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技術 CVケーブルの劣化診断方法

出願人 株式会社ビスキャス
発明者 今博之
出願日 2011年7月29日 (7年11ヶ月経過) 出願番号 2011-166607
公開日 2013年2月7日 (6年5ヶ月経過) 公開番号 2013-029450
状態 特許登録済
技術分野 絶縁性に関する試験 短絡、断線、漏洩,誤接続の試験
主要キーワード 立ち上がり領域 ステップ回数 昇圧パターン 劣化診断手法 損失電流 測定ブリッジ 位相変化分 プロット位置
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (16)

課題

残留電荷測定に使用される設備を用いて、損失電流測定法による劣化診断を可能とすること。

解決手段

試験用変圧器1より、測定対象ケーブル3のケーブル導体遮蔽間に交流電圧課電し、所定の位相遮断する。この操作を、遮断位相を変えて測定実施の回数分繰り返して、各遮断位相に対する残留電荷量を取得し、その残留電荷量を微分して電流信号に変換する。この信号の周波数解析により、前記信号中に含まれる第3次高調波高調波成分電流の大きさ(I3)および位相(θ3)を導出し、損失電流法により劣化診断を行う。また、この劣化診断の実施の前あるいは後に、ステップ課電法による残留電荷測定を行い、残留電荷信号電圧に対する成分を取得して劣化診断を行い、損失電流法による劣化診断結果を合わせ、総合的に劣化診断結果を導き出す。

概要

背景

電力ケーブル絶縁体使用環境下において水分が浸入した場合、水分と電圧との作用により、絶縁体中水トリーが発生する。水トリーは時間と共にその長さが伸展する。
水トリー内部は、低抵抗を有する水で充填されていることから、水トリーの発生および伸展は、絶縁体内において導電性異物として作用する結果を招き、電界の強調をもたらす。当該電界が絶縁破壊強度に達した場合には、絶縁体の絶縁破壊(全路破壊)となり、絶縁破壊事故となる。
この様な絶縁破壊事故を未然に防ぐためには、電力ケーブル絶縁体内に水トリーが発生しているか否か、あるいは水トリーは長いほど絶縁性能の低下の程度が高いことから、絶縁体内に発生している水トリーの長さがどの程度なのかを把握する診断手法による保全が重要である。
11kV未満の電圧階級の電力ケーブルの場合、使用される電界強度が低く、かつ、水トリー自体もある程度の絶縁性能を有していることから、絶縁体中を水トリーが貫通する橋絡水トリーが発生しても、直ちに、絶縁破壊に至るというわけではない。このため、導体絶縁層外周との間に直流電圧課電し、絶縁体中を貫通している抵抗の低い水トリーを介して生じる漏れ電流計測することにより、水トリーの存在の有無を判断でき、その簡便性から従来から用いられている。

一方、11kV以上の特別高圧ケーブルにおいては、11kV未満の電圧階級の電力ケーブルとは異なり、使用される電界強度が高いことから、発生した水トリーが絶縁体中を貫通する前に絶縁破壊に至る場合がほとんどである。この場合には、水トリーが絶縁体中を貫通していないことから、等価回路的には、低抵抗の水トリーと健全である絶縁体が直列に接続されていることになるので、直流電圧を課電し、漏れ電流を計測しても、大きな電流は流れず、水トリーの検出は困難である。
上記背景を基に、これまでに多くの診断手法が開発検討され、近年、電圧階級として11kV以上の特別高圧ケーブルに属するケーブルの中で、22/33kV級あるいは66/77kV級のケーブルにおいて、残留電荷法および損失電流法が実際に保守診断技術として適用されている。

残留電荷法では、前工程として直流電圧あるいは、この代替波形を課電(前課電)し、続いて後工程で交流電圧をステップ状に課電(測定用課電)し、各電圧における残留電荷信号を検出し、このときに残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を劣化診断指標として用いる手法である(例えば特許文献1参照)。なお、本発明者は残留電荷法において、測定時間の短縮化を図るため前工程の直流電圧の代替として交流遮断波形を用いた手法を提案した(例えば特許文献3参照)。さらに、残留電荷法において、後工程の課電をステップ状に行う代わりに所定の高圧交流電圧を一回課電することにより得られる残留電荷信号波形を波形分離することによって放出電圧(電界強度)を導くことも提案した(例えば非特許文献1参照)。

一方、損失電流法は、交流電圧をCVケーブルに課電した状態のときに絶縁体を流れる電流中から課電電圧位相と同一の位相を有する抵抗性の成分である損失電流を検出し、これを分析して劣化診断をする方法である(例えば特許文献2、特許文献4参照)。すなわち、水トリーが絶縁体中に存在している場合には、損失電流波形中には高調波が含まれる様になり、その波形は正弦波形状から歪む様になる。これは、水トリー部の電圧−電流特性における非線形性に起因していると考えられている。損失電流法は、この歪波形の中の第3次高調波成分を抽出し、その電流の大きさおよび位相差により劣化診断を行う方法である。

概要

残留電荷測定に使用される設備を用いて、損失電流測定法による劣化診断を可能とすること。試験用変圧器1より、測定対象ケーブル3のケーブル導体遮蔽間に交流電圧を課電し、所定の位相で遮断する。この操作を、遮断位相を変えて測定実施の回数分繰り返して、各遮断位相に対する残留電荷量を取得し、その残留電荷量を微分して電流信号に変換する。この信号の周波数解析により、前記信号中に含まれる第3次高調波高調波成分電流の大きさ(I3)および位相(θ3)を導出し、損失電流法により劣化診断を行う。また、この劣化診断の実施の前あるいは後に、ステップ課電法による残留電荷測定を行い、残留電荷信号の電圧に対する成分を取得して劣化診断を行い、損失電流法による劣化診断結果を合わせ、総合的に劣化診断結果を導き出す。

目的

なお、残留電荷法により実線路において劣化診断を行い、その後に破壊試験である耐圧試験を実施することにより、実験室レベルにおける評価結果と実線路における評価結果を対比させ、その有効性を検証する事例もあるが、これはあくまでも残留電荷法の精度を検証することを目的とした

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

CVケーブル劣化診断法であって、CVケーブルに交流電圧を任意の位相遮断する交流遮断波形課電する前工程と、この前工程でCVケーブルの水トリー部に蓄積した電荷を放出させて残留電荷を測定する後工程とを備え、上記前工程で課電する交流電圧の遮断する位相を変化させ、各遮断位相に対する残留電荷量を測定して遮断位相と残留電荷量との関係を求め、その残留電荷量を微分して電流信号に変換した後に、当該電流信号の周波数解析により、前記電流信号中に含まれる高調波成分を取得し、診断を行うことを特徴とするCVケーブルの劣化診断方法

請求項2

劣化診断に用いる前記高調波成分が、第3次高調波成分であることを特徴とする請求項1に記載のCVケーブルの劣化診断方法。

請求項3

高調波成分を取得した後の劣化診断は、第3次高調波成分の大きさおよびその電圧位相に対する位相差を用いて行われることを特徴とする請求項2に記載のCVケーブルの劣化診断方法。

請求項4

請求項1に関わる劣化診断の実施の前あるいは後に、残留電荷測定を行い、残留電荷信号電圧に対する成分を取得し、残留電荷法による劣化診断を行い、請求項1による劣化診断結果を合わせ、総合的に劣化診断結果を導き出すことを特徴とするCVケーブルの劣化診断方法。

技術分野

背景技術

0002

電力ケーブル絶縁体使用環境下において水分が浸入した場合、水分と電圧との作用により、絶縁体中水トリーが発生する。水トリーは時間と共にその長さが伸展する。
水トリー内部は、低抵抗を有する水で充填されていることから、水トリーの発生および伸展は、絶縁体内において導電性異物として作用する結果を招き、電界の強調をもたらす。当該電界が絶縁破壊強度に達した場合には、絶縁体の絶縁破壊(全路破壊)となり、絶縁破壊事故となる。
この様な絶縁破壊事故を未然に防ぐためには、電力ケーブル絶縁体内に水トリーが発生しているか否か、あるいは水トリーは長いほど絶縁性能の低下の程度が高いことから、絶縁体内に発生している水トリーの長さがどの程度なのかを把握する診断手法による保全が重要である。
11kV未満の電圧階級の電力ケーブルの場合、使用される電界強度が低く、かつ、水トリー自体もある程度の絶縁性能を有していることから、絶縁体中を水トリーが貫通する橋絡水トリーが発生しても、直ちに、絶縁破壊に至るというわけではない。このため、導体絶縁層外周との間に直流電圧課電し、絶縁体中を貫通している抵抗の低い水トリーを介して生じる漏れ電流計測することにより、水トリーの存在の有無を判断でき、その簡便性から従来から用いられている。

0003

一方、11kV以上の特別高圧ケーブルにおいては、11kV未満の電圧階級の電力ケーブルとは異なり、使用される電界強度が高いことから、発生した水トリーが絶縁体中を貫通する前に絶縁破壊に至る場合がほとんどである。この場合には、水トリーが絶縁体中を貫通していないことから、等価回路的には、低抵抗の水トリーと健全である絶縁体が直列に接続されていることになるので、直流電圧を課電し、漏れ電流を計測しても、大きな電流は流れず、水トリーの検出は困難である。
上記背景を基に、これまでに多くの診断手法が開発検討され、近年、電圧階級として11kV以上の特別高圧ケーブルに属するケーブルの中で、22/33kV級あるいは66/77kV級のケーブルにおいて、残留電荷法および損失電流法が実際に保守診断技術として適用されている。

0004

残留電荷法では、前工程として直流電圧あるいは、この代替波形を課電(前課電)し、続いて後工程で交流電圧をステップ状に課電(測定用課電)し、各電圧における残留電荷信号を検出し、このときに残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を劣化診断指標として用いる手法である(例えば特許文献1参照)。なお、本発明者は残留電荷法において、測定時間の短縮化を図るため前工程の直流電圧の代替として交流遮断波形を用いた手法を提案した(例えば特許文献3参照)。さらに、残留電荷法において、後工程の課電をステップ状に行う代わりに所定の高圧交流電圧を一回課電することにより得られる残留電荷信号波形を波形分離することによって放出電圧(電界強度)を導くことも提案した(例えば非特許文献1参照)。

0005

一方、損失電流法は、交流電圧をCVケーブルに課電した状態のときに絶縁体を流れる電流中から課電電圧位相と同一の位相を有する抵抗性の成分である損失電流を検出し、これを分析して劣化診断をする方法である(例えば特許文献2、特許文献4参照)。すなわち、水トリーが絶縁体中に存在している場合には、損失電流波形中には高調波が含まれる様になり、その波形は正弦波形状から歪む様になる。これは、水トリー部の電圧−電流特性における非線形性に起因していると考えられている。損失電流法は、この歪波形の中の第3次高調波成分を抽出し、その電流の大きさおよび位相差により劣化診断を行う方法である。

0006

特許第3629409号公報
特許第3910867号公報
特許第4383393号公報
特許第4092645号公報

先行技術

0007

今博之、田中秀郎、塚本豊司、佐英章、「波形分離による残留電荷信号の評価方法」平成19年電気学会電力エネルギー部門大会論文集開催日2007年9月12日〜14日)、2−5〜2−6、

発明が解決しようとする課題

0008

上述したように、CVケーブルの劣化診断方法としては、従来から残留電荷法及び損失電流法が知れている。しかし、残留電荷法と、損失電流法では、測定のために使用される設備機器が異なっている。
すなわち、残留電荷法では、例えば特許文献1の図2,特許文献3の図1に示されるように、直流課電のための機器や交流電圧を課電した後に遮断するための機器が必要であり、一方、損失電流法では、特許文献2の図1、特許文献4の図1に示されるように、第3高調波の含有率が比較的低い交流電圧を課電するための機器や損失電流測定ブリッジ等の機器が必要であり、各々の診断手法に適した機器が必要である。
一方の手法において使用される機器を用いて他方の手法による劣化診断をも行うことができれば、それぞれの手法で使用される機器を用意することなく、一種類の機器を用いて残留電荷法、損失電流法による劣化診断を行うことが可能となり利便性が向上するが、現状では、それぞれに応じた機器を用意する必要がある。

0009

ところで、変圧器電動機などの電力機器における保守診断のための技術として、一つのみの劣化診断手法あるいは異常診断手法によらず、複数の手法により診断を行い、それらの結果を用いて総合的に診断を行う方法がある。これにより、各診断手法がお互いに補うことにより、最終的な診断結果の確度を上げることが可能となっている。
しかし、電力ケーブルの劣化診断では、上述したように、手法毎に用いる機器が異なるので、複数の手法を適用して総合的に診断を行うことはなされてはいない。このため、診断結果の確度は、用いる手法の精度に依存することになる。
なお、残留電荷法により実線路において劣化診断を行い、その後に破壊試験である耐圧試験を実施することにより、実験室レベルにおける評価結果と実線路における評価結果を対比させ、その有効性を検証する事例もあるが、これはあくまでも残留電荷法の精度を検証することを目的としたものであり、劣化診断測定を行った線路全てに対して同様な評価を行うことは現実的に不可能である(実線路では破壊を伴う試験を行うことは好ましくないことは言うまでもない。)。

0010

つまり、一般に、劣化診断結果に対するその確度は、実験室などの事前検討の段階では、劣化診断を実施した試料に対して破壊試験を実施し、検証することによって可能であるが、実際に布設されている電力ケーブル線路においては、測定を実施することは可能であるものの、破壊試験を実施して診断測定結果の確度を明確にすることはできない。
そこで、残留電荷法及び損失電流法の2つの手法を用いて診断を行い、それらの結果を総合的に判断して、劣化診断を行うことにより、劣化診断結果の確度を向上させることが考えられる。
しかし、現状では、前記したように残留電荷法と、損失電流法では使用される機器が相違するため、仮に二つ以上の手法で一つの線路の診断を行う場合には、一つの診断が終了した後、診断のための機器を撤収し、あらためて次の診断実施のための機器を取り付ける必要があり、これに要する時間は多大であり、当該線路における診断のための停電の時間は長くできないことを考慮すれば、実現は困難である。

0011

本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、本発明の第1の目的は、残留電荷法に使用される設備を用いて、損失電流法による劣化診断を行うことができる劣化診断方法を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、損失電流法と残留電荷法とを併用し劣化診断結果の精度向上を可能とすることである。

課題を解決するための手段

0012

上記背景を鑑み、既に実線路に対して適用されている残留電荷法および損失電流法に注目し、一方の診断手法により得られた信号から他方の診断手法で用いる劣化診断の指標を導出する方法を検討した。その結果、本発明者は、残留電荷法において用いられる手法を基に、この結果より損失電流法で用いる劣化診断指標を導出する本願の発明を完成した。つまり、測定を実施するために用いる設備は残留電荷法に用いるものだけで済むことになる。
残留電荷法においては、従来、測定を実施する前に前工程として直流電圧課電を行い、水トリー部に電荷蓄積させ、その後に後工程として測定用の交流電圧を課電して残留電荷測定を実施していた。しかしながら、実際の線路において直流電圧を課電する際には、電力ケーブルは大きな静電容量を有するために、電圧の昇圧、降圧に長い時間が必要であるという問題があった。この時間を短縮し、測定時間の短縮化を図るために、前述したように、本発明者は、先に、前工程において直流電圧の代替として交流遮断波形を用いた手法を提案した(前記特許文献3)。
前工程で課電電圧として交流遮断波形を用いた残留電荷法は、交流電圧をゼロ位相付近で遮断する技術によって実現されている。この技術を用い、任意の位相で交流電圧を遮断し、その後の後工程において所定の交流電圧を課電すると残留電荷量を測定できる。
本発明はこの技術をさらに発展させたものである。本発明者は、前工程において任意の位相(θa)にて交流電圧を遮断した場合に検出される残留電荷量は、遮断した位相の前の半波長の間に蓄積した電荷量(Q0)から、遮断した位相(θa)までの間の逆極性の電圧課電の下で移動した分を減じた電荷量であり、遮断する位相(θa)を変化させると検出される電荷量が変化することを見い出し、本発明に想到した。

0013

これらの電荷量の移動は、交流電圧課電下における水トリー内部での電荷の移動を反映している。したがって、各遮断位相における残留電荷量を測定し、これを時間微分することにより電流波形を取得することができる。この電流波形は、水トリーに起因して流れる電流に他ならず、この電流波形を周波数解析することにより、前記特許文献2に記載の損失電流法で用いる第3次高調波成分の大きさおよび課電した交流電圧の位相に対する位相差を導くことができる。
また、このようにして導出された第3次高調波成分電流の大きさ(I3)および位相(θ3)を前記特許文献2に記載される損失電流法により評価することにより、劣化の程度を診断することができる。

0014

ところで、劣化診断を行うに際しては、適切な診断結果を導くために複数の劣化診断手法を用いて総合的に判断することが望ましく、かつ、複数の診断手法を、限られた作業時間内で提供することが望ましい。
そこで、前記手順で損失電流法による劣化診断を行う前、あるいは後に、残留電荷法による劣化診断を行うことが望ましい。
残留電荷法として、前記特許文献1にて用いられているステップ課電法による残留電荷法を行えば、当該手法で劣化指標パラメータとして用いる放出電圧(電界強度)を導くことができる。
あるいは、前記非特許文献1に示されている残留電荷法の様に、所定の交流電圧を一回課電することにより得られる残留電荷信号波形を波形分離することによっても放出電圧(電界強度)を導くことができる。
これにより、対象となるケーブルの劣化程度を損失電流法で評価することができるとともに、残留電荷測定法により評価することが可能となる。

0015

本発明は、上記に基づき以下のようにして前記課題を解決する。
(1)CVケーブルの劣化診断法であって、CVケーブルに交流電圧を任意の位相で遮断する交流遮断波形を課電する前工程と、この前工程でCVケーブルの水トリー部に蓄積した電荷を放出させて残留電荷を測定する後工程とを備え、上記前工程で課電する交流電圧を遮断する位相を変化させ、各遮断位相に対する残留電荷量を測定して遮断位相と残留電荷量との関係を求め、その残留電荷量を微分して電流信号に変換した後に、当該電流信号の周波数解析により、前記電流信号中に含まれる高調波成分を取得し、診断を行う。
(2)上記(1)において、劣化診断に用いる前記高調波成分を第3次高調波成分とする。
(3)上記(2)において、高調波成分を取得した後の劣化診断は、第3次高調波成分の大きさおよびその電圧位相に対する位相差を用いて行う。
(4)上記(1)の劣化診断の実施の前あるいは後に、残留電荷測定を行い、残留電荷信号の電圧に対する成分を取得し、当該残留電荷法による劣化診断を行い、(1)の劣化診断結果を合わせ、総合的に劣化診断結果を導き出す。

発明の効果

0016

本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)本発明の劣化診断法によれば、残留電荷法を実施する装置で、損失電流法による劣化診断を実施できるので、診断装置共用でき、手法ごとに診断装置を準備する必要がない。
(2)CVケーブルに一つの診断装置を取り付ければ、残留電荷法による劣化診断と損失電流法による劣化診断を行えるので、2つの手法に対応した診断結果を得ることが、実際の診断実施に許容される時間内で十分に可能となり、これまでの一つの劣化診断手法による診断結果に依存していた従来の保守診断手法に比べ、確度の高い診断結果を得ることができる。

図面の簡単な説明

0017

本発明の実施例の課電および測定装置の構成例を示す図である。
交流電圧の遮断波形の例(1)を示す図である。
交流電圧の遮断波形の例(2)を示す図である。
交流電圧の遮断位相を変えた際の残留電荷量の時間的変化を示す図である。
各遮断位相における電荷量を示す図である。
第3次高調波成分電流の大きさ(I3)および位相(θ3)から劣化判定を行う方法を説明する図である。
交流遮断法により得た残留電荷信号から損失電流信号と等価な電流信号が得られる理由を説明する図である。
交流遮断法により得た残留電荷信号、損失電流信号、第3次高調波成分を示す図である。
交流遮断法により得た残留電荷信号を用い、損失電流測定法およびステップ課電法による劣化診断を行う場合の測定パターンの例(1)を示す図である。
交流遮断法により得た残留電荷信号を用い、損失電流測定法およびステップ課電法による劣化診断を行う場合の測定パターンの例(2)を示す図である。
交流遮断法により得た残留電荷信号を用い、損失電流測定法およびステップ課電法(波形分離)による劣化診断を行う場合の測定パターンの例(3)を示す図である。
波形分離法を行う際に使用されるデータベースに格納されたデータ例を示す図である。
波形分離を説明する図である。
交流遮断法により得た残留電荷信号を用い、損失電流測定法およびステップ課電法(波形分離)による劣化診断を行う場合の測定パターンの例(4)を示す図である。
本発明の手順に従い、交流電圧の遮断位相を変化させて取得した残留電荷量の位相特性を示す図である。

実施例

0018

<実施例1>
図1は本発明の実施例の課電および測定装置の構成例を示す図である。
同図に示すように課電装置は、交流電圧を課電する試験用変圧器1と昇圧パターン発生器2からなる。試験用変圧器1には測定対象ケーブル3が接続される。
試験用変圧器1の一次側には昇圧パターン発生器2の出力が接続され、交流電圧課電時、試験用変圧器1の出力電圧は昇圧パターン発生器2の出力に応じたパターンで上昇する。また、昇圧パターン発生器2に遮断信号を与えることにより、測定対象ケーブル3に課電される交流電圧を任意の位相で遮断することができる。
本実施例の劣化診断法は、前工程と後工程と解析工程と診断工程とからなる。
前工程においては、試験用変圧器1より測定対象ケーブル3のケーブル導体遮蔽間に交流電圧を課電(前課電)し、所定の位相で遮断(以下、「遮断位相」ということがある)する。この前工程により、水トリーに電荷が蓄積される。
後工程では、水トリーに蓄積された電荷を測定用課電により放出させ、放出されてくる電荷を測定して、残留電荷量を求める。
放出させる方法としては、電圧をステップ状に昇圧してそれぞれの段階で放出されてくる電荷を加算して測定する方法と、蓄積された電荷で放出可能なものは全て放出させることができるような十分に高い交流電圧(以下、「所定の交流電圧」という)一回課電して残留電荷を測定する方法がある。
前記前工程と後工程の操作を、前工程で課電する交流電圧の遮断位相を変えて繰り返す。
遮断波形の例を図2図3に示す。同図の縦軸正規化した課電電圧、横軸は位相であり、図2図3は、それぞれA,Bの位相で遮断した場合を示している。
なお、以下ではこのように交流電圧を課電して所定の位相で遮断して残留電荷量を獲得する方法を「交流遮断法」ともいう。

0019

上記のように、交流電圧(前課電)を任意の位相で遮断し、その後に所定の交流電圧を課電(測定用課電)して残留電荷量を測定する作業を、前記位相を変えて複数回行った結果を纏めると、図4に示す残留電荷量の波形(残留電荷信号)が得られる。同図において、縦軸は正規化した交流電圧および残留電荷量を示し、横軸は遮断位相を示す。また、実線は前課電した交流電圧を示し、点線は同図に示す交流電圧をそれぞれの位相で遮断したときに得られた残留電荷量をプロットしたもの(残留電荷信号)である。
ここで、後述するように、前課電をある位相(θa)にて遮断した後に、所定の交流電圧を課電(測定用課電)した際に検出される残留電荷量は、図5に示す様に、位相(θa)では、前の半波長の間に蓄積した電荷量(Q0)の電荷が、位相(θa)までの間の逆極性の電圧課電の下で移動した分が減じられた電荷量Qaである。また、位相(θb)では、位相(θb)までの間の逆極性の電圧課電の下で移動した分の電荷量が前記Q0から減じられた電荷量Qbである。他の位相に関しても同様である。
これらの電荷量の移動は、交流電圧課電下における水トリー内部での電荷の移動を反映しており、全て交流電圧課電の下で取得されたものであることから、交流電圧を課電している間は常に生じている現象と考えられる。

0020

ここで、図4および図5に示した残留電荷信号は、電荷量の変化であるので、これを時間微分することにより、電流波形を取得することができ、この電流波形は水トリーに起因して流れる電流に他ならず、この信号を周波数解析することにより、前記特許文献2に記載の損失電流法で用いる第3次高調波成分の大きさおよび課電電圧位相に対する位相差を導くことができる。
実際には、連続的に任意の位相で交流電圧の遮断を行い残留電荷測定を行うことは出来ないので、離散的な遮断位相にてそれぞれ残留電荷測定を行い、位相間の値に対して2点間線形補完や、全体を適切な曲線にて近似を行えばよい。この様にして残留電荷量の波形を導出し、これに対応した電流信号を、電荷量の波形を微分することにより取得し、特許文献2に示されている損失電流法にて用いる診断パラメータである第3次高調波成分電流の大きさ(I3)および位相(θ3)を導出する。

0021

図6は上記特許文献2に記載される判定法を説明する図である。なお、図6線路長が100m以下の場合の判定ラインと測定データの例を示している。
特許文献2に記載される判定法は、予め長さの異なる水トリーが発生する高調波電流の大きさと位相を求めておき、これに基づき、図6に示すように、横軸を高調波成分の位相、縦軸を高調波成分の大きさとした直交平面に判定ライン曲線Sを描いておく。
そして、上記のようにして得られた、第3次高調波成分の大きさおよび課電電圧位相に対する位相を図6上にプロットし、測定結果プロット位置がこの軌跡の左側にある場合(白抜きのプロット)は良判定とし、右側にある場合(黒塗りのプロット)には不良判定と診断する。

0022

次に、上述したように、交流遮断法により得た残留電荷信号から、損失電流法で用いる第3次高調波成分の大きさおよび課電電圧位相に対する位相差を導くことができる理由について、さらに説明する。
図7図8は、上記交流遮断法により得た残留電荷信号から損失電流信号と等価な電流信号が得られる理由を説明する図である。図7(a)は交流電圧と遮断位相を示し、(b)は水トリーへの電荷の蓄積状態の概略を示し、(c)は残留電荷信号(残留電荷量)を示し、図8は上記交流電圧波形(同図A)、残留電荷信号(同図B)、残留電荷信号の微分波形(電流波形)(同図C)、第3高調波成分(同図D)を示す。

0023

図7(a)に示すように、交流電圧Aを課電(前課電)した後に、位相が0付近であるθ0タイミングで交流電圧Aを遮断すると、同図(b)に示すように水トリーには、最大量の電荷が蓄積されている。その後に所定の交流電圧を課電(測定用課電)して残留電荷量を測定すると、同図(c)に示すようにS0の信号が得られ、積分値の電荷量は−Qとなる。
次に、図7(a)中θ1のタイミングで遮断した場合には、同図(b)に示すように幾分の電荷(図では1対の電荷)が緩和されると同時に、逆方向への電荷蓄積が行なわれる。この後に残留電荷測定を行なうと、同図(c)に示すようにS1の信号が得られ、積分値の電荷量は−Q+Q1となる。
次いで、θ2のタイミングで遮断した場合には、同図(b)に示すように例えば3対の電荷が緩和されると同時に、逆方向への電荷蓄積が行なわれる。
この後に残留電荷測定を行うと、同図(c)に示すようにS2の信号が得られ、積分値の電荷量は−Q+Q2となる。
さらに、θ3のタイミングで遮断した場合には、同図(b)に示すように例えば全ての電荷が緩和されると同時に、逆方向への電荷蓄積が行なわれている。
この後に残留電荷測定を行うと行なうと、同図(c)に示すようにS3の信号が得られ、積分値の電荷量は+Qとなる。

0024

以上のようにして得られ各遮断位相における残留電荷信号を、横軸を遮断位相、縦軸を残留電荷量として、前記交流電圧波形を示したチャート上にプロットし、曲線近似を行うと、図8の曲線Bに示す残留電荷信号波形Q(t)が得られる。
また、この残留電荷信号波形Q(t)を時間(位相)で微分すると、図8の曲線Cに示す電流信号I(t)を得ることができる。この電流信号は水トリーに起因して流れる電流であり、この信号を周波数解析することにより、図8の曲線Dに示す、損失電流法で用いる第3次高調波成分の大きさ[I3]および課電電圧位相に対する位相差[θ3]を導くことができる。

0025

すなわち、本実施例においては、以下の原理により、交流遮断法により得た残留電荷信号から、損失電流信号とほぼ等価な電流信号を得る。
(1)電荷量の減少は、図7(b)に示す様に、電荷の移動により生じるものである。電荷の移動があることは電流が流れることを意味する。
(2)この電荷の移動は、通常に交流電圧を印加している状態においても生じている。遮断のタイミングを変えた際に検出される電荷量は、交流電圧を印加している場合の電荷の移動を、止めて検出していることと同じである。
(3)損失電流法で測定する損失電流は、CVケーブルに交流電圧を課電している状態のときに検出される電流信号である。この損失電流信号は水トリー内部の電荷の移動を反映している。当該損失電流信号中の第3次高調波成分は水トリーとの相関が特に高い。
(4)一方、遮断のタイミングを変えることにより図7(c)に示すように測定された残留電荷量の波形(残留電荷信号)は電荷量の時間変化であるので、これを微分することにより、水トリーに起因して流れる電流成分を導くことができる。よって、上記遮断のタイミングを変えて測定した残留電荷信号波形を微分して得られる電流信号は損失電流信号とほぼ等価であるといえる。

0026

上述の劣化診断法によれば、図1に示す残留電荷法用の装置で、損失電流法による劣化診断を実施できるので、損失電流法用の診断装置を準備せずに、損失電流法による劣化診断を行える利点がある。

0027

なお、損失電流法による診断においては、電源電圧中に含まれる高調波成分の影響が懸念されることから、様々な対策考案されているが(例えば前記特許文献4参照)、本実施例の劣化診断法によれば、低周波成分測定対象としている残留電荷法を基本として、損失電流法よる劣化診断に用いる診断パラメータ(前記I3およびθ3)を導出しているので、電源電圧中に含まれる高調波成分の影響に関して特段考慮をせずとも診断パラメータを得ることができる特徴も有する。

0028

<実施例2>
ところで、劣化診断を行うに際しては、適切な診断結果を導くために、前述したように複数の劣化診断手法を用いて総合的に判断することが望ましい。
そこで、この実施例では、上述した損失電流法により劣化診断をする前、あるいは後に、前記特許文献1にて用いられているステップ課電法による残留電荷法の評価を行う劣化診断法を説明する。

0029

図9は、測定パターンの例(1)を示す図であり、上述した交流遮断法により得た残留電荷信号から損失電流測定法による劣化診断、及び、前記特許文献1に示されるステップ課電法による劣化診断を併せて行う場合を説明する図である。図9(a)は測定パターンP1による残留電荷の測定を示し、同図(b)は測定された残留電荷量を利用して前記図6で説明した損失電流法により劣化診断を行う場合の手順を示し、同図(c)は、残留電荷法の一種であるステップ課電法による劣化診断の測定パターンBと、それぞれの課電電圧で検出された残留電信号を示す。
交流遮断法により得た残留電荷信号から損失電流による劣化診断を行う場合には、同図(a)に示すように、前工程として交流電圧の前課電を行って遮断位相θ0で交流電圧を遮断し(前課電電圧(1):図中では丸数字で示している。以下同じ)、次に後工程として遮断位相θ0に対する残留電荷を取り出すために測定用の交流電圧を課電する(測定電圧課電(1))。これにより、遮断位相θ0に対する残留電荷量が得られる。なお、測定電圧課電の電圧は、水トリーに蓄積された電荷で放出可能なものが全て放出されるような高い電圧である。
次いで、上記と同様に、交流電圧の前課電を行って遮断位相θ1で交流電圧を遮断し(前課電電圧(2)、次に遮断位相θ1に対する残留電荷を取り出すために交流電圧を課電する(測定電圧課電(2))。これにより、遮断位相θ1に対する残留電荷が得られる。同様に、遮断位相を変えながら各遮断位相に対する残留電荷信号を取り出し、これを遮断位相θmになるまで繰り返し、各遮断位相に対する残留電荷量を得る。
そして、前記したように電荷量の位相変化分より電流値相当波形を取得し、同図(b)に示すように、この電流相当波形の解析により、第3次高調波成分を取得する。このようにして得た第3次高調波成分電流の大きさ(I3)および位相(θ3)を前記図6に示したグラフ上にプロットし、判定カーブのどちら側の領域にあるかにより、(損失電流法による)劣化診断を行う。

0030

また、上記劣化診断の前、あるいは後に、図9(c)に示されるステップ課電法による残留電荷法の評価を行う。
すなわち、前課電として交流電圧を課電したのち(前課電電圧A)、遮断位相θ0(=0°)で前課電の交流電圧を遮断し、次いで、交流電圧をステップ状に昇圧しながら課電し(測定用課電V1〜V5)、各測定用課電V1〜V5毎に電圧V1〜V5における残留電荷信号を検出し、このときに残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を残留電荷法による劣化診断の指標とする。同図(c)の場合には、残留電荷信号が検出される最大の交流電圧はV3であり、この電圧V3からCVケーブルの破壊値を推定する。
この様にして、損失電流法、残留電荷法の両者の診断指標を獲得することができ、2つの劣化診断に対応した診断結果を総合的に判断することで、確度の高い診断結果を得ることができる。

0031

図10は、他の測定パターンの例(2)を示す図であり、同図(a)は、測定パターンP2による残留電荷の測定を示し、同図(b)は残留電荷量を利用して前記図6で説明した損失電流法により劣化診断を行う場合の手順を示し、同図(c)は、ステップ課電法による劣化診断の測定パターンB(図9と同じ)と、それぞれの課電時の残留電信号を示す。

0032

同図(a)に示す測定パターンP2は、前工程の前記前課電と後工程の測定用の交流電圧の課電を併用した例である。この例においては、同図(a)に示すように、交流電圧の前課電を行って遮断位相θ0で交流電圧を遮断し(前課電電圧(1))、次に遮断位相θ0に対する残留電荷を取り出すと同時に新たに電荷を蓄積する“測定電圧課電(1)兼前課電電圧(2)”を課電する。
この課電は遮断位相θ1で遮断する。これにより、前の遮断位相θ0に対する残留電荷を得るとともに、次の残留電荷測定のための前課電が行われる。
次に遮断位相θ1に対する残留電荷を取り出すと同時に新たに電荷を蓄積する“測定電圧課電(2)兼前課電電圧(3)”を課電する。この課電は遮断位相θ2で遮断する。これにより、前の遮断位相θ1に対する残留電荷が得られるとともに、次の残留電荷測定のための前課電が行われる。同様に、遮断位相を変えながら各遮断位相に対する残留電荷信号を取り出し、前記したように、各遮断位相に対する残留電荷量を得る。
そして、前記したように電荷量の位相変化分より電流値相当波形を取得し、同図(b)に示すように、この電流相当波形の解析により、第3次高調波成分を取得する。
また、図10(c)に示すように、図9(c)と同様にステップ課電法による残留電荷法の評価を行い、このときに残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を劣化診断の指標とする。

0033

図11は、他の測定パターンの例(3)を示す図であり、同図(a)は、交流遮断法により得た残留電荷信号から損失電流法による劣化診断を行う場合の測定パターンP1を示し(図9(a)と同じ)、同図(b)は、残留電荷量を得て前記図6で説明した損失電流法により劣化診断を行う場合の手順を示す。図11の特徴は、同図(c)に示すように、前記非特許文献1に記載される波形分離法による残留電荷法を行っている点である。
損失電流法による劣化診断は、図9と同様である。すなわち。図11(a)に示すように、遮断位相を変えながら各遮断位相に対する残留電荷信号を取り出し、これを遮断位相θmになるまで繰り返し、各遮断位相に対する残留電荷量を得て、前記したように電荷量の位相変化分より電流値相当波形を取得し、図11(b)に示すように、この電流相当波形の解析により、第3次高調波成分を取得して、劣化診断を行う。
また、図11(c)に示すように波形分離により残留電荷法の評価を行う場合には、遮断位相θ0(=0°)で前課電の交流電圧を遮断し、次いで、測定用課電として交流電圧を課電し残留電荷信号を検出する。このとき、水トリーに蓄積された電荷で放出可能なものは全て放出させることができるような十分に高い交流電圧を一回課電する。この例では電圧V4の交流電圧を課電する。この後、このようにして得た残留電荷信号から波形分離法により波形分離し、残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を求めて、劣化診断の指標とする。

0034

以下、上記波形分離法について、説明する。
波形の分離をするには、まず、低圧から高圧まで段階的に昇圧しながら測定用交流電圧を課電する(ステップ課電。例えば、前記の交流電圧V1、V2、V3、V4を荷電する)ことにより得られる残留電荷信号を格納したデータベースを予め用意しておく。
CVケーブルの劣化診断を行うに際しては、残留電荷信号が得られる最高の電圧以上の交流電圧を1回課電して残留電荷信号を得る。この実測した残留電荷信号から、データベースに格納された各交流印加電圧に対する残留電荷信号を、波形分離する。すなわち、データベースに格納された残留電荷信号のうち最も低圧の測定用課電で得られた残留電荷信号を実測した残留電荷信号から取り除き、残余の残留電荷信号を得る。次に、この残余の残留電荷信号から次に低圧の測定用課電で得られた残留電荷信号を取り除き、残余の残留電荷信号を得る。これを繰り返して、残余の残留電荷信号が無くなったときの測定用課電の電圧から劣化診断を行いう。これにより、任意のステップで交流電圧を印加した場合と同等の残留電荷信号を得ることができ、短い測定時間で精度よくCVケーブルの水トリー劣化の診断を行うことができる。
すなわち、1回課電法により残留電荷信号を得て、得られた残留電荷信号を、予め用意した任意のステップ回数により得られる残留電荷信号を格納したデータベースのデータを用いて波形分離する。この波形分離は、例えばコンピュータソフトウェア等を用いて自動的に行うことができる。

0035

図12に具体例を示す。
同図(a)は、一回課電法により得られた残留電荷信号(波形A)と、その時に課電(測定用課電)した交流電圧課電パターン(波形E1)を示す。この例では、交流電圧E1を印加したとき、波形Aの残留電荷信号が立ち上がっている。S秒後に交流電圧E1は電圧V3に達し、交流電圧E1が電圧V3に達した時点から、残留電荷信号がt1秒持続する場合を示している。
また、同図(b)は、データベースに格納されているデータが示されている。
すなわち、同図(b)には、交流電圧V1(波形E2)を課電したときに得られる残留電荷信号(波形B)と、交流電圧V2(波形E3)を課電したときに得られる残留電荷信号(波形C)と、交流電圧V3(波形E4)を課電したときに得られる残留電荷信号(波形D)を示している。

0036

同図(b)に示すように、残留電荷信号の波形Bは、波形交流電圧E2が課電されたとき、交流電圧E2が立ち上がるのと同時に、残留電荷信号が立ち上がり(時点a1)、交流電圧E2が立ち上がってからS1秒後に交流電圧E2が電圧V1に達した後、残留電荷信号がt1秒間持続し、時点b1で残留電荷信号は0となるものである。
波形Cは、交流電圧E3が課電され、上記交流電圧E2と同じ電圧V1に達したとき、残留電荷信号が立ち上がり(時点a2)、交流電圧E3が立ち上がってからS2(=2S1)秒後に交流電圧E3がV2(=2V1)に達した後、残留電荷信号がt1秒間持続し、時点b2で残留電荷信号は0となるものである。
波形Dは、交流電圧E4が課電され、上記交流電圧E3と同じ電圧V2に達したとき、残留電荷信号が立ち上がり(時点a3)、交流電圧E4が立ち上がってからS3(=3S1)秒後に交流電圧E4がV3(=3V1)に達した後、残留電荷信号はt1秒間持続し、時点b3で残留電荷信号は0となるものである。

0037

データベースに格納された上記図12(b)に示したデータに基づき、所定の最高交流課電電圧を1回課電したときに得られる残留電荷信号を、図13に示すように波形分離する。
一回課電により、図13(a)に示すような波形Aに示す残留電荷信号が得られたとする。まず、図12(b)に示すように交流電圧V1を課電したときに得られる残留電荷信号を波形分離する。
データベースから図12(b)に示す交流電圧V1を課電したときに得られる残留電荷信号波形Bを取り出す。次に、図13(b)に示すように、残留電荷信号の波形Aと波形Bの始点を合わせ、波形Aの立ち上がり領域と波形Bの立ち上がり領域が重なるように波形Bを縦軸方向にn倍し(このとき波形Bの始点a1と終点b1の距離は変えない)、波形に補正する。
このn倍した波形をB’とする。この波形B’は、波形A中に含まれる電圧V1を課電したときに得られる残留電荷信号成分である。
次に、波形Aから波形B’を差し引くことにより、波形A中に含まれる電圧V1の残留電荷信号成分を除去し、残りの残留電荷信号成分である波形A1の残留電荷信号成分を求める。

0038

次にデータベースから交流電圧V2を課電したときに得られる残留電荷信号波形Cを取り出す。次に、図12(c)に示すように、上記残りの残留電荷信号成分である波形A1と波形Cの始点を合わせ、波形A1の領域Brに一致するように、波形Cを縦軸方向にm倍する。このm倍した波形をC’とする。この波形C’は、波形A1中に含まれる電圧V2を課電したときに得られる残留電荷信号成分に相当する。
次に、波形A1から波形C’を差し引くことにより、波形A1中に含まれる電圧V2の残留電荷信号成分を除去し、残りの残留電荷信号成分である波形A2の残留電荷信号成分を求める。
以下、同様な手順により、残留電荷信号成分を除去し、必要数だけ残留電荷信号を分割することにより、前記ステップ課電法により得られる残留電荷信号と同様の残留電荷信号を得ることができる。そして、前記したように、残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を劣化診断の指標とする。

0039

図14は、他の測定パターンの例(4)を示す図であり、同図(a)は、測定パターンP2による残留電荷の測定を示し、同図(b)は残留電荷量を得て前記図6で説明した損失電流測定法により劣化診断を行う場合の手順を示し、同図(c)は前記非特許文献1に記載される波形分離法による残留電荷法の評価を行う場合を示している。
同図(a)に示す測定パターンは、前記図10に示した前課電と測定用の交流電圧の課電を併用した例である。この例においては、同図(a)に示すように、交流電圧の前課電を行って遮断位相θ0で交流電圧を遮断し、次に遮断位相θ0に対する残留電荷を取り出すために測定用の交流電圧を課電する。これにより、遮断位相θ0に対する残留電荷が得られる。
そして、上記測定用の交流電圧を前課電として、遮断位相θ1で交流電圧を遮断し、次に遮断位相θ1に対する残留電荷を取り出すために交流電圧を課電する。これにより、遮断位相θ1に対する残留電荷が得られる。同様に、遮断位相を変えながら各遮断位相に対する残留電荷信号を取り出し、前記したように、各遮断位相に対する残留電荷量を得る。
そして、前記したように電荷量の位相変化分より電流値相当波形を取得し、同図(b)に示すように、この電流相当波形の解析により、第3次高調波成分を取得する。

0040

また、波形分離により残留電荷法の評価を行う場合には、同図(c)に示すように、前課電として最高の交流電圧V3を課電したのち、遮断位相θ0(=0°)で前課電の交流電圧を遮断し、次いで、交流電圧を課電し残留電荷信号を検出する。このようにして得た残留電荷信号を、上述した波形分離法により波形分離し、図9(c)、図10(c)で説明したように残留電荷信号が検出される最大の交流電圧を劣化診断の指標とする。

0041

本発明の手法に従い、評価を行った結果を以下に示す。
20年以上の経年を経た特別高圧撤去ケーブルにおいて、本発明の手順に従い、交流電圧の遮断位相を変化させて取得した残留電荷量の位相特性を図15に示す。
当該データに対して、破線で示す近似曲線を適用し、当該波形の微分波形を求め、周波数解析により損失電流法の劣化診断パラメータである第3次高調波成分の大きさ(I3)、課電電圧位相に対する位相差(θ3)を求めた。
導出された結果を表1に示す。また、比較例として、同一試料に対して損失電流法により取得した前記パラメータを同表に示した。

0042

0043

本発明による残留電荷法から導かれる損失電流における劣化診断パラメータは、損失電流法から導かれる劣化診断パラメータと整合性があることが確認される。
これら表1に示された数値から供試試料は、特許文献2に示される損失電流法における劣化判定結果において、要注意判定、つまりは改修推奨するレベルの劣化を呈していると判断される。
一方、特許文献1に示されている残留電荷法における劣化判定手法に従えば、残留電荷信号は所定の課電最大交流電圧まで検出されたことから、その絶縁性能は、改修を推奨する程度にまで低下していると判断でき、両者の劣化判定結果も同じであることも確認できる。

0044

1試験用変圧器
2昇圧パターン発生器
3測定対象ケーブル
ローパスフィルタ
5 増幅器

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