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技術 永久磁石とその製造方法、およびそれを用いたモータと発電機

出願人 株式会社東芝
発明者 堀内陽介桜田新哉岡本佳子萩原将也
出願日 2010年9月24日 (10年3ヶ月経過) 出願番号 2010-213423
公開日 2012年4月5日 (8年8ヶ月経過) 公開番号 2012-069750
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 永久磁石 コア、コイル、磁石の製造 同期機の永久磁石界磁
主要キーワード 磁化回路 再磁化 磁化巻線 Cuリッチ相 ピーク間距離 相分離母線 メジャーループ 前駆体相
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図面 (9)

課題

高性能なSm2Co17型磁石増磁の際に必要な磁化電流を低下させることを可能にした永久磁石を提供する。

解決手段

実施形態の永久磁石は、組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z(R:希土類元素、M:Ti、Zr、Hf、A:Ni、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、Ta、W、0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9)で表される組成を有し、Th2Zn17型結晶相銅リッチ相との二相組織を備える。永久磁石のTh2Zn17型結晶相の結晶c軸を含む断面において、銅リッチ相間の平均距離は120nmを超えて500nm未満の範囲とされている。

概要

背景

可変磁束モータ可変磁束発電機においては、可変磁石固定磁石の2種類の磁石が使用されている。可変磁石は、可変磁束モータや可変磁束発電機の高速回転時には電流磁界により減磁させ、トルクが必要な運転状況のときに再び電流磁界により着磁させる。このように、可変磁石では減磁作用増磁作用があるが、特に磁束を少なくした状態から再び着磁状態に戻す増磁作用が課題となっている。増磁作用では鉄心磁気飽和して起磁力が費やされるため、必要な磁化電流が増える。従って、増磁動作での磁化電流は減磁動作時よりも大きくなる。増磁の際に可変磁石を小さな磁化電流で着磁することができれば、可変磁束モータや可変磁束発電機のさらなる低消費電力化が実現できると期待される。

従来、可変磁石にはAl−Ni−Co系磁石アルニコ磁石)やFe−Cr−Co系磁石が用いられている。可変磁束モータや可変磁束発電機の高性能化や高効率化のために、可変磁石には保磁力磁束密度の向上が求められている。高性能な永久磁石としては、Sm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系磁石のうち、Sm2Co17型磁石は2−17型結晶相と1−5型結晶相との二相分離組織を有し、磁壁ピンニング型の保磁力発現機構により磁石特性を得ているため、可変磁石に適した磁石である。しかしながら、従来のSm2Co17型磁石はピンニング効果が過剰であること等に起因して、増磁の際の着磁に必要な外部磁界、すなわち磁化電流を低下させることができない。

概要

高性能なSm2Co17型磁石の増磁の際に必要な磁化電流を低下させることを可能にした永久磁石を提供する。実施形態の永久磁石は、組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z(R:希土類元素、M:Ti、Zr、Hf、A:Ni、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、Ta、W、0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9)で表される組成を有し、Th2Zn17型結晶相と銅リッチ相との二相組織を備える。永久磁石のTh2Zn17型結晶相の結晶c軸を含む断面において、銅リッチ相間の平均距離は120nmを超えて500nm未満の範囲とされている。

目的

本発明の目的は、高性能なSm2Co17型磁石の増磁の際に必要な磁化電流を低下させることを可能にした永久磁石とその製造方法、およびそれを用いた可変磁束モータと可変磁束発電機を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、AはNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、p、q、r、sおよびzはそれぞれ原子比で0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9を満足する数である)で表される組成を有する永久磁石であって、Th2Zn17型結晶相と、前記Th2Zn17型結晶相中の銅濃度の1.2倍以上5倍以下の範囲の銅濃度を有する銅リッチ相とを含む組織を備え、かつ前記Th2Zn17型結晶相の結晶c軸を含む断面における前記銅リッチ相間の平均距離dが120nmを超えて500nm未満の範囲であることを特徴とする永久磁石。

請求項2

請求項1記載の永久磁石において、前記銅リッチ相の平均厚さが1nm以上20nm以下の範囲であることを特徴とする永久磁石。

請求項3

請求項2記載の永久磁石において、前記元素Rの50原子%以上がサマリウムであることを特徴とする永久磁石。

請求項4

請求項3記載の永久磁石において、前記元素Mの50原子%以上がジルコニウムであることを特徴とする永久磁石。

請求項5

組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、AはNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、p、q、r、sおよびzはそれぞれ原子比で0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9を満足する数である)で表される組成を有する合金粉末を作製する工程と、前記合金粉末を磁場中で加圧成形して圧粉体を作製する工程と、前記圧粉体を焼結して焼結体を作製する工程と、前記焼結体に溶体化処理を施す工程と、前記溶体化処理後の焼結体に、TB+50<T<TB+150(ここで、TBは式:3500p−5000q−(50p)2で表される温度である)を満足する温度Tで時効処理を施す工程とを具備することを特徴とする永久磁石の製造方法。

請求項6

請求項5記載の永久磁石の製造方法において、前記時効処理を施した焼結体は、Th2Zn17型結晶相と、前記Th2Zn17型結晶相中の銅濃度の1.2倍以上5倍以下の範囲の銅濃度を有する銅リッチ相とを含む組織を備え、かつ前記Th2Zn17型結晶相の結晶c軸を含む断面における前記銅リッチ相間の平均距離dが120nmを超えて500nm未満の範囲であることを特徴とする永久磁石の製造方法。

請求項7

請求項6記載の永久磁石の製造方法において、前記時効処理を施した焼結体は、前記銅リッチ相の平均厚さが1nm以上20nm以下の範囲であることを特徴とする永久磁石の製造方法。

請求項8

請求項1記載の永久磁石を具備することを特徴とする可変磁束モータ

請求項9

請求項1記載の永久磁石を具備することを特徴とする可変磁束発電機

技術分野

0001

本発明の実施形態は、永久磁石とその製造方法、およびそれを用いた可変磁束モータ可変磁束発電機に関する。

背景技術

0002

可変磁束モータや可変磁束発電機においては、可変磁石固定磁石の2種類の磁石が使用されている。可変磁石は、可変磁束モータや可変磁束発電機の高速回転時には電流磁界により減磁させ、トルクが必要な運転状況のときに再び電流磁界により着磁させる。このように、可変磁石では減磁作用増磁作用があるが、特に磁束を少なくした状態から再び着磁状態に戻す増磁作用が課題となっている。増磁作用では鉄心磁気飽和して起磁力が費やされるため、必要な磁化電流が増える。従って、増磁動作での磁化電流は減磁動作時よりも大きくなる。増磁の際に可変磁石を小さな磁化電流で着磁することができれば、可変磁束モータや可変磁束発電機のさらなる低消費電力化が実現できると期待される。

0003

従来、可変磁石にはAl−Ni−Co系磁石アルニコ磁石)やFe−Cr−Co系磁石が用いられている。可変磁束モータや可変磁束発電機の高性能化や高効率化のために、可変磁石には保磁力磁束密度の向上が求められている。高性能な永久磁石としては、Sm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系磁石のうち、Sm2Co17型磁石は2−17型結晶相と1−5型結晶相との二相分離組織を有し、磁壁ピンニング型の保磁力発現機構により磁石特性を得ているため、可変磁石に適した磁石である。しかしながら、従来のSm2Co17型磁石はピンニング効果が過剰であること等に起因して、増磁の際の着磁に必要な外部磁界、すなわち磁化電流を低下させることができない。

先行技術

0004

特開2008−043172号公報
特開2005−243884号公報

0005

本発明の目的は、高性能なSm2Co17型磁石の増磁の際に必要な磁化電流を低下させることを可能にした永久磁石とその製造方法、およびそれを用いた可変磁束モータと可変磁束発電機を提供することにある。

0006

実施形態の永久磁石は、
組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、AはNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、p、q、r、sおよびzはそれぞれ原子比で0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9を満足する数である)
で表される組成を有する。永久磁石はTh2Zn17型結晶相とTh2Zn17型結晶相中の銅濃度の1.2倍以上5倍以下の範囲の銅濃度を有する銅リッチ相とを含む組織を備え、かつTh2Zn17型結晶相の結晶c軸を含む断面における銅リッチ相間の平均距離dが120nmを超えて500nm未満の範囲である。

0007

実施形態の永久磁石の製造方法は、
組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、AはNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、p、q、r、sおよびzはそれぞれ原子比で0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9を満足する数である)
で表される組成を有する合金粉末を作製する工程と、合金粉末を磁場中で加圧成形して圧粉体を作製する工程と、圧粉体を焼結して焼結体を作製する工程と、焼結体に溶体化処理を施す工程と、溶体化処理後の焼結体に時効処理を施す工程とを具備している。時効処理は、TB+50<T<TB+150(ここで、TBは式:3500p−5000q−(50p)2で表される温度である)を満足する温度Tで実施される。

0008

実施形態の可変磁束モータは、実施形態の永久磁石を具備している。実施形態の可変磁束発電機は、実施形態の永久磁石を具備している。

図面の簡単な説明

0009

実施形態の永久磁石の磁化曲線の一例を示す図である。
Sm2Co17型磁石の銅リッチ相の平均間隔dとH(minor)/H(major)比との関係を示す図である。
実施形態の永久磁石の金属組織を拡大して示すTEM像である。
図3に示すTEM像から銅リッチ相の平均間隔を測定するための銅濃度の線分析の様子を示す図である。
図4に示す銅濃度の線分析結果の一例を示す図である。
図5に示す銅濃度の線分析結果の濃度差を強調した図である。
実施形態に係る可変磁束モータを示す図である。
実施形態に係る可変磁束発電機を示す図である。

0010

以下、実施形態の永久磁石について説明する。この実施形態の永久磁石は、
組成式:R(FepMqCur(Co1-sAs)1-p-q-r)z …(1)
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi、ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、AはNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、p、q、r、sおよびzはそれぞれ原子比で0.05≦p≦0.6、0.005≦q≦0.1、0.01≦r≦0.15、0≦s≦0.2、4≦z≦9を満足する数である)
で表される組成を有し、かつTh2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)とTh2Zn17型結晶相の銅濃度の1.2倍以上5倍以下の範囲の銅濃度を有する銅リッチ相(CaCu5型結晶相(1−5型結晶相)等)とを含む二相組織を備えている。

0011

上記した組成式(1)において、元素Rとしてはイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素が使用される。元素Rはいずれも磁石材料に大きな磁気異方性をもたらし、高い保磁力を付与するものである。元素Rとしてはサマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、およびプラセオジム(Pr)から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、特にSmを使用することが望ましい。元素Rの50原子%以上をSmとすることで、永久磁石の性能、とりわけ保磁力を再現性よく高めることができる。さらに、元素Rの70原子%以上がSmであることが望ましい。

0012

元素Rは、元素Rとそれ以外の元素(Fe、M、Cu、Co、A)との原子比が1:4〜1:9の範囲(z値として4〜9の範囲/元素Rの含有量として10〜20原子%の範囲)となるように配合される。元素Rの含有量が10原子%未満であると、多量のα−Fe相析出して十分な保磁力が得られない。一方、元素Rの含有量が20原子%を超えると、飽和磁化の低下が著しくなる。元素Rの含有量は10〜15原子%の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは10.5〜12.5原子%の範囲である。

0013

元素Mとしては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種の元素が用いられる。元素Mを配合することによって、高い鉄濃度の組成で大きな保磁力を発現させることができる。元素Mの含有量は元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の0.5〜10原子%(0.005≦q≦0.1)の範囲とする。q値が0.1を超えると磁化の低下が著しく、またq値が0.005未満であると鉄濃度を高める効果が小さい。元素Mの含有量は0.01≦q≦0.06であることがより好ましく、さらに好ましくは0.015≦q≦0.04である。

0014

元素MはTi、Zr、Hfのいずれであってもよいが、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、元素Mの50原子%以上をZrとすることによって、永久磁石の保磁力を高める効果をさらに向上させることができる。一方、元素Mの中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少なくすることが好ましい。Hfの含有量は元素Mの20原子%未満とすることが好ましい。

0015

銅(Cu)は永久磁石に高い保磁力を発現させるための元素である。Cuの配合量は元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の1〜15原子%(0.01≦r≦0.15)の範囲とする。r値が0.15を超えると磁化の低下が著しく、またr値が0.01未満であると高い保磁力を得ることが困難となる。Cuの配合量は0.02≦r≦0.1とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.03≦r≦0.08である。

0016

鉄(Fe)は主として永久磁石の磁化を担うものである。Feを多量に配合することによって、永久磁石の飽和磁化を高めることができる。ただし、Feの含有量が過剰になりすぎると、α−Fe相が析出したり、また2−17型結晶相と銅リッチ相(1−5型結晶相等)との二相組織が得られにくくなる。これらによって、永久磁石の保磁力が低下する。Feの配合量は元素R以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の5〜60原子%(0.05≦p≦0.6)の範囲とする。Feの配合量は0.26≦p≦0.5であることがより好ましく、さらに好ましくは0.28≦p≦0.48である。

0017

コバルト(Co)は永久磁石の磁化を担うと共に、高い保磁力を発現させるために必要な元素である。さらに、Coを多く含有するとキュリー温度が高くなり、永久磁石の熱安定性も向上する。Coの配合量が少ないとこれらの効果が小さくなる。しかし、永久磁石に過剰にCoを含有させると相対的にFeの含有量が減るため、磁化の低下を招くおそれがある。Coの含有量はp、q、rで規定される範囲(1−p−q−r)とする。

0018

Coの一部はニッケル(Ni)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、およびタングステン(W)から選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換してもよい。これらの置換元素は磁石特性、例えば保磁力の向上に寄与する。ただし、元素AによるCoの過剰な置換は磁化の低下を招くおそれがあるため、元素Aによる置換量はCoの20原子%以下(0≦s≦0.2)の範囲とする。

0019

ところで、Sm2Co17型磁石は高温相であるTbCu7型結晶相(1−7型結晶相)を前駆体とし、これに時効処理を施してTh2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)とCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)とに相分離させ、磁壁ピンニング型の保磁力発現機構に基づいて磁石特性を得ている。2−17型結晶相は主相(粒内相)となり、その粒界に1−5型結晶相(粒界相)が析出して2−17型結晶相を区切りセル構造と呼ばれる二次構造ができる。スピノーダル分解によって、1−5型結晶相はCuリッチおよびFeプアとなり、2−17型結晶相はCuプアおよびFeリッチとなる。

0020

なお、この実施形態の永久磁石は、2−17型結晶相およびCuリッチ相以外の結晶相や非晶質相を含んでいてもよい。その他の相としては、元素Mの濃度が粒内相より高いMリッチ相や元素RとFeを主成分とする化合物相等が考えられるが、その量はMリッチ相を除いて、不純物相程度の量であることが好ましい。永久磁石は実質的に2−17型結晶相とCuリッチ相とからなることが好ましい。

0021

Sm2Co17型磁石における保磁力の起源相分解により生じた微細構造にある。粒界に析出した1−5型結晶相の磁壁エネルギーは、主相である2−17型結晶相の磁壁エネルギーと比べて大きく、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動障壁となる。つまり、磁壁エネルギーの大きい1−5型結晶相がピンニングサイトとして働く。ここで、磁壁エネルギーの差は主に銅(Cu)の濃度差により生じていると考えられる。粒界に析出する相のCu濃度が粒内のCu濃度より十分に高ければ、保磁力が発現する。このため、ピンニングサイトにはCuリッチ相が適用される。

0022

Cuリッチ相の代表例としては、上述したCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。Cuリッチ相は主相である2−17型結晶相のCu濃度の1.2倍以上5倍以下のCu濃度を有していればよい。Cuリッチ相のCu濃度が2−17型結晶相のCu濃度の1.2倍以上であれば、ピンニングサイトとして機能させることができる。ただし、Cuリッチ相のCu濃度が2−17型結晶相のCu濃度の5倍を超えると、保磁力が巨大化して可変磁石に適さなくなる。1−5型結晶相以外のCuリッチ相としては、高温相である1−7型結晶相や1−7型結晶相の二相分離初期段階に生じる1−5型結晶相の前駆体相等が挙げられる。

0023

上述したように、Sm2Co17型磁石の磁気特性はCuリッチ相に影響される。例えば、Cuリッチ相の厚さが厚いと磁壁のピンニング効果が高くなりすぎ、巨大な保磁力が発現してしまうおそれがある。永久磁石を可変磁石として使用する場合、永久磁石は適度な保磁力を有することが好ましい。具体的には、可変磁石として用いる永久磁石の保磁力は100〜500kA/mの範囲であることが好ましい。永久磁石の保磁力が500kA/mを超えると可変磁石として使用することが困難となる。一方、永久磁石の保磁力が100kA/m未満であると可変磁石の高性能化を十分に図ることができない。

0024

このような点から、Cuリッチ相の平均厚さtは20nm以下であることが好ましい。Cuリッチ相の平均厚さtを20nm以下とすることで、適度な磁壁のピンニング効果が得られる。従って、可変磁石に好適な140〜500kA/mの範囲の保磁力を有する永久磁石を安定して提供することができる。永久磁石の保磁力は200〜400kA/mの範囲であることがより好ましい。Cuリッチ相の平均厚さtは15nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10nm以下である。ただし、Cuリッチ相の平均厚さtが小さすぎると磁壁のピンニング効果が弱くなりすぎて、保磁力が低下しすぎるおそれがある。このため、Cuリッチ相の平均厚さtは1nm以上であることが好ましい。

0025

さらに、Cuリッチ相の析出間隔は磁壁ピンニング挙動に大きく影響を及ぼす。例えば、Cuリッチ相が緻密に析出し、Cuリッチ相の間隔が小さい場合には、磁壁が強固にピン止めされることになる。このため、増磁に必要な外部磁界が保磁力とほぼ同等となり、磁化電流の低下が望めない。つまり、Cuリッチ相の析出間隔が大きくなるように金属組織を制御することができれば、Sm2Co17型磁石を増磁する際に小さな外部磁界、すなわち小さな磁化電流で着磁することが可能となる。これによって、可変磁束モータや可変磁束発電機の低消費電力化を可能とする磁石を実現することができる。

0026

Sm2Co17型磁石の金属組織は製造プロセスに強く依存する。時効処理ではおよそ750〜950℃の温度で熱処理を行った後に制御冷却を実施し、ある温度まで冷却した時点から急冷する。時効処理温度が低すぎるとCuリッチ相の析出が不十分となり、粒内相とCuリッチ相との間に磁壁の移動を阻害するほどのエネルギー差が生じない。その結果として、磁壁エネルギーの差による保磁力発現機構が機能しない。一方、時効処理温度が高すぎる場合にはCuリッチ相が粗大になり、可変磁石に適した特性が得られない。このような永久磁石の製造プロセスを制御し、Cuリッチ相の厚さtを維持しつつ、Cuリッチ相の析出間隔を適度な範囲に制御することができれば、保磁力を巨大化させることなく、増磁の際の着磁に必要な磁界を低下させることが可能となる。

0027

ここで、永久磁石の着磁性の良し悪しは、磁化曲線から求められるH(minor)とH(major)の比で評価される。H(major)は消磁状態直方体形状の焼結体磁石を用いて定義される。H(major)は以下のようにして求められる。まず、消磁状態の直方体形状の焼結体磁石の磁化容易軸に対して正の方向に1200kA/mの外部磁界を印加(増磁)する。その際に得られる最大の磁化が飽和磁化Msである。1200kA/mの磁界を印加した後、負の方向に−1200kA/mまで外部磁界を印加(減磁)する。この際に得られる絶対値が最大の磁化を−Msと定義する。その後、再び正の方向に1200kA/mの外部磁界を印加(増磁)する。この増磁の際に、Msの80%の磁化に達する際の磁界をH(major)と定義する。このようにして得られる磁化曲線をメジャーループと呼ぶ。

0028

H(minor)は以下のようにして求められる。まず、上述した手順に基づいて正負各方向の外部磁界の印加による増磁−減磁−増磁を行ってメジャーループを描き、引き続いて負の方向に磁界を印加(減磁)する。この際、与える磁界は−Msに対して90%の大きさの磁化となるまでとする。磁化が−Msに対して90%の大きさになった後、再び正の方向に外部磁界を印加し、1200kA/mの外部磁界を与える(増磁)。この増磁の際に、Msの80%の磁化に達する際の磁界をH(minor)と定義する。このようにして得られる磁化曲線をマイナーループと呼ぶ。

0029

H(major)に対するH(minor)の比(H(minor)/H(major))が小さいということは、増磁の際に小さな磁界で着磁することが可能であることを意味する。従来のSm2Co17型磁石では、H(major)に対してH(minor)は95%程度である。従って、
H(minor)/H(major)<0.95 …(2)
を満たすSm2Co17型磁石は、再磁化に必要な磁界を従来のSm2Co17型磁石に比べて小さくすることができる。このようなSm2Co17型磁石によれば、可変磁束モータや可変磁束発電機の省電力化が可能な可変磁石を提供することが可能となる。H(minor)/H(major)比は0.9以下であることがより好ましく、これにより顕著な省電力化が見込まれる。H(minor)/H(major)比は0.85以下であることが望ましい。

0030

この実施形態の永久磁石は、2−17型結晶相からなる粒内相(主相)とその粒界に析出したCuリッチ相(1−5型結晶相等)との二相分離組織を備えた永久磁石において、合金組成に応じた時効処理条件等を適用して金属組織を制御することによって、2−17型結晶相の結晶c軸を含む断面におけるCuリッチ相(粒界相)間の平均距離dを120nmを超えて500nm未満の範囲(120nm<d<500nm)としたものである。これによって、Sm2Co17型磁石の磁化曲線におけるマイナーループの形状が非対称となり、増磁の際の着磁に必要な磁界を低下させることができる。

0031

図1はCuリッチ相の平均間隔dが120nm<d<500nmの範囲の磁石(実施例)の磁化曲線の一例を、Cuリッチ相の平均間隔dが120nm以下の磁石(比較例)の磁化曲線と比較して示す図である。図1に示すように、Cuリッチ相の平均間隔dが120nm以下の磁石(比較例)は、磁化曲線におけるマイナーループの形状がメジャーループの形状とほぼ同じであるのに対し、Cuリッチ相の平均間隔dが120nm<d<500nmの範囲の磁石(実施例)は、磁化曲線におけるマイナーループの形状が非対称であり、増磁の際の着磁に必要な磁界を小さくすることができる。

0032

このように、Cuリッチ相の平均厚さtが20nm以下であると共に、Cuリッチ相の平均間隔dが120nm<d<500nmの範囲のSm2Co17型磁石によれば、可変磁石に適した保磁力と可変幅を維持しつつ、適度な磁壁ピンニング効果に基づいて増磁の際の着磁に必要な外部磁界、すなわち磁化電流の低下させることができる。具体的には、H(minor)/H(major)比を0.95未満とすることができる。図2はCuリッチ相の平均間隔dとH(minor)/H(major)比との関係を示す図である。図2に示されるように、Cuリッチ相の平均間隔dが120nmを超えるように分散析出させることによって、H(minor)/H(major)比を0.95未満、さらには0.90以下とすることができる。

0033

Cuリッチ相の平均間隔dが120nm以下であると磁壁のピンニング効果が顕著となって着磁性が悪化する。Cuリッチ相の平均間隔dは130nm以上であることがより好ましく、さらには150nm以上であることが望ましい。ただし、Cuリッチ相の平均間隔dが500nm以上になると磁壁ピンニング効果が働かず、保磁力機構が変化する等の理由から、減磁後の増磁の際に急激に磁化曲線が立ち上がる現象がおこり、可変磁石に求められる可変幅が確保できなくなる。Cuリッチ相の平均間隔dは450nm以下であることがより好ましい。図3に実施形態の永久磁石の断面の一例を示す。

0034

上述したように、Cuリッチ相は2−17型結晶相(粒内相)のCu濃度の1.2倍以上5倍以下の範囲のCu濃度を有する領域である。従って、2−17型結晶相の結晶c軸を含む断面をエネルギー分散蛍光X線分光装置(EDX)等で組成分析することによって、Cuリッチ相の平均間隔dを求めることができる。Cuリッチ相の平均間隔dは、2−17型結晶相の結晶c軸を含む断面を透過電子顕微鏡TEM)により100kの倍率で観察し、得られた像の組成線分析を行ってCuリッチ相の位置を特定し、あるCuリッチ相から次のCuリッチ相までの距離の平均値として定義される。組成線分析は、まず一定方向(第1の方向)に対して30〜50nmの間隔で実施し、次いで同一面内で第1の方向と直交する方向(第2の方向)に対しても同様な間隔で実施する。平均間隔dは、全ての組成線分析で得られたCuリッチ相間の距離を平均した値とする。

0035

Cuリッチ相の平均間隔dの求め方の具体例を以下に示す。
(1)断面観察テップ
まず、永久磁石(時効処理後磁場配向した焼結体)の2−17型結晶相のc軸を含む断面をTEMにより観察する。図3に実施形態によるSm2Co17型磁石の断面観察結果であるTEM像(100k倍)の一例を示す。図3において、コントラストが均一な部分が2−17型結晶相(粒内相)であり、その間に存在する板状の部分(黒っぽい領域)がCuリッチ相である。

0036

(2)組成線分析ステップ
次に、永久磁石の断面観察結果であるTEM像の組成線分析を行う。図4にTEM像の組成線分析の様子を示す。なお、図4図3とは異なるTEM像を示しているが、これは以下の組成線分析ステップを説明するために便宜的に示しているものであり、本発明を何等限定するものではない。まず、TEM像の第1の方向に等間隔で線分析(La1〜Lan)を行う。線分析は等間隔で平行に実施する。線分析の間隔は30〜50nmとする。次いで、同一のTEM像において、第1の方向に対して直交する第2の方向に等間隔で線分析(Lb1〜Lbn)を行う。この際の線分析も30〜50nmの等間隔で平行に実施する。図4において、線分析(平行線)の間隔は50nmとしている。

0037

(3)Cuリッチ相の位置特定ステップ
次いで、TEM像の各線分析結果(La1〜LanおよびLb1〜Lbn)からCu濃度を求める。図5に線分析La4によるCu濃度の測定結果を示す。さらに、Cu濃度の差を明確化するために、線分析で得られたCu濃度を2乗〜16乗し、その値をグラフ化して平均値を求める。図6図5のCu濃度を4乗したデータをプロットしたグラフを示す。図中、実線は各点のCu濃度のデータ値(4乗値)であり、点線はその平均値を2倍した値である。図6において、Cu濃度のデータ値(Cu濃度の4乗値)が平均値の2倍値より連続して多い部分の幅が2nm以上である領域をCuリッチ相と見なし、その領域におけるCu濃度のデータ値が最大の位置をCuリッチ相の中心位置と見なす。

0038

(4)Cuリッチ相の平均間隔の測定ステップ
ステップ3で特定したCuリッチ相の中心位置間の距離(Cu濃度が最大値を示すピーク間の距離/図6のd1、d2…dn)を、それぞれCuリッチ相間の距離と見なして測定する。1回の組成線分析におけるCuリッチ相間の距離da1は、各ピーク間距離d1、d2…dnの平均値として求められる。このような相間距離の測定を全線分析結果に対して実施し、各線分析結果の相間距離(da1〜danおよびdb1〜dbn)の平均値を求める。この相間距離の平均値[(da1+da2…+dan+db1+db2…+dbn)/2n]を、Cuリッチ相間の平均距離(Cuリッチ相の平均間隔)dと定義する。

0039

Cuリッチ相の厚さは、2−17型結晶相の結晶c軸を含む断面のTEM像において、コントラストが均一な結晶粒(2−17型結晶相)と隣接するコントラストが均一な結晶粒(2−17型結晶相)との間のコントラストが異なる領域の幅である。Cuリッチ相の平均厚さtは、100k倍の倍率のTEM像(図3に示すTEM像)において、コントラストが異なる領域の幅を5点測定し、その平均値を示すものとする。具体的には、任意の板状、棒状、もしくは筋状のコントラストが確認できる部位を選択する。このコントラストが異なる部位の観察像上の短軸方向の長さ(厚さ)を測定し、その長さをCuリッチ相の厚さt1とする。この測定を5回実施し、Cuリッチ相の厚さt1〜t5の平均値をCuリッチ相の平均厚さtとする。

0040

明瞭なCuリッチ相を観察像上で確認できない場合には、上記したCuリッチ相の平均間隔dの求め方のステップ3に記載したように、図6におけるCu濃度のデータ値(Cu濃度の4乗値)が平均値の2倍値より連続して多い部分の幅が2nm以上である領域をCuリッチ相と見なし、この領域の幅を測定してCuリッチ相の平均厚さtを求めてもよい。例えば、Cu濃度のデータ値(Cu濃度の4乗値)上で5箇所のCuリッチ相の厚さt1〜t5を求め、これらの平均値をCuリッチ相の平均厚さtとしてもよい。

0041

この実施形態の永久磁石によれば、2−17型結晶相とCuリッチ相との二相組織を備えるSm2Co17型磁石において、Cuリッチ相の平均間隔dに基づいて磁壁ピンニング効果を制御しているため、可変幅を確保しつつ増磁の際の着磁に必要な磁化電流を低下させることができる。さらに、Cuリッチ相の平均厚さtを制御することで、適度な保磁力を得ている。従って、可変磁石に好適な保磁力と可変幅とを有し、その上で増磁の際の着磁に必要な磁化電流が小さい永久磁石を提供することが可能となる。このような永久磁石を可変磁束モータや可変磁束発電機の可変磁石に適用することによって、可変磁束モータや可変磁束発電機のさらなる低消費電力化を実現することができる。

0042

この実施形態の永久磁石は、例えば以下のようにして作製される。まず、所定量の元素を含む合金粉末を作製する。合金粉末は、例えばストリップキャスト法フレーク状の合金薄帯を作製した後に粉砕して調製される。ストリップキャスト法では、合金溶湯周速0.1〜20m/秒で回転する冷却ロール傾注し、連続的に厚さ1mm以下に凝固させた薄帯を得ることが好ましい。冷却ロールの周速が0.1m/秒未満であると薄帯中に組成のばらつきが生じやすく、周速が20m/秒を超えると結晶粒が単磁区サイズ以下に微細化し、良好な磁気特性が得られない。冷却ロールの周速は0.3〜15m/秒の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5〜12m/秒の範囲である。

0043

合金粉末はアーク溶解法高周波溶解法による溶湯鋳造して得られた合金インゴットを粉砕して調製してもよい。合金粉末の他の調製方法としては、メカニカルアロイング法メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法還元拡散法等が挙げられ、これらの方法で調製した合金粉末を用いてもよい。このようにして得られた合金粉末または粉砕前の合金に対し、必要に応じて熱処理を施して均質化してもよい。フレークやインゴットの粉砕はジェットミルボールミル等を用いて実施される。粉砕は合金粉末の酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気中や有機溶媒中で行うことが好ましい。

0044

次に、電磁石等の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することによって、結晶軸配向させた圧粉体を作製する。この圧粉体を1100〜1300℃の温度で0.5〜15時間焼結して緻密な焼結体を得る。焼結温度が1100℃未満であると焼結体の密度が不十分となり、1300℃を超えるとSm等の希土類元素が蒸発して良好な磁気特性が得られない。焼結温度は1150〜1250℃の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1180〜1230℃の範囲である。

0045

また、焼結時間が0.5時間未満の場合には、焼結体の密度が不均一になるおそれがある。一方、焼結時間が15時間を超えると、Sm等の希土類元素が蒸発して良好な磁気特性が得られない。焼結時間は1〜10時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1〜4時間の範囲である。圧粉体の焼結は酸化を防止するために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。

0046

得られた焼結体に対して、溶体化処理および時効処理を施して結晶組織を制御する。溶体化処理は相分離組織の前駆体である1−7型結晶相を得るために、1130〜1230℃の範囲の温度で0.5〜8時間熱処理することが好ましい。1130℃未満の温度および1230℃を超える温度では、溶体化処理後の試料中の1−7型結晶相の割合が小さく、良好な磁気特性が得られない。溶体化処理温度は1150〜1210℃の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは1160℃〜1190℃の範囲である。

0047

溶体化処理時間が0.5時間未満の場合には、構成相が不均一になりやすい。また、8時間を超えて溶体化処理を行うと、焼結体中のSm等の希土類元素が蒸発する等して、良好な磁気特性が得られないおそれがある。溶体化処理時間は1〜8時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1〜4時間の範囲である。溶体化処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。

0048

次に、溶体化処理後の焼結体に時効処理を施す。時効処理条件はCuリッチ相の平均間隔dや平均厚さtを制御する要因となる。さらに、最適な時効処理条件は合金組成によっても変化する。すなわち、Cuリッチ相の析出挙動は永久磁石(焼結体)を構成する元素の組成比によって変化する。このため、焼結体の時効処理条件は、組織内にCuリッチ相を平均間隔dが適度に大きくなるように分散させて析出させることが可能な温度を、合金組成に応じて選択することが好ましい。

0049

この実施形態の永久磁石の製造工程においては、以下に示す式(3)および式(4)を満足する温度Tで時効処理を実施する。
TB+50<T<TB+150 …(3)
TB=3500p−5000q−(50p)2 …(4)
式(4)において、pは式(1)の組成式におけるFeの濃度を示す値であり、qは式(1)の組成式における元素Mの濃度を示す値である。式(3)および式(4)を満足する温度Tで時効処理を行うことによって、Cuリッチ相の平均間隔dを120nm<d<500nmの範囲に制御することができる。Cuリッチ相の平均厚さtに関しても、焼結体を温度Tで時効処理することで20nm以下とすることができる。

0050

時効処理温度が[TB+50(℃)]未満であるとCuリッチ相が微細に析出し、平均間隔dが120nm以下になりやすい。一方、時効処理温度が[TB+150(℃)]を超えると、粗大なCuリッチ相が生成しやすくなると共に、Cuリッチ相の平均間隔dが500nm以上になりやすい。この場合、磁壁ピンニング効果が働かず、保磁力機構が例えば核形成型に変化する等の理由から、減磁後の増磁の際に急激に磁化曲線が立ち上がる、いわゆるスプリングバック現象がおこり、可変磁石として求められる可変幅が確保できなくなる。このため、可変磁石として良好な磁気特性を得ることができない。

0051

時効処理時間は0.25〜8時間の範囲とすることが好ましい。時効処理時間が0.25時間未満の場合には、Cuリッチ相の核生成を十分に生じさせることができないおそれがある。時効処理時間が8時間を超えるとCuリッチ相が粗大化したり、また平均間隔dが大きくなりすぎてしまう。時効処理時間は0.5〜6時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは1〜4時間の範囲である。

0052

このように、溶体化処理後の焼結体を合金組成に基づいて設定した温度Tで時効処理することによって、組織内にCuリッチ相を平均間隔dが120nm<d<500nmの範囲となるように分散させることができる。なお、時効処理は温度Tを満足する温度T1で焼結体を熱処理(第1の時効処理)した後、温度T1より高い温度T2で熱処理(第2の時効処理)する等、複数回実施してもよい。

0053

上記した時効処理を実施した後には、0.2〜2℃/minの範囲の冷却速度で冷却することが好ましい。時効処理後の冷却速度が0.2℃/min未満の場合、Cuリッチ相の厚さが大きくなることで保磁力が巨大化したり、また結晶粒が粗大化して良好な磁気特性が得られない。冷却速度が2℃/minを超えると元素拡散が十分に進行しないため、2−17型結晶相とCuリッチ相との間のCu濃度差を十分に得られないおそれがある。時効処理後の冷却速度は0.4〜1.5℃/分の範囲とすることより好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.3℃/分の範囲である。時効処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。

0054

この実施形態の永久磁石は可変磁石として好適である。この実施形態の永久磁石を可変磁石として用いることによって、可変磁束モータや可変磁束発電機が構成される。可変磁束モータの構成やドライブシステムには、特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。この実施形態の永久磁石を可変磁束ドライブシステムにおける可変磁石として用いることによって、システムの高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。

0055

次に、実施形態の可変磁束モータと可変磁束発電機について、図面を参照して説明する。図7は実施形態の可変磁束モータを示しており、図8は実施形態の可変磁束発電機を示している。実施形態の永久磁石は可変磁束モータや可変磁束発電機の磁石に好適であるが、実施形態の永久磁石を永久磁石モータ等に適用することを妨げるものではない。

0056

図7に示す可変磁束モータ1において、ステータ固定子)2内にはロータ回転子)3が配置されている。ロータ3内の鉄心4中には、実施形態の永久磁石を用いた固定磁石5と、固定磁石5より低保磁力の永久磁石を用いた可変磁石6とが配置されている。可変磁石6の磁束密度(磁束量)は可変することが可能とされている。可変磁石6はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ3には磁化巻線(図示せず)が設けられ、この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことで、その磁界が直接に可変磁石6に作用する構造となっている。

0057

実施形態の永久磁石によれば、前述した製造方法の各種条件を変更することによって、例えば保磁力が200kA/m以上の固定磁石5と保磁力が160kA/m以下の可変磁石6とを得ることが可能である。なお、図7に示す可変磁束モータ1おいては、固定磁石5および可変磁石6のいずれにも実施形態の永久磁石を用いることが可能であるが、いずれか一方の磁石に実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ1は、大きなトルクを小さい装置サイズ出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車電気自動車等のモータに好適である。

0058

図8に示す可変磁束発電機11は、実施形態の永久磁石を用いたステータ(固定子)12を備えている。ステータ(固定子)12の内側に配置されたロータ(回転子)13は、可変磁束発電機11の一端に設けられたタービン14とシャフト15により接続されている。タービン14は、例えば外部から供給される流体により回転されるように構成されている。なお、流体により回転されるタービン14に代えて、自動車回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト15を回転させることも可能である。ステータ12とロータ13には、各種公知の構成を採用することができる。

0059

そして、シャフト15はロータ13に対してタービン16とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ13の回転により発生した起電力が可変磁束発電機11の出力として相分離母線および主変圧器(図示せず)を介して系統電圧に昇圧されて送電される。ロータ13にはタービン14からの静電気による帯電発電に伴う軸電流による帯電等が発生するため、可変磁束発電機11はロータ13の帯電を放電させるためのブラシ16を備えている。

0060

次に、実施例およびその評価結果について述べる。

0061

(実施例1)
原料を(Sm0.85Nd0.15)(Fe0.28Zr0.025Cu0.05Co0.47)7.8組成となるように量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットをAr雰囲気中で1170℃×1時間の条件で熱処理した後に粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕して合金粉末を調製した。この合金粉末を磁界中でプレスして圧粉体とした後、Ar雰囲気中にて1190℃で3時間焼結し、引き続いて1170℃で3時間熱処理して焼結体を作製した。焼結後の熱処理は溶体化処理のために実施したものである。

0062

次いで、溶体化処理後の焼結体に時効処理として805℃×6時間の条件で熱処理を施した後、2℃/minの冷却速度で600℃まで徐冷して、目的とする焼結磁石を得た。ここで、合金組成(p=0.28、q=0.025)に基づく温度TBは約659℃である。従って、時効処理温度T(805℃)は[TB+50(709℃)<T<TB+150(809℃)]の範囲を満足するものである。磁石の組成はICP法により確認した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。

0063

(実施例2〜4)
表1に組成を示す合金粉末を用いる以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結磁石を作製した。時効処理条件は実施例1と同一とした。ここで、各合金組成に基づく温度TB(℃)、[TB+50(℃)]、[TB+150(℃)]は表2に示す通りである。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。

0064

(比較例1)
実施例1と同組成の合金粉末を用いて、実施例1と同条件で焼結体を作製した。この焼結体に時効処理として705℃×6時間の条件で熱処理を施した後、2℃/minの冷却速度で600℃まで徐冷した。ここで、合金組成に基づく温度TBは実施例1と同様に約659℃であるため、時効処理温度T(705℃)は[TB+50(709℃)<T<TB+150(809℃)]の範囲を外れるものである。

0065

(比較例2)
実施例1と同組成の合金粉末を用いて、実施例1と同条件で焼結体を作製した。この焼結体に時効処理として870℃×6時間の条件で熱処理を施した後、2℃/minの冷却速度で600℃まで徐冷した。ここで、合金組成に基づく温度TBは実施例1と同様に約659℃であるため、時効処理温度T(870℃)は[TB+50(709℃)<T<TB+150(809℃)]の範囲を外れるものである。

0066

(実施例5)
各原料を(Sm0.9Nd0.1)(Fe0.34Zr0.03Cu0.05Co0.58)7.5組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。この合金インゴットを石英製のノズル装填し、高周波誘導加熱して溶融した後、溶湯を周速0.6m/秒で回転する冷却ロールに傾注し、連続的に凝固させて薄帯を作製した。この薄帯を粗粉砕した後、ジェットミルにより微粉砕して合金粉末を調製した。この合金粉末を磁界中でプレスして圧粉体とした後、Ar雰囲気中にて1200℃で1時間焼結し、引き続いて1180℃で4時間熱処理して焼結体を作製した。この焼結後の熱処理は溶体化処理のために実施したものである。

0067

次いで、溶体化処理後の焼結体に時効処理として860℃×4時間の条件で熱処理を施した後、1.3℃/minの冷却速度で500℃まで徐冷して、目的とする焼結磁石を得た。ここで、合金組成(p=0.34、q=0.03)に基づく温度TBは約751℃である。従って、時効処理温度T(860℃)は[TB+50(801℃)<T<TB+150(901℃)]の範囲を満足するものである。磁石の組成はICP法により確認した。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。

0068

(実施例6〜7)
表1に組成を示す合金粉末を用いる以外は、それぞれ実施例5と同様にして焼結磁石を作製した。時効処理条件は実施例5と同一とした。ここで、各合金組成に基づく温度TB(℃)、[TB+50(℃)]、[TB+150(℃)]は表2に示す通りである。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。

0069

(比較例3)
実施例5と同組成の合金粉末を用いて、実施例5と同条件で焼結体を作製した。この焼結体に時効処理として775℃×4時間の条件で熱処理を施した後、1.3℃/minの冷却速度で500℃まで徐冷した。ここで、合金組成に基づく温度TBは実施例5と同様に約751℃であるため、時効処理温度T(775℃)は[TB+50(801℃)<T<TB+50(901℃)]の範囲を外れるものである。

0070

(比較例4)
実施例5と同組成の合金粉末を用いて、実施例5と同条件で焼結体を作製した。この焼結体に時効処理として925℃×4時間の条件で熱処理を施した後、1.3℃/minの冷却速度で500℃まで徐冷した。ここで、合金組成に基づく温度TBは実施例5と同様に約751℃であるため、時効処理温度T(925℃)は[TB+50(801℃)<T<TB+50(901℃)]の範囲を外れるものである。

0071

(実施例8〜10)
表1に組成を示す合金粉末を用いる以外は、実施例1と同一条件で焼結磁石を作製した。時効処理条件は実施例1と同一とした。ここで、各合金組成に基づく温度TB(℃)、[TB+50(℃)]、[TB+150(℃)]は表2に示す通りである。このようにして得た焼結磁石を後述する特性評価に供した。

0072

0073

0074

上述した実施例1〜10および比較例1〜4の焼結磁石について、2−17型結晶相の結晶c軸を含む断面をTEMで観察した。その結果、いずれも2−17型結晶相(粒内相)とCuリッチ相(粒界相)との二相組織を有していることが確認された。粒内相と粒界相のCu濃度を測定したところ、いずれも粒内相のCu濃度に対する粒界相のCu濃度の比は1.2倍以上5倍以下であることが確認された。次いで、前述した方法に基づいてTEM像の組成線分析を行い、線分析結果からCuリッチ相の平均間隔dを求めた。TEM像は100k倍とし、線分析の間隔は50nmとした。また、TEM像から前述した方法に基づいてCuリッチ相の平均厚さtを求めた。これらの結果を表3に示す。

0075

次に、各焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価し、残留磁化Mrと保磁力Hcjを測定した。さらに、BHトレーサで得た磁化曲線(メジャーループおよびマイナーループ)から前述した方法に基づいてH(minor)とH(major)とを求め、H(minor)/H(major)比を算出した。これらの結果を表3に示す。

0076

0077

表3から明らかなように、実施例1〜10の焼結磁石におけるCuリッチ相の平均間隔dはいずれも120nmを超えて500nm未満であり、またCuリッチ相の平均厚さtは20nm以下であった。その結果、実施例の焼結磁石は保磁力が200〜400kA/m、H(minor)/H(major)比が0.95未満であり、可変磁石に好適な磁石特性を有していることが確認された。これに対して、比較例1、3の永久磁石はCuリッチ相の平均間隔dが120nm以下であるため、H(minor)/H(major)比が0.95以上であり、良好な着磁性は得られていないことが確認された。比較例2、4の永久磁石はCuリッチ相の平均間隔dが500nm以上であるため、磁壁ピンニング型の保磁力機構が働いて500kA/m以上の保磁力が発現しており、可変磁石に好適な保磁力は得られていない。

実施例

0078

なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

0079

1…可変磁束モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…鉄心、5…固定磁石、6…可変磁石、11…可変磁束発電機、12…ステータ、13…ロータ、14…タービン、15…シャフト、16…ブラシ。

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