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技術 培養皮膚の細胞間脂質の周期構造を改善する方法

出願人 日本メナード化粧品株式会社
発明者 間嶋康夫加藤義直中間満雄足立浩章小椋彩子山下真由坂貞徳
出願日 2011年3月10日 (9年3ヶ月経過) 出願番号 2011-052928
公開日 2012年10月4日 (7年9ヶ月経過) 公開番号 2012-187038
状態 特許登録済
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 微生物、その培養処理
主要キーワード リン酸エステル部位 二次元化 カフェイン水溶液 経皮毒性 TSO 散乱ベクトル 物質透過 カメラ長
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

皮膚のバリア機能関与する角質細胞及び細胞間脂質を含み、より生体に近い条件で経皮吸収性経皮毒性等の評価を行うことを可能にする培養皮膚の簡便な作製方法及び作製用キットを提供する。

解決手段

角質層を形成している培養皮膚の角質層表面側からリポソーム分散液投与することにより、細胞間脂質の周期構造を改善させた培養皮膚を作製する。この培養皮膚を用いることにより、より生体に近い条件で経皮吸収性や経皮毒性等の評価を行うことが可能となる。

概要

背景

動物や人の皮膚は、外部からの異物侵入を防ぎ、内部からの水の蒸散を防ぐため、周期構造を形成した細胞間脂質角質細胞周りを満たした構造の角質層を形成している。なお、本発明で言う細胞間脂質の周期構造とは、ラメラ構造充填構造の双方を含んだ周期構造を意味する。

薬物等の経皮吸収に主に関与している経表皮経路の中でも、角質細胞間経路が物質の主な透過経路であると考えられている。つまり、細胞間脂質は皮膚バリア機能を担うと共に、物質の重要な透過経路のひとつでもある(特許文献1、非特許文献1、2)。

従来、薬物の経皮吸収性試験経皮毒性試験や代謝試験には主に動物皮膚が用いられてきたが、動物愛護の観点から、培養皮膚による代替試験が望まれている。このような目的で用いられる培養皮膚には、その細胞間脂質が生体皮膚の細胞間脂質と同様の周期構造を持ち、生体皮膚と同様のバリア機能物質透過経路とを有することが求められ、様々な培養皮膚が開発されてきた。

しかしながら、細胞間脂質の構成成分のひとつであるセラミド含有量を高めた経皮吸収性試験用の培養皮膚においても、ヘアレスラット皮膚やヒト皮膚と比べてバリア機能が低く(非特許文献3)、実際の動物皮膚やヒト皮膚のような細胞間脂質の周期構造が充分に形成されていないことが知られている。従って、ヒト皮膚に投与した物質の挙動を正確に予測する培養皮膚としては、更なる改良が望まれている。

これまでに、培養皮膚の構造や機能を実際の皮膚に近付けて培養皮膚のバリア機能を改善するため、培地に様々な添加剤を加えて細胞培養する方法や、特徴のある培養用基剤を用いて細胞培養する方法等、細胞培養条件の検討により様々な改良が行われている(特許文献2〜5)。

しかしながら、細胞培養には通常数週間を要する上に管理が容易ではなく、熟練した技術が必要であるため、培養条件の管理を必要としない簡便な操作で培養皮膚の構造と機能を、動物やヒト皮膚に近付ける方法の開発が望まれている。

リン脂質は、構造中にリン酸エステル部位を持ち、両親媒性を持つ脂質の総称で、一般的にはグリセリンスフィンゴシン脂肪酸リン酸が結合し、更にリン酸が窒素を含むアルコールと結合した構造を持ち、植物や動物体内にも多く含まれる脂質である。

以前より、リン脂質が経皮吸収促進効果を有することは知られている(特許文献6〜8、非特許文献4)。この効果は、リン脂質が細胞間脂質の流動性に変化を与えることで現れると考えられている(非特許文献5〜7)。

一方、リン脂質を含む混合物やラメラ構造を形成している組成物によっては、皮膚のバリア機能を高めるという効果も知られているが、これらは皮膚表面で被膜を形成したり(特許文献9〜11)、リポソームに内包させた成分によってセラミド量が増加する(特許文献12)ことによるものである。また、これらの評価は、角質水分蒸散量等の客観的なもので実施されており、メカニズムは不明なものも多い(特許文献13、14)。

つまり、リン脂質やラメラ構造を形成する組成物には、細胞間脂質に取り込まれることで、細胞間脂質の周期構造を乱して薬物の経皮吸収性を高めたり、リン脂質や組成物自身が角質層表面で被膜を形成したり、浸透した薬物の効果によって細胞間脂質の量が増加したりすることによってバリア機能を高める等様々な効果が知られているが、元々角質層に存在する細胞間脂質の周期構造の形成を促す効果については全く知られていなかった。

概要

皮膚のバリア機能に関与する角質細胞及び細胞間脂質を含み、より生体に近い条件で経皮吸収性や経皮毒性等の評価を行うことを可能にする培養皮膚の簡便な作製方法及び作製用キットを提供する。角質層を形成している培養皮膚の角質層表面側からリポソーム分散液を投与することにより、細胞間脂質の周期構造を改善させた培養皮膚を作製する。この培養皮膚を用いることにより、より生体に近い条件で経皮吸収性や経皮毒性等の評価を行うことが可能となる。

目的

従来、薬物の経皮吸収性試験、経皮毒性試験や代謝試験には主に動物皮膚が用いられてきたが、動物愛護の観点から、培養皮膚による代替試験が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

培養皮膚角質層表面側からリポソーム分散液投与して、細胞間脂質周期構造を改善する方法。

請求項2

リポソーム卵黄由来リン脂質大豆由来のリン脂質及び該リン脂質の水素添加物から選ばれる一種又は二種以上で形成される、請求項1記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項3

リポソームが卵黄由来のリン脂質で形成される、請求項1又は2記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項4

リン脂質に含まれるホスファチジルコリン含量が90重量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項5

リン脂質の配合量が0.1〜4重量%の範囲である、請求項1〜4のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項6

リン脂質の配合量が0.1〜0.5重量%の範囲である、請求項1〜5のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項7

リポソーム分散液の平均粒子径が500nm以下である、請求項1〜6のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項8

リポソーム分散液の平均粒子径が90〜200nmの範囲である、請求項1〜6のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項9

培養皮膚が、線維芽細胞を含むコラーゲンゲルの上に表皮角化細胞播種して培養し、下から基底層有棘層顆粒層及び角質層が形成された培養皮膚である、請求項1〜8のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項10

リポソーム分散液の投与方法が、拡散セルに挟みこんだ培養皮膚に、リポソーム分散液が角質層を満たすように投与する方法である、請求項1〜9のいずれか一項記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項11

リポソーム分散液の投与方法が、投与後にリポソーム分散液を取り除く工程を含む方法である、請求項10記載の細胞間脂質の周期構造を改善する方法。

請求項12

請求項1〜8のいずれか一項記載の方法により作製される培養皮膚。

請求項13

請求項1〜8のいずれか一項記載の方法を適用した培養皮膚を用いて経皮吸収性試験経皮毒性試験、代謝試験及び皮膚外用剤の有効性試験を行う方法、並びにそのためのリポソーム分散液調製用キット

技術分野

0001

本発明は、培養皮膚に関する。より詳細には、培養皮膚の細胞間脂質周期構造を改善する方法と、その方法により製造される培養皮膚の発明である。この培養皮膚をin vitroの経皮吸収性試験経皮毒性試験に用いると、生体経皮投与した物質挙動を従来よりも正しく推測することができる。

背景技術

0002

動物や人の皮膚は、外部からの異物侵入を防ぎ、内部からの水の蒸散を防ぐため、周期構造を形成した細胞間脂質が角質細胞周りを満たした構造の角質層を形成している。なお、本発明で言う細胞間脂質の周期構造とは、ラメラ構造充填構造の双方を含んだ周期構造を意味する。

0003

薬物等の経皮吸収に主に関与している経表皮経路の中でも、角質細胞間経路が物質の主な透過経路であると考えられている。つまり、細胞間脂質は皮膚バリア機能を担うと共に、物質の重要な透過経路のひとつでもある(特許文献1、非特許文献1、2)。

0004

従来、薬物の経皮吸収性試験、経皮毒性試験や代謝試験には主に動物皮膚が用いられてきたが、動物愛護の観点から、培養皮膚による代替試験が望まれている。このような目的で用いられる培養皮膚には、その細胞間脂質が生体皮膚の細胞間脂質と同様の周期構造を持ち、生体皮膚と同様のバリア機能物質透過経路とを有することが求められ、様々な培養皮膚が開発されてきた。

0005

しかしながら、細胞間脂質の構成成分のひとつであるセラミド含有量を高めた経皮吸収性試験用の培養皮膚においても、ヘアレスラット皮膚やヒト皮膚と比べてバリア機能が低く(非特許文献3)、実際の動物皮膚やヒト皮膚のような細胞間脂質の周期構造が充分に形成されていないことが知られている。従って、ヒト皮膚に投与した物質の挙動を正確に予測する培養皮膚としては、更なる改良が望まれている。

0006

これまでに、培養皮膚の構造や機能を実際の皮膚に近付けて培養皮膚のバリア機能を改善するため、培地に様々な添加剤を加えて細胞培養する方法や、特徴のある培養用基剤を用いて細胞培養する方法等、細胞培養条件の検討により様々な改良が行われている(特許文献2〜5)。

0007

しかしながら、細胞培養には通常数週間を要する上に管理が容易ではなく、熟練した技術が必要であるため、培養条件の管理を必要としない簡便な操作で培養皮膚の構造と機能を、動物やヒト皮膚に近付ける方法の開発が望まれている。

0008

リン脂質は、構造中にリン酸エステル部位を持ち、両親媒性を持つ脂質の総称で、一般的にはグリセリンスフィンゴシン脂肪酸リン酸が結合し、更にリン酸が窒素を含むアルコールと結合した構造を持ち、植物や動物体内にも多く含まれる脂質である。

0009

以前より、リン脂質が経皮吸収促進効果を有することは知られている(特許文献6〜8、非特許文献4)。この効果は、リン脂質が細胞間脂質の流動性に変化を与えることで現れると考えられている(非特許文献5〜7)。

0010

一方、リン脂質を含む混合物やラメラ構造を形成している組成物によっては、皮膚のバリア機能を高めるという効果も知られているが、これらは皮膚表面で被膜を形成したり(特許文献9〜11)、リポソームに内包させた成分によってセラミド量が増加する(特許文献12)ことによるものである。また、これらの評価は、角質水分蒸散量等の客観的なもので実施されており、メカニズムは不明なものも多い(特許文献13、14)。

0011

つまり、リン脂質やラメラ構造を形成する組成物には、細胞間脂質に取り込まれることで、細胞間脂質の周期構造を乱して薬物の経皮吸収性を高めたり、リン脂質や組成物自身が角質層表面で被膜を形成したり、浸透した薬物の効果によって細胞間脂質の量が増加したりすることによってバリア機能を高める等様々な効果が知られているが、元々角質層に存在する細胞間脂質の周期構造の形成を促す効果については全く知られていなかった。

0012

特開2009−13134
特開2000−201695
特開2002−218971
特開2008−104358
特開平8−89239
特開平8−3069
特表2010−513221
国際公開WO2007/145276
特開2000−229811
特開2003−81809
特開平7−285827
特開2004−168763
特表2005−522463
国際公開WO95/19762

先行技術

0013

Drug Delivery System,Vol.20,No.4,452−459(2005)
薬学雑誌、Vol.129,1453−1458(2009)
Altern.Animal Test.Experiment,8(1),1−14(2001)
Journal of Cosmetic Science,53,6(2002)363−374
薬学雑誌、107,8,616−621(1987)
フレグランスジャーナル、4、49−59(1996)
Journal of Controlled Release,vol.42,3,249−262(1996)

発明が解決しようとする課題

0014

培養皮膚の細胞間脂質の周期構造を容易に改善させることで、培養皮膚のバリア機能を向上させて生体皮膚に近付ける方法と、この方法によって作製されるバリア機能を生体皮膚に近付けた培養皮膚を提供することを目的とした。

課題を解決するための手段

0015

本発明者らは、これらの課題に対して鋭意検討した結果、角質層が形成されている培養皮膚の角質層表面側からリポソーム分散液を投与することにより、細胞間脂質の周期構造を改善させる方法を見出した。すなわち、本発明は、培養皮膚の細胞間脂質の周期構造を改善させる方法と、この方法によって作製した培養皮膚、又はこの方法を適用するための試薬器具キットを提供するものである。

0016

培養皮膚とは、例えばポリカーボネート膜コラーゲンゲル線維芽細胞を含むコラーゲンゲル等の上に表皮角化細胞播種し、必要に応じて浸漬培養、気相液体培養を行い作製されるものであり、三次元培養皮膚モデルとも呼ばれる。本発明に用いる培養皮膚は、作製方法細胞由来に特に限定されず、支持体の上に角質層が形成されたものであれば良い。主にヒト由来の細胞で作製される。

0017

市販されている培養皮膚としては、例えば、TESSKIN LSE−high(東洋紡ライフサイエンス)、LabCyteEPI−MODEL(J−TEC)、Epiderm(クラボウ)、Episkin(SkinEthic)等を使用することができる。

0018

これらの培養皮膚の角質層表面側から、リポソーム分散液を投与する。リポソーム分散液を投与する方法として、例えば、スポイト等を用いて角質層の上部にリポソーム分散液を投与する方法が挙げられる。投与量は特に限定されないが、角質層全体をリポソーム分散液で満たすために、培養皮膚透過有効面積0.79cm2あたり10μLから300μL投与される。10μL未満では、角質層全体がリポソーム分散液で満たされるのに十分ではなく、300μLを超えると、コスト面から不経済である。また、角質層上部からリポソーム分散液がこぼれないように、角質層の上にアッセイリング等を置き、その内部にリポソーム分散液を投与することもできる。さらに、経皮吸収試験において汎用される拡散セルに培養皮膚を挟みこみ、リポソーム分散液を角質層側から投与する方法もある。

0019

リポソーム分散液の調製方法は特に限定されるものではなく、例えば、バンガム法、押し出し法界面活性剤除去法逆相蒸発法、高圧乳化法超音波照射法等多くの調製法がある。その一例を示すと、リン脂質とクロロホルム等の有機溶剤を混合し、減圧下濃縮乾固させてリン脂質の薄膜を形成させたのち、このリン脂質に精製水を加えて水和し、超音波照射してリポソームを形成させる。

0020

リポソームは、天然由来のリン脂質あるいは合成リン脂質を用いることができるが、卵黄由来のリン脂質、大豆由来のリン脂質及び該リン脂質の水素添加物から選ばれる一種又は二種以上で形成すると製造コストの点で望ましい。

0021

リン脂質としては、例えば、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質等を使用することが望ましく、必要に応じてその一種又は二種以上を用いることができる。特に、卵黄由来のリン脂質、大豆由来のリン脂質及び該リン脂質の水素添加物がよく、その中でも卵黄由来リン脂質が特に望ましい。

0022

その中で、ホスファチジルコリン含量は特に限定されるものではないが、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。

0023

本発明でのリポソーム分散液中のリン脂質含有量は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜4重量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲である。0.1重量%よりも少ない量では細胞間脂質の周期構造を改善する効果が期待できず、4重量%を越える量ではリポソーム分散液の安定性に問題がある場合がある。

0024

本発明でのリポソームの平均粒子径は特に限定されるものではないが、好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは90〜200nmの範囲である。平均粒子径が1μmを超えるとリポソーム調製直後から凝集により粒子径が大きくなりリポソームの安定性に問題がある場合がある。平均粒子径が90nmよりも小さい場合にはリポソームの形態を維持することができない場合がある。

0025

本発明の方法では、培養皮膚の角質層表面側からリポソーム分散液を投与するだけで、バリア機能に重要となる細胞間脂質の周期構造を改善させ、角質層の構造を生体皮膚に近付けることができる。

0026

さらに、バリア機能改善のために細胞培養の条件を調整する方法とは異なり、細胞間脂質の周期構造を改善させる操作に特別な設備も技術も要しないので、培養皮膚を製造する当業者のみならず、培養皮膚を利用する当業者の誰にでも実施可能である。

0027

例えば、細胞培養の設備がなくても、市販されている三次元培養ヒト皮膚モデル購入してこれにリポソーム分散液を投与するだけで、細胞間脂質の構造や機能を実際の動物やヒト皮膚に近づけた培養皮膚モデルとすることができ、本発明の培養皮膚を経皮吸収性試験や経皮毒性試験、代謝試験等に用いることができる。

0028

また、本発明の培養皮膚を用いると、細胞間脂質に影響する経皮吸収促進剤等の添加剤を含む組成物の評価試験において、実際の動物皮膚やヒト皮膚での挙動を適切に推測することができる。

実施例

0029

培養皮膚の角質層表面側から、リポソーム分散液を投与する。本発明で言うリポソーム分散液は、リポソームを含んでいればクリーム等の組成物でも良い。リポソーム分散液は、バンガム法のほか、既知の方法を用いることで調製され、電子顕微鏡透過型電子顕微鏡原子間力顕微鏡等によって、脂質の膜構造を観察すれば、リポソームが形成されていることを確認することができる。

0030

リポソーム分散液を投与してから、リポソームを構成する脂質が角質層に浸透するのに必要な時間経過後、リポソーム分散液の残渣を回収する。必要に応じてリン酸緩衝生理食塩水PBS)、生理食塩水及び精製水等で角質層表面側の洗浄を行うこともできる。投与してから残渣を回収するまでに必要な時間は、使用する培養皮膚によって異なるが、細胞間脂質の周期構造が不完全なものほど時間は短くて良く、10分以内で充分な場合もある。長時間投与しても良いが、48時間以上の投与は、投与後の経皮吸収性試験や経皮毒性試験等を実施することを鑑みて現実的でない。

0031

本発明のリポソーム分散液調製キットとは、細胞間脂質の周期構造の改善に用いるリポソーム分散液を調製するために必要な試薬、器具及びリポソーム分散液を指す。投与のための器具や残渣除去のため器具、更に本発明の培養皮膚を使用する各種試験に必要な器具や培養皮膚そのものを含んでも含まなくとも良い。

0032

一例として、経皮吸収性試験に用いられる三次元培養ヒト皮膚モデルに本発明の方法を適用し、細胞間脂質の周期構造を改善させた三次元培養ヒト皮膚モデルの作製方法の一例を示す。

0033

三次元培養ヒト皮膚モデルを経皮吸収性試験用の拡散セルに挟みこみ、レシーバーレシーバー液で満たす。経皮吸収性試験用の拡散セルは、縦型のものでも横型のものでも良い。レシーバー液は、三次元培養ヒト皮膚モデルに悪影響がなければ何を使用しても良く、例えばPBS(−)や生理食塩水等を用いることができる。拡散セルは、経皮吸収性試験を行う時と同様に例えば32〜37℃等で保温しても良い。

0034

三次元培養ヒト皮膚モデルを挟み込んだ拡散セルの角質層表面側から、本発明のリポソーム分散液調製キットを用いて調製したリポソーム分散液を三次元培養ヒト皮膚モデルに投与する。これを1時間放置した後に、リポソーム分散液の残渣を回収し、PBS(−)で角質層表面側の洗浄を行うことで、本発明の細胞間脂質の周期構造を改善させた培養皮膚が完成する。

0035

角質層表面側からリポソーム分散液の残渣を除いた後、拡散セルに挟み込んだ状態のまま、本発明の細胞間脂質の周期構造を改善させた三次元培養ヒト皮膚モデルを用い、経皮吸収性試験を行うことができる。

図面の簡単な説明

0036

製造例4と比較例1の三次元培養ヒト皮膚モデルの小角X線プロファイル
製造例4と比較例1の三次元培養ヒト皮膚モデルの広角X線プロファイル
製造例1と比較例2の三次元培養ヒト皮膚モデルに対するカフェイン透過量の比較
製造例1の三次元培養ヒト皮膚モデルへのカフェイン水溶液とカフェインリポソーム製剤の適用によるカフェイン透過量の比較

0037

本発明を詳細に説明するため、ホスファチジルコリンからなるリン脂質によって調製されたリポソーム分散液を角質層表面側から投与することにより作製される三次元培養ヒト皮膚モデルの製造例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。

0038

(製造例1)
卵黄由来のリン脂質(COATSOMENC−50、日油)4gをクロロホルム40mLに溶かし、減圧下濃縮して脂質の薄膜を形成させた。これに精製水100mLを加えて超音波処理し、孔径0.2μmのフィルターでろ過してリン脂質の配合量が4重量%であるリポソーム分散液を得た。このリポソーム分散液を、精製水で希釈して適当な濃度として動的光散乱光度計(DLS−7000、大塚電子)で測定した。キュムラント法によって解析した平均粒子径は、250nmであった。

0039

角質層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を購入し、購入したモデル使用方法に従い、培地から取り出した。透過有効面積0.79cm2でレシーバー容量5mLの縦型拡散セル(パーメギア)にレシーバー液としてPBS(−)を満たし、レシーバー液を32℃で保温して、角質層表面側からリポソーム分散液300μLを投与した。20時間経過後、リポソーム分散液の残渣を回収し、角質層表面側を200μLのPBS(−)で5回洗浄し、リポソーム分散液の投与によって細胞間脂質の周期構造を改善させ、バリア機能をヒト皮膚に近付けた三次元培養ヒト皮膚モデルを作製した。

0040

(製造例2)
卵黄由来のリン脂質(COATSOMENC−50、日油)0.1gをクロロホルム1mLに溶かし、減圧下濃縮して脂質の薄膜を形成させた。これに精製水100mLを加えて超音波処理し、孔径0.2μmのフィルターでろ過してリン脂質の配合量が0.1重量%であるリポソーム分散液を得た。このリポソーム分散液を用いて製造例1と同様に処理し、リポソーム分散液の投与によって細胞間脂質の周期構造を改善させ、バリア機能をヒト皮膚に近付けた三次元培養ヒト皮膚モデルを作製した。

0041

(製造例3)
卵黄由来のリン脂質(COATSOMENC−50、日油)0.5gをクロロホルム5mLに溶かし、減圧下濃縮し精製水100mLを加えて超音波処理し、孔径0.2μmのフィルターでろ過してリン脂質の配合量が0.5重量%であるリポソーム分散液を得た。このリポソーム分散液を用いて製造例1と同様に処理し、リポソーム分散液の投与によって細胞間脂質の周期構造を改善させ、バリア機能をヒト皮膚に近付けた三次元培養ヒト皮膚モデルを作製した。

0042

(製造例4)
大豆由来のリン脂質(SLP−PC92、辻製油)4gをクロロホルム40mLに溶かし、減圧下濃縮して脂質の薄膜を形成させた。これに精製水100mLを加えて超音波処理し、孔径0.2μmのフィルターでろ過してリン脂質の配合量が4重量%であるリポソーム分散液を得た。このリポソーム分散液を用いて製造例1と同様に処理し、リポソーム分散液の投与によって細胞間脂質の周期構造を改善させ、バリア機能をヒト皮膚に近付けた三次元培養ヒト皮膚モデルを作製した。

0043

(製造例5)
大豆由来のリン脂質(SLP−PC92H、辻製油)4gをクロロホルム40mLに溶かし、減圧下濃縮して脂質の薄膜を形成させた。これに精製水100mLを加えて超音波処理し、孔径0.2μmのフィルターでろ過してリン脂質の配合量が4重量%であるリポソーム分散液を得た。このリポソーム分散液を用いて製造例1と同様に処理し、リポソーム分散液の投与によって細胞間脂質の周期構造を改善させ、バリア機能をヒト皮膚に近付けた三次元培養ヒト皮膚モデルを作製した。

0044

(比較例1)
角質層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を購入し、培地から取り出してリポソーム分散液非投与の三次元培養ヒト皮膚モデルとした。

0045

(比較例2)
リポソーム分散液の代わりに精製水を用い、製造例1と同様に処理して、リポソーム分散液投与の比較対照となる、精製水を投与して細胞間脂質の周期構造とバリア機能がヒトに近付いていない三次元培養ヒト皮膚モデルを作製した。

0046

(試験例1)
製造例1〜製造例5の三次元培養ヒト皮膚モデルと比較例1の三次元培養ヒト皮膚モデルをそれぞれ0.1%トリプシン溶液に浸して角質層のみを剥離し、脱水後に精製水を加えて水分量が20%になるように調整してキャピラリーチューブ(φ1mm;W.Muller)に詰め測定試料とした。

0047

SPring−8の高輝度X線を用いて、小角・広角X線回折同時測定を行い、細胞間脂質のラメラ構造と充填構造を同時に測定した。測定条件は、X線の波長0.1nm、カメラ長は400nmとし、カメラはRAXIS(リガク)、イメージングプレート型検出器のサイズは300×300mmを使用した。得られたX線回折像は、FIT2D(ESRF)を用いて二次元化した。即ち、標準試料ベヘン酸銀格子定数d=5.838nm)を用い、横軸散乱ベクトルS(=q/2π)、縦軸ピーク強度としてプロットした。比較例1のリポソーム分散液非投与の三次元培養ヒト皮膚モデルと比べて、小角X線回折プロファイルにおけるS=0.271nm−1の回折ピークが強まった場合にラメラ構造の改善効果あり、広角X線回折のプロファイルにおけるS=2.41nm−1の回折ピークが強まった場合に充填構造の改善効果ありと判定し、共に改善効果が見られたものを細胞間脂質の周期構造改善の効果ありと判定した。

0048

図1は、製造例4及び比較例1の測定試料における小角X線回折のプロファイルを示す。比較例1のリポソーム分散液非投与の三次元培養ヒト皮膚モデルにおいて、細胞間脂質のラメラ構造に相当するS=0.271nm−1の回折ピークは見られず、コレステロール周期であるS=0.294nm−1の回折ピークがわずかに見られた。一方、製造例4の三次元培養ヒト皮膚モデルにおいては、S=0.271nm−1に回折ピークが出現した。これらのことは、製造例4の三次元培養ヒト皮膚モデルにおいて、細胞間脂質のラメラ構造が改善されたことを示す。

0049

図2は、製造例4及び比較例1の測定試料における広角X線回折のプロファイルを示す。比較例1のリポソーム分散液非投与の三次元培養ヒト皮膚モデルにおいて、細胞間脂質の充填構造に相当するS=2.41nm−1の回折ピークがわずかに見られた。一方、製造例4の三次元培養ヒト皮膚モデルにおいては、S=2.41nm−1の回折ピークが強まった。これらのことは、製造例4の三次元培養ヒト皮膚モデルにおいて、細胞間脂質の充填構造が改善されたことを示す。

0050

製造例1から製造例5のリン脂質分散液を三次元培養ヒト皮膚モデルへ投与した場合の細胞間脂質の周期構造改善効果について検討した結果を表1に示す。細胞間脂質の周期構造改善の効果が見られたものは○、改善の効果がより強く見られたものは◎と示した。いずれのリン脂質分散液の投与によっても、細胞間脂質のラメラ構造や充填構造に由来する回折ピークが強まり、細胞間脂質の周期構造が改善されることが示された。さらに、これらの結果は、リン脂質が角質層表面で周期構造を形成したのではなく、元々三次元培養ヒト皮膚モデルに含まれていた細胞間脂質が周期構造を形成したことを示している。

0051

0052

(試験例2)
製造例1の三次元培養ヒト皮膚モデル及び比較例2の三次元培養ヒト皮膚モデルを、レシーバー液としてPBS(−)を満たした拡散セルに挟み込み、レシーバー液を32℃で保温した。角質層表面側からカフェインの2重量%水溶液300μLを適用し、3時間後のレシーバー液を回収し、三次元培養ヒト皮膚モデルを透過したカフェイン量HPLCにて定量した。

0053

図3は、三次元培養ヒト皮膚モデルを透過したカフェイン量を示す。この結果から明らかなように、リポソーム分散液を角質層表面側から投与した三次元培養ヒト皮膚モデルにおいては、水溶性分子であるカフェインの透過量が少ないことから、バリア機能が高まったことが示された。つまり、簡便な操作によって、バリア機能が実際の皮膚に近付いた三次元培養ヒト皮膚モデルを作製できることが明らかとなった。

0054

被験物質1)
大豆由来のホスファチジルコリン(SLP−PC92、辻製油)0.5gをクロロホルム5mLに溶かし、減圧下濃縮し、カフェインの2重量%水溶液100mLを加えて超音波処理し、孔径0.2μmのフィルターでろ過してカフェインリポソーム製剤を調製した。
(被験物質2)
カフェインリポソーム製剤の比較対照として、カフェインの2重量%水溶液を調製した。

0055

(試験例3)
製造例1の三次元培養ヒト皮膚モデルを、レシーバー液としてPBS(−)を満たした縦型拡散セルに挟み込み、レシーバー液を32℃で保温した。被験物質1(カフェインリポソーム製剤)又は被験物質2(カフェインの2重量%水溶液)300μLを適用し、3時間後にレシーバー液を回収し、三次元培養ヒト皮膚モデルを透過したカフェイン量をHPLCにて定量した。

0056

図4は、三次元培養ヒト皮膚モデルを透過したカフェイン量を示す。この結果は、リポソーム製剤によって、カフェインの透過量が促進することを示しており、モルモット皮膚において行われた同様の試験の結果と類似する。以上から、本発明の培養皮膚は、生体皮膚での挙動を正しく推測するのに適したものであると考えられる。

0057

薬物の経皮吸収性試験、経皮毒性試験や有効性試験等に適した培養皮膚をそれぞれ最適な条件で作製した後、本発明の方法でリポソーム分散液を投与するだけで、生体皮膚での挙動を正しく推測するのに適した培養皮膚を得ることができる。また、培養皮膚を用いた動物試験代替の発展に貢献することができる。

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