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技術 量子相関光子対発生方法及び量子相関光子対発生装置

出願人 沖電気工業株式会社
発明者 荒平慎
出願日 2010年8月27日 (9年4ヶ月経過) 出願番号 2010-191077
公開日 2012年3月8日 (7年10ヶ月経過) 公開番号 2012-048042
状態 特許登録済
技術分野 光偏向、復調、非線型光学、光学的論理素子
主要キーワード 設定指針 出力比較器 規定状態 波長組み合わせ 光結合レンズ 光ローパスフィルタ 任意スケール 誘電体多層膜フィルター
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重要な関連分野

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図面 (9)

課題

発生される相関光子対の数の期待値を一定の値に安定して維持しながら動作する。

解決手段

非線形光学媒質20と、励起光を出力する励起光源12と、補助信号光を出力する補助信号光源14と、励起光と補助信号光とを合波して出力する光合波器16と、光合波器から出力される出力光を非線形光学媒質に入力させる光結合器18と、非線形光学媒質から出力される出力光を、補助信号光成分補助アイドラー光成分とに分別して出力する光分岐部22と、補助信号光成分及び補助アイドラー光成分の強度をそれぞれ検出する第1フォトディテクター24及び第2フォトディテクター26と、制御信号発生部30とを具えている。制御信号発生部は、第1及び第2フォトディテクターが検出した強度に基づき、相関光子対発生過程を制御するための制御信号を発生する。

概要

背景

近年、量子暗号量子コンピュータなど、量子力学ベルでの物理現象を利用した量子情報通信技術が注目を浴びている。量子力学的相関を有する光子対、すなわち量子もつれ光子対は、光子の非局所性を応用した量子情報通信システムを実現するための重要な要素である。

量子もつれ光子対を発生する手段として、従来から用いられている手法の一つは、2次あるいは3次の非線形光学媒質中での自然パラメトリック蛍光を用いる方法である。

図1を参照して、2次あるいは3次の非線形光学媒質10中での自然パラメトリック蛍光の発現過程について説明する。2次あるいは3次の非線形光学媒質10に、波長λp、波数kp、光角振動周波数ωpの励起光光子を入力すると、波長λs、波数ks、光角振動周波数ωsの信号光光子と、波長λi、波数ki、光角振動周波数ωiのアイドラー光光子とが出力される。この過程が自然パラメトリック蛍光の発現過程である。このとき、信号光光子、アイドラー光光子は必ず1組の対(ペア)となって同時に発生する。

2次の非線形光学媒質を用いた場合、励起光光子、信号光光子、アイドラー光光子の波数、光角振動周波数の間には、それぞれ運動量保存則エネルギー保存則に相当する次式(1)及び(2)で与えられる関係がある。
kp=ks+ki+K (1)
ωp=ωs+ωi (2)

なお、2次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は、自然パラメトリック下方変換(Spontaneous parametric down conversion、以下SPDCと略記することもある。)とも呼ばれる。

一方、3次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は自然4光波混合(Spontaneous four wave mixing、以下SFWMと略記することもある。)とも呼ばれる。各光子の波数、光角周波数は次式(3)及び(4)で与えられる関係を満足する。
2kp=ks+ki+K (3)
2ωp=ωs+ωi (4)

ここで、式(1)及び式(3)に含まれるKは、非線形光学定数周期変調構造の周期に対応するパラメータである。このような非線形光学定数の周期的変調構造は、擬似位相整合により非線形光学効果高効率化することを目的に、後述するLiNbO3結晶を非線形光学媒質として採用する場合などで現在頻繁に用いられている。

上述の波数、光角振動周波数の相関関係以外にも、信号光光子とアイドラー光光子間には、偏波についても相関関係が存在する。このように、自然パラメトリック蛍光で発生する、相関のある信号光光子、アイドラー光光子の対、すなわち、量子もつれ光子対は、一般に、量子相関光子対あるいは単に相関光子対とも呼ばれるので、以後、相関光子対と表記することもある。

相関光子対を発生する装置が量子相関光子対発生装置である。そこで、相関光子対を得るための方法の典型例を以下に説明する。

まず、β-BaB2O4(以後、BBOと略記する。)結晶を利用して構成された量子もつれ光子対発生装置、すなわち量子相関光子対発生装置が報告されている(特許文献1参照)。ここでは、2つのBBO結晶直列に配置して、その中心に1/2波長板を配置する構成とされている。これに直線偏波で波長351.1nmの励起光を入射する。自然パラメトリック下方変換過程により、それぞれのBBO結晶から励起光波長の2倍の波長(702.2nm)のシグナル光とアイドラー光からなる相関光子対が出力される。励起光の強度が十分弱く、これら相関光子対が2つのBBO結晶の両方から同時に発生する確率は低く、どちらか一方から発生するとした場合、この装置で発生される相関光子対の状態は、一方のBBO結晶から発生する相関光子対の状態と、もう一方のBBO結晶から発生する相関光子対の状態との重ね合わせとして与えられる。

これら2つのBBO結晶から出力される相関光子対は、2つのBBO結晶に1/2波長板が配置され、励起光入力端に近い前段のBBO結晶から発生した相関光子対の偏波が装置出力端で90度回転される構成となっているために、相関光子対をなすそれぞれの光子の偏波面は直交しており、両者は偏波直交状態となっている。この結果、この装置によって偏波量子もつれ光子対が発生される。

上述の量子もつれ光子対発生装置と類似の構成であって、波長700nm〜800nm帯の量子もつれ光子対を発生する装置がこの他にも多数報告されている。光ファイバーの最小吸収損失波長帯である、波長1550nm対の相関光子対を発生できれば、量子情報通信システムの長距離化が期待できるので非常に有用となる。

また、上述の量子もつれ光子対発生装置と同じく、2次非線形光学媒質一種である周期的分極反転構造作りつけられたLiNbO3(Periodically Poled LiNbO3、以後PPLNと略記することもある。)結晶に形成された光導波路を用いて、波長1550nm帯での量子もつれ光子対発生装置が開示されている(特許文献2参照)。この装置は2つのPPLN光導波路と偏波分離合成器PBS: Polarization beam splitter)を用いて形成されるファイバーループ構造を具えている。2つのPPLN光導波路は、互いの光学軸が直交するように配置されている。そしてPBSを介して波長775nmで45度偏光した励起光(フェムト秒パルスの形態のパルス光である。)を入力する。

特許文献2に開示された装置は、特許文献1に開示された装置と同様に、2つのPPLN光導波路から自然パラメトリック下方変換によって波長1550nmのシグナル光とアイドラー光とからなる相関光子対が発生される。更に、励起光の強度が十分弱く、これら相関光子対が両方のPPLN光導波路から同時には発生せずどちらか一方から発生するとすれば、特許文献2に開示された装置から偏波量子もつれ光子対が発生される。

更に、PBSと単一のPPLN素子を利用した波長1550nm帯の量子もつれ光子対発生装置が開示されている(非特許文献1参照)。この装置では、PBSとPPLN素子とを結ぶ偏波面保存ファイバーにおいて、途中の一箇所で90度光軸変換箇所が設けられている。この90度光軸変換箇所は、ファイバー融着などの周知の手法で形成することが可能である。PBSを介して波長776nmで45度偏光した励起光を入力すると、PPLN光導波路から自然パラメトリック下方変換によって波長1542nmのシグナル光及び1562nmのアイドラー光からなる相関光子対が発生される。

励起光の強度が十分に弱い場合、この相関光子対はループ時計回り伝播する励起光か、ループを反時計回りに伝播する励起光のいずれか一方からしか発生しないとすると、装置から出力される相関光子対の状態は、ループを時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し、時計回り成分とは直交偏波した相関光子対との重ね合わせ状態となる。つまり、この装置から偏波量子もつれ光子対が発生されて出力される。

上述した特許文献1及び2、あるいは非特許文献1に開示された量子相関光子対発生装置においては2次非線形光学媒質が利用されているが、3次非線形光学媒質によるSFWMに基づいて量子もつれ光子対を発生する装置についても数多く報告されている。3次非線形光学媒質としては、ゼロ分散光ファイバーやフォトニック結晶光ファイバー、あるいは最近ではシリコン細線光導波路がその働きをするものとして利用されている。

概要

発生される相関光子対の数の期待値を一定の値に安定して維持しながら動作する。非線形光学媒質20と、励起光を出力する励起光源12と、補助信号光を出力する補助信号光源14と、励起光と補助信号光とを合波して出力する光合波器16と、光合波器から出力される出力光を非線形光学媒質に入力させる光結合器18と、非線形光学媒質から出力される出力光を、補助信号光成分補助アイドラー光成分とに分別して出力する光分岐部22と、補助信号光成分及び補助アイドラー光成分の強度をそれぞれ検出する第1フォトディテクター24及び第2フォトディテクター26と、制御信号発生部30とを具えている。制御信号発生部は、第1及び第2フォトディテクターが検出した強度に基づき、相関光子対発生過程を制御するための制御信号を発生する。

目的

この発明の目的は、発生される相関光子対の数の期待値を間接的にモニターし、このモニター結果に基づいて相関光子対発生過程を制御する量子相関光子対発生方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

励起光が入力されると自然パラメトリック蛍光に基づいて信号光光子アイドラー光子とからなる量子相関光子対を発生させ、かつ、補助信号光が入力されると誘導パラメトリック変換過程に基づいて補助アイドラー光を発生させる非線形光学媒質に、前記励起光と前記補助信号光とを同時に入力させる第1ステップと、前記非線形光学媒質から出力される前記補助信号光の強度と前記補助アイドラー光の強度とを検出して、両者の強度比が予め設定された値に等しくなるように、前記励起光の強度、前記励起光の波長、及び前記非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整する第2ステップとを含むことを特徴とする量子相関光子対発生方法

請求項2

励起光が入力されると自然パラメトリック蛍光に基づいて信号光光子とアイドラー光子とからなる量子相関光子対を発生させ、かつ、補助信号光が入力されると誘導パラメトリック変換過程に基づいて補助アイドラー光を発生させる非線形光学媒質に、前記励起光と前記補助信号光とを同時に入力させる第1ステップと、前記非線形光学媒質から出力される前記補助アイドラー光の強度を検出して、該補助アイドラー光の強度が予め設定された値に保たれるように、前記励起光の強度、前記励起光の波長、及び前記非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整する第2ステップとを含むことを特徴とする量子相関光子対発生方法。

請求項3

励起光が入力されると自然パラメトリック蛍光に基づいて信号光光子とアイドラー光子とからなる量子相関光子対を発生させ、かつ、補助信号光が入力されると誘導パラメトリック変換過程に基づいて補助アイドラー光を発生させる非線形光学媒質と、前記励起光を出力する励起光源と、前記補助信号光を出力する補助信号光源と、前記励起光と前記補助信号光とを合波して出力する光合波器と、前記光合波器から出力される出力光を前記非線形光学媒質に入力させる第1光結合器と、前記非線形光学媒質から出力される出力光を結合する第2光結合器と、前記第2光結合器からの出力光から補助信号光成分補助アイドラー光成分とに分別して出力する光分岐部と、前記補助信号光成分の強度を検出する第1フォトディテクターと、前記補助アイドラー光成分の強度を検出する第2フォトディテクターと、前記第1フォトディテクターが検出した強度と前記第2フォトディテクターが検出した強度との比が予め設定された値に等しくなるように、前記励起光の強度、前記励起光の波長、及び前記非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するための制御信号を発生する制御信号発生部とを具えていることを特徴とする量子相関光子対発生装置

請求項4

前記光分岐部が、前記非線形光学媒質から出力される出力光を、補助信号光成分と補助アイドラー光成分とに分別して出力し、かつ、前記信号光成分、前記アイドラー光成分をも分別して出力するとともに、当該補助信号光成分、当該補助アイドラー光成分、前記信号光成分、及び前記アイドラー光成分をそれぞれ別々の光経路切り分けて出力する波長選択型フィルターを具えていることを特徴とする請求項3に記載の量子相関光子対発生装置。

請求項5

前記波長選択型フィルターがアレイ導波路格子型フィルターであることを特徴とする請求項4に記載の量子相関光子対発生装置。

請求項6

前記前記非線形光学媒質から、前記第1フォトディテクター及び前記第2フォトディテクターに至るまでの光経路中に、前記信号光、前記アイドラー光の波長の半波長の光成分を除去する光ローパスフィルターを、更に具えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の量子相関光子対発生装置。

請求項7

第1〜第3入出力端を具える偏波分離合成器と、当該偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を結んで構成されるループ光路と、該ループ光路外に設置された前記光分岐器を具え、前記ループ光路中に前記非線形光学媒質と90度偏波面変換部とが設置され、前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記励起光及び前記補助信号光とが入力され、かつ当該第1入出力端から前記補助信号光成分、前記補助アイドラー光成分、前記信号光成分、及び前記アイドラー光成分が出力される構成とされており、前記偏波分離合成器の第2入出力端が、前記ループ光路の右回り伝播する励起光及び補助信号光に対して前記第1光結合器として動作すると共に、前記ループ光路の左回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第2光結合器として動作し、前記偏波分離合成器の第3入出力端が、前記ループ光路の左回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して前記第1光結合器として動作すると共に、前記ループ光路の右回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第2光結合器として動作し、前記90度偏波面変換部は、当該90度偏波面変換部を通過する直線偏光の偏波面を90度回転させることにより偏波量子もつれ光子対を発生することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の量子相関光子対発生装置。

請求項8

前記励起光が2連光パルスで構成されていることにより、時間位置量子もつれ光子対を発生することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の量子相関光子対発生装置。

技術分野

0001

この発明は、光子量子力学的相関を利用した情報通信技術で必要とされる量子相関光子対を発生する方法及びこの方法を実現する装置に関し、特に、量子相関光子対の発生状態間接的にモニターし、このモニター結果に従って量子相関光子対の発生状態を制御することが可能とされた、量子相関光子対発生方法及び量子相関光子対発生装置に関する。

背景技術

0002

近年、量子暗号量子コンピュータなど、量子力学ベルでの物理現象を利用した量子情報通信技術が注目を浴びている。量子力学的な相関を有する光子対、すなわち量子もつれ光子対は、光子の非局所性を応用した量子情報通信システムを実現するための重要な要素である。

0003

量子もつれ光子対を発生する手段として、従来から用いられている手法の一つは、2次あるいは3次の非線形光学媒質中での自然パラメトリック蛍光を用いる方法である。

0004

図1を参照して、2次あるいは3次の非線形光学媒質10中での自然パラメトリック蛍光の発現過程について説明する。2次あるいは3次の非線形光学媒質10に、波長λp、波数kp、光角振動周波数ωpの励起光光子を入力すると、波長λs、波数ks、光角振動周波数ωsの信号光光子と、波長λi、波数ki、光角振動周波数ωiのアイドラー光光子とが出力される。この過程が自然パラメトリック蛍光の発現過程である。このとき、信号光光子、アイドラー光光子は必ず1組の対(ペア)となって同時に発生する。

0005

2次の非線形光学媒質を用いた場合、励起光光子、信号光光子、アイドラー光光子の波数、光角振動周波数の間には、それぞれ運動量保存則エネルギー保存則に相当する次式(1)及び(2)で与えられる関係がある。
kp=ks+ki+K (1)
ωp=ωs+ωi (2)

0006

なお、2次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は、自然パラメトリック下方変換(Spontaneous parametric down conversion、以下SPDCと略記することもある。)とも呼ばれる。

0007

一方、3次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は自然4光波混合(Spontaneous four wave mixing、以下SFWMと略記することもある。)とも呼ばれる。各光子の波数、光角周波数は次式(3)及び(4)で与えられる関係を満足する。
2kp=ks+ki+K (3)
2ωp=ωs+ωi (4)

0008

ここで、式(1)及び式(3)に含まれるKは、非線形光学定数周期変調構造の周期に対応するパラメータである。このような非線形光学定数の周期的変調構造は、擬似位相整合により非線形光学効果高効率化することを目的に、後述するLiNbO3結晶を非線形光学媒質として採用する場合などで現在頻繁に用いられている。

0009

上述の波数、光角振動周波数の相関関係以外にも、信号光光子とアイドラー光光子間には、偏波についても相関関係が存在する。このように、自然パラメトリック蛍光で発生する、相関のある信号光光子、アイドラー光光子の対、すなわち、量子もつれ光子対は、一般に、量子相関光子対あるいは単に相関光子対とも呼ばれるので、以後、相関光子対と表記することもある。

0010

相関光子対を発生する装置が量子相関光子対発生装置である。そこで、相関光子対を得るための方法の典型例を以下に説明する。

0011

まず、β-BaB2O4(以後、BBOと略記する。)結晶を利用して構成された量子もつれ光子対発生装置、すなわち量子相関光子対発生装置が報告されている(特許文献1参照)。ここでは、2つのBBO結晶直列に配置して、その中心に1/2波長板を配置する構成とされている。これに直線偏波で波長351.1nmの励起光を入射する。自然パラメトリック下方変換過程により、それぞれのBBO結晶から励起光波長の2倍の波長(702.2nm)のシグナル光とアイドラー光からなる相関光子対が出力される。励起光の強度が十分弱く、これら相関光子対が2つのBBO結晶の両方から同時に発生する確率は低く、どちらか一方から発生するとした場合、この装置で発生される相関光子対の状態は、一方のBBO結晶から発生する相関光子対の状態と、もう一方のBBO結晶から発生する相関光子対の状態との重ね合わせとして与えられる。

0012

これら2つのBBO結晶から出力される相関光子対は、2つのBBO結晶に1/2波長板が配置され、励起光入力端に近い前段のBBO結晶から発生した相関光子対の偏波が装置出力端で90度回転される構成となっているために、相関光子対をなすそれぞれの光子の偏波面は直交しており、両者は偏波直交状態となっている。この結果、この装置によって偏波量子もつれ光子対が発生される。

0013

上述の量子もつれ光子対発生装置と類似の構成であって、波長700nm〜800nm帯の量子もつれ光子対を発生する装置がこの他にも多数報告されている。光ファイバーの最小吸収損失波長帯である、波長1550nm対の相関光子対を発生できれば、量子情報通信システムの長距離化が期待できるので非常に有用となる。

0014

また、上述の量子もつれ光子対発生装置と同じく、2次非線形光学媒質一種である周期的分極反転構造作りつけられたLiNbO3(Periodically Poled LiNbO3、以後PPLNと略記することもある。)結晶に形成された光導波路を用いて、波長1550nm帯での量子もつれ光子対発生装置が開示されている(特許文献2参照)。この装置は2つのPPLN光導波路と偏波分離合成器PBS: Polarization beam splitter)を用いて形成されるファイバーループ構造を具えている。2つのPPLN光導波路は、互いの光学軸が直交するように配置されている。そしてPBSを介して波長775nmで45度偏光した励起光(フェムト秒パルスの形態のパルス光である。)を入力する。

0015

特許文献2に開示された装置は、特許文献1に開示された装置と同様に、2つのPPLN光導波路から自然パラメトリック下方変換によって波長1550nmのシグナル光とアイドラー光とからなる相関光子対が発生される。更に、励起光の強度が十分弱く、これら相関光子対が両方のPPLN光導波路から同時には発生せずどちらか一方から発生するとすれば、特許文献2に開示された装置から偏波量子もつれ光子対が発生される。

0016

更に、PBSと単一のPPLN素子を利用した波長1550nm帯の量子もつれ光子対発生装置が開示されている(非特許文献1参照)。この装置では、PBSとPPLN素子とを結ぶ偏波面保存ファイバーにおいて、途中の一箇所で90度光軸変換箇所が設けられている。この90度光軸変換箇所は、ファイバー融着などの周知の手法で形成することが可能である。PBSを介して波長776nmで45度偏光した励起光を入力すると、PPLN光導波路から自然パラメトリック下方変換によって波長1542nmのシグナル光及び1562nmのアイドラー光からなる相関光子対が発生される。

0017

励起光の強度が十分に弱い場合、この相関光子対はループ時計回り伝播する励起光か、ループを反時計回りに伝播する励起光のいずれか一方からしか発生しないとすると、装置から出力される相関光子対の状態は、ループを時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し、時計回り成分とは直交偏波した相関光子対との重ね合わせ状態となる。つまり、この装置から偏波量子もつれ光子対が発生されて出力される。

0018

上述した特許文献1及び2、あるいは非特許文献1に開示された量子相関光子対発生装置においては2次非線形光学媒質が利用されているが、3次非線形光学媒質によるSFWMに基づいて量子もつれ光子対を発生する装置についても数多く報告されている。3次非線形光学媒質としては、ゼロ分散光ファイバーやフォトニック結晶光ファイバー、あるいは最近ではシリコン細線光導波路がその働きをするものとして利用されている。

0019

特開2003−228091号公報
特開2005−258232号公報

先行技術

0020

H. C. Lim, et al., "Stable source of high quality telecom-band polarization-entangled photon-pairs based on a single, pulse-pumped, short PPLN waveguide", OPTICS EXPRESS Vol. 16, No. 17, pp. 12460-12468 (2008)

発明が解決しようとする課題

0021

実用的なシステム構築するためのデバイスあるいはシステムとは、少なくとも所望の規定状態を維持しながら、長時間安定して動作し続けることが可能であるデバイスあるいはシステムをいう。例えば、情報通信システムにおいて使用できる光源とは、その光出力値を長時間安定して維持することが可能である光源である。

0022

一方、実用的デバイスあるいはシステムは、同一条件で使用し続けてもその特性は経年変化する。従って、実用的デバイスあるいはシステムにあっては、その動作が規定状態からずれた状態にあるか否かを検出することができ、更に、そのずれをフィードバックして所望の規定状態にリカバーすることを可能とする仕組みを備えていることが要請される。

0023

現状の光通信システムにおいて利用される半導体レーザ等の光源の出力値は次のような手段で安定化が図られている。すなわち、光源の出力光の一部を分岐してこの分岐光の強度をモニターして、その強度が規定値より増減していれば駆動電流を増減させることで、光源の出力光の安定化が図られる。あるいは、共振器端面の一方を出力光取り出し側として設定し、他方の共振器端面からの出力光の強度をモニターして、その強度が規定値より増減していれば駆動電流を増減させることで半導体レーザの出力光の安定化を図ることが可能である。

0024

量子相関光子対発生装置を具えた量子情報通信システムを想定すると、この量子相関光子対発生装置は少なくとも1信号あたりに含まれる相関光子対の数を一定の平均値期待値ともいう。)に長期にわたって安定化することが必要で、かつ、安定化されていることを確認するための何らかの方法が確立されていることが要請される。

0025

一方、量子情報通信の分野で想定されているアプリケーションは、単一粒子状態、すなわち単一光子状態を利用することを前提としている。例えば、量子暗号の分野では1信号あたりに複数個の光子対が存在すると、その一部を取り出して盗聴することが可能となってしまい、量子暗号による秘匿性に重大な欠陥をもたらす。すなわち、量子情報通信システムで利用される量子相関光子対発生装置に対しては、1信号あたりに1組の相関光子対が発生されて出力される機能を具えることが理想的である。

0026

しかしながら、このような量子相関光子対発生装置に対しては、現在実用化されている現状の光通信システムに組み込まれている光源に対する出力安定化の手法は採用できない。この理由は以下のとおりである。

0027

まず、量子情報通信システムでは1信号あたりに1組の光子対しか存在しないため、この光子対の一部を分岐してモニターするという手法が使えない。更に、モニターする、すなわち測定するという行為自体量子状態を変化させてしまうことに相当し、また、量子力学的に量子状態のコピーをすることは原理的に不可能であるため、量子暗号を用いた通信において受信者に正しい情報を伝達することができなくなる。すなわち、量子相関光子対発生装置に関して、設定された規定状態を維持しつつ安定して動作していること、例えば単一の相関光子対を安定して発生し続けていることを担保するための手法が必要とされるが、この手法についてはこれまで報告されてこなかった。

0028

従って、一定の期待値の相関光子対を安定的に発生し続けるために、発生した相関光子対の量子状態、具体的には相関光子対の平均値(期待値)を間接的にモニターすることを可能とする相関光子対のモニター方法、及びそれに基づいて相関光子対発生過程制御方法が確立されることが望まれる。

課題を解決するための手段

0029

この出願の発明者は、相関光子対の発生過程と独立した過程で発生しその期待値が相関光子対の発生確率の期待値と相関する物理量が存在すれば、その物理量を測定する(モニターする)ことで相関光子対の発生過程に影響を与えることなく相関光子対の発生確率の期待値を知ることができることに着目した。すなわち、相関光子対の発生確率の期待値と相関する期待値を持つ物理量を利用すれば、相関光子対の量子状態そのものを測定することはできなくとも、その期待値については間接的に検出することが可能となることを意味する。この間接的に検出された物理量の期待値に基づいてフィードバックすれば、安定した期待値の数の相関光子対を出力し続けることが可能である量子相関光子対発生装置を実現することが可能となることに思い至った。

0030

そして、この出願の発明者が鋭意研究を行った結果、相関光子対の発生確率の期待値が、光差周波発生(Differential Frequency Generation:DFG)の変換効率、すなわち出力されるアイドラー光の強度に対する出力される信号光の強度の比、との間が比例関係にあることを見出した。すなわち、DFGの変換効率が、相関光子対の発生確率の期待値と相関する期待値を持つ物理量として利用可能であることを見出した。

0031

従って、この発明の目的は、発生される相関光子対の数の期待値を間接的にモニターし、このモニター結果に基づいて相関光子対発生過程を制御する量子相関光子対発生方法を提供することにある。また、この方法を適用することによって一定の期待値の相関光子対を安定して発生し続けることが可能である量子相関光子対発生装置を提供することにある。

0032

そこで、この発明の要旨によれば、以下の構成の量子相関光子対発生方法及び量子相関光子対発生装置が提供される。

0033

この発明の第1の量子相関光子対発生方法は、非線形光学媒質に励起光と補助信号光とを同時に入力させる第1ステップと、非線形光学媒質から出力される補助信号光の強度と補助アイドラー光の強度とを検出して、両者の強度比が予め設定された値に等しくなるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整する第2ステップとを含んでいる。

0034

この発明の第2の量子相関光子対発生方法は、非線形光学媒質に励起光と補助信号光とを同時に入力させる第1ステップと、非線形光学媒質から出力される補助アイドラー光の強度を検出して、補助アイドラー光の強度が予め設定された値に保たれるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整する第2ステップとを含んでいる。

0035

この発明の量子相関光子対発生装置は、非線形光学媒質と、励起光を出力する励起光源と、補助信号光を出力する補助信号光源と、励起光と補助信号光とを合波して出力する光合波器と、光合波器から出力される出力光を非線形光学媒質に入力させる第1光結合器と、非線形光学媒質から出力される出力光を結合する第2光結合器と、この第2光結合器からの出力光に含まれる補助信号光成分補助アイドラー光成分とを分別して出力する光分岐部と、補助信号光成分の強度を検出する第1フォトディテクターと、補助アイドラー光成分の強度を検出する第2フォトディテクターと、制御信号発生部とを具えている。

0036

非線形光学媒質は、励起光が入力することによって、自然パラメトリック蛍光に基づいて信号光光子とアイドラー光子とからなる量子相関光子対を発生させ、かつ、補助信号光が入力することによって誘導パラメトリック変換過程に基づいて補助アイドラー光を発生させる。

0037

制御信号発生部は、第1フォトディテクターが検出した強度と第2フォトディテクターが検出した強度との比が予め設定された値に等しくなるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するための制御信号を発生する。

0038

光分岐部は、非線形光学媒質から出力される出力光を、補助信号光成分と補助アイドラー光成分とに分別して出力し、かつ、信号光成分アイドラー光成分をも分別して出力するとともに、当該補助信号光成分、当該補助アイドラー光成分、信号光成分、及びアイドラー光成分をそれぞれ別々の光経路切り分けて出力する波長選択型(Wavelength Division Multiplexing:WDMフィルターを具えていることが好適である。

0039

波長選択型フィルターにはアレイ導波路格子型(Arrayed Waveguide-Grating:AWG)フィルターを利用するのが好適である。

0040

また、非線形光学媒質から、第1フォトディテクター及び第2フォトディテクターに至るまでの光経路中に、信号光、アイドラー光の波長の半波長の光成分を除去する光ローパスフィルターを更に具えるのが良い。

0041

更に、第1〜第3入出力端を具える偏波分離合成器と、当該偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を結んで構成されるループ光路を具え、ループ光路中に非線形光学媒質と90度偏波面変換部とが設置され、偏波分離合成器の第1入出力端から励起光及び補助信号光とが入力され、かつ当該の第1入出力端から補助信号光成分、補助アイドラー光成分、信号光成分、及びアイドラー光成分が出力され、その出力光が光分岐部に結合される構成とすることで偏波量子もつれ光子対発生装置として利用することができる。

0042

ここで、偏波分離合成器の第2入出力端が、ループ光路の右回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第1光結合器として動作すると共に、ループ光路の左回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第2光結合器として動作する。また、偏波分離合成器の第3入出力端が、ループ光路の左回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第1光結合器として動作すると共に、ループ光路の右回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第2光結合器として動作する。また、90度偏波面変換部は、当該90度偏波面変換部を通過する直線偏光の偏波面を90度回転させる。

0043

更に、励起光を2連光パルスで構成することで、時間位置量子もつれ光子対発生装置として利用することができる。

発明の効果

0044

この発明の第1の量子相関光子対発生方法によれば、非線形光学媒質に励起光と補助信号光とが同時に入力され、非線形光学媒質から出力される補助信号光の強度と補助アイドラー光の強度とが検出される。そして補助信号光の強度に対する補助アイドラー光の強度の比が予め設定された値に等しくなるように制御される。

0045

補助信号光の強度に対する補助アイドラー光の強度の比はDFGの変換効率であり、この強度比と相関光子対の発生確率の期待値との関係が比例関係にあることから、この比が予め設定された値に等しくなるように制御し続ければ、一定の期待値の相関光子対を安定して発生し続けることが可能となる。

0046

また、モジュール化等の手段によって非線形光学媒質から出力される補助信号光の強度も安定した状態が保証されている場合は、補助アイドラー光の強度だけを検出して補助アイドラー光の強度が予め設定された値に保たれるように、一定の期待値の相関光子対を安定して発生し続けることが可能となる。このような場合は、この発明の第2の量子相関光子対発生方法を採用すればよい。

0047

また、この発明の量子相関光子対発生装置によれば、上述したように制御回路によって、第1フォトディテクターが検出した補助信号光成分の強度と第2フォトディテクターが検出した補助アイドラー光成分の強度との比が予め設定された値に等しくなるように制御するための制御信号が発生される。または、第2フォトディテクターが検出した補助アイドラー光成分の強度が予め設定された値に保たれるように制御するための制御信号が発生される。

0048

従って、この発明の量子相関光子対発生装置は、補助信号光の強度に対する補助アイドラー光の強度の比が予め設定された値に等しくなるように制御される構成、あるいは、補助アイドラー光成分の強度が予め設定された値に保たれるように制御される構成とされているので、一定の期待値の相関光子対を安定して発生し続けることが可能となる。

図面の簡単な説明

0049

2次あるいは3次の非線形光学媒質中での自然パラメトリック蛍光の発現過程について説明に供する図である。
この発明の実施形態の量子相関光子対発生装置の基本構成及び動作原理についての説明に供する図である。
SPDC過程で発生された出力光の強度とDFG変換効率との相関関係を示す実験結果を示す図であり、(A)はQPM条件が満たされた条件下でのSPDC光光スペクトルを示し、(B)はQPM条件が満たされた条件下でのDFG変換効率の励起光強度依存性を示し、(C)は励起光の強度が一定の条件でDFG変換効率の励起光波長依存性を示す。
カスケードSHG/SPDC方式並びにカスケードSHG/DFG方式による相関光子対発生の実験の結果を示す図であり、(A)はQPM条件が満たされた条件下でのカスケードSHG/SPDC光の光スペクトルを示し、(B)はQPM条件が満たされた条件下でのDFG変換効率の励起光強度依存性を示し、(C)は励起光の強度が一定の条件でDFG変換効率の励起光波長依存性を示す。
相関光子対の波長と、補助信号光及び補助アイドラー光の波長との設定方法の説明に供する図である。
励起光波長の近傍に補助信号光及び補助アイドラー光の波長の組み合わせを設定する場合の設定方法の説明に供する図である。
この発明第1実施例の量子相関光子対発生装置の構成を示す概略的ブロック構成図である。
この発明第2実施例の量子相関光子対発生装置の構成を示す概略的ブロック構成図である。

実施例

0050

以下、図2〜図8を参照してこの発明の実施形態につき説明する。以下の説明において、特定の素子および動作条件などを取り上げることがあるが、これら素子および動作条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、図7及び図8は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係などを概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。

0051

<この発明の実施形態の量子相関光子対発生装置の基本構成及び動作原理>
図2を参照してこの発明の実施形態の量子相関光子対発生装置の基本構成及びその動作原理について説明する。この発明の実施形態の量子相関光子対発生装置は、非線形光学媒質20と、励起光を出力する励起光源12と、補助信号光を出力する補助信号光源14と、励起光と補助信号光とを合波して出力する光合波器16と、光合波器16から出力される出力光を非線形光学媒質20に入力させる光結合器18と、非線形光学媒質20から出力される出力光を補助信号光成分と補助アイドラー光成分とに分別して出力する光分岐部22と、補助信号光成分の強度を検出する第1フォトディテクター24と、補助アイドラー光成分の強度を検出する第2フォトディテクター26と、制御信号発生部30とを具えている。

0052

励起光源12は励起光(波長λp、波数kp、光角振動周波数ωp)を出力し、補助信号光源は補助信号光(波長λs-2、波数ks-2、光角振動周波数ωs-2)を出力する。そして、非線形光学媒質20は、励起光が入力することによって、自然パラメトリック蛍光に基づいて信号光光子(波長λs、波数ks、光角振動周波数ωs)とアイドラー光子(波長λi、波数ki、光角振動周波数ωi)とからなる量子相関光子対を発生させ、かつ、補助信号光が入力することによって誘導パラメトリック変換過程に基づいて補助アイドラー光(波長λi-2、波数ki-2、光角振動周波数ωi-2)を発生させる。

0053

波長λp、波数kp、光角振動周波数ωpである励起光を非線形光学媒質20に入力することにより、自然パラメトリック蛍光により、運動量保存則、エネルギー保存則に相当する関係を満足する波長λs、波数ks、光角振動周波数ωsの信号光光子と、波長λi、波数ki、光角振動周波数ωiのアイドラー光光子の相関光子対が発生する。この相関光子対を利用する構成とすれば、最終的には従来例と同様の形態の量子相関光子対発生装置が形成される。

0054

また、波長λs-2、波数ks-2、光角振動周波数ωs-2である補助信号光を励起光と共に非線形光学媒質20に入力する。すると、DFGによって運動量保存則、エネルギー保存則に相当する関係を満足する波長λi-2、波数ki-2、光角振動周波数ωi-2の補助アイドラー光が発生する。

0055

すなわち、補助信号光、補助アイドラー光の波数及び光角振動周波数は、2次の非線形光学媒体を利用した場合は、次式(5)及び(6)を満足する。
kp=ks-2+ki-2+K (5)
ωp=ωs-2+ωi-2 (6)

0056

また2次の非線形光学媒体を利用した場合は、同様に、次式(7)及び(8)を満足する。
2kp=ks-2+ki-2+K (7)
2ωp=ωs-2+ωi-2 (8)

0057

ここで、式(5)及び式(7)に含まれるKは、非線形光学定数の周期的変調構造の周期に対応するパラメータである。

0058

波長λp、波数kp、光角振動周波数ωpである励起光と、波長λs-2、波数ks-2、光角振動周波数ωs-2である補助信号光とを同時に非線形光学媒質20に入力させるステップが上述の第1ステップである。

0059

非線形光学媒体20から出力される補助信号光成分は第1フォトディテクター24によって検出され、補助アイドラー光成分は第2フォトディテクター26によって検出される。第1フォトディテクター24及び第2フォトディテクター26によってそれぞれ検出され補助信号光成分の強度信号及び補助アイドラー光成分の強度信号は制御信号発生部30に入力される。制御信号発生部30は出力比較器30-1と制御信号発生器30-2とを具えている。

0060

図2においては、出力比較器30-1と制御信号発生器30-2とが別々の機能ブロックとして示してあるが、具体的に量子相関光子対発生装置を製造するにあたっては、両者を一体化して形成してもよい。同様に後述する出力比較器60-1と制御信号発生器60-2についても、両者を一体化して形成してもよい。

0061

補助信号光成分の強度信号及び補助アイドラー光成分の強度信号は、まず出力比較器30-1に入力される。出力比較器30-1からは、補助信号光成分の強度と補助アイドラー光成分の強度との比に比例する信号が出力されて制御信号発生器30-2に入力される。

0062

補助信号光源14から出力される補助信号光の強度が安定であり、また、モジュール化等の手段によって光合波器16、光結合器18等からなる光結合系も安定化が図られている場合は、非線形光学媒質20から出力される補助信号光の強度も安定している。この場合、第1フォトディテクター24からの出力信号は一定しているはずであるから、第1フォトディテクター24からの出力信号の代わりに一定値電気信号に置き換えることが可能となり、第1フォトディテクター24は必ずしも必要とされない。しかしながら、何らかの原因によって非線形光学媒質20から出力される補助信号光の強度が変動することも想定されるので、第1フォトディテクター24によって常時非線形光学媒質20から出力される補助信号光の強度を検出し、補助信号光成分の強度と補助アイドラー光成分の強度との比を、制御信号を発生するための基準とするのが好適である。

0063

非線形光学媒質20から出力される補助信号光の強度と補助アイドラー光の強度とを、それぞれ第1フォトディテクター24と第2フォトディテクター26によって検出し、両者の強度比が予め設定された値に等しくなるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するステップが、この発明の第1の量子相関光子対発生方法における第2ステップである。また、第2フォトディテクター26によって検出される補助アイドラー光の強度が予め設定された値に保たれるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するステップがこの発明の第2の量子相関光子対発生方法における第2ステップである。なお、両者の強度比が予め設定された値に等しくなるように、あるいは補助アイドラー光の強度が予め設定された値に保たれるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するステップについての詳細は後述する。

0064

<この発明の実施形態の量子相関光子対発生装置の動作の検証実験
動作の検証実験において、非線形光学媒質として、MgOをドープした化学量論的組成のLiNbO3基板に周期的分極反転構造を施し、またプロトン交換ダイシングによるリッジ形状加工により光導波路を形成したPPLN導波路素子を用いた。PPLN素子の長さは6cm、リッジの幅を10μmとした。また、分極反転構造の周期Λを19.6μmとした。この周期Λは、このPPLN導波路素子で光第2高調波(Second Harmonic Generation、以下SHGと略記することもある。)を発生させた場合に最大のSHG出力が得られる励起光波長(以下、QPM波長ということもある。)が1562.75nmとなるように設定されたものである。ただし、これらPPLN素子の長さ、周期Λ等の値は任意に設定可能であり、この発明の構成を限定するものではない。また、製作したPPLN導波路素子の伝播損失の大きさは、1550nm帯の光に対して、0.1dB/cm程度であった。

0065

検証実験は、上述のPPLN導波路素子を、温度制御素子(具体的にはペルチエクーラー)や結合レンズ光入出力のための光ファイバー等と共に光モジュール化して一体化したPPLNモジュールを用いて行った。このPPLNモジュールの光挿入損失波1560nm帯の光に対して3.7dB程度であった。

0066

(1)通常のSPDC過程
まず、PPLNモジュールにQPM波長が1562.75nmの半波長である781.375nmの波長の励起光を入力し、そのときのPPLNモジュールから出力される出力光の光スペクトルを測定した。これによって、上述の式(1)及び(2)によって与えられる関係を満足する単純な通常のSPDC過程(1段SPDC過程)によって発生される相関光子対の光スペクトルの測定が行われた。この測定に用いた光スペクトルアナライザー波長分解能を5nmに設定した。また、励起光のPPLNモジュールへの入力強度を、当該PPLNモジュールの入力の直前部分で測定し+15dBmとなるように設定した。

0067

図3(A)から図3(C)を参照して検証実験の結果を説明する。図3(A)から図3(C)は、SPDC過程で発生された出力光の強度とDFG変換効率との相関関係を示す実験結果を示す図である。

0068

図3(A)はQPM条件が満たされた条件下でのSPDC光の光スペクトルを示しており、QPM波長(1562.75nm)を中心として対称な形状で広がった光スペクトルが観測された。これはSPDC過程によって生じた相関光子対のスペクトル分布を示しており、上述した式(2)の関係を満足する様々な波長の組み合わせの相関光子対が発生していることを示している。ここで観測されたSPDCスペクトル強度は、それぞれの波長の組み合わせの相関光子対の発生確率に比例しているものと解釈される。

0069

また、励起光の強度を変化させ、あるいは励起光波長を変化させて、SPDCスペクトルを測定した。そして、励起光波長から+10nm離調した波長でのSPDC光の強度を測定した。これは、それぞれの条件での+10nm離調した波長での相関光子対の発生確率、すなわち発生の期待値を測定していることに相当する。

0070

次に、PPLNモジュールに先の励起光と共に補助信号光も同時に入力して、PPLNモジュールから出力される出力光の光スペクトルを観測した。ここで、補助信号光波長もまた励起光波長から+10nm離調した波長となるようにその都度設定した。そして、この観測された光スペクトルから、出力補助信号光の強度と式(6)を満足する光角振動周波数位置に生じる補助アイドラー光の出力強度を測定し、その強度比(補助アイドラー光の強度/補助信号光の強度)をDFGによる波長変換効率として定義した。

0071

そして上述の例と同様に、励起光強度を変化させ、あるいは励起光波長を変化させて波長変換効率を測定した。これらの実験のデータから、SPDC光強度とDFGによる波長変換効率の関係をプロットして示した図が、図3(B)及び図3(C)である。

0072

図3(B)は励起光波長をQPM波長(1562.75nm)の半分の波長(781.375nm)として固定して、すなわちQPM条件が満たされた条件下で、励起光の強度を変化させて測定した、SPDF光強度に対するDFG変換効率の関係を示している。また、図3(C)は励起光強度を+15dBmに固定して、励起光波長を変化させたときのSPDC光強度に対するDFG変換効率の関係を示している。図3(C)の結果は、励起光、信号光、アイドラー光について上述した式(1)の擬似位相整合条件を厳密には満たしていない条件下で得られたものである。

0073

図3(B)及び図3(C)に示す結果から、SPDC光強度とDFGによる波長変換効率とは互いに比例関係にあることが確かめられた。因みに、図3(B)に示すSPDC光強度をxとしDFG変換効率をyで示し直線で近似すると、xとyとの関係はy=0.98217x+44.033で表される比例関係であり、図3(C)に示すSPDC光強度をxとしDFG変換効率をyで示し直線で近似すると、xとyとの関係はy=1.0055x+45.742で表される比例関係である。すなわち両者の直線の傾きが0.98217及び1.0055とほぼ等しいことから、図3(B)及び図3(C)に示すいずれの条件下においても比例係数まで一致することが分かる。

0074

図3(B)及び図3(C)に示す結果は、相関光子対の発生確率の期待値と、DFGによる波長変換効率は比例関係にあること、更にその比例係数は位相整合の有無によらないことを示している。

0075

(2)カスケードSHG/SPDC過程
この出願の発明者らは、相関光子対の発生過程としてSHGとSPDCとが単一の2次非線形光学媒質で生じることによるカスケードSHG/SPDC過程について研究した結果を既に報告している(参考文献1:荒平慎、本直、「PPLNリッジ導波路デバイスを用いたカスケードχ(2)方式によるパラメトリック下方変換光発生」第21回量子情報技術研究会試料電子情報通信学会、量子情報技術時限研究専門委員会、pp.184-187、2009年)。この参考文献1に記載された方法によれば、PPLN素子に励起光を入力するとPPLN素子内でまずSHG光が発生する。次にこのSHG光を種光としてSPDC過程により相関光子対が発生する。このSHG/SPDC過程は擬似的な3次非線形光学効果と見ることもでき、入力励起光と発生する相関光子対(信号光及びアイドラー光)の波数及び光角振動周波数は、上述した式(3)および式(4)で与えられる関係を満たしている。

0076

上述した通常のSPDC過程とDFGとの関係に相当する、カスケードSHG/DFG過程が存在することはよく知られており、むしろ、カスケードSHG/DFG過程の方がより研究者の間では周知されている。すなわち、非線形光学媒質に補助信号光と励起光とを同時に入力しカスケードSHG/DFG過程を発現させると、上述した式(8)を満足する光角振動周波数の補助アイドラー光が発生する。

0077

次に、図3(A)〜図3(C)示した結果が得られた実験に用いたものと同じPPLN素子によって、カスケードSHG/SPDC方式並びにカスケードSHG/DFG方式による相関光子対発生の実験を行った。すなわち、入力励起光の強度及び波長を変化させて、カスケードSHG/SPDC方式で発生されるSPDC光の強度を測定した。入力励起光は波長が1532.75nmのQPM波長近傍の波長の光とした。更に引き続いて、励起光と補助信号光とを同時に非線形光学媒質に入力して、カスケードSHG/DFG方式による波長変換効率を測定した。

0078

ここでも、上述した通常のSPDC過程における相関光子対の発生のための検証実験と同様に、励起光の強度を変化させ、あるいは励起光波長を変化させて、SPDCスペクトルを測定した。そして、励起光波長から+10nm離調した波長でのSPDC光の強度を測定した。次に、PPLNモジュールに先の励起光と共に補助信号光も同時に入力して、PPLNモジュールから出力される出力光の光スペクトルを観測した。ここで、補助信号光波長もまた励起光波長から+10nm離調した波長となるようにその都度設定した。

0079

図4(A)から図4(C)を参照してカスケードSHG/SPDC方式並びにカスケードSHG/DFG方式による相関光子対発生の実験の結果を説明する。図4(A)から図4(C)は、SPDC過程で発生された出力光の強度とDFG変換効率との相関関係を示す実験結果を示す図である。図4(A)は励起光波長をQPM波長(1562.75nm)としQPM条件が満たされた条件下でのSPDC光の光スペクトルを示す図であり、図4(B)は励起光波長をQPM波長(1562.75nm)として固定し励起光強度を変化させたときのSPDC強度に対するDFG変換効率を示す図であり、図4(C)は励起光強度を+15dBmに固定して、励起光波長を変化させたときのSPDC光強度に対するDFG変換効率の関係を示している。

0080

図4(B)及び図4(C)に示す結果から、カスケードSHG/SPDC光強度とカスケードSHG/DFGによる波長変換効率とは互いに比例関係にあることが確かめられた。そして、図4(B)に示すSPDC光強度をxとしDFG変換効率をyで示し直線で近似すると、xとyとの関係はy=0.97976x+44.284で表される比例関係であり、図4(C)に示すSPDC光強度をxとしDFG変換効率をyで示し直線で近似すると、xとyとの関係はy=0.99326x+44.839で表される比例関係である。すなわち両者の直線の傾きが0.97976及び0.99326とほぼ等しいことから、図4(B)及び図4(C)に示すいずれの条件下においても比例係数まで一致することが分かる。

0081

図4(B)及び図4(C)に示す結果は、相関光子対の発生確率の期待値と、DFGによる波長変換効率は比例関係にあること、更にその比例係数は位相整合の有無によらないことを示している。

0082

この出願の発明者らは、PPLN素子の素子長を変え、またPPLN素子の導波路構造を変えて上述した実験と同様の実験を試みた結果、相関光子対の発生確率の期待値とDFGによる波長変換効率との比例関係及び比例係数は、PPLN素子の素子長や光導波路構造には依存しないことを確かめている。

0083

すなわち、この出願の発明者らは、上述の検証実験によって、以下の(A)及び(B)に示す知見を得ることができた。

0084

(A)SPDC過程による相関光子対の発生確率の期待値と、DFGによる波長変換効率は比例関係にある。この関係は、通常のSPDC過程、カスケードSHG/SPDC過程のいずれの過程によっても成立する。また、この比例関係は、3次の非線形光学媒質におけるSFWMと補助アイドラー光のSFWM変換効率との関係においても成立していると推定される。

0085

(B)上述の比例係数は位相整合(擬似位相整合を含む。)条件を厳密に満たしているか否か、あるいはPPLN素子等の相関光子対の発生素子の素子長あるいは光導波路構造等を確定する構造パラメータには依存しない。従って、相関光子対の発生素子を構成する非線形光学媒質の組成が同一であれば、比例係数も同一の値を取る。

0086

<相関光子対の波長、補助信号光及び補助アイドラー光の波長の設定指針
上述の検証実験によって得られた知見から、補助アイドラー光の波長変換効率によって、SPDC過程やSFWM過程によって発生する相関光子対の発生確率の期待値を知ることが可能であることが分かった。そしてその際、SPDC(あるいはSFWM)過程とDFG(あるいはSFWM)過程は、基本的にどちらがどちらに従属して発現するわけではなく独立した過程であるから、補助アイドラー光の波長変換効率を測定しても、それが後述する適切な検出方法で測定すれば、相関光子対の量子状態を破壊することはない。

0087

ただし、発生させるべき相関光子対の波長λs及び波長λiと、モニターに用いる補助信号光及び補助アイドラー光の波長λs-2及び波長λi-2とが重複すると、補助信号光および補助アイドラー光の検出の際、相関光子対を検出してしまう可能性があり、相関光子対の量子状態に影響を与える。従って、両者の波長は十分に離して設定することが求められる。

0088

この条件が満たされるように、相関光子対の波長と、補助信号光及び補助アイドラー光の波長とをどの様に設定すれば良いかについて、図5を参照して説明する。図5はSPDCスペクトルに対して、アイドラー光取出しの光フィルター透過特性、信号光取り出しの光フィルターの透過特性、QPM帯域(SHG帯域)、補助信号光波長、補助アイドラー光波長の関係を示している。横軸は波長を任意スケール目盛ってある。QPM帯域とはSPDC光およびDFG光が実用的な強度で発生する範囲のQPM波長を中心とする励起光の波長範囲を意味する。

0089

図5に示す関係に、相関光子対の波長と、補助信号光及び補助アイドラー光の波長とを設定すればよい。すなわち、相関光子対の発生が可能な波長範囲は有限な帯域に限られる。これは、非線形光学媒質がもつ屈折率分散特性の影響によって、上述の式(1)及び式(3)で与えられる位相整合条件を満足する波長帯域が限定されるからである。相関光子対は、図5に示してあるように、その発生が可能な波長範囲にある波長の組み合わせ(λs、λi)を選ぶことが、最大の変換効率を実現するために望ましい。

0090

そして、補助信号光及び補助アイドラー光の波長の組み合わせ(λs-2、λi-2)として、上述の波長の組み合わせ(λs、λi)から離れた波長に設定すれば、相関光子対の波長の組み合わせとしては、相関光子対の発生が可能な波長範囲内の任意の波長を選択できる。これによって、複数の波長の組み合わせの相関光子対を同時に選択することも可能となり、この発明の適用範囲を広げることができる。

0091

複数の波長の組み合わせの相関光子対を同時に選択した場合、補助アイドラー光の光強度は低下するが、補助信号光の入力強度を必要に応じて高く設定しておけば、補助アイドラー光の強度は通常のフォトディテクターで十分に検出が可能な程度にまで高くすることが可能である。すなわち、補助アイドラー光成分の強度を検出するフォトディテクターとして、単一光子検出が要請されるほど高感度低ノイズであるフォトディテクターが必要となるわけではない。

0092

一方、図6に示すように、補助信号光及び補助アイドラー光の波長の組み合わせ(λs-2、λi-2)を励起光波長の近傍に設定することも、この発明の相関光子対発生装置利用形態によっては好ましい。図6はこのように波長の組み合わせを設定する場合についての説明に供する図である。図6も図5と同様に、SPDCスペクトルに対して、アイドラー光取出しの光フィルターの透過特性、信号光取り出しの光フィルターの透過特性、QPM帯域(SHG帯域)、補助信号光波長、補助アイドラー光波長の関係を示している。

0093

SFWM過程やカスケードSHG/SPDC過程による相関光子対の発生を想定した場合、非線形光学媒質から出力される出力光には、相関光子対と同じ波長帯域に強い励起光成分が含まれる。この励起光成分は、最終的に十分除去しなければならない。そのためには、光バンドパスフィルター等で励起光成分を除去することとなるが、この際励起光波長近傍の波長組み合わせの相関光子対も同時に除去されてしまう。

0094

従って、この光バンドパスフィルターで除去される波長の範囲内に補助信号光及び補助アイドラー光の波長を設定すれば、相関光子対の波長組み合わせの選び方に実質的に制限を加えることなく、複数の波長の組み合わせの相関光子対を同時に選ぶことも可能となり、この発明の適用範囲を広げることができる。

0095

ただしこの場合は、励起光と補助信号光の混合による非線形光学効果が発現しないようにしなければならない。すなわち、3次の非線形光学媒質を利用する場合、励起光光子1個、補助信号光光子1個、信号光光子及びアイドラー光光子各1個によるSFWMが発現しないようにしなければならない。また、2次の非線形光学媒質を利用する場合、補助信号光自身によるSPDC過程や、励起光と補助信号光の和周波発生によって発生した短波長光子のSPDC過程(すなわち、カスケード和周波発生/SPDC過程)が発現しないようにしなければならない。この理由は、これらの過程が発現すると相関のない光子対の発生確率が増大し、相関光子対発生装置から出力される相関光子対の純度が低下することにある。

0096

上述の補助信号光自身によるSPDC過程や、励起光と補助信号光の和周波発生によって発生した短波長光子のSPDC過程の発現を避けるために、例えば、2次の非線形光学媒質を利用する場合、補助信号光の波長をSHG帯域から十分に離れて設定すればよい。

0097

以上説明した条件を満足する波長帯域の補助信号光及び補助アイドラー光を用意することによって、図2に示したこの発明の実施形態の量子相関光子対発生装置を実現することが可能となる。

0098

<この発明の実施形態の量子相関光子対発生装置の動作態様
以下2次の非線形光学媒質を利用してこの発明の実施形態の量子相関光子対発生装置の動作態様を、図2を再び参照して説明するが、3次の非線形光学媒質を利用して同様の量子相関光子対発生装置についても同様に説明できる。3次の非線形光学媒質を利用して構成される量子相関光子対発生装置の動作態様については、以下の説明において、SPDCとあるところをSFWMと読み替え、DFGとあるところをSFWMと読み替えればよい。

0099

相関光子対の元となるSPDC過程を発現させるための励起光が励起光光源12から出力され、この励起光とのDFGによって補助アイドラー光を発生させるための補助信号光が補助信号光源14から出力される。励起光と補助信号光とは合波されて同時に非線形光学媒質20に入力される。ここでは非線形光学媒質20は2次の非線形光学媒質であるので、以下非線形光学媒質20を2次の非線形光学媒質20と表記することもある。

0100

図2に示す光結合器18は、光合波器16によって合波された励起光と補助信号光とを同時に2次の非線形光学媒質20に入力させるためのレンズ等の光学系である。光結合器18は、半透鏡あるいは波長多重フィルター等を利用して構成できる。

0101

2次の非線形光学媒質20からは、励起光と共に相関光子対の元となる、信号光及びアイドラー光の相関光子対、補助信号光、及び補助アイドラー光が出力される。このうち補助信号光及び補助アイドラー光に相当する波長成分のみが、光分岐部22によってそれぞれ個別に取り出される。

0102

一方、相関光子対に相当する波長成分についても、同様に光分岐部22によって補助信号光及び補助アイドラー光に相当する波長成分とは分別されて取り出される。このような取り出し動作は、周知のAWGフィルター等を利用すれば実現される。

0103

分別して取り出された補助信号光及び補助アイドラー光の強度を、それぞれ第1フォトディテクター24及び第2フォトディテクター26によって検出する。そして第1フォトディテクター24及び第2フォトディテクター26からそれぞれ出力される強度信号が出力比較器30-1に入力されて両者の強度比を与える強度比信号が出力比較器30-1から出力されて制御信号発生器30-2に入力される。制御信号発生器30-2からは、強度比信号に従って両者の強度比が予め設定された値に等しくなるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するための制御信号を発生する。図2において、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度のそれぞれを制御するための機構については記載を省略してある。

0104

上述の強度比は、補助信号光の強度と補助アイドラー光の強度との比であるから、DFGによる波長変換効率に等しい。そして既に説明したように、この強度比の値から相関光子対の発生確率の期待値を知ることができる。

0105

従って、出力比較器30-1から出力される強度比信号が予め設定しておく規定値になるように制御すれば、相関光子対の発生確率の期待値が、予め設定された所望の期待値に安定化される。

0106

出力比較器30-1から出力される強度比信号が一定の値の規定値に安定化されるように制御するための手法の一つは、予め設定された規定値からの強度比信号のずれ量に応じた制御信号を制御信号発生器30-2から出力させて、この制御信号によって励起光源12の出力強度を調整する構成とすればよい。この手法は、強度信号に基づいて周知の帰還制御を行うことで実現可能である。

0107

あるいは後述するように、制御信号に基づいて励起光源12の出力波長を調整することによって位相整合条件からのずれを与える方法によっても実現可能である。

0108

カスケード方式によらない通常のDFGにおいては、DFG変換効率、ひいては相関光子対の発生確率の期待値は励起光強度に比例する。従って、励起光強度を調整することで、上述の制御が可能である。

0109

一方、カスケードSHG/DFGにおいては、DFG変換効率は励起光の強度の2乗に比例するので、励起光強度を調整することで、上述の制御が可能である。

0110

また、2次の非線形光学媒質20による非線形光学効果の効率は温度に依存するので、制御信号に応じて2次の非線形光学媒質20の温度を制御することによっても上述の制御が可能である。

0111

同様に、励起光の波長が位相整合条件からずれると、2次の非線形光学媒質20の屈折率分散のために、上述の式(1)、(3)、(5)、及び(7)で与えられる位相整合条件からずれるため、DFG変換効率は励起光の波長に依存する。また、2次の非線形光学媒質20の温度を変化させると、屈折率温度依存性によって位相整合条件が変化し、DFG変換効率が変化する。この現象を利用したのが上述の2次の非線形光学媒質20の温度の制御による相関光子対の発生確率の期待値の制御である。

0112

<この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置>
図7を参照してこの発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置の構成及びその動作について説明する。第1実施例の量子相関光子対発生装置は、偏波分離合成器42を含んで構成されるサニャック干渉計型のループ光路46を具えている。そして、このループ光路46中には相関光子対を発生する非線形光学媒質40が設置され、また90度偏波面変換部44が設けられている。90度偏波面変換部44は、この90度偏波面変換部44を通過する直線偏光の偏波面を90度回転させる。またループ外に光分岐部として機能する波長フィルタを具えている。

0113

ループ光路46は、好ましくは偏波保存光学系で構成されるのがよい。例えば偏波面保存光ファイバーを利用して構成するのが好適であるが、光結合レンズを用いて空間的に結合させた光学系とすることも可能である。このループ光路46を偏波面保存光ファイバーではなく、通常の偏波面保持性を有さない光ファイバーによって結合されて形成された光モジュールとして構成する場合にあっても、適宜偏波面コントローラー等の付加光学部品を用いることによって、擬似的に偏波面保存光学系を実現することが可能である。また、90度偏波面変換部44は光ファイバー融着法等で形成可能であるが、1/2波長板によって実現してもよい。

0114

この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置は、励起光及び補助信号光をループ光路46に入力し、また、ループ光路46から出力される相関光子対の波長成分のみを選択的に抽出して出力するための光入出力用光学部品として、光サーキュレーター48、第1のWDMフィルター50、第2のWDMフィルター52、光ローパスフィルター54を具えている。励起光は励起光源62で発生され、補助信号光は補助信号光源64で発生される。

0115

図2に示した光合波器16及び第1並びに第2光結合器18、28に相当する役割役割を果たす部品は、図7に示すこの発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置においては、光サーキュレーター48、第1のWDMフィルター50、偏波分離合成器42である。光分岐部22に相当する役割を果たす部品は、第2のWDMフィルター52である。また、偏波分離合成器42は、第1入出力端42-1、第2入出力端42-2、及び第3入出力端42-3を具えている。

0116

第1入出力端42-1から入力されたp偏波成分は第2入出力端42-2から出力され、第1入出力端42-1から入力されたs偏波成分は第3入出力端42-3から出力される。また、第2入出力端42-2から入力されたp偏波成分は第1入出力端42-1から出力され、第3入出力端42-3から入力されたs偏波成分は第1入出力端42-1から出力されるように設定されている。なお、偏波分離合成器42は第4入出力端も形式的に具えているが、第4入出力端は、第2入出力端42-2から入力されたp偏波成分、第3入出力端42-3から入力されたs偏波成分が出力されるポートであるが、ここでは使用する必要がないので図7においては第4入出力端を省いて示してある。

0117

すなわち、ループ光路46中に非線形光学媒質40と90度偏波面変換部44とが設置され、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1から励起光及び補助信号光とが入力され、かつ第1入出力端42-1から補助信号光成分、補助アイドラー光成分、信号光成分、及びアイドラー光成分が出力される構成とされている。また、偏波分離合成器42の第2入出力端42-2が、ループ光路46の右回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第1光結合器として動作すると共に、ループ光路46の左回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第2光結合器として動作する。また、偏波分離合成器42の第3入出力端42-3が、ループ光路46の左回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第1光結合器として動作すると共に、ループ光路46の右回りに伝播する励起光及び補助信号光に対して第2光結合器として動作する。

0118

偏波分離合成器42は、例えば、市販されている偏波分離合成器から適宜選択して利用することが可能である。すなわち、薄膜を利用して形成されたタイプの偏波分離合成器を利用してもよいし、複屈折結晶を用いたいわゆる偏光プリズムを用いたタイプの偏波分離合成器を利用してもよい。

0119

光サーキュレーター48は、補助信号光を入力するための第1入力端48-1と、第1入力端48-1から入力された入力光を出力し第1のWDMフィルター50へと結合する第2入出力端48-2と、第2入出力端48-2から入力された入力光を出力する第3入出力端48-3とを具えている。

0120

光サーキュレーター48の第2入出力端48-2から出力される補助信号光は、第1のWDMフィルター50において励起光と合波されて、その後補助信号光と励起光とは偏波分離合成器42の第1入出力端42-1へと入力される。このような第1のWDMフィルター50として好適なものの一例はAWGフィルターである。あるいはまた、第1のWDMフィルター50として誘電体多層膜フィルターを用いて構成される光バンドパスフィルターを利用することも可能である。すなわち、光バンドパスフィルターの透過ポートから励起光を入力し、反射ポートから補助信号光を入力すれば、共通ポートから励起光と補助信号光が合波されて出力される。ここでは、第1のWDMフィルターを、誘電体多層膜フィルターを用いた光バンドパスフィルターであるものとして説明する。

0121

励起光と補助信号光はその後、それぞれのp偏波成分が偏波分離合成器42の第2入出力端42-2から出力され、また、s偏波成分が第3入出力端42-3から出力される。これら偏波分離された励起光のp偏波成分とs偏波成分は、以下に述べる理由によって同一の光強度でなければならない。そのために、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1へと入力される励起光は、p偏波成分強度とs偏波成分強度の強度比が1:1であるように偏波調整されていなければならない。このように用意された入力励起光を、ここでは、45度偏光の励起光と呼ぶものとする。このような励起光は、市販の偏波面コントローラー等を用いて容易に準備することが可能である。

0122

一方、補助信号光の偏波状態については後述するように上述した励起光に対する制約に相当する制約は存在しない。

0123

光ローパスフィルター54は、2次の非線形光学媒質を用いた場合に、SPDC過程における励起光成分、またはカスケードSHG/SPDC過程におけるSHG光成分を除去する役割を果たす。

0124

第2のWDMフィルター52は、光ローパスフィルター54の通過光のうち、少なくとも信号光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)を別々の光経路に切り分けて出力する役割を果たす。更に、補助信号光波長成分(λs-2)、補助アイドラー光波長成分(λi-2)についても別々の光経路に切り分けて出力する役割を果たす。このようなWDMフィルターとしては、少なくとも上述の4つの波長成分を透過波長成分として有するAWG型のWDMフィルター等を適宜利用することが可能である。

0125

第2のWDMフィルター52を通過した信号光波長成分、アイドラー光波長成分が偏波量子もつれ光子対(偏波量子相関光子対)として、光ファイバー通信網等の光伝送経路を経過した後、それぞれ受信者A、受信者Bに送信される。受信者A及び受信者Bは、同時計測等を実行することで、量子情報通信技術に基づく情報伝達等を実行することとなる。

0126

また、第2のWDMフィルター52を通過した補助信号光波長成分、補助アイドラー光波長成分は、それぞれ第1フォトディテクター56、第2フォトディテクター58で強度検出される。そして、補助信号光成分の強度信号及び補助アイドラー光成分の強度信号は制御信号発生部60に入力される。制御信号発生部60は出力比較器60-1と制御信号発生器60-2とを具えている。補助信号光成分の強度信号及び補助アイドラー光成分の強度信号は、まず出力比較器60-1に入力される。出力比較器60-1からは、補助信号光成分の強度と補助アイドラー光成分の強度との比に比例する信号が出力されて制御信号発生器60-2に入力される。制御信号発生器60-2からは、強度比信号に従って両者の強度比が予め設定された値に等しくなるように、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するための制御信号を発生する。

0127

以下、この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置の動作について説明する。その前提として、非線形光学媒質40に入出力する励起光、補助信号光、補助アイドラー光、信号光、アイドラー光は同一の偏波方向の直線偏光であるものとする。このような状態は、例えば、2次の非線形光学媒質40としてPPLN結晶を用いた場合、PPLN結晶の2次の非線形光学定数のd33成分を利用し、そのためにPPLN結晶のz軸方向に偏波した励起光を入力させることで実現される。

0128

偏波分離合成器42の第2入出力端42-2、第3入出力端42-3から、それぞれp偏波、s偏波で同一強度の励起光(波長λp)が入力される。p偏波方向と、PPLN結晶のz軸方向が一致するように、2次の非線形光学媒質であるPPLN結晶を配置する。PPLN結晶は非線形光学媒質40に相当するので、以後、非線形光学媒質40と記載する代わりにPPLN結晶と記載することもある。

0129

まず、ループ光路46を時計回りに伝播する励起光によって生じる非線形光学過程を考える。この励起光とは、偏波分離合成器42の第2入出力端42-2からp偏波光として出力される励起光成分のことを指す。

0130

ここでは、相関光子対発生過程としては通常の1段SPDC過程のみを考える。このときSPDC過程により、信号光とアイドラー光とからなる相関光子対が発生する。また、補助信号光のp偏波成分が存在すれば、DFG過程により補助アイドラー光が発生する。

0131

PPLN結晶から出力される、同一の偏波状態にある励起光、信号光、アイドラー光、補助信号光、及び補助アイドラー光は、PPLN結晶から出力されて90度偏波面変換部44を通過する。この際、偏波面が90度回転してs偏波となって偏波分離合成器42の第3入出力端42-3に入力され、その結果、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1からs偏波として出力される。

0132

すなわち、ループ光路46を時計回りに伝播する励起光によって、s偏波の信号光とアイドラー光とからなる相関光子対、並びにs偏波の補助信号光及び補助アイドラー光が、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1から出力される。一方、ループ光路46を反時計回りに伝播する励起光、すなわち偏波分離合成器42の第3入出力端42-3からs偏波光として出力される励起光成分によって発現する非線形光学過程を考える。

0133

励起光は90度偏波面変換部44を通過することで90度偏波回転が起こりp偏波となる。補助信号光のs偏波成分が存在すれば、やはり90度偏波回転が起こりp偏波となる。その後、励起光等がPPLN結晶に入力するとき、励起光及び補助信号光の偏波はPPLN結晶のz軸の方向と一致する。ループ光路46を反時計回りに伝播する励起光が入力されることで、ループ光路46を時計回りに伝播する励起光によって発生したのと同様に、SPDC過程によって信号光とアイドラー光からなる相関光子対が発生し、また、DFG過程によって補助アイドラー光が発生する。

0134

90度偏波面変換部44での光損失を無視すると、PPLN結晶に入力する励起光強度は、ループ光路46を時計回りに伝播する励起光がPPLN結晶に入力するときの励起光強度と等しい。

0135

ここで、PPLN結晶の前後から入力される時計回り及び反時計回りの励起光の偏波方向が同一であって、かつその強度も互いに等しいことから、PPLN結晶が中心対称構造であれば、PPLN結晶内で発生するSHG光とSPDC相関光子対の発生確率は、時計回り及び反時計回りの励起光に対して互いに等しい。これは、補助アイドラー光の変換効率に対しても同様である。

0136

反時計回りの励起光に対してPPLN結晶から出力される励起光、信号光、アイドラー光、補助信号光、及び補助アイドラー光は、p偏波として偏波分離合成器42の第2入出力端42-2に入力され、その結果、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1からp偏波として出力される。すなわち、ループ光路46を反時計回りに伝播する励起光によって、p偏波の信号光とアイドラー光とからなる相関光子対、並びにp偏波の補助信号光及び補助アイドラー光が、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1から出力される。

0137

励起光の強度が十分に弱い場合、偏波分離合成器42の第1入出力端42-1から出力される信号光とアイドラー光とからなる相関光子対は、ループ光路46を時計回りに伝播する励起光によって発生したs偏波の相関光子対か、ループ光路46を反時計回りに伝播する励起光によって発生したp偏波の相関光子対のどちらか一方となる。すなわち、この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置によって発生される相関光子対の量子状態は、ループ光路46を時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し時計回り成分とは偏波直交した相関光子対の重ね合わせ状態となる。つまり、この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置によって、偏波量子もつれ光子対が発生されて出力される。

0138

一方、ループ光路46から出力される補助信号光の強度は、ループ光路46に入力される補助信号光の偏波状態によらず一定である。また、補助アイドラー光の変換効率は、ループ光路46を時計回りに伝播する補助アイドラー光と、反時計回りに伝播する補助アイドラー光とは同一なので、ループ光路46から出力される補助アイドラー光の強度も、ループ光路46に入力される補助信号光の偏波状態に依らず一定である。すなわち、補助信号光の偏波状態によらず、ループ光路46から出力される補助アイドラー光の出力強度は、変換効率が一定なので、補助信号光の偏波制御は不要である。

0139

偏波分離合成器42の第1入出力端42-1から出力された励起光、補助信号光、補助アイドラー光、信号光、アイドラー光は、第1のWDMフィルター50において、励起光成分は理想的には全て透過ポートへと出力される。一方、補助信号光、補助アイドラー光、信号光、アイドラー光は反射ポートへと出力され、光サーキュレーター48を介してその第3入出力端48-3に出力される。そして、光ローパスフィルター54において、励起光の残存成分が除去される。因みに、励起光の波長は、信号光あるいはアイドラー光の波長のほぼ半分である。

0140

第2のWDMフィルター52において、光ローパスフィルター54を通過した光のうち、少なくとも信号光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)が別々の光経路に切り分けられて出力される。更に、補助信号光波長成分(λs-2)、補助アイドラー光波長成分(λi-2)もまた別々の光経路に切り分けられて出力される。

0141

それぞれの光経路には余分な波長成分が混同しないように、第2のWDMフィルター52には十分な波長分離能力が要求される。このような条件を満たす第2のWDMフィルター52としては、少なくとも上述した4つの波長成分を透過波長成分とするAWG型のWDMフィルター等を利用することが可能である。また、例えば、ファイバーブラッググレーティング等と組み合わせて励起光波長成分を十分に抑制することが可能である構成とすることもできる。

0142

第2のWDMフィルター52を通過した信号光波長成分、アイドラー光波長成分が、偏波量子相関光子対として、量子情報通信技術に基づく情報伝達等に使用される。一方、第2のWDMフィルター52を通過した補助信号光波長成分、補助アイドラー光波長成分は、それぞれ第1フォトディテクター56、第2フォトディテクター58で検出される。第1フォトディテクター56及び第2フォトディテクター58で検出された補助信号光成分の強度信号及び補助アイドラー光成分の強度信号は制御信号発生部60に入力される。制御信号発生部60における処理は既に述べたので、ここでは省略する。

0143

以上説明したように、この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置によれば、偏波量子もつれ光子対の発生確率が安定化されて出力される。なお、上述の説明では、相関光子対発生過程としては通常の1段SPDC過程のみを考えたが、これ以外の非線形光学過程を用いる方式でも、量子相関光子対発生装置が実現可能であることは明らかである。

0144

例えば、2次の非線形光学媒質におけるカスケードSHG/SPDC過程を利用して量子相関光子対発生装置を実現させることも可能である。この場合、光ローパスフィルター54は、SHG光の除去を主目的として利用される。またこの場合、励起光波長、信号光波長、アイドラー光波長、補助信号光波長、及び補助アイドラー光波長が同じ波長帯域にあるため、特に第2のWDMフィルター52における波長分離や、強い光強度を有する励起光成分の抑制を十分に図ることによって、上述した通常の1段SPDC過程のみを想定して成立する量子相関光子対発生装置と同様な効果を期待することができる。

0145

同様に、3次の非線形光学媒質におけるSFWM過程を利用して量子相関光子対発生装置を実現することも可能である。この場合、半波長領域の光、すなわち、単純SPDCにおける励起光やカスケードSHG/SPDC過程において発生するSHG光が存在しないので、光ローパスフィルター54は不要である。

0146

一方、カスケードSHG/SPDC過程を利用する場合と同様に、励起光波長、信号光波長、アイドラー光波長、補助信号光波長、及び補助アイドラー光波長が同じ波長帯域にあるため、第2のWDMフィルター52における波長分離や、強い光強度を有する励起光成分の抑制を十分に図ることによって、上述した通常の1段SPDC過程のみを想定して成立する量子相関光子対発生装置と同様な効果を期待することができる。なお、この場合、補助アイドラー光はSFWM過程によって発生する。

0147

なお、この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置を示す図7においては、制御信号発生部60から出力される制御信号によって、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値を調整するための制御機構についてはその記載を省略してある。励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の具体的な制御方法は、制御信号発生部60から出力される制御信号に基づき周知のアルゴリズムを応用すれば実現される。

0148

<この発明の第2実施例の量子相関光子対発生装置>
図8を参照してこの発明の第2実施例の量子相関光子対発生装置の構成及びその動作について説明する。上述したこの発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置は偏波量子もつれ光子対の発生装置であったのに対し、この発明の第2実施例の量子相関光子対発生装置は、時間位置量子もつれ光子対の発生装置である。しかしながら、上述した第1実施例の量子相関光子対発生装置とは、その基本的な部分において一部重複した構成となっている。従って、図8では、第1実施例の量子相関光子対発生装置と同一構成要素には同一の符号を付して示し、その重複する機能の説明を一部省略する場合がある。

0149

時間位置量子もつれ光子対については、文献(参考文献2:井上恭著、「工学系のための量子工学」森出版株式会社、2008年2月6日、第1版第1刷発行、pp.154-156)等において既に解説がなされている。

0150

図8に示すように、2連光パルスからなる励起光を励起光源62から出力させてこの励起光を非線形光学媒質40に入力する。励起光パルスピーク強度が適切であれば、非線形光学媒質40におけるSPDC過程、カスケードSHG/SPDC過程、あるいはSFWM過程によって発生される相関光子対の量子状態は、1発目の励起光パルスから生じる状態と2発目の励起光パルスから生じる状態との重ね合わせの状態となり、すなわち時間位置量子もつれ光子対となる。ここで、SPDC過程、カスケードSHG/SPDC過程に基づいて動作させる場合は非線形光学媒質40として2次の非線形光学媒質を選択し、SFWM過程に基づいて動作させる場合は非線形光学媒質40として3次の非線形光学媒質を選択して利用する。

0151

1発目及び2発目のそれぞれの励起光パルスで生じる相関光子対の数の期待値の安定化は、上述したこの発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置において実行した手法と同一である。

0152

非線形光学媒質40からは、励起光パルス、相関光子対になる信号光パルス、アイドラー光パルス、補助信号光パルス及び補助アイドラー光パルスが出力される。補助信号光パルスは連続光でもよいが、補助アイドラー光は励起光がパルス光であるのでパルス光となる。

0153

非線形光学媒質40からの出力光は、光ローパスフィルター54、第2のWDMフィルター52によって、時間位置量子相関光子対となる信号光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)とが別々の光経路に切り分けられる。また、安定化のために利用される補助信号光波長成分(λs-2)、補助アイドラー光波長成分(λi-2)もまた別々の光経路に切り分けられて出力される。

0154

第2のWDMフィルター52を通過したこれらの補助信号光波長成分、補助アイドラー光波長成分は、それぞれ第1フォトディテクター56、第2フォトディテクター58で検出され、制御信号発生部60によって、この発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置と同様の処理がなされる。制御信号発生部60から出力される制御信号によって、励起光の強度、励起光の波長、及び非線形光学媒質の温度の少なくともいずれか一つの値が調整されるが、この点についてもこの発明の第1実施例の量子相関光子対発生装置と同様であるので、その説明を省略する。

0155

<この発明の第1及び第2実施例の量子相関光子対発生装置の変形例>
この発明の第1及び第2実施例の量子相関光子対発生装置では、非線形光学媒質としてPPLN結晶の2次の非線形光学効果を用いた場合を想定したが、PPLN結晶以外の2次の非線形光学効果が発現する媒体であれば利用可能である。更に、光ファイバーやシリコン細線等の3次の非線形光学効果が発現する媒体を用いても、上述の第1のWDMフィルター50、第2のWDMフィルター52の波長透過特性等の設計的な事項を変更することで、この発明の第1及び第2実施例の量子相関光子対発生装置で実現されたものと同様の効果が得られる量子相関光子対発生装置を実現することが可能である。

0156

また、この発明の第1及び第2実施例の量子相関光子対発生装置につき、励起光や補助信号光の入力方法等は他の周知の手法によっても実現できる。すなわち、例えば、励起光と補助信号光との両者を光カプラで合波する手法も採用することができる。更に、非線形光学媒質の光学軸の方向と、これに入力される励起光の偏波方向等も設計的事項であり、非線形光学定数のテンソル成分のどの成分を利用するかによって適宜設定することができる。

0157

また、励起光その他の光の偏波面を90度回転させるのに用いる90度偏波面変換部44は、1/2波長板を利用することも可能であるが、2次の非線形光学媒質の単純なSPDC過程を利用する場合は1/2波長板を利用することはできない。これは、1/2波長板として励起光に対する1/2波長板とすると、信号光その他の励起光の2倍波長の光に対しては1/4波長板として動作してしまい、90度偏波回転の機能が得られないからである。また一方、1/2波長板として信号光その他の長波長光に対する1/2波長板とすると、励起光に対しては1/1波長板として動作してしまい90度偏波回転の機能が得られないからである。従って、2次の非線形光学媒質の単純なSPDC過程を利用する場合は、ファイバー融着などの周知の手法で形成される90度偏波面変換部を利用することになる。

0158

10、20、40:非線形光学媒質
12、62:励起光源
14、64:補助信号光源
16:光合波器
18:第1光結合器
22:光分岐部
24、56:第1フォトディテクター
26、58:第2フォトディテクター
28:第2光結合器
30、60:制御信号発生部
30-1、60-1:出力比較器
30-2、60-2:制御信号発生器
42:偏波分離合成器
44:90度偏波面変換部
46:ループ光路
48:光サーキュレーター
50:第1のWDMフィルター
52:第2のWDMフィルター
54:光ローパスフィルター

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