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技術 反射防止機能を有した光学素子、およびそれを有した光学系、光学装置

出願人 キヤノン株式会社
発明者 内田和枝桃木和彦
出願日 2011年6月24日 (9年5ヶ月経過) 出願番号 2011-140332
公開日 2013年1月10日 (7年10ヶ月経過) 公開番号 2013-007886
状態 未査定
技術分野 光学要素の表面処理
主要キーワード 通電流量 微細孔パターン バリウム系ガラス 膜層数 金型製造 形状ばらつき 微細凸形状 観測範囲
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重要な関連分野

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図面 (10)

課題

反射防止機能を有する光学素子において、微細凹凸形状の高さ方向のバラツキを規定することで、作製の実現性が高く、さらに、低散乱且つ低反射率を有する光学素子を提供することである。

解決手段

反射防止機能を有する光学素子であって、光学面を有する光学部材と、前記光学部材の光学面上に形成された構造体とを有し、前記構造体の高さはバラツキを有し、前記構造体の高さのバラツキの標準偏差をσ(nm)、前記構造体の平均間隔をp(nm)、使用波長域のうち最も短い波長をλ(nm)としたとき、0.003 ≦ (σ/λ)・(p/λ) ≦ 0.0610 ≦ p ≦ λ/2を満たすことを特徴とする。

概要

背景

光学系に含まれるレンズ等の光学素子は、光学ガラス光学プラスチック等の透明部材を用いて製作されている。このような透明部材は、屈折率が大きいため、反射率が高くなる。反射率が高いと、像面に到達する有効光量が少なくなってしまうとともに、不要な反射によってゴーストフレアが生じる。このため、透明部材からなる光学素子は、反射防止機能を付与することが必要である。

光学素子に反射防止機能を付与する手法として、一般的には、光学干渉の理論に従って、透明部材の表面に薄膜誘電体膜複数層重ねた多層反射防止膜を設ける手法が知られている。このような反射防止膜は、蒸着法やスパッタリング法などのドライ法真空成膜法)、ディッピング法スピンコート法等のウエット法(湿式成膜法)により形成される。特許文献1には、高屈折率薄膜低屈折率薄膜の種類とそれぞれの膜厚を的確に選択することで仮想的に中間屈折率を得た反射防止膜を形成する方法が提案されている。

一方、このような反射防止膜よりもさらに反射防止効果が高い手法として、入射する光の波長(以下、使用波長という)程度の微細凹凸形状を光学素子の表面上に複数形成した反射防止構造体が広く知られている。使用波長程度の微細な凹凸形状では、入射光はその凹凸形状を認識できずに一様な媒質であるかのように振る舞う。つまり、微細な凹凸形状からなる構造体は、凹凸形状を構成する材料の体積比に準じた見かけの屈折率を有し、通常の材料では得られないような低い屈折率を示す。このため、このような凹凸構造体を用いれば、高屈折率材料低屈折率材料から形成される反射防止膜と比べて、より高い反射防止性能が得られる。

これらの反射防止構造体の作成手法としては、特許文献2に、陽極酸化法を利用し、金型に微細な孔を形成し、この孔を透明部材の成形時に転写することで、微細な凹凸形状を形成する手法が提案されている。また、特許文献3に、金型部材の表面に微細凹凸レジストパターンを形成した後、反応性イオンエッチングなどの異方性エッチングを施し、レジストパターンを除去して微細部を作製する方法も提案されている。

微細凹凸形状からなる、反射防止構造体は、凹凸の形状や高さに応じて、反射防止性能が決定する。凹凸の形状に関しては、様々な形状が提案されている。例えば、非特許文献1には、光学面法線方向に一律な太さで形成された微細凹凸形状が記載されている。このような形状で、高性能な反射防止効果を持つには、透明部材の屈折率をns、使用波長をλ(nm)としたとき、微細凹凸部の見かけの屈折率n、および高さdが、

を満たせばよい。しかしながら、このような形状は、単層の反射防止膜と同様の構成となり、高い反射防止効果を得られる波長帯域が狭い。

また、特許文献3では、錐形状の微細凹凸が提案されている。微細凹凸が錐形状の場合、光学素子側から空気側の体積比が連続的に変化するため、微細凹凸部の見かけの屈折率は、なだらかに変化する。これにより、錐形状の微細凹凸形状をもつ反射防止構造体では、広帯域で高い反射防止性能を有することができる。さらに、特許文献4では、錐形状の先端が欠けたような微細凹凸形状が提案されている。これは、先端を欠けさせることで、微細凹凸部の見かけの屈折率のなだらかな変化を保った状態で、成形の困難性や、耐摩耗性の低下を防いでいる。

概要

反射防止機能を有する光学素子において、微細凹凸形状の高さ方向のバラツキを規定することで、作製の実現性が高く、さらに、低散乱且つ低反射率を有する光学素子を提供することである。反射防止機能を有する光学素子であって、光学面を有する光学部材と、前記光学部材の光学面上に形成された構造体とを有し、前記構造体の高さはバラツキを有し、前記構造体の高さのバラツキの標準偏差をσ(nm)、前記構造体の平均間隔をp(nm)、使用波長域のうち最も短い波長をλ(nm)としたとき、0.003 ≦ (σ/λ)・(p/λ) ≦ 0.0610 ≦ p ≦ λ/2を満たすことを特徴とする。

目的

本発明は、微細凹凸形状の高さ方向のバラツキを規定することで、作製の実現性が高く、さらに、低散乱且つ低反射率を有する光学素子を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

反射防止機能を有する光学素子であって、光学面を有する光学部材と、前記光学部材の光学面上に形成された構造体と、を有し、前記構造体の高さはバラツキを有し、前記構造体の高さのバラツキの標準偏差をσ(nm)、前記構造体の平均間隔をp(nm)、使用波長域のうち最も短い波長をλ(nm)としたとき、0.003≦(σ/λ)・(p/λ)≦0.0610≦p≦λ/2を満たすことを特徴とする光学素子。

請求項2

前記平均間隔が、80≦p≦160を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。

請求項3

前記光学素子は、型を用いて成形されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。

請求項4

前記光学素子は、ガラス又はプラスチックからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。

請求項5

前記使用波長域は、可視域および赤外域であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。

請求項6

前記構造体は、アルミニウム又はアルミニウム合金陽極酸化する際に形成される細孔が表面に形成された金型を用いて、前記細孔を転写させることにより形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに1項に記載の光学素子。

請求項7

請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学素子を有することを特徴とする光学系。

請求項8

請求項7の光学系を有することを特徴とする光学装置

技術分野

0001

本発明は光学素子及びそれを有する光学系、光学装置に関し、特に光学部材の表面(光入出射面)に反射防止機能を有する微細凹凸形状からなる構造体を設け、反射防止を効果的に行った光学素子に関するものである。

背景技術

0002

光学系に含まれるレンズ等の光学素子は、光学ガラス光学プラスチック等の透明部材を用いて製作されている。このような透明部材は、屈折率が大きいため、反射率が高くなる。反射率が高いと、像面に到達する有効光量が少なくなってしまうとともに、不要な反射によってゴーストフレアが生じる。このため、透明部材からなる光学素子は、反射防止機能を付与することが必要である。

0003

光学素子に反射防止機能を付与する手法として、一般的には、光学干渉の理論に従って、透明部材の表面に薄膜誘電体膜複数層重ねた多層反射防止膜を設ける手法が知られている。このような反射防止膜は、蒸着法やスパッタリング法などのドライ法真空成膜法)、ディッピング法スピンコート法等のウエット法(湿式成膜法)により形成される。特許文献1には、高屈折率薄膜低屈折率薄膜の種類とそれぞれの膜厚を的確に選択することで仮想的に中間屈折率を得た反射防止膜を形成する方法が提案されている。

0004

一方、このような反射防止膜よりもさらに反射防止効果が高い手法として、入射する光の波長(以下、使用波長という)程度の微細な凹凸形状を光学素子の表面上に複数形成した反射防止構造体が広く知られている。使用波長程度の微細な凹凸形状では、入射光はその凹凸形状を認識できずに一様な媒質であるかのように振る舞う。つまり、微細な凹凸形状からなる構造体は、凹凸形状を構成する材料の体積比に準じた見かけの屈折率を有し、通常の材料では得られないような低い屈折率を示す。このため、このような凹凸構造体を用いれば、高屈折率材料低屈折率材料から形成される反射防止膜と比べて、より高い反射防止性能が得られる。

0005

これらの反射防止構造体の作成手法としては、特許文献2に、陽極酸化法を利用し、金型に微細な孔を形成し、この孔を透明部材の成形時に転写することで、微細な凹凸形状を形成する手法が提案されている。また、特許文献3に、金型部材の表面に微細凹凸レジストパターンを形成した後、反応性イオンエッチングなどの異方性エッチングを施し、レジストパターンを除去して微細部を作製する方法も提案されている。

0006

微細凹凸形状からなる、反射防止構造体は、凹凸の形状や高さに応じて、反射防止性能が決定する。凹凸の形状に関しては、様々な形状が提案されている。例えば、非特許文献1には、光学面法線方向に一律な太さで形成された微細凹凸形状が記載されている。このような形状で、高性能な反射防止効果を持つには、透明部材の屈折率をns、使用波長をλ(nm)としたとき、微細凹凸部の見かけの屈折率n、および高さdが、

0007

0008

0009

を満たせばよい。しかしながら、このような形状は、単層の反射防止膜と同様の構成となり、高い反射防止効果を得られる波長帯域が狭い。

0010

また、特許文献3では、錐形状の微細凹凸が提案されている。微細凹凸が錐形状の場合、光学素子側から空気側の体積比が連続的に変化するため、微細凹凸部の見かけの屈折率は、なだらかに変化する。これにより、錐形状の微細凹凸形状をもつ反射防止構造体では、広帯域で高い反射防止性能を有することができる。さらに、特許文献4では、錐形状の先端が欠けたような微細凹凸形状が提案されている。これは、先端を欠けさせることで、微細凹凸部の見かけの屈折率のなだらかな変化を保った状態で、成形の困難性や、耐摩耗性の低下を防いでいる。

先行技術

0011

特公昭61−51283号公報
特開平2−254192号公報
特開2001−272505号公報
特開2005−173457号公報
Applied Optics, Vol.25,No.24,pp4562−4567, (1986)

発明が解決しようとする課題

0012

特許文献1で提案されたような、一般的な光学干渉の理論に従う反射防止膜は、ドライ法やウエット法のどちらの成膜手法においても、膜材料の制限や、膜層数増加の必要性などから、制約が多いといった問題がある。一方、特許文献2および3で提案されたように、微細な孔が形成された金型を利用した微細構造体形成手法は、透明部材の成形と同時に反射防止機能を有する微細凸形状の形成が可能であり、安価に光学素子を作製することが可能である。

0013

光学素子上に形成された微細凹凸形状に入射した光は、

0014

0015

を満たした場合、不要な回折光、つまり散乱光が生じないことが一般的に知られている。ただし、n1は空気の屈折率、n2は微細凹凸形状を形成する透明部材の屈折率、θ1は入射角、θ2は射出角回折角)、λは入射光の波長(nm)、pは個々の微細凹凸形状の平均間隔(nm)を示す。しかしながら、式(1)のみを満たしたとしても、形成された微細凹凸形状に高さ方向のバラツキがあった場合は、散乱が発生する。

0016

非特許文献1、特許文献3および4で提案されたような、微細凹凸形状を光学素子表面上に容易に形成する手法として、それに応じた微細な孔を形成した金型の転写により作製する方法が上げられる。しかしながら、金型に形成した微細な孔の形状ばらつきや、金型の凹部に生じる空気溜まりや透明材料の流動性の問題による充填性の悪化などから、予定通りの形状で作製することは難しい。このため、成形により形成された微細凹凸形状は、高さ方向にバラツキを持った形状となり、散乱成分を有することとなる。

0017

そこで、本発明は、微細凹凸形状の高さ方向のバラツキを規定することで、作製の実現性が高く、さらに、低散乱且つ低反射率を有する光学素子を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0018

本発明の一側面としての光学素子は、反射防止機能を有する光学素子であって、光学面を有する光学部材と、前記光学部材の光学面上に形成された構造体とを有し、前記構造体の高さはバラツキを有し、前記構造体の高さのバラツキの標準偏差をσ(nm)、前記構造体の平均間隔をp(nm)、使用波長域のうち最も短い波長をλ(nm)としたとき、
0.003 ≦ (σ/λ)・(p/λ) ≦ 0.06
10 ≦ p ≦ λ/2
を満たすことを特徴とする。

発明の効果

0019

本発明によれば、微細凹凸形状の高さ方向のバラツキを規定することで、作製の実現性が高く、さらに、低散乱且つ低反射率を有する光学素子を提供することができる。

図面の簡単な説明

0020

図1(a)は、本発明の実施例である光学素子の光学面における垂直方向の断面の一部分を模式的に表した図である。図1(b)は、本発明の実施例である光学素子の光学面における水平方向の断面の一部分を模式的に表した図である。
透過散乱量(%)と、標準偏差σと平均凸部間距離p(それぞれを使用波長λ規格化)の積である(σ/λ)・(p/λ)との関係図である。
図3(a)は、本発明の実施例1の光学素子における550nmでの反射防止構造体部の見かけ上の屈折率変化を示す図である。図3(b)は、本発明の実施例1の光学素子における透過散乱特性を示す図である。図3(c)は、本発明の実施例1の光学素子における反射率特性を示す図である。
図4(a)は、本発明の実施例2の光学素子における550nmでの反射防止構造体部の見かけ上の屈折率変化を示す図である。図4(b)は、本発明の実施例2の光学素子における透過散乱特性を示す図である。図4(c)は、本発明の実施例2の光学素子における反射率特性を示す図である。
図5(a)は、本発明の実施例3の光学素子における550nmでの反射防止構造体部の見かけ上の屈折率変化を示す図である。図5(b)は、本発明の実施例3の光学素子における透過散乱特性を示す図である。図5(c)は、本発明の実施例3の光学素子における反射率特性を示す図である。
図6(a)は、本発明の実施例4の光学素子における550nmでの反射防止構造体部の見かけ上の屈折率変化を示す図である。図6(b)は、本発明の実施例4の光学素子における透過散乱特性を示す図である。図6(c)は、本発明の実施例4の光学素子における反射率特性を示す図である。
図7(a)は、本発明の比較例1の光学素子における550nmでの反射防止構造体部の見かけ上の屈折率変化を示す図である。図7(b)は、本発明の比較例1の光学素子における透過散乱特性を示す図である。図7(c)は、本発明の比較例1の光学素子における反射率特性を示す図である。
図8(a)は、本発明の比較例2の光学素子における550nmでの反射防止構造体部の見かけ上の屈折率変化を示す図である。図8(b)は、本発明の比較例2の光学素子における透過散乱特性を示す図である。図8(c)は、本発明の比較例2の光学素子における反射率特性を示す図である。
本発明の実施例5である撮像光学系の構成を示す断面図である。

0021

以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。

0022

本発明の実施形態にかかわる反射防止機能を有する光学素子の光学面において、図1(a)は、垂直方向の断面の一部分を模式的に表した図であり、図1(b)は、水平方向の断面の一部分を模式的に表した図である。実施例の光学素子は、平坦な光学面を有する透明部材12からなるが、本発明において、光学面の形状は凸面であっても、凹面であってもかまわない。本発明の光学素子は、透明部材12(光学部材)の光学面上に、使用波長域のうち最も短い波長よりも小さい平均間隔を有する微細な凸部形状11(構造体)を有する。本発明において、同図(a)のように、凸部の高さは、バラツキを有しランダムである。観測範囲にn個の凸部がある場合、それぞれの凸部の高さをh1、h2、・・・、hn−1、hnとすると、n個の凸部における高さの平均h(nm)は、

0023

0024

と表すことが出来る。このとき、n個の凸部における高さ方向の標準偏差σ(nm)は

0025

0026

と、表すことができる。

0027

また、本発明において、凸部の配列は規則的な配列であってもランダム配列であってもかまわない。本実施例においては、説明の便宜上、同図(b)のように、ランダム配列としている。隣接する凸部の平均間隔p(nm)とは、三角格子状近似配列した際の重心間距離平均値を示すこととした。つまり、直近6個の凸部に対する重心間距離の平均を凸部iの平均重心間距離(以下、平均凸部間距離ともいう。)pi(nm)とした。ただし、凸部の重心とは、凸部を光学面の水平方向から観察した場合の最外周における形状での重心を意味する。観測範囲にn個の凸部がある場合、このようにして導出したそれぞれの凸部の平均重心間距離をp1、p2、・・・、pn−1、pnとすると、n個の凸部間の平均間隔p(nm)は、

0028

0029

と表すことができる。本実施例において、凸部の形状は光学面の法線方向に一律な太さとしているが、本発明において、凸部はどのような形状であってもかまわない。

0030

図2に、透過散乱量(%)と、標準偏差σ(nm)と平均凸部間距離p(nm)(それぞれを使用波長λ(nm)で規格化)の積である(σ/λ)・(p/λ)との関係を示す。同図において、凸部の形状は、円柱状であり、平均高さhは100nmである。また、同図におけるλは、400〜700nmの場合を示している。点2−1は、光学面に対し水平方向において、凸部からなる構造体が占める割合(以後、面積占有率)Fが70%であり、点2−2は、面積占有率Fが30%である。同図から、透過散乱量は、波長λによらず、(σ/λ)・(p/λ)に依存し、ほぼ同一曲線状にのることが確認できた。さらに、点2−1は点2−2よりも、透過散乱量が大きいことが読み取れ、透過散乱量は面積占有率Fが大きいほど大きいことが確認できた。凸部形状を柱状や錐台状として、透過散乱量(%)と、(σ/λ)・(p/λ)との関係を調べたところ、高さバラツキにより生ずる透過散乱量は、円柱形状の場合がもっとも顕著に現れた。よって、許容できる散乱量の上限は、面積占有率Fが70%の円柱形状を基準として導出することにした。

0031

一般的に、凸部の高さバラツキが要因となり発生する透過散乱量は入射光が長波長であるほど減少する。さらに、検討の結果、使用波長の最短波長の散乱量が7%以下であれば、光学性能として、問題がないことが確認できている。逆に、透過散乱量が7%を超えた場合は、散乱が大きく光学素子として良品でなくなるといえる。図2から、透過散乱量が7%以下となるのは、(σ/λ)・(p/λ)が0.06以下の範囲であり、これを許容できる透過散乱量の上限の条件とした。

0032

一方、(σ/λ)・(p/λ)は、平均凸部間距離p(nm)を小さくすれば、許容できる標準偏差σ(nm)を大きくすることができ、標準偏差σ(nm)を小さくすれば、許容できる平均凸部間距離p(nm)を大きくすることができることを意味する。しかし、例えば、金型の微細孔を転写することにより微細凸形状を光学素子上に形成する場合を考える。このとき、微細孔が小さい、つまり平均凸部間距離p(nm)が小さすぎると、成形時に孔中に樹脂入りにくくなり、凸部の高さが低くなるため、高い反射防止性能を有した素子の作製は困難となる。また、標準偏差σ(nm)を小さくするにしても、金型に形成した微細な孔の形状ばらつきや、金型の凹部に生じる空気溜まりや透明材料の流動性の問題による充填性の悪化などから、予定通りの形状で作製することは難しい。よって、(σ/λ)・(p/λ)の下限値は、実現できるσとpから導出でき、この値は、検討の結果、0.003であった。この下限値0.003を超えた場合は、光学素子の作製が困難となる。

0033

以上から、

0034

0035

を満たすのがよい。また、平均凸部間距離p(nm)に関しては、高い反射防止性能を有する素子が作製できる最小値と、散乱が生じない条件式(3)から、

0036

0037

を満たすのがよい。ただし、標準偏差σ、平均凸部間距離p、波長λのいずれの単位もnmである。

0038

さらに、許容できる透過散乱量を狭めた場合、好ましくは、

0039

0040

を満たすのがよい。式(9)の下限を超えた場合、光学素子の作製が困難となる。また、式(9)の上限以下であれば、非常に散乱が小さい良品な光学素子となる。

0041

本発明における光学素子は、型を用いた成形により形成されるものであれば、ガラスあるいはプラスチックのいずれであっても構わない。また、微細凸形状の形成方法としては、アルミニウムあるいはアルミニウム合金陽極酸化する際に形成される細孔を金型表面に形成する金型製造工程と、前記金型を用いて前記細孔を転写させて形成される方法を用いることができる。本実施例の光学素子は、これに限定されるものではなく、他の手法を用いても構わない。

0042

以下に、具体的な実施例を示す。ただし、これらは例に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。

0043

本発明の実施例1では、可視光領域(400〜700nm)で使用する光学素子について示す。光学素子材料としては、樹脂であるシクロオレフィンポリマー(nd=1.53)を使用した。光学素子成形用金型に微細孔を付与する方法は、特に限定しない。本実施例では、微細孔を陽極酸化にて作製した。金型面上にプライマー層アルミニウム層の順に成膜する。それから、10℃に温調した5重量%リン酸水溶液中にて、直流電源60Vを印加通電し、通電流量が十分微弱になるまで通電することで、金型面にランダムな配列で且つ面に垂直な微細孔を作製した。さらに、印加通電無しで5重量%リン酸水溶液中に10分間浸漬し、徐々に食刻させながら孔径を広げた。この手法では、微細孔は金型にランダムに配列されるため、個々の孔径の広がり方が均等ではなくなり、ある程度のバラツキを生じさせることができる。上記手順により製作した金型を用いて、シクロオレフィンポリマーを射出成形して、可視光領域に使用する光学素子を得た。このとき、型温度は130℃、樹脂注入時の保圧を1000kg/cm2とした。

0044

上記製造法により得られた光学素子の光学面の形状観察を行った。走査型電子顕微鏡により、光学面の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察したところ、ランダムに配列した柱状の微細な凹凸形状(凹凸部)が観察できた。これらの柱状の凸形状は、光学面の法線方向に向かって立ち、さらに、凸形状の太さは先端に向かってほぼ一様であった。さらに、光学面を水平方向から観察した画像から、面積占有率Fは50%であり、平均凸部間距離pは式(6)より、150nmであることが確認できた。

0045

次に、原子間力顕微鏡により、光学面内の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察した。結果、凸部の高さは89〜129nmの間でばらついており、平均高さhは、式(4)により、109nmであり、高さ方向の標準偏差σは式(5)により、13.9nmであることが確認できた。

0046

使用する可視光の最短波長λは400nmであるので、(σ/λ)・(p/λ)は0.013である。以上から、実施例1は式(7)および(8)を満足する。図3(a)には、微細凹凸形状からなる構造体部における、波長550nmでの見かけ上の屈折率、図3(b)には、400〜700nmの波長域における透過散乱特性、図3(c)には、400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。実施例1の透過散乱特性は、400〜700nmの波長域で0.5%以下と非常に良い結果を示した。一方、反射率特性においても、400〜700nmの波長域で0.85%以下と非常に良い結果を示した。以上から、実施例1の光学素子は、低散乱かつ低反射率であることがいえる。

0047

本発明の実施例2では、可視光領域(400〜700nm)で使用する光学素子について示す。光学素子材料としては、樹脂であるシクロオレフィンポリマー(nd=1.53)を使用した。実施例2の光学素子作製に使用する金型は、実施例1と同様に陽極酸化により作製した。このとき、5重量%リン酸水溶液中にて、直流電源60Vを印加通電した後、印加通電無しでリン酸水溶液中に5分間浸漬することで、微細孔の形成を行った。製作した金型を用いて、シクロオレフィンポリマーを射出成形し、可視光領域で使用する光学素子を得た。型温度、保圧は、実施例1と同様とした。

0048

上記製造法により得られた光学素子の光学面の形状観察を行った。走査型電子顕微鏡により、光学面の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察したところ、ランダムに配列した柱状の微細な凹凸形状が観察できた。これらの柱状の凸形状は、光学面の法線方向に向かって立ち、さらに、凸形状の太さは先端に向かってほぼ一様であった。さらに、これらの画像から、面積占有率Fは70%であり、平均凸部間距離pは式(6)より、100nmであることが確認できた。

0049

次に、原子間力顕微鏡により、光学面内の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察した。結果、凸部の高さは18〜182nmの間でばらついており、平均高さhは、式(4)により、100nmであり、高さ方向の標準偏差σは式(5)により、57.1nmであることが確認できた。

0050

使用する可視光の最短波長λは400nmであるので、(σ/λ)・(p/λ)は0.036である。以上から、実施例2は式(7)および(8)を満足する。図4(a)には、微細凹凸形状からなる構造体部における、波長550nmでの見かけ上の屈折率、図4(b)には、400〜700nmの波長域における透過散乱特性、図4(c)には、400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。実施例2の透過散乱特性は、400〜700nmの波長域で3.0%以下と非常に良い結果を示した。一方、反射率特性においても、400〜700nmの波長域で0.80%以下と非常に良い結果を示した。以上から、実施例2の光学素子は、低散乱かつ低反射率であることがいえる。

0051

本発明の実施例3では、可視光領域(400〜700nm)で使用する光学素子について示す。光学素子材料としては、バリウム系ガラス(nd=1.58)を使用した。実施例3では、光学素子成形用金型に微細孔を付与するため、電子線リソグラフィーとドライエッチング使用した。まず、電子線リソグラフィーにより、金型表面に微細孔パターンを形成した後、ドライエッチングによって、孔の深さ方向を深くした。このとき、微細孔パターンには、ある程度バラツキをもたせた。上記手順により製作した金型表面に離型膜を形成してから、モールド成形機において、バリウム系ガラス材料を成形して、可視光用の光学素子を得た。

0052

上記製造法により得られた光学素子の光学面の形状観察を行った。走査型電子顕微鏡により、光学面の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察したところ、ランダムに配列した柱状の微細な凹凸形状が観察できた。これらの柱状の凸形状は、光学面の法線方向に向かって立ち、さらに、凸形状の太さは先端に向かってほぼ一様であった。さらに、これらの画像から、面積占有率Fは50%であり、平均凸部間距離pは式(6)より、180nmであることが確認できた。

0053

次に、原子間力顕微鏡により、光学面内の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察した。結果、凸部の高さは61〜141nmの間でばらついており、平均高さhは、式(4)により、101nmであり、高さ方向の標準偏差σは式(5)により、27.8nmであることが確認できた。

0054

使用する可視光の最短波長λは400nmであるので、(σ/λ)・(p/λ)は0.031である。以上から、実施例3は式(7)および(8)を満足する。図5(a)には、微細凹凸形状からなる構造体部における、波長550nmでの見かけ上の屈折率、図5(b)には、400〜700nmの波長域における透過散乱特性、図5(c)には、400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。実施例3の透過散乱特性は、400〜700nmの波長域で2.0%以下と非常に良い結果を示した。一方、反射率特性においても、400〜700nmの波長域で0.80%以下と非常に良い結果を示した。以上から、実施例3の光学素子は、低散乱かつ低反射率であることがいえる。

0055

本発明の実施例4では、可視光領域(400〜700nm)で使用する光学素子について示す。光学素子材料としては、樹脂であるシクロオレフィンポリマー(nd=1.53)を使用した。実施例4の光学素子作製に使用する金型は、実施例1と同様に陽極酸化により作製した。このとき、リン酸水溶液中にて、直流電源60Vを印加通電し、微細孔をアルミニウム層の1/4程度まで形成させた後、印加通電無しでリン酸水溶液中に浸漬し、徐々に食刻させながら孔径を広げた。この工程を数回繰り返すことで、深さ方向に徐々に孔径が細くなるようにした。製作した金型を用いて、シクロオレフィンポリマーを射出成形して、可視光領域に使用する光学素子を得た。型温度、保圧は実施例1と同様とした。

0056

上記製造法により得られた光学素子の光学面の形状観察を行った。走査型電子顕微鏡により、光学面の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察したところ、ランダムに配列した柱状の微細な凹凸形状が観察できた。これらの凸形状は、光学面の法線方向に向かって立ち、さらに、凸形状の太さは先端が根元よりも細い形状であった。さらに、これらの画像から、平均凸部間距離pは式(6)より、200nmであることが確認できた。

0057

次に、原子間力顕微鏡により、光学面内の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察した。結果、凸部の高さは150〜300nmの間でばらついており、平均高さhは、式(4)により、164nmであり、高さ方向の標準偏差σは式(5)により、35.5nmであることが確認できた。

0058

使用する可視光の最短波長λは400nmであるので、(σ/λ)・(p/λ)は0.041である。以上から、実施例4は式(7)および(8)を満足する。図6(a)には、微細凹凸形状からなる構造体部における、波長550nmでの見かけ上の屈折率、図6(b)には、400〜700nmの波長域における透過散乱特性、図6(c)には、400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。実施例4の透過散乱特性は、400〜700nmの波長域で1.0%以下と非常に良い結果を示した。一方、反射率特性においても、400〜700nmの波長域で0.3%以下と非常に良い結果を示した。以上から、実施例4の光学素子は、低散乱かつ低反射率であることがいえる。

0059

図9には、実施例1〜4に示した光学素子を用いた撮像光学系(結像光学系)を示している。この撮像光学系は、デジタルカメラビデオカメラ及び交換光学素子等の光学装置に用いられる。図9において、43は撮像面であり、CCDセンサ又はCMOSセンサ等の固体撮像素子光電変換素子)が配置される。42は絞りである。44は光学素子であり、その入射面及び射出面のうち少なくとも一方に、実施例1〜4に示した微細凹凸形状からなる構造体11からなる反射防止構造41(図中に多数のドットで示す)を有する。本実施例の撮像光学系の使用波長領域可視域であり、使用波長域における最も短い波長を400nmとしている。

0060

以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。また、使用波長(使用波長域)も可視光(可視域)に限らず、赤外光赤外域)であってもかまわない。
(比較例1)
比較例1は、可視光領域(400〜700nm)で使用する光学素子であり、光学素子材料としては、樹脂であるシクロオレフィンポリマー(nd=1.53)を使用した。比較例1の光学素子作製に使用する金型は、実施例1と同様に陽極酸化により作製した。このとき、5重量%リン酸水溶液中にて、直流電源70Vを印加通電し、微細孔を作製した後、印加通電無しでリン酸水溶液中に10分間浸漬することで、微細孔の形成を行った。製作した金型を用いて、シクロオレフィンポリマーを射出成形して、可視光領域に使用する光学素子を得た。型温度110度、保圧は900kg/cm2とした。

0061

上記製造法により得られた光学素子の光学面の形状観察を行った。走査型電子顕微鏡により、光学面の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察したところ、ランダムに配列した柱状の微細な凹凸形状が観察できた。これらの柱状の凸形状は、光学面の法線方向に向かって立ち、さらに、凸形状の太さは先端に向かってほぼ一様であった。さらに、これらの画像から、面積占有率Fは70%であり、平均凸部間距離pは式(6)より、180nmであることが確認できた。

0062

次に、原子間力顕微鏡により、光学面内の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察した。結果、凸部の高さは10〜190nmの間でばらついており、平均高さhは、式(4)により、100nmであり、高さ方向の標準偏差σは式(5)により、62.7nmであることが確認できた。

0063

使用する可視光の最短波長λは400nmであるので、(σ/λ)・(p/λ)は0.071である。以上から、比較例1は式(7)を満足しない。図7(a)には、微細凹凸形状からなる構造体部における、波長550nmでの見かけ上の屈折率、図7(b)には、400〜700nmの波長域における透過散乱特性、図7(c)には、400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。比較例1の反射特性は、400〜700nmの波長域において、0.7%以下と非常に低いという結果となっているが、透過散乱特性が、400nmの波長で9%程度、700nmの波長でも2.5%程度と非常に大きい。以上から、比較例1の光学素子は非常に散乱が大きく、光学素子としては、良品でないことがいえる。
(比較例2)
比較例2は可視光領域(400〜700nm)で使用する光学素子であり、光学素子材料としては、樹脂であるシクロオレフィンポリマー(nd=1.53)を使用した。比較例2の光学素子作製に使用する金型は、実施例1と同様に陽極酸化により作製した。このとき、リン酸水溶液中にて、直流電源70Vを印加通電し、微細孔をアルミニウム層の1/4程度まで形成させた後、印加通電無しでリン酸水溶液中に5分間浸漬し、徐々に食刻させながら孔径を広げた。この工程を数回繰り返すことで、深さ方向に徐々に孔径が細くなるようにした。製作した金型を用いて、シクロオレフィンポリマーを射出成形して、可視光領域に使用する光学素子を得た。型温度は110℃、保圧は850kg/cm2とした。

0064

上記製造法により得られた光学素子の光学面の形状観察を行った。走査型電子顕微鏡により、光学面の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察したところ、ランダムに配列した柱状の微細な凹凸形状が観察できた。これらの凸形状は、光学面の法線方向に向かって立ち、さらに、凸形状の太さは先端が根元よりも細い形状であった。さらに、これらの画像から、平均凸部間距離pは式(6)より、200nmであることが確認できた。

0065

次に、原子間力顕微鏡により、光学面内の5箇所において、2μm×2μmの範囲を観察した。結果、凸部の高さは30〜300nmの間でばらついており、平均高さhは、式(4)により、111nmであり、高さ方向の標準偏差σは式(5)により、69.5nmであることが確認できた。

実施例

0066

使用する可視光の最短波長λは400nmであるので、(σ/λ)・(p/λ)は0.087である。以上から、比較例2は式(7)を満足しない。図8(a)には、微細凹凸形状からなる構造体部における、波長550nmでの見かけ上の屈折率、図8(b)には、400〜700nmの波長域における透過散乱特性、図8(c)には、400〜700nmの波長域における反射率特性を示す。比較例2の反射率特性は、0.4%以下と非常に良い結果を示したが、透過散乱特性は、400nmの波長で10%以上、550nmの波長で3%以上と非常に大きい。以上から、比較例2の光学素子は非常に散乱が大きく、光学素子としては、良品でないことがいえる。

0067

本発明により、微細凹凸形状の高さ方向のバラツキを規定することで、作製の実現性が高く、さらに、低散乱且つ低反射率を有する光学素子を提供することができる。

0068

11凹凸構造体
12透明部材
41反射防止構造
42絞り
43撮像面
44 光学素子

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