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技術 原子炉の核熱水力安定性監視装置、方法及びプログラム

出願人 株式会社東芝
発明者 武内豊小野寛屋野和樹
出願日 2010年12月21日 (9年11ヶ月経過) 出願番号 2010-284651
公開日 2012年7月12日 (8年4ヶ月経過) 公開番号 2012-132771
状態 特許登録済
技術分野 原子炉の監視、試験
主要キーワード 電機エネルギー 局所振動 方向レベル 基準値更新 水平断面視 トレンド成分 除熱特性 波形グラフ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (16)

課題

原子炉の核熱水力安定性監視精度及び信頼性を向上させる技術を提供する。

解決手段

監視装置50は、炉心16で中性子を検出する複数の核計装検出器31から出力される核計装信号Sの減幅比γを算出する減幅比算出部52と、複数の減幅比γのうち第1基準値Dを超えるものをカウントして炉心16の不安定化指標Rを演算する不安定化指標演算部54と、前記不安定化指標Rが第2基準値Pを超える場合に炉心16の出力抑制手段60の起動を指示する起動指示部56と、を備えている。

概要

背景

沸騰水型原子炉(BWR)は、炉心流量を変更することにより沸騰している炉心内蒸気割合(ボイド率)を変化させ、出力を制御することができる。
しかし、炉心流量及びその他の運転条件によっては、炉心内におけるボイド輸送遅れと負のボイド反応度係数による負のフィードバック効果とにより、炉心内での中性子束分布流動状態不安定化することが知られている。

このような核熱水力不安定現象が発生した結果、出力と流量が大きく振動し、燃料棒表面温度での除熱特性が悪化して、燃料棒被覆管健全性が損なわれることが懸念される。
このため、沸騰水型原子炉の燃料炉心設計に際し、核熱水力安定性解析を実施して、予想される全ての運転領域においてこのような振動現象が生じないように、安定性余裕を持たせた設計をしている。
そして、このような核熱水力安定性が悪化する領域では、運転が制限されるように予め設定されている。また原子炉のタイプによっては、万が一この運転制限領域に入った場合でも、制御棒挿入などにより出力を低下させ、運転制限領域から離脱する機能を持たせたものもある。

一方において、検知と抑制(Detect and Suppress)の観点から、出力振動現象を許容するとともに核熱水力不安定性に起因する出力振動現象を的確に検知して、燃料健全性が損なわれる前に振動を抑制する原子力プラントも多く存在する。
このため、OPRM (Oscillation Power Range Monitor)と呼ばれる、出力振動現象を検知する専用の検出信号を用いた出力振動検出アルゴリズムが提案されている(例えば、特許文献1)。

概要

原子炉の核熱水力安定性の監視精度及び信頼性を向上させる技術を提供する。監視装置50は、炉心16で中性子を検出する複数の核計装検出器31から出力される核計装信号Sの減幅比γを算出する減幅比算出部52と、複数の減幅比γのうち第1基準値Dを超えるものをカウントして炉心16の不安定化指標Rを演算する不安定化指標演算部54と、前記不安定化指標Rが第2基準値Pを超える場合に炉心16の出力抑制手段60の起動を指示する起動指示部56と、を備えている。

目的

本発明はこのような問題を解決することを課題とし、原子炉の核熱水力安定性の監視精度及び信頼性を向上させる技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

炉心中性子を検出する複数の核計装検出器から出力される核計装信号の減幅比を算出する減幅比算出部と、複数の前記減幅比のうち第1基準値を超えるものをカウントして前記炉心の不安定化指標演算する不安定化指標演算部と、前記不安定化指標が第2基準値を超える場合に前記炉心の出力抑制手段の起動を指示する起動指示部と、を備えることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置

請求項2

請求項1に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記複数の核計装検出器はグループ分類されており、前記不安定化指標演算部は、前記グループを単位に前記不安定化指標を演算することを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項3

請求項1又は請求項2に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記不安定化指標が前記第2基準値を超えることを契機に前記第1基準値を更新する基準値更新部をさらに備え、前記起動指示部は、重度の異なる複数の前記出力抑制手段に対し起動を段階的に指示することを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項4

請求項3に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記重度の異なる複数の前記出力抑制手段は、少なくとも警報、抑制準備、抑制の3種類の異なる効果を発揮するものが含まれることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項5

請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記複数の核計装検出器の配置を表示するマップに、前記第1基準値を超える減幅比と超えない減幅比とが識別可能に表示されることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項6

請求項5に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、出力抑制手段の起動が指示されるのに同期して、前記マップが自動的に表示されることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項7

請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記起動指示部は、少なくとも2以上のグループにおいて前記不安定化指標が第2基準値を超える場合に前記出力抑制手段の起動を指示することを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項8

請求項7に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記グループを単位に前記減幅比の平均値を求め、前記平均値間偏差に基づいて前記第1基準値を補正する基準値補正部を備えることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項9

請求項7に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記グループは、それぞれにおける前記減幅比の平均値が均等になるように、前記複数の核計装検出器が分類されていることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項10

請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、重み係数を設定する重み係数設定部を備え、前記不安定化指標演算部は、値の異なる複数の前記第1基準値に基づき複数の不安定化指標を演算し、各々に対応する前記重み係数を乗算させてから加算した値を出力することを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項11

請求項10に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記重み係数は、前記複数の不安定化指標に対応する各々を足し合わせた値が1になるように規格化されていることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項12

請求項10又は請求項11に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置において、前記不安定化指標が前記第2基準値を超えることを契機に前記第2基準値を更新する基準値更新部をさらに備えることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。

請求項13

炉心で中性子を検出する複数の核計装検出器から出力される核計装信号の減幅比を算出するステップと、複数の前記減幅比のうち第1基準値を超えるものをカウントして前記炉心の不安定化指標を演算するステップと、前記不安定化指標が第2基準値を超える場合に前記炉心の出力抑制手段の起動を指示するステップと、を含むことを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視方法

請求項14

コンピュータに、炉心で中性子を検出する複数の核計装検出器から出力される核計装信号の減幅比を算出させる機能、複数の前記減幅比のうち第1基準値を超えるものをカウントして前記炉心の不安定化指標を演算させる機能、前記不安定化指標が第2基準値を超える場合に前記炉心の出力抑制手段の起動を指示させる機能、を実行させることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視プログラム

技術分野

0001

本発明は、運転中の原子炉の核熱水力安定性監視技術に関する。

背景技術

0002

沸騰水型原子炉(BWR)は、炉心流量を変更することにより沸騰している炉心内蒸気割合(ボイド率)を変化させ、出力を制御することができる。
しかし、炉心流量及びその他の運転条件によっては、炉心内におけるボイド輸送遅れと負のボイド反応度係数による負のフィードバック効果とにより、炉心内での中性子束分布流動状態不安定化することが知られている。

0003

このような核熱水力不安定現象が発生した結果、出力と流量が大きく振動し、燃料棒表面温度での除熱特性が悪化して、燃料棒被覆管健全性が損なわれることが懸念される。
このため、沸騰水型原子炉の燃料炉心設計に際し、核熱水力安定性解析を実施して、予想される全ての運転領域においてこのような振動現象が生じないように、安定性に余裕を持たせた設計をしている。
そして、このような核熱水力安定性が悪化する領域では、運転が制限されるように予め設定されている。また原子炉のタイプによっては、万が一この運転制限領域に入った場合でも、制御棒挿入などにより出力を低下させ、運転制限領域から離脱する機能を持たせたものもある。

0004

一方において、検知と抑制(Detect and Suppress)の観点から、出力振動現象を許容するとともに核熱水力不安定性に起因する出力振動現象を的確に検知して、燃料健全性が損なわれる前に振動を抑制する原子力プラントも多く存在する。
このため、OPRM (Oscillation Power Range Monitor)と呼ばれる、出力振動現象を検知する専用の検出信号を用いた出力振動検出アルゴリズムが提案されている(例えば、特許文献1)。

先行技術

0005

米国特許第5555279号明細書

発明が解決しようとする課題

0006

しかし、特許文献1において、沸騰水型原子炉は、大型化・高出力密度化高燃焼度化するに従い核熱水力安定性が低下するのが一般的であるが、そのような沸騰水型原子炉への対応がとれない。さらに、炉心出力出力密度が向上するのに伴い核熱水力安定性の余裕低下が避けられないなかで、核熱水力安定性の監視精度の追求が従来以上に求められている。

0007

本発明はこのような問題を解決することを課題とし、原子炉の核熱水力安定性の監視精度及び信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置は、炉心中性子を検出する複数の核計装検出器から出力される核計装信号の減幅比を算出する減幅比算出部と、複数の前記減幅比のうち第1基準値を超えるものをカウントして前記炉心の不安定化指標演算する不安定化指標演算部と、前記不安定化指標が第2基準値を超える場合に前記炉心の出力抑制手段の起動を指示する起動指示部と、を備えることを特徴とする。

発明の効果

0009

本発明によれば、原子炉の核熱水力安定性の監視精度及び信頼性を向上させる技術が提供される。

図面の簡単な説明

0010

本発明に係る核熱水力安定性監視装置が適用される原子力発電システムの実施形態を示す縦断面図。
本発明に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の第1実施形態を示すブロック図。
領域振動と空間高次モード分布の説明図であって、(A)は立体表示であり(B)は水平断面表示である。
ステム外乱印加した際の振動的インパルス応答波形グラフ
核計装信号の核熱水力安定性が安定状態から悪化状態に移る過程を示すグラフであって、(A)は複数(6信号分)の減幅比の重ね書きを示し、(B)はそのうち代表する1信号を表示している。
図5と同じ期間における複数の核計装信号(43信号分)の各時点における核熱水力安定性を示すグラフであって、(A)は減幅比の度数分布であり、(B)は振動周期の度数分布である。
図5と同じ期間に亘って演算された不安定化指標の変化を示すグラフであって、(A)は第1基準値が0.8の場合を示し、(B)は第1基準値を0.5〜0.95の間で段階的に変化させた場合を示している。
各実施形態に適用されるマップの説明図。
第1実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明するフローチャート
第2実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置を示すブロック図。
垂直方向に異なる位置に配置された核計装検出器から出力される核計装信号の減幅比を示すグラフ。
第2実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明するフローチャート。
第3実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置を示すブロック図。
第3実施形態において、図5と同じ期間において演算された不安定化指標の変化を示すグラフであって、(A)は図7(B)のように第1基準値を0.5〜0.95の間で段階的に変化させて重み係数を適用した場合を示し、(B)はさらに等比数列を成す重み係数の公比を1.0,1.5,2.0と可変した場合を示している。
第3実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明するフローチャート。

実施例

0011

(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示される原子力発電システムは、核燃料核分裂による発熱により炉水を加熱して蒸気を発生させる原子炉10と、この発生した蒸気をタービン22に導く主配管21と、この蒸気により回転駆動するタービン22に同軸接続され回転運動エネルギー電機エネルギーに変換する発電機23と、タービン22で仕事をして膨張した蒸気を冷却し凝縮して復水する復水器24と、この復水をポンプ25により送液して原子炉10に導く給水配管26とから構成されている。

0012

この原子炉10に戻された給水は、再び炉水として加熱され、前記したプロセスを繰り返し、連続的な発電が行われる。そして、この発電が安定して持続するように原子炉10における核熱水力安定性監視装置50(以下、監視装置50という)が設けられている。

0013

原子炉10は、炉水が満たされた内部にシュラウド15が固定されている圧力容器11と、このシュラウド15に固定される炉心支持板17と、この炉心支持板17に支持されシュラウド15に外周が囲まれている炉心16と、炉心16を通過して気液二相流となった炉水を気液分離する気水分離器13と、から構成されている。

0014

そして、気水分離器13で気水分離された一方の蒸気は前記したように主配管21に導かれて発電に寄与し、他方の分離水は給水配管26から戻された給水と合流する。このように合流した炉水は、周方向に複数設けられた再循環ポンプ18により(図面では省略して一つのみ記載)、シュラウド15及び圧力容器11に挟まれる領域(ダウンカマD)を下降して下部プレナムLに案内される。
下部プレナムLに案内された炉水は、再び炉心16を通過して加熱され気液二相流となって、上部プレナムUに到達する。この到達した気液二相流は、再び気水分離器13に導かれ、前記したプロセスを繰り返す。

0015

炉心16は、図2にその水平断面図が示されるように、多数の燃料棒(図示略)が収納されている角筒状の燃料集合体33と、核分裂反応に伴う中性子を吸収して出力を制御する制御棒32と、図1に示されるようにこの中性子を検出する核計装検出器31A,31B,31C,31Dを支持するとともに上部格子板14及び炉心支持板17にそれぞれ上下端が固定されている計装管34とが、多数配列して構成されている。

0016

この計装管34は、16体の燃料集合体33に1本程度の割合で設置されており、たとえば燃料集合体が872体の改良型沸騰水炉では52本の計装管34が設けられている。
これら計装管34の鉛直方向4箇所に設けられている核計装検出器31A,31B,31C,31Dは、下からの高さ位置に応じてそれぞれAレベル、Bレベル、Cレベル、Dレベルと呼ばれている。そして、炉心16を内部循環する炉水は、Aレベルから流入して、燃料により加熱され沸騰が始まり、Bレベル、Cレベル、Dレベルに水・蒸気の二相状態を変化させながら順次到達する。

0017

核熱水力安定性は、この水・蒸気二相状態における圧力伝播の影響を大きく受ける。
つまり、図1に示されるように、炉心16を下から上に向かう炉水の圧力伝播遅れにより、二相状態(水・蒸気割合)が変動し、核計装検出器31A,31B,31C,31Dの応答が遅れ、Aレベル、Bレベル、Cレベル、Dレベルから検出される核計装信号S(SA,SB,SC,SD)にそれぞれ位相差を生じさせる。

0018

このような炉水流れ方向における出力振動の位相差は、互いの核計装信号Sの応答をキャンセルする作用があるために、同じ高さレベルの複数の核計装信号Sをグループ化して評価することが核熱水力安定性の監視の精度や信頼性の観点から好ましい。
また、AレベルからDレベルの全てについて安定性監視をする必要は薄く、第1実施形態では、一般的に安定性監視の感度が最も高いと言われるBレベルのグループに対して核熱水力安定性の評価を行う。

0019

核熱水力安定性に関連する出力振動は、燃料集合体33を取り囲む燃料チャンネル内の流動条件が、中性子束の動的な応答に対する反応度フィードバックにより不安定化し、炉心全体マクロ的に発生する現象である。そして、この出力振動は、この反応度フィードバックにより中性子束の空間モード励起され振動に至ったものであると考えられている。

0020

ここで励起された空間モードが基本モードである場合は、炉心一体振動と呼ばれ、同じ高さレベルの炉心断面の出力振動は、位相が基本的に揃っている。この場合、同じ断面で計測される複数の核計装信号Sは、互いに位相差がほとんど無く、加算してもキャンセリングされず、平均化信号(APRM)を用いた振動検出が十分可能である。

0021

これに対して、励起された空間モードが高次モードである場合は、領域振動と呼ばれ、その空間高次モード分布に従って、同じ高さの炉心断面におけるそれぞれの核計装信号Sに位相差が生じる。そして、この空間高次モード分布の節が振動の中心線となり、この中心線を挟んで位相差が180度となり振動が逆転する。

0022

図3(A)は、領域振動における空間高次モード分布を示しており、図3(B)に水平断面視されるように節に相当する振動の中心線cを挟んで、二つの領域a,bが互いに逆位相すなわち180度の位相差で振動している。
この場合、二つの領域a,bにまたがる複数の核計装信号Sを平均化すると位相差による振動のキャンセリングが生じ、平均化信号の振幅がなまされて振動検出が困難になる。すなわち、このような領域振動の検出には、炉心全体を平均化して出力するAPRM信号の使用は不適切である。
また、図示を省略するが、ある特定の燃料集合体33(図2)を中心に狭い領域で出力振動する局所振動の検出に対しても、APRM信号の使用は不適切であるといえる。

0023

図2に示されるように、監視装置50は、炉心16で中性子を検出する複数の核計装検出器31から出力される核計装信号Sの減幅比γを算出する減幅比算出部52と、複数の減幅比γのうち第1基準値Dを超えるものをカウントして炉心16の不安定化指標Rを演算する不安定化指標演算部54と、不安定化指標Rが第2基準値Pを超える場合に炉心16の出力抑制手段60の起動を指示する起動指示部56と、を備えている。
そして、出力抑制手段60は、重度の異なる複数の手段、例えば警告部61と、挿入準備部62と、制御棒挿入部63と、を備えている。

0024

グループ化部51は、複数の核計装検出器31をグループに分類するものであり、第1実施形態では、前記したA〜Dレベル毎グルーピングされている。このうちいずれか一つのグループ(Bレベルに配置されている核計装検出器31群とする)から出力される核計装信号S(1)〜S(M)が、減幅比算出部52に出力されて、減幅比γ(1)〜γ(M)が演算されることになる。そして、このグループを単位に、不安定化指標演算部54において不安定化指標Rが演算され、出力抑制手段60の起動をするか否かの判断がなされる。

0025

減幅比算出部52は、受信した核計装信号Sにデジタル処理、及びノイズトレンド成分を除く処理を施し、出力振動の成分のみからなる時系列データを抽出する。そして、この時系列データに統計的手法を適用し減幅比を高精度に求める。
統計的により減幅比を求める方法としては、直接自己相関関数を求めて相関関数の値が最大になる遅れ時間を振動周期とする方法、FFT高速フーリエ変換)や自己回帰法などによりスペクトル密度を求めそれが最大となる周波数共振周波数、Hz)の逆数を振動周期とする方法、自己回帰法で伝達関数求め伝達関数極から推定した共振周波数から振動周期を求める方法、自己回帰法でインパルス応答を求め図4に示した関係から振動周期を求める方法等が挙げられる。
いずれの方法を用いるにしても、精度良く推定するためにはある程度のデータ長(振動を数周期分以上含む)を必要とする。

0026

ここで、図4を参照し、システムに外乱を印加した際の振動的なインパルス応答を用いて、減幅比γ及び振動周期Tの定義を行う。ピーク値順番に、X1,X2,X3,X4,・・・として、それらのピーク出現する時間を各々、t1,t2,t3,t4、・・・とすれば、核熱水力安定性の安定性を表す指標として一般に用いられる減幅比γ及び振動周期Tは次のように定義される。
減幅比γ=(X3−X4)/(X1−X2) (1)
振動周期T=(t3−t1) 又は (t4−t2) (2)

0027

この減幅比γは、値が1よりも小さければインパルス応答は減衰するのでこのシステムは安定、逆に1を超えれば振動は成長するのでシステムは不安定となる。また、減幅比γが1の場合は一定の振幅で振動が持続することになる。
また、振動周期Tは、短いほど振動がより速く成長したり減衰したりする。そして、この振動周期の逆数を、一般に共振周波数あるいは固有周波数と呼び、単位をHzあるいはcpsとして表す。

0028

図5(A)は、核熱水力安定性が安定状態から不安定状態に移る過程において、減幅比算出部52から5秒ごとに逐次出力されるM個の減幅比γのうち、6信号分を選択して重ね書きしたグラフである。
図6(A)は、図5と同じ期間における複数の核計装信号(43信号分)の各時点(400,500,600,700,800,900秒)における減幅比γの度数分布を示している。

0029

400秒の分布において減幅比γの平均は0.45で標準偏差は0.12を示し、500秒の分布において減幅比γの平均は0.57で標準偏差は0.11を示し、600秒の分布において減幅比γの平均は0.57で標準偏差は0.09、700秒の分布において減幅比γの平均は0.76で標準偏差は0.15を示し、800秒の分布において減幅比γの平均は0.89で標準偏差は0.07を示している。

0030

そして、900秒においては、減幅比γの平均は0.96で標準偏差はわずかに0.01と極めてコヒーレントな分布になっている。この900秒の時点では、核熱水力不安定状態が炉心全体に均一に広がっていることを示している。
このように、安定状態から不安定状態に変化するのに伴い減幅比γは増大し、そのばらつき(標準偏差)が小さくなる傾向を示す。

0031

図6(B)は、図6(A)と同様の条件で、振動周期Tの度数分布を示したものである。振動周期Tにおいても、減幅比γと同様に不安定化に伴い、ばらつきが小さくなる傾向を示している。しかし、安定状態から不安定状態への変化に伴う、振動周期Tの変化の単調性は、減幅比γに比べて劣っているといえる。
これより、減幅比γの値自体を監視対象にすることが、高精度に核熱水力安定性を評価するのに適しているといえる。

0032

図5(B)は、図5(A)に表示される減幅比γの信号のうち代表する1信号を表示している。ここで示される第1基準値Dは、該当する減幅比γにおいて、安定状態及び不安定状態のいずれの状態にあるかを識別する値である。
この第1基準値Dは、大きな値を取る程に、不安定状態の判断基準が甘くなり、小さな値を取る程に、不安定状態の判断基準が辛くなる。蓄積部58(図2)には、一つの第1基準値D又は値の異なるN個の第1基準値D(n)(n;1〜N)が格納されている。

0033

そして、第1比較器53(図2)において、グループに属する複数の減幅比γ(m)(m;1〜M)のそれぞれに対し、第1基準値Dとの大きさが比較される(式(3))。
γ(m)≧D (3)

0034

不安定化指標演算部54は、第1基準値Dを超える(前記式(3)を満たす)減幅比γ(m)の数をカウントする。
この不安定化指標演算部54の動作を図5(B)に基づいて説明する。
この場合、第1基準値Dは0.8に設定されている。炉心が徐々に不安定化するのに伴って、減幅比γはゆっくりと増加し、640秒付近から急激に増加して680秒付近で第1基準値Dに到達する。減幅比γは、わずかの期間だけ第1基準値Dを下回るが直ぐに超える。そこで、最初に第1基準値Dを超えた時点で、該当する核計装検出器31の周辺領域は不安定化したものと判断し、不安定化指標演算部54においてカウントアップする。

0035

具体的には、ある時点において、グループ内の減幅比γ(m)(m;1〜M)に対し、前記式(3)を満たすものはa(m)=1を計上し、前記式(3)を満たさないものはa(m)=0を計上する。そして、計上された全てのa(m)(m;1〜M)の総和をとり、総数Mで除算して規格化した値を不安定化指標Rとする(次式(4)〜(6))。そして、この不安定化指標Rは、0〜1の間の値をとることになる(次式(7))。
a(m)=1 (γ(m)≧D) (4)
a(m)=0 (γ(m)<D) (5)
R=SUM{a(1):a(m)}/M (6)
0≦R≦1 (7)

0036

そして、第2比較器55において、不安定化指標Rに対し、蓄積部58に蓄積される第2基準値Pとの大きさが比較される(式(8))。この第2基準値Pは、該当するグループにおいて、安定状態及び不安定状態のいずれの状態にあるかを識別する値である。
この式(8)が満たされると、原子炉の核熱水力安定性が悪化したと判断して、起動指示部56は、炉心の出力抑制手段60に対し起動を指示する。
R≧P (8)

0037

図7(A)は、第1基準値Dを0.8に設定し、図5と同じ期間に亘って演算された不安定化指標Rを示すグラフである。ここで第2基準値Pは、半数以上の核計装信号Sが不安定化したことを示す0.5に設定されている。
図7(A)において不安定化指標Rは、640秒付近で非ゼロの値を取り始めた後に急速に立ち上がり、700秒付近で第2基準値P(=0.5)を超える。

0038

ところで、図7(A)のグラフに示すように、不安定化指標Rの立ち上がりは比較的早いために、グループが不安定状態と判断される(式(8)を満たす)タイミングは、第2基準値Pのとる値に対する依存度が小さいといえる。例えば、第2基準値Pが0.4と0.6の値をとる場合における時間差は25秒にすぎない。

0039

図7(B)は、第1基準値D(n)(n;1〜N)を0.5〜0.95の間で段階的に設定した場合の不安定化指標Rを示すグラフである。
このように、第1基準値D(n)の設定値を大きくするほど、立ち上がりは急になり直線化していく傾向が観測される。また、第1基準値D(n)の設定値が小さい場合は、一旦非ゼロ値になってからもしばらく立ち上がらないプラトー領域が観測される。

0040

そこで、図2に示す蓄積部58は、値の異なるN個の第1基準値D(n)(n;1〜N)を格納し、基準値更新部57は、対応する不安定化指標R(n)が第2基準値Pを超える(式(8)を満たす)ことを契機に、式(4)(5)で適用される第1基準値D(n)を更新する。
そして、更新された第1基準値D(n)に対応する不安定化指標R(n)が式(8)を満たす度に、起動指示部56は、重度の異なる複数の出力抑制手段60(警告部61、挿入準備部62、制御棒挿入部63)に対し起動を段階的に指示する。

0041

例えば図7(B)では、安定から不安定に移行する初期状態では、第1基準値D(1)が適用されるために、第2基準値P(=0.5)に到達する400秒付近で警報が出る。そして、最終段階では、第1基準値D(N)が適用されているために、820秒付近で原子炉がトリップされる。このように、最終段階に至る約7分前には、不安定状態に入ることが警報されるので、運転員がその原因を調査して手動で適切な処置をとる時間が確保される。
このように、いきなり原子炉をスクラムするような振動抑制手段(制御棒挿入部63)を起動することなく、事前に不安定化の兆候を運転員に知らせることができる。そして、第1基準値D(n)を段階的に引き上げて不安定化指標Rを評価することで、状態変化に迅速に対応することができ、より柔軟で信頼性の高い監視が可能になる。

0042

図8を参照して、各実施形態に適用されるマップ70を説明する。
このマップ70には、同一グループに属する複数の核計装検出器31の配置が表示されている。さらに、それぞれの核計装検出器31の減幅比γが表示され、第1基準値Dを超える(式(3)を満たす)減幅比γと超えない(式(3)を満たさない)減幅比γとが識別可能に表示されている。
また、このマップ70は、第1比較器53の処理が終了した時点で、リアルタイムに表示を更新する場合の他に、起動指示部56において出力抑制手段60に対する起動が指示されるのに同期して自動的に表示する場合がある。

0043

ここで、図7(B)のグラフを参照しつつ、動作例の説明をする。まず400秒付近で、最初の第1基準値D(1)=0.5における不安定化指標Rが、第2基準値Pを越えた時点でまず警報が出される。そして、この警報吹鳴に伴って、モニタにマップ70が表示され、運転員はこのモニタを監視して、どのような不安定化現象の兆候が発生しているかについて確認できる。

0044

つまり、第1基準値D(1)=0.5を超える核計装検出器31の減幅比γについては、図8に示すように、その数値を二重枠で囲む。さらに、最大値を示す減幅比γの数値を太線枠で囲む。これにより、運転員はどのような不安定モードが発生しているかを推測することができる。マップ70によれば、一点鎖線で示す対角線を挟んで第1基準値Dを越えた核計装検出器31が分布しているので、この対角線を振動の節とした領域不安定性の兆候が示されている。このような対角線は、例えば核計装検出器31の配列の各行において最低値を示す減幅比を点線枠で囲むことによって、視覚的に把握しやすくなる。

0045

図9のフローチャートを参照して(適宜、図2参照)、第1実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明する。
まず、第1基準値D(n)(n;1〜N)及び第2基準値Pを取得する(S11)。そして、グループ内のM個の核計装検出器31から出力される核計装信号S(m)(m;1〜M)を受信し(S12)、それぞれの減幅比γ(m)(m;1〜M)を算出する(S13)。

0046

M個の減幅比γ(m)のそれぞれを第1基準値D(n)(n=1)と対比して、超えるものについては1をカウントし(S14:Yes,S15)、超えないものについては0をカウントする(S14:No,S16)。この処理を、グループ内の減幅比γ(m)に対して行い(S17:No)、M個の全てに実行したところで(S17:Yes)、不安定化指標R(n)(n=1)を演算する(S18)。

0047

次に、この不安定化指標R(n)(n=1)を第2基準値Pと対比して、これを超えない場合は(S19:No)、n=1を固定したまま、S12からS18のルーチンQを繰り返す。
そして、この不安定化指標R(n)(n=1)が、第2基準値Pを超える場合は(S19:Yes)、第1抑制手段(警告部61)が起動する(S20)。

0048

さらに、n=2となり(S21:No)、第1基準値D(n)が更新される(S11)。その後、S12からS21のルーチンが繰り返され、nが更新し最終的な第N抑制手段(制御棒挿入部63)が起動したところで(S21:Yes)、監視装置50の動作が終了する。

0049

このように、第1基準値D(n)を段階的に引き上げながら導いた不安定化指標R(n)により、軽警報、重警報、制御棒挿入準備開始、制御棒挿入、というように段階的に振動抑制操作を進めることができる。特に、予め警報を出すことにより、突然自動的に振動抑制手段としての制御棒挿入が起動されることがなくなり、運転員に対する負荷が軽減される。

0050

(第2実施形態)
図10に基づいて、第2実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置を説明する。なお、図10において図2と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、すでにした記載を援用して、詳細な説明を省略する。
第2実施形態の監視装置50は、少なくとも2以上のグループにおいて不安定化指標Rkが第2基準値Pを超える場合に、起動指示部56が、出力抑制手段60の起動を指示する点において、第1実施形態の場合と相違する。
さらに、第2実施形態の監視装置50は、基準値補正部71を備える点において、第1実施形態の場合と相違する。

0051

図11のグラフは、垂直方向に異なる位置に配置された核計装検出器31A〜31D(図1)から出力される核計装信号SA〜SDの減幅比を示す。
このグラフによれば、鉛直方向下部のAレベル、Bレベルの核計装信号SA,SBの減幅比γの方が、上部のCレベル、Dレベルの核計装信号SC,SDの減幅比γに比べて、感度が高いことが判る。
核計装検出器31をグループ化する場合、同じ高さレベル毎に分類するのが好都合である。ただし、このようなグループ分けを行った場合には、レベル間での検出器感度の違いを予め考慮する必要がある。

0052

基準値補正部71(図10)は、K個に分類されたグループに対し、第kグループ(k;1〜K)を単位に減幅比γk(m)の平均値を求め、平均値間偏差ukに基づいて第1基準値Dkを補正する機能をもつ。
具体的に、第kグループにおける減幅比の平均値<γk>は、出力される減幅比γk(m)の数がMであるとして、次式(9)で示される。
<γk>=SUM{γk(1):γk(M)}/M (9)

0053

さらに、1〜Kの各グループの平均減幅比<γk>のうち最大のものをmax<γ>とした場合、偏差ukは次式(10)で示され、各グループに適用される第1基準値Dkは次式(11)で示される。
uk=max<γ>−<γk> (10)
Dk=D−uk (11)

0054

図12のフローチャートを参照して(適宜、図10参照)、第2実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明する。
炉心16に配置される複数の核計装検出器31をK個のグループに分類する(S31)。なお、ここで一つのグループは、M個の核計装検出器31から構成されているものとする。次に第1基準値Dの初期値及び第2基準値Pを取得する(S32)。

0055

そして、第kグループの平均減幅比<γk>をk=1から順番に求め(S33,S34:No)、K個の全てのグループの平均減幅比を求める(S34:Yes)。次に1〜Kの各グループの平均減幅比<γk>のうち最大のものをmax<γ>とし、第kグループの平均減幅比<γk>との偏差ukを求める(S35)。さらに、この偏差ukを用いて、S32で取得した第1基準値Dの初期値を補正し、第kグループに適用する第1基準値Dkを求める(S36)。

0056

そして、グループ単位で異なる第1基準値DkをルーチンQ(図9)に適用し、第kグループに対する不安定化指標Rkを算出する(S37)。そして、この不安定化指標Rkが第2基準値Pを超えない場合は(S38:No)、S33からS37のルーチンを繰り返す。そして、全部でK個ある不安定化指標Rkのうちいずれかが第2基準値Pを超えた場合であっても規定数の不安定化指標Rkが第2基準値Pを超えないうちは(S39:No)、S33からS38のルーチンが繰り返される。
そして、規定数のグループで第2基準値Pを超えたところで(S39:Yes)、抑制手段60が起動し(S40)、監視装置50の動作が終了する。

0057

なお、第2実施形態においても、第1実施形態のように、複数の第1基準値D(n)を予め蓄積部58に登録させておき、段階的に重度の異なる複数の出力抑制手段60(警告部61、挿入準備部62、制御棒挿入部63)を起動させることもできる。

0058

また、グループ化する方法は、前記したように高さレベル毎に分類する場合以外にも種々の分類方法が考えられる。前記した高さレベル毎にグループ化する分類方法では、レベル間での検出器感度の違いを予め考慮しておく必要があった。
そこで、それぞれのグループにおける平均減幅比<γk>が均等になるように、複数の核計装検出器31が分類されれば、そのような考慮が不要となる。この場合、図12動作フローにおいて、S33〜S36のフローを省略することができる。

0059

そのようなグループ化をする方法としては、全てのグループにおいて、A〜Dの4レベルの核計装検出器31が同じ比率で存在するようにする方法がある。例えば、図2の炉心16の左上の箇所から右へ順番に、第1グループではA/B/C/D/A/B/C・・・となるように、第2グループではB/C/D/A/B/C/D・・・となるように、第3グループではではC/D/A/B/C/D/A・・・となるように、第4グループではD/A/B/C/D/A/B・・・となるように分類する方法である。

0060

この場合は、グループ間の平均減幅比において偏差が発生しにくくなる上に、炉心内における核計装検出器31の配置の情報も保持される。ただし、図8のようなマップ70の表示において、減幅比γを比較する場合は、鉛直方向レベルでの偏差を推定して補正する必要がある。また、単純に全体を1つのグループとして取り扱うのであれば、各計装管34の4信号を平均化した信号を用いれば良い。2グループだけであれば、例えば(A+D)の平均と(B+C)の平均、あるいは(A+C)の平均と(B+D)の平均を用いるグループを2つ用意する。3グループであれば、Dを除いた3レベルでグループ化するといった方法を用いれば、補正は不要になる。

0061

(第3実施形態)
図13に基づいて、第3実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置を説明する。なお、図13において図2と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、すでにした記載を援用して、詳細な説明を省略する。
第3実施形態の監視装置50は、重み係数W(n)を設定する重み係数設定部72を備え、基準値更新部57は、統合化した不安定化指標Rが第2基準値P(j)を超える(式(8)を満たす)ことを契機に、次のルーチンで式(8)に適用される第2基準値P(j)を更新する点において、第1実施形態や第2実施形態の場合と相違する。

0062

不安定化指標演算部54は、値の異なるN個の第1基準値D(n)(n;1〜N)に対応する複数の不安定化指標R(n)を前記式(4)〜(6)に基づき演算する。
そして、次式(12)に示すように、不安定化指標R(n)(n;1〜N)の各々に対応する重み係数W(n)(n;1〜N)を乗算させてから加算した値を不安定化指標Rとして出力する。
R=SUM{W(1)×R(1):W(N)×R(N)} (12)

0063

ここで、重み係数W(n)は、次式(13)に示すように、複数の不安定化指標R(n)に対応する各々を足し合わせた値が1になるように規格化されている。
SUM{W(1):W(N)}=1 (13)

0064

図14(A)のグラフは、図5と同じ期間において演算された不安定化指標Rを実線で示し、R(n)(n;1〜N)の項を破線で示している。
このように、先の第1実施形態では、複数の設定点nごとに個別に不安定化指標R(n)を表していたが、第3実施形態では、1つの統合化した不安定化指標Rとして表すことになる。
ここで、統合化した不安定化指標Rは、減幅比γの小さな安定状態ではゆっくりと立ち上がり、不安定状態が進むと急に立ち上がるといった、個別の不安定化指標R(n)の応答の特徴を含んでいるといえる。

0065

なお、次式(14)に示すように、設定点nが大きくなるに従い、重み係数W(n)も大きく設定すれば、進展する不安定性の監視精度を高めることができる。
そして、重み係数W(n)は、次式(15)に示されるように、公比rを用いた等比数列として表すことができる。
W(n+1) > W(n) (14)
W(n+1) = r×W(n) (15)

0066

図14(B)は、等比数列を成す重み係数W(n)の公比rを1.0,1.5,2.0と段階的に変化させた場合の不安定化指標Rを表している。
このように、重み係数W(n)を変化させることにより、立ち上がりの感度を変えることができる。公比rを大きく設定すれば、減幅比γの小さい状態での立ち上がりは遅くプラトー領域が現れる。すなわち、安定度があまり変わらなければ、統合化した不安定化指標Rはほぼ一定で推移し、逆に、減幅比γが大きくなるに従い、統合化した不安定化指標Rの増加率は急激に大きくなり、立ち上がりは急になる。

0067

図14(B)において、プラトーから立ち上がる650秒付近では、振幅は小さいながらも領域振動が明確に発生する時点に一致しており、このような物理現象を視覚的に区別できる利点がある。このように、重み係数W(n)は、不安定検知の感度向上や、特定の現象の識別等といった検知の目的に応じて、最適な値を設定することができる。

0068

図15のフローチャートを参照して(適宜、図13参照)、第3実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明する。
まず、設定点nの第1基準値D(n)(n;1〜N)を取得し(S51)、この設定点nに対応する重み係数W(n)を設定する(S52)。さらに、第2基準値P(j)(j=1)を取得する(S53)。

0069

そして、第1基準値D(n)(n;1〜N)に対してルーチンQ(図9)を適用し、個別の不安定化指標R(n)を算出し、統合化した不安定化指標Rを算出する(S54)。そして、この統合化した不安定化指標Rが第2基準値P(j)(j=1)を超えない場合は(S55:No)、S54のルーチンを繰り返し、第2基準値P(j)(j=1)を超えたところで(S55:Yes)、第j出力抑制手段60(j=1)が起動し(S56)、軽警告がなされる。

0070

さらに、j=2となり(S57:No)、第2基準値P(j)が更新される(S53)。その後、S53からS57のルーチンが繰り返され、jが更新し最終的な第J抑制手段(制御棒挿入部63)が起動したところで(S57:Yes)、監視装置50の動作が終了する。
このように、第3実施形態においても、第2基準値P(j)を複数設定することにより、第1実施形態のように、段階的に重度の異なる複数の出力抑制手段60(警告部61、挿入準備部62、制御棒挿入部63)を起動させることができる。
また、第3実施形態においても、第2実施形態のように、複数のグループを設定し、規定数のグループが基準値を超えたところで抑制手段を起動させることができる。

0071

上より、本発明により原子炉における核熱水力不安定性に起因する出力振動を高い信頼性で検知して、出力振動が燃料やプラントの健全性に重要な影響を及ぼすことなく、出力振動を抑制することが可能となり、原子炉の安全で効率的な運転に貢献する。

0072

本発明は前記した実施形態に限定されるものでなく、共通する技術思想の範囲内において、適宜変形して実施することができる。
例えば、本発明は、コンピュータによって各手段を各機能プログラムとして実現することも可能であり、各機能プログラムを結合して原子炉の核熱水力安定性監視プログラムとすることも可能である。

0073

10…原子炉、11…圧力容器、13…気水分離器、14…上部格子板、15…シュラウド、16…炉心、17…炉心支持板、18…再循環ポンプ、21…主配管、22…タービン、23…発電機、24…復水器、25…ポンプ、26…給水配管、31(31A,31B,31C,31D)…核計装検出器、32…制御棒、33…燃料集合体、34…計装管、50…核熱水力安定性監視装置、51…グループ化部、52…減幅比算出部、53…第1比較器、54…不安定化指標演算部、55…第2比較器、56…起動指示部、57…基準値更新部、58…蓄積部、60…出力抑制手段、61…警告部、62…挿入準備部、63…制御棒挿入部、70…マップ、71…基準値補正部、72…重み係数設定部、γ(γk,γ(m) m:1〜M)…減幅比、D(D(n) n:1〜N)…第1基準値、P…第2基準値、R(Rk,R(n) n:1〜N)…不安定化指標、S(SA,SB,SC,SD,S(1)〜S(m))…核計装信号、uk…偏差、W(n)(n;1〜N)…重み係数。

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