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技術 耐熱コーティング材

出願人 国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者 ウーラダー川岸京子松本一秀原田広史
出願日 2010年4月20日 (7年8ヶ月経過) 出願番号 2010-096554
公開日 2011年11月10日 (6年1ヶ月経過) 公開番号 2011-225930
状態 特許登録済
技術分野 タービンロータ・ノズル・シール ガスタービン、高圧・高速燃焼室 タービンロータ・ノズル・シール
主要キーワード セラミックコート層 化学ポテンシャル差 熱遮蔽層 熱コート ベース組成 熱遮蔽効果 耐用温度 超合金部材

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図面 (5)

課題

ジェットエンジン産業用ガスターンビンなどのタービン動翼タービン静翼として高温、高応力下での使用を目的とする。

解決手段

部材の耐酸化性耐高温腐食性などの耐環境特性を向上させることはもちろん、従来技術では解決し得なかった高温での長時間の耐久性飛躍的に向上させたところにその最大の特徴を有する耐熱部材を提供するものである。具体的には、Ni基超合金基材、Pt(白金)または/およびIr(イリジウム)の含有するEQコート材ボンドコート層)およびセラミック熱遮蔽コート層の3層の材料組み合わせからなるガスタービン部材構成によって、高温熱サイクルの耐久性を飛躍的に向上させることが可能となった。

背景

従来、ジェットエンジン産業用ガスターンビンなどのタービン動翼タービン静翼基材として耐用温度改善したNi基超合金が開発されてきている。また、これらのタービン動翼やタービン静翼の耐熱部材耐久性をさらに高めるために、セラミック熱遮蔽コーティングが従来から広く適用されてきている。また、遮熱コート材のNi基超合金製のジェットエンジン部品への密着性強化、部品の寿命改良のために、Ni基超合金基材セラミック熱遮蔽コート材の間に施す、耐酸化性の高いボンドコート材多種多様な形で考えられてきた。これらのボンドコート材料としては、主にAl(アルミニウム含有合金が広く用いられる。例えば、NiまたはCoのアルミナイド、MCrAlY(M:Ni,CoおよびFeの少なくとも一つ)、さらにはプラチナ・アルミナイドなどを挙げることができる。

しかし、これらのボンドコート材をNi基超合金製のタービン翼に適用し、タービン翼を高温で長時間使用した場合、Ni基超合金基材とボンドコート材の界面近傍および/あるいはセラミック熱遮蔽コート材とボンドコート材の界面近傍を通して元素相互拡散が進み、この元素の相互拡散によって、Ni基超合金の材質劣化し、強度低下や、ボンドコート材の耐環境性低下など、タービン翼自体の耐久性低下につながる材料技術的な問題が生じる。特に、近年、ジェットエンジンやガスタービンガス温度は高くなり、必然的にタービン翼の温度が上昇し、そのような拡散現象がより加速される。また、高圧タービン冷却のために中空構造を有しているが、薄肉化が進んでいるため、拡散領域の影響は一層重要な技術課題となってきている。

Ni基超合金基材/ボンドコート材の界面近傍をとおしての元素の相互拡散を抑えるために、拡散障壁コーティングディフュージョンバリアコーティング)が検討されてきたが、拡散障壁コーティングとしての目的を必ずしも充分に果たさないことも多い。

本発明者らは、Ni基超合金基材とボンドコート材のそれぞれの合金組成熱力学的に平衡状態にないために元素が双方に拡散することによって部材の劣化が進行することに着目し、ボンドコート材としてNi基超合金基材と熱力学的平衡にある合金を使用することを提案してきた(EQコート材)。具体的には、Ni基超合金と熱力学平衡する組成を有するγ相、γ’相、B2相のうちの少なくとも一種を含む層を一層あるいは多層コーティングすることによって元素の拡散を顕著に抑制し、コーティングされた部材の劣化を抑制することを明らかにしてきた。

図1は、Ni基超合金を基材として使用した耐熱ガスタービン部材の構成例の切断面図を示したものである。Ni基超合金基材(1)の耐熱性を高めるために、通常基材の表面にセラミック熱遮蔽コート層(3)をコートするが、Ni基超合金基材とセラミック熱遮蔽コート層の界面の長期的な接着特性が不充分であるため、種々のコート材がボンドコート材(2)として使用されている。先に述べたEQコート材は、Ni基超合金基材とボンドコート層との界面近傍に起こるSRZ(Secondary Reaction Zone)の生成を抑制することができる極めて優れたコート材といえる。しかし、このEQコート材を使用した場合でも、セラミック熱遮蔽コート層に接するEQコート材の界面近傍においては、高温酸化条件下で酸化被膜の生成に伴ってセラミックコート層剥離が起こるために、Ni基超合金部材の寿命は必ずしも十分とはいえない。

概要

ジェットエンジンや産業用ガスターンビンなどのタービン動翼やタービン静翼として高温、高応力下での使用を目的とする。部材の耐酸化性、耐高温腐食性などの耐環境特性を向上させることはもちろん、従来技術では解決し得なかった高温での長時間の耐久性を飛躍的に向上させたところにその最大の特徴を有する耐熱部材を提供するものである。具体的には、Ni基超合金基材、Pt(白金)または/およびIr(イリジウム)の含有するEQコート材(ボンドコート層)およびセラミック熱遮蔽コート層の3層の材料組み合わせからなるガスタービン部材構成によって、高温熱サイクルの耐久性を飛躍的に向上させることが可能となった。

目的

本願発明は、高温酸化雰囲気下において、Ni基超合金基材とボンドコート層との界面近傍に起こるSRZ(Secondary Reaction Zone)の生成を抑制するとともに、セラミック熱遮蔽コート層とボンドコート層との界面における接着性を改善して、長寿命のNi基超合金部材を提供することを課題としている。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

Ni基超合金基材コート材塗布したNi基超合金部材において、コート材が基材界面において相互拡散を生じない化学組成を有するコート材(EQコート材と呼称)であって、質量%として0.2%以上15%以下のPt(白金)または/およびIr(イリジウム)を含有することを特徴とするNi基超合金部材。

請求項2

前項の相互拡散を生じないEQコート材が、基材のNi基超合金熱力学平衡する組成を有するγ相、γ’相、B2相のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とするNi基超合金部材。

請求項3

請求項1および2項において、相互拡散を生じないEQコート材の組成が、少なくとも質量%で、Alを2.9%以上16.0以下、Crを0以上19.6以下含むことを特徴とするNi基超合金部材。

請求項4

請求項1および2項において、相互拡散を生じないEQコート材の組成が、少なくとも質量%で、Alを6.1以上10.6以下、Crを0.4以上14.0以下含むことを特徴とするNi基超合金部材。

請求項5

請求項2において、相互拡散を生じないEQコート材が、基材のNi基超合金と熱力学平衡する組成を有するγ’相であることを特徴とするNi基超合金部材。

請求項6

請求項1から5項において、相互拡散を生じないEQコート材に含まれるPtまたは/およびIrの含有量が、質量%で、0.5%以上10%以下含むことを特徴とするNi基超合金部材。

請求項7

請求項1から6項において、Ni基超合金基材がAl:1.0質量%以上10.0質量%以下、Ta:0質量%以上14.0質量%以下、Mo:0質量%以上10.0質量%以下、W:0質量%以上15.0質量%以下、Re:0質量%以上10.0質量%以下、Hf:0質量%以上3.0質量%以下、Cr:0質量%以上20.0質量%以下、Co:0質量%以上20質量%以下、Ru:0質量%以上14.0質量%以下、Nb:0質量%以上4.0質量%以下、Si:0質量%以上2.0質量%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる組成を有することを特徴とするNi基超合金部材。

請求項8

請求項1から6項において、Ni基超合金基材がAl:1.0質量%以上10.0質量%以下、Ta:0質量%以上14.0質量%以下、Mo:0質量%以上10.0質量%以下、W:0質量%以上15.0質量%以下、Re:0質量%以上10.0質量%以下、Hf:0質量%以上3.0質量%以下、Cr:0質量%以上20.0質量%以下、Co:0質量%以上20質量%以下、Ru:0質量%以上14.0質量%以下、Nb:0質量%以上4.0質量%以下、Si:0質量%以上2.0質量%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる組成を有することを特徴とするNi基超合金部材。

請求項9

請求項1から8項までに記載のNi基超合金部材を用いて作製することを特徴とする耐熱ガスタービン部材

技術分野

0001

本願発明耐熱部材に関する。
具体的には、ジェットエンジン産業用ガスターンビンなどのタービン動翼タービン静翼として高温、高応力下での使用を目的としたもので、部材の耐酸化性耐高温腐食性などの耐環境特性を向上させることはもちろん、従来技術では解決し得なかった高温での長時間の耐久性飛躍的に向上させたところにその最大の特徴を有する耐熱部材を提供するものである。

背景技術

0002

従来、ジェットエンジンや産業用ガスターンビンなどのタービン動翼やタービン静翼の基材として耐用温度改善したNi基超合金が開発されてきている。また、これらのタービン動翼やタービン静翼の耐熱部材の耐久性をさらに高めるために、セラミック熱遮蔽コーティングが従来から広く適用されてきている。また、遮熱コート材のNi基超合金製のジェットエンジン部品への密着性強化、部品の寿命改良のために、Ni基超合金基材セラミック熱遮蔽コート材の間に施す、耐酸化性の高いボンドコート材多種多様な形で考えられてきた。これらのボンドコート材料としては、主にAl(アルミニウム含有合金が広く用いられる。例えば、NiまたはCoのアルミナイド、MCrAlY(M:Ni,CoおよびFeの少なくとも一つ)、さらにはプラチナ・アルミナイドなどを挙げることができる。

0003

しかし、これらのボンドコート材をNi基超合金製のタービン翼に適用し、タービン翼を高温で長時間使用した場合、Ni基超合金基材とボンドコート材の界面近傍および/あるいはセラミック熱遮蔽コート材とボンドコート材の界面近傍を通して元素相互拡散が進み、この元素の相互拡散によって、Ni基超合金の材質劣化し、強度低下や、ボンドコート材の耐環境性低下など、タービン翼自体の耐久性低下につながる材料技術的な問題が生じる。特に、近年、ジェットエンジンやガスタービンガス温度は高くなり、必然的にタービン翼の温度が上昇し、そのような拡散現象がより加速される。また、高圧タービン冷却のために中空構造を有しているが、薄肉化が進んでいるため、拡散領域の影響は一層重要な技術課題となってきている。

0004

Ni基超合金基材/ボンドコート材の界面近傍をとおしての元素の相互拡散を抑えるために、拡散障壁コーティングディフュージョンバリアコーティング)が検討されてきたが、拡散障壁コーティングとしての目的を必ずしも充分に果たさないことも多い。

0005

本発明者らは、Ni基超合金基材とボンドコート材のそれぞれの合金組成熱力学的に平衡状態にないために元素が双方に拡散することによって部材の劣化が進行することに着目し、ボンドコート材としてNi基超合金基材と熱力学的平衡にある合金を使用することを提案してきた(EQコート材)。具体的には、Ni基超合金と熱力学平衡する組成を有するγ相、γ’相、B2相のうちの少なくとも一種を含む層を一層あるいは多層コーティングすることによって元素の拡散を顕著に抑制し、コーティングされた部材の劣化を抑制することを明らかにしてきた。

0006

図1は、Ni基超合金を基材として使用した耐熱ガスタービン部材の構成例の切断面図を示したものである。Ni基超合金基材(1)の耐熱性を高めるために、通常基材の表面にセラミック熱遮蔽コート層(3)をコートするが、Ni基超合金基材とセラミック熱遮蔽コート層の界面の長期的な接着特性が不充分であるため、種々のコート材がボンドコート材(2)として使用されている。先に述べたEQコート材は、Ni基超合金基材とボンドコート層との界面近傍に起こるSRZ(Secondary Reaction Zone)の生成を抑制することができる極めて優れたコート材といえる。しかし、このEQコート材を使用した場合でも、セラミック熱遮蔽コート層に接するEQコート材の界面近傍においては、高温酸化条件下で酸化被膜の生成に伴ってセラミックコート層剥離が起こるために、Ni基超合金部材の寿命は必ずしも十分とはいえない。

発明が解決しようとする課題

0007

本願発明は、高温酸化雰囲気下において、Ni基超合金基材とボンドコート層との界面近傍に起こるSRZ(Secondary Reaction Zone)の生成を抑制するとともに、セラミック熱遮蔽コート層とボンドコート層との界面における接着性を改善して、長寿命のNi基超合金部材を提供することを課題としている。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討したところ、本発明者らが提案してきたEQコート材にPt(白金)および/またはIr(イリジウム)を含有させることによって、熱サイクル寿命(セラミック熱遮蔽コートの剥離が発生するまでの時間)を飛躍的に改善可能であることを見出した。すなわち、EQコート材にPtおよび/またはIrを含有させることによって、セラミック熱遮蔽コートに接するEQコート層の界面近傍に均質かつ緻密な酸化物層が生成して酸化物層の安定性・密着性を大幅に改善することが可能となった。

0009

本発明の提案するコート材の適用によって、EQコート材が本来有している合金基材とコート層界面近傍のSRZ生成阻害効果に加え、課題となっていたセラミック熱遮蔽コート層とEQコート層と界面の接着性も大幅に改善され、Ni基超合金部材の熱サイクルの更なる長寿命化が達成されることとなった。また、Ptおよび/またはIrを含有するEQコート材は、高温酸化雰囲気下において、その表面に均質かつ緻密な安定した酸化物層を生成することから、それほど厳しい温度条件で使用しない場合には、セラミック熱遮蔽コート層(図1の3)を設けないNi基超合金部材であっても、長寿命なコート材として使用することもできる。

0010

すなわち、上記の課題を解決する手段として、本願発明は、第1には、Ni基超合金基材にコート材を塗布したNi基超合金部材において、コート材が基材界面において相互拡散を生じない化学組成を有するコート材(EQコート材と呼称)であって、質量%として0.2%以上15%以下のPtまたは/およびIrを含有することを特徴としている。

0011

本願発明は、第2には、EQコート材が、基材のNi基超合金と熱力学平衡する組成を有するγ相、γ’相、B2相のうちの少なくとも一種を含むことを特徴としている。

0012

本願発明は、第3には、EQコート材の組成が、少なくとも質量%で、Alを2.9%以上16.0以下、Crを0以上19.6以下含むことを特徴としている。

0013

本願発明は、第4には、EQコート材の組成が、少なくとも質量%で、Alを6.1以上10.6以下、Crを0.4以上14.0以下含むことを特徴としている。

0014

本願発明は、第5には、EQコート材が、基材のNi基超合金と熱力学平衡する組成を有するγ’相を含むことを特徴としている。

0015

本願発明は、第6には、EQコート材に含まれるPtまたは/およびIrの含有量が、質量%で、0.5%以上10%以下含むことを特徴としている。

0016

本願発明は、第7には、上記のNi基超合金基材がAl:1.0質量%以上10.0質量%以下、Ta:0質量%以上14.0質量%以下、Mo:0質量%以上10.0質量%以下、W:0質量%以上15.0質量%以下、Re:0質量%以上10.0質量%以下、Hf:0質量%以上3.0質量%以下、Cr:0質量%以上20.0質量%以下、Co:0質量%以上20質量%以下、Ru:0質量%以上14.0質量%以下、Nb:0質量%以上4.0質量%以下、Si:0質量%以上2.0質量%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる組成を有することを特徴としている。

0017

本願発明は、第8には、上記のNi基超合金基材がAl:3.5質量%以上7.0質量%以下、Ta:2.0質量%以上12.0質量%以下、Mo:0質量%以上4.5質量%以下、W:0質量%以上10.0質量%以下、Re:0質量%以上8.0質量%以下、Hf:0質量%以上0.50質量%以下、Cr:1.0質量%以上15.0質量%以下、Co:2質量%以上16質量%以下、Ru:0質量%以上14.0質量%以下、Nb:0質量%以上2.0質量%以下、Si:0質量%以上2.0質量%以下%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる組成を有することを特徴としている。

0018

本願発明は、第9には、耐熱ガスタービン部材が上記のNi基超合金基材の表面に、Ptまたは/およびIrを含有する上記のEQコート材を塗布してなるNi基超合金部材を用いて作製されていることを特徴としている。

発明の効果

0019

本発明の耐熱部材によれば、空気存在下、1,100℃あるいは1,100℃を超えるような高温下においても、Ptまたは/およびIrの含有するEQコート材(ボンドコート層)とセラミック熱遮蔽コート層との界面近傍は、高温熱サイクル時においても非常に安定性となる。また、EQコート材(ボンドコート層)とNi基合金基材とは、ほぼ平衡状態にあって界面近傍における元素の相互拡散が抑制されており、その界面の高温安定性も同時に堅持される。このように、Ni基超合金基材、Ptまたは/およびIrの含有するEQコート材(ボンドコート層)およびセラミック熱遮蔽コート層の3層の材料組み合わせからなるガスタービン部材構成によって、高温熱サイクルの耐久性を飛躍的に向上させることが可能となる。

図面の簡単な説明

0020

Ni基超合金を基材として使用した耐熱ガスタービン部材の構成モデル切断面図例
1,135℃で1時間加熱し、室温で1時間保持するサイクル試験を実施した場合の各種EQC材をコーティングした試料の熱サイクル寿命
各種EQCコート層にセラミック熱遮蔽コートを施した後、1,135℃、100サイクル耐酸化試験を実施した試料の切断面の走査型電子顕微鏡写真;(a):EQC−Ptコート材(b):EQC−Irコート材(c):EQC(ベース組成のEQコート材)なお、枝番1が付いた写真は縦軸の長さを約200μm、枝番2が付いた写真は枝番1の写真を縦軸の長さを約20μmに拡大したもの
1,135℃、100サイクルの耐酸化試験を実施したのちの、各種EQCコート層とセラミック熱遮蔽コート層の界面近傍におけるミクロ組織とAl(アルミニウム)およびO(酸素)の分布状態(a),(b),(c):各々EQC−Ptコート材の界面ミクロ組織、Al(アルミニウム)およびO(酸素)のマッピング(d),(e),(f):各々EQC−Irコート材の界面ミクロ組織、Al(アルミニウム)およびO(酸素)のマッピング(g),(h),(i):各々EQCコート材の界面ミクロ組織、Al(アルミニウム)およびO(酸素)のマッピング

0021

図1を用いて既に述べたように、Ni基超合金基材(1)上に、Ptまたは/およびIrを含有したEQコート材をボンドコート層(2)として塗布し、その上にさらにセラミック熱遮蔽コート層(3)を形成したNi基超合金部材が、本発明の具体的な望ましい適用形態の一例である。また、Ptおよび/またはIrを含有するEQコート材は、高温酸化雰囲気下において、その表面にかなり安定した酸化物層を生成することから、Ni基超合金基材(1)上に、Ptまたは/およびIrを含有したEQコート材を塗布した2層構造のNi基超合金部材も本発明の望ましい適用例である。

0022

本発明において用いられるNi基超合金の基材(図1の1)としては、一般に使用されている第1−3世代のNi基超合金、さらには近年開発が盛んに行われているRe(レニウム)およびRu(ルテニウム)を含有する第4および第5世代合金等にも幅広く適用可能である。具体的な合金組成例として、Al:1.0質量%以上10.0質量%以下、Ta:0質量%以上14.0質量%以下、Mo:0質量%以上10.0質量%以下、W:0質量%以上15.0質量%以下、Re:0質量%以上10.0質量%以下、Hf:0質量%以上3.0質量%以下、Cr:0質量%以上20.0質量%以下、Co:0質量%以上20質量%以下、Ru:0質量%以上14.0質量%以下、Nb:0質量%以上4.0質量%以下、Si:0質量%以上2.0質量%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる合金を例示することができる。 好ましくは、Al:3.5質量%以上7.0質量%以下、Ta:2.0質量%以上12.0質量%以下、Mo:0質量%以上4.5質量%以下、W:0質量%以上10.0質量%以下、Re:0質量%以上8.0質量%以下、Hf:0質量%以上0.50質量%以下、Cr:1.0質量%以上15.0質量%以下、Co:2質量%以上16質量%以下、Ru:0質量%以上14.0質量%以下、Nb:0質量%以上2.0質量%以下、Si:0質量%以上2.0質量%以下含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる合金を例示することができる。しかし、本願特許の趣旨に沿うものである限り、上記のNi基超合金の例示に限定されるものではなく、極めて幅広いNi基超合金の基材に対して適用が可能である。

0023

本発明において、Ni基超合金の基材に対してEQコート層が形成されるが、このコート層は、実質的に熱力学的平衡状態あるいはそれに近い状態にあるようにしている。ここで、熱力学的平衡状態とは、理論的には、化学ポテンシャルが等しい状態であると定義される。Ni基超合金とコーティング物質としての合金材との場合として説明すると、多元系合金中の成分iの化学ポテンシャルμiは次式で表される。

0024

ここで、μi0は標準状態にある成分iの自由エネルギー、Pi0は純物質iの蒸気圧、Piは混合物上の成分iの分圧、Rは気体定数、Tは温度である。2つの相が熱力学的平衡状態にある場合、各相中μiは等しい。コーティングにともなう基材との界面での元素の拡散は化学ポテンシャルの差を駆動力とするため、基材とコート材中の元素iの化学ポテンシャルが等しければ、化学ポテンシャル差に依存する元素iの界面を通した拡散は起こらない。

0025

Ni基超合金基材上に、ボンドコート層(図1の2)として、質量%で0.2%以上15%以下のPtまたはIrを含有するEQコート材(基材となるNi基超合金との間に相互拡散を生じない組成を有する合金材料)が使用される。0.2%以下では寿命向上の効果は小さく、また15%以上では、PtおよびIrは高価な元素であるために、EQコート材の価格が高くなりすぎて実用的でなくなる。より好ましいEQコート材の組成としては、質量%で0.5%以上10%以下のPtまたはIrを含有するものが使用される。また、PtおよびIrを同時に含有させても同様の効果が期待できる。

0026

EQコート層とは実質的に熱力学的平衡状態あるいはそれに近い状態にあって、Ni基超合金基材との間にほとんど相互拡散を生じない組成からなるコート材が用いられる。本発明の対象となるNi基超合金は、耐熱性に優れた高強度合金であり、γ相、γ’相の二相構成を有するものとしても特徴がある。このようなNi基超合金へのコート材では、元素拡散が抑えられる熱力学的平衡状態は、
<1>コーティング層は、所定温度において、γ相、γ’相およびB2相のうちの少なくとも1種を含んでいること、
<2>基材の界面近傍において、拡散変質層の生成が抑制されていること、特には、基材のγ相とγ’相との二相構成からの単相の生成や、第三相析出、あるいはγ’相の存在量の変化としてある変質層の生成が抑制されていることの少なくともいずれかであると定義することができる。

0027

一般に、Alは拡散が速く、また耐酸化性を上げるために必要な元素であるため、コート材として欠かせない重要な構成元素となる。次に重要となるのはやはり耐酸化性に影響するCrである。Hfは濃度が小さいため、変質層の生成においてはあまり重要ではなく、削減することができる。Ta、Mo、W、Ru、Reは比較的拡散が遅いため、相互拡散による変質層の生成に及ぼす影響は小さく、削減することが可能である。これらは高価であるため、削減することでコーティングの価格を下げることができる。すなわち、コート層として、γ相、γ’相およびB2相のうちの少なくとも1種を含んでいるものを使用する際に、比較的拡散の遅いRu,Reなどの高価な元素を削減しても、コーティングの効果にほとんど影響しない。

0028

以上述べてきたEQコート材として、EQコート層の組成が少なくとも質量%で、Alを2.9%以上16.0以下、Crを0以上19.6以下含むもの、好ましくは、EQコート層の組成が少なくとも質量%で、Alを6.1以上10.6以下、Crを0.4以上14.0以下含むものを例示することができるが、本願特許の趣旨に沿うものである限り、これらの例示の組成に限定されるものではない。

0029

ボンドコート(EQコート)の作製方法は、特定の技術に限定されることなく、一般に使用されるプラズマ溶射法高速フレーム溶射法、イオンプレーティング法、EB−PVD法、CVD法などを用いることができる。ボンドコートの厚さは5—500μm、好ましくは10−400μmの範囲で用いられる。

0030

セラミック熱遮蔽コート層の材料としては、特定のセラミックに限定されることなく、熱遮蔽効果の認められるセラミック材料であれば、使用することができる。代表的な一例は部分安定化ZrO2(ジルコニア)であり、相変態による膨張収縮による割れを防ぐためにY2O3, CeO2, MgOなどの酸化物を少なくとも1種類含ませることにより部分的または完全に安定化させたものが好んで用いられている。特に、7−8質量%のY2O3を含有する部分安定化ZrO2は優れた耐熱性セラミック材として広く使用されており、EB−PVD法、溶射法などの方法でコーティングされる。Ptまたは/およびIrを添加したEQコート層の上にセラミック熱遮蔽コート層を施すことにより、セラミックコート層とEQコート層との界面は、高温下で長時間使用しても極めて安定しており、Ni基耐熱部材の耐久性は著しく改善される。
以下に、実施例を示しつつ、本願発明のNi基超合金について説明する。

0031

次に、実施例を示し、本発明の効果について説明する。
本出願人が既に出願済みの第4世代のNi基単結晶超合金TMS−138A)を実施例の合金基材として選択し、真空溶解炉を用いて溶湯の合金組成の調整を行い、Ni基単結晶超合金インゴット鋳造した。鋳造した合金組成を表1に示す。また、EQコート層に用いられる合金のインゴットも同様に作製し、作製したインゴットの組成を表1に示す。EQコート層に用いられるインゴットのベース合金組成は、第4世代のNi基単結晶超合金(TMS−138A)のγ’相の組成を基本とするものであるが、元素として非常に高価なReおよびRuを合金成分から除いたものである。本願発明のコート材は、このベース組成のEQコート材(EQC)にPtおよびIrを5質量%添加したものであり、上記と同様な方法でインゴットを作製した。

0032

表1の3種類のEQコート材の表面に、EB−PVD法により7質量%のY2O3を含有する部分安定化ZrO2をコーティングして約175μmのセラミック熱遮蔽コート層を作製して、EQコート層とセラミック熱遮蔽コート層からなる試料を作製した。

0033

図2は、上述の方法によって作製したEQC(ベースコート材、比較例)、本発明の実施例となるEQC−Ptコート材およびEQC−Irコート材の試料を用いて、1,135℃で1時間サイクルの条件で耐久試験をした際の各試料の熱サイクル寿命を示したものである。EQC(ベースコート材)では、520サイクル前後でセラミック熱遮蔽層の約4分の1がEQコート層から剥がれ落ちていることが確認された。一方、EQC−Ptコート材およびEQC−Irコート材においては、3,500サイクル経過後も、セラミック熱遮蔽層の剥離はほとんど認められていない。すなわち、PtおよびIrを含有するEQコート材は、EQC(ベースコート材)に較べて7倍以上の長寿命を有する極めて優れたボンドコート材であることが判明した。

0034

図3は、セラミック熱遮蔽コートを施した上記の3種類のEQコート材の試料を用いて、1,135℃で1時間サイクルの条件で100サイクル試験をした後に、セラミック熱遮蔽コート層とEQコート層との界面近傍の試料切断面を走査型電子顕微鏡写真で観察したものである。セラミック熱遮蔽コート層とEQC−Ptコート層およびEQC−Irコート層との層間には2μm程度の均一な層の生成が観測された。一方、セラミック熱遮蔽コート層とEQCコート層との層間には不均一ではあるが、約3μmの層とともに、EQCコート層内部に向かって不規則アイランド状の層の生成も観測された。

0035

図4は、図3で観測した資料切断面の元素分布を観測した結果である。それぞれ特徴のある元素分布を示しており、セラミック熱遮蔽コート層とEQC−Ptコート層およびEQC−Irコート層との層間にはAl(アルミニウム)とO(酸素)が均一に分布した層の生成が観測された。一方、セラミック熱遮蔽コート層とEQCコート層との層間には、AlとOが分布した帯状の層とともに、AlとOが分布するアイランド状の層の生成も観測された。

0036

図3および図4に示したEQコート材と熱遮蔽セラミックコート材の界面近傍におけるミクロ組織の観測結果より、PtおよびIrを含有するEQコート層(ボンドコート層)とセラミック熱遮蔽コート層との間には、空気中における高温サイクル時において均一なAl2O3(酸化アルミニウム)層が生成して安定な界面を形成し、長時間の高温サイクルにおいても非常に安定した耐熱特性を示すものと考えられる。一方、PtおよびIrを含有しないEQコート層(ボンドコート層)とセラミック熱遮蔽コート層との間においては、安定な酸化Al2O3(酸化アルミニウム)層が形成されないために、耐熱特性が劣るものと考えられる。

実施例

0037

以上の実施例から分かるように、本発明の耐熱部材によれば、空気存在下、1,100℃あるいは1,100℃を超えるような高温下においても、Ptまたは/およびIrの含有するEQコート材(ボンドコート層)とセラミック熱遮蔽コート層との界面は、最適なAl2O3(酸化アルミニウム)層の生成によって高温サイクル時の安定性が堅持される。また、EQコート材(ボンドコート層)とNi基超合金基材とは、ほぼ平衡状態にあって界面近傍における元素の相互拡散が抑制されており、その界面近傍の高温安定性も同時に堅持される。このように、Ni基超合金基材、Ptまたは/およびIrの含有するEQコート材(ボンドコート層)およびセラミック熱遮蔽コート層の3層の材料組み合わせからなるガスタービン部材構成によって、高温サイクルの耐久性を飛躍的に向上させることが可能となった。

先行技術

0038

特許第4111555号公報
特開2008−156744号公報
特開2002−155380号公報
特許第3862774号公報
国際公開WO2006/104138号公報

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