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技術 ベクトル制御装置、及び電動機制御システム

出願人 株式会社日立産機システム
発明者 荒川陽一郎金子大吾岩路善尚小沼雄作
出願日 2010年8月31日 (9年8ヶ月経過) 出願番号 2010-193969
公開日 2012年3月15日 (8年1ヶ月経過) 公開番号 2012-055041
状態 特許登録済
技術分野 交流電動機の制御一般 無整流子電動機の制御
主要キーワード 重畳方向 追従期間 正弦波特性 設定速 切替調整 高周波交番電圧 電流動作点 高周波電流信号
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重要な関連分野

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図面 (18)

課題

衝撃外乱などによる過渡的な軸偏差量Δθの増大に対しても、磁極位置を正しく推定する。

解決手段

電動機電流周波数とは異なる周波数の交番電圧励磁軸電圧の成分、及びトルク軸電圧の成分に分解して重畳する交番電圧発生手段6と、交番電圧により電動機電流に発生する高周波電流位相(arctan(ΔIqc/ΔIdc)、又はarctan(ΔIbc/ΔIac)))から重畳軸の位相を減算することにより、高周波電流と交番電圧Vdh*,Vqh*との位相差演算する高周波電流位相差演算手段7と、高周波電流位相差演算手段が演算した位相差が又となるように、重畳軸の位相方向を調整する重畳軸調整手段8と、重畳軸調整手段が方向を調整した重畳軸と励磁軸との間の軸偏差量を演算する軸偏差量演算手段9と、軸偏差量が零になるように、励磁軸の位相方向を調整する励磁軸調整手段10とを備える。

概要

背景

同期モータ誘導モータ等の交流電動機(以下,「電動機」と記す。)の駆動システムは、電動機駆動装置として、インバータに代表される電力変換装置が多用される。
高性能を求められる電動機駆動用電力変換装置は、電動機の回転子位置や回転速度など、回転子制御情報を精度よく検出する必要がある。近年の電力変換装置は、位置センサ速度検出器などを電動機に取りつけて、実際に回転角を測定することなく、電動機に発生する逆起電圧情報から、高精度な制御量推定を行う方法を使用している。しかし、逆起電圧情報から制御量推定を行う方法は、極低速付近では逆起電圧が絶対的に小さくなることから、適用が困難である。
そこで、低速での制御量推定方法として、電動機の突極性又は磁束飽和特性を利用する方法がある。
特許文献1の技術は、特に、永久磁石同期電動機の突極性を利用して、磁極位置の推定を行うものである。この技術は、電動機の励磁軸(dc軸)に交番磁界を発生させ、このdc軸に対して直交する推定トルク軸(qc軸)成分の脈動電流(あるいは電圧)を検出し、これに基づいて電動機内部の磁極位置を推定演算する。この技術は、実際の磁極軸と推定磁極軸との間に誤差がある場合に、dc軸からqc軸に対してインダクタンス干渉項が存在する特徴を利用している。
この技術は、高周波電圧あるいは電流を電動機に重畳することで発生する高周波電流あるいは電圧の変動分を検出してインダクタンスを逐次計測し、制御量として二次磁束位相を推定するものである。
特許文献2の技術は、電動機の磁気飽和特性を利用して磁極位置を推定演算するものであり、電動機に対して、ある方向へ電圧を印加したことで発生する電流の大きさに基いて、磁極位置を推定演算する。
これらの技術は、センサを用いることなく電動機の運転情報を精度良く推定することができるため、センサ及びケーブルコストや設置の手間を削減することができる。更には、センサの組み付け誤差や環境に起因するノイズ故障などによる電動機駆動不適切挙動を抑制することができる。

概要

衝撃外乱などによる過渡的な軸偏差量Δθの増大に対しても、磁極位置を正しく推定する。電動機電流周波数とは異なる周波数の交番電圧を励磁軸電圧の成分、及びトルク軸電圧の成分に分解して重畳する交番電圧発生手段6と、交番電圧により電動機電流に発生する高周波電流の位相(arctan(ΔIqc/ΔIdc)、又はarctan(ΔIbc/ΔIac)))から重畳軸の位相を減算することにより、高周波電流と交番電圧Vdh*,Vqh*との位相差演算する高周波電流位相差演算手段7と、高周波電流位相差演算手段が演算した位相差が又となるように、重畳軸の位相方向を調整する重畳軸調整手段8と、重畳軸調整手段が方向を調整した重畳軸と励磁軸との間の軸偏差量を演算する軸偏差量演算手段9と、軸偏差量が零になるように、励磁軸の位相方向を調整する励磁軸調整手段10とを備える。

目的

本発明は、衝撃外乱などによる過渡的な軸偏差量の増大に対しても、磁極位置を正しく推定することができる交流電動機駆動用ベクトル制御装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
0件

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請求項1

励磁軸電圧及びこの軸に直交するトルク軸電圧を制御することにより、交流電動機に流れる電動機電流の励磁軸成分及びこの軸に直交する電流成分を目標値になるように、ベクトル制御するベクトル制御装置において、前記電動機電流の周波数とは異なる周波数の交番電圧を前記励磁軸電圧の成分、及び前記トルク軸電圧の成分に分解して重畳する交番電圧重畳手段と、前記交番電圧の基準位相重畳軸とし、前記交番電圧により前記電動機電流に発生する高周波電流位相から前記重畳軸の位相を減算することにより、前記高周波電流と前記交番電圧との位相差演算する高周波電流位相差演算手段と、前記高周波電流位相差演算手段が演算した位相差が又は所定の目標値となるように、前記重畳軸の位相方向を調整する重畳軸調整手段と、前記重畳軸調整手段が方向を調整した前記重畳軸と前記励磁軸との間の軸偏差量を演算する軸偏差量演算手段と、前記軸偏差量が零又は所定の目標値になるように、前記励磁軸の位相方向を調整する励磁軸調整手段とを備えることを特徴とするベクトル制御装置。

請求項2

請求項1に記載のベクトル制御装置において、前記交流電動機は、突極性を有する同期電動機であり、前記重畳軸調整手段は、前記磁極軸と前記重畳軸とを略一致させ、前記軸偏差量演算手段が演算した前記軸偏差量は、前記磁極軸と前記励磁軸との間の位相差を表していることを特徴とするベクトル制御装置。

請求項3

請求項1に記載のベクトル制御装置において、前記交流電動機は、誘導電動機であり、前記目標値に基づいて、すべり周波数指令値を計算するすべり周波数指令演算手段と、前記重畳軸の位相変動速度に前記すべり周波数指令値を加算する加算器と、前記加算器の出力周波数を積分する積分器とをさらに備え、前記励磁軸調整手段が調整する前記励磁軸の位相方向は、前記積分器が出力する位相信号により定められることを特徴とするベクトル制御装置。

請求項4

請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のベクトル制御装置において、前記交流電動機は、その回転子の回転速度、回転子位置、及び励磁磁束位置の何れかの物理量を検出する制御量検出手段が取りつけられていないことを特徴とするベクトル制御装置。

請求項5

請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のベクトル制御装置において、前記交番電圧は、矩形波電圧及び正弦波電圧の何れか一方であることを特徴とするベクトル制御装置。

請求項6

請求項1に記載のベクトル制御装置において、前記励磁軸電圧、前記トルク軸電圧、前記電動機電流の励磁軸成分、及びこの軸に直交する成分、並びに前記目標値に基づいて、電動機の前記磁極軸と前記励磁軸との位相変分を演算する高速域軸偏差量演算手段と、前記重畳軸の位相変動速度が設定値よりも高速になったときには、前記励磁軸調整手段の入力を、前記軸偏差量演算手段が演算した軸偏差量から前記高速域軸偏差量演算手段が演算した高速域軸偏差量に切り替える軸偏差量切替手段とをさらに備え、前記交番電圧重畳手段は、前記高速になったときには、前記交番電圧の重畳を停止することを特徴とするベクトル制御装置。

請求項7

請求項1に記載のベクトル制御装置において、前記交流電動機の逆起電圧から電動機の前記磁極軸と前記励磁軸との位相変分を計算する高速域軸偏差量演算手段と、前記重畳軸の位相変動速度が設定値よりも高速になったときには、前記励磁軸調整手段の入力を前記軸偏差演算手段が演算した軸偏差量から前記高速域軸偏差量演算手段が演算した高速域軸偏差量に切り替える軸偏差量切替手段とをさらに備え、前記交番電圧重畳手段は、前記高速になったときには、前記交番電圧の重畳を停止することを特徴とするベクトル制御装置。

請求項8

請求項6又は請求項7に記載のベクトル制御装置において、前記軸偏差量切替手段は、前記重畳軸の位相変動速度が前記設定値よりも遅い設定速度より低速に減速したときに、前記交番電圧重畳手段が電圧重畳を開始し、前記重畳軸調整手段が前記重畳軸を前記交流電動機の回転子磁束追従させる応答速度から決まる追従期間を経過した後に、前記励磁軸調整手段の入力を、前記高速域軸偏差量演算手段の出力から前記軸偏差推定量演算手段の出力に切り替えることを特徴とするベクトル制御装置。

請求項9

請求項1又は請求項2に記載のベクトル制御装置において、前記重畳軸調整手段が重畳軸を電動機回転子磁束に追従する応答速度は、前記励磁軸調整手段の応答速度より速いことを特徴とするベクトル制御装置。

請求項10

請求項1又は請求項2に記載のベクトル制御装置において、前記重畳軸調整手段は、前記高周波電流位相差演算手段が演算した位相差の目標値を、前記重畳軸と前記磁極軸とが略一致するように設定することを特徴とするベクトル制御装置。

請求項11

請求項1又は請求項2に記載のベクトル制御装置において、励磁位相調整手段は、前記軸偏差量の目標値を、高周波電流によって発生する高周波電流の軌道が前記重畳軸と略一致する場合の励磁軸から見た重畳軸位相に設定することを特徴とするベクトル制御装置。

請求項12

請求項1又は請求項2に記載のベクトル制御装置において、前記高周波電流位相差演算手段が演算する位相差の目標値と前記軸偏差量の目標値とを、定常状態での電圧重畳方向が前記交番電圧の重畳によるトルクリプルを抑制する位相方向になるように設定することを特徴とするベクトル制御装置。

請求項13

請求項1又は請求項2に記載のベクトル制御装置において、前記軸誤差基準量は、前記重畳軸と前記交番電圧の重畳によって発生する高周波電流の軌道の位相との差分にゲインを乗算したものであることを特徴とするベクトル制御装置。

請求項14

交流電動機と、前記交流電動機を駆動する電力変換器と、励磁軸電圧及びこの軸に直交するトルク軸電圧を制御することにより、前記交流電動機に流れる電動機電流の励磁軸成分及びこの軸に直交する電流成分が目標値になるように、前記交流電動機をベクトル制御する電動機制御装置とを備えた電動機制御システムにおいて、前記電動機電流の周波数とは異なる周波数の交番電圧を前記励磁軸電圧の成分、及び前記トルク軸電圧の成分に分解して重畳する交番電圧重畳手段と、前記交番電圧の基準位相を重畳軸とし、前記交番電圧により前記電動機電流に発生する高周波電流の位相から前記重畳軸の位相を減算することにより、前記高周波電流と前記交番電圧との位相差を演算する高周波電流位相差演算手段と、前記高周波電流位相差演算手段が演算した位相差が零又は所定の目標値となるように、前記重畳軸の位相方向を調整する重畳軸調整手段と、前記重畳軸調整手段が方向を調整した前記重畳軸と前記励磁軸との間の軸偏差量を演算する軸偏差量演算手段と、前記軸偏差量が零又は所定の目標値になるように、前記励磁軸の位相方向を調整する励磁軸調整手段とを備えることを特徴とする電動機制御システム。

技術分野

0001

本発明は、高周波電圧重畳して発生する高周波電流に基づいて、電動機を制御するベクトル制御装置、及び電動機制御システムに関する。

背景技術

0002

同期モータ誘導モータ等の交流電動機(以下,「電動機」と記す。)の駆動システムは、電動機駆動装置として、インバータに代表される電力変換装置が多用される。
高性能を求められる電動機駆動用電力変換装置は、電動機の回転子位置や回転速度など、回転子制御情報を精度よく検出する必要がある。近年の電力変換装置は、位置センサ速度検出器などを電動機に取りつけて、実際に回転角を測定することなく、電動機に発生する逆起電圧情報から、高精度な制御量推定を行う方法を使用している。しかし、逆起電圧情報から制御量推定を行う方法は、極低速付近では逆起電圧が絶対的に小さくなることから、適用が困難である。
そこで、低速での制御量推定方法として、電動機の突極性又は磁束飽和特性を利用する方法がある。
特許文献1の技術は、特に、永久磁石同期電動機の突極性を利用して、磁極位置の推定を行うものである。この技術は、電動機の励磁軸(dc軸)に交番磁界を発生させ、このdc軸に対して直交する推定トルク軸(qc軸)成分の脈動電流(あるいは電圧)を検出し、これに基づいて電動機内部の磁極位置を推定演算する。この技術は、実際の磁極軸と推定磁極軸との間に誤差がある場合に、dc軸からqc軸に対してインダクタンス干渉項が存在する特徴を利用している。
この技術は、高周波電圧あるいは電流を電動機に重畳することで発生する高周波電流あるいは電圧の変動分を検出してインダクタンスを逐次計測し、制御量として二次磁束位相を推定するものである。
特許文献2の技術は、電動機の磁気飽和特性を利用して磁極位置を推定演算するものであり、電動機に対して、ある方向へ電圧を印加したことで発生する電流の大きさに基いて、磁極位置を推定演算する。
これらの技術は、センサを用いることなく電動機の運転情報を精度良く推定することができるため、センサ及びケーブルコストや設置の手間を削減することができる。更には、センサの組み付け誤差や環境に起因するノイズ故障などによる電動機駆動不適切挙動を抑制することができる。

先行技術

0003

特許第3312472号公報
特開2002−78392号公報

発明が解決しようとする課題

0004

特許文献1の技術は、dc軸に重畳した交番電圧によって発生した高周波電流のqc軸成分に基づいてdc軸とd軸との間の軸偏差量Δθを検出している。同期型モータでは、後記するインダクタンスの突極性により、上述の高周波電流の電圧重畳方向の直交方向成分は、軸偏差量Δθに対してsin2Δθに比例する傾向を持つ。そのため、Δθが小さいときは、sinΔθ=Δθが成り立ち、ある程度の精度をもって軸偏差量Δθを推定することができる。
しかし、ブレーキや衝撃外乱による急激な(過渡的な)軸偏差量Δθの増大が発生すると、sinΔθ=Δθの近似成立しなくなる。この場合、軸偏差量Δθが増大しているのにもかかわらず、高周波重畳による軸偏差量Δθの推定量は減少するように観測されるため、推定誤差が増大し、応答設計値より小さくなったり、遂には脱調するという問題が発生する。
また、特許文献2の技術は、インダクタンスの飽和特性を利用して位相偏差(軸偏差量Δθ)を推定する方式である。しかし、高周波重畳によって得られるインダクタンスの飽和特性は非線形特性であり,突極性の場合のように正弦波などの関数モデル化することも困難である。このため、過渡的な軸誤差は正確に推定することができず、同様の問題が発生する。

0005

そこで、本発明は、衝撃外乱などによる過渡的な軸偏差量の増大に対しても、磁極位置を正しく推定することができる交流電動機駆動用のベクトル制御装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

前記課題を解決するため、本発明は、励磁軸電圧(Vdc*)及びこの軸に直交するトルク軸電圧(Vqc*)を制御することにより、交流電動機に流れる電動機電流の励磁軸成分(Idc)及びこの軸に直交する電流成分(Iqc)を目標値になるように、ベクトル制御するベクトル制御装置において、
前記電動機電流の周波数とは異なる周波数の交番電圧を前記励磁軸電圧の成分、及び前記トルク軸電圧の成分に分解して重畳する交番電圧重畳手段(6)と、前記交番電圧の基準位相重畳軸p軸)とし、前記交番電圧により発生する高周波電流を励磁軸成分(ΔIdc)及びこの励磁軸に直交する電流成分(ΔIqc)と分解し、励磁軸から見た前記高周波電流の位相(arctan(ΔIqc/ΔIdc)、又はarctan(ΔIbc/ΔIac)))から前記重畳軸及び励磁軸の間の位相差(θpdc又はθp)を減算することにより、前記交番電圧により前記電動機電流に発生する高周波電流と前記交番電圧との位相差(θivh)を演算する高周波電流位相差演算手段(7)と、前記高周波電流位相差演算手段が演算した位相差(θivh)が又は所定の目標値となるように、前記重畳軸の位相方向(θp)を調整する重畳軸調整手段(8)と、前記重畳軸調整手段が方向を調整した前記重畳軸(p軸)と前記励磁軸(dc軸)との間の軸偏差量(Δθc)を演算する軸偏差量演算手段(9)と、前記軸偏差量(Δθc)が零又は所定の目標値になるように、前記励磁軸(dc軸)の位相方向を調整する励磁軸調整手段(10)とを備えることを特徴とする。なお、( )内の文字・符号は例示である。

発明の効果

0007

本発明によれば,衝撃外乱などによる過渡的な軸偏差量の増大に対しても、磁極位置を正しく推定することができる。このため、過渡的な位相偏差Δθを適切に検出することができ、ブレーキや衝撃外乱による急激な軸偏差増大に対しても応答の劣化や脱調などの問題を発生させることなく運転を継続することができるようになる。

図面の簡単な説明

0008

本発明の第1実施形態の電動機制御システムの構成図である。
本発明の第1実施形態で使用される各座標系記号に関する説明図である。
交番電圧発生手段のブロック構成図である。
軸誤差基準量演算手段のブロック構成図である。
重畳位相調整手段のブロック構成図である。
軸偏差量演算手段のブロック構成図である。
励磁位相調整手段のブロック構成図である。
軸誤差基準量の特性を説明するための説明図である。
比較例の電動機制御システムの構成図である。
本発明の第2実施形態の電動機制御システムの構成図である。
本発明の第2実施形態における励磁位相切替調整手段のブロック構成図である。
本発明の第2実施形態における加減速シーケンスの説明図である。
本発明の第3実施形態である電動機制御システムの構成図である。
本発明の第4実施形態を説明するための高負荷時の軸誤差基準量特性の説明図である。
本発明の第6実施形態のブロック構成図である。
本発明の第6実施形態における交番電圧発生手段のブロック構成図である。
本発明の第6実施形態における軸誤差基準量演算手段のブロック構成図である。

実施例

0009

以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。

0010

(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面を用いながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の電動機制御システムの構成図であり、図2は、電動機制御において使用される座標系と記号の定義を示す図である。

0011

図1において、電動機制御システム100は、電力変換装置50と、電動機1とを備え、電力変換装置50(50a)は、電動機制御装置40(40a)と、電力変換器11と、電流検出手段2とを備える。
電流検出手段2は、電動機1に流れる三相電流Iu,Iv,Iwを検出し、三相電流信号Iuc,Ivc,Iwcを出力する。電力変換器11は、電動機制御装置40が生成した三相指令電圧Vu,Vv,Vwに基づいて、直流電源Eの直流電力三相交流電力に変換して、三相交流電力を電動機1に供給する。
電動機1は、三相の同期電動機であり、図示しないが、複数の永久磁石貼付された回転子が固定子の内部を回転するように構成されている。

0012

図2において、ab軸は固定子座標系であり、a軸は一般的にu相巻線位相を基準にとられる。dq軸は回転子座標系であり、回転子と同期して回転する。d軸は永久磁石同期電動機の場合、一般的に回転子に取り付けられた永久磁石の位相を基準にとられ、磁極軸ともいう。dc−qc軸(以降、dqc軸と表記する)は、電動機制御手段がd軸方向と想定している座標系であり、制御軸ともいう。なお、電動機制御装置の目的の一つはd軸(磁極軸)とdc軸(励磁軸)を一致させることにある。

0013

図1において、電動機制御装置40aは、座標変換手段3と、電圧演算手段4と、座標変換手段5と、交番電圧発生手段6と、高周波電流位相差演算手段としての軸誤差基準量演算手段7と、重畳位相調整手段8と、軸偏差量演算手段9と、励磁位相調整手段10とを備え、d軸電流Idc及びq軸電流Iqcを電流指令値Idc*,Iqc*に一致させるように電流制御する。なお、電動機制御装置40aは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)、及びプログラムから構成されている。

0014

座標変換手段3は、三相電流信号Iuc,Ivc,Iwcをdc−qc軸座標系に変換して、電流検出値Idc,Iqcを出力する。座標変換手段5は、電圧指令値Vdc*,Vqc*を三相電圧指令Vu,Vv,Vwに変換し、電力変換器11に出力する。一方、電圧演算手段4は、上位のシステムで演算された電流指令値Idc*,Iqc*を入力し、電流検出値Idc,Iqcを電流指令値Idc*,Iqc*に一致させるべく、電圧指令値Vdc*,Vqc*を演算し、演算結果を出力する。

0015

ここで、電流指令値Idc*は、通常ゼロであるが、弱め界磁起動時には、ゼロに設定しないことがある。例えば、起動時には、d軸の電流検出値Idcを徐々に増加することにより、回転子を所定の回転位置に固定させて、同期運転を行ってから、センサレス制御移行することがある。

0016

以上が電動機制御における電流制御の基本的な流れである。上記の説明ではdc軸がd軸に一致していることを前提としている。このため、電流制御と並行して、dc軸をd軸に一致(同期)させる制御が必要である。dc軸とd軸との同期のためには、dc軸とd軸の間の軸偏差量を取得する必要があり、以下、高周波重畳方式によって、位置センサを使うことなく軸偏差量を求める方法について述べる。
dq座標系において、電動機の電圧Vd,Vq,電流Id,Iq,磁束φd,φqは、(数1)で表わされる。




また、磁気飽和等の非線形現象を無視すれば、磁束φd,φqと電流Id,Iqとの関係は(数2)のように表される。インダクタンスLd,Lqは、d軸方向,q軸方向の2相換算値であり、前記の突極性は、両者の値が異なっていることを表す。





(数1)及びこれ以降の数式において、sは微分演算子を示し、ωは回転子の回転速度を示し、rは一次抵抗値を示す。ここでは、高周波領域を考慮するため、抵抗による電圧降下を十分無視できるとし、更に回転速度ωも十分低速と仮定すると、(数3)が得られる。

0017

(数3)の演算子Δは、高周波重畳による変分を表す。(数2)も高周波重畳による変分のみを考慮すれば、(数4)のように表現することができる。




(数3),(数4)から、高周波電圧を与えた場合に発生する高周波電流を(数5)のように導くことができる。

0018

図2のpz軸は高周波重畳座標系であり、p軸方向に例えば矩形波交番電圧を重畳するとする。(数5)を座標変換してpz軸上の関係(数6)が得られる。




添え字p,zはpz座標に変換された値であることを示す。また、θpdはd軸から見たp軸の位相を示している。記号中のR(・)は(数7)で表わされる回転行列を示す。

0019

(数6)において、交番電圧を重畳するのはp軸のみなので、Δvz=0とすると、(数8)が得られる。




(数8)から、電動機1に突極性がある場合(Ld≠Lq)であって、p軸とd軸とが一致(同期)しているとき(θpd=0)、高周波電流はp軸上にあり、同期が外れると、高周波電流はp軸からずれるという性質があることが分かる。
したがって、重畳している交番電圧の位相と、発生する高周波電流の位相との差を観測することにより、p軸とd軸との間の軸誤差情報を推定することができる。
また、重畳している交番電圧の位相と、これにより発生する高周波電流の位相とが一致するように制御すれば、p軸とd軸とが一致することが判る。

0020

従来の技術では、重畳位相であるp軸はdc軸に一致するか、dc軸から所定量ずれた位相に一致させており、いずれにせよdqc軸とpz軸とは同期していた。これに対して、本実施形態は、p軸がdqc軸と独立して制御されることを特徴とする。
以下、本実施形態で最も特徴的である重畳位相調整手段8と、それに伴う励磁位相調整手段10とについて説明する。

0021

図3は、交番電圧発生手段6の構成図であり、図4は、軸誤差基準量演算手段7の構成図である。図3において、交番電圧発生手段6(図1)は、乗算器6a、ベクトル演算器6c、及び座標変換手段6bを備え、乗算器6aが振幅±1の矩形波電圧振幅値Vpとを乗算し、乗算結果である、p軸方向の矩形波電圧と値0とでベクトル演算器6cが列ベクトルを生成し、座標変換手段6bがθpdcを用いて数7の座標変換を行い、交番電圧信号Vdh*,Vqh*を生成する。なお、振幅±1の矩形波電圧は、正負の符号を示しているので、Sign(Vp)として出力される。座標変換に用いる位相θpdcは、dc軸から見たp軸位相角である。矩形波電圧は平均値がゼロであり、電動機の電流制御の応答設計より高周波であるため、電流制御系に影響を与えることはない。そして、図1加算器12が、交番電圧信号Vdh*,Vqh*と前述の電圧指令Vdc*,Vqc*とを加算する。

0022

図4において、軸誤差基準量演算手段7は、減算器7b、7dと、1/Zの位相器7a,7cと、交番電圧符号補正手段7eと、高周波電圧電流位相差演算手段42と応答調整ゲイン43とを備え、電流検出値Idc,Iqcから高周波重畳により発生した高周波電流を抽出し、軸誤差基準量Xθpdを出力する。ここで、位相器7a,7cは、サンプリング時間Tだけ時間的にずらす、Z=esTの機能ブロックである。電流検出手段2による電流検出と、軸誤差基準量演算手段7の演算周期と、高周波交番電圧周期を同期させることで、発生する高周波電流のピーク値を適切に検出することができる。

0023

減算器7b,7dと位相器7a,7cとは、電流検出値Idc,Iqcの一回差分をとり、高周波交番電圧によって発生する高周波電流成分ΔIdc,ΔIqcを抽出する。交番電圧符号補正手段7eは、Sign(Vp)信号を用いて、交番電圧の正負を補償する。高周波電圧電流位相差演算手段42は、(数9)の演算を行う。




(数9)の演算により、重畳交番電圧と高周波電流との位相差θivhを得ることができる。応答調整ゲイン43は、位相差θivhに適当な応答調整ゲインをかけ、軸誤差基準量Xθpdとして出力する。なお、通常Ld<Lqの場合、θpdcとθivhは符号が反転しており、正のθpdcに対して負のθivhが得られる。よって応答調整ゲイン43を負の値にしてθpdcとXθpdの符号を合わせる。

0024

図5は、重畳位相調整手段8のブロック構成図である。
重畳位相調整手段8は、目標値生成器8aと、加算器8bと、PI制御器8cと、積分器8d、反転器8eとを備え、軸誤差基準量Xθpdを目標値Xθpd0と一致させるべくp軸位相を操作する。本実施形態では、重畳位相調整手段8は、この機能をPI制御により実装した。目標値Xθpd0は通常ゼロでよい。加算器8bは、軸誤差基準量演算手段7(図4)が出力したXθpdの値と、目標値生成器8aが出力した目標値Xθpd0との偏差を演算する。図2の軸誤差基準量の定義から、加算器8bが出力した偏差が正のときは重畳位相は負に動く必要があるため、反転器8eで偏差を反転させる。PI制御器8cは、反転器8eが出力した偏差に(Kp+KI/s)を乗算する。積分器8dは、PI制御器8cが演算した演算結果を積分し、P軸位相θPを出力する。

0025

以上で説明した交番電圧発生手段6から軸誤差基準量演算手段7、重畳位相調整手段8は、p軸位相への電圧重畳と検出した高周波電圧電流位相差θivhの関係だけで構成される独立した制御系となっており、dc軸とd軸との同期制御系や、dc軸位相上で計算される電流制御系とは独立して構成されている点に注目されたい。

0026

次に、dc軸をd軸に一致させる励磁位相調整手段10の動作について述べる。(数8)で考察したように、重畳位相調整手段8のゲインを上げて、独立した重畳軸制御系を十分高応答に設定すれば、励磁位相調整手段10からみて、d軸とp軸とは常に一致していると考えることができる。よって、dc軸からみたp軸位相θpdcは、常にd軸とdc軸との位相差を表わしていることになる。

0027

図6は、軸偏差量演算手段9のブロック構成図である。
軸偏差量演算手段9は、この原理に基づいて、d軸とdc軸との位相差である軸偏差量Δθcを計算する。軸偏差量演算手段9は、減算器9aと、反転器9bと、低域通過フィルタLPF)9cとを備え、減算器9aがp軸位相θpからdc軸位相θdcを減じ、θpdcの信号を出力する。また、反転器9bは、θpdcの信号を反転し、低域通過フィルタ9cを介して、Δθcの信号を出力する。すなわち、単純にΔθc=−θpdcとなっている。

0028

図7は、励磁位相調整手段10のブロック構成図である。
励磁位相調整手段10は、目標値生成器10aと、減算器10bと、PI制御器10cと反転器10dとを備え、軸偏差量Δθcを目標値Δθc0に一致させるべく、出力周波数ω1を出力する。この出力周波数ω1が積分器(図1)により積分されることにより、励磁位相調整手段10は、dc軸位相θdcを操作する。減算器10bは、目標値生成器10aが生成した目標値Δθc0から軸偏差量Δθcを減算し、反転器10dが励磁位相調整手段の動作方向を考慮して減算器10b出力の偏差を反転させる。PI制御器10cは、反転器10eの出力を比例積分演算する。目標値Δθc0は通常ゼロでよい。

0029

次に、本実施形態の効果について述べる。
図8は、本実施形態で定義した軸誤差基準量Xθpdとpd間の軸誤差θpdとの関係を示している。インダクタンスの突極性を利用する高周波重畳方式では、軸誤差θpdの情報は(数6)に示すように、sinθpd,cosθpdのように三角関数で表現される。そのため、図8のように軸誤差基準量Xθpdは正弦波状の特性を有する。そのため、θpdが大きくなるとpd間軸誤差の正しい検出ができなくなる。

0030

例えば、図8の点A、及び点Bは、軸誤差θpdが大きく異なるにもかかわらず、軸誤差基準量Xθpdは一致している。このことは、pd間軸誤差が点B相当の値を持つにもかかわらず、高周波重畳方式では点A相当の軸誤差しかないものと判断してしまうことになる。

0031

図9は、比較例の電動機制御システムの構成図である。この構成図は、従来技術を第1実施形態の各手段を用いて記載している。
電動機制御システム100bは、電動機制御システム100a(図1)に対して、重畳位相調整手段8、及び軸偏差量演算手段9が無く、軸誤差基準量演算手段7の出力信号XθpdがΔθcとして直接励磁位相調整手段10に入力されている。
また、電動機制御システム100bは、交番電圧発生手段6に入力される信号θpdcはゼロであり、そのゼロの値が軸誤差基準量演算手段7に入力される。
従来、多くの場合高周波電圧は、dc軸に重畳されていた(θpdc=0)。この場合、p軸とdc軸は一致するため、θpd=Δθcとなり、軸誤差基準量演算手段の出力Xθpdは直接励磁位相調整手段10に入力されることになる。

0032

この場合、励磁位相調整手段10の応答に対して過大な(急激に変化する)負荷が印加され、d軸とdc軸との軸偏差量Δθ(=θpd)が増大した場合、前述の軸誤差基準量の正弦波特性により実際値より軸偏差量が小さく見積もられてしまい、応答特性の劣化をもたらし、さらには脱調に至る可能性がある。対策としては、励磁位相調整手段10の応答を上げる方法があるが、dc軸とd軸との同期制御は電流制御と関連するため、自由に応答を設計できない場合がある。

0033

一方、本実施形態では、p軸とd軸との同期制御は電流制御やdc軸とd軸との同期制御とは独立して構成される。そのため、応答を自由に設定することができ、過大な負荷に対して十分に、p軸とd軸とを一致させることができる。このとき、励磁位相調整手段10は、過渡的な軸誤差の増大に対してもp軸位相を介して正しい軸偏差量を推定することができるため、軸誤差基準量Xθpdの正弦波特性の影響を受けることなく、電動機制御を持続することができる。

0034

以上のように、本実施形態では、p軸とd軸との同期制御と、dc軸とd軸との同期制御とを2段構成にし、p軸をdc軸と独立して調整する。これにより、電動機の突極性を利用する高周波電圧重畳方式において、原理的問題となる軸誤差基準量の正弦波特性からくる軸偏差量推定誤差の問題を解決することができ、急激に変化する負荷の印加や急加減速に対しても脱調することなく電動機制御を持続することが可能になる。
なお、本実施形態では、励磁位相調整手段10としてPI制御を実装したが、オブザーバによる実装を行うこともできる。

0035

(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態の電動機制御システムの構成図である。
本実施形態の電動機制御システム100cは、図1の構成に対し、電動機1の誘起電圧に基いて軸偏差量Δθ(=θpd)を推定する第2の軸偏差量演算手段101が追加されており、励磁位相調整手段10が軸偏差量として軸偏差量演算手段9と第2の軸偏差量演算手段101との何れかを選択する切り替え機能を付与した励磁位相切替調整手段102に変更されている。切替後の軸偏差量をΔθhとしたので、軸偏差量演算手段9の出力信号の記号をΔθhに変更している。第2の軸偏差量演算手段101は,電動機の特性パラメータを用いて(数10)で軸偏差量Δθemfを推定する。




(数10)において、ω1は出力周波数であり、θdcの微分値である。第2の軸偏差量演算手段101は、高周波電圧の重畳を必要としないが、誘起電圧が小さくなる極低速の運転条件では、軸偏差量の満足な推定ができなくなる。一方、第1実施形態の制御方法は、停止時から低速でも適用できるが、高周波電圧重畳による高周波電流によって、騒音が発生する可能性があり、また、ハードウェア電流限界によりトルクが制限される可能性がある。このため、本実施形態では、極低速で第1実施形態の制御方法を用い、誘起電圧が十分大きくなる回転速度で第2の軸偏差量演算手段に切り替えるようにしている。

0036

図11は、励磁位相切替調整手段102のブロック構成図である。切替テーパゲイン111により、軸偏差量演算手段9の出力Δθhと第2の軸偏差量演算手段101の出力Δθemfとを切り替える。

0037

次に、図12を用いて、加減速時の制御方式切替シーケンスを説明する。
加速時、出力周波数ω1が所定の閾値Th2以上となった時点t1で、切替テーパゲイン111のゲインGの値を1に任意の時間で推移させる。ゲインGの値が1に到達する時点t2で、軸偏差量は完全にΔθemfに切り替わるので、高周波電圧振幅をゼロに推移させ、高周波電圧重畳を終了させる。

0038

減速時には、出力周波数ω1が閾値Th2以下になった時点t3で、高周波電圧重畳を再開する。さらに減速して出力周波数ω1がTh1以下になった時点t4で、切替テーパゲイン111のゲインGの値を1から0まで推移させる。
p軸とd軸との同期制御はその他の電動機制御系と独立しているため、時刻t3から時刻t4までの間に、p軸とd軸とを一致させる同期制御が達成され、スムーズな軸偏差量の切り替えが実現される。なお、高周波電圧振幅がゼロになっている間、θpの値はθdcの値を反映させておく。これにより、高周波電圧重畳が再開されたときのθpの初期値がθdcとなり、p軸とd軸との一致が迅速に行われる。
以上説明したように、本実施形態では、p軸とd軸とを一致させる同期制御をその他の制御系と独立して構成することで、軸偏差量切り替えに際して発生する軸偏差量の切替ショックを防ぎ、スムーズな切り替えと運転の持続とを実現することができる。

0039

(第3実施形態)
前記各実施形態では、電動機として、同期電動機を用いていたが、誘導電動機を用いることができる。
図13は、本発明の第3実施形態である電動機制御システムの構成図である。
電動機制御システム100dは、電動機1の代わりに誘導電動機131を用い、すべり補正手段132、及び加算器14が追加されている点が、第1実施形態、及び第2実施形態と相違する。

0040

誘導電動機131の場合、回転子形状による突極性は存在しないが、一次側の誘導電流により励磁される二次磁束による磁気飽和現象により、等価的にインピーダンスの突極性が現れるため、第1実施形態の方法を適用することができる。すなわち、誘導電動機の回転子(図示せず)は磁石を持たないため、重畳位相調整手段8(図5)は、p軸に追従させるd軸が二次磁束の位相に相当させるようにすればよい。
図13における励磁軸たるdc軸をd軸とするのが誘導電動機制御の慣例だが、第1実施形態、及び第2実施形態との関連から以降、励磁軸をdc軸と呼び、二次磁束位相をd軸と呼ぶものとする。

0041

すべり補償手段132は、誘導電動機131の二次時定数T2を用いて、(数11)のようにすべり補償値ωs*を計算する。




加算器14は、励磁位相調整手段10の出力((重畳軸の)位相変動速度)ω1に前述のすべり補償値ωs*を加算し、出力周波数ω1**を出力する。誘導電動機131の発生トルクτMは(数12)で表わされる。




第1実施形態と同様に、励磁位相調整手段10はd軸とdc軸とを同期させる。その結果、二次磁束のqc軸成分φqcがゼロとなり、(数12)より、Iqcにより発生トルクを制御できるようになる。
また、すべり補償を実行しているため、励磁位相調整手段10の出力ω1は、定常状態において回転子の速度推定値となる。
以上説明したように、本実施形態の電動機制御システム100dによれば、誘導電動機131の磁気飽和に起因する突極性を利用する高周波電圧重畳方式において原理的問題となる軸誤差基準量の正弦波特性からくる軸偏差量推定誤差の問題を解決することができる。このため、本実施形態の電動機制御システム100dは、急激な負荷印加や急加減速に対しても脱調することなく電動機制御を持続することが可能である。

0042

(第4実施形態)
前記各実施形態では、電動機1又は電動機131のインダクタンスLd,Lqは線形であると仮定していた。しかし、電動機形状あるいは高負荷領域電流量が増加した場合、磁気飽和などの非線形現象が発生する。その結果、図8の軸誤差基準量特性は電流動作点によって変化する。

0043

図14は、高負荷時の軸誤差基準量特性の例を表す。正弦波状の特性が変化し、Xθpd=0がθpd=θphiの点で交差しており、原点で交差していない点に注目されたい。このような場合、第1実施形態、及び第2実施形態の方法では、重畳位相調整手段8はXθpd=0となるようp軸を制御するため、定常状態でのp軸はd軸からθphiだけずれた位相方向に収束してしまう。

0044

このような状況においても、第1実施形態及び第2実施形態に簡単な修正を行うだけで対応することができる。対策としては2通りの方法が考えられる。
一つ目の方法は、図14のθpd=0の点Bを動作点に設定する方法である。具体的には図5に示す重畳位相調整手段8内の軸誤差基準量の指令値Xθpd0を点Bに相当する適切な値に設定すればよい。その結果、重畳位相調整手段8はXθpd0が点Bに相当する値になるようにθpを調整し、結果的にθpdがゼロになり、p軸とd軸とは一致する。
二つ目の方法は、図14の点Aを動作点として設定する方法である。具体的には、上述の指令値Xθpd0は0のままにし、励磁位相調整手段10の指令値Δθc0を点Aによるずれ相当の値−θphiに設定する。重畳位相調整手段8は、p軸をd軸から位相θphiだけ進んだ方向にp軸を同期させる。

0045

逆にいえば、この二つ目の方法は、p軸からθphiだけ位相を遅らせた方向にd軸があるため、軸偏差量Δθc=−θphiとなるよう補正をすることで、dc軸とd軸とを一致させることが可能になる。
これらの補正で用いるΔθc0,Xθpd0の値は、例えば、電流検出値、又は電流指令値を入力とするテーブルによって実装する。簡易的には入力にゲインをかけて実装すればよい。
以上のように本実施形態によれば、電動機の非線形特性によりインダクタンスの突極性が変化する高負荷条件においても、問題なく電動機制御を持続することが可能になる。

0046

(第5実施形態)
Δθc0,Xθpd0の両方の値を適切に設定することで、図14中の任意の点を動作点に設定できる。これにより、動作点での高周波電圧位相方向を設定することができるため、例えば、高周波電流によるトルク振動トルクリプル)が発生しないようなΔθc0,Xθpd0の組み合わせを選ぶことができる。
以上のように、本実施形態のようにΔθc0,Xθpd0を設定を適切に選ぶことで平衡時の高調波重畳位相を操作することができ、高周波電圧重畳によるトルクリプルを抑制することができ、騒音や振動を最小化することができる。

0047

(第6実施形態)
前記各実施形態の電動機制御装置40a,40b,40c,40dは、高周波交番電圧をdqc軸上で電圧指令に加算し、また、dqc軸上の検出電流Idc、Iqcに基づいて軸誤差基準量を計算してきた。この場合、電動機制御装置40a,40b,40c,40dは、交番電圧、及び高周波電流を、重畳位相調整手段8にとって本来無関係であるdqc軸に一旦座標変換する処理をキャンセルするために交番電圧発生手段6、及び軸誤差基準量演算手段7にはθdcに由来するθpdcが入力する必要があった。これは数式上はdqc軸から独立している重畳位相調整手段にとって、不要な計算を行っていることになり、サンプ遅れ演算誤差の影響が外乱として作用する可能性がある。本実施形態では、交番電圧をab軸上で加算することで、重畳位相調整手段の独立性を向上させる。

0048

図15は、本実施形態の電動機制御システムの全体構成図である。以下、図面を用いて第1実施形態との違いを説明する。
電動機制御システム100dは、座標変換手段5の代わりに、2相3相変換手段13及び座標変換手段16を備え、座標変換手段3の代わりに、3相2相変換手段14、及び座標変換手段15を備え、交番電圧発生手段6の代わりに、交番電圧発生手段151を備え、軸誤差基準量演算手段7の代わりに、軸誤差基準量演算手段152を備えている。

0049

交番電圧発生手段151は、重畳位相θpに応じた交番電圧を生成する。このとき、高周波電圧電流位相差演算手段42b(図16)は、pz座標からab座標へと座標変換する。加算器12(図15)は、交番電圧発生手段151の出力信号Vah*,Vbh*と、ab軸からみた電圧指令Vac*,Vbc*とを加算する。
3相2相変換手段14は、ab軸からみた高周波電流信号Iac,Ibcを軸誤差基準量演算手段152に入力する。

0050

図17は、軸誤差基準量演算手段152のブロック構成図である。
軸誤差基準量演算手段152は、位相器152a,152c、及び加算器152b,152dが高周波電流信号Iac,Ibcの1回差分を演算し、この演算結果から交番電圧符号補正手段41を介して高周波電流成分ΔIac,ΔIbcを計算し、次に、高周波電圧電流位相差演算手段42bが(数9)の代わりに(数13)の計算を行う。




このように構成することにより、交番電圧及び高周波電流はdqc軸に交番電圧発生手段151と軸誤差基準量演算手段152とに、θdcに由来する信号が入力されなくなる。その結果、dqc軸の動作がサンプル遅れや演算誤差によって重畳位相調整手段8に影響することがなくなり、安定した電動機制御を実現できる。

0051

1電動機(交流電動機、同期電動機)
2電流検出手段
3座標変換手段(uvw座標系からdqc座標系)
4電圧演算手段
5 座標変換手段(dqc座標系からuvw座標系)
6交番電圧発生手段
7軸誤差基準量演算手段(高周波電流位相差演算手段)
7e 交番電圧符号補正手段
8重畳位相調整手段
9軸偏差量演算手段
10励磁位相調整手段
11電力変換器
132相3相変換手段(ab座標系からuvw座標系)
14 2相3相変換手段(uvw座標系からab座標系)
15 座標変換手段(ab座標系からdqc座標系)
16 座標変換手段(dqc座標系からab座標系)
40,40a,40b,40c,40d電動機制御装置(ベクトル制御装置)
42高周波電圧電流位相差演算手段
43応答調整ゲイン
50,50a,50b,50c,50d電力変換装置
100,100a,100b,100c,100d電動機制御システム
101 第2の軸偏差量演算手段
102 励磁位相切替調整手段
111切替テーパゲイン
131誘導電動機
132すべり補償手段
151 交番電圧発生手段
152 軸誤差基準量演算手段(高周波電流位相差演算手段)
E 直流電源

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