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技術 血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法

出願人 DIC株式会社
発明者 高田哲生山東典子原口和敏
出願日 2011年9月8日 (8年9ヶ月経過) 出願番号 2011-196010
公開日 2013年3月28日 (7年3ヶ月経過) 公開番号 2013-055907
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理 高分子組成物
主要キーワード ゴムヘラ ストロー状 プラスチック製基材 性質変化 無機粘土鉱物 疎水性状態 三次元網目 水膨潤性ヘクトライト
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課題

培養基材表面と血液由来単核細胞群中の接着性細胞との間の接着力を制御し、高い培養(増殖)性と、培養後の低温処理による高い剥離性を有する血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法、及び培養された接着性細胞を提供する。

解決手段

メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とを含有する細胞培養基材の上に、血液由来単核細胞群を播種し、成長因子を使用せずに血液由来単核細胞群中の接着性細胞のみを選択的に細胞培養基材上で接着増殖させ、培地交換により、培養基材表面に接着していない細胞を除き、次いで細胞培養基材の表面に接着し増殖された接着性細胞を基材から剥離することを特徴とする血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

概要

背景

従来、動物組織血液由来単核細胞等の細胞培養基材としては、主にプラスチック(例えばポリスチレン)製容器が使用されてきた。これら容器は、細胞培養を有効に行うために、その表面にプラズマ処理や、シリコン細胞接着因子等のコーティングなどの表面処理が施されている。これら細胞培養容器の培養性が細胞の種類により異なる。例えば血液由来単核細胞の場合、細胞の増殖が非常に遅い。一方、一般に用いられる増殖できる細胞例えば線維芽細胞などについては、培養(増殖)した細胞が容器表面接着しており、細胞を単離・回収するためには、トリプシ等のタンパク質加水分解酵素化学薬品物理的操作を用いて、容器表面から剥離する必要があった。このような酵素や化学薬品、物理的操作により細胞を剥離する操作は、細胞と基材の結合部分が切断されるだけではなく、細胞同士の結合も切断されるため、細胞を増殖している形状のままで取り出すことができなかったり、細胞の基底タンパクダメージを受けたりして、予期せぬ細胞の性質変化を引き起こす可能性があった。

近年、細胞培養容器の表面にポリN−イソプロピルアクリルアミドのような下限臨界溶解温度(LCST)を有するポリマー極薄被覆した基材を使用して、細胞培養温度ではポリマーが疎水性状態を示し細胞がポリマーに接着し、培養後にポリマーを低温処理して親水性状態にすることにより、細胞とポリマーとの接着性を低下させ、細胞を加水分解酵素や化学薬品を使用せずに基材から細胞をシート状に剥離する技術が報告されている(例えば特許文献1及び2、非特許文献1参照)。

しかし、このような培養基材も、細胞の増殖が遅く、培養に適さない細胞種が存在し、更に、この培養基材が放射線(例えばγ線滅菌処理を行うと、ポリマー同士が架橋し、LCSTを有するポリマーの温度応答性が大きく低下してしまい、本来の細胞の剥離しやすさが無くなる問題があった。

一方、(メタアクリル酸エステル系モノマー(a)を含むモノマー重合体(P)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなる有機無機複合体粒子(X)の分散液を乾燥してなる有機無機複合体(X)の乾燥皮膜を表面に有する細胞培養基材が開示されている(例えば特許文献3参照)。

しかし、上記従来文献においては、血液由来単核細胞群からの接着性細胞選択的培養方法及び剥離方法に関する具体的手段は開示されていない。

概要

培養基材表面と血液由来の単核細胞群中の接着性細胞との間の接着力を制御し、高い培養(増殖)性と、培養後の低温処理による高い剥離性を有する血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法、及び培養された接着性細胞を提供する。メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とを含有する細胞培養基材の上に、血液由来単核細胞群を播種し、成長因子を使用せずに血液由来単核細胞群中の接着性細胞のみを選択的に細胞培養基材上で接着増殖させ、培地交換により、培養基材表面に接着していない細胞を除き、次いで細胞培養基材の表面に接着し増殖された接着性細胞を基材から剥離することを特徴とする血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。なし

目的

本発明が解決しようとする課題は、培養基材表面と血液由来の単核細胞群中の接着性細胞との間の接着力を制御し、高い培養(増殖)性と、培養後の低温処理による高い剥離性を有する血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法、及び培養された接着性細胞を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とを含有する細胞培養基材の上に、血液由来単核細胞群播種し、成長因子を使用せずに血液由来単核細胞群中の接着性細胞のみを選択的に細胞培養基材上で接着増殖させ、培地交換により、培養基材表面に接着していない細胞を除き、次いで細胞培養基材の表面に接着し増殖された接着性細胞を基材から剥離することを特徴とする血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法

請求項2

前記細胞培養基材が、更に、N-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)を含有する請求項1記載の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

請求項3

前記重合体(A)と重合体(B)との質量比((B)/(A))が、0.01〜1.5の範囲にある請求項2記載の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

請求項4

前記重合体(A)と、前記無機材料(C)との質量比((C)/(A))が、0.03〜0.8の範囲にある請求項1〜3のいずれか一つに記載の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

請求項5

タンパク質分解酵素を使用せずに培養細胞を基材から剥離する請求項1〜4のいずれか一つに記載の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

請求項6

25℃以下の低温処理及び/または物理的な外部刺激により該基材から培養細胞を剥離する請求項1〜5のいずれかに記載の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

請求項7

前記血液が、臍帯血末梢血である請求項1〜6のいずれか一つに記載の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法。

請求項8

請求項1〜7のいずれかに記載の培養方法で製造された血液由来単核細胞群からの接着性細胞。

技術分野

0001

本発明は、メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と無機材料(C)とを含有する細胞培養基材上での、血液由来単核細胞群からの接着性細胞選択的培養方法、及びそれによって得られる培養接着細胞に関する。

背景技術

0002

従来、動物組織血液由来単核細胞等の細胞培養基材としては、主にプラスチック(例えばポリスチレン)製容器が使用されてきた。これら容器は、細胞培養を有効に行うために、その表面にプラズマ処理や、シリコン細胞接着因子等のコーティングなどの表面処理が施されている。これら細胞培養容器の培養性が細胞の種類により異なる。例えば血液由来単核細胞の場合、細胞の増殖が非常に遅い。一方、一般に用いられる増殖できる細胞例えば線維芽細胞などについては、培養(増殖)した細胞が容器表面接着しており、細胞を単離・回収するためには、トリプシ等のタンパク質加水分解酵素化学薬品物理的操作を用いて、容器表面から剥離する必要があった。このような酵素や化学薬品、物理的操作により細胞を剥離する操作は、細胞と基材の結合部分が切断されるだけではなく、細胞同士の結合も切断されるため、細胞を増殖している形状のままで取り出すことができなかったり、細胞の基底タンパクダメージを受けたりして、予期せぬ細胞の性質変化を引き起こす可能性があった。

0003

近年、細胞培養容器の表面にポリN−イソプロピルアクリルアミドのような下限臨界溶解温度(LCST)を有するポリマー極薄被覆した基材を使用して、細胞培養温度ではポリマーが疎水性状態を示し細胞がポリマーに接着し、培養後にポリマーを低温処理して親水性状態にすることにより、細胞とポリマーとの接着性を低下させ、細胞を加水分解酵素や化学薬品を使用せずに基材から細胞をシート状に剥離する技術が報告されている(例えば特許文献1及び2、非特許文献1参照)。

0004

しかし、このような培養基材も、細胞の増殖が遅く、培養に適さない細胞種が存在し、更に、この培養基材が放射線(例えばγ線滅菌処理を行うと、ポリマー同士が架橋し、LCSTを有するポリマーの温度応答性が大きく低下してしまい、本来の細胞の剥離しやすさが無くなる問題があった。

0005

一方、(メタアクリル酸エステル系モノマー(a)を含むモノマーの重合体(P)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなる有機無機複合体粒子(X)の分散液を乾燥してなる有機無機複合体(X)の乾燥皮膜を表面に有する細胞培養基材が開示されている(例えば特許文献3参照)。

0006

しかし、上記従来文献においては、血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法及び剥離方法に関する具体的手段は開示されていない。

0007

特公平6−104061
特開平5−192138
特許第4430124

先行技術

0008

大和雅之、岡野光夫「ナノバイオテクノロジー最前線」第6章、P.340−P.347、シーエムシー出版(2003年出版)

発明が解決しようとする課題

0009

本発明が解決しようとする課題は、培養基材表面と血液由来の単核細胞群中の接着性細胞との間の接着力を制御し、高い培養(増殖)性と、培養後の低温処理による高い剥離性を有する血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法、及び培養された接着性細胞を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と、無機材料(C)とを含有する細胞培養基材、及びメトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と、N-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)と、無機材料(C)とを含有する細胞培養基材の上では、血液由来単核細胞群中の接着性細胞が優れた増殖性を有し、また、上記培養基材を用いた場合、基材表面と細胞間の接着力を低く維持しながら、血液由来単核細胞群中の接着性細胞を選択的に培養することができ、更に、培養後低温処理により、培養基材の表面に接着し増殖された接着性細胞を基材表面から容易に剥離できる、血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法を見出し、本発明を完成するに至った。

0011

即ち、本発明は、メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とを含有する細胞培養基材の上に、血液由来単核細胞群を播種し、成長因子を使用せずに血液由来単核細胞群中の接着性細胞のみを選択的に細胞培養基材上で接着増殖させ、培地交換により、培養基材表面に接着していない細胞を除き、次いで細胞培養基材の表面に接着し増殖された接着性細胞を基材から剥離することを特徴とする血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法を提供する。

0012

また、本発明は、前記細胞培養基材が、更に、N-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)を含有する血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法を提供する。

0013

また、本発明は、前記培養方法で製造された血液由来単核細胞からの接着性細胞を提供する。

0014

本発明の細胞培養基材の最大の特徴は、上記無機材料(C)の構成部分が血液由来単核細胞群中の接着性細胞の増殖を担い、メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)が細胞に対して低接着性を付与し、更に、重合体(A)及びN-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)は温度変化による細胞の剥離を担うことにある。それぞれの部分を接着性細胞の増殖、剥離の状況に応じてそれぞれ単独に調節できることにある。例えば、培養時(37℃)、接着性細胞が培養表面と弱い接着性を維持しながら、高い増殖能で増殖し、培養終了後、温度を30℃以下に下げることにより(例えば室温)、重合体(B)の部分がより高い親水性を示し、培養表面と細胞間の接着力が更に弱くなり、培養された接着性細胞が容易に剥離することができる。また、メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)と細胞との間の接着性が十分に弱い場合、重合体(A)単独でも、培地の低温処理で、両者間の接着性が更に弱くなり、培養細胞を容易に剥離・回収することができる。ここでいう接着性細胞とは、樹状細胞マクロファージ細胞間葉系幹細胞のような細胞のことをいい、また、ここで言う血液とは、ヒトまたはその他の動物臍帯血液または末梢血液のことをいう。

0015

培養後、薬剤タンパク質分解酵素)を使用することなく、低温処理のみで、培養細胞を容易に基材表面から剥離し、細胞にダメージを与えずに、高い収率で細胞を回収することができることにある。

0016

重合体(A)は主にイオン結合水素結合などにより無機材料(C)と相互作用し結合している。この結合力は強く、容易にポリマーと無機材料(C)を引き離すことはできない。

発明の効果

0017

本発明の血液由来単核細胞群からの接着性細胞の選択的培養方法は、細胞と培養表面の間に弱い接着力を維持しながら、高い増殖能を有し、培養した細胞を、薬剤(トリプシン等)を使用することなく、培養細胞を容易に培養基材表面から剥離、回収できる特徴を有する。
また、本培養方法に用いられる培養基材は、γ線や電子線などの放射線滅菌が可能である特徴を有する。

0018

メトキシエチルアクリレートモノマー(a)の使用により、血液由来単核細胞群中の接着性細胞の初期接着性を低く維持でき、細胞増殖性と剥離性が良好な細胞培養基材が得られる。また、モノマー(a)は、これらの細胞培養基材をポリスチレンなどのプラスチック製基材等の支持体の表面に積層させる場合は、両者間の接着性が強く、製造が簡便にできる特徴も持っている。

0019

また、培養性や剥離性、及びその他の物性を調整するため、必要に応じてその他の共重合モノマーとして、例えば、スルホン基カルボキシル基のようなアニオン基を有するアクリル系モノマー、4級アンモニウム基のようなカチオン基を有するアクリル系モノマー、4級アンモニウム基と燐酸基とを持つ両性イオン基を有するアクリル系モノマー、カルボキシル基とアミノ基とをもつアミノ酸残基を有するアクリル系モノマー、糖残基を有するアクリル系モノマー、また、水酸基を有するアクリル系モノマー、更にポリエチレングリコールのような親水性鎖ノニルフェニル基のような疎水基を合わせ持つ両親媒性アクリル系モノマー、N−置換(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどを併用することができる。

0020

本発明に用いる無機材料(C)は、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料である。水膨潤性粘土鉱物としては、層状に剥離可能な水膨潤性粘土鉱物が挙げられ、好ましくは水または水と有機溶剤との混合溶液中で膨潤し均一に分散可能な粘土鉱物、特に好ましくは水中で分子状(単一層)またはそれに近いレベル均一分散可能な無機粘土鉱物が用いられる。具体的にはナトリウム層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト水膨潤性モンモリライト、水膨潤性サポナイト水膨潤性合成雲母、等が挙げられる。これらの粘土鉱物を混合して用いても良い。

0021

本発明に用いるシリカ(SiO2)としては、コロイダルシリカが挙げられ、好ましくは水溶液中で均一に分散可能で、粒径が10nm〜500nmのコロイダルシリカ、特に好ましくは粒径が10〜50nmのコロイダルシリカが用いられる。

0022

本発明の細胞培養基材において、メトキシエチルアクリレート(a)の重合体(A)とN-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)との質量比((B)/(A))が、0.01〜1.5であることが好ましく、0.03〜0.7がより好ましく、0.1〜0.3が特に好ましい。質量比((B)/(A))がこの範囲であると、接着性細胞に対し良好な培養性と高い剥離性を兼ね備えることができ、好ましい。

0023

また、本発明の細胞培養基材において、重合体(A)と無機材料(C)との質量比((C)/(A))が、0.03〜0.8であることが好ましく、0.05〜0.3がより好ましく、0.07〜0.1が特に好ましい。質量比((C)/(A))がこの範囲であると、接着性細胞に対し良好な培養性と高い剥離性を兼ね備えることができ、好ましい。

0024

更に、本発明の細胞培養基材で培養した接着性細胞を、培地温度を30℃以下に下げ、静置して、細胞を自然に剥離させることもできるし、または培地温度を30℃以下に下げた後、以下に列挙した方法と併用して、細胞を容易に剥離させることもできる。
(1)培養容器内の培地を軽く揺らして細胞を剥離させる方法。
(2)ピペットで培地を吸ったり出したりするピペッティング操作で剥離させる方法。
(3)ガラス棒、ピペットの先や、ゴムヘラ等を培養細胞と培養基材間に差し込んで、細胞を持ち上げるように剥離させる方法、
(4)ストロー状器材吸引しながら剥離させる方法等がある。

0025

本発明の培養方法で製造された接着性細胞は、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を使用しないため、細胞の基底タンパクがダメージを受けず、生体内細胞形態により近い状態にあり、細胞活性も高く、移植後の定着性治癒性が高いと考えられる。

0026

本発明の培養基材の製造方法は、メトキシエチルアクリレート(a)重合体(A)とN-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)が、無機材料(C)と相互作用し、有機無機複合体を形成できるものであれば、特に限定されない。例えば、メトキシエチルアクリレート(a)と前記無機材料(C)および重合開始剤(D)とを混合した水媒体(E)を支持体に塗布して、前記メトキシエチルアクリレート(a)を重合させることにより、重合体(A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の薄層を形成する製造方法が挙げられる。

0027

前記製造方法に用いる水媒体(E)は、モノマー(a)や無機材料(C)などを含むことができ、重合によって、物性のよい有機無機複合体が得られれば良く、特に限定されない。例えば水、または水と混和性を有する溶剤及び/またはその他の化合物を含む水溶液であってよく、その中には更に、必要に応じて防腐剤抗菌剤抗生物質着色料香料、酵素、たんぱく質コラーゲン、糖類、アミノ酸類ペプチド類、DNA類、塩類水溶性有機溶剤類、界面活性剤高分子化合物レベリング剤などを含むことができる。

0028

本発明に用いられる重合開始剤(D)としては、公知のラジカル重合開始剤適時選択して用いることができる。好ましくは水溶性または水分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが好ましく用いられる。具体的には、重合開始剤として、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えばVA−044、V−50、V−501(いずれも和光純薬工業株式会社製)の他、Fe2+と過酸化水素との混合物などが例示される。

0029

触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどは好ましく用いられる。但し、触媒は必ずしも用いなくてもよい。重合温度は、重合触媒開始剤の種類に合わせて例えば0℃〜100℃が用いられる。重合時間も数十秒〜数十時間の間で行うことが出来る。

0030

一方、光重合開始剤は、酸素阻害の影響を受けにくく、重合速度が速いため、重合開始剤(D)として好適に用いられる。具体的には、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−メチルチオキサントンなどのケトン類ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル類ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシケトン類メチルベンゾイルホルメートなどのフェニルグリオキシレート類、メタロセン類などが挙げられる。

0031

本工程に用いられる光としては、電子線、γ線、X線紫外線可視光などを用いることができるが、中でも装置や取り扱いの簡便さやモノマー(b)の重合と同時に架橋を起こさせない観点から紫外線を用いることが好ましい。照射する紫外線の強度は10〜500mW/cm2が好ましく、照射時間は一般に0.1秒〜200秒程度である。通常の加熱によるラジカル重合においては、酸素が重合の阻害因子として働くが、本発明では、必ずしも酸素を遮断した雰囲気溶液の調製および紫外線照射による重合を行う必要がなく、空気雰囲気でこれらを行うことが可能である。但し、紫外線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことによって、更に重合速度を速めることが可能で、望ましい場合がある。

0032

また、本発明の培養基材の第二の製造例としては、水媒体(E)中の前記無機材料(C)の濃度が下記式(1)又は式(2)で表される範囲となるように、前記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)とを水媒体(E)に混合した後、前記モノマー(a)を重合させることにより重合体(A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の分散液(L)を製造する第1工程、
前記分散液(L)を基材に塗布し、その後乾燥することにより前記複合体(X)の薄層を形成する第2工程を順次行なうことを特徴とする細胞培養基材の製造方法が挙げられる。
式(1) Ra<0.19のとき
無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(2) Ra≧0.19のとき
無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材料(C)の質量を水媒体(E)と無機材料(C)の合計質量で除して100を掛け数値、Raは無機材料(C)と重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)

0033

無機材料(C)の水媒体に対する濃度(質量%)は式(1)又は式(2)で表される範囲内であると、良好な複合体(X)の分散液(L)が得られ、支持体への塗布が容易で、平滑で均一な薄い塗膜が得られ、好ましい。

0034

本発明の製造方法で製造される分散液(L)は、そのまま使用してもよいし、水洗などによる精製工程を経てから使用してもよい。また該分散液(L)に更にレベリング剤や界面活性剤、ペプチド、たんぱく質、コラーゲン、アミノ酸類、高分子化合物などを添加して使用してもよい。

0035

以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。

0036

(実施例1)重合体(A)と無機材料(C)からなる培養機材(重合体(B)を含まない)例。
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(C)、水媒体(E)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(C)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、水媒体(E)として水100g、を均一に混合して反応溶液(1)を調製した。

0037

[重合開始剤(D)を溶媒(F)に溶解させた溶液の調整]
溶媒(F)として、メタノール9.8g、重合開始剤(D)として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)0.2gを、均一に混合して溶液(2)を調製した。

0038

[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(1)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L1)を作製した。

0039

この反応系のRa=0.06、無機材料(C)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79

0040

[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に、上記複合体(X)の分散液(L1)を入れ、スピンコーターを用いて該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材1を得た。

0041

[血液由来単核細胞の培養・回収]
上記得られた細胞培養基材1を照射線量10kGyの電子線で滅菌した(日本照射サービス株式会社)後、培地としてリンパ球増殖基本培地(LGM-3)を適量入れ、ヒト末梢血液由来の単核細胞(TakaraCC-2072、タカラバイオ株式会社)を2.0×106個/Dish播種して、5%二酸化炭素中、37℃で4日間培養を行った。次いで、ディッシュ中の培地及び浮遊している単核細胞を除いて、予め冷蔵庫で冷やした冷培地を入れ、10分間静置した後、ピペットで培地を吸ったり出したりするピペッティング操作を10回程行ったところ、培養基材の表面に接着、増殖されたほぼすべての接着性細胞が培養基材1の表面から剥離されたことが観察された。自然剥離された接着性細胞の数、及び培養基材表面から剥離せず残留した細胞の数をそれぞれ数えて、下記式(3)より、細胞の回収率を求めた。自然剥離された細胞数は6.4×104個で、剥離せず基材に残留した細胞数は1.1×104個、回収率は85%であった。
上記培養基材1で培養された接着性細胞の総数(7.5×104個)が、未コート培養シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)を用いた場合(2.3×104個)の3.3倍であった。


(3)

0042

この実施例より、重合体(A)と無機材料(C)からなる培養基材(重合体(B)を含まない)が、通常のティッシュカルチャデイッシュに比べ、細胞培養性が高く、また、培養基材表面と細胞間の接着性が低く、低温処理のみで細胞が容易に剥離できることが理解できる。

0043

(実施例2)重合体(A)、(B)と無機材料(C)からなる培養基材例。
[N−イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)の水溶液の調製]
N—イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)1.7g、水10g、溶液(2)140μl、を混合した後、該溶液を入れるガラス容器周りを冷却しながら(約20℃)、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm2の紫外線を180秒照射し、N-イソプロピルアクリルアミドを重合させた後、更に水を5g添加し、重合体(B)の水溶液(PNIPA2)を調製した。DIGITAL VISCOMATE粘度計(MODEL VM-100A、山一電機株式会社製)を用いてこの溶液の粘度を測定して、粘度は511mPa・sであった。測定時の溶液温度は20℃であった。

0044

また、Shodex GPC System−21装置(昭和電工株式会社製)で測定した結果、このポリN—イソプロピルアクリルアミドの重量平均分子量Mwは3.40×106であった。測定時の溶媒として10mmol/LのLiBrを含有するN,N−ジメチルホルムアミドDMF)溶液を使用した。分子量の計算に使用したポリスチレン標準物質としては、STANDARD SH−75とSM−105キット(昭和電工株式会社製)を使用した。

0045

[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(C)、水媒体(E)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(C)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、水媒体(E)として水100g、を均一に混合して反応溶液(2)を調製した。

0046

[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(2)全量に、前記溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L2)を作製した。

0047

この反応系のRa=0.06、無機材料(C)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79

0048

[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
上記分散液(L2)全量に、N-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)の水溶液(PNIPA2)を7g添加し、均一に混合した後、直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ43016)に入れ、スピンコーターを用いて該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材2を得た。

0049

[血液由来単核細胞の培養・回収]
上記得られた細胞培養基材2を照射線量10kGyの電子線で滅菌した(日本照射サービス株式会社)後、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞群の培養を行い、低温処理による接着性細胞の回収を行った。自然剥離された接着性細胞の数は6.7×104個で、剥離せず基材に残留した細胞数は3×103個、回収率は96%であった。
上記培養基材2で培養された接着性細胞の総数(7×104個)が、未コート培養シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)を用いた場合(2.3×104個)の3倍であった。

0050

この実施例より、重合体(A)と無機材料(C)に温度応答性を有する重合体(B)を配合させた培養基材が、通常のティッシュカルチャデイッシュに比べ、細胞培養性が高く、低温処理のみで細胞が容易に剥離できることが理解できる。

0051

(実施例3)
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(C)、水媒体(E)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(C)としてコロイダルシリカ20質量%水溶液(商品スノーテックス20、日産化学工業株式会社製)1g(SiO2=0.2g)、水媒体(E)として水100g、を均一に混合して反応溶液(3)を調製した。

0052

[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(3)全量に、前記溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L3)を作製した。

0053

この反応系のRa=0.06、無機材料(C)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79

0054

[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
上記分散液(L3)全量に、N-イソプロピルアクリルアミドの重合体(B)の水溶液(PNIPA2)を1g添加し、均一に混合した後、直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に入れ、スピンコーターを用いて該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材3を得た。

0055

[血液由来単核細胞の培養・回収]
上記得られた細胞培養基材3を照射線量10kGyの電子線で滅菌した(日本照射サービス株式会社)後、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞群の培養を行い、低温処理による接着性細胞の回収を行った。自然剥離された接着性細胞の数は4.4×104個で、剥離せず基材に残留した細胞数は1.1×104個、回収率は80%であった。
上記培養基材3で培養された接着性細胞の総数(5.5×104個)が、未コート培養シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)を用いた場合(2.3×104個)の2.4倍であった。

0056

この実施例より、無機材料(C)としてシリカを用いた場合の培養基材3が良好な培養性と自然剥離による高い回収率を有することが理解できる。

0057

(比較例1)
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)をそのまま用いて、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞群の培養を行った後、低温処理による接着細胞の回収を行ったところ、細胞は殆ど剥離しなかった。更にD-PBSと0.25% Trypsin−EDTAで処理し、細胞を回収し、細胞の数は2.3×104個であった。自然剥離による細胞の回収率は10%以下であった。

0058

この比較例より、通常のポリスチレン製セルカルチャデイッシュでは、ヒト末梢血液由来の単核細胞に対する培養(増殖)性が低く、培養された細胞もディッシュ表面に強く接着し、薬剤(トリプシン)を使用しない場合、容易に剥離することができないことが理解できる。

0059

(比較例2)
フィブロネクチン(354008、日本ベクトン・ディキンソン株式会)の水溶液を5μg/cm2になるようにポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)にコートしたものを用いて、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞群の培養を行った後、低温処理による接着性細胞の回収を行ったところ、細胞は殆ど剥離しなかった。更にD-PBSと0.25% Trypsin−EDTAで処理し、細胞を回収し、細胞の数は1.1×104個であった。自然剥離による細胞の回収率は10%以下であった。

0060

この比較例より、通常細胞の接着、伸展、及び増殖を促進するフィブロネクチンをコートした培養シャーレでは、ヒト末梢血液由来の単核細胞群中の接着性細胞に対する培養(増殖)性が低く、培養された接着性細胞もディッシュ表面に強く接着し、薬剤(トリプシン)を使用しない場合、容易に剥離することができないことが理解できる。

0061

(比較例3)重合体(A)のみの(無機材料(C)を含まない)基材の例
[メトキシエチルアクリレート(a)、水媒体(E)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、水媒体(E)として水100g、を均一に混合して反応溶液(3’)を調製した。

0062

実施例1と同様にして基材(3’)を製造した。実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞群を播種し、4日間培養したが、基材(3’)の表面に接着する細胞は殆ど見当たらなかった。

実施例

0063

この比較例より、無機材料(C)を含まない、重合体(A)のみの基材では、細胞との接着性が低過ぎて、細胞が増殖できないことが理解できる。

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