置することが好ましい。

0068

上記液体としては特に限定されないが、例えば、水を挙げることが可能である。上記ゲルとしては特に限定されないが、例えば、ポリアクリルアミドゲルアガロースゲルなどを挙げることが可能である。

0069

上記液体およびゲルには、少なくとも上記物質が有する電荷とは逆の電荷を有するイオンが含まれることが好ましい。上記構成によれば、第1の電極対の間、および、第2の電極対の間に電流を流すことができる。そして、これによって、第1の電極対の間に流れる電流の変化を感度良く検出することができる。また、上記構成によれば、第2の電極対の正極および負極の表面に電気浸透流を発生させることができる。そして、これによって、物質の移動速度を減速させることができる。

0070

上記イオンの具体的な構成としては特に限定されない。例えば、移動経路に配置された液体またはゲル中に、KCl、NaClまたはCaCl2などを溶解させればよい。より大きな電気浸透流を発生させるという観点から、上述したものの中では、イオンの価数が小さいもの、具体的にはKClまたはNaClなどが好ましいといえる。

0071

上記液体またはゲル中に溶解しているイオンの濃度は特に限定されないが、例えば、0.01M〜1Mであってもよく、0.1M〜0.5Mであってもよく、0.1M〜0.25Mであってもよい。

0072

本実施の形態の移動速度の制御方法は、物質を複数個移動させたときに、当該物質の移動速度が複数の正規分布に分かれることを検出する検出工程を有していてもよい。なお、移動させる物質の数は特に限定されず、統計的に移動速度の分布を調べることができる程度の数であればよい。

0073

後述する実施例にも示すように、静電相互作用および電気浸透流によって物質の移動速度を減速することができ、これらの作用によって効果的に減速された場合には、物質群の移動速度が複数の正規分布を示す。つまり、上記検出工程にて物質群の移動速度が複数の正規分布に分かれていることが検出できれば、物質の移動速度を効果的に減速できていると判定することができる。

0074

上記検出工程は、物質群の移動速度が、複数の正規分布に分かれることを検出できる工程であればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上記検出工程は、第1の電極対の間に流れる電流の値が低下する瞬間を検知するとともに、当該低下した瞬間の時間(電流の値が低下している間の時間)を測定して当該時間から物質の移動速度を算出し、当該移動速度の分布を統計的に算出する工程であり得る。

0075

上記検出工程は、更に、所望の正規分布に属する物質を選択する選択工程を含んでいてもよい。上記選択工程によって、より適した移動速度の物質群を選択することができる。なお、当該選択工程が選択する正規分布は特に限定されず、移動速度が速い方の正規分布であってもよいし、移動速度が遅い方の正規分布であってもよい。

0076

例えば、本実施の形態の移動速度の制御方法に基づいてDNAの塩基配列を読解する場合を考える。移動速度が2種類存在する場合、遅い方の移動速度で移動しているDNAの塩基配列を読解すれば、DNAの塩基配列の決定の精度を飛躍的に上昇させることができる。一方、速い方の移動速度で移動しているDNAの塩基配列を読解すれば、通常(例えば、第2の電極対が無い構成)よりも、DNAの塩基配列の決定の精度を上昇できるのみならず、遅い方の移動速度で移動しているDNAの塩基配列を読解する場合よりも、読解に要する時間を短縮することができる。つまり、上記検出工程および選択工程を備えていることによって、必要に応じた精度にて、できるだけ短い時間でDNAの塩基配列を読解することができる。

0077

上記検出工程および上記選択工程を実現するための構成は特に限定されず、公知の電流測定装置(例えば、Molecular Devices社製のAxopatch200Bシステムなど)および統計処理ソフト(例えば、OriginLab社製のOrigin)を用いて実現することができる。

0078

〔2.移動速度の制御装置〕
以下に、本実施の形態の移動速度の制御装置について説明する。なお、上述した〔1.移動速度の制御方法〕と重複する説明については、以下では省略する。

0079

本実施の形態の移動速度の制御装置は、第1の電極対の間に設けられている流路と、上記流路の少なくとも一部に設けられている第2の電極対と、を備えている。そして、上記第1の電極対によって形成される第1の電界の方向と、上記第2の電極対によって形成される第2の電界の方向とは、互いに交わっている。このとき、上記第1の電界の方向と上記第2の電界の方向とは、互いに直交している方が好ましいといえる。

0080

上記第1の電極対としては特に限定されず、適宜、周知の電極対を用いることができる。例えば、上記第1の電極対としてはAg/AgCl電極などを用いることが可能であるが、本発明は、これに限定されない。

0081

上記第1の電極対における正極と負極との間の距離は特に限定されず、適宜、設定することができる。例えば、物質の電荷、第1の電極対に印加する電圧などを考慮して、適宜設定することができる。

0082

上記第2の電極対としては特に限定されず、適宜、公知の電極対を用いることが可能である。例えば、上記第2の電極対としてはPt/Au/Pt/SiO2電極などを用いることが可能であるが、本発明は、これに限定されない。

0083

上記流路は、大別すれば、第2の電極対によって挟まれていない部分と、第2の電極対によって挟まれている部分とに分けることができる。第2の電極対によって挟まれている部分は、流路の何れの箇所に設けてもよい。例えば、流路の先頭に設けることも可能であり、流路の途中に設けることも可能であり、流路の終末に設けることも可能である。

0084

上記流路に設けられる第2の電極対の数は特に限定されず、1個であっても良く、複数であってもよい。1つの流路に複数の第2の電極対を設ければ、物質の移動速度の細かな制御が可能になる。例えば、1つの流路によって、物質に関する複数種類の測定(例えば、測定Aおよび測定B)を行う場合、流路の上流側に配置されている第2の電極対によって物質の速度を測定Aに適した速度に調節してから、測定Aを行い、その後、流路の下流側に配置されている第2の電極対によって物質の速度を測定Bに適した速度に調節し直してから、測定Bを行うことも可能である。上記構成によれば、1つの流路を用いて、複数の測定を、個々の測定にとって最適な条件下で行うことができる。なお、上記測定Aおよび測定Bの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、第2の電極対の間に流れるイオン電流の測定、物質が発する蛍光の測定などを挙げることができる。

0085

上記流路の第2の電極対によって挟まれていない部分の形状は特に限定されず、適宜、所望の形状であり得る。例えば、流路の第2の電極対によって挟まれていない部分を移動してきた物質を、流路の第2の電極対によって挟まれている部分へ導入することができるとともに、流路の第2の電極対によって挟まれている部分を移動してきた物質を、受けることができるような形状であってもよい。

0086

例えば、上記流路の第2の電極対によって挟まれていない部分の断面(物質の移動方向に対して垂直な断面)は、幅を500nm〜1000nm、高さを500nm〜1000nmに設定することができるが、これらに限定されない。当該幅は、第2の電極対の正極と負極との間にギャップの幅よりも広く設定され得、当該高さは、第2の電極対の正極と負極との間にギャップの高さよりも高く設定され得る。

0087

上記流路の第2の電極対によって挟まれている部分の形状は、適宜設定することが可能であって特に限定されない。当該流路の第2の電極対によって挟まれている部分の形状は、上述した〔1.移動速度の制御方法〕における「対向する第2電極対の正極と負極とによって形成されるギャップ」に対応するものであって、既に図3を用いて詳細に説明した。したがって、ここでは、その説明を省略する。

0088

上記流路には、少なくとも上記物質が有する電荷とは逆の電荷を有するイオンを含む、液体またはゲルの少なくとも一方が配置されていてもよい。上記イオン、液体およびゲルなどについては既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。

0089

本実施の形態の移動速度の制御装置は、上記物質を複数個移動させたときに、当該物質の移動速度が複数の正規分布に分かれることを検出する検出部(検出手段)を有していてもよい。なお、移動させる物質の数は特に限定されず、統計的に移動速度の分布を調べることができる程度の数であればよい。

0090

上記検出部にて物質群の移動速度が複数の正規分布に分かれていることが検出できれば、物質の移動速度を効果的に減速できていると判定することができる。

0091

上記検出部は、物質群の移動速度が、複数の正規分布に分かれることを検出できる構成であればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上記検出部は、第1の電極対の間に流れる電流の値が低下する瞬間を検知するとともに、当該低下した瞬間の時間(電流の値が低下している間の時間)を測定して当該時間から物質の移動速度を算出し、当該移動速度の分布を統計的に算出する構成であり得る。

0092

上記検出部は、更に、所望の正規分布に属する物質を選択する選択部(選択手段)を含んでいてもよい。上記選択部によって、より適した移動速度の物質群を選択することができる。なお、当該選択部が選択する正規分布は特に限定されず、移動速度が速い方の正規分布であってもよいし、移動速度が遅い方の正規分布であってもよい。

0093

上記検出部および選択部の具体的な構成は特に限定されず、公知の電流測定装置(例えば、Molecular Devices社製のAxopatch200Bステムなど)統計処理ソフト(例えば、OriginLab社製のOrigin)を用いることが可能である。

0094

〔3.ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する装置〕
本実施の形態のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する装置は、本発明の制御装置を備えている。本発明の制御装置については既に説明したので、ここでは、その他の構成について説明する。

0095

本実施の形態のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する装置は、周知のあらゆるシーケンサーと、本発明の制御装置とを組み合わせることによって構成することが可能である。なお、上記ポリヌクレオチドの構成成分は、DNAであってもRNAであってもよい。

0096

例えば、周知のシーケンサーには、蛍光色素が付加されたDNA断片群をゲル(例えば、板状のゲル、キャピラリー状のゲル)よって分離しながら、各DNA断片に付加されている蛍光色素の種類を検知することによって塩基配列を読解するタイプのものがある。

0097

この場合には、ゲルによって形成されるDNA断片の移動経路の少なくとも一部として本発明の制御装置を配置し当該制御装置の下流側に蛍光を検知するための構成を配置すればよい。上記構成によれば、蛍光色素が付加されたDNA断片が第2の電極対の間を通過するときに当該DNA断片の移動速度が減速し、その後で、蛍光が検出されることになる。その結果、精度良く塩基配列を決定することができる。

0098

または、PCT/JP2011/054631に開示されている「ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する装置」と本発明の制御装置とを組み合わせることによって、本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する装置を構成することが可能である。

0099

この場合にも、上述した場合と同様に、DNA断片の移動経路において、第2の電極対の下流側に塩基配列を読解するための構成を配置すればよい。

0100

なお、PCT/JP2011/054631は、本明細書中に参考として援用される。

0101

<1.制御装置の作製>
本実施例の制御装置を、以下の工程1〜9によって作製した。以下に、図9を参照しながら、本実施例の制御装置の作製方法を説明する。なお、図9は、各工程における制御装置の上面図である。また、下記工程1〜2は、基板上にPt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極を作製する工程であり、工程3〜工程9は、基板上に流路を作製する工程である。

0102

<工程1>
厚さ300nmのSiO2熱酸化被膜によって被覆されたドープSiウェハ上に、フォトリソグラフィー法によって引き出し電極パターニングした(レジスト:AZ5206E)。

0103

その後、高周波マグネトロンスパッタ法による金属蒸着によって、Pt(2nm)/Au(20nm)/Pt(2nm)膜を積層した。

0104

上記基板をN,N−ジメチルホルムアミドに8時間浸した後、超音波洗浄によって基板上のレジストをリフトオフすることでPt/Au/Pt引き出し電極を作製した。

0105

<工程2>
Pt/Au/Pt引き出し電極の近傍に作った外部マーク指標として、電子線描画法によってナノギャップ電極を描画した(レジスト:ZEP520A−7;電極間距離50nm)。

0106

その後、高周波マグネトロンスパッタリング法によって、Pt(2nm)/Au(30nm)/Pt(2nm)/SiO2(50nm)積層膜蒸着させた。

0107

上記基板をN,N−ジメチルホルムアミドに8時間浸した後、超音波洗浄によるリフトオフプロセスを経て、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極を作製した。

0108

<工程3>
高周波マグネトロンスパッタリング法によって、基板の全面にSiO2(15nm)/Cr(100nm)膜を蒸着した。

0109

<工程4>
工程2で用いた外部マークを指標にして、電子線描画法(レジスト:ZEP520A−7)によって、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極近傍に四角形パターン配列を描画した。

0110

その後、Crエッチング溶液に基板を浸す(室温にて60秒間)ことで、レジストが除去されて露出したCr層を除去した。

0111

<工程5>
残ったCr層をマスクとして使い反応性イオンエッチング法によって、露出したSiO2層を深さ方向に500nm掘削した。これによって、高さ500nmのピラーが並んだマイクロ流路を作製した。

0112

イオンエッチングを行った後は、Crエッチング溶液を使って、残留したCr層を除去した。

0113

<工程6>
高周波マグネトロンスパッタリング法によって、25nmの厚さのCr膜を基板の上に蒸着した。

0114

<工程7>
電子線描画法による重ね描画(レジスト:ZEP520A−7)によって、幅500nmの流路を電極上に描画した。

0115

上記基板をCrエッチング溶液にサンプルを浸すことによって、流路となる部分のCrを除去した。

0116

<工程8>
反応性イオンエッチング法(CF4、4.2Pa、100W)によって、露出したSiO2を50nmの深さだけ掘削することで、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極が埋め込まれた流路を作製した。

0117

<工程9>
最後に、残留しているCr層を、Crエッチング溶液を用いて除去した。このとき、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極の上部には、厚さ15nmのSiO2層が残るように設計にした。こうすることで、後段で流路を封止するために使用するPDMS(Polydimethylsiloxane)ブロックによってPt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極の上部も封止できるようにしている(PDMSは、金属には吸着しにくい)。

0118

<前処理>
上記工程1〜9によって作製された制御装置は、実際に用いられる前に前処理が行われる。当該前処理の具体的な内容について、以下に説明する。

0119

制御装置を実際に用いる場合には、作製した制御装置の上部をPDMSブロックで封止してもよい。上記構成によれば、液体が流路から漏れることを防ぐことができる。

0120

PDMSブロックでは、基板に接着させる側の表面にマイクロ流路が作られている。その作製方法は以下のとおりである。

0121

まず、PDMSブロックのマイクロ流路を作製するための鋳型を作製した。具体的には、Siウェハ上にフォトレジストSU−8 3050(膜厚200μm)を塗布し、90℃で45分間加熱した。SU−8 3050の溶媒蒸発した後、1時間かけて、基板を室温にまで徐々に冷却した。

0122

フォトリソグラフィー法によって、上記基板上に幅0.4mmの流路パターンを描画した。次いで、SU−8 3050の現像液に浸すことによって、露光された部分のSU−8 3050を除去し、鋳型を作製した。

0123

その後、シャーレの中に置いた鋳型上にPDMS(Sylgard(登録商標)184)を流し入れ、70℃で1時間加熱することによって、PDMSを硬化させた。

0124

硬化したPDMSを20mm各の大きさに切り取り、流路を有するPDMSブロックを得た。

0125

PDMSブロックで流路を封止する際には、吸着させる側のPDMSの表面と、流路デバイスの表面とを、酸素プラズマ処理した(50W、45秒間)。

0126

その後、速やかに上記表面同士を合わせることによって、PDMSブロックとSiO2とを吸着させ、流路を封止させた。このときPDMSブロックには6個の貫通孔をあらかじめ作製しておいた。このうち2つの貫通孔は、流路を流れるイオン電流(後述するIion)を計測するためのAg/AgCl電極を差し込むために用い、他の4つの貫通孔は、分子を含有する溶液の導入口として用いた。

0127

<2.第2の電極対の間のギャップの形状およびサイズの確認>
上記<1.制御装置の作製>によって作製された制御装置の形状を確認するために、作製した制御装置を走査型電子顕微鏡にて観察した。図2に、走査型電子顕微鏡にて観察した制御装置の像の概略を示し、図3に、対向するPt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極(第2の電極対に対応)によって形成されたギャップの構造の概略を示す。

0128

図3に示すように、対向するPt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極によって形成されたギャップは、長さ(L)が約200nmであり、高さ(H)が約50nmであり、幅(W)が、約60nmであった。

0129

<3.封止状態の確認>
上記<1.制御装置の作製>によって作製された制御装置が、PDMSブロックによって密閉されているか否かを確認した。確認の方法および結果を、図4および5を参照しながら、以下に説明する。

0130

上記<1.製造装置の作製>によって作製された製造装置の流路の両側に、TEバッファー(KCl:0.1M、tris−HCl:10mM、EDTA:1mM)溶液を導入した。TEバッファー溶液充填した後、流路を流れるイオン電流(図4のIion)を計測するためのAg/AgCl電極を流路の両側に差し込んだ。

0131

Ag/AgCl電極は、直径0.1mmのPtワイヤーにAg/AgClペースト(BAS)を塗布した後に、100℃で10分間以上加熱することで作製した。

0132

イオン電流の計測では、流路に差し込んだAg/AgCl電極の一方に直流電圧0.5V(図4のVlong)を印加し、当該電極と対をなす反対側のAg/AgCl電極に流れてくる電流(図4のIion)を、108A/Vゲインの高速電流アンプを通して高速デジタイザ(NI−PXI−5922)により1MHzのサンプリングレートで記録した。なお、当該試験では、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極には直流電圧を印加しなかった(図4のVtrans=0)。

0133

上記試験によって検出されたIionの値(図5のIion−Vlong参照)およびIsensの値(図5のIsens−Vtrans参照)を図5実線にて示す。

0134

一方、Iionの値は、論理的に、以下の式(1)にて導き出すことができる。つまり、
Iion=NKCl×μ×Vlong×A/L・・・(1)
上記式(1)において、NKClはイオン濃度を示し、μはイオン移動度を示し、Aはチャンネル断面積を示し(具体的には、図3におけるH×Wに対応)、Lはチャンネルの長さ(具体的には、図3におけるLに対応)を示している。そして、当該式(1)によって論理的に導き出されるIionの値を、図5破線にて示す。

0135

図5から明らかなように、実際の試験にて検出されたIionの値と、論理式によって導き出されたIionの値とが、概ね一致した。このことは、<1.制御装置の作製>によって作製された制御装置の流路が、PDMSブロックによって密閉されていることを示している。

0136

<4.移動速度の測定>
<4−1.測定方法
Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極に直流電圧を印加しない場合と、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極に直流電圧を印加した場合とで、流路を移動する物質の移動速度にどのような変化が生じるか、検討を行った。

0137

上記<1.制御装置の作製>によって作製された制御装置の流路に対して、PDMSブロックに空けられた孔を介して、生体分子を含んだ溶液を流路内に流し込んだ。

0138

具体的には、流路の片側には、10nMの濃度のλ−DNA(タカラバイオ)を含んだTEバッファー(KCl:0.1M、tris−HCl:10mM、EDTA:1mM)溶液を導入し、流路の反対側にはλ−DNAを含まないTEバッファー(KCl:0.1M、tris−HCl:10mM、EDTA:1mM)溶液を導入した。

0139

TEバッファー溶液を充填した後、Ag/AgCl電極を流路の両側に差し込んだ。Ag/AgCl電極は、直径0.1mmのPtワイヤーにAg/AgClペースト(BAS)を塗布した後に、100℃で10分間以上加熱することで作製した。

0140

イオン電流の計測では、流路に差し込んだAg/AgCl電極の一方に直流電圧0.5Vを印加し、当該電極と対をなす反対側のAg/AgCl電極に流れてくる電流を、108A/Vゲインの高速電流アンプを通して高速デジタイザ(NI−PXI−5922)により1MHzのサンプリングレートで記録した。

0141

<4−2.測定結果
<A>結果1
Ag/AgCl電極間の電圧をVlong=0.5Vとし、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間の電圧をVtrans=0Vとして、λ−DNAが存在する条件下で流路を流れるイオン電流(Iion)の時間変化を計測した。なお、対照として、λ−DNAが存在しない条件下でも、流路を流れるイオン電流(Iion)の時間変化を計測した。

0142

図6の(a)に、上記試験の結果を示す。図6の(a)の上側のデータは、λ−DNAが存在しない条件下で計測したイオン電流(Iion)の値を示しており、図6の(a)の下側のデータは、λ−DNAが存在する条件下で計測したイオン電流(Iion)の値を示している。

0143

図6の(a)の上側のデータに示すように、λ−DNAが存在しない条件下で計測したイオン電流(Iion)の値は、変化を示さず、図6の(a)の下側のデータに示すように、λ−DNAが存在する条件下で計測したイオン電流(Iion)の値は、スパイク状に減少する傾向を示した。

0144

上述したスパイク状の電流の変化は、1分子のλ−DNAが、対向するPt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極によって形成されたギャップの部分を通過する際に、当該ギャップに沿ったイオンの流れを阻害するために生じるものである。上記スパイク状の電流の変化を拡大した図を、図6の(b)に示す。

0145

図6の(b)に示すように、λ−DNAが、対向するPt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極によって形成されたギャップの間を通過している間(時間にしてtd(s)の間)、Iionの値がΔI(nA)だけ低下する。このことは、td(s)を測定すれば、λ−DNAの速度の大小を判定できることを示している。つまり、同一の物質におけるtd(s)を比較した場合、td(s)の値が大きくなればなるほど、物質の移動速度が遅くなっていることを示している。

0146

なお、図6の(b)から、Ag/AgCl電極間の電圧をVlong=0.5Vとし、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間の電圧をVtrans=0Vとした場合、平均的なtd(s)の値は、0.0005秒であった。

0147

<B>結果2
Ag/AgCl電極間の電圧をVlong=0.5Vとし、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間の電圧をVtrans=0.5Vとして、λ−DNAが存在する条件下で流路を流れるイオン電流(Iion)の時間変化を計測した。

0148

図7の(a)および(b)に、上記試験の結果を示す。なお、図7の(b)は、図6の(a)のデータの一部を拡大したものである。

0149

図7の(a)および(b)に示すように、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加した場合には、2種類のスパイク状の電流の変化が観察された。これらのスパイク状の電流の変化について平均的なtd(s)の値を算出すると、各々、0.006秒および0.2秒であった。当該データは、物質の移動速度が、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加しない場合の移動速度の約1/10または約1/400に減速したことを示している。

0150

Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加しない場合のtd(s)の値の分布、および、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加した場合のtd(s)の値の分布を、図8に示す。なお、図8の「I」および「II」にて示されるtd(s)の値の分布が、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加した場合のtd(s)の値の分布である。

0151

図7および図8から、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加した場合には、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加しない場合よりも、物質の移動速度を遅くできることが明らかになった。更に、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に電圧を印加した場合には、物質の速度を2種類の移動速度に調節し得ることが明らかになった。

0152

なお、上述した2種類の速度は、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極間に印加された電圧によって生じる、流路の壁面の帯電状態に起因するものであると考えられる。

0153

図1に示すように、正極側の流路の壁面には、負に帯電したDNAが静電的に引き寄せられ、DNAと電極との間の静電力によってDNAの電気泳動速度が遅くなる。一方、負極側の流路の壁面の近傍には溶液中の正イオン(K+)の電気二重層が形成されるため、DNAの泳動速度とは逆方向の電気浸透流が引き起こされる。当該電気浸透流の影響により、DNAの泳動速度が遅くなる。そして、DNAが正極または負極のどちら側を流れるかによって、2種類の速度分布観測できたと考えられる。

0154

ここで、正極側で生じる電極と分子との間の強い静電相互作用、および、付随する金とDNAとの間の分子間力による効果は大きなものであることが予測されることから、約1/400という大きな速度の減少は、DNAが、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極の正極側を流れる場合に生じる現象であると考えられ、約1/10という速度の減少は、DNAが、Pt/Au/Pt/SiO2ナノギャップ電極の負極側を流れる場合に生じる現象であると考えられる。

実施例

0155

本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。

0156

本発明は、物質の移動速度を精度良く制御する必要がある分野に利用することができる。例えば、本発明は、米国立衛生研究所(NIH)が進める次々世代シーケンサーに利用することが可能であって、PCRによるDNAの増幅およびDNAの化学修飾が不要な次々世代シーケンサーに応用することができる。また、本発明は、インフルエンザウイルスアレルゲンなどの生体分子を1分子にて検出する高感度センサーへ応用することができる。

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