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技術 溶銑の脱燐処理方法及び精錬用上吹きランス

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 奥山悟郎内田祐一菊池直樹
出願日 2010年1月29日 (10年11ヶ月経過) 出願番号 2010-018344
公開日 2011年8月18日 (9年4ヶ月経過) 公開番号 2011-157570
状態 特許登録済
技術分野 炭素鋼又は鋳鋼の製造 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼
主要キーワード 周囲孔 超音速噴流 斜め下向き方向 仕切管 供給継手 ラバールノズル形状 給水継手 調製コスト
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課題

蛍石などのフッ素源を使用しなくともCaO系媒溶剤を迅速に滓化させることができ、溶銑を効率的に且つ安価に脱燐することのできる脱燐処理方法を提供する。

解決手段

上吹きランス1の軸心部に配置した中心孔4から不活性ガス搬送用ガスとして脱燐用媒溶剤を溶銑に向けて噴出すると同時に、前記中心孔の周囲に設けた燃料供給ノズル6及び酸素含有ガス供給ノズル7により、前記中心孔からの噴出流の周囲に酸素含有ガス燃料との反応による火炎包囲帯を形成させ、且つ、前記中心孔の周囲に設置された3孔以上の周囲孔5から酸素含有ガスを溶銑の浴面に向けて吹き付ける。

概要

背景

近年、溶銑段階で予め脱燐処理(「予備脱燐処理」ともいう)を実施し、溶銑中の燐を或る程度除去した後に、この溶銑を転炉装入して脱炭精錬を実施し、溶銑から溶鋼を溶製する製鋼方法発展してきた。この場合、溶銑の脱燐処理は、トーピードカー溶銑鍋、転炉などの設備を用い、これらの設備に収容された溶銑に酸素ガス及び固体酸化鉄などの酸素源と、脱燐用媒溶剤としてのCaO系媒溶剤とを添加し、溶銑中の燐を酸素源により酸化し、生成した燐酸化物(P2O5)をCaO系媒溶剤によって形成されるスラグ中へ取り込むという方法で行われている。

この脱燐処理において、少ないCaO系媒溶剤の使用量で溶銑中の燐を溶銑からスラグへ効率的に移行させるためには、CaO系媒溶剤を迅速に溶融して滓化させることが極めて重要であるが、熱力学上、溶銑中の燐は温度が低いほど酸化除去されやすいことから、脱燐処理は1300〜1400℃の比較的低い温度で行われるのが一般的である。つまり、この温度条件はCaO系媒溶剤の滓化には好適な条件とはいえず、従って、1300〜1400℃の比較的低温領域でCaO系媒溶剤を滓化させるために、従来、CaOの融点降下剤である蛍石(CaF2)を併用することが広く行われてきた。

しかし、近年、環境保護の観点から、スラグからのフッ素(F)の溶出が問題になっており、このために、蛍石などのフッ素源を使用しないで効率的に脱燐することのできる脱燐技術の開発が望まれていた。そして、これに応えるべく、蛍石などのフッ素源を用いずにCaO系媒溶剤の滓化を促進させて脱燐処理する方法が幾つか提案されている。

例えば、特許文献1には、上底吹き転炉に収容された溶銑に、CaO粉と、このCaO粉に対して質量%で20%を超え50%以下のAl2O3粉とを含有する混合粉を、酸素ガスを搬送用ガスとして上吹きランスから吹き付けるとともに、炉底から攪拌用ガスを吹き込んで溶銑を攪拌しながら脱燐処理を行う方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法では、添加するAl2O3によりCaOの融点が降下し、CaOの滓化を促進させることはできるものの、スラグ中のAl2O3濃度が高くなるために、炉体耐火物損耗を招き、却ってコスト高になる懸念がある。また、スラグ中のAl2O3濃度が高くなることから、脱燐速度が低下するという問題もある。

特許文献2には、転炉型反応容器に収容された溶銑に対して、スラグの塩基度が1.1以下である場合には、少なくとも粒径が20mm以下である塊状生石灰投入し、また、スラグの塩基度が1.1を超える場合には、上吹きランスから粒度が100メッシュ(149μm)以下、好ましくは200メッシュ(74μm)以下であるCaO粉を酸素ガスとともに吹き付けて、溶銑を脱燐処理する方法が開示されている。ここで、スラグの塩基度とは、スラグ中のCaOとSiO2との質量比(CaO/SiO2)である。

一般に、脱燐反応は、高塩基度のスラグを形成させて溶銑中の燐濃度を必要レベルまで低下させており、脱燐処理におけるスラグの塩基度は1.1を越える場合が一般的である。特許文献2では、塩基度が1.1を超える場合には100メッシュ以下の生石灰を用いており、従って、生石灰の大部分を100メッシュ以下にする必要があり、生石灰をこのようなサイズに細粒化するには多大なコストを費やし、特許文献2は工業的に実現性のある方法とはいえない。

また、特許文献3には、上吹きランス先端中心孔から、CaO、SiO2及び酸化鉄を主成分とする粉粒状の脱燐用媒溶剤を、酸素含有ガスを搬送用ガスとしてバーナー火炎とともに転炉型反応容器内の溶銑浴面に向けて添加すると同時に、中心孔の外側の周囲孔から酸素含有ガスを溶銑に吹き付けて行う脱燐方法が開示されている。また、特許文献3では、粉粒状の脱燐用媒溶剤を吹き込むための中心孔が超音速噴流となるラバールノズルであること、及び、バーナー燃料燃焼するための酸素ガスを中心孔から供給することが記載されている。しかし、特許文献3の方法では、酸化鉄として、金属鉄を含有するダストを酸素含有ガスとともに中心孔から吹き込むので、搬送経路での金属鉄による発火の危険があり現実的ではない。また、中心孔から供給される酸素ガスと、その周囲から供給される燃料ガスとの混合が不十分で、燃焼効率が悪く、また更に、脱燐用媒溶剤の吐出流速が速いために、バーナー火炎内に滞在する時間が短く、十分に加熱・溶融しない恐れがある。

概要

蛍石などのフッ素源を使用しなくともCaO系媒溶剤を迅速に滓化させることができ、溶銑を効率的に且つ安価に脱燐することのできる脱燐処理方法を提供する。 上吹きランス1の軸心部に配置した中心孔4から不活性ガスを搬送用ガスとして脱燐用媒溶剤を溶銑に向けて噴出すると同時に、前記中心孔の周囲に設けた燃料供給ノズル6及び酸素含有ガス供給ノズル7により、前記中心孔からの噴出流の周囲に酸素含有ガスと燃料との反応による火炎包囲帯を形成させ、且つ、前記中心孔の周囲に設置された3孔以上の周囲孔5から酸素含有ガスを溶銑の浴面に向けて吹き付ける。

目的

しかし、近年、環境保護の観点から、スラグからのフッ素(F)の溶出が問題になっており、このために、蛍石などのフッ素源を使用しないで効率的に脱燐することのできる脱燐技術の開発が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
4件

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請求項1

上吹きランス軸心部に配置した中心孔から不活性ガス搬送用ガスとして脱燐用媒溶剤溶銑に向けて噴出すると同時に、該中心孔からの噴出流の周囲に酸素含有ガス燃料との反応による火炎包囲帯を形成させ、且つ、前記中心孔の周囲に設置された3孔以上の周囲孔から酸素含有ガスを溶銑の浴面に向けて吹き付けることを特徴とする、溶銑の脱燐処理方法

請求項2

前記脱燐用媒溶剤は、石灰焼結鉱、鉄鉱石、鉄鉱石の焼結工程で生成する焼結ダスト、溶銑の脱炭吹錬工程で生成する転炉スラグ転炉ダストのうちの何れか1種または2種以上からなることを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の脱燐処理方法。

請求項3

ランス先端部の軸心部に脱燐用媒溶剤を吹き込むための中心孔を有し、該中心孔の周囲に中心孔と同心円状の環状の燃料供給ノズル及び環状の酸素含有ガス供給ノズルを軸心側からこの順に有し、且つ、前記酸素含有ガス供給ノズルの周囲に精錬用の酸素含有ガスを吹き込むための3孔以上の周囲孔を有することを特徴とする、精錬用上吹きランス。

技術分野

0001

本発明は、CaO系媒溶剤脱燐用媒溶剤として使用し、上吹きランスから溶銑浴面に向けて酸素含有ガスを吹き付けて行う溶銑の脱燐処理方法に関し、並びに、その際に使用する精錬用上吹きランスに関する。

背景技術

0002

近年、溶銑段階で予め脱燐処理(「予備脱燐処理」ともいう)を実施し、溶銑中の燐を或る程度除去した後に、この溶銑を転炉装入して脱炭精錬を実施し、溶銑から溶鋼を溶製する製鋼方法発展してきた。この場合、溶銑の脱燐処理は、トーピードカー溶銑鍋、転炉などの設備を用い、これらの設備に収容された溶銑に酸素ガス及び固体酸化鉄などの酸素源と、脱燐用媒溶剤としてのCaO系媒溶剤とを添加し、溶銑中の燐を酸素源により酸化し、生成した燐酸化物(P2O5)をCaO系媒溶剤によって形成されるスラグ中へ取り込むという方法で行われている。

0003

この脱燐処理において、少ないCaO系媒溶剤の使用量で溶銑中の燐を溶銑からスラグへ効率的に移行させるためには、CaO系媒溶剤を迅速に溶融して滓化させることが極めて重要であるが、熱力学上、溶銑中の燐は温度が低いほど酸化除去されやすいことから、脱燐処理は1300〜1400℃の比較的低い温度で行われるのが一般的である。つまり、この温度条件はCaO系媒溶剤の滓化には好適な条件とはいえず、従って、1300〜1400℃の比較的低温領域でCaO系媒溶剤を滓化させるために、従来、CaOの融点降下剤である蛍石(CaF2)を併用することが広く行われてきた。

0004

しかし、近年、環境保護の観点から、スラグからのフッ素(F)の溶出が問題になっており、このために、蛍石などのフッ素源を使用しないで効率的に脱燐することのできる脱燐技術の開発が望まれていた。そして、これに応えるべく、蛍石などのフッ素源を用いずにCaO系媒溶剤の滓化を促進させて脱燐処理する方法が幾つか提案されている。

0005

例えば、特許文献1には、上底吹き転炉に収容された溶銑に、CaO粉と、このCaO粉に対して質量%で20%を超え50%以下のAl2O3粉とを含有する混合粉を、酸素ガスを搬送用ガスとして上吹きランスから吹き付けるとともに、炉底から攪拌用ガスを吹き込んで溶銑を攪拌しながら脱燐処理を行う方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法では、添加するAl2O3によりCaOの融点が降下し、CaOの滓化を促進させることはできるものの、スラグ中のAl2O3濃度が高くなるために、炉体耐火物損耗を招き、却ってコスト高になる懸念がある。また、スラグ中のAl2O3濃度が高くなることから、脱燐速度が低下するという問題もある。

0006

特許文献2には、転炉型反応容器に収容された溶銑に対して、スラグの塩基度が1.1以下である場合には、少なくとも粒径が20mm以下である塊状生石灰投入し、また、スラグの塩基度が1.1を超える場合には、上吹きランスから粒度が100メッシュ(149μm)以下、好ましくは200メッシュ(74μm)以下であるCaO粉を酸素ガスとともに吹き付けて、溶銑を脱燐処理する方法が開示されている。ここで、スラグの塩基度とは、スラグ中のCaOとSiO2との質量比(CaO/SiO2)である。

0007

一般に、脱燐反応は、高塩基度のスラグを形成させて溶銑中の燐濃度を必要レベルまで低下させており、脱燐処理におけるスラグの塩基度は1.1を越える場合が一般的である。特許文献2では、塩基度が1.1を超える場合には100メッシュ以下の生石灰を用いており、従って、生石灰の大部分を100メッシュ以下にする必要があり、生石灰をこのようなサイズに細粒化するには多大なコストを費やし、特許文献2は工業的に実現性のある方法とはいえない。

0008

また、特許文献3には、上吹きランス先端中心孔から、CaO、SiO2及び酸化鉄を主成分とする粉粒状の脱燐用媒溶剤を、酸素含有ガスを搬送用ガスとしてバーナー火炎とともに転炉型反応容器内の溶銑浴面に向けて添加すると同時に、中心孔の外側の周囲孔から酸素含有ガスを溶銑に吹き付けて行う脱燐方法が開示されている。また、特許文献3では、粉粒状の脱燐用媒溶剤を吹き込むための中心孔が超音速噴流となるラバールノズルであること、及び、バーナー燃料燃焼するための酸素ガスを中心孔から供給することが記載されている。しかし、特許文献3の方法では、酸化鉄として、金属鉄を含有するダストを酸素含有ガスとともに中心孔から吹き込むので、搬送経路での金属鉄による発火の危険があり現実的ではない。また、中心孔から供給される酸素ガスと、その周囲から供給される燃料ガスとの混合が不十分で、燃焼効率が悪く、また更に、脱燐用媒溶剤の吐出流速が速いために、バーナー火炎内に滞在する時間が短く、十分に加熱・溶融しない恐れがある。

先行技術

0009

特開2000−345226号公報
特開2000−73112号公報
特開2007−92158号公報

発明が解決しようとする課題

0010

このように、CaO系媒溶剤を主たる脱燐用媒溶剤として使用して溶銑を脱燐処理するにあたり、蛍石などのフッ素源を使用しないで効率的に脱燐することのできる脱燐処理技術の開発が切望されているにも拘らず、従来の脱燐処理方法はコストの点で工業的には満足できる技術とはいい難く、製造コストの上昇を余儀なくされていた。

0011

本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、蛍石などのフッ素源を使用しなくともCaO系媒溶剤を迅速に滓化させることができ、溶銑を効率的に且つ安価に脱燐することのできる脱燐処理方法を提供することであり、また、それに用いる精錬用の上吹きランスを提供することである。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討・研究を行った。以下に、検討・研究結果を説明する。

0013

CaO系媒溶剤を主たる脱燐用媒溶剤として用いた溶銑の脱燐反応は、CaO系媒溶剤により生成されるCaO系スラグが、溶銑中の燐と供給される酸素源との反応により生成される燐酸化物(P2O5)を取り込むことによって進行することから、CaO系媒溶剤をいかに迅速に滓化させるかが重要なポイントとなる。

0014

検討の結果、脱燐用媒溶剤が溶銑と接触する以前に、不活性ガスによって搬送される、上吹きランスからの脱燐用媒溶剤の噴出流の周囲を包囲するようにバーナーによる火炎包囲帯を形成することが、溶銑と脱燐用媒溶剤との混合・接触の促進、及び、脱燐用媒溶剤の迅速滓化に最適な条件であるとの知見が得られた。

0015

バーナーを形成するランス構造については、ランス構造をできるだけ簡素化するために、ランス軸心部の中心孔から脱燐用媒溶剤を搬送用ガスとしての不活性ガスとともに供給し、この中心孔の周囲に、軸心側から環状の燃料供給ノズル及び酸素含有ガス供給ノズルをこの順に設け、それぞれ燃料及び酸素含有ガスを供給し、燃料を酸素含有ガスにより燃焼させて火炎を形成し、これにより脱燐用媒溶剤を加熱・溶融する方法を用いることとした。この場合、酸素含有ガス供給ノズルから供給される酸素含有ガス中の酸素ガスは燃料の燃焼に消費されるので、溶銑中の燐の酸化にはほとんど寄与しない。従って、酸素含有ガス供給ノズルの外周に溶銑中の燐を酸化させるための精錬用酸素含有ガスを供給するノズル(=周囲孔)を設けることとした。

0016

酸素含有ガスを搬送用ガスとして中心孔から脱燐用媒溶剤を噴出させることも脱燐反応には有効であるが、脱燐用媒溶剤の一部として、転炉ダストなどを用いる場合、ダストには金属鉄が含有されることもあり、それが酸素ガスと反応してランス内部で発火するなどの危険性があり、工業的には実用化が難しい。

0017

また、中心孔からの脱燐用媒溶剤の搬送用ガスとして酸素含有ガスを吹き込み、この酸素含有ガスを燃料の燃焼用として併用する場合、中心孔からの酸素含有ガスと燃料との燃焼では、火炎長さが短くなり、脱燐用媒溶剤が火炎帯を通過する際の滞留時間が十分に確保できない。それに対して、燃料供給ノズルの周囲に酸素含有ガス供給ノズルを設置し、酸素含有ガス供給ノズルから酸素含有ガスを噴出させることで、燃料の燃焼が緩慢化され、火炎長が長くなり、効率的に脱燐用媒溶剤を加熱・溶融できることを見出した。

0018

図1に、燃焼用の酸素ガスを、中心孔と燃料供給ノズルの周囲に設けた酸素含有ガス供給ノズルとの双方から、供給比率を変化させて供給したときに形成される火炎長さの測定結果を示す。図1に示すように、酸素含有ガス供給ノズルからの酸素ガスの供給比率が高くなるほど、火炎の長さが長くなることが分かった。これによって、脱燐用媒溶剤を効率的に加熱・溶融できることを見出した。

0019

本発明は上記検討結果に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る溶銑の脱燐処理方法は、上吹きランスの軸心部に配置した中心孔から不活性ガスを搬送用ガスとして脱燐用媒溶剤を溶銑に向けて噴出すると同時に、該中心孔からの噴出流の周囲に酸素含有ガスと燃料との反応による火炎の包囲帯を形成させ、且つ、前記中心孔の周囲に設置された3孔以上の周囲孔から酸素含有ガスを溶銑の浴面に向けて吹き付けることを特徴とする。

0020

第2の発明に係る溶銑の脱燐処理方法は、第1の発明において、前記脱燐用媒溶剤は、石灰焼結鉱、鉄鉱石、鉄鉱石の焼結工程で生成する焼結ダスト、溶銑の脱炭吹錬工程で生成する転炉スラグ、転炉ダストのうちの何れか1種または2種以上からなることを特徴とする。

0021

第3の発明に係る精錬用上吹きランスは、ランス先端部の軸心部に脱燐用媒溶剤を吹き込むための中心孔を有し、該中心孔の周囲に中心孔と同心円状の環状の燃料供給ノズル及び環状の酸素含有ガス供給ノズルを軸心側からこの順に有し、且つ、前記酸素含有ガス供給ノズルの周囲に精錬用の酸素含有ガスを吹き込むための3孔以上の周囲孔を有することを特徴とする。

発明の効果

0022

本発明によれば、粉粒状の脱燐用媒溶剤を、上吹きランスの先端部に形成されるバーナー火炎によって加熱・溶融させながら溶銑に吹き付けて脱燐処理を行うので、蛍石などのフッ素源を使用しなくても、脱燐用媒溶剤の滓化が従来と比較して迅速化され、脱燐反応を促進させることができ、燐濃度の低い溶銑を製造することが可能となる。また、脱燐用媒溶剤の搬送用ガスとして不活性ガスを使用するので、仮に脱燐用媒溶剤中に金属鉄が混入していても搬送経路における金属鉄の燃焼を未然に防止することができる。その結果、脱燐処理工程における脱燐用媒溶剤コストの削減が可能になるのみならず、次工程の転炉脱炭精錬において、脱燐に必要な脱燐用媒溶剤が不要になるなど、省資源省エネルギーが達成されるとともに転炉脱操業の安定化が達成され、工業上有益な効果がもたらされる。

図面の簡単な説明

0023

燃焼用の酸素ガスを、中心孔と酸素含有ガス供給ノズルとの双方から、供給比率を変化させて供給したときに形成される火炎長さの測定結果を示す図である。
本発明の上吹きランスの例を示す縦断面概略図である。
図2のX−X’矢視による断面図である。

0024

以下、本発明を具体的に説明する。

0025

本発明に係る脱燐処理で用いる溶銑は、高炉などの溶銑製造設備で製造された溶銑であり、溶銑製造設備で製造された溶銑を、溶銑鍋、トーピードカーなどの溶銑搬送容器受銑し、この溶銑を予備脱燐処理設備に搬送する。少ない脱燐用媒溶剤の使用量で効率的に脱燐処理するために、脱燐処理の前に溶銑中の珪素を予め除去(「溶銑の予備脱珪処理」ともいう)してもよい。予備脱珪処理を行う場合には、溶銑の珪素含有量を0.1質量%以下まで低減させることが好ましい。溶銑の珪素含有量をこの範囲まで下げる手段としては、製造された溶銑に酸素ガスまたは酸化鉄などの酸素源を供給し、これらの酸素源によって溶銑中の珪素を酸化させ、珪素を酸化物として強制的に除去する方法を用いることができる。予備脱珪処理を実施した場合には、生成したスラグを脱燐処理の前までに排滓しておく。

0026

このようにして得た溶銑に対して本発明による脱燐処理を施す。本発明による脱燐処理は、溶銑鍋またはトーピードカーなどの溶銑搬送容器内で行うこともできるが、これらの溶銑搬送容器に比べてフリーボードが大きく、溶銑を強攪拌することが可能であり、少ない脱燐用媒溶剤の使用量で迅速に脱燐処理を行うことができることから、転炉型精錬容器で行うことが好ましい。従って、ここでは、転炉型の精錬容器を用いて脱燐処理する例で説明する。

0027

ここで、本発明で使用する上吹きランスについて説明する。図2及び図3は、本発明に係る上吹きランスの例を示す概略図であり、図2は縦断面図、図3は、図2のX−X’矢視による断面図である。

0028

上吹きランス1は、図2及び図3に示すように、円筒状のランス本体2と、このランス本体2の下端溶接などにより接続された銅製のランスチップ3とで構成されており、ランス本体2は、外側から、最外管8、外管9、中管10、内管11、仕切管12、最内管13の同心円状の6種の鋼管、即ち六重管で構成され、また、先端部のランスチップ3には、ランスチップ3のほぼ軸心位置に配置された、鉛直下方を向いた中心孔4と、この中心孔4の外周に配置された環状の燃料供給ノズル6と、この燃料供給ノズル6の外周に配置された環状の酸素含有ガス供給ノズル7と、この酸素含有ガス供給ノズル7の外周に配置された、鉛直斜め下向き方向を向いた複数個の周囲孔5とが設置されている。中心孔4はストレート形状のノズルであり、周囲孔5は末広がりラバールノズル形状のノズルである。

0029

中心孔4は、脱燐用媒溶剤を吹き付けるためのノズル、燃料供給ノズル6は、プロパンガス天然ガスなどの炭化水素系のガス燃料、或いは、重油灯油などの炭化水素系の液体燃料を吹き付けるためのノズル、酸素含有ガス供給ノズル7は、これらの燃料を燃焼するための酸素含有ガスを吹き付けるためのノズル、周囲孔5は、精錬用酸素含有ガスを吹き付けるためのノズルである。ここで、酸素含有ガスとは、酸素ガス(純酸素)、空気、酸素富化空気、酸素ガスとArガスとの混合ガスなどを指す。尚、この上吹きランス1では、周囲孔5が4個配置されているが、周囲孔5は3個以上であるならば、幾つであっても構わず、精錬用酸素含有ガスの供給流量に応じて決めればよい。

0030

最外管8と外管9との間隙、及び、外管9と中管10との間隙は、上吹きランス1を冷却するための冷却水流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は、外管9と中管10との間隙を通ってランスチップ3の部位まで至り、ランスチップ3の部位で反転して最外管8と外管9との間隙を通って上吹きランス1の上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。この場合に給排水径路を逆としてもよい。

0031

中管10と内管11との間隙は、周囲孔5への酸素含有ガスの供給流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた酸素含有ガス供給継手(図示せず)から、中管10と内管11との間隙に供給された酸素含有ガスは、中管10と内管11との間隙を通り、周囲孔5から転炉内に噴出される。

0032

内管11と仕切管12との間隙は、酸素含有ガス供給ノズル7への酸素含有ガスの供給流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた酸素含有ガス供給継手(図示せず)から、内管11と仕切管12との間隙に供給された酸素含有ガスは、内管11と仕切管12との間隙を通り、酸素含有ガス供給ノズル7から転炉内に噴出される。

0033

仕切管12と最内管13との間隙は、燃料供給ノズル6への燃料の供給流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた燃料供給継手(図示せず)から、仕切管12と最内管13との間隙に供給された燃料は、仕切管12と最内管13との間隙を通り、燃料供給ノズル6から転炉内に噴出される。

0034

また、最内管13の内部は、不活性ガスを搬送用ガスとする、中心孔4への脱燐用媒溶剤の供給流路となっており、上吹きランス1の上端部に設けられた脱燐用媒溶剤供給継手(図示せず)から、最内管13の内部に不活性ガスとともに供給された脱燐用媒溶剤は、最内管13の内部を通り、中心孔4から噴射される。搬送用ガスとする不活性ガスとしては、窒素ガスやArガスなどを使用する。

0035

このような構成の上吹きランス1を用い、転炉型の精錬容器(以下、単に「転炉」とも記す)に収容された溶銑に対して、以下に示すようにして本発明に係る脱燐処理を実施する。

0036

先ず、CaO、SiO2及び酸化鉄を主成分とする脱燐用媒溶剤の粉粒体を準備し、この脱燐用媒溶剤を、脱燐用媒溶剤供給継手に接続する供給経路に設けられた、粉粒体の脱燐用媒溶剤を収容するためのディスペンサー(図示せず)に予め装入しておく。この状態で、転炉の内部へ溶銑を装入する。用いる溶銑としてはどのような組成であっても処理することができ、脱燐処理の前に予備脱硫処理や予備脱珪処理が施されていてもよい。因みに、脱燐処理前の溶銑の主な化学成分は、炭素:3.8〜5.0質量%、珪素:0.2質量%以下、硫黄:0.05質量%以下、燐:0.08〜0.2質量%程度である。また、溶銑温度は1200〜1350℃の範囲であれば問題なく脱燐処理することができる。

0037

次いで、脱燐用媒溶剤を上吹きランス1の中心孔4から不活性ガスを搬送用ガスとして転炉内の溶銑の浴面に向けて吹き付ける。脱燐用媒溶剤の吹き付けと同時に、上吹きランス1の燃料供給ノズル6から炭化水素系の燃料を供給するとともに、酸素含有ガス供給ノズル7から酸素含有ガスを供給し、燃料供給ノズル6から供給される燃料を酸素含有ガス供給ノズル7から供給される酸素含有ガスによって燃焼させ、上吹きランス1の先端部に火炎を形成する。中心孔4から供給される脱燐用媒溶剤は、形成される火炎包囲帯の熱を受けて加熱・溶融し、溶融した状態で溶銑の浴面に吹き付けられる。その際に、上吹きランス1の周囲孔5からは脱燐精錬用の酸素含有ガスを溶銑の浴面に向けて吹き付けるとともに、転炉炉底に配置した底吹き羽口(図示せず)から窒素ガスなどの非酸化性ガスまたはArガスなどの希ガス撹拌用ガスとして溶銑に吹き込み、溶銑を攪拌させる。

0038

溶銑浴面に吹き付けられた脱燐用媒溶剤は直ちに滓化してスラグを形成し、また、供給された脱燐精錬用の酸素含有ガスと溶銑中の燐とが反応してP2O5が形成される。攪拌用ガスによって溶銑とスラグとが強攪拌されることも相まって、形成したP2O5がスラグに迅速に吸収されて、溶銑の脱燐反応が速やかに進行する。

0039

また、脱燐用媒溶剤の調製コストを抑える観点から、脱燐用媒溶剤の原料として、溶銑の脱炭吹錬工程で生成する転炉スラグ(CaO−SiO2系スラグ)、転炉ダスト(「OGダスト」ともいう酸化鉄)、或いは、鉄鉱石の焼結工程で生成する焼結ダスト(CaOと酸化鉄との混合物)を使用し、これらに生石灰、焼結鉱、鉄鉱石などを添加して所望の組成に調製することが好ましい。脱燐用媒溶剤にCaOの融点降下剤としてAl2O3源を意図的に混合しても構わないが、本発明においてはバーナーによる加熱・溶融により滓化性を十分確保できるため、特にAl2O3源を混合する必要はない。同様に、CaOの融点降下剤である蛍石などのフッ素化合物も必要としない。特に、スラグのリサイクルにあたりスラグからのフッ素の溶出量を抑えて環境を保護する観点から、蛍石などのフッ素化合物は脱燐用媒溶剤として使用しないことが好ましい。但し、フッ素が不純物成分として不可避的に混入した物質については使用しても構わない。脱燐用媒溶剤の組成は、CaOが50〜70質量%、SiO2が10〜30質量%、FeOが10〜25質量%とすればよい。

0040

脱燐処理時の酸素源が気体の酸素含有ガスのみでは溶銑温度が上昇し過ぎて脱燐反応が阻害される場合もあるので、必要に応じてミルスケールや鉄鉱石などの固体酸素源、或いは鉄スクラップを添加してもよい。これらの添加量は、溶銑中の珪素濃度、燐濃度、炭素濃度などに応じて適宜変更することができる。また、脱燐用媒溶剤の投入量は、溶銑中の珪素濃度及び燐濃度に応じて変更することとするが、最大でも溶銑トンあたり40kg程度であれば十分である。

0041

以上説明したように、本発明によれば、脱燐用媒溶剤を上吹きランス1の中心孔4から搬送用ガスの不活性ガスとともに供給し、中心孔4の周囲に配置した燃料供給ノズル6から炭化水素系燃料を供給するとともに、燃料供給ノズル6の周囲に配置した酸素含有ガス供給ノズル7から酸素含有ガスを供給して火炎を形成し、この火炎によって脱燐用媒溶剤を加熱・溶融させて溶銑に吹き付けるので、脱燐用媒溶剤を迅速に滓化させることができ、従来に比較して迅速に脱燐反応を推進させることができ、燐濃度の低い溶銑を製造することが可能となる。また、脱燐用媒溶剤の搬送用ガスとして不活性ガスを使用するので、仮に脱燐用媒溶剤中に金属鉄が混入していても供給経路における金属鉄の燃焼を未然に防止することができる。

0042

高炉で製造された溶銑に対して予備脱珪処理を施し、この予備脱珪処理後のスラグを排滓した後、5トンの小型転炉型精錬試験設備に溶銑を装入し、条件を変更して脱燐処理試験を実施した。

0043

脱燐処理は、炉底部の底吹き羽口から窒素ガスを0.05〜0.15Nm3/(min・t)の供給量で吹き込んで溶銑を攪拌しながら、上吹きランスの周囲孔から精錬用酸素含有ガスとして酸素ガスを吹き付けるとともに、上吹きランスの中心孔から窒素ガスを搬送用ガスとして脱燐用媒溶剤を吹き付けながら、燃料供給ノズルからプロパンガスを供給するとともに、酸素含有ガス供給ノズルから酸素ガスを供給して行った。使用した上吹きランスは、図2に示す上吹きランスと同一である。

0044

脱燐用媒溶剤の吹き付け速度は5kg/minの一定とし、精錬用酸素ガスの流量は420Nm3/hrの一定とし、プロパンガスの流量は20Nm3/hrの一定とした。溶銑温度は処理前が1200〜1300℃の範囲であり、処理後温度は1340〜1360℃になるように調整した。

0045

比較のために、ランス先端でバーナーを形成させない試験(比較例1、比較例2)も実施した。また、脱燐用媒溶剤の搬送用ガスとして酸素ガスを使用し、この酸素ガスでプロパンガスを燃焼する試験(比較例3)も実施した。表1に、各試験の脱燐処理における処理条件及び試験結果を示す。

0046

実施例

0047

表1に示すように、本発明例1〜3では、比較例1〜3に比べて、脱燐用媒溶剤の原単位及び精錬用酸素ガスの原単位はほぼ同等でありながら、低い燐濃度レベルまで溶銑を脱燐処理することができた。このように、蛍石などのフッ素源を使用しなくても本発明によって燐濃度の低い溶銑を安価に且つ安定して製造できることが確認できた。

0048

1 上吹きランス
2 ランス本体
3ランスチップ
4中心孔
5周囲孔
6燃料供給ノズル
7酸素含有ガス供給ノズル
8 最外管
9 外管
10中管
11内管
12仕切管
13 最内管

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