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技術 炭化タングステン基焼結体およびそれを用いた耐摩耗部材

出願人 日本タングステン株式会社株式会社タンガロイ日本特殊合金株式会社一般財団法人ファインセラミックスセンター
発明者 上野修司古川幸太郎中原賢治船水健司木下聡高田真之松原秀彰松田哲志野村浩
出願日 2011年4月26日 (8年7ヶ月経過) 出願番号 2011-097939
公開日 2012年11月22日 (7年0ヶ月経過) 公開番号 2012-229138
状態 特許登録済
技術分野 セラミック製品 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット ダイヤモンド又は金属化合物を含有する合金
主要キーワード X線プローブ パネル状部材 塗布工具 腐食面 平面ひずみ コバルト相 腐食処理 鉄系焼結金属
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この項目の情報は公開日時点(2012年11月22日)のものです。
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図面 (20)

課題

解決手段

炭化タングステンを主成分とする第1相と、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種元素炭窒化物を主成分とする第2相を有し、第2相の体積分率が0.01体積%以上40体積%未満であり、残部が第1相である炭化タングステン基焼結体。

概要

背景

炭化タングステン(WC)をはじめとする、周期表の第4族、第5族および第6族(それぞれ、短周期型周期表の第IVa族、第Va族および第VIa族)の元素炭化物を、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の鉄族元素焼結した複合材料は、硬さ、強度、耐摩耗性等の機械的特性に優れ、超硬合金と呼ばれている。超硬合金は高温下での硬さ低下が少なく、耐摩耗性にすぐれていることから、金属加工用切削工具アルミニウム等の深絞り金型を初めとする多くの用途に用いられている。

超硬合金は、原料である炭化物および鉄族金属粉末粉砕および混合後、加圧および加熱して焼結する粉末冶金法により製造される。焼結時の昇温過程において、まず鉄族金属が溶融して液相が発生し、その流動により固相粒子再配列が起こり、次いで固相粒子の液相中への溶解が起こる。その後、冷却過程において、固相粒子の析出成長合体が起こり、柱状の炭化物粒子相と、結合組織としての鉄族金属相からなる超硬合金が形成される。

この場合において、炭化物粒子の成長が進みすぎ、粒子が粗大化すると、機械的特性が低下するため、炭化物粒子の成長を抑制し、粒径を1μm以下程度にとどめておくことが望ましい。また、結合相を形成する鉄族金属としては、通常コバルトが用いられているが、コバルトを用いた超硬合金は靱性等に優れる反面、硬さが低くなる、コバルト相腐食を受けやすい等の点で課題を有している。

これらの問題に鑑み、粒成長抑制効果を有し、耐食性および機械的強度の点で優れた特性を有する炭化タングステン基焼結体に関する検討が行われている。例えば、炭化タングステンの粒成長抑制効果を有する炭化バナジウムVC)や炭化クロム(Cr3C2)を添加剤として加えることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2には、第1相がWC、第2相がTiおよびWを主成分とする複炭(窒)化物であり、かつ結合相金属が第3相の複炭(窒)化物として存在する3相混合組織焼結合金が開示されている。
特許文献3には、Niが0.02〜0.5重量%、周期律表第4、5、6族の遷移金属の炭化物、窒化物及び炭窒化物の1種以上が0.1〜5.0重量%、残部が炭化タングステン及び不可避不純物からなる焼結体で、ミクロ組織硬質相、結合相、反応相からなり、反応相の面積率をS(%)としたとき、0.1≦S≦2、気孔率をP(%)としたとき、P≦0.1であるガラス光学素子成型用金型部材が開示されている。
特許文献4には、結合相成分として鉄族金属から選ばれた1種または2種以上が1〜15重量%と、固溶体相成分として周期律表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、もしくはこれらの固溶体を1〜20重量%と、残部が炭化タングステンの硬質相成分と不可避不純物からなり、固溶体相成分が部材の内部で略均等に分布して存在すると共に、この固溶体相成分が略均等に分布して存在する領域に連続して部材の表面部でこの固溶体相成分が減少している超硬合金部材が開示されている。
特許文献5には、炭化タングステン相と、周期律表第4、5、6族金属の群から選ばれる少なくとも2種の炭化物、窒化物および炭窒化物からなる固溶体相と、少なくとも1種の鉄属金属を含有する結合相とからなり、固溶体相として、少なくともZrおよびNbを含有するZr−Nb固溶体相を含み、炭化タングステン相の平均粒径d1に対するZr−Nb固溶体相の平均粒径d2の比(d2/d1)が0.5〜2である超硬合金が開示されている。

概要

炭化タングステンに対する高い粒成長抑制効果を有し、機械的強度に加え耐食性等の化学的耐久性にも優れた炭化タングステン基焼結体およびそれを用いた塗布工具ヘッド部、切断刃カッター刃レンズ型シールリング等の耐摩耗部材を提供する。炭化タングステンを主成分とする第1相と、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の炭窒化物を主成分とする第2相を有し、第2相の体積分率が0.01体積%以上40体積%未満であり、残部が第1相である炭化タングステン基焼結体。

目的

本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、炭化タングステンに対する高い粒成長抑制効果を有し、機械的強度に加え耐食性等の化学的耐久性にも優れた炭化タングステン基焼結体およびそれを用いた塗布工具用ヘッド部、切断刃、カッター刃、レンズ型、シールリング等の耐摩耗部材を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

炭化タングステンを主成分とする第1相と、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種元素炭窒化物を主成分とする第2相を有し、前記第2相の体積分率が0.01体積%以上40体積%未満であり、残部が前記第1相であることを特徴とする炭化タングステン基焼結体

請求項2

前記第2相の体積分率が0.5体積%以上5体積%以下であることを特徴とする請求項1記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項3

前記第1相の炭化タングステンのうち、焼結体の全体積の0.01体積%以上4体積%未満が、鉄属元素ならびに第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の複合炭化物および/または複合炭窒化物を主成分とする第3相置換されていることを特徴とする請求項1記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項4

前記第3相が鉄属元素として少なくともコバルトを含んでいることを特徴とする請求項3記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項5

前記第3相の体積分率が0.2体積%以下であることを特徴とする請求項3または4記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項6

前記第2相の体積分率が4体積%以上12体積%以下であることを特徴とする請求項3または4記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項7

前記第3相の一部または全部が、少なくともコバルトを含む鉄族金属相で置換されていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項8

前記第2相が少なくともモリブデンを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項9

前記第2相を構成する、前記第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の炭窒化物中の炭素および窒素モル比をx:(1−x)とした場合、0.2≦x≦0.8なる関係が成り立つことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項10

前記第2相を構成する結晶粒子平均粒径が0.03〜1.1μmであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項11

前記第2相中の前記第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素に少なくともクロムが含まれることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。

請求項12

請求項1から11のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体を用いた耐摩耗部材

請求項13

塗布工具ヘッド切断刃レンズモールドシールリングおよび切削工具のいずれかであることを特徴とする請求項12記載の耐摩耗部材。

技術分野

0001

本発明は、炭化タングステン基焼結体の改良およびそれを用いた耐摩耗部材に関する。

背景技術

0002

炭化タングステン(WC)をはじめとする、周期表の第4族、第5族および第6族(それぞれ、短周期型周期表の第IVa族、第Va族および第VIa族)の元素炭化物を、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の鉄族元素焼結した複合材料は、硬さ、強度、耐摩耗性等の機械的特性に優れ、超硬合金と呼ばれている。超硬合金は高温下での硬さ低下が少なく、耐摩耗性にすぐれていることから、金属加工用切削工具アルミニウム等の深絞り金型を初めとする多くの用途に用いられている。

0003

超硬合金は、原料である炭化物および鉄族金属粉末粉砕および混合後、加圧および加熱して焼結する粉末冶金法により製造される。焼結時の昇温過程において、まず鉄族金属が溶融して液相が発生し、その流動により固相粒子再配列が起こり、次いで固相粒子の液相中への溶解が起こる。その後、冷却過程において、固相粒子の析出成長合体が起こり、柱状の炭化物粒子相と、結合組織としての鉄族金属相からなる超硬合金が形成される。

0004

この場合において、炭化物粒子の成長が進みすぎ、粒子が粗大化すると、機械的特性が低下するため、炭化物粒子の成長を抑制し、粒径を1μm以下程度にとどめておくことが望ましい。また、結合相を形成する鉄族金属としては、通常コバルトが用いられているが、コバルトを用いた超硬合金は靱性等に優れる反面、硬さが低くなる、コバルト相腐食を受けやすい等の点で課題を有している。

0005

これらの問題に鑑み、粒成長抑制効果を有し、耐食性および機械的強度の点で優れた特性を有する炭化タングステン基焼結体に関する検討が行われている。例えば、炭化タングステンの粒成長抑制効果を有する炭化バナジウムVC)や炭化クロム(Cr3C2)を添加剤として加えることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2には、第1相がWC、第2相がTiおよびWを主成分とする複炭(窒)化物であり、かつ結合相金属が第3相の複炭(窒)化物として存在する3相混合組織焼結合金が開示されている。
特許文献3には、Niが0.02〜0.5重量%、周期律表第4、5、6族の遷移金属の炭化物、窒化物及び炭窒化物の1種以上が0.1〜5.0重量%、残部が炭化タングステン及び不可避不純物からなる焼結体で、ミクロ組織硬質相、結合相、反応相からなり、反応相の面積率をS(%)としたとき、0.1≦S≦2、気孔率をP(%)としたとき、P≦0.1であるガラス光学素子成型用金型部材が開示されている。
特許文献4には、結合相成分として鉄族金属から選ばれた1種または2種以上が1〜15重量%と、固溶体相成分として周期律表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、もしくはこれらの固溶体を1〜20重量%と、残部が炭化タングステンの硬質相成分と不可避不純物からなり、固溶体相成分が部材の内部で略均等に分布して存在すると共に、この固溶体相成分が略均等に分布して存在する領域に連続して部材の表面部でこの固溶体相成分が減少している超硬合金部材が開示されている。
特許文献5には、炭化タングステン相と、周期律表第4、5、6族金属の群から選ばれる少なくとも2種の炭化物、窒化物および炭窒化物からなる固溶体相と、少なくとも1種の鉄属金属を含有する結合相とからなり、固溶体相として、少なくともZrおよびNbを含有するZr−Nb固溶体相を含み、炭化タングステン相の平均粒径d1に対するZr−Nb固溶体相の平均粒径d2の比(d2/d1)が0.5〜2である超硬合金が開示されている。

先行技術

0006

特開昭61−12847号公報
特開2002−180175号公報
特開2008−075160号公報
特開2002−146466号公報
特開2002−356734号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、特許文献1記載の超硬合金では、第4族元素、第5族元素、第6属元素化合物窒素が含まれていないために特に高温になった場合の化学的定性欠くという問題を有している。
特許文献2に記載の超硬合金のうち、第4族元素、第5族元素、第6属元素の化合物が窒素を含んでいないもの(請求項1、2)については、上記特許文献1同様の問題があり、窒素を含むもの(請求項3以降および実施例9〜12)ではいずれもWC量が低いために、破壊靱性が74.5%以下と低いためにWCが有する靱性を十分上げることができずに、用途が極めて制限される。
特許文献3に記載の超硬合金は、炭窒化物の原料粉末のサイズが1〜2μmと比較的大きいために、WCの結晶成長を抑制する働きが十分ではなく、硬さおよび強度が十分に得られない。
特許文献4に記載の超硬合金部材は、焼結体の箇所によりその組成および物性が異なるために、本発明の主たる対象である耐摩耗部材としては、その使用に制限があり、寿命などの予測も困難となる。
特許文献5に記載の超硬合金は、窒素を含有する例が示されておらずに、引用文献1および2と同様の問題がある。

0008

本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、炭化タングステンに対する高い粒成長抑制効果を有し、機械的強度に加え耐食性等の化学的耐久性にも優れた炭化タングステン基焼結体およびそれを用いた塗布工具ヘッド部、切断刃カッター刃レンズ型シールリング等の耐摩耗部材を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

すなわち、本発明は、下記の(1)〜(11)に記載の炭化タングステン基焼結体および下記の(12)、(13)に記載の耐摩耗部材を提供するものである。
(1)炭化タングステンを主成分とする第1相と、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の炭窒化物を主成分とする第2相を有し、前記第2相の体積分率が0.01体積%以上40体積%未満であり、残部が前記第1相である炭化タングステン基焼結体。
(2) 前記第2相の体積分率が0.5体積%以上5体積%以下である上記(1)記載の炭化タングステン基焼結体。
(3) 前記第1相の炭化タングステンのうち、焼結体の全体積の0.01体積%以上4体積%未満が、鉄属元素ならびに第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の複合炭化物および/または複合炭窒化物を主成分とする第3相で置換されている上記(1)記載の炭化タングステン基焼結体。
(4) 前記第3相が鉄属元素として少なくともコバルトを含んでいる上記(3)記載の炭化タングステン基焼結体。
(5) 前記第3相の体積分率が0.2体積%以下である上記(3)または(4)記載の炭化タングステン基焼結体。
(6) 前記第2相の体積分率が4体積%以上12体積%以下である上記(3)または(4)記載の炭化タングステン基焼結体。
(7) 前記第3相の一部または全部が、少なくともコバルトを含む鉄族金属相で置換されている上記(3)から(6)のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。
(8) 前記第2相が少なくともモリブデンを含む上記(1)から(7)のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。
(9) 前記第2相を構成する、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の炭窒化物中の炭素および窒素のモル比をx:(1−x)とした場合、0.2≦x≦0.8なる関係が成り立つ上記(1)から(8)のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。
(10) 前記第2相を構成する結晶粒子の平均粒径が0.03〜1.1μmである上記(1)から(9)のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。
(11) 前記第2相中の前記第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素に少なくともクロムが含まれる上記(1)から(10)のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体。
(12) 上記(1)から(11)のいずれか1項記載の炭化タングステン基焼結体を用いた耐摩耗部材。
(13)塗布工具ヘッド部、切断刃、レンズモールド、シールリングおよび切削工具のいずれかである上記(12)記載の耐摩耗部材。

0010

なお、本発明において、「第4族元素」とは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のいずれかをいい、「第5族元素」とは、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)のいずれかをいい、「第6族元素」とは、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)のいずれかをいう。また、本発明において「鉄族元素」とは、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)のいずれかをいう。

発明の効果

0011

本発明の炭化タングステン基焼結体において、結合相である第2相の形成に用いられる第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の炭窒化物は、炭化タングステンに対し高い粒成長抑制効果を有すると共に、微細な粒径の微粒子を容易に製造できる。そのため、このような炭窒化物を原料に用いて製造される本発明の炭化タングステン基焼結体は、炭化タングステンの粒成長が効果的に抑制され、粗大化された粒子を含まない緻密な組織を形成できるため、硬さや曲げ強さ等の機械的特性に優れていると共に、コバルト等の鉄族金属を結合相とするものに比べ、耐食性や靱性において優れている。

図面の簡単な説明

0012

(A)は実施例1((Ti,W)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の破面SEM像(SE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)である。
(A)は炭窒化物を含まない炭化タングステン基焼結体(VC−Cr3C2−WC)の破面のSEM像(SE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体(VC−Cr3C2−WC)の研磨面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例2で得られた炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例3(炭化バナジウム(1体積%)を添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例3(炭化クロム(0.7体積%)および炭化ニオブ(0.3体積%)を添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,W)(C,N)を0.2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,W)(C,N)を1体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,W)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,W)(C,N)を15体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,W)(C,N)を30体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,Mo)(C,N)を0.2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,Mo)(C,N)を1体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,Mo)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,Mo)(C,N)を15体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例4((Ti,Mo)(C,N)を30体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
実施例5(Co添加量1体積%、(Ti,Mo)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)である。
実施例5(Co添加量3.9体積%、(Ti,Mo)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例6((Ti,W)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例6((Ti,W)(C,N)を5体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例6((Ti,Mo)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例6((Ti,Mo)(C,N)を5体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。
(A)は実施例7((Ti,Mo)(C,N)を2体積%添加)で得られた炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)であり、(B)は同炭化タングステン基焼結体の腐食面のSEM像(BSE)である。

0013

本発明の一実施の形態に係る炭化タングステン基焼結体(以下、「炭化タングステン基焼結体」または「焼結体」と略称する場合がある。)は、炭化タングステンを主成分とする第1相と、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の炭窒化物(以下、単に「炭窒化物」と略称する場合がある。)を主成分とする第2相を有している。焼結体に要求される機械的特性および耐熱性発現させるためには、第2相を構成する材料に、炭化タングステンの結晶粒子の粒成長を抑制しつつ、高い熱伝導率を有することが要求される。そのため、粒成長抑制効果が低い炭化物や、熱伝導率の低い窒化物の代わりに、熱伝導を確保した上で粒成長を抑制できる炭窒化物を第2相の構成材料として選択した。
第2相の体積分率は、焼結体の全体積の0.01体積%以上40体積%未満であり、第1相は残部、すなわち焼結体の全体積の60体積%を超え、99.99体積%以下である。第2相の体積分率が焼結体の全体積の0.01体積%を下回ると、炭化タングステンの粒成長を十分に抑制できず、機械的特性が十分に得られない。また、第2相の体積分率が焼結体の全体積の40%体積%以上になると、靱性および強度、特に靱性の顕著な低下を招く。

0014

各相の体積分率は、電子顕微鏡像画像解析による各相の面内分布解析や、EPMA(X線プローブマイクロアナライザ)を用いた構成元素の面内分布の解析等の任意の公知の方法および装置を用いて決定することができる。上述のとおり、第2相の体積分率は、焼結体の全体積の0.01体積%以上40体積%未満であり、用途や要求される機械的特性等に応じて適宜調節される。例えば、抗折力(靱性)を向上させるためには、第2相の体積分率は、焼結体の全体積の0.5体積%以上5体積%以下であることが好ましい。

0015

第1相および第2相は、一般に色調が互いに異なるので、電子顕微鏡像からそれぞれの面内分布を求めることができるが、体積分率の低い第2相を構成する結晶粒子は互いに分離した状態で存在するため、画像解析によりその平均粒径を測定することができる。結晶粒子は必ずしも球状であるとは限らないため、例えば、2値化画像から各粒子に対応する画素数カウントすることにより各粒子の面積を求め、その粒子と同じ面積を有する円の直径をその粒子の粒子径とする等の方法を用いて各結晶粒子の粒子径を求める。第2相を構成する結晶粒子の平均粒径の好ましい範囲は、0.03〜1.1μmである。第2相を構成する結晶粒子の平均粒径が上記範囲内である場合、焼結体の破壊様式は、粒内破壊が支配的であるため、破壊強度は、粒径の1/2乗に反比例するHall−Petch則にしたがう。したがって、結晶粒子の平均粒径は上記範囲内でできるだけ小さくすることが、機械的特性に優れた炭化タングステン基焼結体を得る上で望ましい。

0016

なお、第2相の体積分率が高く、第1相を構成する結晶粒子が互いに分離した状態で存在している場合には、第1相を構成する炭化タングステンの結晶粒子の粒径についても、第2相の場合と同様に決定することができ、炭化タングステンの結晶粒子同士が接している場合であっても、アルカリによる腐食処理等により結晶方位の違い等による結晶粒界観察可能にすることにより、結晶粒子の粒径を決定することができる。炭化タングステンの結晶粒子の好ましい粒径は0.05〜1μmであり、より好ましい粒径は0.05〜0.4μmである。

0017

なお、第2相は、上記炭窒化物のみからなっていてもよいが、原料中の不純物や、製造工程で混入する不純物に起因する不可避的不純物を含んでいてもよい。同様に、第1相も炭化タングステン(WC)以外に不可避的不純物を含んでいてもよいが、こうした不純物は、炭化タングステンの結晶粒子の成長に伴い結晶粒界部分に押し出されるため、通常、第1相はほぼ純粋な炭化タングステンのみからなる。

0018

第2相を構成する炭窒化物は、第4族元素、第5族元素および第6族元素、すなわち、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群より選択される1種または複数種の元素を含んでいる。炭窒化物は、第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される元素としてTiを含んでいることが好ましい。第2相を構成する炭窒化物の具体例としては、(Ti,W)(C,N)、(Ti,Mo)(C,N)等が挙げられる。炭窒化物中に含まれる炭素と窒素のモル分率をx:(1−x)とした場合、xは、0.2以上0.8以下であり、好ましくは0.3以上0.7以下である。xが0.8を越えると、粒成長抑制効果が若干低下する。一方、xが0.2を下回ると、粒成長抑制効果には顕著な影響がないものの、熱伝導率が著しく低下するために、高温下での使用に適さなくなると共に、原料粉末の製造および入手が著しく困難になる。

0019

炭化タングステン基焼結体は、原料粉末を混合後、所定の形状に加圧成型し、焼成することにより製造される。焼結体の組成を制御するためには、原料粉末として、炭化タングステンおよび所望の炭窒化物の粉末を用いることが望ましいが、それらの前駆体を用いてもよい。なお、炭化タングステンおよび炭窒化物は、任意の公知の方法を用いて製造したものを原料として用いることができる。炭化タングステンおよび炭窒化物の混合比は、得られる焼結体における第1相および第2相の体積分率が所望の範囲となるよう適宜調節される。炭化タングステンおよび炭窒化物粉末の体積分率は、例えば、前者が焼結体の全体積の80体積%を超え99.9体積%以下、後者が焼結体の全体積の0.01体積%以上20体積%未満である。

0020

原料粉末の混合は、遊星型ボールミル等の任意の公知の方法および装置を用いて行うことができる。ボールミル回転数および混合時間は、均一な混合物が得られるよう適宜調節できる。例えば、遊星型ボールミルの回転数は、混合のみの場合150rpm程度、粉砕も行う場合350rpm程度に設定され、24〜72時間程度混合を行う。混合時の溶媒として、メタノール等の溶媒を添加してもよい。

0021

次いで、混合後の原料粉末を金型等に入れ加圧(例えば100〜300MPa)することにより、所定の形状に加圧成型する。その際、結合性を高めるためにパラフィン等のバインダを、例えば原料粉末の3重量%程度添加してもよい。次いで、成型後の原料粉末を焼結することにより炭化タングステン基焼結体が得られる。焼結温度は、原料として用いられる炭窒化物の種類等によるが、例えば1500〜2000℃である。必要に応じて、800℃前後の温度で脱脂および予備焼結を行った後、機械加工を行い、次いで上記温度で本焼結を行ってもよい。また、焼結後に、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気HIP(熱間等方加圧加工)処理を行い、焼結組織中の空孔を除去してもよい。

0022

炭化タングステン基焼結体において、第1相の炭化タングステンのうち、焼結体の全体積の0.01体積%以上4体積%未満が、鉄属元素ならびに第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選択される1種または複数種の元素の複合炭化物および/または複合炭窒化物を主成分とする第3相で置換されていてもよい。すなわち、上記のような3相系からなる炭化タングステン基焼結体において、第2相の体積分率は、焼結体の全体積の0.01体積%以上40体積%未満であり、第3相の体積分率は、焼結体の全体積の0.01体積%以上4体積%未満であり、第1相は残部、すなわち焼結体の全体積の56体積%を超え、99.98体積%以下である。
第3相の体積分率が焼結体の全体積に対する0.01体積%未満だと、第3相の存在が観察により確認できず、焼結体の全体積の4体積%を越えると熱膨張率が大きくなるために、特にレンズ型や塗布工具のように熱膨張率が制限される用途に対して使用が難しい。
なお、第3相は鉄属元素を含んでいてもよく、この場合少なくともコバルトを含んでいることが好ましい。コバルトは炭化タングステンと高温での濡れ性がよく、焼結性を向上させ、焼結体におけるムラの発生を抑制させ、機械的特性を向上させる作用を有している。また、鉄属元素としてニッケルまたは鉄のみを添加した場合、炭素量のコントロールが困難になる。以上の理由により、焼結体に含まれる鉄属元素としては、コバルトが好ましい。

0023

上記のような3相系からなる炭化タングステン基焼結体は、原料として鉄族金属源(鉄族金属またはその塩:例えば、金属コバルトまたはコバルト塩)をさらに用いる以外は、上記の2相系からなる炭化タングステン基焼結体と同様の原料および方法を用いて製造できるため、ここでは詳しい説明を省略する。

0024

第3相の体積分率は、焼結体の用途や要求される性質等に応じて、原料として用いる鉄族金属源の配合比率を適宜変化させることにより調節することができる。例えば、焼結体の曲げ強度を確保する必要がある場合、第3相の好ましい体積分率は焼結体の全体積の0.2体積%以下である。

0025

また、併せて第2相の体積分率を調節することにより、焼結体の物性を大幅に変化させることもできる。例えば、ガラスレンズ金型用材料として焼結体を用いる場合、焼結体は、現在主流であるバインダレス超硬合金を用いた周辺部材との兼ね合いにより所望のクリアランスが得られる熱膨張率(好ましくは4.8〜5.3ppm)と、ガラスに対する耐食性とを併せ持つ必要がある。

0026

コバルトを含む鉄族元素は、金属相として第3相の一部または全部を置換する形で存在してもよいが、第3相中に4、5、6族との複合炭化物(例えば、W3Co3C)、複合窒化物、または複合炭窒化物の形態で存在していてもよい。

0027

さらに、原料として第4族、第5族および第6族元素からなる群より選択される1または複数の元素の炭化物を添加してもよく、この場合、炭化物が第3相の構成成分として含まれていてもよいが、第2相中に炭化物が分散する形で存在していてもよい。

0028

3相系からなる炭化タングステン基焼結体についても、2相系の場合と同様、電子顕微鏡像の画像解析による各相の面内分布の解析や、EPMA(X線プローブマイクロアナライザ)を用いた構成元素の面内分布の解析等から各相の体積分率を求めることができる。

0029

上記のようにして得られた炭化タングステン基焼結体の機械的特性は、定法にしたがい測定することができる。機械的特性の具体例としては、常温または高温硬さ(ロックウェル硬さおよびビッカース硬さ)、破壊靱性(K1c)、曲げ強度(抗折力)、体積熱膨張率等が挙げられる。

0030

本発明の一実施の形態に係る炭化タングステン基焼結体は、塗布工具用ヘッド部、切断刃、カッター刃、レンズ型、シールリング等の耐摩耗部材の用途に好適に用いることができる。

0031

次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
実施例1:炭化タングステン基焼結体の製造(1)
炭化タングステンおよび(Ti,W)(C,N)の粉末(炭窒化物の添加量(体積%)は表1参照)をボールミル(ボール材質は低コバルト超硬合金)に入れ、メタノールを加え、96時間粉砕混合した。メタノールを蒸発させた後、25〜30MPaの圧力、1700〜1900℃、Ar雰囲気にてホットプレスした後に、1700℃、180MPa、Ar雰囲気でHIP処理した。炭窒化物の窒素のモル分率を選択的に増やしたい場合は、HIP処理時の雰囲気をArとN2の混合雰囲気とすればよい。

0032

得られた炭化タングステン基焼結体の常温でのロックウェル硬さ(HRA)およびビッカース硬さ(Hv)、破壊靱性(平面ひずみ破壊靱性:K1c)および抗折力(TRS)は、それぞれ、JIS Z 2245、JIS Z 2244、JIS G 0202、およびJIS Z 2203に準拠して測定した。

0033

(Ti,W)(C,N)の添加量(焼結体の全体積に対する体積%:以下同じ。)と焼結体の機械的特性との関係は表1に示すとおりであった。また、(Ti,W)(C,N)を2.0体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)および研磨面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図1(A)および(B)に示す。
なお、「TC量」は全炭素量を表し、相対密度は、(Ti,W)(C,N)の粉末組成上の理論密度を100%とした場合の相対値である(以下同じ)。

0034

0035

すべての場合において、得られた炭化タングステン基焼結体は高い硬さ、破壊靱性および抗折力を有していることがわかる。また、炭窒化物の添加量が1.0〜5.0体積%の場合に抗折力がピーク値に達していることがわかる。

0036

図1(A)および(B)において、色調の異なる複数の相の存在が示されているが、黒い部分が炭窒化物の相(第2相)であり、濃灰、淡灰の部分は炭化タングステン(WC)相(第1相)である。
比較のため、図2(A)および(B)に、炭窒化物を含まない炭化タングステン基焼結体(VC−Cr3C2−WC)の破面のSEM像(SE)および研磨面のSEM像(BSE)を示すが、これらと図1(A)および(B)との比較より、(Ti,W)(C,N)の添加により炭化タングステンの粒成長が抑制され、それが機械的特性の向上に寄与していることが強く示唆された。
また、第2相の平均粒子径を測定したところ、最小0.03μm〜最大0.4μmであった。

0037

実施例2:炭化タングステン基焼結体の製造(2)
金属炭窒化物として(Ti,Mo)(C,N)を用いる以外は、実施例1と同様の条件下で焼結体を製造した。炭窒化物の添加量(体積%)と得られた焼結体の機械的特性との関係は表2に示すとおりであった。また、(Ti,Mo)(C,N)を15体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)および研磨面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図3(A)および(B)に示す。

0038

0039

実施例1と同様、すべての場合において、得られた炭化タングステン基焼結体は高い硬さ、破壊靱性および抗折力を有していることがわかる。図5、6において、色調の異なる3つの相の存在が明確に示されているが、EPMAを用いた各元素の面内分布の測定結果より、濃い灰色黒色の部分が(Ti,Mo)(C,N)を主成分とする相(第2相)であり(特にTiおよびNに富んだ部分が黒色を呈している)、淡い灰色の部分が炭化タングステンを主成分とする相(第1相)であることがわかった。
図3(A)および(B)と図2(A)および(B)との比較より、(Ti,Mo)(C,N)の添加によっても、炭化タングステンの粒成長が抑制されていることが強く示唆された。特に物性の優れた範囲は炭窒化物の添加量が0.5〜5.0体積%の範囲である。複合炭窒化物としては(Ti、Mo)(C,N)の方が(Ti,W)(C,N)よりも粒成長抑制効果が高く、少量でも効果が顕著に現れていることがわかる。

0040

実施例3:炭化タングステン基焼結体の製造(3)
金属炭窒化物として(Ti,W)(C,N)(2体積%)用い、必要に応じて金属炭化物(種類および添加量は表3参照)を添加した以外は実施例1と同様の条件下で焼結体を製造した。金属炭化物およびその添加量(体積%)と焼結体の機械的特性との関係は表3に示すとおりであった。また、炭化バナジウム(1体積%)を添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)および研磨面のSEM像(BSE)を図4(A)および(B)に、炭化クロム(0.7体積%)および炭化ニオブ(0.3体積%)を添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の破面のSEM像(SE)および研磨面のSEM像(BSE)を図5(A)および(B)に示す。

0041

0042

実施例1および2と同様、すべての場合において、得られた炭化タングステン基焼結体は高い硬さ、破壊靱性および抗折力を有していることがわかる。図4(A)および(B)ならびに図5(A)より、これらの焼結体も色調の異なる2相からなることがわかる。なお、図5(B)において、炭窒化物を主成分とする第2相に相当する領域内に濃い黒色の組織が見られるが、EPMA測定の結果より、タングステンおよび炭素の分布が比較的少ない部分であると考えられる。炭窒化物とあわせて通常粒成長抑制剤として添加する炭化バナジウム(VC)を添加することによって、その粒成長抑制効果はより顕著になる。また、高温特性耐酸化性が特に)を維持する炭化クロム(Cr3C2)を添加した場合にも、他の特性は維持したまま高温特性を向上することができる。

0043

実施例4:炭化タングステン基焼結体の製造(4)
炭化タングステンおよび(Ti,W)(C,N)または(Ti,Mo)(C,N)の粉末(炭窒化物の添加量(体積%)は表4および5参照)をボールミル(ボールの材質は低コバルト超硬合金)に入れ、メタノールを加え、96時間粉砕混合した。メタノールを蒸発させた後、パラフィンを3%程度添加し、100MPaの圧力でプレスし、常圧下、700〜800℃で予備焼結および脱脂を行い、次いで1900〜2100℃で本焼結を行った。炭窒化物の添加量(体積%)と得られた焼結体の機械的特性との関係は表4、5に示すとおりであった。また、(Ti,W)(C,N)を焼結体の全体積の0.5体積%、1体積%、2体積%、15%体積%、および30体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)および腐食面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図6(A)および(B)、図7(A)および(B)、図8(A)および(B)、図9(A)および(B)、ならびに図10(A)および(B)に、(Ti,Mo)(C,N)を焼結体の全体積の0.5体積%、1体積%、2体積%、15%体積%、および30体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)および腐食面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図11(A)および(B)、図12(A)および(B)、図13(A)および(B)、図14(A)および(B)、ならびに図15(A)および(B)に示す。

0044

0045

0046

図6(A)および(B)に示した(Ti,W)(C,N)の添加量0.5体積%の場合を除き、得られた焼結体は炭化タングステンの結晶粒子の粒成長が抑制されており、十分に高いロックウェル硬さおよびビッカース硬さを有していることがわかる。
また、元素マッピングの結果、混合の段階で混入したCoは、単体では存在せずにWを含む炭窒化物として存在することが分かった。その量は全体の0.10体積%であった。

0047

実施例5:炭化タングステン基焼結体の製造(5)
炭化タングステン、(Ti,Mo)(C,N)およびコバルト(Co)の粉末(炭窒化物の添加量(体積%)およびコバルトの添加量(重量%)は表6参照)をボールミル(ボールの材質は低コバルト超硬合金)に入れ、メタノールを加え、96時間粉砕混合した。メタノールを蒸発させた後、パラフィンを2.2%程度添加し、1530℃、Ar雰囲気にてホットプレスした後に、1340℃、40MPa、Ar雰囲気でHIP処理した。炭窒化物の添加量(体積%)と得られた焼結体の機械的特性との関係は表6に示すとおりであった。また、(Ti,Mo)(C,N)を焼結体の全体積の2%、Coを焼結体全体積の1体積%および3.9体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)および腐食面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図16および17に示す。

0048

0049

炭化タングステンからなる第1相および炭窒化物を主成分とする第2相に加えて、コバルト濃度の高い第3相の存在が確認された。コバルトが、金属として第3相中に存在するのか、あるいは炭窒化物として存在するのかについては明らかではない。

0050

実施例6:炭化タングステン基焼結体の製造(6)
炭窒化物として(Ti,W)(C,N)または(Ti,Mo)(C,N)のナノ粉末(炭窒化物の種類および添加量(体積%)は表7参照)を用いる以外は実施例1または2と同様の条件下で焼結体を製造した。炭窒化物の種類および添加量(体積%)と得られた焼結体の機械的特性との関係は表7に示すとおりであった。また、(Ti,W)(C,N)を焼結体の全体積の2.0体積%および5.0体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)および腐食面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図18(A)および(B)、ならびに図19(A)および(B)に、(Ti,Mo)(C,N)を焼結体の全体積の2体積%および5体積%添加した原料より得られる炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)および腐食面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図20(A)および(B)、ならびに図21(A)および(B)に示す。

0051

0052

実施例7:炭化タングステン基焼結体の製造(7)
炭窒化物として(Ti,Mo)(C,N)のナノ粉末(焼結体の全体積の2.0体積%:表7参照)を用いる以外は実施例4と同様の条件下で焼結体を製造した。得られた焼結体の機械的特性は表8に示すとおりであった。また、炭化タングステン基焼結体の研磨面のSEM像(BSE)および腐食面のSEM像(BSE)を、それぞれ、図22(A)および(B)に示す。

0053

0054

実施例8:炭化タングステン基焼結体の塗布工具用ヘッド部への使用
本発明の範囲内であるWC−2体積%(Ti0.3W0.7)(C0.2N0.8)−0.2体積%Coの焼結体を、フィルム状部材への塗布、パネル状部材への塗布、特に液晶ディスプレイパネルを製造するときのガラス基板表面にカラーレジスト等の塗布液を塗布する工程等に用いられる塗布工具用先端部材(ヘッド部)に使用した実施例である。
発明範囲外比較試料を比較試料1〜3として、塗布工具用先端部材をステンレス製部材(塗布工具本体)へボルトで固定し、精密に研削加工をすることで本発明の塗布工具を得ることができる。得られた塗布工具で3.2m×2.4mの大きさの液晶ディスプレイパネルを製造するときのガラス基板表面にカラーレジストを塗布した。
比較試料としては、
比較試料1 WC−8体積%Co
比較試料2 WC−6体積%TiC
比較試料3 WC−6体積%TiN−2体積%Co
を塗布工具用先端部材とした。
本実施例を用いて塗布、乾燥後に膜厚を測定したところ一定であり、比較試料のいずれに対しても30%以上バラツキが小さく、非常に良好な塗布膜を形成することができた。膜には塗布によるスジ、ムラも全く見られなかった。このほか、脂肪酸防錆剤含金属皮膜部剤、含磁性粉末塗布剤、含セラミックス粉末塗布剤などでも同様の塗布を行ったが、比較試料に対していずれも膜厚さは均一で、スジやムラは全く見られなかった。さらに、これらのいずれの用途についても、1000時間の加速耐久使用に対して、面荒れチッピング摩耗、腐食などが起こらず、比較試料のいずれに対しても、経時的な性能の劣化が小さくなった。

0055

実施例9:炭化タングステン基焼結体の切断刃への使用
本発明の範囲内であるWC−2体積%(Ti0.3W0.7)(C0.8N0.2)−0.5体積%Coの焼結体を、シート状部材の切断刃に使用した実施例である。
本発明範囲外の比較試料を比較試料1〜3として、コピー用紙(PPC紙)500枚重ねて、刃先に水分がある状況で連続裁断テストを行った。刃先角度は30度とした。
比較試料としては、
比較試料1 WC−8体積%Co
比較試料2 WC−6体積%TiC
比較試料3 WC−6体積%TiN−2体積%Co
切断刃材料とした。
1000回の裁断を実施した後に刃先摩耗幅計測したところ、比較試料が80〜300μmだったのに対して、実施例は40μm以下であり、刃先に発生する腐食摩耗量が明らかに小さくなった。

0056

実施例10:炭化タングステン基焼結体のレンズモールドへの使用
本発明の範囲内であるWC−2体積%(Ti0.8W0.2)(C0.6N0.4)−0.7体積%Cr3C2−0.3体積%NbCを投入原料とした、WC−2.7体積%(Ti、W、Cr、Nb)(CN)の焼結体をレンズモールドに使用した実施例である。
耐酸化性の評価として、本発明の合金試料1、範囲外の比較試料を比較試料1、2、および3として、大気雰囲気、800℃、1時間の条件にて熱処理を実施した。
比較試料としては、
比較試料1 WC−9体積%TiC−2体積%TaC−0.5体積%VC−0.5体積%Cr3C2
比較試料2 WC−2体積%Co−5体積%TiC
比較試料3 WC−11体積%Co
をレンズモールド材料とした。
熱処理後、試料の単位面積当たり増加重量酸化増量g/m2)を測定したところ、比較試料1が160g/m2、1が180g/m2、3が200g/m2の酸化増量であったのと比較して、実施例は24g/m2であり、非常に高い耐酸化性を有していた。

0057

実施例11:炭化タングステン基焼結体の耐摩板への使用
本発明の範囲内であるa)WC−2体積%(Ti0.8Mo0.2)(C0.6N0.4)(実施例1)およびb)WC−2体積%(Ti0.8W0.2)(C0.6N0.4)(実施例2)、c)WC−35体積%(Nb0.4Ta0.2Mo0.2Zr0.2)(C0.6N0.4)の各焼結体粉砕機部品の耐摩板に使用した実施例である。
耐摩耗性の評価として、本発明の合金および範囲外の比較試料を比較試料1、2、および3として、以下の条件にてブラスト処理を実施した。
耐摩耗試験条件
設備ブラスト装置
ブラスト時間:30秒
粒子:SiC
ノズルから試料までの距離:118mm
ブラスト照射面積:20×20mm
比較試料としては、
比較試料1 WC−9体積%TiC−2体積%TaC−0.5体積%VC−0.5体積%Cr3C2
比較試料2 WC−2体積%Co−5体積%TiC
比較試料3 WC−11体積%Co
を粉砕機部品材料とした。
ブラスト処理後、試料の表面粗さRaを測定したところ、比較試料1のRa=185nm、2がRa=320nm、3がRa=500nmであったのと比較して、実施例の焼結体を用いたa)、b)そして前記c)ともにRa=10nmであり、非常に高い耐摩耗性を有していた。

0058

実施例12:炭化タングステン基焼結体のメカニカルシールリングへの使用
本発明の範囲内であるWC−2体積%(W0.5Cr0.3V0.2)(C0.5N0.5)−3.95体積%のW3Co3(CN)の焼結体をメカニカルシールリングに使用した実施例である。
しゅう動試験として、海水揚水ポンプ用のメカニカルシールリングとしてはB.V>1のアンバランスの構造とし、固定側のシールリングに前記材料を用いた。これと対向するフローティング側は炭化珪素製の材質とした。
この条件でポンプメカニカルシールとして軸に組み込み、海水の揚水を行った。メカニカルシールの面圧は0.12MPa、すべり速度5m/秒で、淡水中と海水中の条件にて行なった。
本発明の合金を試料1、範囲外の比較試料を比較試料1および2として、2000時間試験を行った。
比較試料としては
比較試料1 WC−4体積%Co
比較試料2 WC−6体積%TiC
比較試料3 WC−6体積%TiN−2体積%Co
をメカニカルシールリング材料とした。
使用後に腐食部と腐食していない部分の段差を計測したところ、比較試料が4〜18μmの段差だったのと比較して、実施例は1μm以内と明らかに摩耗段差が小さく、その傾向は海水試験では20〜81μmに対して2μmとより顕著に現れた。

実施例

0059

実施例13:炭化タングステン基焼結体の切削工具への使用
本発明の範囲内であるWC−2体積%(Ti0.3W0.7)(C0.5N0.5)−0.1体積%のCoとNiとWの複合炭窒化物からなる焼結体を本発明試料1、範囲外の比較試料を比較試料1、2および3として、刃先交換式切削工具用のインサートに用いた場合の耐摩耗性を以下の試験条件で評価した。
被削材鉄系焼結金属
工具形状:DCMW11T308
切削速度:150m/分
切り込み量:0.15mm
送り量:0.1mm/rev
工具寿命判定基準逃げ面摩耗量0.03mm以上
本発明範囲外の比較試料を本発明試料1と同様の方法で作製した。
比較試料としては、
比較試料1 WC−8体積%Co
比較試料2 WC−6体積%TiC
比較試料3 WC−6体積%TiN−2体積%Co
を刃先交換式切削工具用のインサートとした。
上記の試料を用いて鉄系焼結金属を切削加工したところ、比較試料の逃げ面摩耗量が0.3mm以上になるまでの時間は5〜10分であったのに対して、本発明試料1の逃げ面摩耗量が0.3mm以上になるまでの時間は15分以上であり、比較試料よりも本発明試料1の方が明らかに耐摩耗性に優れていた。

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