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技術 耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板

出願人 新日鐵住金ステンレス株式会社
発明者 神野憲博井上宜治濱田純一
出願日 2010年11月29日 (9年7ヶ月経過) 出願番号 2010-265015
公開日 2012年6月21日 (8年0ヶ月経過) 公開番号 2012-117084
状態 特許登録済
技術分野 薄鋼板の熱処理
主要キーワード 排気部品 排気部材 プレス成型性 破断延性 高温耐力 耐スケール剥離性 高温引張試験片 スケール剥離量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2012年6月21日)のものです。
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課題

1000℃付近高温でも高い耐酸化性および耐スケール剥離性を有するフェライト系ステンレス鋼板を提供する。

解決手段

C:0.020%以下、N:0.020%以下、Si:0.10超〜0.35%、Mn:0.10〜0.60%、Cr:16.5〜20.0%、Nb:0.30〜0.80%、Mo:2.50超〜3.50%、Cu:1.00〜2.50%を含有し、1000℃で200時間の大気中連続酸化試験後の酸化増量が4.0mg/cm2以下であり、スケール剥離量が1.0mg/cm2以下であることを特徴とする耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。W:2.0%以下、Ti:0.20%以下、B:0.0030%以下、Mg:0.0100%以下、Al:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Sn:1.00%以下、V:0.50%以下、Zr:1.0%以下、Hf:1.0%以下、Ta:3.0%以下の1種以上加えても良い。

概要

背景

自動車エキゾーストマニホールドなどの排気系部材は、エンジンから排出される高温排気ガスを通すため、排気部材を構成する材料には高温強度耐酸化性熱疲労特性など多様な特性が要求され、耐熱性に優れたフェライト系ステンレス鋼が用いられている。

排ガス温度は、車種によって異なるが、近年では800〜900℃程度が多く、エンジンから排出される高温の排気ガスを通すエキゾーストマニホールドの温度は750〜850℃と高温となる。しかし、近年の環境問題の高まりから、さらなる排ガス規制強化燃費向上が進められており、その結果、排ガス温度は1000℃付近まで高温化するものと考えられている。

近年使用されているフェライト系ステンレス鋼には、SUS429(Nb−Si添加鋼)、SUS444(Nb−Mo添加鋼)があり、Nb添加を基本に、Si、Moの添加によって高温強度および耐酸化性を向上させるものである。

排ガス温度の高温化に対応するために、様々な排気系部材の材料が開発されている。例えば、特許文献1〜4には、Cu−Mo−Nb−Mn−Si複合添加を行う技術が開示されている。特許文献1には、高温強度向上および靭性向上のためにCu−Mo添加、耐スケール剥離性向上のためにMn添加する技術が開示されている。0.6%以上のMn添加でスケール剥離量が減少することが示されているが、酸化増量に関して明記がなく、連続酸化試験の条件は1000℃×100時間であり、100時間を超えた場合の耐スケール剥離性は検討されていない。特許文献2では、Cu添加鋼の耐酸化性向上のために各添加元素を相互調整して鋼板表層のγ相の生成を抑制する技術が開示されており、950℃までの連続酸化試験結果が示されている。特許文献3には、高Cr含有鋼のSiおよびMnの含有量を最適化することによって繰り返し酸化特性飛躍的に向上させる方法が開示されているが、1000℃の繰り返し酸化試験の最高温度の総熱処理時間は約133時間程度であり、さらに長時間の耐酸化性の検討は行われていない。特許文献4には、低Cr含有鋼のMoおよびW量を調整することで高温強度および耐酸化性を向上させる技術が開示されているが、耐酸化性の評価は1000℃で200時間保持した場合の酸化増量のみであり、スケール剥離量は評価されていない。

発明者らは、直近、特許文献5において、Nb−Mo−Cu−Ti−Bの複合添加により、Laves相およびε−Cu相微細分散させ、850℃で優れた高温強度を得る技術を開示した。0.6%超のMn添加がスケール密着性や異常酸化抑制効果に寄与することも開示されている。本技術は、耐酸化性および耐スケール剥離性をSUS444と同等とする技術であり、850℃と950℃の酸化試験結果が示されている。

概要

1000℃付近の高温でも高い耐酸化性および耐スケール剥離性を有するフェライト系ステンレス鋼板を提供する。C:0.020%以下、N:0.020%以下、Si:0.10超〜0.35%、Mn:0.10〜0.60%、Cr:16.5〜20.0%、Nb:0.30〜0.80%、Mo:2.50超〜3.50%、Cu:1.00〜2.50%を含有し、1000℃で200時間の大気中連続酸化試験後の酸化増量が4.0mg/cm2以下であり、スケール剥離量が1.0mg/cm2以下であることを特徴とする耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。W:2.0%以下、Ti:0.20%以下、B:0.0030%以下、Mg:0.0100%以下、Al:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Sn:1.00%以下、V:0.50%以下、Zr:1.0%以下、Hf:1.0%以下、Ta:3.0%以下の1種以上加えても良い。

目的

本発明は、排気ガスの最高温度が1000℃程度になる環境下において、従来技術では達成できなかったより高い耐酸化性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%にて、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.10超〜0.35%、Mn:0.10〜0.60%、Cr:16.5〜20.0%、Nb:0.30〜0.80%、Mo:2.50超〜3.50%、Cu:1.00〜2.50%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるとともに、1000℃で200時間の大気中連続酸化試験後の酸化増量が4.0mg/cm2以下であり、スケール剥離量が1.0mg/cm2以下であることを特徴とする耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板

請求項2

質量%にて、W:2.0%以下、Ti:0.20%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。

請求項3

質量%にて、B:0.0030%以下、Mg:0.0100%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。

請求項4

質量%にて、Al:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Sn:1.00%以下、V:0.50%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。

請求項5

質量%にて、Zr:1.0%以下、Hf:1.0%以下、Ta:3.0%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。

技術分野

0001

本発明は、特に耐酸化性が必要な排気系部材などの使用に最適な耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板に関するものである。

背景技術

0002

自動車エキゾーストマニホールドなどの排気系部材は、エンジンから排出される高温排気ガスを通すため、排気部材を構成する材料には高温強度、耐酸化性、熱疲労特性など多様な特性が要求され、耐熱性に優れたフェライト系ステンレス鋼が用いられている。

0003

排ガス温度は、車種によって異なるが、近年では800〜900℃程度が多く、エンジンから排出される高温の排気ガスを通すエキゾーストマニホールドの温度は750〜850℃と高温となる。しかし、近年の環境問題の高まりから、さらなる排ガス規制強化燃費向上が進められており、その結果、排ガス温度は1000℃付近まで高温化するものと考えられている。

0004

近年使用されているフェライト系ステンレス鋼には、SUS429(Nb−Si添加鋼)、SUS444(Nb−Mo添加鋼)があり、Nb添加を基本に、Si、Moの添加によって高温強度および耐酸化性を向上させるものである。

0005

排ガス温度の高温化に対応するために、様々な排気系部材の材料が開発されている。例えば、特許文献1〜4には、Cu−Mo−Nb−Mn−Si複合添加を行う技術が開示されている。特許文献1には、高温強度向上および靭性向上のためにCu−Mo添加、耐スケール剥離性向上のためにMn添加する技術が開示されている。0.6%以上のMn添加でスケール剥離量が減少することが示されているが、酸化増量に関して明記がなく、連続酸化試験の条件は1000℃×100時間であり、100時間を超えた場合の耐スケール剥離性は検討されていない。特許文献2では、Cu添加鋼の耐酸化性向上のために各添加元素を相互調整して鋼板表層のγ相の生成を抑制する技術が開示されており、950℃までの連続酸化試験結果が示されている。特許文献3には、高Cr含有鋼のSiおよびMnの含有量を最適化することによって繰り返し酸化特性飛躍的に向上させる方法が開示されているが、1000℃の繰り返し酸化試験の最高温度の総熱処理時間は約133時間程度であり、さらに長時間の耐酸化性の検討は行われていない。特許文献4には、低Cr含有鋼のMoおよびW量を調整することで高温強度および耐酸化性を向上させる技術が開示されているが、耐酸化性の評価は1000℃で200時間保持した場合の酸化増量のみであり、スケール剥離量は評価されていない。

0006

発明者らは、直近、特許文献5において、Nb−Mo−Cu−Ti−Bの複合添加により、Laves相およびε−Cu相微細分散させ、850℃で優れた高温強度を得る技術を開示した。0.6%超のMn添加がスケール密着性や異常酸化抑制効果に寄与することも開示されている。本技術は、耐酸化性および耐スケール剥離性をSUS444と同等とする技術であり、850℃と950℃の酸化試験結果が示されている。

先行技術

0007

特許第2696584号公報
特開2009−235555号公報
特開2010−156039号公報
特開2009−1834号公報
特開2009−215648号公報

発明が解決しようとする課題

0008

従来技術を用いても、排ガス温度の850℃超の高温化、特に最高温度が1000℃程度になる環境下では、既存鋼種高耐熱鋼であるSUS444でも対応不可であり、SUS444以上の高温強度および耐酸化性を有するフェライト系ステンレス鋼が要望される。ここで耐酸化性とは、大気中連続酸化試験の酸化増量およびスケール剥離量で評価した場合に、ともに少ない場合に優れていると評価される。自動車排気系部材は高温で長期間使用されるため、1000℃で200時間保持した場合の優れた耐酸化性が必要となる。

0009

本発明は、排気ガスの最高温度が1000℃程度になる環境下において、従来技術では達成できなかったより高い耐酸化性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供することを課題とするものである。

課題を解決するための手段

0010

上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、Cu−Mo−Nb−Mn−Si添加鋼において、添加Cr量が16.5〜20%の場合、Mnの添加量を抑え一定の成分範囲に制御すると、1000℃長時間使用時の酸化増量およびスケール剥離量は少なく、酸化膜の長期安定性に優れることを見出した。

0011

図1および図2に16.6〜17.0%Cr−0.006〜0.009%C−0.15〜0.25%Si−0.10〜1.13%Mn−2.52〜2.60%Mo−1.35〜1.46%Cu−0.45〜0.48%Nb−0.010〜0.013%N鋼を用いて、1000℃で200時間の大気中連続酸化試験を行った場合の酸化増量およびスケール剥離量を示す。Mnの添加量が0.60%超となった鋼種では、酸化増量およびスケール剥離量が急激に増大していることがわかる。MnおよびSiの添加量を抑えた方が酸化膜の長期安定性に優れる理由は明確ではないが、酸化膜として生成される(Mn,Cr)3O4およびSiO2が長時間高温にさらされることによりその厚みが大きくなり、冷却される際の酸化膜と母相熱応力の差が、厚みの薄い場合よりも増加することにより、スケール剥離しやすくなると推察される。

0012

上記課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%にて、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.10超〜0.35%、Mn:0.10〜0.60%、Cr:16.5〜20.0%、Nb:0.30〜0.80%、Mo:2.50超〜3.50%、Cu:1.0〜2.5%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるとともに、1000℃で200時間の大気中連続酸化試験後の酸化増量が4.0mg/cm2以下であり、スケール剥離量が1.0mg/cm2以下であることを特徴とする耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(2)質量%にて、W:2.0%以下、Ti:0.20%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(3)質量%にて、B:0.0030%以下、Mg:0.0100%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(4)質量%にて、Al:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Sn:1.00%以下、V:0.50%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(5)質量%にて、Zr:1.0%以下、Hf:1.0%以下、Ta:3.0%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。

0013

ここで、下限の規定が無いものについては、不可避的不純物レベルまで含むことを示す。

発明の効果

0014

本発明によればSUS444以上の高温特性が得られ、即ち1000℃における耐酸化性がSUS444と同等以上のフェライト系ステンレス鋼を提供できる。特に自動車などの排気系部材に適用することにより、1000℃付近までの高温化に対応することが可能となる。

図面の簡単な説明

0015

添加Mn量と酸化増量との関係を示すグラフである。
添加Mn量とスケール剥離量との関係を示すグラフである。

0016

以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の限定理由について説明する。特に断らない限り、%は質量%を意味する。

0017

Cは、成形性と耐食性劣化させ、Nb炭窒化物析出を促進させて高温強度の低下をもたらす。その含有量は少ないほど良いため、0.02%以下とした。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、0.003%〜0.015%を望ましい範囲とする。

0018

NはCと同様、成形性と耐食性を劣化させ、Nb炭窒化物の析出を促進させて高温強度の低下をもたらす。その含有量は少ないほど良いため、0.02%以下とした。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、0.005〜0.02%を望ましい範囲とする。

0019

Siは、耐酸化性を改善するために非常に重要な元素である。また、脱酸剤としても有用な元素である。Si添加量が0.10%以下の場合、異常酸化が起こりやすい傾向となり、0.35%超ではスケール剥離が起こりやすい傾向となるので、Siの含有量は0.10超〜0.35%とした。しかし、高温強度に関して、Siは高温でLaves相と呼ばれるFeとNb,Moを主体とする金属間化合物の析出を促進させ、固溶Nb,Mo量を低下させて高温強度を低減させることが想定されるので、Siの上限は低い方が望ましい。Siの好適範囲として、0.10超〜0.25%が望ましい。

0020

Mnは、長時間使用中に保護性のある(Mn,Cr)3O4を表層部に形成し、スケール密着性や異常酸化抑制に寄与する非常に重要な元素である。その効果は0.10%以上で発現する。Mn含有量が0.10%未満の場合、長時間使用中に保護性のないFe3O4が表層部に形成し、異常酸化が生じやすくなる。一方、Mn含有量が0.60%超では、(Mn,Cr)3O4の酸化膜層が厚くなり、スケール剥離が起きやすくなるため、上限を0.60%とした。また、MnはMnSを形成して耐食性を低下させたり、常温均一伸びを低下させることを考慮すると、Mn含有量は0.10〜0.40%が望ましい。

0021

Crは、本発明において、耐酸化性確保のために必須な元素である。本発明では、16.5%以上であれば、1000℃で十分な耐酸化性を有するため、下限を16.5%とした。一方、20.0%超では加工性を低下させたり、靭性の劣化をもたらすため、Cr含有量を16.5〜20.0%とした。更に、高温延性製造コストを考慮すると16.8〜19.0%が望ましい。

0022

Nbは、固溶強化およびLaves相の微細析出による析出強化による高温強度向上のために必要な元素である。また、CやNを炭窒化物として固定し、製品板の耐食性やr値に影響する再結晶集合組織発達に寄与する役割もある。本発明のNb−Mo−Cu添加鋼においては、固溶Nb増および析出強化が0.30%以上のNb添加で得られることから、下限を0.30%とした。また、0.80%超の過度な添加はLaves相の粗大化を促進して高温強度には寄与せず、かつコスト増になることから、上限を0.80%とした。Nb含有量は0.30〜0.80%である。更に、製造性およびコストを考慮すると、Nb含有量は0.40〜0.70%が望ましい。

0023

Moは、耐食性を向上させるとともに、高温酸化を抑制、Laves相の微細析出による析出強化および固溶強化による高温強度向上に対して有効である。しかし、過度な添加はLaves相の粗大析出を促進し、析出強化能を低下させ、また加工性を劣化させる。本発明では先述したNb−Mo−Cu添加鋼で、1000℃の高温酸化抑制、固溶Mo増および析出強化が2.50%超のMo添加で得られることから、下限を2.50%超とした。しかし、3.50%超の過度な添加はLaves相の粗大化を促進して高温強度には寄与せず、かつコスト増になることから、上限を3.50%とした。Mo含有量は2.50%超〜3.50%である。更に、製造性およびコストを考慮すると、Mo含有量は2.60〜3.20%が望ましい。

0024

Cuは、高温強度向上に有効な元素である。これは、ε−Cuが析出することによる析出硬化作用であり、1.00%以上の添加により著しく発揮する。一方、過度な添加は、均一伸びの低下や常温耐力が高くなりすぎてプレス成型性に支障が生じる。また、2.50%以上添加すると高温域オーステナイト相が形成されて表面に異常酸化が生じるため上限を2.50%とした。Cu含有量は1.00〜2.50%である。製造性やスケール密着性を考慮すると、Cu含有量は1.20〜1.80%が望ましい。

0025

1000℃×200時間の大気中連続酸化試験における酸化増量が4.0mg/cm2超になると、酸化膜が厚くなりすぎてスケール剥離を促進する。スケール剥離量が1.0mg/cm2超となると、自動車の排気系材料として使用した場合、肉厚減が顕著となるため、使用することが不可能となる。したがって、上記試験の酸化増量およびスケール剥離量を、それぞれ4.0mg/cm2以下および1.0mg/cm2以下とする必要がある。

0026

また、高温強度等諸特性を更に向上させるため、必要に応じ以下の元素を添加することができる。

0027

Wは、Moと同様な効果を有し、高温強度を向上させる元素である。ただし、過度に添加するとLaves相中に固溶し、析出物を粗大化させてしまうとともに製造性および加工性を劣化させるため、上限を2.0%とした。更に、コストや耐酸化性等を考慮すると、W含有量は0.10〜1.50%が望ましい。

0028

Tiは、Nb−Mo鋼において、適量添加することによりNb、Moの冷延焼鈍板時の固溶量増加、高温強度の向上および高温延性の向上に寄与する元素である。ただし、0.20%超の添加により、固溶Ti量が増加して均一伸びを低下させる他、粗大なTi系析出物を形成し、加工時の割れの起点になり、加工性を劣化させてしまうので、上限を0.20%とした。更に、表面疵の発生や靭性を考慮するとTi含有量は0.05〜0.15%が望ましい。

0029

Bは、製品プレス加工時の2次加工性を向上させる元素でもある。ただし、過度な添加は硬質化や粒界腐食性を劣化させるため、上限を0.0030%とした。更に、成型性や製造コストを考慮すると、B含有量は0.0003〜0.0020%が望ましい。

0030

Mgは、2次加工性を改善させる元素である。しかしながら、0.0100%超の添加をすると加工性が著しく劣化するため、上限を0.0100%とした。更に、コストや表面品位を考慮すると、Mg含有量は0.0002〜0.0010%が望ましい。

0031

Alは、脱酸元素として添加される他、耐酸化性を向上させる元素である。また、固溶強化元素としての強度向上に有用である。その作用は0.10%から安定して発現するが、過度の添加は硬質化して均一伸びを著しく低下させる他、靭性が著しく低下するため、上限を1.0%とした。更に、表面疵の発生や溶接性、製造性を考慮すると、Al含有量は0.10〜0.30%が望ましい。なお、脱酸の目的でAlを添加する場合、鋼中に0.10%未満のAlが不可避的不純物として残存する。

0032

Niは、耐食性を向上させる元素であるが、過度の添加は高温域でオーステナイト相が形成されて表面に異常酸化およびスケール剥離が生じるため、上限を1.0%とした。また、その作用は0.1%から安定して発現するが、製造コストを考慮すると、Ni含有量は0.1〜0.6%が望ましい。

0033

Snは、原子半径が大きいため、固溶強化により高温強度にも寄与する有効な元素である。また、常温の機械的特性を大きく劣化させない。しかしながら、1.00%超添加すると製造性および加工性が著しく劣化するため、1.00%以下とした。更に、耐酸化性等を考慮すると、Sn含有量は0.05〜0.30%が望ましい。

0034

Vは、Nbと共に微細な炭窒化物を形成し、析出強化作用が生じて高温強度向上に寄与する。しかしながら、0.50%超添加するとNbおよびV炭窒化物が粗大化して高温強度が低下し加工性が低下してしまうため、上限を0.50%とした。更に、製造コストや製造性を考慮すると、V含有量は0.05〜0.20%が望ましい。

0035

Zrは耐酸化性を改善する元素である。しかしながら、1.0%超の添加により粗大なLaves相が析出し、製造性および加工性の劣化が著しくなるため、1.0%以下とした。更に、コストや表面品位を考慮すると、Zr含有量は0.05〜0.50%が望ましい。

0036

HfはZrと同様、耐酸化性を改善する元素である。しかしながら、1.0%超の添加により粗大なLaves相が析出し、製造性および加工性の劣化が著しくなるため、1.0%以下とした。更に、コストや表面品位を考慮すると、Hf含有量は0.05〜0.50%が望ましい。

0037

TaはZrおよびHfと同様、耐酸化性を改善する元素である。しかしながら、3.0%超の添加により粗大なLaves相が析出し、製造性および加工性の劣化が著しくなるため、3.0%以下とした。更に、コストや表面品位を考慮すると、Ta含有量は0.05〜1.00%が望ましい。

0038

鋼板の製造方法については、一般的なフェライト系ステンレス鋼の製造方法で製造することが出来る。例えば、本発明範囲の組成を有するフェライト系ステンレス鋼を溶解してスラブを製造し、1000〜1200℃に加熱後、1100〜700℃の範囲で熱延し、4〜6mmの熱延板を製造する。その後、800〜1100℃で焼鈍の後に酸洗を行い、その焼鈍酸洗板を冷延し、1.0〜2.5mmの冷延板を作製した後に、900〜1100℃で仕上焼鈍後、酸洗を行う工程によって鋼板を製造することが可能である。ただし、仕上焼鈍後の冷却速度においては、冷却速度が遅い場合、Laves相などの析出物が多く析出するため、高温強度が低下し、常温延性等の加工性が劣化する可能性がある。そのため、最終焼鈍温度から600℃までの平均冷却速度が、5℃/sec以上に制御した方が望ましい。また、熱延板熱延条件、熱延板厚、熱延板焼鈍の有無、冷延条件、熱延板および冷延板焼鈍温度、雰囲気などは適宜選択すれば良い。また、冷延・焼鈍を複数回繰り返したり、冷延・焼鈍後に調質圧延テンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。

0039

サンプ作成方法
表1、表2に示す成分組成の鋼を溶製して50kgのスラブに鋳造し、スラブを1100〜700℃で熱間圧延して5mm厚の熱延板とした。その後、熱延板を900〜1000℃で焼鈍した後に酸洗を施し、2mm厚まで冷間圧延し、焼鈍・酸洗を施して製品板とした。冷延板の焼鈍温度は、1000〜1200℃とした。表1のNo.1〜23は本発明例、表2のNo.24〜48は比較例である。

0040

耐酸化性試験方法>
このようにして得られたステンレス鋼板から20mm×20mm×板厚ままのサイズの酸化試験片を作製し、大気中1000℃で200時間の連続酸化試験を行い、異常酸化とスケール剥離の発生有無を評価した(JIS Z 2281に準拠)。なお、酸化増量およびスケール剥離量は、剥離した酸化皮膜回収して評価した。酸化増量が4.0mg/cm2以下であれば、異常酸化なしと評価して○、それ以外を異常酸化ありと評価して×と表中に標記した。また、スケール剥離量が1.0mg/cm2以下であれば、スケール剥離が少ないと評価して○、スケール剥離がなければ◎、それ以外をスケール剥離が多いと評価して×と表中に標記した。

0041

高温引張試験方法>
製品板から圧延方向を長手方向とする長さ100mmの高温引張試験片を作製し、1000℃で引張試験を行い、0.2%耐力を測定した(JIS G 0567に準拠)。ここで、1000℃の0.2%耐力が15MPa以上の場合は○、15MPa未満の場合は×と表中に標記した。

0042

<常温の加工性評価方法>
JIS Z 2201に準拠して圧延方向と平行方向を長手方向とするJIS13B号試験片を作製した。これらの試験片を用いて引張試験を行い、破断伸びを測定した(JIS Z 2241に準拠)。ここで、常温での破断伸びは30%以上あれば、一般的な排気部品への加工が可能なため、30%以上の破断伸びを有した場合は○、30%未満の場合は×と表中に標記した。

0043

0044

実施例

0045

<評価結果>
表1、表2から明らかなように、本発明で規定する成分組成を有する鋼は、比較例に比べて1000℃における酸化増量やスケール剥離量が少なく、高温耐力も優れていることがわかる。また、常温での機械的性質において破断延性が良好となり、比較例と同等以上の加工性を有することがわかる。成分範囲が好適範囲にある本発明例(No.1,2,8,10,11,14,17,21−23)においては、特に特性が良好であり、スケール剥離が観察されなかった。No.5はCr含有量が高いため、好適範囲外であるがスケール剥離が観察されなかった。No.24,25鋼では、それぞれC,Nが上限を外れているため、1000℃の耐力および常温延性が本発明例に比べて低い。No.26鋼はSiが下限を外れており、酸化増量が本発明例に比べて多い。No.27鋼は、Siが上限を外れており、スケール剥離量が本発明例に比べて多く、高温耐力も劣っている。No.28および30鋼は、それぞれMnおよびCrが下限を外れており、酸化増量およびスケール剥離量が本発明例に比べて多い。No.29鋼はMnが過剰に添加されてスケール剥離性が劣るとともに、常温における延性が低い。No.31鋼は、Crが上限を外れており、酸化増量およびスケール剥離量が少ないものの、常温延性が低い。No.32、34および36鋼は、それぞれNb、MoおよびCuが下限を外れており、1000℃の耐力が低い。No.33および35鋼は、それぞれNbおよびMoが上限を外れており、酸化増量およびスケール剥離量が少ないものの常温延性が低い。No.37鋼は、Cuが上限を外れており、酸化増量が多く、常温延性も劣っている。No.38〜42、44〜48は、それぞれW,Ti,B,Mg,Al,Sn,V,Zr,Hf,Taが上限を外れており、酸化増量およびスケール剥離量が少ないものの常温延性が低い。No.43鋼はNiが上限を外れており、耐酸化性が本発明例に比べて低い。

0046

本発明のフェライト系ステンレス鋼は耐熱性に優れるため、自動車排気系部材以外にも発電プラント排気ガス経路部材としても用いることができる。さらに、耐食性の向上に有効であるMoを添加しているので、耐食性が必要である用途にも用いることができる。

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