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技術 溶銑の脱硫剤及び脱硫方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 柿本昌平清瀬明人谷口剛教
出願日 2011年9月1日 (7年10ヶ月経過) 出願番号 2011-190535
公開日 2012年4月26日 (7年2ヶ月経過) 公開番号 2012-082513
状態 特許登録済
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼
主要キーワード MgO分 Na分 蒸発ロス aガス 使用量削減 焼成ドロマイト 低融点相 MgO系耐火物
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

極低硫鋼の安定的な製造に寄与するともに、耐火物溶損への影響が小さい脱硫材と、該脱硫材を用いる溶銑脱硫方法を提供する。

解決手段

質量比で、CaO1に対し、Al2O3分が0.30〜0.8、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.05〜0.44で、さらに、MgO1に対し、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする溶銑の脱硫剤を用いて、溶銑を脱硫する。

概要

背景

溶銑脱硫処理は、CaOを主成分として、特許文献1に開示のCaF2を混合した脱硫剤を用いることが一般的に知られている。これは、CaO単独では、融点が約2500℃程度と高く、溶銑との反応性が悪いため、CaF2を添加して融点を低下させて、溶銑との反応性を改善するためである。

しかし、近年、耐火物溶損の抑制や、地球環境保護のため、これまで使用してきたCaF2の使用が制限されるようになった。今後、低硫黄濃度の鋼に対するニーズが増加する傾向に対処するには、CaF2を削減した脱硫剤、又は、CaF2を含有しない脱硫剤を開発する必要がある。

このような課題を解決する手段として、特許文献2には、溶銑脱硫処理を対象に、CaO1重量部に対して、Na2O分を0.02〜0.05重量部、Al2O3分を0.05〜0.20重量部添加し、Na2O分として、硝子カレット、又は、メタ珪酸ソーダを使用したことを特徴とする溶銑の脱硫剤が開示されている。

また、特許文献3には、溶鋼脱硫処理を対象に、CaO=30〜60質量%、MgO=3〜10質量%、Al2O3=25〜50質量%、SiO2=2〜15質量%の成分を有し、融点を1300℃〜1600℃として流動性を良好にしたことを特徴とするカルシュウムアルミネート系脱硫剤が開示されている。

概要

極低硫鋼の安定的な製造に寄与するともに、耐火物の溶損への影響が小さい脱硫材と、該脱硫材を用いる溶銑の脱硫方法を提供する。質量比で、CaO1に対し、Al2O3分が0.30〜0.8、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.05〜0.44で、さらに、MgO1に対し、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする溶銑の脱硫剤を用いて、溶銑を脱硫する。なし

目的

本発明は、極低硫鋼の安定的な製造に寄与するともに、耐火物の溶損への影響が小さい脱硫材と、該脱硫材を用いる溶銑の脱硫方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量比で、CaO1に対し、Al2O3分が0.30〜0.80、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.05〜0.44で、さらに、MgO1に対し、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする溶銑の脱硫剤

請求項2

質量比で、CaO1に対し、Al2O3分が0.30〜0.80、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.35〜0.44で、さらに、MgO1に対し、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする溶銑の脱硫剤

請求項3

請求項1又は2に記載の溶銑の脱硫剤に、さらに、金属Mgを、Mg換算で1〜15質量%添加したことを特徴とする溶銑の脱硫剤。

請求項4

請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫剤に、さらに、金属Alを、Al換算で1〜10質量%添加したことを特徴とする溶銑の脱硫剤。

請求項5

前記MgO分として、焼成ドロマイト焼成ブルーサイト、及び、MgO系耐火物の1種又は2種以上を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫剤。

請求項6

前記Na2O分として、ソーダ石灰ガラス及び珪酸ソーダの1種又は2種を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶銑の脱硫剤。

請求項7

請求項1又は2に記載の溶銑の脱硫剤を用いて脱硫処理することを特徴とする溶銑の脱硫方法

請求項8

請求項3〜6に記載の溶銑の脱硫剤を用いて脱硫処理することを特徴とする溶銑の脱硫方法

技術分野

0001

本発明は、溶銑脱硫処理を行う際に用いる脱硫剤及び脱硫方法に関する。

背景技術

0002

溶銑の脱硫処理は、CaOを主成分として、特許文献1に開示のCaF2を混合した脱硫剤を用いることが一般的に知られている。これは、CaO単独では、融点が約2500℃程度と高く、溶銑との反応性が悪いため、CaF2を添加して融点を低下させて、溶銑との反応性を改善するためである。

0003

しかし、近年、耐火物溶損の抑制や、地球環境保護のため、これまで使用してきたCaF2の使用が制限されるようになった。今後、低硫黄濃度の鋼に対するニーズが増加する傾向に対処するには、CaF2を削減した脱硫剤、又は、CaF2を含有しない脱硫剤を開発する必要がある。

0004

このような課題を解決する手段として、特許文献2には、溶銑脱硫処理を対象に、CaO1重量部に対して、Na2O分を0.02〜0.05重量部、Al2O3分を0.05〜0.20重量部添加し、Na2O分として、硝子カレット、又は、メタ珪酸ソーダを使用したことを特徴とする溶銑の脱硫剤が開示されている。

0005

また、特許文献3には、溶鋼脱硫処理を対象に、CaO=30〜60質量%、MgO=3〜10質量%、Al2O3=25〜50質量%、SiO2=2〜15質量%の成分を有し、融点を1300℃〜1600℃として流動性を良好にしたことを特徴とするカルシュウムアルミネート系脱硫剤が開示されている。

先行技術

0006

特公昭55−51402号公報
特許第4414562号公報
特開2003−60832号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上記特許文献開示の脱硫剤では、以下の課題がある。

0008

構材や、UOラインパイプは、厚手・高強度・高靭性化に対応するため、中心偏析低減対策とともに、精錬工程での低硫化対策が極めて重要である。このような極低硫鋼においては、溶銑脱硫処理で、安定的に50ppm以下までSを低減することが要求される。

0009

しかし、特許文献2記載の脱硫剤をガス撹拌方式の脱硫装置内の溶銑中に添加し脱硫処理したところ、安定的に50ppm以下にすることができなかった。これは、特許文献2記載の脱硫剤は、液相率が多すぎると脱硫能を阻害してしまう機械撹拌処理を前提とした脱硫剤であり、上記ガス撹拌方式とは脱硫挙動が異なるためと考えられる。さらには、Na2Oにより、耐火物が著しく溶損したことから、極低硫鋼の安定製造が困難であった。

0010

また、特許文献3記載の脱硫剤をガス撹拌方式の脱硫装置内の溶銑中に添加し脱硫処理したところ、安定的に50ppm以下にすることができなかった。SEM/EDS(走査型電子顕微鏡エネルギー分散X線分析装置)を用いて脱硫処理後スラグ観察を行ったところ、1350〜1400℃の溶銑脱硫実験では、スラグ中に未滓化のCaOが存在していたことから、脱硫剤を十分に滓化できなかったことが原因の一つと考えられる。

0011

また、低融点スラグ中に、Sが0.1〜2%程度と少量しか固定できていなかったことから、低融点スラグの脱硫能が低かったことも原因の一つと考えられる。さらに、1400〜1450℃の溶銑脱硫実験では、低融点スラグ中に、Sが0.1〜2%程度と少量しか固定できていなかったことから、低融点スラグの脱硫能が低かったことが原因と考えられる。

0012

そこで、本発明は、極低硫鋼の安定的な製造に寄与するともに、耐火物の溶損への影響が小さい脱硫材と、該脱硫材を用いる溶銑の脱硫方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

本発明者らは、極低硫鋼を安定的に製造する技術を確立するため、CaF2を使用せずに高い脱硫効率が得られ、かつ、耐火物の溶損への影響が小さい脱硫剤について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOを適正な組成範囲で混合して用いると、耐火物の溶損が抑制され、高い脱硫能が得られることを見いだした。

0014

本発明は、上記知見に基づくもので、その要旨は、以下の通りである。

0015

(1)質量比で、CaO1に対し、Al2O3分が0.30〜0.80、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.05〜0.44で、さらに、MgO1に対し、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする溶銑の脱硫剤。

0016

(2)質量比で、CaO1に対し、Al2O3分が0.30〜0.80、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.35〜0.44で、さらに、MgO1に対し、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする溶銑の脱硫剤。

0017

(3)前記(1)又は(2)に記載の溶銑の脱硫剤に、さらに、金属Mgを、Mg換算で1〜15質量%添加したことを特徴とする溶銑の脱硫剤。

0018

(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶銑の脱硫剤に、さらに、金属Alを、Al換算で1〜10質量%添加したことを特徴とする溶銑の脱硫剤。

0019

(5)前記MgO分として、焼成ドロマイト焼成ブルーサイト、及び、MgO系耐火物の1種又は2種以上を使用することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶銑の脱硫剤。

0020

(6)前記Na2O分として、ソーダ石灰ガラス及び珪酸ソーダの1種又は2種を使用することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の溶銑の脱硫剤。

0021

(7)前記(1)又は(2)に記載の溶銑の脱硫剤を用いて脱硫処理することを特徴とする溶銑の脱硫方法。

0022

(8)前記(3)〜(6)に記載の溶銑の脱硫剤を用いて脱硫処理することを特徴とする溶銑の脱硫方法。

発明の効果

0023

本発明によれば、耐火物の溶損が抑制され、高い脱硫能が得られるので、極低硫鋼を安定的に製造することが可能となる。

0024

本発明の溶銑の脱硫剤(以下「本発明脱硫剤」ということがある。)は、質量比で、CaO1に対して、Al2O3分が0.30〜0.80、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.05〜0.44(さらに、耐火物溶損を低減する場合、好ましくは、0.35〜0.44)で、さらに、MgO1に対して、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物であることを特徴とする。

0025

そして、本発明脱硫剤は、耐火物の溶損への影響が小さく、溶銑の脱硫に用いると、安定的に、S≦50ppmを達成できるものである。

0026

以下に、本発明について詳細に説明する。

0027

鋼中のSは、Caとの親和力が高いので、低コストで、高効率脱硫を指向する場合は、CaOを主成分とする脱硫剤を用いることが好ましい。しかし、固体のCaOとSの反応は、Sの固体内での物質移動が遅いので、処理温度において固体CaOが主成分となる脱硫剤に、高い脱硫能を期待することはできない。

0028

脱硫能を向上させるためには、溶銑脱硫処理温度である1300〜1500℃で、CaOを溶融し、S吸収能に優れるスラグを生成することが重要である。即ち、CaO活量高位に維持した低融点スラグを生成することが好ましい。

0029

本発明者らは、以下の理由で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOを用いた脱硫剤に着目し、これら成分を適正な組成範囲で混合して用いると、耐火物の溶損が抑制され、高い脱硫能が得られることを見いだした。

0030

通常、溶銑の脱硫処理で、CaF2を使用しない条件下では、CaO、Al2O3、及び、SiO2を併用した脱硫剤が用いられる。この脱硫剤は、CaOとCaF2を併用した脱硫剤に比べ、脱硫能が低く、低硫鋼を安定して溶製することができない。

0031

しかし、さらに、Na2OとMgOを併用して添加すると、高い脱硫効率が得られることが期待できる。これは、CaO、Al2O3、及び、SiO2に対し、Na2OとMgOを併用して添加すると、Na2OとMgOを、それぞれ単独で添加した場合に比べ、さらに融点が低下するからである。

0032

さらに、Na2Oは、アルカリ金属酸化物でありスラグ中で、下記式(1)によって、イオン解離する。
(Na2O)→2(Na2+)+(O2-) ・・・(1)

0033

イオン解離が進み(O2-)濃度が高くなると、スラグ−メタル間のイオン交換反応を示す下記式(2)により、脱硫が促進される。
[S]+(O2-)→(S2-)+[O] ・・・(2)

0034

さらに、Na2Oは、スラグの粘性を大きく低下させることが知られており、スラグの滓化とスラグ中のSの物質移動が促進されて、高い脱硫能が得られることが期待できる。

0035

また、MgOは、アルカリ土類金属の酸化物であり、スラグ中で、下記式(3)の反応によって、イオン解離する。
(MgO)→(Mg2+)+(O2-) ・・・(3)

0036

イオン解離が進み、(O2-)濃度が高くなると、スラグ−メタル間のイオン交換反応を示す上記式(2)により、脱硫が促進される。さらに、MgOは、スラグの粘性を低下させるため、スラグの滓化とスラグ中のSの物質移動が促進されて、高い脱硫能が得られることが期待できる。

0037

また、脱硫剤中にNa2Oを単独で添加した場合、耐火物の溶損が進行するが、脱硫剤中にMgOが一定量以上存在すると、耐火物の溶損が抑制される。ここで、耐火物は、MgOを主成分(80質量%以上)とする、製鋼工程で一般的に用いられる耐火物である。

0038

しかし、Na2Oに対して過剰にMgO濃度を高めると、固体MgOが生成するため、脱硫能が低下する。高脱硫能と耐火物溶損抑制を維持するためには、MgOとNa2Oを適切な濃度に制御する必要がある。

0039

次に、本発明脱硫剤の成分、質量比、及び、質量%の限定理由について説明する。

0040

Al2O3:
Al2O3は、スラグの低融点化に寄与する。溶銑の脱硫処理温度で、安定的に低融点相を形成し、CaO飽和領域において低融点相を形成するために、質量比で、CaO1に対しAl2O3分を0.30以上とする必要がある。好ましくは0.40以上である。

0041

一方、Al2O3分が高すぎて0.80を超えると、脱硫能が低下するので、CaO1に対するAl2O3分は0.80以下とする。好ましくは0.70以下である。

0042

Na2O:
Na2Oは、スラグの低融点化に寄与し、さらに、スラグ中でのO2-放出や、スラグの粘性低下に寄与し、脱硫能を向上させる。添加効果は、質量比で、CaO1に対するNa2O分が0.04以上のときに発現するので、下限を0.04とする。好ましくは0.08以上である。

0043

一方、Na2O分が高すぎると、気化損失が起こり、精錬効率が低下するので、CaO1に対するNa2O分は0.35以下とする。好ましくは0.30以下である。

0044

また、Na2Oは、MgOの溶解度に影響を与えるので、脱硫能の向上や耐火物保護のため、MgOと併用することが重要である。添加したMgOを安定的に溶解するためには、質量比で、MgO1に対して、Na2O分を0.50以上とする必要がある。好ましくは0.70以上である。

0045

一方、Na2O分が高すぎると耐火物が溶損し、気化損失が起こり、精錬効率が低下するので、MgO1に対するNa2O分は3.00以下とする。好ましくは2.50以下である。

0046

SiO2:
SiO2は、スラグの低融点化に寄与する。溶銑の脱硫処理温度で、安定的に低融点相を形成し、CaO飽和領域において低融点相を形成するために、質量比で、CaO1に対しSiO2分を0.05以上とする必要がある。好ましくは0.10以上である。

0047

一方、SiO2分が高すぎて0.30を超えると、脱硫能が低下するので、CaO1に対するSiO2分は0.30以下とする。好ましくは0.26以下である。

0048

MgO:
MgOは、スラグの低融点化に寄与し、さらに、スラグ中へのO2-放出や、スラグの粘性低下に寄与し、脱硫能を向上させる。溶銑の脱硫処理温度で、安定的に低融点相を形成し、CaO飽和領域において低融点相を形成するために、質量比で、CaO1に対しMgO分を0.05以上とする必要がある。好ましくは0.07以上である。

0049

また、MgOの添加は、耐火物保護の点で有効であり、耐火物溶損を抑制したい場合は、質量比で、CaO1に対しMgO分を0.35以上とすることが好ましい。

0050

一方、MgO分が高すぎて0.44を超えると、脱硫能が低下するので、CaO1に対するMgO分は0.44以下とする。好ましくは0.40以下である。なお、Na2Oとの関係は前述のとおりである。

0051

CaO:
CaOは、塩基性酸化物であり、スラグの脱硫能を高める基本的な酸化物として欠かせない。溶銑の脱硫処理温度で、CaO飽和領域において低融点相を形成するためには、CaOに対するAl2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの組成を制御する必要がある。本発明脱硫剤では、CaOに対するAl2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの質量比を、上記のように規定した。

0052

なお、脱硫剤中の不可避的不純物は、脱硫促進の観点から微量であることが好ましい。

0053

質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上のとき、本発明の効果が発現する。上記合計が95%以上のとき、本発明の効果が顕著に発現する。

0054

本発明脱硫剤においては、MgO分として、焼成ドロマイト、焼成ブルーサイト、MgO系耐火物等を用いることができる。焼成ドロマイトは、ドロマイトを焼成したものであり、その組成は、Ca分が、CaO換算で55〜80質量%、Mg分が、MgO換算で25〜45質量%、残部が不可避的不純物である。

0055

焼成ブルーサイトは、ブルーサイトを焼成したものであり、その組成は、Mg分がMgO換算で75〜95質量%で、残部が不可避的不純物である。ドロマイト及びブルーサイトは、高温で長時間焼成すると、MgO粒が粗大化するので、微細な状態を維持する温度範囲で焼成することが好ましい。MgO系耐火物は、Mg分を、MgO換算で80質量%以上含有するものである。

0056

本発明脱硫剤においては、Na2O分として、ソーダ石灰ガラス、珪酸ソーダ、ソーダ灰等を用いることができる。ソーダ石灰ガラスは、Si分を、SiO2換算で65〜90質量%、Na分を、Na2O換算で10〜45質量%含み、残部がCaO及び不可避的不純物である。珪酸ソーダは、Si分を、SiO2換算で35〜75質量%、Na分を、Na2O換算で25〜65質量%含み、残部が不可避的不純物である。

0057

SiO2とNa2Oが共存すると、Na2Oの活量が大きく低下するので、溶銑中で安定であり、Naガスによる蒸発ロスが少なく、経済的である。したがって、脱硫剤は、極力、ソーダ石灰ガラス又は珪酸ソーダで成分調整を行い、不足のNa2O分を、ソーダ灰等を用いて調整することが好ましい。

0058

CaO分、Al2O3分、SiO2分、MgO分、及び、Na2O分となる脱硫剤は、反応性を考慮すると、いずれも、粒度を1mm以下に粉砕して用いることが好ましい。また、CaO分、Al2O3分、SiO2分、MgO分、Na2O分を混合し、加熱炉プリメルトしたものを脱硫剤として用いてもよい。

0059

金属Mgや金属Alを併用することで、さらに高い脱硫効率が得られる。金属Mgは、Mg品位が95質量%以上のものであり、溶銑中で、下記式(4)の反応で脱硫を促進する。
Mg(g)+[S]→MgS(s) ・・・(4)

0060

本発明脱硫剤において、金属Mgを、Mg換算で1質量%以上添加すると、脱硫能の向上が見られたが、Mg換算で15質量%を超えて添加しても、脱硫能に差が見られなかった。金属Mgは高価であり、金属Mgを添加する場合は、コスト削減の観点からも、Mg換算で1〜15質量%が好ましい。

0061

金属Alは、Al品位が30質量%以上含有するものであり、Al精錬の際に発生するAlドロスや、アルミ缶チップ等でもよい。

0062

金属Alを添加すると、溶銑中で下記式(5)の反応が起き、前記式(2)より、脱硫が促進される。
2Al(s)+3[O]→Al2O3(s) ・・・(5)

0063

本発明脱硫剤において、金属Alを、Al換算で1質量%以上添加すると、脱硫能の向上が見られたが、Al換算で10質量%を超えて添加した場合、脱硫能の低下が見られた。これは、Al2O3濃度が高くなり、CaO活量を低下させたことが原因と考えられ、金属Alを添加する場合は、Al換算で1〜10質量%の添加が好ましい。

0064

金属Mgと併用することで、金属Mgの酸化ロスを防ぎ、高価な金属Mgの使用量削減や、式(4)の促進により、低コストで高い脱硫効率が得られることが期待できる。

0065

以上、脱硫剤について説明したが、脱硫剤と同様の成分組成のスラグ下で脱硫処理を行っても、同様の効果が得られることは明らかである。

0066

即ち、質量比で、CaO1に対して、Al2O3分が0.30〜0.80、Na2O分が0.04〜0.35、SiO2分が0.05〜0.30、MgO分が0.05〜0.44で、さらに、MgO1に対して、Na2O分が0.50〜3.00で、かつ、質量%で、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOの合計が90%以上で、残部が不可避的不純物のスラグ下で脱硫処理を行うと、本発明脱硫剤を使用した効果と同様の効果を得ることができる。

0067

さらに、上記組成のスラグに、金属Mg及び/又は金属Alを、処理前又は処理中に投入すると、スラグの脱硫能が向上する。また、本発明脱硫剤の溶鉄への添加方法としては、脱硫剤を鍋内又はTPC(混銑車)内に上置きする方法、及び/又は、インジェクションする方法で、脱硫効果をより確実に得ることができる。

0068

次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0069

(実施例1)
溶解炉を用いて[C]=4.5質量%、[Si]=0.5質量%、[S]=0.03質量%の溶銑100kgを製造し、溶銑の温度を1350〜1450℃に保定した。その後、表1に示す脱硫剤1kgを溶銑に上方添加し、炉底からArガスを0.6L/minで吹込み5分間攪拌した。

0070

脱硫剤の原料として、脱硫剤No.4は、Na2O源の一部にソーダ石灰ガラスを用い、脱硫剤No.5は、珪酸ソーダを用いた。MgO源として、脱硫剤No.1は、焼成ブルーサイトを用い、脱硫剤No.9は、焼成ドロマイトを用い、脱硫剤No.10は、MgOを80質量%以上含んだMgO系耐火物を用いた。その他の原料は試薬を混合したものを用いた。

0071

溶解炉内で溶銑と接触する耐火物はMgOを主成分(80質量%程度)とする製鋼工程で一般的に用いられる耐火物である。

0072

0073

表2に、質量比で、CaO1に対するAl2O3、Na2O、SiO2、MgO、及び、CaF2の値、及び、MgO1に対するNa2Oの値を示す。

0074

0075

表3に、溶銑温度が1350〜1400℃のときの脱硫実験における実施例及び比較例で用いた脱硫剤と、処理前S(ppm)、処理後S(ppm)、脱硫率(%)、及び、耐火物溶損程度を示す。

0076

0077

ここで、脱硫率は下記式より求めた。
脱硫率=(処理前S−処理後S)×100/(処理前S)

0078

耐火物溶損の評価は、試験毎にスラグと耐火物接触している場所の耐火物厚みを試験前後で測定し、最も減少量が大きい場所の減少量を、耐火物溶損量として調査した。さらに、脱硫剤No.11(比較例)の耐火物溶損量を1としたときの試験毎の耐火物溶損量を計算し、0.0を超え0.3以下のときに“小”、0.3を超え0.7以下のときに“中”、0.7を超え1.0以下のときに“大”とした。

0079

脱硫剤No.1〜6(発明例)は、特許文献1〜3に開示の脱硫剤No.11〜13(比較例)に対し、いずれも高い脱硫率と、低い処理後S(質量%)を示し、極低硫鋼の条件であるS≦50ppmを安定的に達成していることが解る。

0080

また、脱硫剤No.2及び脱硫剤No.6をベースに、金属Al及び/又は金属Mgを添加した脱硫剤No.7〜10(発明例)は、脱硫率が、添加前の脱硫剤よりさらに向上し、処理後Sも低い値を示し、金属Al及び/又は金属Mgを併用することで、さらに高い脱硫能が得られることが解る。

0081

脱硫剤No.2をベースに、CaO、Al2O3、Na2O、SiO2、及び、MgOを添加した脱硫剤No.14〜19(比較例)は、本発明の範囲外であり、脱硫能が低下したため、処理後Sは、何れも50ppm以下を達成することができなかった。

0082

SEM/EDSを用いて発明例の処理後スラグを観察すると、特許文献1〜3に開示の脱硫剤No.11〜13(比較例)の処理後スラグ中に存在した未滓化のCaOを確認することができなかった。

0083

また、CaO−Al2O3−Na2O−SiO2−MgO系の低融点スラグ中に、Sが1〜8%程度固定されており、特許文献1〜3に開示の脱硫剤No.11〜13(比較例)では、このように高濃度のSを含んだスラグを確認できなかった。

0084

即ち、本発明脱硫剤は、滓化性が良好であり、脱硫能に優れる低融点スラグが生成したことで、高い脱硫能が得られたと考えられる。

0085

また、耐火物の溶損量を測定したところ、脱硫剤No.1〜10(発明例)は、いずれも、特許文献1〜3開示の脱硫剤No.11〜13(比較例)に対し、同等以下であり、本発明脱硫剤は、耐火物保護の点でも、従来技術に比べ優れていることが解る。

0086

中でも、脱硫剤No.6及びNo.10(発明例)は、脱硫剤No.1〜No.10(発明例)の中で、最も耐火物の溶損量が少なく、耐火物保護、脱硫能の両面で、良好な結果が得られた。

0087

また、表4に、溶銑温度が1400〜1450℃のときの脱硫実験における実施例及び比較例で用いたフラックスと、処理前S(ppm)、処理後S(ppm)、脱硫率(%)、及び、耐火物溶損関係を示す。脱硫率、耐火物溶損の定義は前述の通りである。

0088

0089

脱硫剤No.1〜10(発明例)は溶銑温度が1350〜1400℃の脱硫実験に対して脱硫率が向上し、処理後Sは、いずれも、50ppm以下を達成することができた。また、脱硫剤No.11〜19(比較例)は溶銑温度が1350〜1400℃の脱硫実験に対して脱硫率が向上するものの、いずれも、50ppm以下を達成することができなかった。

実施例

0090

耐火物溶損は、いずれの試験も1350〜1400℃の脱硫実験と同等であり、本発明脱硫剤は、1400〜1450℃の溶銑温度においても、S≦50ppmの極低硫鋼の安定製造が可能であることを確認した。

0091

前述したように、本発明によれば、耐火物溶損が抑制され、高い脱硫能が得られるので、極低硫鋼を安定的に製造することが可能となる。よって、本発明は、鉄鋼産業の製鋼技術において利用可能性が高いものである。

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