図面 (/)

技術 冷間圧延方法及び金属板の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 藤田昇輝
出願日 2011年11月8日 (9年1ヶ月経過) 出願番号 2011-244158
公開日 2013年5月23日 (7年7ヶ月経過) 公開番号 2013-099757
状態 特許登録済
技術分野 圧延ロール・圧延スタンド・圧延機の駆動 金属圧延一般 圧延の制御 圧延機に特に連結された素材の表面処理装置
主要キーワード レイノルズ方程式 流量バルブ 冷却用クーラント ノズルスプレー クーラント温度 粘度係数 油膜厚み 発生分布
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年5月23日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (4)

課題

ハイブリッド潤滑システムが設けられた冷間タンデム圧延において、高速圧延に対応可能な冷間圧延の技術を提供する。

解決手段

接圧スタンドにおける圧延実績と当該圧延スタンド入側に設けられた第2圧延油供給系統より供給されたエマルション圧延油供給量から隣接する圧延スタンドでの摩擦係数圧延後の鋼板表面粗さを逆算して、圧延後の鋼板表面粗さを最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件として予測する。また、予め設定された最終圧延スタンド及び隣接する圧延スタンドとの摩擦係数差の絶対値より最終圧延スタンドでの目標摩擦係数を設定する。最終圧延スタンドでの摩擦係数が目標摩擦係数となるように、最終圧延スタンド入側の第2圧延油供給系統から供給される第2のエマルション圧延油を供給する条件としての鋼板1表面粗さに基づき第2のエマルション圧延油の供給量をフィードフォワード制御する。

概要

背景

圧延材として鋼板冷間圧延する際には、圧延中の鋼板とロールとの間に生ずる摩擦を低減させるための潤滑剤として潤滑油圧延油)が用いられる。またこの潤滑油は、圧延時に生ずる摩擦発熱および加工発熱により高温となったロールならびに鋼板の冷却を行うための冷却剤としての役割も有する。そして、通常の冷間圧延においては、上記潤滑油としてエマルション圧延油(以下、単に「エマルション」とも呼ぶ)が用いられる。なお、エマルションとは、圧延油の粒子が水に安定して懸濁した状態の混合液体をいう。そのエマルションは、その濃度及び平均粒径特徴づけられる。エマルションの濃度とは、エマルション全質量中の油分質量の比率である。平均粒径とは、エマルション中の圧延油の平均粒子径である。また、エマルションを作成するためには界面活性剤を添加する。界面活性剤の添加量は、圧延油量に対する質量濃度対油濃度)で示される所定量である。そして、界面活性剤の添加後に、攪拌機及びポンプによるせん断を加えることによりエマルションの平均粒径を調整する。

冷間圧延時における上記エマルション圧延油の供給方式としては、エマルション圧延油を循環使用しない直接給油方式(ダイレクト方式)と、エマルション圧延油を循環させながら潤滑と冷却を行う循環給油方式リサーキュレーション方式)とが知られている。
ここで、循環給油方式とは、エマルション圧延油を循環使用する方式をいう。なお、このエマルション圧延油は、通常、圧延油を濃度1〜5質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルション状態のエマルション圧延油である。この循環給油方式では、各圧延スタンドロールバイト入側において潤滑のための圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、圧延ロール冷却用の圧延油を供給するための供給手段を備えるのが通常であり、上記潤滑用と冷却用とを同一のエマルション圧延油によって行うものである。

一方で、近年、地球環境問題の高まりやユーザーニーズ多様化を受け、冷間圧延製品高強度化薄物化(ゲージダウン)がますます進行している。特に単位時間当たりの圧延重量が低くなりがちな、圧延後の板厚が0.3mm以下といった薄物材に対し2000mpm以上の高速圧延指向されている。しかしこの場合には、従来の循環給油方式では潤滑不足となり、チャタリングと呼ばれるロールとその駆動系の捻り振動障害になっている。

従来、潤滑不足に起因した高速圧延域でのチャタリングを解消する手段として、特許文献1に示すようなハイブリッド潤滑方式や特許文献2に示すような隣接する圧延スタンド摩擦係数を適正範囲に制御する方法が知られている。ハイブリッド潤滑方式では、循環給油方式と併行して直接給油方式を採用する。

概要

ハイブリッド潤滑システムが設けられた冷間タンデム圧延において、高速圧延に対応可能な冷間圧延の技術を提供する。隣接圧スタンドにおける圧延実績と当該圧延スタンド入側に設けられた第2圧延油供給系統より供給されたエマルション圧延油の供給量から隣接する圧延スタンドでの摩擦係数と圧延後の鋼板表面粗さを逆算して、圧延後の鋼板表面粗さを最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件として予測する。また、予め設定された最終圧延スタンド及び隣接する圧延スタンドとの摩擦係数差の絶対値より最終圧延スタンドでの目標摩擦係数を設定する。最終圧延スタンドでの摩擦係数が目標摩擦係数となるように、最終圧延スタンド入側の第2圧延油供給系統から供給される第2のエマルション圧延油を供給する条件としての鋼板1表面粗さに基づき第2のエマルション圧延油の供給量をフィードフォワード制御する。

目的

本発明は、上記のような点を鑑みてなされたものであり、ハイブリッド潤滑システムが設けられた冷間タンデム圧延において、高速圧延に対応可能な冷間圧延の技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

冷間タンデム圧延機圧延スタンド圧延油を供給する圧延油供給系統として、循環タンクに貯めた第1のエマルション圧延油循環供給する第1圧延油供給系統と、上記第1のエマルション圧延油より高濃度の第2のエマルション圧延油を供給する第2圧延油供給系統と、を備え、最終圧延スタンド上流に位置する上流側圧延スタンドでの摩擦係数と当該上流側圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件とから、最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件を予測し、その予測される第2のエマルション圧延油の供給条件から計算される最終圧延スタンドの摩擦係数が設定した目標摩擦係数となるように、上記最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給量フィードフォワード制御することを特徴とする冷間圧延方法

請求項2

上記予測される第2のエマルション圧延油の供給条件は、上記上流側圧延スタンドでの圧延後の圧延材の表面粗さを含み、上記目標摩擦係数は、上流側圧延スタンドでの摩擦係数に基づき設定されることを特徴とする請求項1に記載した冷間圧延方法。

請求項3

最終圧延スタンドに圧延材が噛み込むと、最終圧延スタンドでの摩擦係数を推定し、推定した最終圧延スタンドでの摩擦係数からフィードバック制御の制御量を求め、その求めたフィードバック制御の制御量で上記フィードフォワード制御の制御量を補正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した冷間圧延方法。

請求項4

上記目標摩擦係数は、上流側圧延スタンドの摩擦係数と最終圧延スタンドの摩擦係数との摩擦係数差の絶対値が0以上、0.01以下となるように設定されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した冷間圧延方法。

請求項5

請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷間圧延方法により、金属板とする圧延材を冷間圧延して金属板を製造することを特徴とする金属板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、冷間タンデム圧延機圧延スタンド圧延油を供給する圧延油供給系統として、循環タンクに貯めたエマルション圧延油循環供給する第1圧延油供給系統と、上記第1圧延油供給系統でのエマルション圧延油より高濃度のエマルション圧延油を供給する第2圧延油供給系統と、を備える冷間タンデム圧延機を用いて圧延する冷間圧延方法及びその冷間圧延方法を使用した金属板の製造方法に関する。

背景技術

0002

圧延材として鋼板冷間圧延する際には、圧延中の鋼板とロールとの間に生ずる摩擦を低減させるための潤滑剤として潤滑油(圧延油)が用いられる。またこの潤滑油は、圧延時に生ずる摩擦発熱および加工発熱により高温となったロールならびに鋼板の冷却を行うための冷却剤としての役割も有する。そして、通常の冷間圧延においては、上記潤滑油としてエマルション圧延油(以下、単に「エマルション」とも呼ぶ)が用いられる。なお、エマルションとは、圧延油の粒子が水に安定して懸濁した状態の混合液体をいう。そのエマルションは、その濃度及び平均粒径特徴づけられる。エマルションの濃度とは、エマルション全質量中の油分質量の比率である。平均粒径とは、エマルション中の圧延油の平均粒子径である。また、エマルションを作成するためには界面活性剤を添加する。界面活性剤の添加量は、圧延油量に対する質量濃度対油濃度)で示される所定量である。そして、界面活性剤の添加後に、攪拌機及びポンプによるせん断を加えることによりエマルションの平均粒径を調整する。

0003

冷間圧延時における上記エマルション圧延油の供給方式としては、エマルション圧延油を循環使用しない直接給油方式(ダイレクト方式)と、エマルション圧延油を循環させながら潤滑と冷却を行う循環給油方式リサーキュレーション方式)とが知られている。
ここで、循環給油方式とは、エマルション圧延油を循環使用する方式をいう。なお、このエマルション圧延油は、通常、圧延油を濃度1〜5質量%程度に希釈し、界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルション状態のエマルション圧延油である。この循環給油方式では、各圧延スタンドロールバイト入側において潤滑のための圧延油を供給するための供給手段を備えると共に、圧延ロール冷却用の圧延油を供給するための供給手段を備えるのが通常であり、上記潤滑用と冷却用とを同一のエマルション圧延油によって行うものである。

0004

一方で、近年、地球環境問題の高まりやユーザーニーズ多様化を受け、冷間圧延製品高強度化薄物化(ゲージダウン)がますます進行している。特に単位時間当たりの圧延重量が低くなりがちな、圧延後の板厚が0.3mm以下といった薄物材に対し2000mpm以上の高速圧延指向されている。しかしこの場合には、従来の循環給油方式では潤滑不足となり、チャタリングと呼ばれるロールとその駆動系の捻り振動障害になっている。

0005

従来、潤滑不足に起因した高速圧延域でのチャタリングを解消する手段として、特許文献1に示すようなハイブリッド潤滑方式や特許文献2に示すような隣接する圧延スタンドの摩擦係数を適正範囲に制御する方法が知られている。ハイブリッド潤滑方式では、循環給油方式と併行して直接給油方式を採用する。

先行技術

0006

特許第4654724号公報
特許第3368841号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上記従来技術では、循環給油方式で供給する第1のエマルション圧延油とは異なる第2の系統から第2のエマルション圧延油を供給し、その第2のエマルション圧延油の供給流量を調整することで、その下流側及び隣接する圧延スタンドにおける潤滑状態を調整する技術である。しかしながら、上記従来技術に記載のように、目標の潤滑状態が得られるように第2のエマルション圧延油の流量をフィードバック制御した場合、所望の潤滑状態が反映されるまでには制御の応答及び流量バルブ開度応答に伴うむだ時間が発生する。特に圧延速度が速い後段圧延スタンドではむだ時間に伴う応答遅れの影響が顕著となるため、必ずしも十分にチャタリングの発生を解消することができない場合があった。

0008

本発明は、上記のような点を鑑みてなされたものであり、ハイブリッド潤滑システムが設けられた冷間タンデム圧延において、高速圧延に対応可能な冷間圧延の技術を提供することを目的としている。

課題を解決するための手段

0009

本発明者等は、前述したようなハイブリッド潤滑システムを利用した高速圧延に際し、第2のエマルション圧延油の流量制御遅れに伴うチャタリングを抑制する技術について鋭意検討した。
そして、チャタリングの発生源となるタンデム圧延機最終圧延スタンド、及び圧延スタンド間張力を介して影響を与える隣接圧延スタンドでの潤滑状態のバランスを適切に保つことが必要であるとの知見に基づき、本発明者らは、次のように第2のエマルション圧延油の供給量を制御することで、隣接する2つの圧延スタンドにおける摩擦係数のバランスを適切に保ち、チャタリングを抑制できるという結論に至った。

0010

すなわち、本発明の一態様では、最終圧延スタンドに隣接する圧延スタンドにおける圧延実績と当該圧延スタンド入側に設けられた第2圧延油供給系統より供給されたエマルション圧延油の供給量から隣接する圧延スタンドでの摩擦係数と圧延後の鋼板表面粗さを逆算して、圧延後の鋼板表面粗さを、最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件として予測する。また、予め設定された最終圧延スタンド及び隣接する圧延スタンドとの摩擦係数差より最終圧延スタンドでの目標摩擦係数を設定する。そして、最終圧延スタンドでの摩擦係数が目標摩擦係数となるように、最終圧延スタンド入側の第2圧延油供給系統から供給される第2のエマルション圧延油を供給する条件としての鋼板表面粗さに基づき、第2のエマルション圧延油の供給量をフィードフォワード制御する。

0011

そして、上記課題を解決するために、本発明における請求項1に記載した発明は、冷間タンデム圧延機の圧延スタンドに圧延油を供給する圧延油供給系統として、循環タンクに貯めた第1のエマルション圧延油を循環供給する第1圧延油供給系統と、上記第1のエマルション圧延油より高濃度の第2のエマルション圧延油を供給する第2圧延油供給系統と、を備え、
最終圧延スタンドの上流に位置する上流側圧延スタンドでの摩擦係数と当該上流側圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件とから、最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件を予測し、
その予測される第2のエマルション圧延油の供給条件から計算される最終圧延スタンドの摩擦係数が設定した目標摩擦係数となるように、上記最終圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給量をフィードフォワード制御することを特徴とする。

0012

次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記予測される第2のエマルション圧延油の供給条件は、上記上流側圧延スタンドでの圧延後の圧延材の表面粗さを含み、
上記目標摩擦係数は、上流側圧延スタンドでの摩擦係数に基づき設定されることを特徴とする。

0013

次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、最終圧延スタンドに圧延材が噛み込むと、最終圧延スタンドでの摩擦係数を推定し、推定した最終圧延スタンドでの摩擦係数からフィードバック制御の制御量を求め、その求めたフィードバック制御の制御量で上記フィードフォワード制御の制御量を補正することを特徴とする。

0014

次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記目標摩擦係数は、上流側圧延スタンドの摩擦係数と最終圧延スタンドの摩擦係数との摩擦係数差の絶対値が0以上、0.01以下となるように設定されることを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷間圧延方法により、金属板とする圧延材を冷間圧延して金属板を製造することを特徴とする金属板の製造方法を提供するものである。

発明の効果

0015

請求項1又は請求項2に係る発明によれば、最終圧延スタンド入側に対する第2のエマルション圧延油の流量制御を、上流側圧延スタンドでの摩擦係数と当該上流側圧延スタンド入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件とに基づきフィードフォワード制御する。これによって、最終圧延スタンドの状態から求めた摩擦係数によるフィードバック制御で発生していた、流量制御に伴うむだ時間が解消され、高速圧延域においても逐一摩擦係数のバランスを調整することができるようになる。

0016

この結果、本発明によれば、ハイブリッド潤滑システムを有したタンデム圧延機により高速圧延を行う場合においても必要とされる適切な潤滑状態を確保し続けることが可能となる。
また請求項3に係る発明によれば、最終圧延スタンドに圧延材が噛み込まれ圧延が開始された後は、最終圧延スタンドでの摩擦係数に基づく第2のエマルション圧延油のフィードバック制御とフィードフォワード制御を併用することで、より高精度にチャタリングを防止することが可能となる。

0017

又請求項4に係る発明によれば、より確実に上流側圧延スタンドでの摩擦係数と最終圧延スタンドでの摩擦係数との間のバランスを適正化することが可能となる。

図面の簡単な説明

0018

本発明の実施形態に係る冷間圧延設備概略構成を示した図である。
本発明の実施形態に係る供給制御部の構成を説明する図である。
本発明の実施形態に係る摩擦係数差の最適範囲を説明する図である。

0019

以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず冷間圧延設備その他の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における、複数の圧延スタンドを有する冷間タンデム圧延機を説明するための概要構成図である。尚、本実施形態では、圧延材として鋼板を例に挙げる。圧延材は、アルミ板その他のストリップであっても適用可能である。

0020

図1に示す冷間タンデム圧延機は、圧延材(鋼板)1の入側(図1では左側)から順に第1圧延スタンド〜第5圧延スタンド(#1STD〜#5STD)の5圧延スタンドの圧延機を有する冷間タンデム圧延機の場合を示している。また、この冷間タンデム圧延機において、隣り合う圧延スタンド間には図示しないテンションロールおよびデフロールが適宜、設置されている。圧延スタンドや鋼板の搬送装置などは特に限定されない。

0021

また本実施形態では、冷間タンデム圧延機の圧延スタンドや鋼板に圧延油を供給する圧延油供給系統として、第1圧延油供給系統2と第2圧延油供給系統12との2系統を備える。第1圧延油供給系統2は、循環タンクに貯めたエマルション圧延油(第1のエマルション圧延油)を循環供給する。一方、第2圧延油供給系統12は、上記第1のエマルション圧延油より高濃度の第2のエマルション圧延油を供給する直接給油方式となっている。

0022

第1圧延油供給系統2は、各圧延スタンド毎に、圧延スタンドの入側に潤滑用クーラントヘッダー3を配置すると共に圧延スタンドの出側に冷却用クーラントヘッダー4を配置して構成される。上記潤滑用クーラントヘッダー3及び冷却用クーラントヘッダー4は、圧延油供給ライン7を介して循環式圧延油供給タンク5に接続している。また上記圧延油供給ライン7の途中にはポンプ6が介装されている。循環式圧延油供給タンク5には、循環使用されるエマルション圧延油(第1のエマルション圧延油)11が貯蔵されている。そして、循環式圧延油供給タンク5内に貯蔵されている第1のエマルション圧延油11は、ポンプ6により圧送され圧延油供給ライン7を通じて各圧延スタンドに配置された上記各クーラントヘッダー3、4に供給される。そして、循環使用される第1のエマルション圧延油11が、それぞれの潤滑用クーラントヘッダー3及び冷却用クーラントヘッダー4にそれぞれ設けられたスプレーノズルから供給される構成となっている。

0023

このように、循環式圧延油供給タンク5内からポンプ6により圧延油供給ライン7内を圧送された第1のエマルション圧延油11は、各圧延スタンドに配置された潤滑用クーラントヘッダー3からロールバイトに向けて供給されると共に、冷却用クーラントヘッダー4からワークロールに向けて供給される。
この供給された第1のエマルション圧延油11は、鋼板1によって系外に持ち出されたり蒸発によって失われたりしたものを除いて、回収オイルパン8で回収され、戻り配管9を通じて循環式圧延油供給タンク5内に戻される。

0024

このように、第1圧延油供給系統2は、循環式圧延油供給タンク5、ポンプ6、圧延油供給ライン7、潤滑用クーラントヘッダー3、冷却用クーラントヘッダー4、回収オイルパン8、戻り配管9によって構成され、供給された第1のエマルション圧延油11を循環使用する。
なお、第1圧延油供給系統2を使用した、第1のエマルション圧延油11の各クーラントヘッダー3、4への供給は、圧延材の圧延開始時から実施されることが好ましい。これによって、各ロール及び鋼板1に対して所定の圧延油が供給された状態となる。

0025

ここで、上記第1のエマルション圧延油11は、循環式圧延油供給タンク5内に収容されている温水希釈水)と圧延油原液とを混合することで形成される。この混合される温水と圧延油原液は、攪拌機10の攪拌羽回転数を調整することによって、つまり攪拌度合を調整することで、目的とする所望の平均粒径を有する第1のエマルション圧延油11とされる。

0026

上記第1のエマルション圧延油11を構成する圧延油としては、通常の冷間圧延に用いられるものが適用できる。すなわち上記圧延油としては、例えば、天然油脂脂肪酸エステル炭化水素合成潤滑油のいずれかを基油としたものを用いることができる。さらに、これらの圧延油には、油性向上剤極圧添加剤酸化防止剤などの通常の冷間圧延油に用いられる添加剤を加えても良い。

0027

また、圧延油に添加される界面活性剤としては、イオン系、非イオン系のいずれを用いても良く、通常の循環式クーラントシステム循環式圧延油供給方式)で使用されるものを用いればよい。
そして、第1のエマルション圧延油11としては、前述したような圧延油を、好ましくは濃度1〜5質量%程度、より好ましくは濃度1.2〜3.0質量%程度に希釈し、また前述したような界面活性剤を用いて水に油が分散したO/Wエマルションにしたものが用いられる。なお、その平均粒径としては、好ましくは15μm以下、より好ましくは7〜10μm程度とする。

0028

本実施形態では、上述のように、上記第1圧延油供給系統2とは別に第2圧延油供給系統12を備える。この第2圧延油供給系統12は、潤滑ノズルヘッダー23、流量制御弁22、供給ライン21、供給ポンプ20、エマルションタンク18を備えて構成される。
上記エマルションタンク18内には、攪拌機19が配置されている。またエマルションタンク18に対し圧延油原油タンク14及び温水タンク15がエマルションタンク18に接続する。そして、圧延油原油タンク14に貯蔵されている圧延油原油、及び温水タンク15内に貯蔵されている温水が、ポンプ16、流量制御弁17を介してエマルションタンク18内へ送給されると共に、エマルションタンク18内で混合されて、第2のエマルション圧延油13となる。

0029

エマルションタンク18内のエマルション温度条件は、第1のエマルション圧延油11の条件とそれぞれ同一とすることが好ましい。またエマルションタンク18内の第2のエマルション圧延油13は、攪拌機19の攪拌羽の回転数を調整することにより平均粒径15〜30μmに調整される。エマルションタンク18内のエマルション濃度は、3〜15質量%の範囲内に調整する。

0030

そして、エマルションタンク18内の第2のエマルション圧延油13は、供給ポンプ20により、供給ライン21、流量制御弁22を経由して潤滑ノズルヘッダー23に送られる。潤滑ノズルヘッダー23は、鋼板1の上面側及び下面側の両方に分岐して配置されることで、所望の濃度の第2のエマルション圧延油13を鋼板1の表裏両面に向けて複数のスプレーノズルから噴射可能に構成されている。

0031

図1に例示する構成において、鋼板1に噴射された第2のエマルション圧延油13は、循環系統を構成する圧延油回収循環手段としての回収オイルパン8に回収される。そして、回収された第2のエマルション圧延油13は、循環使用されているエマルション圧延油11と共に、戻り配管9を経由して循環式圧延油供給タンク5内に集められて第1のエマルション圧延油となる。すなわち、回収されたエマルション圧延油11、13は、循環式圧延油供給タンク5内の攪拌機10により攪拌された後、ポンプ6および潤滑用クーラントヘッダー3のスプレーノズル部と冷却用クーラントヘッダー4のスプレーノズル部での強いせん断を繰り返し受け、循環使用される第1のエマルション圧延油11として設定された粒径まで細分化される。

0032

ここで、図1に示す冷間圧延機においては、第2圧延油供給系統12の潤滑ノズルヘッダー23を、最終圧延スタンド♯5STD及びその隣接圧延スタンド♯4STDの各入側に設けた場合を示している。他の圧延スタンドの入側に上記潤滑ノズルヘッダー23を設けても良い。各潤滑ノズルヘッダー23のノズルスプレーから供給されるエマルション圧延油の量は、個別の流量制御弁22で調整される。上記隣接圧延スタンド♯4STDは、最終圧延スタンド♯5STDの前段、つまり上流に位置する圧延スタンドである。

0033

また、潤滑ノズルヘッダー23に送られる第2のエマルション圧延油13の調整方法についても上述の方法に限定されない。例えば、第2のエマルション圧延油13の濃度調整手段として、潤滑ノズルヘッダー23の直近にてノズルミックス方式によって圧延油原油と第1のエマルション圧延油11と温水のいずれかを混合して、第2のエマルション圧延油としても良いし、エマルションタンク18内に第1のエマルション圧延油11を混合しても良い。また、第2のエマルション圧延油13の粒径調整手段として、第2のエマルション圧延油13が潤滑ノズルヘッダー23に到達する経路内にスタティックミキサーなどの機械的せん断手段や気体との混合手段を設けても良い。

0034

以上のような圧延油の供給設備においては、循環式圧延油供給方式である第1圧延油供給系統2によって、各圧延スタンドの入側及び出側において、鋼板1(ロールバイト)及びロールに対し、相対的に低濃度のエマルション圧延油を供給することで、当該鋼板1及びロールの潤滑及び冷却を実施する。なお、第1圧延油供給系統2では圧延油を循環使用するため、圧延油の原単位が低い。

0035

更に本実施形態では、直接式圧延油供給方式である第2圧延油供給系統12によって、相対的に圧延速度が高くなる後段の圧延スタンドである最終圧延スタンド♯5STD及びその隣接圧延スタンド♯4STDの各入側において、第1のエマルション圧延油よりも高濃度の第2のエマルション圧延油を鋼板1に供給する。この第2圧延油供給系統12からのエマルション圧延油の供給によって、潤滑不足に起因した高速圧延域でのチャタリングを解消する。チャタリングの抑制は、最終圧延スタンド♯5STD、及び圧延スタンド間張力を介して影響を与える隣接圧延スタンド♯4STDでの潤滑状態のバランスを適切に保つことで実施する。具体的には、隣接する2つの圧延スタンドである、最終圧延スタンド♯5STDと隣接圧延スタンド♯4STDとの間の摩擦係数のバランスを適切に保つことで、チャタリングを抑制する。なお、上記隣接圧延スタンド♯4STDとは最終圧延スタンド♯5STDに隣接する前段の圧延スタンドを指す。

0036

以上のようなことから、圧延スタンド入側に供給する第2のエマルション圧延油について流量制御を実施して、最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数を適正に調整することが重要となる。

0037

次に、上記第2圧延油供給系統12を使用した第2のエマルション圧延油の供給制御方法について説明する。
本実施形態では、隣接圧延スタンド♯4STDでの摩擦係数と圧延後の鋼板1表面粗さを推定し、その推定した隣接圧延スタンド♯4STD圧延後の鋼板1表面粗さと最終圧延スタンド♯5STDに設定される目標摩擦係数に基づき、最終圧延スタンド♯5STD入側に供給する第2のエマルション圧延油の流量をフィードフォワード制御することで、最終圧延スタンド♯5STDと隣接圧延スタンド♯4STDとの間の摩擦係数のバランスを適切に保つ。具体的には、隣接圧延スタンド♯4STDでの摩擦係数から最終圧延スタンド♯5STDでの目標摩擦係数を設定し、上記推定した鋼板1表面粗さを、最終圧延スタンド♯5STD入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件として予測し、その推定した鋼板1表面粗さを変数として最終圧延スタンド♯5STD入側に供給する第2のエマルション圧延油をフィードフォワード制御する。更に、本実施形態では、最終圧延スタンド♯5STDに対し対象とする圧延材が噛み込まれて、最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数を推定可能となった場合には、その最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数に基づきフィードバック制御量を求め、そのフィードバック制御量で上記フィードフォワード制御の制御量を補正する処理を行う。

0038

以下、第2圧延油供給系統12から供給する圧延油による摩擦係数の調整について詳細に説明する。
図2は、本実施形態の第2のエマルション圧延油の供給制御を実施する供給制御部30の制御ブロックを示した図である。
上記供給制御部30は、図2に示すように、第1摩擦係数逆算部31、圧延後表面粗さ推定部32、目標摩擦係数設定部33、供給流量制御部34、第2摩擦係数逆算部35、摩擦係数推定部36、及びFB分演算部37を備える。

0039

第1摩擦係数逆算部31は、隣接する圧延スタンド(隣接圧延スタンド♯4STD)での摩擦係数を求める。すなわち、隣接圧延スタンド♯4STDにおける圧延実績から、Bland&Ford等の圧延モデル摩擦係数モデルによって、隣接圧延スタンド♯4STDでの摩擦係数を逆算(推定)する。また、第2摩擦係数逆算部35においても同様に最終圧延スタンド♯5STDにおける圧延実績から摩擦係数を逆算(推定)する。なお、最終圧延スタンド♯5STDに鋼板1が噛み込まれて、最終圧延スタンド♯5STDで圧延が開始される際に行われる。

0040

先進率と摩擦係数との関係及び圧延荷重と摩擦係数の関係は、Bland&Ford等の圧延モデルによって明らかにされており、このような関係式を用いることで摩擦係数を推定することが出来る。また摩擦係数モデルは、圧延材の成分、板厚、圧下率、圧延速度、潤滑などの圧延条件と摩擦係数との関係を示すモデル式であり、例えば実績データを用いて重回帰分析などの統計処理によって作成することが可能である。

0041

圧延後表面粗さ推定部32は、隣接圧延スタンド♯4STD入側で供給される第2のエマルション圧延油と第1摩擦係数逆算部31が推定した隣接圧延スタンド♯4STDでの摩擦係数に基づき、隣接圧延スタンド♯4STDでの圧延後の表面粗さを推定する。
ここで、隣接する圧延スタンドでの油膜厚h1は、第1のエマルション圧延油11によるロールバイト入口油膜h11と第2のエマルション圧延油13によるロールバイト入口油膜h12によって構成される。従って、油膜厚の計算はレイノルズ方程式において油膜内での熱伝導を無視した下記(1)(2)式で計算できる。

0042

0043

ここで、
U1:材料速度被圧延材通板速度)[mpm]
U2:WR速度(ワークロール周速度)[mpm]
σ0:材料降伏応力[kgf/mm2]
Ld:接触弧長(ワークロールと被圧延材との接触投影長さ)[mm]
R’:WR(ワークロール)扁平半径[mm]
η0:常温・常圧での粘度[Pa・s]
α1:圧力粘度係数[1/GPa]
β:温度粘度係数[1/℃]
Tm:クーラント温度[℃]
T0:周囲の温度(=40℃)
C:第1のエマルション圧延油11の濃度[質量%]
d:第1のエマルション圧延油11の平均粒径[μm]
Ftrap:第1のエマルション圧延油11のトラップ率(=0.3)
H1:予め設定した係数
Q:第2のエマルション圧延油13の供給流量[L/min]
である。

0044

また、一般に冷間圧延におけるロールバイト界面での摩擦挙動混合潤滑状態であり、その摩擦係数は一般に下記(3)式で表すことができる。このとき、(3)中の接触率αは、実験的に油膜厚とロールバイト中の合成粗さの関係式(4)で表せることが知られている(中島ら:鉄と鋼, 65, (1979), A53.参照)。
そして、隣接する圧延スタンドでの摩擦係数を用いて、(3)〜(5)式から隣接スタンドでの合成粗さ、すなわち隣接スタンド圧延後の鋼板1表面粗さσを推定することが出来る。μbはバウデン試験によって求めることが出来る。μLは定数で与えても良いが、一般的にμbの1/10程度である。

0045

0046

ここで、
μb:境界潤滑部の摩擦係数
μL:流体潤滑部の摩擦係数
α:接触率
である。

0047

隣接圧延スタンド♯4STDに供給されるエマルション圧延油の供給条件を(1)(2)式に代入すると隣接圧延スタンド♯4STDでの油膜厚h1が計算できる。計算油膜厚と、Bland&Ford等の圧延モデルによって計算された摩擦係数μ4を、(3)、(4)式を変形させた(5)式に代入することで、圧延後の鋼板1表面粗さを推定することが可能である。

0048

0049

また目標摩擦係数設定部33は、Bland&Ford等の圧延モデルによって計算された隣接する圧延スタンドでの摩擦係数μ4と、予め設定された最終圧延スタンド♯5STD及び隣接する圧延スタンドとの摩擦係数差の絶対値とから、最終圧延スタンド♯5STDでの目標摩擦係数を設定する。

0050

ここで、上記摩擦係数差の絶対値は、0以上0.01以下となるように設定することが好ましい。両摩擦係数の差が上記範囲を超えるとチャタリングが発生しやすくなるためである。
図3仕上げ厚0.2mmの硬質ブリキ材を圧延速度2000mpmで圧延した場合のチャタリング発生分布を示したグラフである。上流側圧延スタンドでの摩擦係数と最終圧延スタンドでの摩擦係数差の絶対値が0.01より大きい圧延条件でチャタリングが発生しやすいことがわかる。

0051

また、摩擦係数推定部36は、隣接圧延スタンド♯4STD圧延後の鋼板1表面粗さσを用い、(3)〜(4)式を変形した(6)式によって最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数を予測する。

0052

0053

ここで、
h1*:最終圧延スタンド♯5STDでの油膜厚[μm]
r:最終圧延スタンド♯5STDでの圧下率
R1,R2:最終圧延スタンド♯5STDでのWR(ワークロール)摩耗係数
WRton:最終圧延スタンド♯5STDでのWR(ワークロールでの)圧延量[ton]
なお、最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数の予測は、上記計算方法に限定されない。例えば、圧延される材料の板厚や圧下率、クーラント供給量、エマルションの濃度や粒径、圧延長、圧延速度などの圧延条件を用いた重回帰分析によって摩擦係数モデル式を作成してもよい。

0054

FB分演算部37は、フィードバック制御分の制御量を演算する。FB分演算部37は、例えば、第2摩擦係数逆算部35にて逆算(推定)した最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数と目標摩擦係数設定部33で設定した目標摩擦係数との偏差を求め、その偏差に対し、予め設定したゲインGを乗算した後に、PI(比例積分)項を演算してフィードバック制御量を求め、求めたフィードバック制御量を上記供給流量制御部34に出力する。フィードバック制御量の出力は、最終圧延スタンド♯5STDに鋼板1が噛み込まれている場合とする。

0055

供給流量制御部34は、摩擦係数推定部36で推定された最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数が目標摩擦係数設定部33が設定した目標摩擦係数となるように、最終圧延スタンド♯5STD入側に供給する第2のエマルション圧延油の供給量をフィードフォワード制御する。第2のエマルション圧延油の供給量の制御は、各流量制御弁22の開度を調整することで実施する。

0056

また、上記供給流量制御部34は、FB分演算部37からフィードバック制御量の入力がある場合には、そのフィードバック制御量分も加味して最終的な最終圧延スタンド♯5STD入側への第2エマルションの供給量を調整する。すなわち、最終圧延スタンド♯5STDに圧延材が噛み込まれ最終圧延スタンド♯5STDで圧延が開始された後は、フィードフォワード制御の制御量を、最終圧延スタンド♯5STDでの逆算摩擦係数に基づく第2のエマルション圧延油のフィードバック制御の制御量で補正する。この結果、高精度に最終圧延スタンド♯5STDを制御することが可能となる。

0057

ここで、フィードバック制御とフィードフォワード制御の併用は以下のようにして行う。目標摩擦係数設定部33にて設定された最終圧延スタンド♯5STDでの目標摩擦係数μset、摩擦係数推定部36で推定された最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数μ及び最終圧延スタンド♯5STDにおける圧延実績からBland&Fordなどの圧延モデルを用いて逆算される摩擦係数μ5を用いて、最終スタンド入側での第2のエマルション圧延油の供給流量制御値Qを(7)式で設定する。

0058

0059

ここで、
FF:フィードフォワード制御の調整ゲイン
GFB:フィードバック制御の調整ゲイン
Kp:フィードバック制御の比例ゲイン
KIフィードバック積分ゲイン
S :積分時間
である。

0060

また、βは圧延速度及び制御方式によって変化する定数であり、圧延速度がゼロあるいはフィードフォワード制御のみを行うときは「β=0」である。
ここで、潤滑不足が生じない軟質材を圧延材とした圧延や、低速圧延時、加減速部での圧延など、チャタリングが発生しにくいケースの場合は、上記フィードフォワード制御による圧延油の調整を行わなくとも良い。チャタリングが発生しやすい操業条件となった場合にのみ上記フィードフォワード制御あるいはさらにフィードバック制御を実施しても、同様の効果が得られる。

0061

作用効果
本実施形態では、最終圧延スタンド♯5STDに隣接する圧延スタンドにおける圧延実績と、当該隣接圧延スタンド♯4STD入側で供給された第2のエマルション圧延油の供給量とから、隣接する圧延スタンドでの摩擦係数と圧延後の鋼板1表面粗さとを逆算してそれぞれ推定する。さらに、予め設定された最終圧延スタンド♯5STD及び隣接する圧延スタンドとの摩擦係数差の絶対値から最終圧延スタンド♯5STDでの目標摩擦係数を設定する。

0062

そして、最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数が上記目標摩擦係数となるように、上記推定した鋼板1表面粗さ(予測した最終圧延スタンド♯5STD入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給条件)に基づき、最終圧延スタンド♯5STD入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給量をフィードフォワード制御によって調整する。これによって、隣接する2つの圧延スタンドにおける摩擦係数のバランスを適切に保ち、チャタリングを抑制する。

0063

このとき、最終圧延スタンド♯5STDの逆算摩擦係数によるフィードバック制御によって最終圧延スタンド♯5STD入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給量を調整する代わりに、本実施形態では、最終圧延スタンド♯5STDの逆算摩擦係数を使用しない上述のようなフィードフォワード制御によって最終圧延スタンド♯5STD入側に供給される第2のエマルション圧延油の供給量を制御する。この結果、第2のエマルション圧延油の流量制御に伴うむだ時間が解消され、高速圧延域においても逐一摩擦係数のバランスを調整することができる。

0064

さらに、最終圧延スタンド♯5STDに圧延材が噛み込まれ、最終圧延スタンド♯5STDでの圧延が開始された後は、最終圧延スタンド♯5STDでの逆算摩擦係数に基づく第2のエマルション圧延油のフィードバック制御による制御量を、上記フィードフォワード制御の制御量に加味することで、より高精度にチャタリングを防止することが可能となる。

0065

また、最終圧延スタンド♯5STD及び隣接する圧延スタンドとの上記摩擦係数差の絶対値を、0以上、0.01以下とする。これは、両摩擦係数の差が上記範囲を超えるとチャタリングが発生しやすくなるためである。

0066

以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
図1に示す実施形態の全5圧延スタンドの冷間タンデム圧延機を用い、母材厚2.0mm、板幅850〜950mmの硬質ブリキ原板を圧延材として仕上げ厚0.180mmまで、目標速度を2200m/minとして圧延した。圧延油は合成エステル油ベース植物油脂が添加された基油に対して、油性剤、酸化防止剤をそれぞれ1質量%ずつ添加し、また界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を対油濃度で3質量%だけ添加したものを使用した。

0067

第1圧延油供給系統2から供給されて循環使用される第1のエマルション圧延油11は、圧延油の濃度3.0質量%、平均粒径9μm、温度55℃のエマルション圧延油に調整した。一方、上記と同様の圧延油原油および温水を、圧延油原油タンク14、温水タンク15からエマルションタンク18に移送した。このとき、エマルションタンク18中のエマルション濃度が10質量%となるようにそれぞれの供給量を調整した。次いで、エマルションタンク18内に収容された混合物を攪拌機19の攪拌羽の回転を調整して攪拌することにより、平均粒径20μmの第2のエマルション圧延油13を調製した。なお、第2のエマルション圧延油13の温度は循環使用されるエマルション圧延油11と同一とした。

0068

本実施例1では、最終圧延スタンド♯5STD及び隣接する隣接圧延スタンド♯4STDにおける圧延実績からBland&Fordの圧延モデルを用いて各圧延スタンドでの摩擦係数μ4、μ5を逐次逆算した。次に、当該圧延スタンド入側に設けられた第2圧延油供給系統12より供給された第2のエマルション圧延油の供給量実績から(1)〜(2)式を用いて隣接する圧延スタンドでの油膜厚みh1を逐次逆算した。続いて、(5)式から隣接する圧延スタンド通過後の鋼板1表面粗さσを算出することで、(6)式から最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数を逐次推定した。

0069

そして、隣接圧延スタンド♯4STDと(6)式から推定した最終圧延スタンド♯5STDの摩擦係数を用いて(7)式の制御に基づくフィードフォワード制御(β=0)を実施し、最終圧延スタンド♯5STD入側の第2圧延油供給系統12より供給されるエマルション圧延油の供給量を制御した。
本実施例2では(7)式の制御に基づくフィードフォワード制御及び最終圧延スタンド♯5STDでの摩擦係数μ5を用いたフィードバック制御を実施した以外は、実施例1と同一条件とした。

0070

また、本実施例3では、隣接圧延スタンド♯4STDでの摩擦係数と予測した摩擦係数との差が0以上、0.01以下となるように制御した以外は、実施例2と同一条件とした。
摩擦係数の算出に用いた圧延条件以外の係数は、下記の表1に示す数値を用いた。

0071

0072

ここで、比較例として、特許文献1に記載の第2のエマルション圧延油を用いたフィードバック機構を設けて、最終圧延スタンド♯5STDに隣接した圧延スタンドと最終圧延スタンド♯5STDとの摩擦係数の差が一定範囲となるように第2のエマルション圧延油13の流量をフィードバック制御した。なお、摩擦係数差の範囲は実施例と同一とした。

0073

以上のような圧延油供給を行って、高速圧延を実施した場合の#4圧延スタンド及び最終圧延スタンド♯5STDにおける実績摩擦係数とチャタリングの発生状況を表2に示す。なお、実績摩擦係数は当該圧延速度での圧延荷重及び張力等から逆算した値である。

0074

0075

表2中、○、△、×は、次のことを指す。
〇・・・チャタリング発生なし
△・・・軽度のチャタリング発生
×・・・チャタリング発生
表2から分かるように、本実施例では、最終圧延スタンド♯5STDの摩擦係数を最終圧延スタンド♯5STDの上流側に設置した第2のエマルション圧延油供給工程の供給位置にて予め予測することで、隣接する圧延スタンドとの摩擦係数差を即座に一定範囲に調整することができていており、特にフィードフォワード制御とフィードバック制御を併用し、かつ制御すべき摩擦係数の差を0.01以下とすることで、いずれの圧延速度においてもチャタリングの発生は見られなかった。

0076

一方、比較例のような第2のエマルション圧延油のフィードバック制御では圧延速度1800mpmまでは摩擦係数の差が一定範囲となるように制御可能であったが、2000mpm以上の圧延速度ではフィードバック制御に伴うむだ時間発生により制御が追いつかずに軽度のチャタリングが発生し始めた。また、圧延速度2200mpmでは重度のチャタリングが発生し、鋼板1の表面品質が著しく低下した。

実施例

0077

上記実施例より、本発明に係る潤滑油供給方法を用いることで、ハイブリッド潤滑方式を用いた高速圧延においても、後段圧延スタンドでの摩擦係数を適正な範囲に続けることが可能であり、安定して高い生産性と良好な鋼板1形状を得ることができることが確認された。

0078

1鋼板(圧延材)
2 第1圧延油供給系統
3潤滑用クーラントヘッダー
4冷却用クーラントヘッダー
5循環式圧延油供給タンク
6ポンプ
7圧延油供給ライン
8回収オイルパン
9戻り配管
10攪拌機
11 第1のエマルション圧延油
12 第2圧延油供給系統
13 第2のエマルション圧延油
14圧延油原油タンク
15温水タンク
16 ポンプ
17流量制御弁
18エマルションタンク
19 攪拌機
20供給ポンプ
21供給ライン
22 流量制御弁
23潤滑ノズルヘッダー
30供給制御部
31 第1摩擦係数逆算部
32圧延後表面粗さ推定部
33目標摩擦係数設定部
34供給流量制御部
35 第2摩擦係数逆算部
36 摩擦係数推定部
37 FB分演算部

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 日本製鉄株式会社の「 鋼板の保持装置」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】吸着用金属片を電磁チャックの吸着力で吸着して鋼板を保持する場合に、電磁チャックまたは吸着用金属片を駆動する駆動機構の損傷を抑える。【解決手段】鋼板200の上方側に配置される吸着用金属片ユニット... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 形鋼の製造方法」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】H形鋼を製造する場合に、加熱炉のスキッド部でのスケール堆積に起因して発生する凹み(圧痕)を、最終製品において残存させることなくH形鋼製品を製造する。【解決手段】加熱炉から抽出されたスラブを素材... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 チタン熱間圧延板の製造方法」が 公開されました。( 2020/10/22)

    【課題・解決手段】電子ビーム溶解法またはプラズマアーク溶解法を用いて直接製造したチタンスラブに、熱間圧延を行ってチタン板を製造する方法であって、前記チタンスラブが熱間圧延時に圧延される面を被圧延面、圧... 詳細

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ