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技術 屈折率分布計測方法、屈折率分布計測装置および光学素子の製造方法

出願人 キヤノン株式会社
発明者 加藤正磨
出願日 2010年12月3日 (9年11ヶ月経過) 出願番号 2010-270214
公開日 2012年6月21日 (8年5ヶ月経過) 公開番号 2012-117999
状態 特許登録済
技術分野 光学的手段による材料の調査、分析 光学装置、光ファイバーの試験
主要キーワード 基準配置 近似関係 光源移動機構 無次元量 形状成分 周波数マップ 偏心機構 FFT法
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2012年6月21日)のものです。
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図面 (8)

課題

被検物屈折率分布を正確に算出する。

解決手段

計測方法は、第1および第2の媒質中の被検物に参照光入射させて第1および第2の透過波面をそれぞれ計測する透過波面計測ステップと、第1および第2の媒質中に配置した基準被検物に参照光を入射させたときに得られる第1および第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得ステップと、各透過波面と各基準透過波面とを用いて被検物の屈折率分布を算出する屈折率分布算出ステップとを有する。該方法は、被検物の配置状態の変化に対する収差感度と被検物の複数の配置状態にて計測された第1および第2の透過波面とから、計測時における各配置状態での配置誤差を算出する。基準透過波面取得ステップでは、基準被検物が第1および第2の媒質中のそれぞれにおける配置誤差を含む配置状態にあるときに得られる第1および第2の基準透過波面を取得する。

概要

背景

デジタルカメラレーザービームプリンタ等の光学機器に用いられるレンズ等の光学素子には、高い屈折率が求められている。また、高屈折率光学ガラスプラスチック材料でも、モールド成形技術を用いることで、非球面等の複雑な形状も容易に製作することができる。

ただし、モールド成形では、成形条件によって、光学素子の内部に屈折率の不均一が生じることがある。このような内部屈折率の不均一は、光学素子の光学特性に大きな影響を及ぼし、所望の光学特性を得られなくするおそれがある。このため、高屈折率を有する光学素子の内部の光学的均質性を高精度に計測することが求められている。

特許文献1には、被検物とは屈折率が異なる2種類の媒質のそれぞれに被検物を浸漬した状態で透過波面を計測することによって、該被検物の屈折率分布を求める方法が開示されている。この計測方法によれば、被検物の屈折率が高い場合でも、その屈折率とほぼ同じ屈折率を有する媒質を用いることなく、該被検物の内部屈折率分布を高精度に計測することができる。

概要

被検物の屈折率分布を正確に算出する。計測方法は、第1および第2の媒質中の被検物に参照光入射させて第1および第2の透過波面をそれぞれ計測する透過波面計測ステップと、第1および第2の媒質中に配置した基準被検物に参照光を入射させたときに得られる第1および第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得ステップと、各透過波面と各基準透過波面とを用いて被検物の屈折率分布を算出する屈折率分布算出ステップとを有する。該方法は、被検物の配置状態の変化に対する収差感度と被検物の複数の配置状態にて計測された第1および第2の透過波面とから、計測時における各配置状態での配置誤差を算出する。基準透過波面取得ステップでは、基準被検物が第1および第2の媒質中のそれぞれにおける配置誤差を含む配置状態にあるときに得られる第1および第2の基準透過波面を取得する。

目的

本発明は、媒質中に配置した被検物の配置精度を高くしなくても、該被検物の屈折率分布を正確に算出することができるようにした屈折率分布の計測方法および計測装置、さらには該計測方法を用いた光学素子の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
1件

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請求項1

被検物屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質と、前記被検物の屈折率および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質とを用いて、前記被検物の屈折率分布を求める屈折率分布計測方法であって、前記第1の媒質中に配置した前記被検物に参照光入射させて該被検物の透過波面である第1の透過波面を計測するとともに、前記第2の媒質中に配置した前記被検物に前記参照光を入射させて該被検物の透過波面である第2の透過波面を計測する透過波面計測ステップと、前記第1の媒質中に配置した、既知の形状および屈折率分布を有する基準被検物に前記参照光を入射させたときに得られる前記基準被検物の透過波面である第1の基準透過波面を取得するとともに、前記第2の媒質中に配置した前記基準被検物に前記参照光を入射させたときに得られる該基準被検物の前記透過波面である第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得ステップと、前記第1および第2の透過波面と前記第1および第2の基準透過波面とを用いて、前記被検物の形状成分を除去した前記屈折率分布を算出する屈折率分布算出ステップとを有し、前記透過波面計測ステップにおいて、前記第1および第2の媒質中のそれぞれにおける前記被検物の複数の配置状態にて前記第1および第2の透過波面を計測し、該屈折率分布計測方法は、前記被検物の配置状態の変化に対する収差感度を求めて、該収差敏感度と前記複数の配置状態にて計測された前記第1および第2の透過波面とから、前記第1および第2の透過波面の計測時における前記被検物の前記各配置状態での配置誤差を算出する配置誤差算出ステップを含んでおり、前記基準透過波面取得ステップにおいて、前記基準被検物が前記第1および第2の媒質中のそれぞれにおける前記配置誤差を含む配置状態にあるときに得られる前記第1および第2の基準透過波面を取得することを特徴とする屈折率分布計測方法。

請求項2

前記配置誤差算出ステップにおいて、前記第1および第2の透過波面と前記第1および第2の基準透過波面とを用いて前記被検物の前記形状成分と前記配置誤差とを分離することで前記配置誤差を算出することを特徴とする請求項1に記載の屈折率分布計測方法。

請求項3

被検物の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質と、前記被検物の屈折率および前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質とを用いて、前記被検物の屈折率分布を求める屈折率分布計測装置であって、前記第1の媒質中に配置した前記被検物に、光源からの参照光を入射させて該被検物の透過波面である第1の透過波面を計測するとともに、前記第2の媒質中に配置した前記被検物に前記参照光を入射させて該被検物の透過波面である第2の透過波面を計測する透過波面計測部と、前記第1の媒質中に配置した、既知の形状および屈折率分布を有する基準被検物に前記参照光を入射させたときに得られる前記基準被検物の透過波面である第1の基準透過波面を取得するとともに、前記第2の媒質中に配置した前記基準被検物に前記参照光を入射させたときに得られる該基準被検物の前記透過波面である第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得部と、前記第1および第2の透過波面と前記第1および第2の基準透過波面とを用いて、前記被検物の形状成分を除去した前記屈折率分布を算出する屈折率分布算出部とを有し、前記透過波面計測部は、前記第1および第2の媒質中のそれぞれにおける前記被検物の複数の配置状態にて前記第1および第2の透過波面を計測し、該屈折率分布計測装置は、前記被検物の配置状態の変化に対する収差敏感度を求めて、該収差敏感度と前記複数の配置状態にて計測された前記第1および第2の透過波面とから、前記第1および第2の透過波面の計測時における前記被検物の前記各配置状態での配置誤差を算出する配置誤差算出部を含んでおり、前記基準透過波面取得部において、前記基準被検物が前記第1および第2の媒質中のそれぞれにおける前記配置誤差を含む配置状態にあるときに得られる前記第1および第2の基準透過波面を取得することを特徴とする屈折率分布計測装置。

請求項4

被検物の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質と、第1の参照光と、該第1の参照光とは異なる波長を有する第2の参照光とを用いて、前記被検物の屈折率分布を求める屈折率分布計測方法であって、前記媒質中に配置した前記被検物に前記第1の参照光を入射させて該被検物の透過波面である第1の透過波面を計測するとともに、前記媒質中に配置した前記被検物に前記第2の参照光を入射させて該被検物の透過波面である第2の透過波面を計測する透過波面計測ステップと、前記媒質中に配置した、既知の形状および屈折率分布を有する基準被検物に前記第1の参照光を入射させたときに得られる前記基準被検物の透過波面である第1の基準透過波面を取得するとともに、前記媒質中に配置した前記基準被検物に前記第2の参照光を入射させたときに得られる該基準被検物の前記透過波面である第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得ステップと、前記第1および第2の透過波面と前記第1および第2の基準透過波面とを用いて、前記被検物の形状成分を除去した前記屈折率分布を算出する屈折率分布算出ステップとを有し、前記透過波面計測ステップにおいて、前記第1および第2の参照光を複数の配置状態にある前記被検物に入射させて前記第1および第2の透過波面を計測し、該屈折率分布計測方法は、前記被検物の配置状態の変化に対する収差敏感度を求めて、該収差敏感度と前記複数の配置状態にて計測された前記第1および第2の透過波面とから、前記第1および第2の透過波面の計測時における前記被検物の前記各配置状態での配置誤差を算出する配置誤差算出ステップを含んでおり、前記基準透過波面取得ステップにおいて、前記第1および第2の参照光を前記配置誤差を含む配置状態にある前記基準被検物に入射させたときに得られる前記第1および第2の基準透過波面を取得することを特徴とする屈折率分布計測方法。

請求項5

前記配置誤差算出ステップにおいて、前記第1および第2の透過波面と前記第1および第2の基準透過波面とを用いて前記被検物の前記形状成分と前記配置誤差とを分離することで前記配置誤差を算出することを特徴とする請求項4に記載の屈折率分布計測方法。

請求項6

被検物の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質と、第1の参照光と、該第1の参照光とは異なる波長を有する第2の参照光とを用いて、前記被検物の屈折率分布を求める屈折率分布計測装置であって、前記媒質中に配置した前記被検物に第1の光源からの前記第1の参照光を入射させて該被検物の透過波面である第1の透過波面を計測するとともに、前記媒質中に配置した前記被検物に第2の光源からの前記第2の参照光を入射させて該被検物の透過波面である第2の透過波面を計測する透過波面計測部と、前記媒質中に配置した、既知の形状および屈折率分布を有する基準被検物に前記第1の参照光を入射させたときに得られる前記基準被検物の透過波面である第1の基準透過波面を取得するとともに、前記媒質中に配置した前記基準被検物に前記第2の参照光を入射させたときに得られる該基準被検物の前記透過波面である第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得部と、前記第1および第2の透過波面と前記第1および第2の基準透過波面とを用いて、前記被検物の形状成分を除去した前記屈折率分布を算出する屈折率分布算出部とを有し、前記透過波面計測部は、前記第1および第2の参照光を複数の配置状態にある前記被検物に入射させて前記第1および第2の透過波面を計測し、該屈折率分布計測装置は、前記被検物の配置状態の変化に対する収差敏感度を求めて、該収差敏感度と前記複数の配置状態にて計測された前記第1および第2の透過波面とから、前記第1および第2の透過波面の計測時における前記被検物の前記各配置状態での配置誤差を算出する配置誤差算出部を含んでおり、前記基準透過波面取得部は、前記第1および第2の参照光を前記配置誤差を含む配置状態にある前記基準被検物に入射させたときに得られる前記第1および第2の基準透過波面を取得することを特徴とする屈折率分布計測装置。

請求項7

光学素子モールド成形するステップと、請求項1又は4に記載の屈折率分布計測方法を用いて、前記被検物である前記光学素子の屈折率分布を計測し、該屈折率分布を用いて前記光学素子を評価するステップとを有することを特徴とする光学素子の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、光学素子等の被検物屈折率分布を測定する方法および装置に関する。

背景技術

0002

デジタルカメラレーザービームプリンタ等の光学機器に用いられるレンズ等の光学素子には、高い屈折率が求められている。また、高屈折率光学ガラスプラスチック材料でも、モールド成形技術を用いることで、非球面等の複雑な形状も容易に製作することができる。

0003

ただし、モールド成形では、成形条件によって、光学素子の内部に屈折率の不均一が生じることがある。このような内部屈折率の不均一は、光学素子の光学特性に大きな影響を及ぼし、所望の光学特性を得られなくするおそれがある。このため、高屈折率を有する光学素子の内部の光学的均質性を高精度に計測することが求められている。

0004

特許文献1には、被検物とは屈折率が異なる2種類の媒質のそれぞれに被検物を浸漬した状態で透過波面を計測することによって、該被検物の屈折率分布を求める方法が開示されている。この計測方法によれば、被検物の屈折率が高い場合でも、その屈折率とほぼ同じ屈折率を有する媒質を用いることなく、該被検物の内部屈折率分布を高精度に計測することができる。

先行技術

0005

特開2010−151578号公報

発明が解決しようとする課題

0006

特許文献1にて開示された計測方法では、被検物の傾きや平行偏心といった被検物の配置を高精度に計測しなければならない。しかしながら、被検物がレンズ等の光学素子のように複雑な形状を有する場合には、該被検物の配置を精度良く計測することが難しく、その結果、被検物の屈折率分布を正確に算出することが困難になる。

0007

本発明は、媒質中に配置した被検物の配置精度を高くしなくても、該被検物の屈折率分布を正確に算出することができるようにした屈折率分布の計測方法および計測装置、さらには該計測方法を用いた光学素子の製造方法を提供する。

課題を解決するための手段

0008

本発明の一側面としての屈折率分布計測方法屈折率分布計測装置)は、被検物の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する第1の媒質と、被検物の屈折率および第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の媒質とを用いて、被検物の屈折率分布を求める。該計測方法(計測装置)は、第1の媒質中に配置した被検物に参照光入射させて該被検物の透過波面である第1の透過波面を計測するとともに、第2の媒質中に配置した被検物に参照光を入射させて該被検物の透過波面である第2の透過波面を計測する透過波面計測ステップ(透過波面計測部)と、第1の媒質中に配置した、既知の形状および屈折率分布を有する基準被検物に参照光を入射させたときに得られる基準被検物の透過波面である第1の基準透過波面を取得するとともに、第2の媒質中に配置した基準被検物に参照光を入射させたときに得られる該基準被検物の透過波面である第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得ステップ(基準透過波面取得部)と、第1および第2の透過波面と第1および第2の基準透過波面とを用いて、被検物の形状成分を除去した屈折率分布を算出する屈折率分布算出ステップ(屈折率分布算出部)とを有する。そして、透過波面計測ステップ(透過波面計測部)において、第1および第2の媒質中のそれぞれにおける被検物の複数の配置状態にて第1および第2の透過波面を計測する。該計測方法(計測装置)は、被検物の配置状態の変化に対する収差感度を求めて、該収差敏感度と複数の配置状態にて計測された第1および第2の透過波面とから、第1および第2の透過波面の計測時における被検物の各配置状態での配置誤差を算出する配置誤差算出ステップ(配置誤差算出部)を含む。そして、基準透過波面取得ステップ(基準透過波面取得部)において、基準被検物が第1および第2の媒質中のそれぞれにおける上記配置誤差を含む配置状態にあるときに得られる第1および第2の基準透過波面を取得することを特徴とする。

0009

また、本発明の他の一側面としての屈折率分布計測方法(屈折率分布計測装置)は、被検物の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質と、第1の参照光と、該第1の参照光とは異なる波長を有する第2の参照光とを用いて、被検物の屈折率分布を求める。該計測方法(計測装置)は、媒質中に配置した被検物に第1の参照光を入射させて該被検物の透過波面である第1の透過波面を計測するとともに、媒質中に配置した被検物に第2の参照光を入射させて該被検物の透過波面である第2の透過波面を計測する透過波面計測ステップ(透過波面計測部)と、媒質中に配置した、既知の形状および屈折率分布を有する基準被検物に第1の参照光を入射させたときに得られる基準被検物の透過波面である第1の基準透過波面を取得するとともに、媒質中に配置した基準被検物に第2の参照光を入射させたときに得られる該基準被検物の透過波面である第2の基準透過波面を取得する基準透過波面取得ステップ(基準透過波面取得部)と、第1および第2の透過波面と第1および第2の基準透過波面とを用いて、被検物の形状成分を除去した屈折率分布を算出する屈折率分布算出ステップ(屈折率分布算出部)とを有する。透過波面計測ステップ(透過波面計測部)において、第1および第2の参照光を複数の配置状態にある被検物に入射させて第1および第2の透過波面を計測する。該計測方法(計測装置)は、被検物の配置状態の変化に対する収差敏感度を求めて、該収差敏感度と複数の配置状態にて計測された第1および第2の透過波面とから、第1および第2の透過波面の計測時における被検物の各配置状態での配置誤差を算出する配置誤差算出ステップ(配置誤差算出部)を含む。そして、基準透過波面取得ステップ(基準透過波面取得部)において、第1および第2の参照光を配置誤差を含む配置状態にある基準被検物に入射させたときに得られる第1および第2の基準透過波面を取得することを特徴とする。

0010

なお、光学素子をモールド成形するステップと、上記屈折率分布計測方法を用いて、被検物である光学素子の屈折率分布を計測し、該屈折率分布を用いて光学素子を評価するステップとを有する光学素子の製造方法も本発明の他の一側面を構成する。

発明の効果

0011

本発明によれば、被検物の屈折率が高い場合でも、また該被検物の配置誤差が大きい場合でもその配置誤差を修正するための調整を行うことなく、該被検物の屈折率分布を正確に計測することができる。また、本発明の光学素子の製造方法によれば、光学素子の屈折率分布を高精度に計測することができるので、高屈折率硝材を用いた光学素子であっても、モールド成形で精度良く量産することが可能になる。

図面の簡単な説明

0012

本発明の実施例1である屈折率分布計測装置の概略構成を示す図。
実施例1における内部屈折率分布の計測手順を示すフローチャート
実施例1の計測装置内での光路を示す図。
本発明の実施例2である屈折率分布計測装置の概略構成を示す図。
実施例2の計測装置で用いられるシャックハルトマンセンサの概略図。
実施例2における内部屈折率分布の計測手順を示すフローチャート。
実施例1,2による屈折率分布の計測結果を用いた光学素子の製造工程を示すフローチャート。

0013

以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。

0014

図1には、本発明の実施例1である屈折率分布計測装置の構成を示している。この屈折率分布計測装置は、レンズ等の光学素子である被検物140の内部屈折率分布(以下、単に屈折率分布ともいう)を計測(算出)する。

0015

該装置は、被検物140とは異なる屈折率を有する2種類の媒質(第1の媒質および第2の媒質、例えば水とオイル)のそれぞれに被検物140を浸漬した状態で、レーザ光源100からの参照光を被検物140に入射させて該被検物140の透過波面を計測する。そして、コンピュータにより構成される演算部200において、上記計測された透過波面を用いて被検物140の屈折率分布を算出する。本実施例では、被検物140の透過波面を計測するための手段として、トールボット(Talbot)干渉計を使用する。

0016

液槽(被検物ケース)130には、水等の第1の媒質(図1には媒質1と示す)が充填されており、液槽131には、オイル等の第2の媒質(図1には媒質2と示す)が充填されている。これら液層130,131は、液槽交換機構150によって、後述する計測光路内の設置位置に対して交換が可能である。第1および第2の媒質の屈折率はともに、被検物140の屈折率とは異なる(望ましくは被検物140の屈折率より0.01以上小さい)。また、第2の媒質の屈折率は、第1の媒質の屈折率とは異なる(望ましくは0.01以上異なる)。

0017

レーザ光源(例えば、He−Neレーザ)100から光軸に沿って射出されたレーザ光101は、ピンホール光学部材)110を通過する際に回折する。ピンホール110で回折した回折光102は、コリメータレンズ(CL)120により参照光としての収束光103に変換される。液槽130が設置されている場合、収束光103は、液槽130内の第1の媒質と該第1の媒質中に浸漬された被検物140を透過する。

0018

本実施例では、被検物140は、その光軸周り回転対称なレンズであるとする。ピンホール110の直径φは、回折光102を理想球面波と見なせる程度に小さく、物体側の開口数NAOとレーザ光源100の波長λとを用いて、以下の式を満たすように設計されている。

0019

0020

この式より、λが600nmであり、NAOが0.3程度である場合は、ピンホール110の直径φは2μm程度となる。

0021

被検物140および液槽130内の第1の媒質を透過したレーザ光は、2次元回折格子である直交回折格子170を通って、検出器であるCCDセンサ180に到達する。レーザ光源100からCCDセンサ180までの光路を計測光路という。また、以下の説明において、液槽130、直交回折格子170およびCCDセンサ180をまとめて計測用光素子ともいう。

0022

被検物140の像側開口数が小さい場合、直交回折格子170とCCDセンサ180との間の距離Zが以下の式2で示されるTalbot条件を満たすと、CCDセンサ180上に回折格子170の偽解像(Talbot像)が干渉縞として形成される。干渉縞は、CCDセンサ180により撮像される。

0023

0024

直交回折格子170とCCDセンサ180との間の距離Zは、Talbot距離とも称される。mは0を除く整数であり、dは直交回折格子170の格子ピッチである。Z0は直交回折格子170から被検物140の像面までの距離である。例えば、被検物140からの射出光が平行光である場合、Z0は無限大になる。直交回折格子170の格子ピッチdは、被検物140の収差の大きさに応じて決められる。

0025

被検物140は平行偏心機構160によって光軸方向および光軸に直交する方向に移動可能である。また、コリメータレンズ120、直交回折格子170およびCCDセンサ180は、光軸方向に延びる不図示のレール上をそれぞれ移動可能である。

0026

図2には、CCDセンサ180による撮像によって取得された画像を用いて、被検物140の屈折率分布GIを計測(算出)する手順(屈折率分布計測方法)を示している。この計測は、図1に示した演算部200によりコンピュータプログラムに従って行われる。演算部200は、透過波面計測部、基準透過波面取得部、配置誤差算出部および屈折率分布算出部として機能する。ここでは、第1の媒質として水を用い、第2の媒質としてオイルを用いる場合を例として説明する。

0027

まず、ステップS10において、演算部200は、媒質として水(液槽130)を用いる場合とオイル(液槽131)を用いる場合のそれぞれにおいて計測に適した光学配置および後述する複数回の計測時における被検物140の平行移動量を決定する。光学配置とは、計測用光学素子であるピンホール110、コリメータレンズ120、液槽130(131)、直交回折格子170およびCCDセンサ180間の光軸方向での間隔である。

0028

Talbot干渉計において、CCD180センサ撮像面全体で直交回折格子170の偽解像を得るためには、開口数(NA)を0.3程度以下に抑える必要がある。そのため、光学配置を、CCDセンサ180に到達する光束のNAが0.3より小さく、CCDセンサ180上の光束サイズが適切になるように決める必要がある。また、後の工程においてCCDセンサ180上での位置と被検物140の位置とを関連付けるために、被検物140上の異なる位置を通った光がCCDセンサ180上で重ならないような光学配置を決定することも重要である。

0029

複数回の計測時における被検物140の平行移動量とは、1回の計測で被検物140の有効径の100%を計測できない場合に、有効径の端まで計測するために必要な被検物140の光軸に直交する方向への移動量である。本実施例では、決定された被検物140の平行移動量をSとする。計測回数は、水とオイルを媒質として用いるそれぞれの場合において、被検物140を平行移動させる前の配置状態で行う1回の計測と、被検物140を光軸に直交する4つの方向にそれぞれSだけ移動させた配置状態で行う4回の計測の計5回とする。

0030

続いて、ステップS20において、演算部200は、ステップS10で決定した光学配置において媒質として水とオイルを用いる場合における被検物140の配置状態(傾きおよび平行偏心)の変化に対する収差敏感度を計算する。収差敏感度とは、被検物140がある単位傾き角(例えば、0.1°)だけ傾いたり、ある単位偏心量(例えば、0.1mm)だけ平行偏心したりしたときにCCDセンサ180上で波面収差がどれだけ変化するかを数値表現したものである。被検物140は、本来、基準配置状態である傾きおよび平行偏心がない状態に配置されるべきであるが、実際の被検物140の配置状態には基準配置状態に対して傾きおよび平行偏心を含む配置誤差が生じる。

0031

ここにいう傾きおよび平行偏心(平行移動)は、光軸に直交する軸に対するものである。光軸に直交し、かつ互いに直交する2軸をここではx軸およびy軸と定義し、x軸およびy軸に対する傾きをそれぞれθx,θyとし、x軸方向およびy軸方向での平行偏心(量)をそれぞれx,yとする。上述した基準配置状態は、θx=0,θy=0,x=0,y=0の状態である。

0032

演算部200は、2つの媒質のそれぞれについて5回ずつ計測を行うことから、2×5=10の配置状態に対してそれぞれ、傾きθx,θyと平行偏心x,yの収差敏感度を計算する。各配置状態における波面収差をU(U1,U2,…,U10)とすると、収差敏感度は次式(3)により表現できる。

0033

0034

次に、ステップS30,S40(透過波面計測ステップ)において、演算部200は、媒質として水とオイルを用いた場合のそれぞれにおける被検物140の透過波面を、以下に示すサブルーチンAにより計測する。

0035

サブルーチンAは、媒質が水である場合とオイルである場合のそれぞれにおいて実行される工程であるが、ここでは媒質が水である場合を例として説明する。サブルーチンAは、以下の4つのステップにより構成される。

0036

まず、ステップA01では、演算部200は、図1に示した液槽交換機構150を駆動して、水が充填された液槽130を計測光路内に設置し、被検物140を液槽130内(つまりは水中)に挿入する。

0037

続いて、ステップA02では、演算部200は、ステップS10にて決定された、媒質が水である場合の光学配置に対応する位置に、計測用光学素子を設置する。このとき、被検物140は、平行偏心機構160により移動され、直交回折格子170およびCCDセンサ180は、不図示のレールに沿って移動される。図1には、被検物140の例として、負の光学パワーを有する凹レンズを示している。被検物140が正の光学パワーを有する凸レンズである場合は、被検物140をコリメータレンズ120による集光位置よりも後方(直交回折格子170側)に設置することで、CCDセンサ180上の光束を適切なサイズにすることができる。

0038

次に、ステップA03では、演算部200は、図1に示すTalbot干渉計において被検物140を水に浸した状態で、該被検物140の透過波面(第1の透過波面)を計測する。このステップには、CCDセンサ180による干渉縞の画像の取得と、透過波面の画像回復の処理とを含む。透過波面の画像回復(以下、波面回復ともいう)は、FFT高速フーリエ変換)法によって行う。FFT法による波面回復は、収差が干渉縞のキャリア縞を乱す性質を利用して、キャリア縞と収差とを分離する方法である。

0039

具体的には、干渉縞に対して2次元FFTを行うことにより、干渉縞を周波数マップに変換する。次に、周波数マップにおけるキャリア周波数の近傍部分のみを切り出して、キャリア周波数が原点になるように座標変換をした上で、iFFT(逆高速フーリエ変換)を行う。これにより、複素振幅マップ位相項が求められる。その結果得られた位相マップが、透過波面となる。なお、ステップS40中で行われるステップA03では、演算部200は、被検物140をオイルに浸した状態で、該被検物140の透過波面(第2の透過波面)を計測する。

0040

続いて、ステップA04では、演算部200は、計測回数が指定された回数(本実施例では5回)に達するまで、平行偏心機構160により被検物140を光軸に直交する4つの方向にそれぞれSだけ移動させる。そして、移動後の各配置状態にて被検物140の透過波面を計測する。

0041

このようにしてステップS30およびステップS40では、異なる媒質(水とオイル)のそれぞれにおいて5つずつの配置状態での被検物140の透過波面を得る。ここで得られた合計10の透過波面を、Wm1,Wm2,…,Wm10とする。

0042

次のステップS50(配置誤差算出ステップ)では、演算部200は、収差敏感度と透過波面の計測値とから、被検物140の基準配置状態に対する傾きおよび平行偏心量を算出する。ここでの傾きおよび平行偏心量の算出の考え方について説明する。

0043

まず、被検物140の傾きをΔθx,Δθyとし、平行偏心量をΔx,Δyとする。これら傾きΔθx,Δθyおよび平行偏心量をΔx,Δyが、被検物140の基準配置状態に対する配置誤差に相当する。このとき、各回の計測における被検物140の配置誤差の影響ΔUは、次式(4)で表される。

0044

0045

また、各透過波面の計測値Wmは次式(5)で表される。

0046

0047

このときψを下記の式(6)のように定義すると、

0048

0049

ψが最小になるように配置誤差であるΔθx,Δθy,Δx,Δyを決定すればよい。ψを最小にする配置誤差の決定方法としては、最小2乗法固有値分解法等の方法を用いることができる。これについては、後で詳しく説明する。

0050

以上の方法で求められる配置誤差の解は、透過波面の値を極小にする解である。すなわち、本実施例中の被検物140の配置誤差とは、ステップS20で収差敏感度を計算した際の被検物140の配置に対して透過波面の値を極小にする、被検物140の傾きおよび平行偏心量の変化量を示す。なお、透過波面の極小値が複数存在する場合においてはいずれの極小値であってもよいが、該複数の極小値のうち最小値が最も望ましい。

0051

また、通常は、被検物140の配置誤差と被検物140の形状成分や屈折率分布成分を分離して求めることはできない。しかし、本実施例では、媒質が水であるときの透過波面と媒質がオイルであるときの透過波面とを同時に極小にする解を計算するため、被検物140の形状成分や屈折率分布成分の影響を受けることなく、被検物140の配置誤差を計算することができる。

0052

続いて、ステップS60(基準透過波面取得ステップ)では、演算部200は、ステップS50で算出した配置誤差(傾きおよび平行偏心量)と既知の屈折率分布とを用いて、各媒質を用いた場合にCCDセンサ180により得られる透過波面を計算する。ここでは、コンピュータシミュレーションによって透過波面としてのシミュレーション波面Wsimを求める。すなわち、ステップS30,S40での計測時における被検物140の複数の配置状態(基準配置状態に対する配置誤差を含む配置状態)と同じ複数の配置状態に、屈折率分布が既知の被検物を配置したときの透過波面をシミュレーション波面Wsimとして計算する。既知の屈折率分布としては、適当な屈折率分布を仮定するか、屈折率分布がない(屈折率が一様な)理想的な屈折率分布を想定する。このように、既知の特定の屈折率分布を有する被検物を、基準被検物という。また、基準被検物の形状も既知であり、被検物140と同一形状である。

0053

なお、基準被検物の屈折率分布は設計値であってもよいし、計測値であってもよい。シミュレーション波面Wsimは、基準被検物の透過波面ということもできる。基準被検物内のある点(x,y)におけるシミュレーション波面Wsimは、以下の式(7)のように表される。

0054

本来は、各媒質を用いる場合の基準被検物の各配置状態に対してシミュレーション波面Wsimを求める必要があるが、各媒質における5つの配置状態については同じ数式で説明できる。このため、以下の説明では、媒質が水である場合とオイルである場合のシミュレーション波面Wsimをそれぞれ、代表値としての「Wsim水」と「Wsimオイル」と表記する。シミュレーション波面Wsim水が第1の基準透過波面に相当し、Wsimオイルが第2の基準透過波面に相当する。

0055

0056

L1〜L5は、図3(a)に示す基準被検物141内のある点(x,y)を通り、図3(b)に示すようにCCDセンサ180に到達する光線103aに沿った上記構成要素間の幾何学的距離である。図3には、媒質が水である場合を示している。N水は水の屈折率であり、Nオイルはオイルの屈折率である。Ngは基準被検物141の屈折率(既知の屈折率)を示す。すなわち、基準被検物141は、被検物140の屈折率分布を既知の値に置き換えたものと言える。なお、ここでは式を簡略化するため、液槽130の壁の厚さは無視している。

0057

ステップS70では、演算部200は、媒質が水である場合における被検物140の透過波面の計測値Wm水と基準被検物のシミュレーション波面Wsim水との差分値としての透過波面(波面収差)である差分波面W水を算出する。

0058

被検物140の透過波面の計測値Wm水には、(1)被検物140の屈折率分布、(2)被検物140の形状の影響、(3)被検物140の形状誤差の影響および(4)該装置の計測システムによるオフセットが含まれる。シミュレーション波面Wsim水には、上記のうち(2)被検物140の形状の影響および(4)該装置の計測システムによるオフセットが含まれる。このため、被検物140の透過波面の計測値Wm水と基準被検物のシミュレーション波面Wsim水との差分を算出することで、その残りである(1)被検物140の屈折率分布および(3)被検物140の形状誤差の影響を差分波面W水として算出することができる。

0059

また、演算部200は、同様にして、媒質がオイルである場合における被検物140の透過波面の計測値Wmオイルと基準被検物のシミュレーション波面Wsimオイルとの差分値としての透過波面(波面収差)である差分波面Wオイルを算出する。

0060

以下、ステップS70での計算を、数式を用いてさらに詳しく説明する。ステップS30およびステップS40にて計測された透過波面Wm水,Wmオイルは、式(7)により示したシミュレーション波面Wsim水,Wsimオイルと同様に、以下の式(8)で表される。

0061

0062

ただし、Nave(x,y)は、座標(x,y)における被検物140の光路方向に平均化された屈折率分布投影値を示す。dLは、座標(x,y)における被検物140の厚み誤差を示す。

0063

透過波面の計測値とシミュレーション波面Wsimの差分である差分波面W水,Wオイルは下記の式(9)で表される。なお、ここでは式を簡略化するため、屈折率Ngは被検物140の中心屈折率N(0,0)と等しいものとする。

0064

0065

次に、ステップS80では、演算部200は、差分波面W水と差分波面Wオイルとを用いて、以下の式(10)により、被検物140の形状成分であるdLが除去された該被検物140の屈折率分布投影値Nave(x,y)を算出する。ただし、ここでは、式(11)に示す近似を用いている。なお、本ステップS80と後述するステップS90が、屈折率分布算出ステップに相当する。

0066

0067

0068

ここまでの計算により、被検物140の5つの配置状態のそれぞれにおける該被検物140の屈折率分布投影値Nave(x,y)が求められる。

0069

最後のステップS90では、演算部200は、ステップS80にて得られた複数の屈折率分布投影値Nave(x,y)から3次元の屈折率分布を算出する。3次元屈折率分布の算出は、3次元の屈折率分布を表現する多項式係数を、これまでに求めた複数の屈折率分布投影値Nave(x,y)を再現するよう決定すればよい。以下にその例を示す。

0070

被検物140への入射光(収束光)103を100本の光線により表記したとき、屈折率分布投影値Naveは以下の式(12)で表すことができる。

0071

0072

ただし、Nave1〜Nave5はそれぞれ、5つの平行偏心位置における屈折率分布投影値を示す。また、求めたい3次元屈折率分布Pは、以下の式(13)により定義した12の多項式の係数で表現する。

0073

0074

式(13)で定義した多項式の係数がそれぞれ単位量であるときの屈折率分布投影値をVとすると、Vは以下の式(14)により表すことができる。

0075

0076

このとき、以下の等式(15)を満たすようにPを求めると、Pの各係数は、求めた複数の屈折率分布投影値を再現する係数となる。

0077

0078

式(15)からPを求めるために、例えば最小2乗法を用いる場合は、以下の式(16)のようにφを定義し、φ2が最も小さくなるようにPの各係数を決めればよい。

0079

0080

また、Pを求めるために、例えば固有値分解法を用いる場合は、V-1を求めることで、式(17)のようにPを直接求めることができる。

0081

0082

なお、

0083

0084

と定義して、φ2が最も小さくなるようにPの各係数を決める等、両者の組み合せを用いてもよい。これら以外にもPを求めるために、一般的に知られているどのような方法を用いてもよい。

0085

以上のようにして、被検物140の3次元屈折率分布Pを求めることで、本実施例における屈折率分布を計測(算出)する処理が終了する。

0086

以上説明したように、本実施例では、被検物の屈折率とは異なる屈折率(第1の屈折率)を有する第1の媒質中に被検物を配置した状態で該被検物に参照光を入射させて該被検物の第1の透過波面を計測する。また、被検物の屈折率および第1の屈折率とは異なる屈折率(第2の屈折率)を有する第2の媒質中に該被検物を配置した状態で該被検物に参照光を入射させて該被検物の第2の透過波面を計測する。これらの計測を、被検物の複数の配置状態においてそれぞれ行う。そして、すべての配置状態にて計測された第1および第2の透過波面と該被検物の収差敏感度とを用いて、該被検物の配置誤差を求める。

0087

さらに、形状および屈折率分布が既知である基準被検物を第1および第2の媒質中のそれぞれにおいて上記配置誤差を含む配置状態に配置したときに得られる第1および第2の基準透過波面を計算する。そして、複数の配置状態での各透過波面と各基準透過波面との差分から、被検物の屈折率分布投影値を求め、複数の配置状態における屈折率分布投影値を再現するように3次元の屈折率分布を表現する多項式の係数を求める。

0088

これにより、被検物が複雑な形状を有し、該被検物の配置誤差が大きい場合でも、その配置誤差を算出して屈折率分布の計算に反映することができ、配置誤差の修正のための再調整を行うことなく、被検物の内部屈折率分布を高精度に計測することができる。

0089

本実施例のように、透過波面を計測するための手段としてTalbot干渉計を用いることで、被検物と媒質との屈折率差によって生じる大きな収差を計測することができる。Talbot干渉計は、ラテラルシアリング干渉計一種であり、透過波面が横ずらし(シア)された自身の透過波面との差分を干渉縞として計測する。このため、シアリング干渉計は、透過波面の波面形状勾配(傾き)に相当する量を求めるための干渉計と言える。

0090

透過波面の横ずらし量は、シア量と呼び、シア量を小さくすることで、大きな透過波面収差に対しても、干渉縞が密にならない程度の小さい収差(シア波面)として計測が可能になる。

0091

シアリング干渉計では、一般に、シア量が小さすぎると、シア波面がノイズに埋もれて精度が低下するため、シア量は瞳の直径に対して3〜5%程度がよいとされる。しかし、本実施例では、大きな収差の透過波面を小さいシア波面で計測するために、シア量を1.5%以下、好ましくは0.4〜0.9%程度まで小さくするとよい。

0092

シア量shearは、Talbot距離Zと、CCDセンサ180上の干渉縞データの直径Dとを用いて、以下の式(19)により定義される。

0093

0094

この式(19)は、式(2)と直交回折格子170上の光束の直径D0とを用いて、以下の式(20)のようにも表せる。

0095

0096

式(20)から、シア量と直交回折格子170の格子ピッチdとは比例することが分かる。直交回折格子170の格子ピッチdは、式(2)から分かるように、Talbot距離Zにも影響を与えるため、装置の構成要素間での干渉を考えて決定する必要がある。例えば、m=1のとき、D0が10〜20mm程度であるとすると、格子ピッチdは40〜180μm程度が望ましい。

0097

なお、本実施例では、2種類の媒質が水とオイルである場合について説明したが、屈折率が0.01程度以上異なる2種類の媒質であれば、これらの媒質に限定されることはない。例えば被検物より大きい屈折率の媒質を用いるような場面にも適用可能である。また、2種類の媒質とは、同じ材料の温度を変えて屈折率を変えたものでもよい。

0098

また、本実施例では、Talbot干渉計を用いた場合について説明したが、ラテラルシアリング干渉計やラジアルシアリング干渉計等、他のシアリング干渉計を用いることもできる。

0099

本実施例では、3次元の屈折率分布を計測する方法について説明したが、被検物に光が通過した後の影響だけを評価したい場合には、式(10)で表される屈折率分布投影値を屈折率分布とみなしてもよい。また、屈折率投影値を屈折率分布とみなす場合には、式(10)を変形して、下記の式(21)で表されるW屈折率を屈折率分布とみなすこともできる。

0100

0101

W屈折率を屈折率分布とみなすことができる理由は、屈折率投影値NaveとW屈折率の関係が既知の物理量で関連付けられているためである。また、W屈折率は長さの次元を持つことから、W屈折率は屈折率分布の影響を表現する波面収差と呼ぶこともできる。このため、本実施例が示す屈折率分布計測方法は、無次元量である屈折率値の計測方法から屈折率分布の影響を表現する波面収差計測方法までを含む。

0102

以下、本発明の実施例2について、図4を用いて説明する。実施例1では屈折率が互いに異なる2種類の媒質中に被検物を配置して透過波面の計測を行ったが、本実施例では1種類の媒質中に被検物を配置し、波長が互いに異なる2種類の光源(参照光)を用いて透過波面の計測を行う。

0103

図4に示した屈折率分布計測装置は、He−Neレーザ(波長633nm)である光源1(第1の光源)と、YAGレーザの2倍高調波(波長532nm)を発する光源2(第2の光源)とを使用する。被検物140の周りの媒質は、詳しくは後述するが、被検物140よりも屈折率が小さく、空気よりも屈折率が大きい媒質であればよい。例えば、水や、屈折率が1.5〜1.8程度の低屈折率オイルでもよい。

0104

ピンホール110は、光源1および光源2から射出されたレーザ光を用いてそれぞれ、理想球面波を有する光としての第1の参照光および第2の参照光を生成する。参照光は被検物140を通過し、その透過波面が波面計測センサであるシャックハルトマンセンサ500により計測される。シャックハルトマンセンサ500は、図5に示すように、レンズアレイ501とCCDセンサ502とにより構成されている。

0105

実施例1と同様に、コリメータレンズ120、被検物140およびシャックハルトマンセンサ500は、光軸方向に延びる不図示のレール上をそれぞれ移動可能である。これらの計測用光学素子をレールに沿って移動させることで、被検物140に入射する光束を発散光束、平行光束および収束光束のいずれにも変更することができる。これにより、シャックハルトマンセンサ500に入射する光束の開口数(NA)を調節することができる。

0106

シャックハルトマンセンサを用いる場合、Talbot干渉計に比べて、センサに入射する光束のNAを厳しく管理する必要がある。しかし、シャックハルトマンセンサを用いる場合は、Talbot干渉計にて用いられる回折格子とCCDセンサ間の距離をTalbot距離に合わせる作業が不要になるため、センサ位置合わせが容易である。

0107

シャックハルトマンセンサ500は、レンズアレイ501に入射した光を、CCDセンサ502上に集光させる構造を有する。レンズアレイ501に傾いた透過波面が入射すると集光点の位置がずれる。シャックハルトマンセンサ500は、透過波面の傾きを集光点の位置ずれ換算して計測できるため、大きな収差を持つ波面の計測が可能である。

0108

また、本実施例の装置にも、被検物140を光軸方向および光軸に直交する方向に移動させる平行偏心機構160が設けられている。

0109

次に、図6を用いて、本実施例における屈折率分布の計測手順について説明する。この計測は、図4に示した演算部200によりコンピュータプログラムに従って行われる。演算部200は、透過波面計測部、基準透過波面取得部、配置誤差算出部および屈折率分布算出部として機能する。

0110

図6に示したステップの多くは実施例1(図2)に示したステップと同じであるため、ここでは実施例1と異なるステップを中心に説明する。図6におけるステップS30′およびステップS40′が、実施例1のステップS30およびステップS40と異なる。

0111

ステップS30′では、サブルーチンBを行う。まず、演算部200は、不図示の光源移動機構を駆動して光源1を所定の光源位置に配置(挿入)する(ステップB01)。

0112

次に、演算部200は、被検物140およびシャックハルトマンセンサ500の位置合わせを行う(ステップB02)。そして、光源1からの参照光をピンホール110を通して液槽130内の媒質中に配置された被検物140に入射させ、透過波面の計測を行う(ステップB03)。演算部200は、計測回数が指定回数になるまで、平行偏心機構160により被検物140を光軸に直交する4つの方向にそれぞれSだけ移動させる。そして、移動後の各配置状態にて被検物140の透過波面(第1の透過波面)W1を計測する(ステップB04)。

0113

続いてステップS40′では、光源1に代えて所定の光源位置に光源2を挿入してサブルーチンBを行い、透過波面(第2の透過波面)W2を計測する。

0114

その後は、実施例1で説明したステップS50〜ステップS90の処理を行うことで、被検物140の屈折率分布を算出することができる。ただし、ステップS70では、以下の式(22)で表される差分波面が得られる。

0115

0116

式(22)において、NaveHeNe(x,y)とNaveYAG(x,y)はそれぞれ、光源1(He−Neレーザ)と光源2(YAG2倍高調波)における被検物140内のある位置(x,y)における屈折率投影値を示す。NgHeNeとNgYAGはそれぞれ、光源1と光源2に対する被検物140の理想的な屈折率(基準被検物の屈折率)を示す。

0117

また、NoilHeNeとNoilYAGはそれぞれ、光源1と光源2に対する媒質の屈折率を示す。さらに、光源1に対する屈折率と光源2に対する屈折率には、以下の式(23)で示す近似関係があるものとする。

0118

0119

ステップS80では、以下の式(24)で表される屈折率投影値が求められる。

0120

0121

本実施例では、光源の波長を変えることにより、実質的に2種類の媒質中で被検物を計測する効果を得る。このため、式(23)と式(24)24はそれぞれ、実施例1に示した式(9)と式(10)と同じ意味を持つ。

0122

ここで、式(24)から、以下の式(25)で示すΨの値が大きいと、計測される透過波面W1,W2の誤差を低減できることが分かる。

0123

0124

例えば、媒質が空気である場合は、Noil≒1であるため、Ψ≒0となり、計測ができない。また、例えば、被検物の屈折率分布が波長によってあまり変化しないと見なせる場合は、NgYAG≒NgHeNeであるため、式(25)は、以下の式(26)で表すことができる。

0125

0126

この場合は、光源1と光源2に対する屈折率の差が大きい媒質を選べばよい。このようにΨを大きくするためには、被検物の屈折率も考慮して媒質を決定する必要がある。

0127

以上説明したように、本実施例では、被検物の屈折率とは異なる屈折率を有する媒質中に被検物を配置した状態で該被検物に第1の参照光を入射させて該被検物の第1の透過波面を計測する。また、同じ媒質中に該被検物を配置した状態で該被検物に第1の参照光とは波長が異なる第2の参照光を入射させて該被検物の第2の透過波面を計測する。これらの計測を、被検物の複数の配置状態においてそれぞれ行う。そして、すべての配置状態にて計測された第1および第2の透過波面と該被検物の収差敏感度とを用いて、該被検物の配置誤差を求める。

0128

さらに、形状および屈折率分布が既知である基準被検物を媒質中における上記配置誤差を含む配置状態に配置して第1および第2の参照光を入射させたときに得られる第1および第2の基準透過波面を計算する。そして、複数の配置状態での各透過波面と各基準透過波面との差分から、被検物の屈折率分布投影値を求め、複数の配置状態における屈折率分布投影値を再現するように3次元の屈折率分布を表現する多項式の係数を求める。

0129

これにより、被検物が複雑な形状を有し、該被検物の配置誤差が大きい場合でも、その配置誤差を算出して屈折率分布の計算に反映することができ、配置誤差の修正のための再調整を行うことなく、被検物の内部屈折率分布を高精度に計測することができる。

0130

本実施例の計測装置は、透過波面の波面形状の勾配又は光線の傾きに相当する量を計測可能であり、大きな収差を持つ透過波面においても、該勾配又は傾きを計測可能な物理量として検出することができるものであればよい。このため、シャックハルマン法に限らず、ハルトマン法やロンキーテストを用いた計測装置を用いてもよい。

0131

上記各実施例にて説明した計測装置(又は計測方法)による屈折率分布の計測結果を、レンズ等の光学素子の製造方法にフィードバックすることも可能である。図7には、モールド成形を利用した光学素子の製造方法の例を示している。

0132

光学素子は、光学素子の設計工程、金型の設計工程および該金型を用いた光学素子のモールド成形工程を経て製造される。成形された光学素子は、その形状精度が評価され、精度不足である場合は金型を補正して再度モールド成形を行う。形状精度が良好であれば、該光学素子の光学性能が評価される。この光学性能の評価工程に、図2図6を用いて説明した屈折率分布の計測手順を組み込むことで、高屈折率硝材によりモールド成形される光学素子の量産が可能になる。なお、光学性能が低い場合は、光学面を補正した光学素子を設計し直す。

実施例

0133

以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。

0134

光学素子等の被検物の屈折率分布を正確に算出することができる屈折率分布の計測方法および計測装置を提供できる。

0135

103参照光(収束光)
140被検物
150液槽交換機構
180CCDセンサ
200演算部

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