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技術 ガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法と装置

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 野村隆史松本伸一
出願日 2011年5月16日 (9年7ヶ月経過) 出願番号 2011-109595
公開日 2012年12月10日 (8年0ヶ月経過) 公開番号 2012-241535
状態 拒絶査定
技術分野 濃淡電池(酸素濃度の測定) 内燃機関の複合的制御
主要キーワード 環境フレンドリー 環境影響負荷 分布態様 横断面形 出力ずれ エコカー 停滞時間 センサ精度
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重要な関連分野

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図面 (10)

課題

ガスセンサ素子センサ出力停滞する停滞時間を利用して簡易でしかも精度よく貴金属触媒劣化の有無を判定することのできる方法と装置を提供する。

解決手段

被測定ガス側電極41と基準ガス側電極42からなる一対の電極4を両側に備えた固体電解質層3を少なくとも備えた検知部10と、該検知部10の一部もしくは全部を包囲する貴金属触媒22が担持された触媒層20と、該触媒層20を包囲する保護層30と、からなるガスセンサ素子100において、貴金属触媒22の劣化の有無を判定する方法であって、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子100のストイキ停滞時間を計測するステップ、ストイキ停滞時間と貴金属触媒が劣化の有無の閾値となる時間を比較し、該ストイキ停滞時間が該閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定するステップからなるガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法である。

概要

背景

各種産業界においては、環境影響負荷低減に向けた様々な取り組みが世界規模でおこなわれており、中でも、自動車産業においては、燃費性能に優れたガソリンエンジン車は勿論のこと、ハイブリッド車電気自動車等のいわゆるエコカーの普及とそのさらなる性能向上に向けた開発が日々進められている。

車両の燃費性能の計測に関しては、排気ガス等の被測定ガス中の酸素濃度ガスセンサにて検知し、大気中の酸素基準ガスとしてこの酸素濃度との差を求めることによっておこなわれている。

このガスセンサを構成するガスセンサ素子の一つの実施形態の具体的な構成としては、被測定ガス側電極基準ガス側電極からなる一対の電極を両側に備えた固体電解質層と、被測定ガス側電極を被測定ガス空間を介して包囲する多孔質拡散抵抗層(もしくは拡散律速層)と、多孔質拡散抵抗層とともに被測定ガス空間を画成する遮蔽層と、基準ガス側電極を基準ガス空間を介して包囲する基準ガス空間保護層と、ヒータ等の発熱源とから構成される検知部と、この検知部を包囲する貴金属触媒粒子担持された触媒層と、触媒層を包囲する保護層(もしくはトラップ層)とから大略構成されるものが一般的である。なお、このように貴金属触媒が担持された触媒層を備えた構成の空燃比センサが特許文献1に開示されている。

ガスセンサの出力精度を高めるには、排気ガス中の水素ガスに起因するガスセンサ素子の出力ずれを抑制する必要がある。この出力ずれは、被測定ガスの導入量を抑制する上記多孔質拡散抵抗層を通過する水素ガスが他の酸素ガス一酸化炭素ガス等に比べて分子量が小さく、他のガスよりも多孔質拡散抵抗層を速く通過するために、被測定ガス側電極付近で水素ガスが過剰となり、これがガスセンサ素子周囲の排気ガス中の水素ガス濃度と異なることによって齎されるものである。一方、ガスセンサに要求される他の性能として応答性能が挙げられる。この応答性能は触媒層中の貴金属触媒の量によるところが大きいが、上記する出力ずれを抑制するべく、水素ガスとの反応を促進させるために多くの貴金属触媒を触媒層内に担持させると、今度は排気ガスの反応時間がかかり過ぎてしまい、センサ応答性が低下することから、これらの出力ずれの抑制と応答性を案して触媒層中の貴金属触媒の担持量が調整されている。

ところで、ガスセンサの供用過程で触媒層中に担持された貴金属触媒が劣化することにより、センサの出力ずれの抑制が不十分となってガスセンサの検出精度が低下することになる。

このような貴金属触媒の劣化を判定する技術として、たとえば特許文献2,3に開示される空燃比センサ、排気ガスセンサ劣化判定装置を挙げることができる。具体的には、特許文献2で開示される空燃比センサは、その構成要素である触媒層の劣化判定を行う際に、制御手段によって排気通路における第1空燃比ストイキオメトリに近づくように燃料供給手段が制御され、これによって劣化判定に起因するエミッションの悪化を抑制する。次に、判定手段によって第2空燃比が第1範囲内で相互に異なる場合の空燃比センサの出力である第1出力、および第2空燃比が第2範囲内で相互に異なる場合の空燃比センサの出力である第2出力に基づいて空燃比センサが劣化しているか否かを判定するものであり、このように二つの場合の空燃比センサの出力に基づいて劣化判定を行うことにより、触媒層が劣化しているのか、複数の気筒の相互間の空燃比がばらつくことに起因して排出ガス中水素濃度が変動しているのかを判別することができ、空燃比センサが備える触媒層が劣化しているか否かを正しく判定できるとしている。

また、特許文献3で開示される排気ガスセンサの劣化判定装置は、内燃機関の排気通路に設置された触媒と、触媒の上流側に配置されて排気ガス側電極の外側を触媒層で被覆した空燃比センサと、触媒の下流側に配置された酸素センサを備え、吸入空気量の領域毎にサブ学習値をそれぞれ演算し、高空気量領域でのサブ学習値が、低空気量領域でのサブ学習値よりも、リーン補正側の学習値となっている場合に、空燃比センサの劣化を判定するものである。

このように貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法は多岐に亘るが、本発明者等は、ストイキ近傍(ストイキオメトリ近傍、理論空燃比近傍)においてセンサ出力停滞する停滞時間の長さに着目し、この停滞時間を利用して簡易でかつ精度のよい貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法および装置の発案に至ったものである。

概要

ガスセンサ素子のセンサ出力が停滞する停滞時間を利用して簡易でしかも精度よく貴金属触媒の劣化の有無を判定することのできる方法と装置を提供する。被測定ガス側電極41と基準ガス側電極42からなる一対の電極4を両側に備えた固体電解質層3を少なくとも備えた検知部10と、該検知部10の一部もしくは全部を包囲する貴金属触媒22が担持された触媒層20と、該触媒層20を包囲する保護層30と、からなるガスセンサ素子100において、貴金属触媒22の劣化の有無を判定する方法であって、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子100のストイキ停滞時間を計測するステップ、ストイキ停滞時間と貴金属触媒が劣化の有無の閾値となる時間を比較し、該ストイキ停滞時間が該閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定するステップからなるガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法である。

目的

本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、ガスセンサ素子のセンサ出力が停滞する停滞時間を利用して簡易でしかも精度よく貴金属触媒の劣化の有無を判定することのできる方法と装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

被測定ガス側電極基準ガス側電極からなる一対の電極を両側に備えた固体電解質層を少なくとも備えた検知部と、該検知部の一部もしくは全部を包囲する貴金属触媒担持された触媒層と、該触媒層を包囲する保護層と、からなるガスセンサ素子において、前記貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法であって、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間を計測する第1のステップ、前記ストイキ停滞時間と貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を比較し、該ストイキ停滞時間が該閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定する第2のステップからなるガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法。

請求項2

前記貴金属触媒が少なくともロジウムからなる場合に、リーン側からリッチ側への切り替えの際の経過時間が前記ストイキ停滞時間である請求項1に記載のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法。

請求項3

前記貴金属触媒が少なくともパラジウムからなる場合に、リッチ側からリーン側への切り替えの際の経過時間が前記ストイキ停滞時間である請求項1に記載のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法。

請求項4

被測定ガス側電極と基準ガス側電極からなる一対の電極を両側に備えた固体電解質層を少なくとも備えた検知部と、該検知部の一部もしくは全部を包囲する貴金属触媒が担持された触媒層と、該触媒層を包囲する保護層と、からなるガスセンサ素子において、前記貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置であって、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間を計測する計測部と、貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を格納する格納部と、前記計測部で計測された前記ストイキ停滞時間と前記格納部で格納される前記閾値となる時間を比較し、ストイキ停滞時間が閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定する比較演算部とからなるガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置。

請求項5

前記貴金属触媒が少なくともロジウムからなる場合に、リーン側からリッチ側への切り替えの際の経過時間が前記ストイキ停滞時間である請求項4に記載のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置。

請求項6

前記貴金属触媒が少なくともパラジウムからなる場合に、リッチ側からリーン側への切り替えの際の経過時間が前記ストイキ停滞時間である請求項4に記載のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置。

技術分野

0001

本発明は、たとえば車両に搭載されて排気ガス中の酸素濃度を検出するガスセンサを構成するガスセンサ素子における貴金属触媒劣化の有無を判定する方法と装置に関するものである。

背景技術

0002

各種産業界においては、環境影響負荷低減に向けた様々な取り組みが世界規模でおこなわれており、中でも、自動車産業においては、燃費性能に優れたガソリンエンジン車は勿論のこと、ハイブリッド車電気自動車等のいわゆるエコカーの普及とそのさらなる性能向上に向けた開発が日々進められている。

0003

車両の燃費性能の計測に関しては、排気ガス等の被測定ガス中の酸素濃度をガスセンサにて検知し、大気中の酸素基準ガスとしてこの酸素濃度との差を求めることによっておこなわれている。

0004

このガスセンサを構成するガスセンサ素子の一つの実施形態の具体的な構成としては、被測定ガス側電極基準ガス側電極からなる一対の電極を両側に備えた固体電解質層と、被測定ガス側電極を被測定ガス空間を介して包囲する多孔質拡散抵抗層(もしくは拡散律速層)と、多孔質拡散抵抗層とともに被測定ガス空間を画成する遮蔽層と、基準ガス側電極を基準ガス空間を介して包囲する基準ガス空間保護層と、ヒータ等の発熱源とから構成される検知部と、この検知部を包囲する貴金属触媒粒子担持された触媒層と、触媒層を包囲する保護層(もしくはトラップ層)とから大略構成されるものが一般的である。なお、このように貴金属触媒が担持された触媒層を備えた構成の空燃比センサが特許文献1に開示されている。

0005

ガスセンサの出力精度を高めるには、排気ガス中の水素ガスに起因するガスセンサ素子の出力ずれを抑制する必要がある。この出力ずれは、被測定ガスの導入量を抑制する上記多孔質拡散抵抗層を通過する水素ガスが他の酸素ガス一酸化炭素ガス等に比べて分子量が小さく、他のガスよりも多孔質拡散抵抗層を速く通過するために、被測定ガス側電極付近で水素ガスが過剰となり、これがガスセンサ素子周囲の排気ガス中の水素ガス濃度と異なることによって齎されるものである。一方、ガスセンサに要求される他の性能として応答性能が挙げられる。この応答性能は触媒層中の貴金属触媒の量によるところが大きいが、上記する出力ずれを抑制するべく、水素ガスとの反応を促進させるために多くの貴金属触媒を触媒層内に担持させると、今度は排気ガスの反応時間がかかり過ぎてしまい、センサ応答性が低下することから、これらの出力ずれの抑制と応答性を案して触媒層中の貴金属触媒の担持量が調整されている。

0006

ところで、ガスセンサの供用過程で触媒層中に担持された貴金属触媒が劣化することにより、センサの出力ずれの抑制が不十分となってガスセンサの検出精度が低下することになる。

0007

このような貴金属触媒の劣化を判定する技術として、たとえば特許文献2,3に開示される空燃比センサ、排気ガスセンサ劣化判定装置を挙げることができる。具体的には、特許文献2で開示される空燃比センサは、その構成要素である触媒層の劣化判定を行う際に、制御手段によって排気通路における第1空燃比ストイキオメトリに近づくように燃料供給手段が制御され、これによって劣化判定に起因するエミッションの悪化を抑制する。次に、判定手段によって第2空燃比が第1範囲内で相互に異なる場合の空燃比センサの出力である第1出力、および第2空燃比が第2範囲内で相互に異なる場合の空燃比センサの出力である第2出力に基づいて空燃比センサが劣化しているか否かを判定するものであり、このように二つの場合の空燃比センサの出力に基づいて劣化判定を行うことにより、触媒層が劣化しているのか、複数の気筒の相互間の空燃比がばらつくことに起因して排出ガス中水素濃度が変動しているのかを判別することができ、空燃比センサが備える触媒層が劣化しているか否かを正しく判定できるとしている。

0008

また、特許文献3で開示される排気ガスセンサの劣化判定装置は、内燃機関の排気通路に設置された触媒と、触媒の上流側に配置されて排気ガス側電極の外側を触媒層で被覆した空燃比センサと、触媒の下流側に配置された酸素センサを備え、吸入空気量の領域毎にサブ学習値をそれぞれ演算し、高空気量領域でのサブ学習値が、低空気量領域でのサブ学習値よりも、リーン補正側の学習値となっている場合に、空燃比センサの劣化を判定するものである。

0009

このように貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法は多岐に亘るが、本発明者等は、ストイキ近傍(ストイキオメトリ近傍、理論空燃比近傍)においてセンサ出力停滞する停滞時間の長さに着目し、この停滞時間を利用して簡易でかつ精度のよい貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法および装置の発案に至ったものである。

先行技術

0010

特開2009−128273号公報
特開2009−299500号公報
特開2010−013978号公報

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、ガスセンサ素子のセンサ出力が停滞する停滞時間を利用して簡易でしかも精度よく貴金属触媒の劣化の有無を判定することのできる方法と装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

前記目的を達成すべく、本発明によるガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法は、被測定ガス側電極と基準ガス側電極からなる一対の電極を両側に備えた固体電解質層を少なくとも備えた検知部と、該検知部の一部もしくは全部を包囲する貴金属触媒が担持された触媒層と、該触媒層を包囲する保護層と、からなるガスセンサ素子において、前記貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法であって、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間を計測する第1のステップ、前記ストイキ停滞時間と貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を比較し、該ストイキ停滞時間が該閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定する第2のステップからなるものである。

0013

ストイキ近傍においてガスセンサ素子の出力が一時的に停滞し、たとえばストイキ近傍においてリーン側からリッチ側への切り替えの際の経過時間(ストイキ近傍における停滞時間)が長いことは貴金属触媒の触媒能力が高いことを示すことから、逆に、この停滞時間が所定時間よりも短い場合に貴金属触媒が劣化したと判定する判定方法である。

0014

ここで、「ストイキ近傍」とは、センサ出力値として、リーン側の0.01mAからリッチ側の−0.01mAの範囲など、停滞時間を特定できるセンサ出力範囲のことであり、リーン側からリッチ側への切り替えやその逆の切り替えの際にセンサ出力が停滞する領域、すなわちセンサ出力に変化がない領域(グラフではフラットな領域)や変化が極めて少ない領域(グラフではフラットに近い領域)のことである。ここで、センサ出力が実際にゼロ、すなわちストイキオメトリにおいて停滞時間が生じることは稀であり、センサ出力の停滞範囲がある勾配を有していたり、車種やガスセンサの構成などによって貴金属触媒の反応停滞の態様に誤差があるために、リーン側やリッチ側に偏った領域で停滞時間が生じたり、リーン側やリッチ側に跨った態様で停滞時間が生じることが往々にしてあることから、本発明においては、貴金属触媒の劣化の有無を判定する指標となる停滞時間を「ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間」としている。

0015

検知部の周囲に形成されて貴金属触媒が担持される触媒層は、検知部の全周を包囲するように形成されてもよいし、被測定ガス側電極を被測定ガス空間を介して包囲する多孔質拡散抵抗層(もしくは拡散律速層)に対応する位置にのみ形成されてもよい。

0016

いずれの形態であれ、貴金属触媒の担持量(重量)と劣化の有無の閾値となる時間に相関があることが本発明者等によって特定されており、担持量が多ければ閾値となる時間も長くなる。

0017

ガスセンサ素子を構成する触媒層やその周囲の保護層はアルミナをはじめとするセラミックス粒子から構成されており、触媒層においては、このセラミックス粒子に貴金属触媒が担持されている。

0018

この貴金属触媒としては、パラジウムロジウムを単独で、もしくはパラジウム、ロジウムおよび白金のうちの2種以上を混合したものや合金を適用できる。

0019

そして、本発明者等によれば、貴金属触媒の触媒種によってストイキ近傍で反応が停滞する傾向に相違があり、ロジウムの場合はリーン側からリッチ側への切り替えの際に停滞時間が発生する。これは、ロジウムは酸化物状態で安定する傾向があり、酸化状態還元される際に反応してストイキ近傍で停滞するためである。一方、パラジウムの場合はその逆で、リッチ側からリーン側への切り替えの際に停滞時間が発生する。これは、パラジウムは貴金属状態で安定する傾向があり、還元状態から酸化される際に反応してストイキ近傍で停滞するためである。さらに、白金の場合には停滞時間の発生がないことが分かっている。

0020

そこで、貴金属触媒が少なくともロジウムからなる場合においては、リーン側からリッチ側への切り替えの際の経過時間をストイキ停滞時間とし、貴金属触媒が少なくともパラジウムからなる場合においては、リッチ側からリーン側への切り替えの際の経過時間をストイキ停滞時間とする。

0021

たとえば、貴金属触媒にロジウムとパラジウムを使用する場合は、リーン側からリッチ側への切り替え、リッチ側からリーン側への切り替えのいずれにおいも停滞時間を計測することができる。

0022

一つの実施例として、センサ出力としてリーン側0.01mAからリッチ側−0.01mAの範囲を「ストイキ近傍」とし、触媒層においてロジウムをたとえば0.05mg使用した場合のストイキ近傍における劣化の有無の閾値となる時間を20msecとすることができる。

0023

そして、計測されたストイキ停滞時間が20msec未満となった際に、ロジウムの一部もしくは全部が劣化したものと判定し、ガスセンサ素子の取替えメンテナンスをおこなうことができる。

0024

本発明の貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法は、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子の反応停滞時間を計測し、予め設定された劣化有無の閾値となる時間(この閾値は実験等で貴金属触媒種やその重量ごとに特定されている)と比較するだけの極めて簡易な方法である。

0025

また、本発明は貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置にも及ぶものであり、この装置は、被測定ガス側電極と基準ガス側電極からなる一対の電極を両側に備えた固体電解質層を少なくとも備えた検知部と、該検知部の一部もしくは全部を包囲する貴金属触媒が担持された触媒層と、該触媒層を包囲する保護層と、からなるガスセンサ素子において、前記貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置であって、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間を計測する計測部と、貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を格納する格納部と、前記計測部で計測された前記ストイキ停滞時間と前記格納部で格納される前記閾値となる時間を比較し、ストイキ停滞時間が閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定する比較演算部とからなるものである。

0026

車両のエンジン排気用バルブに通じる排気路にはたとえば三元触媒用の触媒が配設されており、この触媒の上流側に本発明の装置の判定対象となるガスセンサ素子を備えたガスセンサ(空燃比センサ)が、触媒の下流側に酸素センサがそれぞれ配設されている。

0027

空燃比センサや酸素センサはECU(Electronic Control Unit)に通じており、ECUに空燃比センサの出力がフィードバックされ、エンジンの燃料噴射弁の作動は空燃比センサの出力に基づいてこれが所望する空燃比となるように制御される。

0028

そして、本発明の装置においては、たとえば上記するECU内に計測部や格納部、比較演算部がバス等でデータ送受信可能に接続され、ストイキ停滞時間の計測と、計測されたストイキ停滞時間と格納部で格納される閾値の大小の比較演算とが実行されるものである。

0029

比較演算の結果、ストイキ停滞時間が閾値未満の場合には貴金属触媒の一部もしくは全部が劣化していると判定され、その結果が車室内モニタ警報ブザー等で乗員等に告知されるようになっている。

0030

なお、上記するガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置は、一般のガソリン車両やディーゼル車両は勿論のこと、ハイブリッド車等のエコカーにも適用することで、ガスセンサ素子を構成する触媒層中の貴金属触媒の劣化を臨機かつ精緻に特定してそのメンテナンスや取替えが可能となることから、より一層環境フレンドリーな車両の製造に寄与できるものである。

発明の効果

0031

以上の説明から理解できるように、本発明のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法と装置によれば、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間を計測してこの計測時間と閾値となる時間を比較して貴金属触媒の劣化の有無を判定するという極めて簡易な判定方法により、もしくはこれを実現する簡易な構成の装置により、貴金属触媒の劣化の有無を精度よく特定することができる。

図面の簡単な説明

0032

本発明の判定方法および判定装置の対象であるガスセンサ素子を説明した模式図である。
図1中のII部を拡大した図である。
図1のガスセンサ素子(からなるガスセンサ)を備えたエンジンの排気系統を示す図である。
本発明のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法を説明するフロー図である。
貴金属触媒がロジウムの場合の判定方法の実施例を説明するフロー図である。
貴金属触媒がロジウムの場合のセンサ出力の変化を計測した計測結果を示すグラフである。
センサ精度とストイキ停滞時間の関係を測定した計測結果を示すグラフである。
貴金属触媒がパラジウムの場合の判定方法の実施例を説明するフロー図である。
貴金属触媒がパラジウムの場合のセンサ出力の変化を計測した計測結果を示すグラフである。

実施例

0033

以下、図面を参照して本発明のガスセンサ素子における貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法と装置に関する各実施の形態を説明する。

0034

(ガスセンサ素子と貴金属触媒の劣化の有無を判定する装置)
図1は本発明の判定方法および判定装置の対象であるガスセンサ素子を説明した模式図であり、図2図1中のII部を拡大した図であり、図3図1のガスセンサ素子(からなるガスセンサ)を備えたエンジンの排気系統を示す図である。

0035

図1で示すガスセンサ素子100は、排気ガス中の酸素濃度を検知する検知部10と、この検知部10の周囲に配されて水素ガスとの反応を促進させる貴金属触媒を具備する触媒層20と、排気ガス中の水分から少なくとも検知部10を防護して、この水分が検知部10に到達して検知部10が被水割れするのを抑制するとともに、通過する水素ガスや一酸化炭素ガス等をトラップする保護層30から大略構成されている。

0036

検知部10は、被測定ガス側電極41と基準ガス側電極42からなる一対の電極4を両側に備えた固体電解質層3と、被測定ガス側電極41を被測定ガス空間8を介して包囲する多孔質拡散抵抗層2と、多孔質拡散抵抗層2とともに被測定ガス空間8を画成する遮蔽層1と、基準ガス側電極42を基準ガス空間9を介して包囲する基準ガス空間保護層5と、発熱源6および発熱源基板7とから大略構成されている。

0037

発熱源6は、その内部に発熱体となるヒータを備えており、ガスセンサ素子100の加熱領域を形成してその活性温度となるように加熱制御される。

0038

検知部10は、図示する横断面形状において、その隅角部テーパー状に切欠かれており、この切欠きによって、検知部10の当該箇所における保護層30の厚みを保証している。

0039

固体電解質層3はジルコニアから形成されており、被測定ガス側電極41と基準ガス側電極42はともに白金から形成されている。また、遮蔽層1と基準ガス空間保護層5はともにガス不透過な内部構造を呈し、ともにアルミナから形成されている。

0040

一対の電極4に対し、酸素濃度差電流リニアな相間を有する電圧印加し、被測定ガス側電極41に被測定ガスを接触させ、基準ガス側電極42には大気等の基準ガスを接触させ、双方の酸素濃度差に応じて電極間に生じる電流値を計測し、計測電流に基づいて車両エンジンの空燃比(A/F)を特定することができる。

0041

多孔質拡散抵抗層2は、被測定ガス側電極41に対する被測定ガスの導入量を抑制するために被測定ガス側電極41の周囲の被測定ガス空間8を画成する位置に設けてあり、検知部10の周囲の保護層30および触媒層20を介して導入された排気ガスを構成する水素ガスや一酸化炭素ガス、酸素ガスなどがさらに多孔質拡散抵抗層2を介して被測定ガス空間8に導入されるようになっている。

0042

触媒層20は、表面に貴金属触媒22が担持されたアルミナ粒子21からなる多孔質層であり、触媒層20における貴金属触媒22の分布態様は、触媒層20の全領域であってもよいし、被測定ガス側電極41に近接する多孔質拡散抵抗層2に対応する側方領域のみであってもよい。また、触媒層20内で貴金属触媒22の担持量に分布をもたせ、たとえば多孔質拡散抵抗層2に対応する領域に相対的に多くの量の貴金属触媒粒子22を担持させるものであってもよい。

0043

触媒層20の周りには、該触媒層20と同様にアルミナ粒子21からなる多孔質層であって、しかしながら貴金属触媒22が担持されていない保護層30が形成されている。

0044

ここで、貴金属触媒22としては、パラジウムやロジウムを単独で、もしくはパラジウム、ロジウムおよび白金のうちの2種以上を混合したものや合金を適用できる。

0045

図1,2で示すガスセンサ素子100(より具体的にはこのガスセンサ素子100を備えたガスセンサ)は、図3で示す車両のエンジンの排気系統内に配設される。同図において、エンジン200の排気用バルブに通じる排気路500にはたとえば三元触媒300が配設されており、この三元触媒300の上流側にガスセンサ素子100(を備えた空燃比センサ)が配設され、さらに三元触媒300の下流側には不図示の酸素センサが配設されている。

0046

空燃比センサ100や不図示の酸素センサはECU400(Electronic Control Unit)に通じており、ECU400に空燃比センサ100の出力がフィードバックされ、エンジン200の燃料噴射弁の作動は空燃比センサ100の出力に基づいてこれが所望する空燃比となるように制御される。

0047

ECU400内には、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子100のストイキ停滞時間を計測する計測部、貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を格納する格納部、および、計測部で計測されたストイキ停滞時間と格納部で格納される閾値となる時間を比較し、ストイキ停滞時間が閾値未満の場合に貴金属触媒が劣化していると判定する比較演算部が格納されており、各部はバス等でデータ送受信可能に接続されている。

0048

このように、図示例ではECU400が貴金属触媒の劣化の有無を判定する判定装置を構成するものであるが、本発明の判定装置は図示例の形態に何等限定されるものではない。

0049

(貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法)
次に、図3で示す排気系統における判定装置400を用いてなる、貴金属触媒の劣化の有無を判定する方法の一実施の形態を図4のフロー図を参照して概説する。

0050

まず、ストイキ近傍におけるガスセンサ素子のストイキ停滞時間を計測する(ステップS1)。

0051

ここで、「ストイキ近傍」とは、空燃比がリーン側もしくはリッチ側で一定時間保持した後にリーン側のものはリッチ側へ、リッチ側のものはリーン側へ空燃比の切り替えをおこなった際に、センサ出力が理論空燃比の近傍の所定範囲(たとえば0.01mA〜−0.01mA)のことであり、このストイキ近傍では、センサ出力に変化がないフラットな領域もしくはセンサ出力の変化が少ないフラットに近い領域が生じ、このフラットもしくはフラットに近いセンサ出力時間を「ストイキ停滞時間」としている。

0052

ストイキ停滞時間を計測したら、このストイキ停滞時間と貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を比較する(ステップS2)。

0053

この比較演算において、計測値が閾値未満の場合には貴金属触媒が劣化していると判定し、計測値が閾値以上の場合には貴金属触媒が劣化していないと判定し、貴金属触媒が劣化していると判定した際には、車内のモニタへ画面表示したり、ブザー等で乗員に告知することにより、ガスセンサ素子100のメンテナンスや取替えをおこなうことができる。

0054

センサ出力においてストイキ停滞時間が長いことは触媒能力が高いことを意味しており、一般には触媒層中の貴金属触媒の重量が重いほどストイキ停滞時間は長くなる。

0055

したがって、貴金属触媒種やその重量に応じて劣化の有無の閾値となる時間を予め特定しておき、この閾値と計測値を常時比較することによって貴金属触媒の劣化の有無を臨機に精度よく特定することが可能となる。

0056

[貴金属触媒がロジウムの場合の判定方法の実施例とセンサ出力の変化を計測した計測結果]
本発明者等は、貴金属触媒にロジウムを適用し、その際の判定方法の実施例を実験結果に基づき特定した。実施例の判定方法のフロー図を図5に、実験結果を示すセンサ出力の時系列グラフ図6に、実際の排ガスとセンサ出力が示すA/Fを比較し、センサ精度とストイキ停滞時間の関係を求めたグラフを図7にそれぞれ示す。

0057

本実験においては、多孔質拡散抵抗層周辺のみに触媒層を具備するガスセンサ素子を適用し、触媒層中のロジウムの重量は0.02mgとした。

0058

空燃比(A/F)15で1分間保持した後(十分な保持時間である)、A/Fを14に切り替えてその際のセンサ出力を計測した。

0059

図6において、点線はこのようにリーン側での十分な保持がない場合のグラフであり、実線は実施例のグラフである。

0060

同図において、0.005mA〜−0.005mAの範囲でグラフが停滞する領域(グラフの勾配がフラットに近い領域)が現れ、ここがストイキ停滞時間となっている。

0061

そして、実際の排ガスとセンサ出力が示すA/Fを比較した図7のグラフより、ストイキ停滞時間が20msec以上で実際の排ガスとセンサ出力の誤差は0.2と極めて低い値で収斂することが実証されている。

0062

以上の実験結果を踏まえ、貴金属触媒にロジウム0.02mgを適用する場合の判定方法フローとしては、図5で示すように、A/F≧15(リーン側)で一定時間を保持し、次いでA/Fを14(リッチ側)に切り替え、センサ出力が0.005mA〜−0.005mAの経過時間を計測し、経過時間が20msec未満の場合にはロジウムが劣化していると判定し、20msec以上の場合にはロジウムが劣化していないと判定する判定方法を提示することができる。

0063

[貴金属触媒がパラジウムの場合の判定方法の実施例とセンサ出力の変化を計測した計測結果]
次に、本発明者等は、貴金属触媒にパラジウムを適用し、その際の判定方法の実施例を実験結果に基づき特定した。実施例の判定方法のフロー図を図8に、実験結果を示すセンサ出力の時系列グラフを図9にそれぞれ示す。

0064

本実験においても、多孔質拡散抵抗層周辺のみに触媒層を具備するガスセンサ素子を適用し、触媒層中のパラジウムの重量は0.05mgとした。

0065

空燃比(A/F)14で1分間保持した後(十分な保持時間である)、A/Fを15に切り替えてその際のセンサ出力を計測した。

0066

図9において、点線はこのようにリッチ側での十分な保持がない場合のグラフであり、実線は実施例のグラフである。

0067

同図において、0.005mA〜−0.005mAの範囲で若干緩やかな勾配をもった領域が現れ(図6と比較すると、緩やかな勾配を有しているが停滞時間は長い)、ここがストイキ停滞時間となっている。

0068

以上の実験結果を踏まえ、貴金属触媒にパラジウム0.05mgを適用する場合の判定方法フローとしては、図8で示すように、A/F≦14(リッチ側)で一定時間を保持し、次いでA/Fを15(リーン側)に切り替え、センサ出力が−0.005mA〜0.005mAの経過時間を計測し、経過時間が20msec未満の場合にはパラジウムが劣化していると判定し、20msec以上の場合にはパラジウムが劣化していないと判定する判定方法を提示することができる。そして、ロジウム、パラジウムともに触媒層中の含有量を変化させて同様の実験をおこなうことにより、それぞれの含有量に応じた貴金属触媒の劣化の有無の閾値となる時間を特定し、図5,8に相当する判定フローを作成することができる。

0069

以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。

0070

1…遮蔽層、2…多孔質拡散抵抗層、3…固体電解質層、4…一対の電極、41…被測定ガス側電極、42…基準ガス側電極、5…基準ガス空間保護層、6…発熱源(ヒータ)、7…発熱源基板、8…被測定ガス空間、9…基準ガス空間、10…検知部、20…触媒層、30…保護層、100…ガスセンサ素子(空燃比センサ)、200…エンジン、300…三元触媒、400…ECU(判定装置)、500…排気路

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