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技術 リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池

出願人 JX金属株式会社
発明者 岡本健太郎
出願日 2012年1月26日 (8年9ヶ月経過) 出願番号 2012-014169
公開日 2013年8月8日 (7年2ヶ月経過) 公開番号 2013-152911
状態 特許登録済
技術分野 電池の電極及び活物質
主要キーワード 空気雰囲気炉 CO法 分離粒子径 アクアライト カールフィッシャー試薬 ファラデーの法則 焼成原料 微小粒
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年8月8日)のものです。
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課題

良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供する。

解決手段

リチウムイオン電池用正極活物質は、組成式:Li(LixNi1-x-yMy)O2+α(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)で表され、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppm以下である。

概要

背景

リチウムイオン電池正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等であり、特性改善高容量化サイクル特性保存特性内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用パソコン用とは異なった特性が求められている。

電池特性の改善には、従来、種々の方法が用いられており、例えば特許文献1には、
LixNi1-yMyO2-δ
(0.8≦x≦1.3、0<y≦0.5であり、Mは、Co、Mn、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Al、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、B、Ca、Sc及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種元素を示し、δは酸素欠損又は酸素過剰量に相当し、−0.1<δ<0.1を表す。)の組成で表されるリチウムニッケル複合酸化物分級機に通し、粒子径の大きい物と小さい物とに平衡分離粒子径Dh=1〜10μmで分離し、粒子径の大きい物と小さい物を、重量比で0:100〜100:0で配合することを特徴とするリチウム二次電池用正極材料の製造方法が開示されている。そして、これによれば、レート特性と容量のさまざまなバランスのリチウム二次電池用正極材料を容易に製造できる、と記載されている。

概要

良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供する。リチウムイオン電池用正極活物質は、組成式:Li(LixNi1-x-yMy)O2+α(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)で表され、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppm以下である。なし

目的

本発明は、良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

組成式:Li(LixNi1-x-yMy)O2+α(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)で表され、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppm以下であるリチウムイオン電池用正極活物質

請求項2

300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が800ppm以下である請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項3

前記Mが、Mn及びCoから選択される1種以上である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項4

前記組成式において、α>0.05である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項5

前記組成式において、α>0.1である請求項4に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項6

150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下である請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項7

150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が200ppm以下である請求項6に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項8

300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量と、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量との差が100〜500ppmである請求項1〜7のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項9

300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量と、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量との差が100〜130ppmである請求項8に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項10

湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1500ppm以下である請求項1〜9のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項11

湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1200ppm以下である請求項10に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項12

露点−80℃で24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下である請求項1〜11のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項13

露点−80℃で24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が200ppm以下である請求項12に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。

請求項14

請求項1〜13のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極

請求項15

請求項14に記載のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池

技術分野

背景技術

0002

リチウムイオン電池の正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等であり、特性改善高容量化サイクル特性保存特性内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用パソコン用とは異なった特性が求められている。

0003

電池特性の改善には、従来、種々の方法が用いられており、例えば特許文献1には、
LixNi1-yMyO2-δ
(0.8≦x≦1.3、0<y≦0.5であり、Mは、Co、Mn、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Al、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、B、Ca、Sc及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種元素を示し、δは酸素欠損又は酸素過剰量に相当し、−0.1<δ<0.1を表す。)の組成で表されるリチウムニッケル複合酸化物分級機に通し、粒子径の大きい物と小さい物とに平衡分離粒子径Dh=1〜10μmで分離し、粒子径の大きい物と小さい物を、重量比で0:100〜100:0で配合することを特徴とするリチウム二次電池用正極材料の製造方法が開示されている。そして、これによれば、レート特性と容量のさまざまなバランスのリチウム二次電池用正極材料を容易に製造できる、と記載されている。

先行技術

0004

特許第4175026号公報

発明が解決しようとする課題

0005

特許文献1に記載のリチウムニッケル複合酸化物は、その組成式中酸素量が過剰のものであるが、それでもなお高品質のリチウムイオン電池用正極活物質としては改善の余地がある。

0006

そこで、本発明は、良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、鋭意検討した結果、正極活物質の酸素量と電池特性との間に密接な相関関係があることを見出した。すなわち、正極活物質の酸素量がある値以上であるとき、良好な電池特性が得られることを見出した。
また、正極活物質の水分含有量、さらには吸湿量と電池特性との間に密接な相関関係があることを見出した。すなわち、正極活物質の水分含有量がある値以下であるとき、さらには正極活物質の吸湿量がある値以下であるとき、特に良好な電池特性が得られることを見出した。

0008

上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、
組成式:Li(LixNi1-x-yMy)O2+α
(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)
で表され、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppm以下であるリチウムイオン電池用正極活物質である。

0009

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は一実施形態において、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が800ppm以下である。

0010

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は別の実施形態において、Mが、Mn及びCoから選択される1種以上である。

0011

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、組成式において、α>0.05である。

0012

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、組成式において、α>0.1である。

0013

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下である。

0014

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が200ppm以下である。

0015

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量と、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量との差が100〜500ppmである。

0016

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量と、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量との差が100〜130ppmである。

0017

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1500ppm以下である。

0018

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1200ppm以下である。

0019

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、露点−80℃で24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下である。

0020

本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は更に別の実施形態において、露点−80℃で24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が200ppm以下である。

0021

本発明は、別の側面において、本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極である。

0022

本発明は、更に別の側面において、本発明に係るリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池である。

発明の効果

0023

本発明によれば、良好な電池特性を有するリチウムイオン電池用正極活物質を提供することができる。

0024

(リチウムイオン電池用正極活物質の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の材料としては、一般的なリチウムイオン電池用正極用の正極活物質として有用な化合物を広く用いることができるが、特に、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等のリチウム含有遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。このような材料を用いて作製される本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、
組成式:Li(LixNi1-x-yMy)O2+α
(前記式において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上であり、0≦x≦0.1であり、0<y≦0.7であり、α>0である。)
で表される。

0025

本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、酸素が組成式において上記のようにO2+α(α>0)と示され、過剰に含まれており、リチウムイオン電池に用いた場合、容量、レート特性及び容量保持率等の電池特性が良好となる。ここで、αについて、好ましくはα>0.05であり、より好ましくはα>0.1である。

0026

本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、300℃でカールフィッシャー滴定(JIS K0113電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則)により測定した水分含有量が1100ppm以下であるリチウムイオン電池用正極活物質である。カールフィッシャー法とは下記式のように水と選択的に、且つ、定量的に反応するカールフィッシャー試薬ヨウ素、二酸化硫黄塩基、及びアルコール等の溶剤によって構成)を用いて水分を測定する方法である。
I2+SO2+3Base+ROH+H2O→2Base+HI+Base+HSO4R
ヨウ化物イオン、二酸化硫黄、塩基及びアルコール等の溶剤を主成分とする電解液試料を加えて電解酸化をすると、次式のようにヨウ素が発生し、直ちにカールフィッシャー反応が起きる。
2I2-−2e→I2
ヨウ素は「ファラデーの法則」にもとづき、電気量に比例して生成されるため、電解酸化に要した電気量からただちに水分量が求められる(水1mg=10.71クーロン)。
リチウムイオン電池用正極活物質は、所定量を超えた水分量を含有していると、それを用いたリチウムイオン電池の電池特性が不良となる。本発明のリチウムイオン電池用正極活物質のように、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppm以下であれば、それを用いたリチウムイオン電池のサイクル特性、高温動作及び保管特性といった電池特性が良好となる。また、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量は、好ましくは800ppm以下、より好ましくは300ppm以下である。

0027

本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、更に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下であるのが好ましい。150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下であれば、それを用いたリチウムイオン電池のサイクル特性、高温動作及び保管特性といった電池特性が更に良好となる。また、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは120ppm以下である。

0028

本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量と、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量との差が100〜500ppmであるのが好ましい。これらの水分含有量の差が100〜500ppmであれば、当該正極活物質を用いたリチウムイオン電池のサイクル特性が良好となる。また、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量と、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量との差は、より好ましくは100〜170ppmであり、更により好ましくは100〜130ppmである。

0029

本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1500ppm以下であるのが好ましい。正極活物質をこのような性質のものにすることで、湿度の高い空間で保管されたとしても吸湿し難く、水分含有量を良好に抑制することができる。また、湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1200ppm以下であるのがより好ましく、700ppm以下であるのが更により好ましい。

0030

本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、露点−80℃で24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が300ppm以下であるのが好ましい。露点−80℃で測定しているのは、測定環境の水分量に影響されないようにするためである。正極活物質をこのような性質のものにすることで、露点から80℃低い空間で保管されたとしても吸湿し難く、水分含有量を良好に抑制することができる。また、露点−80℃で24時間放置した後に、150℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が200ppm以下であるのがより好ましく、120ppm以下であるのが更により好ましい。

0031

リチウムイオン電池用正極活物質は、一次粒子、一次粒子が凝集して形成された二次粒子、又は、一次粒子及び二次粒子の混合物で構成されている。リチウムイオン電池用正極活物質は、その一次粒子又は二次粒子の平均粒径が2〜15μmであるのが好ましい。
平均粒径が2μm未満であると集電体への塗布が困難となる。平均粒径が15μm超であると充填時に空隙が生じやすくなり、充填性が低下する。また、平均粒径は、より好ましくは3〜10μmである。

0032

(リチウムイオン電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤アルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を備えている。

0033

(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
まず、金属塩溶液を作製する。当該金属は、Ni、及び、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Bi、Sn、Mg、Ca、B及びZrから選択される1種以上である。また、金属塩硫酸塩、塩化物硝酸塩酢酸塩等であり、特に硝酸塩が好ましい。これは、焼成原料中に不純物として混入してもそのまま焼成できるため洗浄工程が省けることと、硝酸塩が酸化剤として機能し、焼成原料中の金属の酸化を促進する働きがあるためである。金属塩に含まれる各金属を所望のモル比率となるように調整しておく。これにより、正極活物質中の各金属のモル比率が決定する。

0034

次に、炭酸リチウムを純水に懸濁させ、その後、上記金属の金属塩溶液を投入して金属炭酸塩溶液スラリーを作製する。このとき、スラリー中に微小粒リチウム含有炭酸塩析出する。なお、金属塩として硫酸塩や塩化物等熱処理時にそのリチウム化合物が反応しない場合は飽和炭酸リチウム溶液で洗浄した後、濾別する。硝酸塩や酢酸塩のように、そのリチウム化合物が熱処理中にリチウム原料として反応する場合は洗浄せず、そのまま濾別し、乾燥することにより焼成前駆体として用いることができる。
次に、濾別したリチウム含有炭酸塩を乾燥することにより、リチウム塩複合体(リチウムイオン電池正極材用前駆体)の粉末を得る。

0035

次に、所定の大きさの容量を有する焼成容器を準備し、この焼成容器にリチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末を充填する。次に、リチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末が充填された焼成容器を、焼成炉移設し、焼成を行う。焼成は、酸素雰囲気下で所定時間加熱保持することにより行う。また、101〜202KPaでの加圧下で焼成を行うと、さらに組成中の酸素量が増加するため、好ましい。
その後、焼成容器から粉末を取り出し、市販の解砕装置等を用いて解砕を行うことにより正極活物質の粉体を得る。このときの解砕は、微粉がなるべく生じないように、具体的には粒径4μm以下の微粉が体積分率で10%以下となるように、または、粉体の比表面積が0.40〜0.70m2/gとなるように、適宜解砕強度及び解砕時間を調整して行う。
このように解砕時の微粉の発生を制御することにより、体積当たりの粉末の表面積が減少するため、粉末の空気に露出する面積を抑制することができる。従って、前駆体の粉末の保管時等における吸湿を良好に抑制することができる。

0036

以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。

0037

(実施例1〜17)
まず、表1に記載の投入量の炭酸リチウムを純水3.2リットルに懸濁させた後、金属塩溶液を4.8リットル投入した。ここで、金属塩溶液は、各金属の硝酸塩の水和物を、各金属が表1に記載の組成比になるように調整し、また全金属モル数が14モルになるように調整した。
なお、炭酸リチウムの懸濁量は、製品リチウムイオン二次電池正極材料、すなわち正極活物質)をLi(LixNi1-x-yMy)O2+αでxが表1の値となる量であって、それぞれ次式で算出されたものである。
W(g)=73.9×14×(1+0.5{(1+X)/(1−X)}×A
上記式において、「A」は、析出反応として必要な量の他に、ろ過後の原料残留する炭酸リチウム以外のリチウム化合物によるリチウムの量をあらかじめ懸濁量から引いておくために掛け数値である。「A」は、硝酸塩や酢酸塩のように、リチウム塩が焼成原料として反応する場合は0.9であり、硫酸塩や塩化物のように、リチウム塩が焼成原料として反応しない場合は1.0である。
この処理により溶液中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出したが、この析出物を、フィルタープレスを使用して濾別した。
続いて、析出物を乾燥してリチウム含有炭酸塩(リチウムイオン電池正極材用前駆体)を得た。
次に、焼成容器を準備し、この焼成容器内にリチウム含有炭酸塩を充填した。次に、焼成容器を、大気圧下、酸素雰囲気炉に入れて、表1に記載の焼成温度で10時間加熱保持した後冷却して酸化物を得た。
次に、パルベライザー粉砕機を用いて、解砕後の粒径3μm以下の微粉が所定の体積分率となるように、得られた酸化物を解砕し、リチウムイオン二次電池極材の粉末を得た。

0038

(実施例18)
実施例18として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を塩化物とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1〜17と同様の処理を行った。

0039

(実施例19)
実施例19として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を硫酸塩とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1〜17と同様の処理を行った。

0040

(実施例20)
実施例20として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、焼成を大気圧下ではなく120KPaの加圧下で行った以外は、実施例1〜17と同様の処理を行った。

0041

(実施例21)
実施例21として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、解砕工程を湿度60%以下という雰囲気で行った以外は、実施例1〜17と同様の処理を行った。

0042

(比較例1〜3)
比較例1〜3として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、最後の酸化物の解砕について実施例1〜17のような調整を行わない以外は、実施例1〜17と同様の処理を行った。

0043

(比較例4〜6)
比較例4〜6として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、酸素雰囲気炉ではなく空気雰囲気炉で焼成工程を行った点以外は、比較例1と同様の処理を行った。

0044

(評価)
−正極材組成の評価−
各正極材中金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成比(モル比)を算出した。また、酸素含有量はLECO法で測定しαを算出した。これらの数値は表1に記載の通りとなった。

0045

−平均粒径の評価−
各正極材の粉末を採取し、平均粒径を粒度分布測定機によって測定した。

0046

−水分含有量の評価(1)−
各正極材の粉末を密閉状態で室温においたデシケーター内で保管しておき、適宜取り出して、カールフィッシャー滴定により、気化装置流量計を見ながら滴定速度を0.15mL/分に調整して、300℃及び150℃でそれぞれ水分含有量を測定した。当該測定は窒素ガスを満たしたグローブボックス中で行った。電解セルには、脱水エタノール50mL、アクアライトRSA(関東化学社製)100mLを注入した。また、対極セルにはアクアライトCN(関東化学社製)15mLを注入した。

0047

−水分含有量の評価(2)−
各正極材の粉末を湿度50%且つ25℃の大気中に24時間放置し、直ちにカールフィッシャー滴定により、気化装置の流量計を見ながら滴定速度を0.15mL/分に調整して150℃で水分含有量を測定した。当該測定は窒素ガスを満たしたグローブボックス中で行った。電解セルには、脱水エタノール50mL、アクアライトRSA(関東化学社製)100mLを注入した。また、対極セルにはアクアライトCN(関東化学社製)15mLを注入した。

0048

−水分含有量の評価(3)−
各正極材の粉末を露点−80℃で24時間放置し、直ちにカールフィッシャー滴定により、気化装置の流量計を見ながら滴定速度を0.15mL/分に調整して150℃で水分含有量を測定した。当該測定は窒素ガスを満たしたグローブボックス中で行った。電解セルには、脱水エタノール50mL、アクアライトRSA(関東化学社製)100mL注入した。また、対極セルにはアクアライトCN(関東化学社製)15mLを注入した。

0049

−電池特性の評価−
各正極材と、導電材と、バインダーとを85:8:7の割合で量し、バインダーを有機溶媒(N−メチルピロリドン)に溶解したものに、正極材料と導電材とを混合してスラリー化し、Al箔上に塗布して乾燥後にプレスして正極とした。続いて、対極をLiとした評価用の2032型コインセルを作製し、電解液に1M−LiPF6をEC−DMC(1:1)に溶解したものを用いて、電流密度0.2Cの際の放電容量を測定した。また電流密度0.2Cのときの電池容量に対する電流密度2Cのときの、放電容量の比を算出してレート特性を得た。さらに、容量保持率は、室温で1Cの放電電流で得られた初期放電容量と100サイクル後の放電容量を比較することによって測定した。
これらの結果を表1及び2に示す。

0050

0051

実施例

0052

実施例1〜21は、いずれも本発明に規定の組成が得られ、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppm以下であり、放電容量、レート特性、容量保持率がいずれも良好であった。
比較例1、3は、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppmを超えており、レート特性、容量保持率が不良であった。
比較例2、4、5、6は、本発明に規定の組成が得られず、300℃でカールフィッシャー滴定により測定した水分含有量が1100ppmを超えており、レート特性、容量保持率が不良であった。

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