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技術 細胞の凍結保存液および凍結保存方法

出願人 国立大学法人福井大学独立行政法人国立高等専門学校機構福井県株式会社エル・ローズ
発明者 寺田聡柳原佳奈水井慎也小川亜希子小林恭一大浦剛福田忠義森山展行安川沙織久留宮元
出願日 2011年5月11日 (8年9ヶ月経過) 出願番号 2011-106530
公開日 2012年12月6日 (7年2ヶ月経過) 公開番号 2012-235728
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理
主要キーワード 禾本科植物 減圧濃縮処理 凍結障害 ステディ 解凍操作 超低温フリーザー 低分子不純物 ネギ属植物
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この項目の情報は公開日時点(2012年12月6日)のものです。
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課題

ジメチルスルホキシドを使用することなく、さらには動物由来する血清や血清由来成分を使用することなく、長期にわたって細胞凍結しておくことが可能な、細胞の凍結保存液の提供。

解決手段

ジメチルスルホキシド代替物としてのフルクタンを有効成分とする、細胞の凍結保存液およびそれを用いた凍結保存方法

概要

背景

細胞は、継代を繰り返すことにより、細胞変質遺伝的変異および雑菌汚染を生じることがある。そこで、安定的な品質の細胞を長期間保存するために、様々な凍結保存技術が用いられている。例えば、哺乳類細胞の場合では、従来、ウシ胎児仔牛または成などの牛血清ベースに5〜20容量%のジメチルスルホキシドDMSO)やグリセリンを添加したものを、凍結保存液として用いて凍結保存する方法が、一般的に行われていた。

しかしながら、哺乳類血清は、その供給に制限があり、かつ非常に高価である。このため、凍結保存する際に血清を用いると、作業が煩雑になって労力が増加する一方、保存コストも上昇することになる。また、血清は、ロットによって、その特質にばらつきがみられることが多く、血清中に含まれるサイトカインおよび増殖因子などの哺乳類由来因子により、保存細胞性質変質させるおそれもある。さらに、特に動物由来の血清には、ヒトにヤコブ病を導くことが危惧されている牛の狂牛病やヒツジスクレイピーなどを引き起こす異常プリオン混入の危険性に加え、ウイルス感染の危険性があった。

そこで、従来、動物由来する血清を一切使用しない凍結保存液の検討が進められてきた。

従来、細胞凍結保存液に使用されている成分としては、アミノ酸タンパク質、糖類、アルコール類等が知られている。例えば、アミノ酸の一つのプロリンは、凍結保護効果を有することが報告されている(非特許文献1: Shinozaki, K. et al.: FEBSLett., 461(3), 205, (1999)および非特許文献2: Takagi, H. et al.: Appl. Environ. Microbial., 69(11), 6527(2003)参照)。また、特開2002−233356号公報(特許文献1)には、糖類(特にグルコース)を使用した細胞凍結保存液が、開示されている。しかしながら、これら成分の成分単独での凍結保護効果は、本発明者らの知る限り、血清成分に比べて充分なものではなかった。

例えば、特許第4588598号公報(特許文献2)には、血清代替物として、絹タンパク質であるセリシンあるいはその加水分解物を使用することが開示されており、アミノ酸および糖類との併用により、血清由来成分を使用する場合と同等の凍結保護効果が期待できることが示されている。しかしながら、この凍結保存液においても、高い保護効果を示すためには、凍結保護因子として、ジメチルスルホキシドを使用することが必要あった。ジメチルスルホキシドは細胞保護作用のあることが知られており、凍結保存液を構成する際には必須の成分であると考えられていた。

一方、ES細胞iPS細胞などの幹細胞においては、凍結保存する際に、凍結保護剤としてジメチルスルホキシドを用いると、無秩序分化誘導が生じることが報告されている(特許文献3:特開2010−273549参照)。

このため、動物に由来する血清を含有せず、かつジメチルスルホキシドを使用しないか、またはできるだけ使用しない凍結保存液が望まれていた。

フルクタンは、主にフルクトース分子から構成される重合体であり、アーティチョークアスパラガスラッキョウタマネギ小麦など植物中や微生物中に存在することが知られている多糖である。フルクタンについては、無血清細胞増殖培地での使用が報告されており、また、細胞保護因子であるジメチルスルホキシド存在下で、フルクタンを少量添加することによる、細胞凍結保護効果が確認されている(特許文献4:特開2008−228587号公報参照)。

概要

ジメチルスルホキシドを使用することなく、さらには動物に由来する血清や血清由来成分を使用することなく、長期にわたって細胞を凍結しておくことが可能な、細胞の凍結保存液の提供。ジメチルスルホキシド代替物としてのフルクタンを有効成分とする、細胞の凍結保存液およびそれを用いた凍結保存方法。なし

目的

このため、動物に由来する血清を含有せず、かつジメチルスルホキシドを使用しないか、またはできるだけ使用しない凍結保存液が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

凍結保護作用として有効な量のジメチルスルホキシドを含まないものである、請求項1に記載の凍結保存液。

請求項3

無血清である、請求項1または2に記載の凍結保存液。

請求項4

エチレングリコールプロピレングリコール、またはこれらの混合物を有効成分としてさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項5

フルクタンが、フルクトースβ2→1グルコシド結合による直鎖状重合体を主鎖とする、イヌリン型フルクタン、フルクトースのβ2→6グルコシド結合による直鎖状重合体を主鎖とする、レバン型フルクタン、フルクトースのβ2→1およびβ2→6の両グルコシド結合を含む重合体を主鎖とする、フルクタン、およびこれらのフルクタンの加水分解物からなる群から選択される一種以上のものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項6

フルクタンが、ネギ科植物キク科植物マメ科植物イネ科植物ユリ科植物ヤマノイモ科、リュウゼツラン科植物アヤメ科植物、およびラン科植物からなる群から選択される植物の根または根茎由来である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項7

フルクタンが、ラッキョウニンニクタマネギからなる群より選択されるネギ属植物の根または根茎由来である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項8

フルクタンを植物の抽出物として含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項9

フルクタンが、植物の抽出物を、限外濾過膜処理、エタノール沈殿処理、またはアセトン沈殿することにより精製されたものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項10

フルクタンの濃度が、20〜60%(w/v)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項11

細胞が、動物細胞である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項12

細胞が、細胞集合体組織、または組織片を形成しているものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の凍結保存液。

請求項13

請求項1〜12のいずれか一項に記載の凍結保存液を用いて、細胞を凍結保存することを含んでなる、細胞の凍結保存方法

請求項14

細胞を懸濁した凍結保存液を、液体窒素によって急冷する工程を含んでなる、請求項13に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、細胞凍結保存するために用いる凍結保存液およびそれを用いた凍結保存方法に関する。

背景技術

0002

細胞は、継代を繰り返すことにより、細胞変質遺伝的変異および雑菌汚染を生じることがある。そこで、安定的な品質の細胞を長期間保存するために、様々な凍結保存技術が用いられている。例えば、哺乳類細胞の場合では、従来、ウシ胎児仔牛または成などの牛血清ベースに5〜20容量%のジメチルスルホキシドDMSO)やグリセリンを添加したものを、凍結保存液として用いて凍結保存する方法が、一般的に行われていた。

0003

しかしながら、哺乳類血清は、その供給に制限があり、かつ非常に高価である。このため、凍結保存する際に血清を用いると、作業が煩雑になって労力が増加する一方、保存コストも上昇することになる。また、血清は、ロットによって、その特質にばらつきがみられることが多く、血清中に含まれるサイトカインおよび増殖因子などの哺乳類由来因子により、保存細胞性質変質させるおそれもある。さらに、特に動物由来の血清には、ヒトにヤコブ病を導くことが危惧されている牛の狂牛病やヒツジスクレイピーなどを引き起こす異常プリオン混入の危険性に加え、ウイルス感染の危険性があった。

0004

そこで、従来、動物由来する血清を一切使用しない凍結保存液の検討が進められてきた。

0005

従来、細胞凍結保存液に使用されている成分としては、アミノ酸タンパク質、糖類、アルコール類等が知られている。例えば、アミノ酸の一つのプロリンは、凍結保護効果を有することが報告されている(非特許文献1: Shinozaki, K. et al.: FEBSLett., 461(3), 205, (1999)および非特許文献2: Takagi, H. et al.: Appl. Environ. Microbial., 69(11), 6527(2003)参照)。また、特開2002−233356号公報(特許文献1)には、糖類(特にグルコース)を使用した細胞凍結保存液が、開示されている。しかしながら、これら成分の成分単独での凍結保護効果は、本発明者らの知る限り、血清成分に比べて充分なものではなかった。

0006

例えば、特許第4588598号公報(特許文献2)には、血清代替物として、絹タンパク質であるセリシンあるいはその加水分解物を使用することが開示されており、アミノ酸および糖類との併用により、血清由来成分を使用する場合と同等の凍結保護効果が期待できることが示されている。しかしながら、この凍結保存液においても、高い保護効果を示すためには、凍結保護因子として、ジメチルスルホキシドを使用することが必要あった。ジメチルスルホキシドは細胞保護作用のあることが知られており、凍結保存液を構成する際には必須の成分であると考えられていた。

0007

一方、ES細胞iPS細胞などの幹細胞においては、凍結保存する際に、凍結保護剤としてジメチルスルホキシドを用いると、無秩序分化誘導が生じることが報告されている(特許文献3:特開2010−273549参照)。

0008

このため、動物に由来する血清を含有せず、かつジメチルスルホキシドを使用しないか、またはできるだけ使用しない凍結保存液が望まれていた。

0009

フルクタンは、主にフルクトース分子から構成される重合体であり、アーティチョークアスパラガスラッキョウタマネギ小麦など植物中や微生物中に存在することが知られている多糖である。フルクタンについては、無血清細胞増殖培地での使用が報告されており、また、細胞保護因子であるジメチルスルホキシド存在下で、フルクタンを少量添加することによる、細胞凍結保護効果が確認されている(特許文献4:特開2008−228587号公報参照)。

0010

特開2002−233356号公報
特許第4588598号公報
特開2010−273549号公報
特開2008−228587号公報

先行技術

0011

Shinozaki, K. et al.: FEBSLett., 461(3), 205, (1999)
Takagi, H. et al.: Appl. Environ. Microbial., 69(11), 6527(2003)

0012

本発明者らは、今般、動物由来の血清を使用することなく、またジメチルスルホキシドを使用することなく、フルクタンを有効成分として使用することで優れた細胞凍結保護効果を発揮させることに成功した。従来、フルクタンはジメチルスルホキシドと共に使用することで、細胞凍結保護効果が示されると考えられてきたところ、フルクタンの使用量を検討することで、ジメチルスルホキシドを全く使用せずに、有効な細胞凍結保護効果が得られたことは予想外のことであった。このことから、ジメチルスルホキシドの代替物としてフルクタンを使用することで、ジメチルスルホキシドを使用する場合と同様の優れた細胞の凍結保護効果を示しうることがわかった。さらにこの効果は、フルクタンに加えてさらに、エチレングリコール、またはプロピレングリコールを選択して使用することによって、より顕著となった。本発明は、これらの知見に基づくものである。

0013

よって、本発明は、ジメチルスルホキシドを使用することなく、さらには、細胞の凍結障害を避けるのに非常に有効であるが問題の多いウシ胎児などの動物に由来する血清や血清由来成分を使用することなく、長期にわたって細胞を凍結しておくことが可能な、細胞の凍結保存液の提供をその目的とする。

0014

すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ジメチルスルホキシド代替物としてのフルクタンを有効成分とする、細胞の凍結保存液。

0015

(2)凍結保護作用として有効な量のジメチルスルホキシドを含まないものである、前記(1)に記載の凍結保存液。

0016

(3)無血清である、前記(1)または(2)に記載の凍結保存液。

0017

(4)エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの混合物を有効成分としてさらに含んでなる、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0018

(5)フルクタンが、
フルクトースのβ2→1グルコシド結合による直鎖状重合体を主鎖とする、イヌリン型フルクタン
フルクトースのβ2→6グルコシド結合による直鎖状重合体を主鎖とする、レバン型フルクタン
フルクトースのβ2→1およびβ2→6の両グルコシド結合を含む重合体を主鎖とする、フルクタン、および
これらのフルクタンの加水分解物
からなる群から選択される一種以上のものである、前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0019

(6)フルクタンが、ネギ科植物キク科植物マメ科植物イネ科植物ユリ科植物ヤマノイモ科、リュウゼツラン科植物アヤメ科植物、およびラン科植物からなる群から選択される植物の根または根茎由来である、前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0020

(7)フルクタンが、ラッキョウ、ニンニク、タマネギからなる群より選択されるネギ属植物の根または根茎由来である、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0021

(8)フルクタンを植物の抽出物として含んでなる、前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0022

(9)フルクタンが、植物の抽出物を、限外濾過膜処理、エタノール沈殿処理、またはアセトン沈殿することにより精製されたものである、前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0023

(10)フルクタンの濃度が、20〜60%(w/v)である、前記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0024

(11)細胞が、動物細胞である、前記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0025

(12)細胞が、細胞集合体組織、または組織片を形成しているものである、前記(1)〜(11)のいずれか一つに記載の凍結保存液。

0026

(13)前記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の凍結保存液を用いて、細胞を凍結保存することを含んでなる、細胞の凍結保存方法。

0027

(14)細胞を懸濁した凍結保存液を、液体窒素によって急冷する工程を含んでなる、前記(13)に記載の方法。

0028

本発明の細胞の凍結保存液は、従来のようにジメチルスルホキシドを使用する場合と比べて、ジメチルスルホキシドにより引き起こされうる細胞の機能損傷や細胞の分化ベルへの悪影響を無くすか(未分化な細胞は未分化なまま、分化した細胞はその分化レベルを保持したまま)または大幅に低減できると同時に、従来のようにジメチルスルホキシドを使用する場合と同等か、それに近い凍結保護効果を示すことができる。また、本発明の凍結保存液は、動物由来の血清または血清由来成分を含まなくてもよいため、保存している細胞の性質を変える可能性が低く、人畜共通感染症の原因となる異常プリオンや未知ウイルスの混入の危険性が殆どないものである。そのため、バイオ医薬品生産に用いられる細胞や、再生医療細胞治療など医療で利用される細胞・組織を保存すること、および種の保存を行うために必要とされる生殖細胞受精卵を保存することに適している。さらに、本発明の凍結保存液は、その組成が明瞭であるため、安全性が高く、品質の安定性を保ち、安定供給する上でも有利である。加えて、本発明の凍結保存液は、簡略な凍結操作、凍結保存、および解凍操作を通じて、細胞生存率細胞機能を高く保持できる。これにより、目的とする細胞数まで増殖させるのに要する時間を短縮することができる。

図面の簡単な説明

0029

限界濾過膜によるフルクタン抽出液精製過程における、抽出液と、膜処理後の精製液分析結果(フルクタン分子量HPLC分析結果)を示す。
エタノール沈殿処理によるフルクタン抽出液の精製過程における、抽出液と、エタノール沈殿処理後の精製液の分析結果(フルクタン分子量HPLC分析結果)を示す。
CHO細胞における、各凍結保存液解凍後生細胞数の変化を示す。
間葉系幹細胞における、各凍結保存液の解凍後の生細胞数の変化を示す。

発明の具体的説明

0030

細胞の凍結保存液
本発明は、前記したように、ジメチルスルホキシド代替物としてのフルクタンを有効成分とする、細胞の凍結保存液である。

0031

本発明において、「凍結保存液」とは、将来解凍して使用することを目的として、所望の細胞を、凍結による影響から保護しつつ凍結保存できる溶液のことをいい、凍結させる温度は、凍結保存液が凍結し細胞が凍結保存可能であれば特に限定されず、通常−20℃以下であり、好ましくは−80℃以下、必要により−196℃以下である。

0032

本発明において、「ジメチルスルホキシド代替物」とは、従来の細胞の凍結保存液では凍結保護作用として有効な量のジメチルスルホキシドを必須の成分としていたことから、そのジメチルスルホキシドの全部または一部の代わりに使用でき、ジメチルスルホキシドと同様の効果を奏しうる成分を意味する。

0033

本発明において、「有効成分とする」とは、本発明による凍結保存液が、所望の細胞の凍結保護効果を発揮するのに充分な量(すなわち、有効量)のフルクタンを含有することをいう。

0034

したがって、フルクタンのみを含む水溶液緩衝液を、そのまま凍結保存液として用いてもよいが、凍結保護に有効な量で有効成分を含み、かつ凍結保護効果を損なわない限りにおいて、本発明による凍結保存液は、必要に応じて他の添加剤を含んでなることができる。このような添加剤としては、例えば、他の凍結保護成分、賦形剤結合剤香料緩衝剤増粘剤着色剤、安定剤、pH調整剤保湿剤防腐剤が挙げられる。

0035

本発明による凍結保存液は、好ましくは、フルクタンが、動物由来の血清としての効果も有する(特開2008−228587号公報参照)点で、無血清である。本発明において、「無血清」とは、動物に由来の血清または血清由来成分を、凍結保存液が含まないことをいう。

0036

フルクタン
本発明において、フルクタンとは、フルクトースを主成分とする多糖であり、主に微生物および植物内に存在している。

0037

フルクタンとしては、例えば、キク科ユリ科アヤメ科、ラン科植物の根、根茎、殻物などに存在している、イヌリン型フルクタン(D−フラクトフラノースのβ2→1結合により構成されている)、禾本科植物の葉やなどに存在し、または細菌の作用によりショ糖から生産される細菌分泌多糖である、レバン型フルクタン(D−フラクトフラノースのβ2→6結合により構成されている)、またはラッキョウ、ニンニク、タマネギなどのネギ属植物に存在する、β2→6結合とβ2→1結合が混合している、フルクタン(特許第3111378号公報参照)が知られている。

0038

本発明のフルクタンとは、
フルクトースのβ2→1グルコシド結合による直鎖状重合体を主鎖とする、イヌリン型フルクタン、
フルクトースのβ2→6グルコシド結合による直鎖状重合体を主鎖とする、レバン型フルクタン、
フルクトースのβ2→1およびβ2→6の両グルコシド結合を含む重合体を主鎖とする、フルクタン、および
これらのフルクタンの加水分解物
からなる群から選択される一種以上のものである。

0039

フルクタンの加水分解物とは、フルクタンの非加水分解物を、慣用の手段、例えば、熱、酸、アルカリ、または酵素等を利用することにより加水分解を施して得ることができるものである。

0040

フルクタンおよびフルクタンの加水分解物の重合度は、細胞の凍結保護効果を有する限り特に限定されず、例えば、重合度20〜1000(分子量4〜180kDa)、好ましくは、重合度30〜600(分子量5〜110kDa)である。この重合度および分子量は、分子量の測定方法分子量マーカーおよび分析条件の違いによって、測定結果が変動することがあるため、これに限定されるものではない。

0041

フルクタンおよびフルクタンの加水分解物の分子量の測定方法としては、特に限定されず、例えば、HPLCによるゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)分析、またはゲル浸透クロマトグラフ(GPC)分析が挙げられる。具体的には、下記実施例に記載する、プルラン標準物質として用いるGFC分析による測定方法が挙げられる。

0042

本発明で用いるフルクタンとしては、天然物由来のものであっても、慣用の化学的または遺伝子工学的手法により人工的に合成されたものであってもよい。フルクタンは、好ましくは、微生物由来植物由来などの天然物であり、より好ましくは、植物の根または根茎由来である。

0043

フルクタンを産生する微生物としては、Bacillus属、Streptococcus属、Pseudomonas属細菌などが挙げられる。

0044

フルクタンを含む植物としては、ラッキョウ、ニンニク、タマネギ、ワケギリーキなどのネギ科植物、キクイモ、ダリアゴボウアザミタンポポ、アーティチョーク(チョウセンアザミ)、チコリーヤーコンなどのキク科植物、サヤマメクズイモなどのマメ科植物、コムギライムギなどのイネ科植物、アスパラガスなどのユリ科植物、ヤムイモなどのヤマノイモ科、リュウゼツランなどのリュウゼツラン科植物、アヤメ科植物、ラン科植物などが挙げられる。フルクタンを含む植物は、好ましくは、ネギ属植物、アヤメ科、イネ科、キク科、ユリ科、ラン科植物であり、より好ましくは、根または根茎由来のフルクタンの構造が複雑であり、かつ様々な生理活性を示し得るという点で、ラッキョウ、ニンニク、タマネギなどのネギ属植物である。

0045

本発明で用いるフルクタンは、植物の抽出物として提供されてもよい。

0046

本発明で用いるフルクタンの抽出方法および調製方法は、特に限定されない。例えば、天然物の場合、熱水を用いて抽出し、その後、液体クロマトグラフィーなどの技法により調製してもよい。また、特許第3111378号公報に記載の方法や、その他当業者に公知な方法により調製してもよい。さらに、フルクタンは市販のものを用いてもよく、例えば、三里特産農業協同組合製のフルクタンが挙げられる。

0047

本発明で用いるフルクタンの純度は、特に限定されず、必要に応じて高純度に精製することができる。精製方法としては、例えば、特許第3111378号公報に記載のような、フルクタンを含んでなる植物抽出物を、エタノールアセトンを用いてフルクタンを沈殿させる方法や、分子量100〜100,000で分離可能な限外濾過膜、好ましくは分子量500〜2,000で分離可能な限外濾過膜を用いて、低分子不純物を除去する方法が挙げられる。

0048

本発明による細胞凍結保存液中におけるフルクタンの含有量は、好ましくは、終濃度が、0.1〜75%(w/v)、より好ましくは5〜60%(w/v)、さらに好ましくは10〜60%(w/v)、特に好ましくは20〜60%(w/v)、最も好ましくは20〜50%(w/v)となるような量である。ここで、本発明の細胞凍結保存液中におけるフルクタンの含有量を測定する方法は、糖の検出に用いられる方法であれば、特に限定されず、例えば、分光光度計を用いるフェノール硫酸法(中道徳、圭二編、生物化学実験法19澱粉・関連糖質実験法、学会出版センター参照)が挙げられる。

0049

本発明による凍結保存液は、好ましくは、凍結保護作用として有効な量のジメチルスルホキシド(DMSO)を含まないものである。

0050

ここで、有効な量のジメチルスルホキシドとは、ジメチルスルホキシドが細胞の凍結保護効果を十分に発揮できる量をいう。本発明による細胞凍結保存液中における有効な量でないジメチルスルホキシドの含有量は、終濃度が、好ましくは0.1〜10%(v/v)、より好ましくは0.1〜5%(v/v)、さらに好ましくは0.1〜4%(v/v)、特に好ましくは0.1〜3%(v/v)、より特に好ましくは0.1〜2%(v/v)、最も好ましくは0.1〜1%(v/v)となるような量である。このような量であると、ジメチルスルホキシドは、凍結保存液中に含まれていたとしても、細胞凍結保護効果を奏することはできない一方で、凍結保存液中のフルクタンがその効果を奏することになり、ジメチルスルホキシドはフルクタンの効果を増強することができる。

0051

本発明の凍結保存液は、必要に応じて、滅菌することができる。滅菌方法としては、例えば、濾過滅菌高圧蒸気滅菌紫外線滅菌、電子線滅菌γ線滅菌が挙げられる。滅菌方法は、好ましくは、フルクタンが熱に強く、より確実性の高い滅菌ができる点で、高圧蒸気滅菌である。

0052

追加の凍結保護成分
本発明による凍結保存液は、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの混合物を有効成分としてさらに含んでなる。フルクタンに加えて、エチレングリコールやプロピレングリコールを含むことは、凍結保存液が、ジメチルスルホキシドを使用することなく、充分な細胞の凍結保護効果を発揮する上で有利である。

0053

本発明による細胞凍結保存液中におけるエチレングリコールの含有量は、好ましくは、終濃度が、0.1〜20%(w/v)、より好ましくは1〜10%(w/v)、さらに好ましくは2.5〜10%(w/v)、特に好ましくは2.5〜5%(w/v)となるような量である。

0054

本発明による細胞凍結保存液中におけるプロピレングリコールの含有量は、好ましくは、終濃度が、0.1〜20%(w/v)、より好ましくは、1〜10%(w/v)、さらに好ましくは1〜7%(w/v)、特に好ましくは1〜4%(w/v)、最も好ましくは2〜4%(w/v)となるような量である。

0055

他の凍結保護成分
本発明よる凍結保存液は、他の細胞保護成分をさらに含んでなることができる。ここで、他の細胞保護成分としては、例えば、グリセロールキシリトールエリスリトール、グリセリン、ジグリセリンジプロピレングリコールソルビット、ソルビット酸、トリエチレングリコール乳糖、ショ糖、バチグリコール、1,3−ブチレングリコールブドウ糖、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールポリエチレングリコール200〜20000、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール400〜1200、マルチトール、D−マンニットトレハロースグルコシルトレハロースヒアルロン酸アミノブリン酸、アミノ酸などからなる群より選択されるものである。これらは2種以上を併用してもよい。

0056

本発明による凍結保存液中における他の細胞保護成分の含有量は、使用する成分の種類により適宜変更することが可能であるが、好ましくは、終濃度が1〜40重量%、より好ましくは、2〜20重量%となるような量である。

0057

溶媒成分
本発明による凍結保存液における主溶媒は、水またはアルコール系溶媒であり、好ましくは水である。溶媒は、生理食塩水などの等張液や、緩衝液であることができる。緩衝液は、緩衝剤成分を含み、ここで、緩衝剤の成分は、細胞凍結保存液のpHが室温(例えば25℃)において細胞と等張でかつpH5.0〜9.0、好ましくはpH6.5〜7.5となる溶液状態のものであれば、特に限定されない。緩衝剤の成分の具体例としては、ハンクス液リン酸系(例えばリン酸緩衝液PBS)、BES、TES、アセトアミドグリシングリシンアミドグリシルグリシンTRICINE、トリスエタノールアミンベロナール、およびHEPESが挙げられる。緩衝剤の成分は、好ましくは、PBS、TRICINE、およびHEPESからなる群より選択され、より好ましくは、PBSである。

0058

細胞の凍結保存
本発明による凍結保存液は、細胞の凍結保存処理において使用される。すなわち、細胞の凍結保存処理を行う際に、将来解凍して使用することを目的とする細胞を、溶液状態とした本発明による溶液中に入れて懸濁し、これを凍結保存する条件下に保持して凍結させる。細胞が必要になったとき、凍結した細胞および凍結保存液を解凍処理した後、そこから細胞を回収することができる。

0059

本発明において、「細胞の凍結保存」とは、継代培養することなしに細胞を長期間維持する目的で、細胞を凍結させて保存することをいう。したがって、本発明によれば、本発明による凍結保存液中に目的細胞を入れ、これを凍結保存することを含んでなる、細胞の凍結方法が提供される。

0060

ここで、凍結保存液中に目的細胞を入れる際、その濃度は、1万〜1000万cells/mlであることが望ましい。

0061

ここで、凍結方法および保存方法その後の解凍方法は、細胞を害する条件でない限りは、特に限定されない。

0062

細胞の凍結方法は、例えば、目的細胞を、本発明による凍結保存液中に入れて懸濁し、凍結チューブに入れて、−40℃以下の超低温フリーザーに入れること、液体窒素によって急速冷却すること、または凍結チューブをプログラムフリーザーに入れて細胞を緩慢凍結することが挙げられる。好ましくは、目的の細胞を懸濁した凍結保存液を、液体窒素によって急速冷却することを含んでなる凍結保存方法である。

0063

凍結した細胞の保存方法は、例えば、凍結させた温度にそのまま保持すること、またはプログラムフリーザーで凍結させた場合では、その後液体窒素中に保持することが挙げられる。

0064

細胞を解凍する方法としては、例えば、凍結保存されたチューブを37℃以下の水浴中に入れることにより融解させ解凍することが挙げられる。

0065

本発明において、「細胞」とは、凍結保存に付されることがある細胞であれば、特に限定されず、微生物、細菌、動物細胞、植物細胞のいずれも用いることができる。細胞は、好ましくは動物細胞であり、例えば、ヒトを含む哺乳動物マウスラットモルモットハムスターウサギネコイヌ、ヒツジ、ブタウシウマヤギサル、ヒトなど)、鳥類ニワトリダチョウなど)、爬虫類ワニなど)、両生類カエルなど)、魚類ゼブラフィッシュメダカなど)などの脊椎動物昆虫、蛾、ショウジョウバエなど)などの非脊椎動物の細胞が挙げられる。本発明で対象とされる細胞は、より好ましくは哺乳類細胞である。

0066

本発明における細胞は、培養細胞として株化された細胞、生物組織から得られる株化されていない正常細胞、遺伝子工学的手法により得られた形質転換細胞など、いずれの形式のものであってもよい。例えば、BHK細胞、HepG2細胞、MG63細胞、CHO細胞、ハイブリドーマなどの癌細胞を含む培養細胞株であってもよく、繊維芽細胞、間葉系幹細胞、生殖細胞や受精卵、胚などの個体や組織より単離された細胞であってもよく、さらにはランゲルハンス島のような細胞集合体、組織または組織片であってもよい。

0067

以下、実施例を示してこの出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。

0068

例1:フルクタンの調製方法(小規模
冷凍ラッキョウ500.1g(三里浜特産農協より入手)に対し1.5倍量の水を加え、フードカッター工舎製作所製)でホモジナイズした後、綿布を用いて絞り、絞りを回収した。絞り粕に対し1.5倍量の水を加え、ホモジナイズした後、再度絞り汁を回収し、先の絞り汁と合わせた。得られた絞り汁を、pH10になるまで5%水酸化カルシウム溶液を添加した後、炭酸ガスを通しpH6.9まで中和した。中和した絞り汁を、沸騰水中で、液温が80℃に達してから20分間加熱(蒸煮)した。得られた絞り汁を、冷却後、濾紙アドバンテック製 No.2)を用いて濾過した。濾液に対し、1/7量の活性炭粒状活性炭松葉薬品製)を添加し、一晩放置後、珪藻土ナカライテスク製)で濾過し活性炭の除去を行った。

0069

粉末化
得られた濾液1100mlに対しエタノール5000mlを加えてフルクタンを沈殿させた。得られた沈殿物を、デカンテーションにより回収し、水に再溶解した溶液を、一晩、4℃で、透析透析膜1−7/8、分画分子量12,000〜14,000、三光純薬株式会社より入手)した後、凍結乾燥して、フルクタン粉末59.03gを得た。

0070

例2:フルクタンの調製方法(大規模
原料としての乾燥ラッキョウ200.7kg(威斯食品工業より入手)を、2mm以下程度に粉砕し、2.76kgの水酸化カルシウムを懸濁させた抽出用の水に混合し、1時間、常温抽出を行い、1時間、95℃で加熱抽出し、一晩、60℃で加熱抽出した後、活性炭100kg(粉末状活性炭、日本エンバイケミカルズ製)を添加して脱臭処理を行った。その後、珪藻土(中央シリカ株式会社より入手)で濾過し、残渣と活性炭を除去した。

0071

(1)限外濾過膜精製
得られた抽出液を、限外濾過膜モジュールNTR−7430HG−S4F(日東電工社製)に通液させて、フルクタンの精製を行った。

0072

得られた精製液は、一端加熱殺菌した後、活性炭10kgを添加して再度脱色処理を行った。その後、精製液を、減圧濃縮し、85℃で1時間加熱することにより殺菌し、噴霧乾燥により粉末化を行ったところ、精製フルクタン粉末91.6kgを得た。
得られた精製フルクタン粉末は、フルクタン含量測定、分子量分布の分析を行った。

0073

フルクタン含量(純度)測定
フルクタン含量は、フルクタンを加水分解し、得られた果糖の量から算出した。
加水分解の手順としては、希釈した抽出液に10%(w/v)クエン酸溶液を添加してpH3.0以下に調整し、100℃で150分間加熱を行った後、1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で中和し、定容した。その後、F−キットロシュダイアグスティックス社製)を用いて、加水分解物の果糖含量と、加水分解前の抽出液の果糖含量およびスクロース含量とを測定し、下記式により、フルクタン含量を算出した。
フルクタン含量=0.9×(加水分解後果糖含量−加水分解前果糖含量−(加水分解前スクロース含量×180.16/342.3))

0074

F−キットにより果糖含量およびスクロース含量を計測する際の吸光度の測定(340nm)には、島津製作所製の分光光度計(UVmini−1240)を使用した。粉末化した試料については、予め適量の脱イオン水に溶解させた後、抽出液と同様に分析を行った。

0075

分子量分布の分析
フルクタンの分子量分布の分析は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて行った(GFC分析)。分析条件は下記の通りである。
分析用の試料は、抽出液または粉末を0.2mol/Lの硝酸ナトリウム溶液で希釈したものを、0.45μmのメンブレンフィルターミニザルトRC、ザルトリウスステディム製)で濾過したものを用いた。

0076

〔フルクタン分子量HPLC分析条件〕
装置 :CCP&8020シリーズ(東ソー製)
カラム:TSKguardcolumn PWXL,TSKgel G4000 PWXL,G3000 PWXL,G2500 PWXL(東ソー製)
検出器示差屈折計RI−8020(東ソー製)
溶離液:0.2M硝酸ナトリウム溶液
流速:1.0ml/min
アプライ量 :100μl
カラム温度:40℃
分子量マーカー:プルラン(Shodex STANDARD P−82、昭和電工社製)

0077

測定の結果、得られた精製フルクタン粉末のフルクタン含量は、92.6%であった。これは、後述する限外濾過膜処理による精製を行わない製法により調製されたフルクタン粉末の含量81.5%を大きく上回っていた。また、フルクタン分子量は、6,000〜110,000Da付近に広い分布を示していた(図1参照)。

0078

(2)エタノール沈殿による精製
限外濾過膜処理を行わない製法でフルクタンを調製し、エタノール沈殿による精製を検討した。

0079

i)限界濾過膜処理を行わない製法によるフルクタンの調製
原料としての乾燥ラッキョウ500kg(威斯食品工業より入手)を、粒径2mm以下程度に粉砕し、6.9kgの水酸化カルシウムを懸濁させた抽出用の水(原料に対して10倍量)に混合し、1時間、常温抽出を行い、1時間、95℃で加熱抽出し、3時間、60℃で加熱抽出した後、抽出液に活性炭250kg(粉末状活性炭、日本エンバイロケミカルズ製)を添加し、1時間撹拌し、活性炭処理を行った。その後、40〜45℃の温度を維持しながら珪藻土(中央シリカ株式会社より入手)で濾過した。次に抽出液を減圧濃縮処理し、濃縮抽出液を85℃で1時間加熱殺菌し、加熱後の濃縮抽出液を噴霧乾燥して、フルクタンを含有する粉末を254kg得た(フルクタン含量81.5%)。

0080

ii)エタノール沈殿
フルクタンの20%溶液(前記i)で得られた粉末を水に溶解したもの)を下記表1の量でエタノールに添加し、フルクタンを沈殿させた。珪藻土濾過により沈殿を回収し、水に再溶解させた後、再度濾過して得られた精製液を、凍結乾燥により粉末化した。各精製粉末のフルクタン含量とフルクタン分子量を前述の方法にて分析した結果を下記の表1および図2に示す。

0081

0082

例3:フルクタンの凍結保護効果
動物細胞の凍結保存に対して、フルクタンの細胞保護効果を検証した。

0083

凍結保存液の調製
リン酸緩衝液(PBS)(リン酸濃度9.5mM、pH7.6)に、終濃度が10%(v/v)になるようにジメチルスルホキシド(DMSO)(和光純薬工業株式会社より入手)を添加し、さらにこれに対し終濃度が10%(w/v)になるように例2(1)で調製したフルクタン粉末を添加したものを凍結保存液として用いた。対照凍結保存液として、10%のDMSOを含むリン酸緩衝液を用いた。

0084

凍結保存試験
試験には、0.1%BSAを添加したASF104培地(味の素社製)で培養したマウスハイブリドーマ細胞2E3−O株を用いた。
各凍結保存液に、上記細胞を細胞濃度が約1.0×106cells/mlとなるように懸濁し、これをそれぞれ凍結チューブ(住友ベークライト社製)に1mlずつ入れた。次いで、凍結チューブを、−80℃フリーザーを用いて、7日間、保存した後、37℃水浴にチューブを漬けて解凍した。
解凍した細胞を、0.1%BSAを添加したASF104培地(味の素社製)にて20時間培養した後、トリパンブルー色素排除法により、生細胞密度死細胞密度とを測定し、下記式により、各凍結保存液についての生存率を算出した。
生存率=生細胞密度/(生細胞密度+死細胞の密度)×100%
その結果を表2に示す。

0085

0086

例4:構造および抽出方法の異なるフルクタンを用いた凍結保護効果の検証

0087

4−1 構造の異なるフルクタンを用いた凍結保護効果の検証
リン酸緩衝液に、終濃度が10%(v/v)になるようにDMSOを添加し、さらにこれに対し終濃度が0.1%(w/v)になるように、レバン(和光純薬工業株式会社より入手)、イヌリンシグマ社より入手)、上記例1にて調製したフルクタンをそれぞれ添加したものを凍結保存液として用いた。対照凍結保存液として、終濃度10%(v/v)となるようにDMSOを添加したリン酸緩衝液を用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を3日間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記の表3に示す。

0088

0089

4−2抽出方法の異なるフルクタンを用いた凍結保護効果の検証
リン酸緩衝液に、例2(1)で調製したフルクタン粉末(純度92.6%)、または抽出時にpH5.1〜5.4の条件下で一晩加熱させて低分子化させたフルクタン(低分子化フルクタン)を、溶媒量に対して30%(w/v)となるように添加したもの(例えば、フルクタン粉末の場合は、PBS100mlにフルクタン粉末30gを添加したもの(フルクタン粉末添加濃度30%))を凍結保存液として用いた。対照凍結保存液として、ウシ胎児血清(FBS)(BIOWEST社)に、終濃度10%(v/v)となるようにDMSOを添加したものを用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を65時間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記の表4に示す。

0090

0091

フルクタンの終濃度の測定
(1)純度を用いた測定
フルクタン粉末添加濃度30%におけるフルクタンの終濃度は、25mlのPBS溶液にフルクタン粉末7.5gを溶解したところ、総量29.8mlであり、フルクタン粉末の純度が92.6%であったことから、概算上23.3%(w/v)であった。

0092

(2)フェノール硫酸法
前記フルクタン粉末添加濃度30%の終濃度を、フェノール硫酸法でも測定した。
凍結保存液100μlと、5%(W/V)フェノール100μlとを試験管で混合し、撹拌した。混合液硫酸500μlを加え、良く撹拌させた後、40℃の恒温槽15分間反応させ、反応液を490nmで吸光度を測定した。その結果、フルクタン粉末添加濃度30%の終濃度は、24.0%(w/v)となった。

0093

例5:フルクタン濃度の検証
リン酸緩衝液に、例2(1)にて調製したフルクタンを、それぞれ溶媒量に対して15、30、45、60、75%(w/v)となるように添加したもの(例えば、フルクタン15%の場合は、PBS100mlにフルクタン15gを添加したもの(フルクタン添加濃度15%))を凍結保存液として用いた。対照凍結保存液として、ウシ胎児血清(FBS)に、終濃度10%(v/v)となるようにDMSOを添加したものを用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を68時間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記の表5に示す。

0094

0095

さらに、リン酸緩衝液に、例2(1)にて調製したフルクタンを、それぞれの溶媒量に対して25、30、35、40、45、50%(w/v)となるように添加したものを凍結保存液として用いた。対照凍結保存液として、フルクタン無添加のリン酸緩衝液およびウシ胎児血清に、終濃度10%となるようにDMSOを添加したものを用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を65時間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記の表6に示す。

0096

0097

例6:凍結保存液の検討
リン酸緩衝液に、濃度0、1.0、3.0、5.0、10%(v/v)となるようにDMSOを添加し、さらにこの混合溶媒に対して40%(w/v)となるように例2(1)にて調製したフルクタンを添加したもの(例えば、DMSO5.0%の場合は、PBS95mlにDMSO5mlを添加し、さらにフルクタン40gを添加し、濾過滅菌したもの(DMSO5.0%、フルクタン添加濃度40%))を凍結保存液として用いた。対照凍結液として、ウシ胎児血清に、終濃度10%(v/v)となるようにDMSOを添加したものを用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を42時間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記表7に示す。

0098

0099

例7:エチレングリコールとフルクタンとを含んでなる凍結保存液の検討
リン酸緩衝液に、濃度0、2.5、5.0、7.5、10%(v/v)となるようにエチレングリコール(EG)(058−00986、和光純薬工業株式会社より入手)を添加し、さらにこの混合溶媒に対して30%(w/v)となるように例2(1)にて調製したフルクタンを添加したもの(例えば、EG5.0%の場合は、PBS9.5mlにEG0.5mlを添加し、さらにフルクタン3gを添加し、濾過滅菌したもの(EG5.0%、フルクタン添加濃度30%))を凍結保存液として用いた。対照凍結液として、ウシ胎児血清に、終濃度10%(v/v)となるようにDMSOを添加したものを用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を37時間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記表8に示す。

0100

0101

また、添加するエチレングリコールの濃度は、2.5%未満では、凍結保護効果が十分でなく、15%以上となると、生細胞密度の減少が生じた。

0102

例8:プロピレングリコールとフルクタンとを含んでなる凍結保存液の検討
リン酸緩衝液に、濃度0、1.0、2.0、4.0、8.0%(v/v)となるようにプロピレングリコール(PG)(164−04996、和光純薬工業株式会社より入手)を添加し、さらにこの混合溶媒に対して30%(w/v)となるように例2(1)にて調製したフルクタンを添加したもの(例えば、PG5.0%の場合は、PBS9.5mlにPG0.5mlを添加し、さらにフルクタン3gを添加し、濾過滅菌したもの(PG5.0%、フルクタン添加濃度30%))を凍結保存液として用いた。対照凍結液としては、ウシ胎児血清に、終濃度10%(v/v)となるようにDMSOを添加したものを用いた。
凍結保存液および解凍後の培養時間を37時間に変更した以外は、例3と同様に試験し、各凍結保存液の生存率を算出した。
その結果を下記表9に示す。

0103

0104

また、添加するプロピレングリコールの濃度は、8.0%以上となると生細胞密度の減少が生じた。

0105

例9:CHO細胞への凍結保護効果
下記の表10記載の組成で凍結保存液を調製した。なお、フルクタンは、例2(1)にて調製したフルクタンを用いた。
試験には、無血清培地IS CD−CHO(ISジャパン社製)にグルタミン2mMを添加した培地で培養したCHO(Chinese Hamster ovary)DP−12細胞(American Type Cellular Collectionより入手)を用いた。
各凍結保存液に、上記細胞を細胞濃度が約1.0×106cells/mlとなるように懸濁し、これをそれぞれ凍結チューブ(住友ベークライト社製)に1mlずつ入れた。次いで、凍結チューブを、−80℃フリーザーを用いて、数日間(6日間)保存した後、37℃水浴にチューブを漬けて解凍した。
解凍した細胞を、無血清培地IS−CHO−CD(ISジャパン社製)にて4日間培養した。各凍結保存液について、解凍直後、2日後、4日後の生細胞数と死細胞数をトリパンブルー色素排除法により測定した。
その結果を図3に示す。

0106

0107

例10:間葉系幹細胞への凍結保護効果
下記の表11記載の組成で凍結液を調製した。なお、フルクタンは、例2(1)にて調製したフルクタンを用いた。
試験には、15%FBS(BIOWEST社より入手)を添加したα−MEM培地(ギブコ社より入手)で培養した、ウイスターラット(三協ラボサービスより入手)から単離した骨髄由来の間葉系幹細胞を用いた。
各凍結保存液に、上記細胞を細胞濃度が約1.0×106cells/mlとなるように懸濁し、これをそれぞれ凍結チューブ(住友ベークライト社製)に1mlずつ入れた。次いで、凍結チューブを、−80℃フリーザーを用いて、5日間保存した後、37℃水浴にチューブを漬けて解凍した。
解凍した細胞を、FBSを15%含むα−MEMにて3日間培養した。各凍結保存液について、解凍直後、1日後、2日後、3日後の生細胞数と死細胞数をトリパンブルー色素排除法により測定した。
その結果を図4に示す。

0108

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