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技術 熱動式過電流継電器およびその電調方法

出願人 三菱電機株式会社
発明者 大久保秀明川村浩司
出願日 2011年5月2日 (9年2ヶ月経過) 出願番号 2011-103075
公開日 2011年9月1日 (8年10ヶ月経過) 公開番号 2011-171311
状態 特許登録済
技術分野 電気的熱動継電器
主要キーワード 動作板 リセットバー 移動遅れ 製品固体 最小動作電流 調整側 製品カバー 手動リセット
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (16)

課題

電調の精度を向上させる熱動式過電流継電器電調方法を提供する。

解決手段

バイメタル3に熱を加えて所定量湾曲変位させるバイメタル湾曲変位工程と、反転機構部20の位置を回動させてバイメタルの湾曲変位により移動した連動板5と反転機構部20とを当接させる連動板・反転機構部当接工程と、連動板5と反転機構部20が当接した状態から、さらに調整機構部21を操作することにより反転機構部20がトリップ動作する位置まで反転機構部20の位置を回動させてこの位置を0点トリップ位置として算出する0点トリップ工程と、0点トリップ位置を基準として反転機構部20の位置を決定する反転機構部位置決め工程とを有する。

概要

背景

熱動式過電流継電器は、ヒータ部に接続された主回路電流値が所定の大きさ以上になると、ヒータ部の発熱によりバイメタル湾曲することで機器内の反転機構が作動し、反転機構により同じく機器内に設けられている接点開閉する。そして、その際の接点信号出力を用いて電磁接触器コイル励磁解く等の保護動作をしてモータ焼損等の事故を未然に防ぐ保護機器である。

熱動式過電流継電器には、最小値から最大値までの電流範囲が設定され、これを整定電流調整範囲と呼ぶ。この整定電流を基準として、過電流通電時の動作特性IEC60947−4−1(JIS C8201−4−1)等の規格で規定されている。この規格では、次のように定められている。すなわち、整定電流の105%の電流を2時間通じても動作しないが、この状態(整定電流の105%の電流を通電した状態)で温度一定となったのち引き続き通電電流を整定電流の120%にした場合には、2時間以内に動作しなければならないという規定がある。

しかし、熱動式過電流継電器の動作は、バイメタルの板厚・幅・長さ・湾曲定数体積抵抗率・先端部の初期位置、ヒータの線径・長さ・体積抵抗率、またはそれぞれの部品の寸法精度のばらつき等によって、特性ばらつきが生じる。そのため、調整を行わずして上記規格で規定された特性を満足することは難しく、製品個別に特性調整工程が必要であり、これを電調と呼ぶ。

例えば、下記特許文献1には、従来の熱動式過電流継電器の電調方法が示されている。この文献の中で、バイメタルをフラット状態にし、反転機構支持部材回動させて手動トリップ動作させる工程が記載されている。この工程におけるトリップ動作は、0点トリップ動作と呼ばれる。

この0点トリップ動作は、フラット状態のバイメタルと反転機構部との相対位置を求めるための作業であり、電調工程前の組立工程において製品固体毎にばらついている反転機構部の位置、つまり電調前の基準位置をそろえるための作業である。そのため、バイメタルや反転機構部の位置を直接測定して、それぞれの位置をそろえるようにすれば0点トリップ動作は不要である。しかし、これらの位置を測定するためには外部から直接目視できるように、例えば製品カバーを取り外しておく、あるいは測定窓を設けておく必要がある。ところが、カバーを取り外したり測定窓を設けたりすると、電調工程で通電する際の放熱特性完成品となった際のものと異なったものになってしまうため調整精度が低下することとなる。

また、バイメタルと反転機構部の位置測定後にカバーを取り付け、その後に電調を実施すれば調整精度を低下させることなく0点トリップ動作を不要にすることも可能であるが、電調後の特性検査で不良となった製品の再電調を実施する際にはカバーを取り外す必要があり、作業が煩雑になってしまう。そのため、カバーを閉じてあり直接目視できない状態でもバイメタルと反転機構部との相対位置を把握することのできる0点トリップ動作が実施されている。そして、この0点トリップ動作により定まる0点トリップ位置を基準とした仮想最小目盛位置および仮想中央目盛位置より、真の目盛位置を求める技術が開示されている。

概要

電調の精度を向上させる熱動式過電流継電器の電調方法を提供する。バイメタル3に熱を加えて所定量湾曲変位させるバイメタル湾曲変位工程と、反転機構部20の位置を回動させてバイメタルの湾曲変位により移動した連動板5と反転機構部20とを当接させる連動板・反転機構部当接工程と、連動板5と反転機構部20が当接した状態から、さらに調整機構部21を操作することにより反転機構部20がトリップ動作する位置まで反転機構部20の位置を回動させてこの位置を0点トリップ位置として算出する0点トリップ工程と、0点トリップ位置を基準として反転機構部20の位置を決定する反転機構部位置決め工程とを有する。

目的

本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電調精度を向上させるとともに、0点トリップ不良とリセット不良の発生を改善する熱動式過電流継電器およびその電調方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

主回路電流応動して湾曲するバイメタルと、該バイメタルの変位を伝達する連動板と、該連動板との当接によりトリップ動作して接点開閉状態反転させる反転機構部と、該反転機構部の位置を移動させて接点の開閉状態が反転する位置を調整する調整機構部と、トリップ状態の反転機構部を定常状態へと戻すためのリセット機構とを備えた熱動式過電流継電器電調方法であって、前記バイメタルに熱を加えることにより該バイメタルを所定量湾曲変位させるバイメタル湾曲変位工程と、前記調整機構部を操作することにより前記反転機構部位置を回動させて前記バイメタルの前記湾曲変位により移動した前記連動板と前記反転機構部とを当接させる連動板・反転機構部当接工程と、前記連動板と前記反転機構部が当接した状態から、さらに前記調整機構部を操作することにより前記反転機構部がトリップ動作する位置まで前記反転機構部位置を回動させて前記反転機構部がトリップ動作した位置を0点トリップ位置として算出し電調前のバイメタルと反転機構部の相対位置を決める0点トリップ工程と、前記0点トリップ位置を基準として反転機構部を0点トリップ動作のための回動とは逆方向に所定量回動させ、整定電流調整範囲最小目盛から最大目盛までの各目盛に応じた反転機構部の位置を決定する反転機構部位置決め工程とを有し、前記バイメタル湾曲変位工程、前記連動板・反転機構部当接工程、及び前記0点トリップ工程は、カバーを取り外す或いは測定窓を設ける等の手段を用いることなく完成品と同じ放熱特性のもとに実施され、前記バイメタル湾曲変位工程における前記バイメタルへの加熱は、前記バイメタルの湾曲変位が飽和に達するまで行わず、前記0点トリップ工程における前記反転機構部の移動速度を、前記バイメタルが飽和に至ろうとする湾曲変位の速度よりも速くすることを特徴とする熱動式過電流継電器の電調方法。

請求項2

前記0点トリップ工程における前記反転機構部の移動速度を、前記バイメタルが飽和に至ろうとする湾曲変位の速度よりも10倍以上速くすることを特徴とする請求項1に記載の熱動式過電流継電器の電調方法。

請求項3

請求項1または2に記載の熱動式過電流継電器の電調方法により電調する熱動式過電流継電器であって、前記反転機構部の0点トリップ側移動方向を右、最大目盛調整側移動方向を左と定義づけたとき、前記バイメタルが平坦である場合、前記連動板の当接側端が反転機構部の0点トリップ方向回動限界よりも右側にあるよう構成され、前記調整機構部を操作して前記反転機構部を移動させても0点トリップ動作しないことを特徴とする熱動式過電流継電器。

請求項4

請求項1または2に記載の熱動式過電流継電器の電調方法により電調する熱動式過電流継電器または請求項3に記載の熱動式過電流継電器であって、前記反転機構部の0点トリップ側移動方向を右、最大目盛調整側移動方向を左と定義づけたとき、前記反転機構部の最大目盛位置は、リセット不良限界位置よりも右側にあるよう構成され、前記反転機構部の0点トリップ方向回動限界から最大目盛位置までの間にリセット不可となる範囲が存在しないことを特徴とする熱動式過電流継電器。

請求項5

請求項4に記載の熱動式過電流継電器であって、前記反転機構部の0点トリップ側移動方向を右、最大目盛調整側移動方向を左と定義づけたとき、反転機構部の最大目盛調整方向回動限界は、リセット不良限界位置と前記反転機構部の前記最大目盛位置との間にあるよう構成され、前記反転機構部の回動範囲内にリセット不可となる範囲が存在することないよう前記反転機構部の回動量に限界が設けられていることを特徴とする熱動式過電流継電器。

技術分野

0001

この発明は、モータ過負荷保護などの目的で使用される熱動式過電流継電器において、製品個々でばらつきが生じる動作電流を、任意の電流範囲内で動作するように、製品それぞれの動作電流を調整するための電調方法に関するものである。

背景技術

0002

熱動式過電流継電器は、ヒータ部に接続された主回路電流値が所定の大きさ以上になると、ヒータ部の発熱によりバイメタル湾曲することで機器内の反転機構が作動し、反転機構により同じく機器内に設けられている接点開閉する。そして、その際の接点信号出力を用いて電磁接触器コイル励磁解く等の保護動作をしてモータ焼損等の事故を未然に防ぐ保護機器である。

0003

熱動式過電流継電器には、最小値から最大値までの電流範囲が設定され、これを整定電流調整範囲と呼ぶ。この整定電流を基準として、過電流通電時の動作特性IEC60947−4−1(JIS C8201−4−1)等の規格で規定されている。この規格では、次のように定められている。すなわち、整定電流の105%の電流を2時間通じても動作しないが、この状態(整定電流の105%の電流を通電した状態)で温度一定となったのち引き続き通電電流を整定電流の120%にした場合には、2時間以内に動作しなければならないという規定がある。

0004

しかし、熱動式過電流継電器の動作は、バイメタルの板厚・幅・長さ・湾曲定数体積抵抗率・先端部の初期位置、ヒータの線径・長さ・体積抵抗率、またはそれぞれの部品の寸法精度のばらつき等によって、特性ばらつきが生じる。そのため、調整を行わずして上記規格で規定された特性を満足することは難しく、製品個別に特性調整工程が必要であり、これを電調と呼ぶ。

0005

例えば、下記特許文献1には、従来の熱動式過電流継電器の電調方法が示されている。この文献の中で、バイメタルをフラット状態にし、反転機構支持部材回動させて手動トリップ動作させる工程が記載されている。この工程におけるトリップ動作は、0点トリップ動作と呼ばれる。

0006

この0点トリップ動作は、フラット状態のバイメタルと反転機構部との相対位置を求めるための作業であり、電調工程前の組立工程において製品固体毎にばらついている反転機構部の位置、つまり電調前の基準位置をそろえるための作業である。そのため、バイメタルや反転機構部の位置を直接測定して、それぞれの位置をそろえるようにすれば0点トリップ動作は不要である。しかし、これらの位置を測定するためには外部から直接目視できるように、例えば製品カバーを取り外しておく、あるいは測定窓を設けておく必要がある。ところが、カバーを取り外したり測定窓を設けたりすると、電調工程で通電する際の放熱特性完成品となった際のものと異なったものになってしまうため調整精度が低下することとなる。

0007

また、バイメタルと反転機構部の位置測定後にカバーを取り付け、その後に電調を実施すれば調整精度を低下させることなく0点トリップ動作を不要にすることも可能であるが、電調後の特性検査で不良となった製品の再電調を実施する際にはカバーを取り外す必要があり、作業が煩雑になってしまう。そのため、カバーを閉じてあり直接目視できない状態でもバイメタルと反転機構部との相対位置を把握することのできる0点トリップ動作が実施されている。そして、この0点トリップ動作により定まる0点トリップ位置を基準とした仮想最小目盛位置および仮想中央目盛位置より、真の目盛位置を求める技術が開示されている。

先行技術

0008

特開2004−55437号公報

発明が解決しようとする課題

0009

従来の技術における0点トリップ動作は、バイメタルをフラット状態にして実施している。図1は通電時間に伴うバイメタルの湾曲変位量ばらつきを示す図であり、従来の技術における0点トリップ動作は、図1における点Oの位置、すなわち通電時間0およびバイメタル湾曲変位量0の位置に反転機構部を調整する動作である。しかしながら、飽和に達するまでのバイメタル湾曲変位量のばらつきは、通電時間が経つにつれて上限と下限の差が広がり図1に示すように、通電時間t1におけるバイメタル湾曲変位量ばらつきd1よりも通電時間t2におけるバイメタル湾曲変位量ばらつきd2が大きくなる。そして、このように通電時間が長くなるほどバイメタル湾曲変位量ばらつきが大きくなり、このばらつきが電調精度低下の要因になるので改善したいという課題があった。また、従来の熱動式過電流継電器には、0点トリップ不良とリセット不良という問題もあった。

0010

図2は、従来の熱動式過電流継電器における反転機構部周辺の一例を示した概略図である。図2において、熱動式過電流継電器は。バイメタルの先端に当接しバイメタルの湾曲変位を伝達する連動板101、温度補償バイメタル102、反転板103、反転機構支持部材104、温度補償バイメタル102と反転板103とに係合する引きばね105を有している。連動板101は、主回路無通電でバイメタルがフラット状態の場合の位置を示している。反転板103と温度補償バイメタル104と引きバネ105およびそれらを支持する反転機構支持部材104により反転機構部106が構成されている。

0011

図2において、反転機構支持部材104の点104cを支点に反転機構部106を図2の反時計方向(反転機構部から見たとき,反時計方向の回動(図5における右)がトリップ方向であり、バイメタルおよび連動板から見たとき,湾曲変位方向図5における左)がトリップ方向となる)へ所定量回動させると、温度補償バイメタル102の下端部102bは連動板101の左端部101aと当接する。この状態からさらに反転機構部106を反時計方向へ回動させることで、温度補償バイメタル102は、連動板101との当接部102bを力点、反転機構支持部材104に設けられた回動軸104aを支点、引きばね105の引掛け部102aを作用点として、図2の時計方向に回動する。そして、温度補償バイメタル102に設けられた引きばね105の引掛け部102aが、反転板103に設けられた引きばね105の引掛け部103aと反転機構支持部材104に設けられた反転板103の支点部104bとを結ぶ直線よりも図2における右側に移動したとき、引きばね105により反転板103に生じる力の方向が反転し、反転板103が時計方向へと回動することで接点の開閉が行われ、0点トリップ動作が実施される。

0012

0点トリップ動作を実施するには、前述の通り反転機構部106を図2の反時計方向へと所定量回動させる必要があるが、反転機構部106の回動量は、例えば反転機構支持部材104が他の部品の一部と干渉するなどの理由により制限される。このため、連動板101の左端部101aや反転機構支持部材104に設けられた支点部104aおよび104bなどの配置によっては、反転機構部106を限界まで反時計方向へと回動させても、0点トリップ動作に必要な回動量を得られず0点トリップしないという場合がある。この現象を0点トリップ不良と呼ぶ。0点トリップ不良となった場合、0点トリップ可能となるように部品を入れ替えたり部品配置修正を加えたり等の作業が必要となり、その作業を行っても0点トリップ可能とならない場合は製品自体廃却せねばならなかったりと、生産性悪化の要因になるという課題があった。

0013

また、図3は、図2の状態から反転機構支持部材104の点104cを支点に反転機構部106を図2の時計方向へ所定量回動させ、図2における連動板101の左端部101aと温度補償バイメタル102の下端部102bとの距離Xmidが、図3においてはXmaxとなり長くなっている状態を示している。すなわち、図2に比べ図3は、主回路に過電流が流れ、熱動式過電流継電器がトリップ動作するまでに要する連動板101の変位量が多くなっており、図3は、図2よりも整定電流値が大きくなるように反転機構部106の位置が調整された場合を示している。

0014

図2および図3のいずれにおいても、反転板103に設けられた引きばね105の引掛け部103aのトリップ動作完了状態の位置が、リセット限界である反転機構支持部材104に設けられた反転板103の支点部104bと温度補償バイメタル102の支点部104aとを結ぶ直線よりも右側へ位置することがないように構成されることにより、負荷の異常が回復しヒータの発熱が収まってバイメタルの湾曲が無くなり連動板101が右方向に移動することで温度補償バイメタル102に連動板101からの力が加わらなくなると、トリップ状態から反転機構部106が自動的に定常状態へと戻ることが可能である。

0015

ここで、図2図3とを比べると、引掛け部103aと支点部104bとを結ぶ直線と支点部104aと支点部104bを結ぶ直線とが成す角度は図2よりも図3のほうが小さいことがわかる。従って、整定電流値に対する反転機構部106の調整位置に応じて常開接点ギャップを変化させるなどの構造を加えていない限り、一般的に熱動式過電流継電器は、整定電流値がどこに設定されていてもトリップ動作完了(つまり常閉接点開路し常開接点が閉路)するまでに要する反転板103の回動量は同じであるため、図2よりも図3のほうが、トリップ動作後に反転板103に設けられた引きばね105の引掛け部103aの位置がリセット限界を超え、リセット不良が発生する可能性は高くなる。また、反転機構部106を時計方向へ回動させればさせるほど、前述の引掛け部103aと支点部104bとを結ぶ直線と支点部104aと支点部104bとを結ぶ直線とが成す角度は小さくなるため、反転機構部106を時計方向へ所定量回動させると、リセット不良が必ず発生することになりうる。

0016

図2において、0点トリップ不良が発生した場合に、連動板101の左端部101aが左側へずれるように部品配置に修正を加え0点トリップ不良を解消させたとする。この時、整定電流の調整範囲は修正前後で変わらないため、0点トリップ位置を基準として最大目盛位置まで調整するために要する反転機構部106の回動量は同じである。しかし、0点トリップ位置自体が連動板101の左端部101aを修正した後は左側にずれているため、結果として、0点トリップ位置を基準として調整した最大目盛調位置における反転機構部106の位置も左側にずれることになり、前述の引掛け部103aと支点部104bとを結ぶ直線と支点部104aと支点部104bとを結ぶ直線とが成す角度は、修正前よりも修正後の方が小さくなり、リセット不良が発生しやすくなる。一方で、リセット不良が発生した場合に、連動板101の左端部101aが右側へずれるように部品配置に修正を加えリセット不良を解消させたとすると、今度は反転機構部106を限界まで反時計方向へと回動させても、0点トリップ動作に必要な回動量を得られず0点トリップしないということが起こりうる。

0017

このように、従来の熱動式過電流継電器では、0点トリップ不良の発生確率を抑えようとするとリセット不良の発生確率があがり、リセット不良の発生確率を抑えようとすると0点トリップ不良の発生確率があがるという、所謂トレードオフの関係となり、生産性悪化の要因になるという課題があった。

0018

本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、電調精度を向上させるとともに、0点トリップ不良とリセット不良の発生を改善する熱動式過電流継電器およびその電調方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0019

上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る熱動式過電流継電器の電調方法は、熱動式過電流継電器の電調方法は、主回路電流応動して湾曲するバイメタルと、該バイメタルの変位を伝達する連動板と、連動板との当接によりトリップ動作して接点の開閉状態を反転させる反転機構部と、反転機構部の位置を移動させて接点の開閉状態が反転する位置を調整する調整機構部と、トリップ状態の反転機構部を定常状態へと戻すためのリセット機構とを備えた熱動式過電流継電器の電調方法であって、バイメタルに熱を加えることにより該バイメタルを所定量湾曲変位させるバイメタル湾曲変位工程と、調整機構部を操作することにより反転機構部位置を回動させてバイメタルの湾曲変位により移動した連動板と反転機構部とを当接させる連動板・反転機構部当接工程と、連動板と反転機構部が当接した状態から、さらに調整機構部を操作することにより反転機構部がトリップ動作する位置まで反転機構部位置を回動させて反転機構部がトリップ動作した位置を0点トリップ位置として算出し電調前のバイメタルと反転機構部の相対位置を決める0点トリップ工程と、0点トリップ位置を基準として反転機構部を0点トリップ動作のための回動とは逆方向に所定量回動させ、整定電流の調整範囲の最小目盛から最大目盛までの各目盛に応じた反転機構部の位置を決定する反転機構部位置決め工程とを有し、バイメタル湾曲変位工程、連動板・反転機構部当接工程、及び0点トリップ工程は、カバーを取り外す或いは測定窓を設ける等の手段を用いることなく完成品と同じ放熱特性のもとに実施され、バイメタル湾曲変位工程におけるバイメタルへの加熱は、バイメタルの湾曲変位が飽和に達するまで行わず、0点トリップ工程における反転機構部の移動速度を、バイメタルが飽和に至ろうとする湾曲変位の速度よりも速くする。

発明の効果

0020

この発明によれば、バイメタルを所定量湾曲変位させた後、0点トリップ動作を実施するので、バイメタルの湾曲変位ばらつきを無くすことができ、電調精度を向上させることができるという効果を奏する。

図面の簡単な説明

0021

図1は、通電時間に伴うバイメタルの湾曲変位量ばらつきを示す図である。
図2は、従来の熱動式過電流継電器における反転機構部周辺の一例を示した概略図である。
図3は、図2より反転機構部を回動させた状態を示す図である。
図4−1は、熱動式過電流継電器のカバーを取り外して正面から見た場合の内部構造図である。
図4−2は、図4−1のA−A線に沿う矢視断面図である。
図4−3は、熱動式過電流継電器の左側面図である。
図4−4は、熱動式過電流継電器の背面図である。
図4−5は、熱動式過電流継電器の上面図である。
図5は、熱動式過電流継電器の内部を正面から見た拡大図である。
図6は、熱動式過電流継電器の動作特性を示す図である。
図7は、電流iを通電した時間に伴うバイメタルの湾曲変位量ばらつきを示す図である。
図8は、熱動式過電流継電器の動作特性の改善を示す図である。
図9は、温度補償バイメタルの下端部周辺を拡大した図である。
図10は、リセット不良限界位置Drを示した図である。
図11は、リセット不良限界が最小目盛側にある従来の熱動式過電流継電器の概略図である。

実施例

0022

以下に、本発明にかかる熱動式過電流継電器およびその電調方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。

0023

実施の形態1.
この発明による熱動式過電流継電器の電調方法の一実施形態を、図4から図10を用いて説明する。図4−1から図4−5は、この熱動式過電流継電器の構造図であり、図4−1は熱動式過電流継電器のカバーを取り外して正面から見た場合の内部構造図、図4−2は図4−1のA−A線に沿う矢視断面図、図4−3は熱動式過電流継電器の左側面図、図4−4は熱動式過電流継電器の背面図、図4−5は熱動式過電流継電器の上面図である。また、図5は図4−1の拡大図である。

0024

[熱動式過電流継電器の構造]
図4−1から図4−5および図5において、熱動式過電流継電器100は、各部品が収められているケース1と、ケース1を覆うカバー2と、主回路電流に応動して湾曲するバイメタル3と、バイメタル3に巻回され主回路に電流が通電されることにより発熱するヒータ4と、バイメタル3の変位を伝達する連動板5と、連動板5より加えられる力で接点の開閉状態を反転させる反転機構部20とを有している。ここで、反転機構部20は、温度補償バイメタル6と反転板7そして引きばね8、およびそれらを支持する反転機構支持部材9により構成されている。そして、連動板5は、バイメタル3の先端に当接しバイメタル3の湾曲変位を反転機構部20の温度補償バイメタル6に伝える。

0025

熱動式過電流継電器100は、さらに、常閉可動接点7aが設けられた反転板7と、常閉固定接点10aが設けられた常閉固定接触子10と、螺旋回転することで図5の上下方向に変位し反転機構支持部材9を回動させるための調整ねじ11と、調整可能な範囲の電流値および目盛が印字され調整ねじ11にかぶせられるツマミ12と、反転機構部20の動作に応じて回転する回転レバー13と、回転レバー13に持ち上げられることで湾曲変形する常開可動接触子14と、常開可動接触子14に設けられた常開可動接点14aと、常開固定接点15aが設けられた常開固定接触子15と、反転機構部20をトリップ状態から定常状態へと戻すためのリセットバー16と、リセットの方法を手動リセットまたは自動リセット切り換えるための切換板17とを有している。ここで、調整ねじ11とツマミ12とは、接点の開閉状態が反転する位置を調整する調整機構部21を構成している。

0026

[熱動式過電流継電器の基本的な動作]
まず、熱動式過電流継電器100の基本的な動作について述べる。モータ等の負荷になんらかの異常が生じ主回路に通電されている電流値が大きくなると、ヒータ4の発熱量も大きくなる。これにより、バイメタル3が湾曲しその先端位置が変位する。この変位によって、連動板5が図5の左方向へと移動する。そして、その移動量が所定量に達すると温度補償バイメタル6の下端部6bと当接する。そこからさらに連動板5が図5の左方向へ移動すると、温度補償バイメタル6は連動板5に下端部6bを押圧されることによって反転機構支持部材9に設けられた温度補償バイメタル6の支点部9aを回転中心として図5の時計方向へと回動する。

0027

そして、温度補償バイメタル6に設けられた引きばね8の引掛け部6aが、反転板7に設けられた引きばね8の引掛け部7bと反転機構支持部材9に設けられた反転板7の支点部9bとを結ぶ直線よりも図5における右側に位置したとき、引きばね8により反転板7に生じる力の方向が図5の反時計方向から時計方向へと反転するために、反転板7は図5における時計方向へと回動を始める。反転板7が図5の時計方向へ回動することで、反転板7に設けられた常閉可動接点7aと常閉固定接触子10に設けられた常閉固定接点10aが開成する。つまり、温度補償バイメタル6、反転板7、引きばね8、および反転機構支持部材9から構成される反転機構部20は、トグル機構の動作をする。

0028

また、反転板7が回転レバー13を押圧することで、回転レバー13はケース1に設けられた突出軸1aを中心として図5の反時計方向へと回転し、常開可動接触子14は回転レバー13の突出片13aによって持ち上げられ、常開可動接触子14に設けられた常開可動接点14aと常開固定接触子15に設けられた常開固定接点15aが閉じられる。この一連の動作をトリップと呼び、トリップ動作によって接点の開閉状態が反転した状態(すなわち常閉接点が開き且つ常開接点が閉じた状態)をトリップ状態と呼ぶ。

0029

トリップ状態においては、常開可動接触子14および常開固定接触子15は回転レバー13によって図5の上方向に持ち上げられることで湾曲変形し、回転レバー13の回転が止まった位置で安定状態となっている。この状態から、モータ等の負荷の異常状態が回復し、バイメタル3の湾曲が元に戻ることで、リセット動作が可能となる。

0030

リセットバー16は、リセットばね19により図5の上方向に付勢力を与えられ、ケース1に組み付けられる。手動リセットを実施すべくリセットばね17の付勢力に抗してリセットバー16を図5の下方向へ押圧することにより、リセットバー16の下端部が常開固定接触子15と当接することで常開固定接触子15はリセットバー16の押圧変位に応じて図5の下方向へ押し込まれ、常開固定接点15aと当接した状態の常開可動接点14aおよび常開可動接触子14を介して回転レバー13が図5の時計方向へ回転し、反転板7が回転レバー13に押圧されることで図5の反時計方向へと回動する。

0031

反転板7に設けられた引きばね8の引掛け部7bがリセットラインである反転機構支持部材9に設けられた反転板7の支点部9bと温度補償バイメタル6の支点部9aとを結ぶ直線よりも図5における左側に位置することで、引きばね8により反転板7に生じる力の方向が再び図5の時計方向から反時計方向へと復転し、トリップ状態から接点の開閉状態を定常状態(すなわち、常閉接点が閉じ、常開接点が開いた状態)へとリセットすることができる。

0032

また、切換板17を切換板17に設けられた軸17aを中心として図5の反時計方向へと回動させることにより、リセットバー16を使用者が押圧してリセットさせる手動リセット設定からリセットバー16を使用者が押圧する必要なくリセットする自動リセット設定へとリセット方法を変更することができる。切換板17により自動リセット設定となると、切換板17の突出片17bによって常開固定接触子15が押し下げられ常開固定接点15aと常開可動接点14aとの間の接点ギャップが小さくなると同時に回転レバー13の反時計方向の回転量が抑制される。このため、反転板7に設けられた引きばね8の引掛け部7bのトリップ状態の位置がリセットラインである反転機構支持部材9に設けられた反転板7の支点部9bと温度補償バイメタル6の支点部9aとを結ぶ直線よりも図5の右側へ位置することがないように構成されることにより、負荷の異常が回復しヒータ4の発熱が収まってバイメタル3の湾曲が無くなり連動板5が図5の右方向に移動することで温度補償バイメタル6に連動板5からの力が加わらなくなると、トリップ状態から反転機構部が自動的に定常状態へと戻るように構成されている。

0033

ツマミ12を図4−5の時計方向へと回すと、調整ねじ11は螺旋回転しながら図5の下方向へ反転機構支持部材9を押圧し、反転機構支持部材9は反転機構支持部材9のL字曲げ部9zとケース1に設けられた突起1zとの係合部を支点として、図5の時計方向に回動する。逆にツマミ12を図5の反時計方向へと回すと、調整ねじ11は螺旋回転しながら図5の上方向へと戻り、反転機構支持部材9は板ばね18からの押圧力により反転機構支持部材9のL字曲げ部9zとケース1に設けられた突起1zとの係合部を支点として、図5の反時計方向に回動する。このように反転機構支持部材9が回動することで、反転機構支持部材9に設けられた反転板7の支点部9b及び温度補償バイメタル6の支点部9aの位置が移動し、なおかつ連動板5と温度補償バイメタル6の下端部6bとが当接するまでの距離も変化するため、トリップ動作までに必要となる連動板5の移動量を変化させることができる。ここで、連動板5はバイメタル3の変位に応じて移動し、バイメタル3は主回路電流によるヒータ4の発熱量に応じて湾曲するから、ツマミ12を回すことにより、熱動式過電流継電器がトリップ動作するのに要する電流値を調整することができる。

0034

熱動式過電流継電器の動作は、バイメタルの板厚・幅・長さ・湾曲定数・体積抵抗率・先端部の初期位置、ヒータの線径・長さ・体積抵抗率、またはそれぞれの部品の寸法精度のばらつき等によって、特性ばらつきが生じる。そのため、無調整ではIEC60947−4−1(JIS C8201−4−1)等の規格で規定された特性を満足することは難しく、製品個別に特性調整工程が必要であり、これを電調と呼ぶ。整定電流調整範囲の各目盛における熱動式過電流継電器の最小動作電流UTC(Ultimate Trip Current)と定義すると、UTCが、整定電流の105%から120%の範囲に入るように、電調作業によって調整を実施する。

0035

[熱動式過電流継電器の電調手法]
次に、本実施の形態における熱動式過電流継電器の電調手法の手順について説明する。バイメタル3は20℃でフラット状態となるように設計されており、熱動式過電流継電器が電調室に運ばれると、まずバイメタル3をフラット状態にすべく20℃に冷却される。また、電調室内の室温(すなわち熱動式過電流継電器の周囲温度)については、フラット状態となったバイメタル3がヒータ4の発熱による温度変化以外で湾曲変形することないように、周囲温度ほぼ一定に保たれる。なお、さらに電調精度を向上させる手段として、微小に変化する周囲温度に対して通電電流に補正を加えるなどの手段を用いても良い。

0036

冷却後、フラット状態となったバイメタル3が連動板5と正しく当接しているかの確認等を実施し、バイメタル3の先端初期位置がそろえられる。しかし、熱動式過電流継電器の組立工程において、連動板5から見た反転機構部20の位置は製品固体毎にばらついている。そのため、電調工程の初期段階で、バイメタル3によって定まる連動板5と反転機構部20との相対位置をそろえるための作業である0点トリップ動作が必要となる。

0037

従来の技術では、バイメタル3がフラット状態において反転機構部20を回動させ連動板5と当接させることによりトリップ動作させることを0点トリップ動作と呼称していたが、本実施の形態ではより広義に、電調工程において反転機構部20の位置調整を実施する際の基準を求めるためのトリップ動作を0点トリップ動作と呼称する。

0038

図9は、図5における温度補償バイメタル6の下端部6b周辺を拡大した図である。図9に示すように、バイメタル3がフラット状態の場合は、連動板5の左端部(当接側端)はDaの場所に位置している。フラット状態となっているバイメタル3を加熱し、バイメタル3を所定量湾曲変位させることで連動板5が移動する。連動板5の左端部は、図9におけるD0の場所に移動することになる(バイメタル湾曲変位工程)。

0039

この時、図4−5の反時計方向に調整ねじ11を回転させることで反転機構支持部材9を図5の反時計方向へと所定量回動させると、温度補償バイメタル6の下端部6bは図9のD0に位置している連動板5の左端部と当接する(連動板・反転機構部当接工程)。

0040

この状態からさらに反転機構部20を反時計方向へ回動させることで、温度補償バイメタル6は、連動板5との当接部を力点、反転機構支持部材9に設けられた回動軸9aを支点、引きばね8の引掛け部6aを作用点として、図5の時計方向に回動する。そして、温度補償バイメタル6に設けられた引きばね8の引掛け部6aが、反転板7に設けられた引きばね8の引掛け部7aと反転機構支持部材9に設けられた反転板7の支点部9bとを結ぶ直線よりも図5における右側に来たとき、引きばね8により反転板7に生じる力の方向が反転し、反転板7が時計方向へと回動することで接点の開閉が行われ、0点トリップ動作が実施される。つまり、D0の位置が反転機構部20の0点トリップ位置となる(0点トリップ工程)。

0041

この0点トリップ位置D0を基準とし、整定電流の調整範囲の各目盛に応じた反転機構部20の位置を決定する(反転機構部位置決め工程)。この反転機構部位置決め工程においては、例えば次の方法がある。

0042

0点トリップ実施後、0点トリップ位置D0よりも反転機構部20の位置が図5における左側となるように反転機構部20を所定量回動させる。この状態の反転機構部20の位置をDLとし、DLの位置において反転機構部20をリセット動作させ、熱動式過電流継電器を定常状態へと戻す。

0043

その後、機種定格毎に定められた電流値を主回路に通電し、DLの位置に定常状態で待機している反転機構部20がトリップ動作するまでの時間が通電開始からどれだけかかるかを測定する。

0044

[熱動式過電流継電器の動作特性]
図6は、熱動式過電流継電器の動作特性を示す図である。図6横軸は整定電流に対する比率で表された電流値、縦軸は熱動式過電流継電器が通電開始からトリップ動作するまでの時間であり、通電される電流値が大きくなるほど動作時間が早くなることを示している。前述の通り、熱動式過電流継電器のUTCは整定電流の105%から120%の範囲に入る必要がある。このため、熱動式過電流継電器の動作特性もUTCが105%となる下限特性と、UTCが120%となる上限特性を持つ。ここで、ある電流値iを通電したときの動作時間は下限特性においてtL、上限特性においてtHとなる。すなわち、電流iを通電した場合の動作時間がtLからtHの範囲内であれば、動作特性は規格を満足することができるとわかる。

0045

DLの位置に定常状態で待機している反転機構部20が、機種定格毎に定められた電流値iを通電された場合に、通電開始からトリップ動作するまでに要する時間がtLからtHの範囲内であれば、動作特性は合格と判定し、動作時間がtLからtHの範囲外であれば、測定された動作時間に応じてDLの位置に位置補正を加えるなどの手段を用いれば良い。電流iは、整定電流の調整範囲におけるどの電流目盛位置に対する反転機構部20の位置を調整したいかに応じて、値を変えれば良い。

0046

このように、0点トリップ位置D0を基準としてDLの位置を設定し、DLの位置に調整された反転機構部20のトリップ動作時間を測る等の手段を用いて、整定電流の調整範囲の各目盛に応じた反転機構部20の位置を決定することができる。

0047

本実施の形態による0点トリップ位置の算出により、従来は通電時間が長くなるほど大きくなる一方であったバイメタル湾曲変位量ばらつきを小さくし、電調精度を向上させることができる。

0048

図7は、ある電流iを通電した時間に伴うバイメタル3の湾曲変位量ばらつきを示す図である。図7において、横軸Xは電流iを通電開始してからの経過時間、縦軸Yは電流iを通電したことによるバイメタル3の湾曲変位量を示している。従来の技術では、0点トリップ動作は、バイメタル3がフラット状態、すなわち通電時間0およびバイメタル湾曲変位量0である図7における点Oの位置で実施している。このため、時間がたつにつれて湾曲上限と湾曲下限の差が広がり、バイメタル3の湾曲変位量ばらつきは広がる一方となる。

0049

一方、本実施の形態では、0点トリップ動作は、バイメタル3が湾曲変位し連動板5の左端部がD0に位置した状態で実施される。この時、新たな湾曲変位量ばらつきは、図7に示す点O'の位置で交わる湾曲上限と第二湾曲下限によって与えられる。ここで、第二湾曲下限は、湾曲下限と湾曲上限がD0の位置で交わるように湾曲下限をY軸方向へ平行移動した曲線である。この新たな湾曲変位量ばらつきは、点O'より出る新たな横軸X'および縦軸Y'を持ち、横軸Y'=0の位置は、横軸Y=D0の位置と等しい。これは、バイメタル3の湾曲変位量ばらつきが、D0の位置で一旦0になることを意味している。図7を見ると明らかなように、湾曲上限と湾曲下限で与えられる湾曲変位量ばらつきよりも、湾曲上限と第二湾曲下限で与えられる湾曲変位量ばらつきの方が小さくなる。

0050

また、反転機構部20がトリップ動作する位置であるDLに至るまでの、バイメタル3がフラット状態からの湾曲変位量をLとすると、図7より、DLにおける時間ばらつきは、従来の技術の場合はtaからtbの幅であるのに対し、本実施の形態においてはta'からtb'の幅となる。図7を見ると明らかなように、taからtbの幅よりもta'からtb'の幅の方が小さい。

0051

DLの位置は、電流iを通電した場合の反転機構部20のトリップ動作位置であるため、バイメタル3がフラット状態からある湾曲変位位置DLになるまでに要する時間の幅が小さくなるということは、トリップ動作時間のばらつきが小さくなることを意味する。つまり、従来の技術の場合は、点Oを基準として反転機構部20をLだけ変位させた位置(DL)でトリップ動作時間を測定したらtaからtbの幅を持つのに対し、本実施の形態の場合では、点O'を基準として反転機構部20をL−D0だけ変位させた位置(DL)でトリップ動作時間を測定したらta'からtb'の幅となり、どちらの場合もバイメタル3がフラット状態から見たらLだけ変位した位置でトリップ動作時間を測定しているのに、動作時間のばらつきは本実施の形態における時間幅であるta'からtb'の方が小さくなることがわかる。従って、本実施の形態では図6における電流iを通電した際の合格時間幅tLおよびtHを満たす確率が高くなることになり、生産性が向上する。

0052

また、合格品においても動作時間のばらつきが小さくなる。図8は、熱動式過電流継電器の動作特性の改善を示す図である。図8に示すように、動作特性のばらつきが小さくなり電調精度が向上する。

0053

備考
本実施の形態に記載の方法により算出された0点トリップ位置(すなわち図7における点O'の位置)をその後の反転機構部20を調整する基準位置とさえすれば、0点トリップ位置を算出して以降の電調はどのような方法で実施しても良く、本実施の形態による前述の効果は影響を受けない。

0054

また、0点トリップ動作を実施する際のバイメタル3をフラット状態から所定量湾曲変位させるための加熱は、主回路に電流を通電しヒータ4を発熱させることで実現しても良いし、熱動式過電流継電器に温風を当てる等の方法で実現しても良い。0点トリップを実施する際のバイメタル3の加熱方法はどのような方法を用いても構わない。

0055

ただし、0点トリップ動作を実施する際のバイメタル3をフラット状態から所定量湾曲変位させる場合は、バイメタル3の湾曲変位が飽和に達するまで加熱を続けることで0点トリップ動作でのトリップ検出誤差を最小にできる。バイメタル3の湾曲変位が飽和に達しそれ以上変位しない状態であれば、0点トリップ動作時における反転機構部20の回動速度の影響を受けることなく電調精度を向上させることができる。

0056

しかし、バイメタル3の湾曲変位が飽和に達するまで加熱せず湾曲変位途中で0点トリップ動作を実施する場合でも、0点トリップ検出の精度が著しく低下しないように0点トリップ動作をおこなうことが可能である。この場合、バイメタル3の湾曲変位速度よりも0点トリップ動作時における反転機構部20の回動速度が遅いと、0点トリップ動作を実施しようとして反転機構部20を回動させている間にもバイメタル3の湾曲変位が進んでしまうため、図7における点O'の位置にばらつきが生じてしまう。これを防ぐため、バイメタル3の湾曲変位速度よりも0点トリップ動作時における反転機構部20の回動速度を十分に早くし、点O'の位置ばらつきを少なくすることが必要となる。例えば、バイメタル3の湾曲変位速度が0.04mm/s程度の場合、反転機構部20の回動速度を0.5mm/sと10倍以上早くすると、図7における点O'の位置が1秒ずれたとしても、その際のバイメタル3の変位量0.04mmに対し反転機構部20の移動遅れは0.04÷0.5=0.08秒となり、点O'の位置の時間ずれ1秒の10分の1以下のトリップ動作時間ずれしか発生せず、ほとんど問題とならない。

0057

図9において、Df(0点トリップ方向回動限界:連動板の右端)からDe(最大目盛調整方向回動限界:回動範囲θ2の左端)までの範囲は反転機構部20の回動可能範囲を示す。ここで定義する回動可能範囲とは、電調後にツマミ12に印字される整定電流の調整範囲だけ調整機構部21を操作した場合の反転機構部20の回動範囲θ1ではなく、調整ねじ11を操作し機械的に反転機構部20を回動させた場合の限界の回動範囲θ2のことを指し、θ2は反転機構支持部材9がケース1と干渉するなどの理由により物理的に回動不能となるまでの回動範囲である。

0058

本実施の形態による熱動式過電流継電器は、バイメタル3が湾曲変位しておらずフラット状態となっている場合に、連動板5の左端部は、前述したとおり図9におけるDaに位置している。連動板5の左端部位置(当接側端)Daは図9において回動範囲θ2の右端Dfよりも右側にあるため、バイメタル3がフラット状態においては、反転機構部20をどれだけ回動しても0点トリップ動作ができない構成となっている。一方で、0点トリップ動作はバイメタル3を所定量湾曲変位させたD0の位置で実施し、D0は回動範囲θ2の右端Dfよりも左側にあるため、支障なく0点トリップ動作が実施可能である。

0059

ここで、整定電流の調整範囲における最大目盛値をimとすると、最大目盛設定時にUTCが115%と仮定した場合のバイメタル3の湾曲変位量Lmは、
Lm=α×(1.15×im)2
で与えられる。(αは電流の2乗に対する発熱の比例定数

0060

本実施の形態においてUTCを115%とした場合の反転機構部20の最大目盛位置をDmとおき、従来の技術においてバイメタル3がフラット状態となっている場合の連動板5の左端部位置(反転機構部20の0点トリップ位置)をD0'、またUTCが115%の場合の反転機構部20の最大目盛位置をDm'とおくと、図9において
Dmは Da より Lm だけ左の位置
Dm'は D0'より Lm だけ左の位置
という関係が成り立つ。

0061

従来の技術ではバイメタル3がフラット状態で0点トリップ動作を実施するため、D0'は回動範囲θ2の右端Dfよりも左側に存在しなければならない。しかし、本実施の形態による熱動式過電流継電器では、0点トリップ動作をバイメタル3がフラット状態で実施する必要がなく、前述のとおりDaは回動範囲θ2の右端Dfよりも右側に存在する構成も可能である。つまり、D0'よりもDaの方が図9において右側に存在するため、同じくDm'よりもDmの方が右側に位置することとなり、その分、反転機構部20の回動範囲を狭めることができ、熱動式過電流継電器を小型化する事が可能となる。

0062

また、本実施の形態に記載の構造では、従来の技術(図2および図3)に示したように、反転機構部20を0点トリップ側とは逆に所定量以上回動させると、リセット不良が発生する領域となる。図10は、図9におけるリセット不良限界位置Drを示したものである。

0063

図10において、D0"は部品の組み合わせばらつき等を含み従来の熱動式過電流継電器の連動板5の左端部が最も右側に位置した場合を示し、Dm"は組み合わせばらつき等を含み従来の熱動式過電流継電器の反転機構部20の最大目盛位置が最も左側に来た場合を示す。ここで、従来の熱動式過電流継電器であれ本実施の形態による熱動式過電流継電器であれ、最大目盛値imさえ変わらなければ最大目盛設定時にUTCが115%と仮定した場合のバイメタル3の湾曲変位量Lmも変わらないため、前述と同様に、
Dm"は D0"より Lm だけ左の位置
という関係が成り立つ。

0064

そして、図10において、回動範囲θ2の右端DfとD0"との間の距離が長いほど0点トリップ不良が発生しやすく、リセット不良限界位置DrとDm"との間の距離が長いほどリセット不良が発生しやすくなると考えられる。

0065

従来の技術では、0点トリップ不良の発生確率を下げるため、D0"の位置を左側にする(回動範囲θ2の右端DfとD0"との間の距離を短くする)と、Dm"はD0"からLmだけ左の位置で定まるため、リセット不良限界位置DrとDm"との間の距離は長くなりリセット不良の発生確率が高くなってしまう。一方、リセット不良の発生確率を下げるため、Dm"の位置を右側にする(リセット不良限界位置DrとDm"との間の距離を短くする)と、D0"はDm"からLmだけ右の位置で定まるため、回動範囲θ2の右端DfとD0"との間の距離は長くなり0点トリップ不良の発生確率が高くなってしまう。すなわち、0点トリップ不良改善とリセット不良改善はトレードオフの関係となっている。

0066

本実施の形態に記載の技術により、前記トレードオフを解消することができる。図10において、Dmはリセット不良限界位置Drよりも右側に位置している。また、DaはDmよりもLmだけ右の位置で定まっている。ここでDaは回動範囲θ2の右端Dfよりも右側に位置している。しかし、0点トリップ動作は、バイメタル3を所定量湾曲変位させ連動板5の左端部がD0に位置したときに実施し、D0は回動範囲θ2の右端Dfよりも左側であるため支障なく0点トリップ動作が可能となる。このようにDa、D0、Dmを構成することで、0点トリップ不良およびリセット不良のどちらとも改善することができ、生産性を向上させることが可能となる。

0067

また、回動範囲θ2の左端DeをDrとDmの間に位置するように、回動範囲を抑制することで、熱動式過電流継電器を小型化できるとともに、回動範囲内であれば必ずリセット不良が発生しない構成となることで生産工程においてリセット不良の検査を省略し生産性をさらに向上させることができる。

0068

実施の形態2.
実施の形態1では、最大目盛位置側にリセット不良がある場合の構成について説明したが、リセット不良改善に対する効果は、最大目盛位置側に限定されるものではない。最小目盛位置側にリセット不良が発生する構成においても、実施の形態1に記載の内容と同様に、0点トリップ実施時のバイメタル湾曲変位量分だけ最小目盛位置をずらすことでリセット不良の発生を抑制することが可能となる。

0069

図11において、熱動式過電流継電器は、バイメタルの先端に当接しバイメタルの湾曲変位を伝達する連動板201と、連動板201の左端部201aと当接する温度補償バイメタル202と、温度補償バイメタル202と係合する作用レバー203と、作用レバー203に押圧される動作板204と、反転板205と、反転板205と動作板204を係合する引きばね206と、反転板205と動作板204を支える反転機構支持部材207と、作用レバー203を軸部208aで保持し支点208zを回転中心として回動する調整レバー208と、調整レバー208を回動させるための調整ねじ209とを有している。動作板204、反転板205、引きばね206及び反転機構支持部材207により反転機構部が構成され、温度補償バイメタル202、作用レバー203、調整レバー208及び調整ねじ209により調整機構部が構成されている。

0070

調整ねじ209を回転させることで、支点208zを回転中心として調整レバー208を時計方向に回動させると、調整レバー208の軸部208aも時計方向へと回動し図11の左方向に変位する。軸部208aが左に変位することで、作用レバー203と温度補償バイメタル202の係合体は連動板の当接点201aを支点として左斜め方向へ倒れ、作用レバー突起部先端203aは図11の左方向へと移動する。

0071

この時、作用レバー突起部先端203aが、反転機構支持部材207における反転板支点205aと動作板支点204aとを結ぶ直線と、反転板205における引きばね206の引掛け部205bと反転板支点205aとを結ぶ直線との間に位置した場合、トリップはできるがリセットはできない位置関係となり、リセット不良となる。これを改善するため、連動板201の当接部201aを図11の右方向へと移動させると、今度は208zを支点とした0点トリップ実施までの調整レバー208の時計方向の回動量が多く必要となり、0点トリップ不良の発生確率があがる。

0072

図11の場合は、動作板204と作用レバー突起部先端203aとの距離が縮まる場合、すなわち整定電流の調整範囲において最小目盛位置側でリセット不良が発生するケースであるが、実施の形態1と同様に、連動板201の当接部201aを図11の右側へ移動させるとともに、0点トリップ動作は、バイメタルを湾曲させて連動板201の当接部201aがある程度まで図11における左側に変位した状態で実施するようにすれば、0点トリップ不良もリセット不良もどちらとも改善させることができる。

0073

[発明の効果]
以上のように本発明の熱動式過電流継電器の電調方法によれば、バイメタルに熱を加えることにより、このバイメタルを所定量湾曲変位させるバイメタル湾曲変位工程と、調整機構部を操作することにより反転機構部位置を回動させてバイメタルの湾曲変位により移動した連動板と反転機構部とを当接させる連動板・反転機構部当接工程と、連動板と反転機構部が当接した状態から、さらに調整機構部を操作することにより反転機構部がトリップ動作する位置まで反転機構部位置を回動させて反転機構部がトリップ動作した位置を0点トリップ位置として算出する0点トリップ工程と、0点トリップ位置を基準として、整定電流の調整範囲の各目盛に応じた反転機構部の位置を決定する反転機構部位置決め工程とを有する。このようにして、バイメタルを所定量湾曲変位させてから0点トリップ動作を実施することにより、一旦バイメタルの湾曲変位ばらつきを無くすことが可能で、電調精度を向上させることができる。

0074

さらにまた、バイメタル湾曲変位工程におけるバイメタルへの加熱は、バイメタルの湾曲変位が飽和に達するまで行わず、0点トリップ工程における反転機構部の移動速度を、バイメタルが飽和に至ろうとする湾曲変位の速度よりも速くする。これにより、0点トリップ動作でのトリップ検出誤差を大きくすることなく、電調作業の時間を短くすることができる。

0075

また、本発明の熱動式過電流継電器によれば、上記熱動式過電流継電器の電調方法により電調する熱動式過電流継電器であって、バイメタルが所定量湾曲変位していない状態では、調整機構部を操作して反転機構部を移動させてもトリップ動作しない。そのため、必ずバイメタルを所定量湾曲変位させて0点トリップ動作をさせることになり、バイメタルをフラット状態で0点トリップさせることなく電調作業を誤りなく行い、電調精度を向上させることができる。

0076

さらに、本発明の熱動式過電流継電器によれば、上記熱動式過電流継電器の電調方法により電調する熱動式過電流継電器であって、反転機構部の回動範囲内にリセット不可となる範囲が存在することないよう反転機構部の回動量に限界が設けられている。これにより、0点トリップ不良とリセット不良というトレードオフの関係にあった不良の改善をどちらとも改善させることで生産性を向上させるとともに、反転機構部の回動範囲を狭めることで小型化を図ることができる。

0077

以上のように、本発明にかかる熱動式過電流継電器の電調方法は、主回路電流に応動して湾曲するバイメタルと、このバイメタルの変位を伝達する連動板と、この連動板との当接によりトリップ動作して接点の開閉状態を反転させる反転機構部と、この反転機構部の位置を移動させて接点の開閉状態が反転する位置を調整する調整機構部と、トリップ状態の反転機構部を定常状態へと戻すためのリセット機構とを有する熱動式過電流継電器の電調方法に適用されて好適なものである。

0078

1ケース
2カバー
3バイメタル
4ヒータ
5連動板
6温度補償バイメタル
7反転板
7a常閉可動接点
8引きばね
9反転機構支持部材
10 常閉固定接触子
10a常閉固定接点
11調整ねじ
12ツマミ
13回転レバー
14 常開可動接触子
14a常開可動接点
15常開固定接触子
15a常開固定接点
16リセットバー
17 切換板
18板ばね
19リセットばね
20反転機構部
21調整機構部

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