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技術 蛍石

出願人 日本結晶光学株式会社
発明者 山崎貴史城勇介
出願日 2012年12月12日 (8年0ヶ月経過) 出願番号 2012-271277
公開日 2013年4月18日 (7年8ヶ月経過) 公開番号 2013-067560
状態 特許登録済
技術分野 結晶、結晶のための後処理
主要キーワード 昇降サイクル ガス捕捉 昇温目標温度 粒界組織 赤外線分析装置 隣接距離 腐食孔 KrFレーザ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (19)

課題

半導体リソグラフィなどに用いるレンズ材料として利用することができる蛍石(CaF2、フッ化カルシウム)であって、レーザ耐久性がより優れた蛍石を提供する。

解決手段

(111)面のエッチピット分布をVoronoi分割した図形におけるVoronoi領域の面積標準偏差が6000μm2以下であるか、或いは、(111)面のエッチピットの分布をDelaunay分割した図形におけるDelaunay辺の距離の標準偏差が80μm以下である蛍石。

概要

背景

蛍石結晶(CaF2結晶)は、色分散が非常に小さく、一般的な光学ガラスに比べて屈折率及び分散率が低い上、特殊な部分分散特性(:異常部分分散、アッベ数:95)を備えているため、色消レンズアポクロマート)、赤外線分析装置エキシマレーザ等の窓板TVカメラレンズ顕微鏡レンズ微細パターンウェハー上に転写するための装置である半導体リソグラフィステッパスキャナなどを含む)装置のレンズなどに広く利用されている。

中でも半導体リソグラフィ装置において微細化加工を担うステッパ(縮小投影型露光装置)について言えば、解像力を高めるために光源短波長化が進められ、紫外域発振する高出力レーザとしてのエキシマレーザを光源に用いたステッパが開発され、これに伴って、これに適したレンズ材料として蛍石(CaF2、フッ化カルシウム)が注目されている。すなわち、蛍石は、エキシマレーザ光の中でもKrFレーザ波長:248nm)やArFレーザ(波長:193nm)などのような真空紫外域と呼ばれる波長域光線透過率が高いという特徴を有している。

蛍石(フッ化カルシウム)の光学特性に影響を与える要因の一つとして、屈折率均質性や、転位集積した部分であるサブバウンダリー(亜粒界)を挙げることができる。

このような屈折率均質性に注目した従来技術として、5ppm(即ち、5000ppb)以下の屈折率均質性、且つ、10nm/cm以下の複屈折率を有するフッ化カルシウム(例えば特許文献1)や、3ppm(即ち、3000ppb)以下の屈折率均質性、且つ、2nm/cm以下の複屈折率を有するフッ化カルシウム(例えば特許文献2)を露光光学系に用いる提案がされている。

さらに、特許文献3には、歪複屈折(歪み)が少なくて均質なCaF2結晶を備えた新たな蛍石として、<100>方位平行平面を有する結晶基板において、光入射面を(100)面としたときの、波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値平均値が0.4nm/cm〜1.8nm/cmであり、且つ波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値の最大値最小値の差(PV)が4.0nm/cm以下である蛍石が開示されている。

ところで、エキシマレーザ用のレンズ材料は、レーザなどの光線を照射されているうちに、材料中にカラーセンターが形成され、透過率の低下や吸収発熱による局所的な屈折率の変化等が起こる、いわゆる光損傷を受ける場合がある。更に、強力なレーザ光を照射されると、上記光損傷だけでなく、吸収発熱によって誘起される熱応力による破壊、或いは、レーザ光の強い光電界による絶縁破壊などによって損傷を受ける場合があるため、この種の光学材料においてレーザ耐久性は重要な評価項目の一つとなっている。

このようなレーザ耐久性に着目した従来技術として、例えば特許文献4において、KrFやArFエキシマレーザ等の紫外線に対する耐久性に優れた蛍石として、紫外線波長域パルスレーザ光を、1mJ/cm2 /パルス以上、50mJ/cm2 /パルス以下のエネルギー密度で104 以上107 以下のパルス数照射した際、150nm以上300nm以下の波長域において、内部透過率が99.5%/cm以上であることを特徴とする紫外線対応蛍石が開示されている。

また、特許文献5には、エキシマレーザ等のレーザに対する耐久性に優れたフッ化カルシウム結晶として、線量1×105R/時間のガンマ線を1時間照射した後の波長260〜280nmにおける厚さ10mm当たりの内部透過率の減少量が、照射前に対して8%以下であるフッ化カルシウム結晶が開示されている。

概要

半導体リソグラフィなどに用いるレンズ材料として利用することができる蛍石(CaF2、フッ化カルシウム)であって、レーザ耐久性がより優れた蛍石を提供する。(111)面のエッチピット分布をVoronoi分割した形におけるVoronoi領域の面積標準偏差が6000μm2以下であるか、或いは、(111)面のエッチピットの分布をDelaunay分割した形におけるDelaunay辺の距離の標準偏差が80μm以下である蛍石。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

(111)面のエッチピット分布をVoronoi分割した図形におけるVoronoi領域の面積標準偏差が6000μm2以下であることを特徴とする蛍石

技術分野

0001

本発明は、例えば光学用レンズ、例えば半導体リソグラフィなどに用いるレンズ材料として利用することができる蛍石(CaF2、フッ化カルシウム)に関する。

背景技術

0002

蛍石の結晶(CaF2結晶)は、色分散が非常に小さく、一般的な光学ガラスに比べて屈折率及び分散率が低い上、特殊な部分分散特性(:異常部分分散、アッベ数:95)を備えているため、色消レンズアポクロマート)、赤外線分析装置エキシマレーザ等の窓板TVカメラレンズ顕微鏡レンズ微細パターンウェハー上に転写するための装置である半導体リソグラフィ(ステッパスキャナなどを含む)装置のレンズなどに広く利用されている。

0003

中でも半導体リソグラフィ装置において微細化加工を担うステッパ(縮小投影型露光装置)について言えば、解像力を高めるために光源短波長化が進められ、紫外域発振する高出力レーザとしてのエキシマレーザを光源に用いたステッパが開発され、これに伴って、これに適したレンズ材料として蛍石(CaF2、フッ化カルシウム)が注目されている。すなわち、蛍石は、エキシマレーザ光の中でもKrFレーザ波長:248nm)やArFレーザ(波長:193nm)などのような真空紫外域と呼ばれる波長域光線透過率が高いという特徴を有している。

0004

蛍石(フッ化カルシウム)の光学特性に影響を与える要因の一つとして、屈折率均質性や、転位集積した部分であるサブバウンダリー(亜粒界)を挙げることができる。

0005

このような屈折率均質性に注目した従来技術として、5ppm(即ち、5000ppb)以下の屈折率均質性、且つ、10nm/cm以下の複屈折率を有するフッ化カルシウム(例えば特許文献1)や、3ppm(即ち、3000ppb)以下の屈折率均質性、且つ、2nm/cm以下の複屈折率を有するフッ化カルシウム(例えば特許文献2)を露光光学系に用いる提案がされている。

0006

さらに、特許文献3には、歪複屈折(歪み)が少なくて均質なCaF2結晶を備えた新たな蛍石として、<100>方位平行平面を有する結晶基板において、光入射面を(100)面としたときの、波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値平均値が0.4nm/cm〜1.8nm/cmであり、且つ波長633nmにおける厚みあたりの歪複屈折値の最大値最小値の差(PV)が4.0nm/cm以下である蛍石が開示されている。

0007

ところで、エキシマレーザ用のレンズ材料は、レーザなどの光線を照射されているうちに、材料中にカラーセンターが形成され、透過率の低下や吸収発熱による局所的な屈折率の変化等が起こる、いわゆる光損傷を受ける場合がある。更に、強力なレーザ光を照射されると、上記光損傷だけでなく、吸収発熱によって誘起される熱応力による破壊、或いは、レーザ光の強い光電界による絶縁破壊などによって損傷を受ける場合があるため、この種の光学材料においてレーザ耐久性は重要な評価項目の一つとなっている。

0008

このようなレーザ耐久性に着目した従来技術として、例えば特許文献4において、KrFやArFエキシマレーザ等の紫外線に対する耐久性に優れた蛍石として、紫外線波長域パルスレーザ光を、1mJ/cm2 /パルス以上、50mJ/cm2 /パルス以下のエネルギー密度で104 以上107 以下のパルス数照射した際、150nm以上300nm以下の波長域において、内部透過率が99.5%/cm以上であることを特徴とする紫外線対応蛍石が開示されている。

0009

また、特許文献5には、エキシマレーザ等のレーザに対する耐久性に優れたフッ化カルシウム結晶として、線量1×105R/時間のガンマ線を1時間照射した後の波長260〜280nmにおける厚さ10mm当たりの内部透過率の減少量が、照射前に対して8%以下であるフッ化カルシウム結晶が開示されている。

先行技術

0010

特開平8−5801号公報
特開平10−270351号公報
特開2008−156164号公報
特開2001−41876号公報
特開2000−211920号公報

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、従来の蛍石に比べてレーザ耐久性がより一層優れた新たな蛍石を提供せんとするものである。

課題を解決するための手段

0012

本発明は、(111)面のエッチピット分布をVoronoi分割した図形におけるVoronoi領域の面積標準偏差、即ち蛍石の(111)面をエッチングして得られるエッチピットの分布において、各エッチピットを母点としてVoronoi図を定義したとき(Voronoi分割)のVoronoi領域の面積(「Voronoi面積」と記す)の標準偏差が6000μm2以下であることを特徴とする蛍石、或いは、(111)面のエッチピットの分布をDelaunay分割した図形におけるDelaunay辺の距離の標準偏差、即ち蛍石の(111)面をエッチングして得られるエッチピットの分布において、各エッチピットをDelaunay点としたときにDelaunay点どうしを結んで定義されるDelaunay図(Delaunay分割)におけるDelaunay辺の長さ(「Delaunay距離」と記す)の標準偏差が80μm以下である蛍石、或いは、これら両方の条件を満足する蛍石を提案するものである。

0013

従来、結晶基板の転位や結晶欠陥を評価する技術として、エッチピット密度(EPD)を評価する方法が知られていた。即ち、結晶の劈開等で得られた清浄面を適当なエッチング液に浸漬することで腐食孔(エッチピット)を形成させ、その結晶面を顕微鏡等により拡大し、この拡大画像中に存在するエッチピットを単位面積当たり個数換算して評価する方法である。
しかし、このようにエッチピット密度(EPD)を評価する場合には、エッチピットが線状に密に存在している場合も、均等にバラバラに存在している場合も、密度としては同様の値となるため、CaF2結晶の欠陥分布(エッチピットの分布)の善し悪しを正確に評価することができず、レーザ耐久性との相関も認められないという課題があった。これに対し、本発明のように、エッチピットの分布におけるVoronoi面積或いはDelaunay距離の標準偏差(バラツキ)で蛍石を評価すれば、エッチピットの分布の善し悪しをより正確に表現することができるようになり、レーザ耐久性との相関も認められるようになった。
よって、本発明に係る蛍石は、転位や亜粒界組織が少なくて均質な蛍石であって、特にレーザ耐久性に優れているから、例えばTVカメラレンズ、顕微鏡レンズ、赤外線分析用窓材、半導体リソグラフィ装置に用いられるレンズなどのレンズ材料、特に高度な光学特性が要求されるArF(フッ化アルゴンエキシマレーザ露光装置やF2(フッ素)エキシマレーザ露光装置など、紫外或いは真空紫外波長域のレーザを光源に用いた露光装置等のステッパ用レンズ材料として好適に用いることができる。

図面の簡単な説明

0014

本発明で使用する熱処理炉の一例を示した断面図である。
図1において各隔壁容器を中心に拡大して示した要部拡大断面図である。
実施例1−8及び比較例1−5で得られたサンプルについて、レーザ耐久性の代替特性であるγ線照射により誘起されたカラーセンター吸収強度と、Voronoi面 積の標準偏差との関係を示したグラフである。
実施例1−8及び比較例1−5で得られたサンプルについて、レーザ耐久性の代替特性であるγ線照射により誘起されたカラーセンター吸収強度と、Delaunay距離の標準偏差との関係を示したグラフである。
実施例1及び比較例1で得られたサンプルのエッチピット画像(Etch-pit観察像)、Delaunay図及びVoronoi図を、それぞれ上下に並べて対比して示した図である。
実施例2及び比較例2で得られたサンプルのエッチピット画像(Etch-pit観察像)、Delaunay図及びVoronoi図を、それぞれ上下に並べて対比して示した図である。
実施例1で得られたサンプルのエッチピット画像(Etch-pit観察像)である。
実施例1で得られたサンプルのDelaunay図である。
実施例1で得られたサンプルのVoronoi図である。
比較例1で得られたサンプルのエッチピット画像(Etch-pit観察像)である。
比較例1で得られたサンプルのDelaunay図である。
比較例1で得られたサンプルのVoronoi図である。
実施例2で得られたサンプルのエッチピット画像(Etch-pit観察像)である。
実施例2で得られたサンプルのDelaunay図である。
実施例2で得られたサンプルのVoronoi図である。
比較例2で得られたサンプルのエッチピット画像(Etch-pit観察像)である。
実施例2で得られたサンプルのDelaunay図である。
実施例2で得られたサンプルのVoronoi図である。

0015

以下に本発明の実施形態について詳細に述べるが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。

0016

<本蛍石>
本実施形態に係る蛍石(以下、「本蛍石」という)は、(111)面のエッチピットの分布をVoronoi分割した図形におけるVoronoi領域の面積の標準偏差が6000μm2以下であるか、或いは、(111)面のエッチピットの分布をDelaunay分割した図形におけるDelaunay辺の距離の標準偏差が80μm以下であるか、或いは、これら両方の条件を満足する蛍石である。

0017

(Voronoi面積の標準偏差)
(111)面のエッチピットの分布をVoronoi分割した図形におけるVoronoi領域の面積の標準偏差とは、蛍石の(111)面をエッチングして得られるエッチピットの分布において、各エッチピットを母点としてVoronoi図を定義したとき(Voronoi分割)のVoronoi領域の面積(「Voronoi面積」)の標準偏差を意味する。本蛍石は、かかるVoronoi面積の標準偏差が6000μm2以下であるのが好ましい。当該標準偏差が6000μm2以下であればレーザ耐久性に優れるものとなる。
このような観点から、当該標準偏差は4000μm2以下であるのがさらに好ましく、特に3000μm2以下であるのがより一層好ましい。下限値に関しては特に限定するものではなく、最も好ましくは0μm2ということになるが、現実的には1000μm2以上であるのが好ましい。

0018

(Delaunay距離の標準偏差)
(111)面のエッチピットの分布をDelaunay分割した図形におけるDelaunay辺の距離の標準偏差とは、蛍石の(111)面をエッチングして得られるエッチピットの分布において、各エッチピットをDelaunay点としたときにDelaunay点どうしを結んで定義されるDelaunay図(Delaunay分割)におけるDelaunay辺の長さ(「Delaunay距離」)の標準偏差を意味する。本蛍石は、かかるDelaunay距離の標準偏差が80μm以下であるのが好ましい。当該標準偏差が80μm以下であればレーザ耐久性に優れるものとなる。
このような観点から、当該標準偏差は60μm以下であるのがさらに好ましく、特に50μm以下であるのがより一層好ましい。下限値に関しては特に限定するものではなく、最も好ましくは0μmということになるが、現実的には30μm以上であるのが好ましい。

0019

<本蛍石の製造方法>
本蛍石は、例えば、従来公知の方法で育成して得られたCaF2結晶を、蛍石結晶の周囲に、隔壁を介して、フッ化物ガス吸着材を含有するフッ化物ガス捕捉層を設けて熱処理することにより得ることができる。但し、この製法に限定されるものではない。
以下、より具体的に説明する。

0020

結晶育成工程は、従来公知の方法を採用すればよい。
例えば、粉末状のCaF2原料、若しくはこれと、スカベンジャーとしてのフッ化鉛(PbF2)との混合物を、坩堝充填し、この坩堝を結晶成長装置内に設置し、真空排気系によって結晶成長装置内部の真空度が1×10-3〜10-4Pa程度になるまで排気を行い、加熱装置によって坩堝を加熱し、坩堝に充填した原料を融解させる。ここで、坩堝の温度の上昇に伴い、スカベンジャーと反応し生成した気体炉内壁及び坩堝に吸着していた気体が離脱するが、これらは結晶成長装置の真空排気系によって速やかに系外へ排気される。原料を融解した後、所望の真空度を維持しつつ、炉内温度を一定温度に維持する。その後、坩堝を0.1mm/時間〜3mm/時間程度の速度で徐々に鉛直下方に引き下げると、坩堝内融液は坩堝底部付近から固化し始め、坩堝の引き下げに伴い徐々に結晶が成長し育成される。坩堝内の融液がすべて固化した段階で坩堝の引き下げを終了し、加熱装置により徐冷し、坩堝を室温程度にまで冷却し、インゴット状のCaF2結晶を育成することができる。
但し、このような結晶育成方法に限定するものではない。

0021

このようにして得られたインゴット状のCaF2を所定の方位の表面が出現するように切り出して次の熱処理工程に供すればよい。例えば、直径200mm程度、厚さ40mm程度の円盤形状に切り出して熱処理工程に供すればよい。

0022

次に、結晶育成工程で得られたCaF2結晶を、例えば図1に示すように、熱処理するCaF2結晶50の周囲に、隔壁を介して、フッ化物ガス吸着材を含有するフッ化物ガス捕捉層5を設けて熱処理することが重要である。

0023

ここで、図1に示した熱処理炉について詳細に説明する。
図1において、1は真空容器、2は加熱装置、3はアニーリングケース、4は支持容器、5はフッ化物ガス捕捉層、6は隔壁容器、7はスカベンジャー或いはフッ化剤、50はCaF2結晶である。

0024

この熱処理炉は、内部を気密状態に保持し得る真空容器1に囲まれており、真空容器1内の雰囲気所定状態に調整できると共に、真空容器1内の温度を決められた温度プロファイルに従って高精度に制御できるように構成されている。
真空容器1の雰囲気を所定状態に調整するには、例えば排気系統により真空容器1内の気体を排気し、導入系統により所定の気体を適切量導入して調整するようにすればよい。
また、真空容器1の温度を決められた温度プロファイルに従って高精度に制御するには、例えば真空容器1内に設置した支持部材4の外壁付近の適宜高さ、例えば上層部、中層部及び下層部の各高さに温度センサを設置し、これら温度センサと温度制御装置によって、真空容器1の側壁に沿って配設された複数個ヒータ2a、2a・・の温度を制御すればよい。

0025

真空容器1は、ステンレスなどから形成され、この内部にアニーリングケース3が設置されている。
アニーリングケース3は、被熱処理物、即ちCaF2結晶の保持或いは支持するための支持容器4を支持するための役割を果たす容器であり、カーボン素材から形成することができる。また、支持容器4の周囲温度均熱に分布させるための役割を果たす容器でもある。
このアニーリングケース3内には、複数の支持容器4を上下に積み重ねた状態で収納されている。

0026

支持容器4は、被熱処理物であるCaF2結晶を支持する役割を果たす容器であり、例えば、上方を開口してなる枡状の容器本体と蓋体とからなり、上下に積み重ねることができる構成となっている。
各支持容器4内には、それぞれ隔壁容器6が収容され、各隔壁容器6内にはそれぞれCaF2結晶50が収容され、各隔壁容器6と各支持容器4との間にはフッ化物ガス捕捉層5が形成されている。

0027

支持容器4は、例えばカーボン押出成型品CI成型品等の一般的なカーボン素材から形成することができる。
隔壁容器6は、CaF2結晶50がフッ化物ガス捕捉層5に直接接触しないように隔てる役割を果たす容器であり、例えば、上方を開口してなる枡状の容器本体と蓋体とからなり、例えばカーボンの押出成型品やCIP成型品等の一般的なカーボン素材から形成することができる。
CaF2結晶50とフッ化物ガス捕捉層5が接触すると、熱処理中にCaF2結晶50の表面にフッ化物ガス吸着材が固着してCaF2結晶50の光学的性質が損なわれるばかりか、接触した結晶表面の粒界組織発達して光学的性質が損なわれてしまうため、両者を隔てることが重要である。

0028

フッ化物ガス捕捉層5は、図2に示すように、該隔壁容器6と支持容器4との間にフッ化物ガス吸着材を充填して、隔壁容器6の全周囲を囲むように形成することができる。
フッ化物ガス吸着材は、化学反応の観点から、例えばCr、Fe、Ni、Mnなどの遷移金属のフッ化物ガスを効果的に吸着できる材料であって、スカベンジャーであるPbF2と蒸気圧が同等或いはそれよりも低いものが好ましい。中でもその蒸気圧がCaF2と同等或いはそれよりも低いものが好ましい。具体的には、フッ化物の粉体破砕物及び解砕物、例えばCaのフッ化物の粉体、破砕物或いは解砕物、又は、Caと同族である元素、例えばMg、Sr、Baなどのアルカリ土類元素のフッ化物の粉体、破砕物或いは解砕物粉体、又は、これら2種類以上の混合物であるのが好ましい。中でもCaのフッ化物の粉体、破砕物及び解砕物の何れか或いはこれら2種類以上の混合物であるのがより好ましい。
フッ化物ガス吸着材は、ガス捕捉性の観点から、細密充填できるように、大きさのバラバラである混在物であるのが好ましい。

0029

フッ化物ガス捕捉層5の厚さは、フッ化物ガスを効果的に吸着できるという観点から、5mm〜200mmであるのが好ましく、特に10mm〜100mm、中でも特に20mm〜50mmであるのがより好ましい。
なお、フッ化物ガス捕捉層5は、隔壁容器6の全周囲を囲むように形成するのが好ましいが、その一部を囲むように形成するものであってもよい。
また、フッ化物ガス捕捉層5は、複数層に形成してもよい。

0030

熱処理における雰囲気、すなわちアニーリングケース3内の雰囲気は、真空雰囲気、或いはアルゴン(Ar)等の不活性ガス雰囲気とすればよい。中でも、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、その中でも、アルゴンガスフッ素系ガスを混合・注入してなる雰囲気が好ましい。

0031

また、図1に示すように、アニーリングケース3内にスカベンジャー或いはフッ化剤を収納するのが好ましい。
フッ化剤としては、例えば、テフロン登録商標)、酸性フッ化アンモニウム(NH4F・HF)等、或いは、フッ化鉛、フッ化亜鉛等、或いは、昇温することによりフッ素成分気化させることができる物質を用いることができる。
このフッ化剤は、CaF2結晶50の表面や、隔壁容器6の内部に残る酸素や水分がCaF2結晶50と反応することを防ぐために用いるものであるが、必ず用いる必要はない。

0032

熱処理工程における温度プロファイルは、特に限定するものではない。フッ化カルシウムの融点は1370℃〜1410℃程度であるため、CaF2結晶50が溶解せず、固体の状態を維持しつつ、CaF2結晶50を構成する各原子に十分なエネルギーを与えてそれぞれ適切な位置に移動させて結晶構造乱れによる異方性を解消することができる温度まで加熱すればよく、その温度域を特に限定するものではない。目安としては、結晶構造の乱れによる異方性をより効果的に解消するためには、1000〜1350℃まで昇温するのが好ましい。
昇温速度は特に限定するものではないが、隔壁容器6内に収容されたCaF2結晶50が熱衝撃により割れ等の破損が生じないように炉内温度を上昇させる必要があるため、例えば10℃/h〜200℃/hで昇温するのが好ましい。

0033

この際、先ず炉内温度を所定の昇温目標温度まで上昇させ(昇温ステップ)、続いて、所定の熱処理温度領域にて、降温と昇温とを交互に行なう昇降サイクルを少なくとも2回実施し(昇降サイクルステップ)、その後、冷却工程に移るようにしてもよい。

0034

熱処理後の冷却工程では、急冷すると結晶内部に歪が残留しやすく、また、スベリ欠陥が導入され転位等が増加することになるため、ゆっくり時間をかけて冷却するのが好ましい。その反面、あまり時間をかけると、生産性を著しく損ねてしまう。このような観点から、熱処理後の冷却工程では、例えば0.1〜5℃/h、特に0.5〜1.5℃/hの冷却速度室温付近まで冷却するのが好ましい。

0035

そして最後に、熱処理後のCaF2結晶50を切削し、必要に応じて適宜形状に加工すればよい。例えば、(111)面と平行な面を表面とする形状に加工すればよい。より具体的な一例としては、円盤形状を呈するCaF2結晶50を切削して、(111)面と平行な表面を有する形状とし、さらに表面を平滑化するために表面を平面研削する方法を挙げることができる。

0036

<用途>
本蛍石は、転位や亜粒界組織が少なくて均質な蛍石であって、特にレーザ耐久性に優れているから、例えば色消レンズ(アポクロマート)、TVカメラレンズ、顕微鏡レンズ、赤外線分析用窓材、半導体リソグラフィ(ステッパ、スキャナ)装置に用いられるレンズ、その他の光学レンズとして用いることができる。特に巨視的に結晶の均質性が高く、且つレーザ耐久性に優れた蛍石を得ることができるから、高精度ステッパ、すなわちArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ等の紫外或いは真空紫外波長域のレーザを光源に用いた露光装置等のステッパ用レンズ材料として好適に用いることができる。さらに、本蛍石は、優れたレーザ耐久性を有することから、ArFエキシマレーザ等の紫外或いは真空紫外波長域のレーザ光源の窓材、あるいは共振器鏡等の光学素子として好適に用いることができる。

0037

語句の説明>
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。

0038

以下、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。但し、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではない。
先ず、得られた蛍石の評価方法について説明する。

0039

<レーザ耐久性の評価方法>
ArFエキシマレーザを蛍石に照射した際に、透過率の低下として観測されるレーザ耐久性に関し、本発明では、よりエネルギーの高い放射線源からの放射線を照射した時に誘起される透過率低下、即ち、誘起されたカラーセンターの吸収を観察することでレーザ耐久性を評価することとした。
そこで、本発明では、放射線源に放射性同位体である60Coから放射されるγ線(1.17MeV、1.33MeV)を所定の線量を照射し、その時、結晶内に誘起されるカラーセンターを分光光度計にて測定し、誘起カラーセンター吸収スペクトルを得た。レーザ耐久性とγ線誘起カラーセンター吸収強度との関係は、負の相関があることが知られている。即ち、レーザ耐久性の高い結晶においては、γ線誘起カラーセンター吸収強度が小さい。この相関関係から、本蛍石のレーザ耐久性を評価することができる。

0040

具体的には、蛍石サンプルの両端面を平行平面となるように光学研磨を施し、光学長さ(サンプル厚み)を30mmとした。このような蛍石サンプルを暗箱内に保持し、大気中にて、60Coからのγ線(1.33MeV)を、線量5.4kGy照射し、サンプルにカラーセンターを誘起させた。次に、照射後速やかに、自記分光光度計(U−4100、日立ハイテクノロジーズ)を用いて、この蛍石サンプルの紫外可視波長域(200nm〜800nm)における吸収スペクトルを測定した。

0041

なお、ここでの「吸収」とは、いわゆる吸収係数(Lambert・Beerの法則に従い、端面の反射補正を施した透過率の自然対数をとり、長さで規格化した値。単位はcm−1)を採用した。
また、誘起カラーセンター吸収強度を定量化するために、得られた吸収スペクトルを、波長200nmから800nmの区間において積分した値を用いた。この積分値を、γ線誘起カラーセンター強度と定義する。即ち、レーザ耐久性が低い(高い)と、誘起された吸収スペクトル積分値は大きい(小さい)ことになる。

0042

<エッチピットの評価方法>
本実施例では、CaF2結晶のエッチピット分布に対して、以下に述べるVoronoi面積及びDelaunay距離を定義し、それらのバラツキ(標準偏差)を算出することにより、CaF2結晶における転位分布(エッチピットの分布)を定量的に評価した。

0043

(Voronoi面積及びDelaunay距離の標準偏差の算出方法
1)CaF2結晶の清浄面を得るために、(111)面での劈開或いは精密研磨した。
ここで、CaF2(111)面をエッチング面とするのは、容易に平坦面(即ち、劈開面)を得ることができるからである。また、得られるエッチピットは、他の(111)面で構成された三角錐状ピットが得られることが特徴となる。
2)エッチャント(7%HCl溶液)に浸し、25℃×1時間のエッチングを実施した。
3) エッチングされた面(4mm四方)を光学顕微鏡写真撮影し、画像をデジタル化した。
4) このようにしてデジタル化されたエッチピット画像をもとに、エッチピットとそれ以外の部分を二値化(Background除去,閾値設定)処理した。また、エッチピット以外のごみや傷を消去した。さらに、隣接し重なり合っているエッチピットを、手作業及びwatershed細分化により分割した。
5)亜粒界や粒界においてエッチピットが規則的に配列し隣接し重なりがある場合は、平均的な隣接距離をもとに各エッチピットを分割した。具体的には、二値化され、線として認識されているエッチピット群に対して、メッシュ(Grid)を切ることで分割した。

0044

6) このように調整したエッチピット画像(図7図10図13図16参照)を、画像処理ソフトフリーソフト:ImageJ)を用いて、Delaunay分割, Voronoi分割を実施した。すなわち、有効視野内の全てのエッチピットについて、その重心点を求め母点とし、画像上のすべての母点に対して、他の母点がどの母点に近いかによって領域分け(Voronoi分割)したものをVoronoi図(図9図12図15図18参照)とし、Voronoi図を構成する各多角形状の領域をVoronoi領域、各領域を隔てる境界線をVoronoi境界とした。また、前記Voronoi境界で隣接するふたつのVoronoi領域内に含まれる母点(これを「Delaunay点」と呼ぶ)同士を全てつないで、新たに分割した図をDelaunay図(或いは、Delaunay図、図8図11図14図17参照)とした。
次に、有効視野内のVoronoi図におけるVoronoi領域(Voronoi図形)の面積を「Voronoi面積」として定義して算出し、このVoronoi面積のばらつきを統計処理を行うことで、標準偏差を算出し、Voronoi面積のバラツキを評価した。
また、上記Delaunay図(Dealunay分割)における各図形の辺の長さ(「Dealunay距離」と定義する)を算出し、統計処理を行うことで、Delaunay距離の標準偏差を求め、バラツキを評価した。

0045

実施例及び比較例のサンプルについて、蛍石結晶におけるγ線誘起カラーセンター吸収強度(レーザ耐久性の代替評価パラメータ)と、Voronoi面積の標準偏差或いはDelaunay距離の標準偏差との関係を、図3並びに図4にそれぞれ示した。

0046

(実施例1)
ブリッジマンストックバーガー法(BS法)により育成されたCaF2結晶インゴットを<111>方位に切り出し、直径約80mm、厚さ約30mmの大きさの円板状に加工してas-grown結晶基板を得た。
なお、後述する実施例及び比較例においては、同一の結晶インゴットの同じ部位からそれぞれの結晶基板を採取した。

0047

このように得られた結晶基板を、図1に示される構成の熱処理炉を用いて熱処理及びその後の冷却を行なった。以後の比較例も同様である。
その際、CaF2結晶の粉砕粉粒度分布10μm〜10mm)をフッ化物ガス吸着材として、隔壁容器6と支持容器4との間に充填して隔壁容器6の全周囲を囲むように、20mm厚さのフッ化物ガス捕捉層5を形成した。
また、図1に示すように、アニーリングケース3内にスカベンジャー或いはフッ化剤として、PbF2粉を置いた。

0048

熱処理工程のプロフィールは次のようである。
先ず、室温にて、熱処理炉内減圧して真空雰囲気とした後、炉内雰囲気を速やかにArガス雰囲気置換し、炉内圧力を1気圧とした。
その後、加熱装置にて、昇温時間36時間で、最高温度1100℃まで昇温した後、24時間温度を保持した。その後、10日掛けて室温まで冷却した。

0049

このように熱処理して得られた結晶基板からエッチピット観察用試料(サンプル)を切り出し、観察面用の清浄面を得るために(111)面で劈開させた。
また、レーザ耐久性の評価のための試料を切り出し、(111)面両端面に光学研磨を施した。

0050

(実施例2)
実施例1の熱処理工程のプロフィールにおいて、昇温時間36時間で、最高温度1000℃まで昇温した後、24時間温度を保持した以外は、実施例1と同様に試料(サンプル)を得た。

0051

(比較例1)
実施例1において、CaF2結晶の粉砕粉を充填しない以外は、実施例1と同様に試料(サンプル)を得た。

0052

(比較例2)
実施例2において、CaF2結晶の粉砕粉を充填しない以外は、実施例2と同様に試料(サンプル)を得た。

0053

0054

(実施例3)
CaF2結晶の粉砕粉(粒度分布10μm〜10mm)と、フッ化鉛の粉体(粒度約50μm)とを、質量比率99:1で混合した混合物を、隔壁容器6と支持容器4との間に充填して隔壁容器6の全周囲を囲むように、20mm厚さのフッ化物ガス捕捉層5を形成した以外は、実施例1同様に試料(サンプル)を得た。

0055

(実施例4−8)
実施例1の熱処理工程のプロフィールにおいて、昇温時間30〜36時間で、最高温度950〜1200℃まで昇温した後、24時間温度を保持するようにした以外は、実施例1と同様に試料(サンプル)を得た。

0056

(比較例3−5)
比較例1の熱処理工程のプロフィールにおいて、昇温時間30〜36時間で、最高温度950〜1200℃まで昇温した後、24時間温度を保持するようにした以外は、比較例1と同様に試料(サンプル)を得た。

0057

(考察)
従来同様に育成されたCaF2結晶を熱処理する際に、蛍石結晶の周囲に、隔壁を介してフッ化物ガス捕捉層を設けて熱処理した場合(実施例)と、フッ化物ガス捕捉層を設けないで熱処理した場合(比較例)とを対比すると、図3及び図4に示されるように、Voronoi面積の標準偏差、Delaunay距離の標準偏差のいずれについても大きく異なり、フッ化物ガス捕捉層を設けて熱処理した場合の方が、レーザ耐久性に優れた蛍石結晶を得られることが判明した。

0058

さらに、Voronoi面積の標準偏差に着目すると(図3)、蛍石結晶の周囲に、隔壁を介してフッ化物ガス捕捉層を設けて熱処理した場合(実施例)には、Voronoi面積の標準偏差が6000μm2以下となり、カラーセンター吸収強度(レーザ耐久性の代替評価パラメータ)が顕著に高まることが判明した。このような観点から、本蛍石のVoronoi面積の標準偏差は、6000μm2以下であるのが好ましく、特に4000μm2以下、中でも特に3000μm2以下であるのがより一層好ましいと考えることができる。

実施例

0059

他方、Delaunay距離の標準偏差に着目すると(図4)、蛍石結晶の周囲に、隔壁を介してフッ化物ガス捕捉層を設けて熱処理した場合(実施例)には、Delaunay距離の標準偏差が80μm以下となり、カラーセンター吸収強度(レーザ耐久性の代替評価パラメータ)が顕著に高まることが判明した。このような観点から、本蛍石のVoronoi面積の標準偏差は80μm以下であるのが好ましく、特に60μm以下、中でも特に50μm以下であるのがより一層好ましいと考えることができる。

0060

1真空容器
2加熱装置
3アニーリングケース
4支持容器
5フッ化物ガス捕捉層
6隔壁容器
7スカベンジャー或いはフッ化剤
50 CaF2結晶

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