図面 (/)

技術 ワイヤカット放電加工方法およびワイヤカット放電加工装置

出願人 株式会社ソディック
発明者 山田久典岩住信希小松隆介
出願日 2009年11月19日 (11年0ヶ月経過) 出願番号 2009-264015
公開日 2011年6月2日 (9年5ヶ月経過) 公開番号 2011-104741
状態 特許登録済
技術分野 放電加工、電解加工、複合加工
主要キーワード 最大許容誤差 直線的変化 曝露面 試験加工 所定単位期間 除去面積 太鼓形状 電気加工
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2011年6月2日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (6)

課題

取り代が変化すると加工面が湾曲に形成される。

解決手段

記憶装置40は、予定の取り代d0における加工進行方向X+に直交する方向にワイヤ電極ELに作用する静電吸引力CF0と放電反発力EF0とが釣り合う初期の適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0とを記憶する。演算装置50は、初期の適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0に基づいて複数の取り代di毎に静電吸引力CFiと放電反発力EFiとが釣り合う適正平均加工電圧Viと適正加工速度Fiとを求める。サーボ条件設定装置60は、適正平均加工電圧Vi毎に適正加工速度Fiで相対移動するように平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わすサーボ曲線を設定する。加工中、極間電圧検出装置7が所定単位期間毎に加工間隙の平均加工電圧を検出し、サーボ装置8は、サーボ曲線に従って平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工する。

概要

背景

ワイヤカット放電加工は、1mmに満たない細いワイヤ線工具電極として放電エネルギによって被加工物から材料を除去していく放電加工方法である。ワイヤ電極は、所定の加工間隙をもって被加工物に対向配置される。そして、加工間隙に間歇的電圧印加して放電を繰返し発生させながらワイヤ電極を被加工物に対して所定の相対移動軌跡に沿って相対的に加工送りすることによって被加工物を所望の加工形状に切断加工する。

加工間隙に電圧が印加されたときに静電容量によって加工間隙に静電気力が発生する。細くて剛性の低いワイヤ電極は、静電気力によって被加工物の加工面の方向に引き付けられて撓む。以下、加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極を引き付ける力を静電吸引力という。一方、放電が発生したときに放電ギャップ放電衝撃力が発生する。ワイヤ電極は、放電衝撃力によって加工面の方向とは反対の方向に押し出されて撓む。以下、加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極を押し出す力を放電反発力という。

加工間隙に間歇的に電圧が印加され繰返し放電が発生することでワイヤ電極が加工面に対して引き付けられることと加工面から押し出されることを繰り返すことによってワイヤ電極が高周波振動しているような状態になる。放電点まちまちであるから、ワイヤ電極の振動による挙動は複雑である。ただし、ワイヤ電極は、一対のワイヤガイドに点的に支持され、所定の張力をもって張架されているので、巨視的に見ると太鼓形状に振動している状態とみなすことができる。

被加工物から大まかに材料を除去して切断する荒加工工程であるファーストカットのときは、ワイヤ電極が加工溝に挟まれた状態で放電加工するため、加工溝幅方向におけるワイヤ電極の振動がある程度は抑制されている。荒加工工程で残された残し代を取り除いていくセカンドカット以降の仕上げ加工工程のときは、ワイヤ電極の片側が開放されており、ワイヤ電極の振動は抑制されない。その結果、ワイヤ電極の撓みが転写されるようにして加工面が許容できない大きさで湾曲に形成されてしまう。

荒加工工程で加工面が湾曲に形成されても、十分な取り代が残されているようにしておくことで、仕上げ加工工程における数回の形状出し工工程で加工面を修正することができる。しかしながら、形状出し加工工程の後に実施される加工面粗さを小さくしていく面出し加工工程では、形状出し加工工程で形成される湾曲による加工形状誤差を取り除くことができる十分な取り代が残されていないので、要求される加工形状精度にもよるが、満足できる加工結果を得ることができない。

静電容量は平均加工電圧に依存するため、放電エネルギの大きさに関わらず、放電反発力に比べて静電吸引力が大きくなると加工面が内側にへこんだ状態に形成され、放電反発力に比べて静電吸引力が小さくなると加工面が外側に膨らんだ状態に形成される。そのため、放電エネルギを小さくしたり、ワイヤ電極に印加する張力を高くするだけでは、ワイヤ電極の振動の振幅を小さく抑制することができても、加工面が湾曲に形成されることを避けることができない。

そこで、所定単位期間におけるワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合うようにすることによってワイヤ電極の撓みを小さくする加工方法が考えられている。特許文献1の発明は、平均加工電圧または平均加工電流に比例した送り速度で相対移動させて加工間隙を一定に維持するサーボ方式において、平均加工電圧または平均加工電流の変動にともなう送り速度の変化に対応して電圧パルスの非印加時間に対する電圧パルスの印加時間の割合を変更設定することによって静電吸引力と放電反発力を相殺させ、静電吸引力と放電反発力のバランスを維持するようにしている。

特許文献2に開示される放電加工装置は、加工間隙の電圧と基準電圧を比較することで無負荷時間を測定し、無負荷時間が予め定められている最適な基準時間になるように送り速度を変化させることによって静電吸引力と放電反発力とが釣り合うようにしている。また、特許文献3の発明は、静電吸引力と放電反発力によるワイヤ電極の振動のより正確なシミュレーションを試みている。特許文献3は、シミュレーションの解析結果に基づいて放電ギャップから無負荷時間を推定して放電ギャップが一定になる加工送り量を計算し、加工送り量の増減に対応して送り速度を変化させる加工方法を開示している。

非特許文献1は、放電エネルギに影響を与えない放電の休止時間を操作することで平均加工電圧を変動させ、静電吸引力を放電反発力に釣り合うようにする加工方法を開示している。非特許文献1は、無負荷時間が休止時間に依らずに取り代で変動することから、休止時間を操作したときは、無負荷電圧が一定になるようにサーボ基準電圧を変更することを開示している。

先行技術の基本的な概念は、静電吸引力と放電反発力が釣り合うように特定種類加工条件初期設定ないしは変更設定する点で本質的に同じである。そして、静電吸引力と放電反発力が正確に解析されている限りにおいて、静電吸引力と放電反発力が釣り合って加工面に形成される湾曲による加工形状誤差をより小さくする特定種類の加工条件の設定が容易である。

概要

取り代が変化すると加工面が湾曲に形成される。記憶装置40は、予定の取り代d0における加工進行方向X+に直交する方向にワイヤ電極ELに作用する静電吸引力CF0と放電反発力EF0とが釣り合う初期の適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0とを記憶する。演算装置50は、初期の適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0に基づいて複数の取り代di毎に静電吸引力CFiと放電反発力EFiとが釣り合う適正平均加工電圧Viと適正加工速度Fiとを求める。サーボ条件設定装置60は、適正平均加工電圧Vi毎に適正加工速度Fiで相対移動するように平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わすサーボ曲線を設定する。加工中、極間電圧検出装置7が所定単位期間毎に加工間隙の平均加工電圧を検出し、サーボ装置8は、サーボ曲線に従って平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工する。

目的

本発明は、上記課題に鑑みて、加工中の取り代の変化に対応させてワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力を常に釣り合う釣り合うようにして実質的にワイヤ電極の撓みをなくし、加工面をより平坦に形成できる改良されたワイヤカット放電加工方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

複数の取り代毎に加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と前記適正平均加工電圧に対応する前記静電吸引力と前記放電反発力とが釣り合う適正加工速度を求めて、所定単位期間毎に検出される平均加工電圧に応答して前記適正加工速度で加工するワイヤカット放電加工方法

請求項2

設定された加工条件予定の取り代における加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とを得る工程と、前記初期の適正平均加工電圧と前記適正加工速度とに基づいて複数の取り代毎に前記静電吸引力と前記放電反発力とを計算して前記複数の取り代毎に前記静電吸引力と前記放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と前記適正平均加工電圧に対応する適正加工速度とを求める工程と、前記適正平均加工電圧毎に前記適正加工速度で相対移動するように平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わすサーボ曲線を設定する工程と、所定単位期間毎に平均加工電圧を検出する工程と、前記サーボ曲線に従って前記検出された平均加工電圧に応答して前記適正加工速度で加工する工程と、を含んでなるワイヤカット放電加工方法。

請求項3

所定単位期間毎に加工間隙の平均加工電圧を検出する極間電圧検出装置と、平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わす所定のサーボ曲線に従って前記検出された平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工するようにサーボ信号を出力するサーボ装置と、設定された加工条件で予定の取り代における加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とを記憶する記憶装置と、前記初期の適正平均加工電圧と前記適正加工速度とに基づいて複数の取り代毎に前記静電吸引力と前記放電反発力とを計算して前記複数の取り代毎に前記静電吸引力と前記放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と前記適正平均加工電圧に対応する適正加工速度とを求める演算装置と、前記適正平均加工電圧毎に前記適正加工速度で相対移動するように前記サーボ曲線を設定するサーボ条件設定装置と、を含んでなるワイヤカット放電加工装置

技術分野

0001

本発明は、ワイヤ電極の撓みを抑制するワイヤカット放電加工方法およびワイヤカット放電加工装置に関する。特に、ワイヤ電極の撓みを小さくする加工速度で加工するワイヤカット放電加工方法およびワイヤカット放電加工装置に関する。

背景技術

0002

ワイヤカット放電加工は、1mmに満たない細いワイヤ線工具電極として放電エネルギによって被加工物から材料を除去していく放電加工方法である。ワイヤ電極は、所定の加工間隙をもって被加工物に対向配置される。そして、加工間隙に間歇的電圧印加して放電を繰返し発生させながらワイヤ電極を被加工物に対して所定の相対移動軌跡に沿って相対的に加工送りすることによって被加工物を所望の加工形状に切断加工する。

0003

加工間隙に電圧が印加されたときに静電容量によって加工間隙に静電気力が発生する。細くて剛性の低いワイヤ電極は、静電気力によって被加工物の加工面の方向に引き付けられて撓む。以下、加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極を引き付ける力を静電吸引力という。一方、放電が発生したときに放電ギャップ放電衝撃力が発生する。ワイヤ電極は、放電衝撃力によって加工面の方向とは反対の方向に押し出されて撓む。以下、加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極を押し出す力を放電反発力という。

0004

加工間隙に間歇的に電圧が印加され繰返し放電が発生することでワイヤ電極が加工面に対して引き付けられることと加工面から押し出されることを繰り返すことによってワイヤ電極が高周波振動しているような状態になる。放電点まちまちであるから、ワイヤ電極の振動による挙動は複雑である。ただし、ワイヤ電極は、一対のワイヤガイドに点的に支持され、所定の張力をもって張架されているので、巨視的に見ると太鼓形状に振動している状態とみなすことができる。

0005

被加工物から大まかに材料を除去して切断する荒加工工程であるファーストカットのときは、ワイヤ電極が加工溝に挟まれた状態で放電加工するため、加工溝幅方向におけるワイヤ電極の振動がある程度は抑制されている。荒加工工程で残された残し代を取り除いていくセカンドカット以降の仕上げ加工工程のときは、ワイヤ電極の片側が開放されており、ワイヤ電極の振動は抑制されない。その結果、ワイヤ電極の撓みが転写されるようにして加工面が許容できない大きさで湾曲に形成されてしまう。

0006

荒加工工程で加工面が湾曲に形成されても、十分な取り代が残されているようにしておくことで、仕上げ加工工程における数回の形状出し工工程で加工面を修正することができる。しかしながら、形状出し加工工程の後に実施される加工面粗さを小さくしていく面出し加工工程では、形状出し加工工程で形成される湾曲による加工形状誤差を取り除くことができる十分な取り代が残されていないので、要求される加工形状精度にもよるが、満足できる加工結果を得ることができない。

0007

静電容量は平均加工電圧に依存するため、放電エネルギの大きさに関わらず、放電反発力に比べて静電吸引力が大きくなると加工面が内側にへこんだ状態に形成され、放電反発力に比べて静電吸引力が小さくなると加工面が外側に膨らんだ状態に形成される。そのため、放電エネルギを小さくしたり、ワイヤ電極に印加する張力を高くするだけでは、ワイヤ電極の振動の振幅を小さく抑制することができても、加工面が湾曲に形成されることを避けることができない。

0008

そこで、所定単位期間におけるワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合うようにすることによってワイヤ電極の撓みを小さくする加工方法が考えられている。特許文献1の発明は、平均加工電圧または平均加工電流に比例した送り速度で相対移動させて加工間隙を一定に維持するサーボ方式において、平均加工電圧または平均加工電流の変動にともなう送り速度の変化に対応して電圧パルスの非印加時間に対する電圧パルスの印加時間の割合を変更設定することによって静電吸引力と放電反発力を相殺させ、静電吸引力と放電反発力のバランスを維持するようにしている。

0009

特許文献2に開示される放電加工装置は、加工間隙の電圧と基準電圧を比較することで無負荷時間を測定し、無負荷時間が予め定められている最適な基準時間になるように送り速度を変化させることによって静電吸引力と放電反発力とが釣り合うようにしている。また、特許文献3の発明は、静電吸引力と放電反発力によるワイヤ電極の振動のより正確なシミュレーションを試みている。特許文献3は、シミュレーションの解析結果に基づいて放電ギャップから無負荷時間を推定して放電ギャップが一定になる加工送り量を計算し、加工送り量の増減に対応して送り速度を変化させる加工方法を開示している。

0010

非特許文献1は、放電エネルギに影響を与えない放電の休止時間を操作することで平均加工電圧を変動させ、静電吸引力を放電反発力に釣り合うようにする加工方法を開示している。非特許文献1は、無負荷時間が休止時間に依らずに取り代で変動することから、休止時間を操作したときは、無負荷電圧が一定になるようにサーボ基準電圧を変更することを開示している。

0011

先行技術の基本的な概念は、静電吸引力と放電反発力が釣り合うように特定種類加工条件初期設定ないしは変更設定する点で本質的に同じである。そして、静電吸引力と放電反発力が正確に解析されている限りにおいて、静電吸引力と放電反発力が釣り合って加工面に形成される湾曲による加工形状誤差をより小さくする特定種類の加工条件の設定が容易である。

0012

特許第2722867号公報(段落0012−0025)
特許第3571293号公報(段落0032−0035)
特許第3875052号公報(段落0014−0015)

先行技術

0013

電気加工学会誌第36巻第81号「ワイヤ放電加工加工精度に関する基礎的研究(第6報)」小原治樹他(第15頁−第23頁)

発明が解決しようとする課題

0014

ところで、仕上げ加工工程における取り代は、前加工工程で残されるうねりなどによって常に一定であるわけではない。所定単位期間における静電気力と放電衝撃力がワイヤ電極の被加工物に対向する全面に作用するとみなすと、取り代の大きさによって静電気力が発生する領域が異なるとともに放電衝撃力が作用する方向が異なる。したがって、水平面における加工進行方向に対して直交方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力は、加工中に常に変動している。

0015

そのため、設定されたオフセット値に従う予定の取り代で計算される静電吸引力と放電反発力が釣り合うように初期設定された加工条件を変更設定して静電吸引力と放電反発力とのバランスを維持しようとしても、取り代の変化によって再計算される静電吸引力と放電反発力は正確ではないから、静電吸引力と放電反発力が釣り合わなくなっている。その結果、加工面に形成される湾曲の大きさは小さくされるものの、加工面が平坦であるというには十分ではなく、湾曲による加工形状誤差の更なる低減が望まれており、改善の余地がある。

0016

本発明は、上記課題に鑑みて、加工中の取り代の変化に対応させてワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力を常に釣り合う釣り合うようにして実質的にワイヤ電極の撓みをなくし、加工面をより平坦に形成できる改良されたワイヤカット放電加工方法を提供することを目的とする。本発明のワイヤカット放電加工方法による利点は、実施の形態の説明において詳細に記載される。

課題を解決するための手段

0017

本発明のワイヤカット放電加工方法は、上記課題を解決するために、複数の取り代毎に加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と適正平均加工電圧に対応する静電吸引力と前記放電反発力とが釣り合う適正加工速度を求めて、所定単位期間毎に検出される平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工するようにする。

0018

本発明のワイヤカット放電加工方法は、具体的には、設定された加工条件で予定の取り代における加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とを得る工程と、初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とに基づいて複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力とを計算して複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と適正平均加工電圧に対応する適正加工速度とを求める工程と、適正平均加工電圧毎に適正加工速度で相対移動するように平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わすサーボ曲線を設定する工程と、所定単位期間毎に平均加工電圧を検出する工程と、サーボ曲線に従って検出された平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工する工程と、を含んでなるようにする。

0019

本発明のワイヤカット放電加工装置は、所定単位期間毎に加工間隙の平均加工電圧を検出する極間電圧検出装置と、平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わす所定のサーボ曲線に従って検出された平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工するようにサーボ信号を出力するサーボ装置と、設定された加工条件で予定の取り代における加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とを記憶する記憶装置と、初期の適正平均加工電圧と前記適正加工速度とに基づいて複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力とを計算して複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と適正平均加工電圧に対応する適正加工速度とを求める演算装置と、適正平均加工電圧毎に適正加工速度で相対移動するようにサーボ曲線を設定するサーボ条件設定装置と、を含んでなるようにする。

発明の効果

0020

平均加工電圧が与えられると加工速度が決定するサーボ系では、加工条件が一定である場合は、平均加工電圧が変動して加工速度が増減するとき、平均加工電圧の変動が取り代の変化に起因していると言える。取り代に対応する静電吸引力と放電反発力は、モデルから演算することができるから、複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力が釣り合う適正平均加工電圧と適正加工速度を得ることができる。

0021

本発明は、複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力が釣り合う適正平均加工電圧と適正加工速度を求めて、所定単位期間毎に取り代の変化に対応して変動する平均加工電圧を検出し、検出される平均加工電圧に対して静電吸引力と放電反発力が釣り合う適正加工速度で加工するようにしたので、加工中に取り代が変わっても常に静電吸引力と放電反発力とのバランスが維持される。その結果、安定してワイヤ電極の撓みを実質的になくすことができ、加工面が湾曲に形成されず、加工形状精度が一層向上する。

0022

特に、静電吸引力と放電反発力が釣り合う適正平均加工電圧毎に適正加工速度で相対移動するように平均加工電圧に対する加工速度の関係を表わすサーボ曲線を設定して加工するので、加工中に取り代の変化に対応して常に静電吸引力と放電反発力が釣り合う適正加工速度で加工できる。その結果、サーボ曲線を設定するだけで加工中に安定してワイヤ電極の撓みがない状態で加工することができるから、加工形状精度が一層向上するとともに、操作者の負担が増大することがない。

図面の簡単な説明

0023

本発明のワイヤカット放電加工装置を示すブロック図である。
静電気力と静電吸引力を模式的に示す平面図である。
静電気力と静電吸引力を模式的に示す別の平面図である。
放電衝撃力と放電反発力を模式的に示す平面図である。
本発明に適用されるサーボ装置のサーボ特性の一例を示すグラフである。

実施例

0024

図1に、好ましい実施の形態として本発明のワイヤカット放電加工装置の代表的な構成が示される。ただし、本発明を説明する上で必要がない構成部材は、図示省略されている。以下の説明では、コンピュータ数値制御装置モータ制御装置を含んで制御装置ということがある。また、加工電源装置は、加工制御装置放電加工回路とを含む。

0025

本発明のワイヤカット放電加工装置は、図1に示されるように、コンピュータ数値制御装置1と、モータ制御装置2と、移動装置3と、位置検出装置4と、加工条件設定装置5と、加工電源装置6と、極間電圧検出装置7と、サーボ装置8と、を備える。コンピュータ制御装置1は、入力装置10と、解読装置20と、指令装置30と、記憶装置40と、演算装置50と、サーボ条件設定装置60と、を含んでなる。

0026

コンピュータ数値制御装置1は、少なくとも移動指令データ加工条件データを出力する。モータ制御装置2は、移動指令データに基づく制御電流を複数の制御軸方向の移動装置3に出力する。移動装置3は、複数の制御軸方向の移動体各移動体を移動させるサーボモータを備える。移動装置3は、各移動体を移動させてNCプログラムに規定される所定の相対移動軌跡に沿ってワイヤ電極を被加工物に対して相対移動させる。位置検出装置4は、移動体の位置を検出してモータ制御装置2に現在位置データを出力する。モータ制御装置2は、現在位置データに従って移動装置3を位置決め制御する。

0027

加工条件設定装置5は、コンピュータ制御装置1から出力される加工条件データに基づいて加工条件をセットする。加工電源装置6は、加工条件設定装置5にセットされている加工条件に基づいて放電加工回路の各回路素子を操作して、セットされている加工条件に従う所定の放電電流パルスを所定の繰返し周期で加工間隙に供給する。極間電圧検出装置7は、所定単位期間毎に加工間隙の平均加工電圧を検出する。極間電圧検出装置7は、加工間隙から取得される極間電圧を平滑化して増幅し、デジタル変換された検出信号を出力する。

0028

サーボ装置8は、設定されている所定のサーボ曲線に従って極間電圧検出装置7で検出された平均加工電圧に応答して適正加工速度で加工するようにサーボ信号をモータ制御装置2に出力する。サーボ曲線は、平均加工電圧が決まるとサーボ速度が決まるサーボ系における平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わす曲線である。以下では、直線的変化を含んで単にサーボ曲線という。また、特に断りがない限り、適正加工速度とは、所定の取り代における静電吸引力と放電反発力が釣り合う加工速度を示す。

0029

サーボ装置8は、例えば、図5に示されるサーボ曲線が得られるサーボ特性を有する。したがって、モータ制御装置2は、NCプログラムで規定される所定の相対移動軌跡に従ってワイヤ電極を被加工物に対して相対移動させるとともに平均加工電圧がサーボ基準電圧から離れるほど速い加工速度でワイヤ電極を相対移動させて加工間隙を一定に維持するようにしている。

0030

コンピュータ制御装置1の入力装置10は、操作者が複数種類初期設定値を含むNCプログラムを入力する手段である。解読装置20は、NCプログラムを解読してNCデータを出力する。指令装置30は、NCデータに基づいて移動方向と移動量を計算して移動指令データをモータ制御装置2に出力する。また、指令装置30は、加工条件データを加工条件設定装置5に出力する。

0031

コンピュータ制御装置1の記憶装置40は、加工条件設定装置5に初期に設定された加工条件で予定の取り代における加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極ELに作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とを記憶する。なお、適正平均加工電圧は、設定されている加工条件で放電加工をするときに静電吸引力と放電反発力とが釣り合う平均加工電圧を示す。

0032

実施の形態のワイヤカット放電加工装置では、事前試験加工で得られている初期の適正平均加工電圧と適正加工速度が記憶装置40に記憶される。初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とを計算によって得ることもできるが、試験加工で得られている適正平均加工電圧と適正加工速度は、加工面が真直であることが実際に確認されて確実で信頼性があるデータであるため、その後に変化する複数の取り代毎の適正平均加工電圧と適正加工速度を計算するときの誤差を可能な限り小さくすることができる点で有利である。

0033

演算装置50は、初期の適正平均加工電圧と適正加工速度とに基づいて複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力とを計算して複数の取り代毎に静電吸引力と放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と適正平均加工電圧に対応する適正加工速度とを求める。演算装置50は、記憶装置40に記憶されている初期の適正平均加工電圧と適正加工速度および求めた複数の取り代に対応する適正平均加工電圧と適正加工速度から適正平均加工電圧毎に適正加工速度で相対移動するようにサーボ曲線を演算する。

0034

サーボ条件設定装置60は、サーボ基準電圧およびサーボゲインを設定する。そして、サーボ条件設定装置60は、演算装置50で演算されているサーボ曲線を設定する。実施の形態におけるサーボ条件設定装置60は、サーボ装置8が図5で示されるようなサーボ特性を有しているので、特定のパラメータとして設けられているサーボ曲線の傾きを示す“サーボ速度”を適当な値に設定することによってサーボ曲線を設定する。

0035

本発明のワイヤカット放電加工方法は、基本的には、複数の取り代毎に加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極に作用する静電吸引力と放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と適正加工速度を求めて、加工中に検出される平均加工電圧に応答して常に適正加工速度で加工するようにしたことを特徴とする。

0036

実施の形態のワイヤカット放電加工方法で使用される加工速度のパラメータは、単位時間当たりの加工除去面積で表わされる速度である。ただし、送り速度が加工間隙に依存しない定速送りサーボ方式以外のサーボ方式である場合は、加工全体としてみるときに、単位時間当たりの加工除去距離で表わされる速度または単位時間当たりの相対移動距離で表わされる送り速度と同等であるから、例えば、取り代の変化で変動する検出される平均加工電圧に応答して常に適正な送り速度にしてワイヤ電極の撓みをなくすようにする方法は、本発明の技術思想に含まれるものとする。

0037

実施の形態のワイヤカット放電加工方法は、詳しくは、セカンドカット以降の仕上げ加工工程で設定される加工条件の組合せでオフセット値に基づく予定の取り代における静電吸引力と放電反発力を計算し、静電吸引力と放電反発力が釣り合う初期の適正平均加工電圧と適正加工速度を求める。そして、複数の取り代毎に予定の取り代における静電吸引力と放電反発力とから各取り代における静電吸引力と放電反発力を計算して複数の取り代毎の静電吸引力と放電反発力とが釣り合う適正平均加工電圧と適正加工速度を求める。

0038

複数の取り代毎の静電吸引力と放電反発力が釣り合う適正平均加工電圧と適正加工速度との関係から、平均加工電圧に対する加工速度の変化を表わすサーボ曲線を設定する。本発明のワイヤカット放電加工方法に適用できるサーボ装置は、平均加工電圧が与えられると加工速度が決定するサーボ特性のサーボ装置であるなら限定されないが、少なくとも平均加工電圧が特定の範囲において、与えられる平均加工電圧に対して加工速度が比例的に増減するサーボ特性を有するサーボ装置が望ましい。

0039

加工中は、所定単位期間毎に取り代が変わることによって変動する平均加工電圧を検出して、検出された平均加工電圧に応答して静電吸引力と放電反発力が釣り合うように加工速度を適正加工速度に変更調整して加工する。実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、所定単位時間は、特別の事情がある場合を除いて、制御装置と移動装置(駆動装置)の動作に要求される時間に合わせて決められるサーボ周期とする。

0040

図2および図3は、ワイヤ電極ELと被加工物WPを上から見たときの被加工物WPの上面(プログラム平面)における平面図である。図2および図3は、ワイヤ電極ELと被加工物WPとの間に形成される加工間隙に発生する静電気力を示す。図2は、静電気力がワイヤ電極ELと被加工物WPにおける加工後側面SPと加工除去面SQとを含む放電に晒される側面(以下、放電曝露面という)との間にだけ発生する場合である。図3は、静電気力がワイヤ電極ELと被加工物WPにおける前加工工程で形成された加工前側面SRに相当する放電に直接晒されることのない側面(以下、放電非曝露面という)との間にも発生する場合である。

0041

加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極ELに作用する静電吸引力CFを求める場合、取り代dの大きさの違いによる静電気力が生じる領域の幾何学的な差から全体の静電気力ωを計算する方法が異なる。そのため、静電気力がワイヤ電極ELと放電曝露面との間だけに生じるか、放電非曝露面との間にも生じるかどうかで場合分けをして静電吸引力CFを計算する必要がある。このとき、図2および図3では、静電気力ωは、被加工物WPの上面における水平面に投影されて示されており、静電吸引力CFが被加工物WPの上面においてのみ作用するということを意味するものではない。

0042

ワイヤ電極ELの相対移動軌跡(オフセット軌跡)OPがX軸上にあると仮定して、取り代dであるときの放電曝露面と放電非曝露面との分岐点DPから相対移動軌跡OPに下ろした垂線と相対移動軌跡OPとの交点(以下、分岐点対応点という)XDが所定の取り代drであるときの分岐点対応点に対して加工進行方向X+の手前側にある場合は、静電気力が放電曝露面との間にだけ生じるケースであり、先方側にある場合は、静電気力が放電非曝露面との間にも生じるケースである。したがって、取り代drを基準の取り代として取り代dと比較することで静電吸引力CFの計算方法を分けることができる。

0043

ここで、ワイヤ電極ELの半径をrとし、設定されている加工条件に従う放電ギャップをgとすると、分岐点DPから分岐点対応点XDまでの距離は、半径rと放電ギャップgの和から取り代dを引いた値である。したがって、取り代がdである加工工程におけるワイヤ電極ELの中心位置XOから分岐点対応点XDまでの長さxは、数1で求められる。

0044

0045

取り代dが基準の取り代drと等しいとき、長さxがワイヤ電極ELの半径rと一致する。このことは、基準の取り代drがワイヤ電極ELの半径rと放電ギャップgに密接に関係していることを示す。加工計画におけるオフセット値は、ワイヤ電極ELの半径rと放電ギャップgと取り代dと残し代との総和であるので、設定されている加工条件に基づいて放電ギャップgが特定されると、数2によって基準の取り代drを得ることができる。

0046

0047

平均加工電圧が与えられると加工速度が決定するサーボ系の場合、設定されている電気的な加工条件が変わらないとき、取り代の変化に対応して平均加工電圧が変動する。そのため、初期設定の加工条件で予定の取り代d0である場合に静電吸引力CF0と放電反発力EF0が釣り合うときの適正平均加工電圧V0と取り代d0との関係に基づいてi番目の所定単位期間における適正平均加工電圧がViのときの取り代diが推定される。

0048

適正平均加工電圧Vのときの取り代dが基準の取り代dr以上のときは、ワイヤ電極ELと被加工物WPとは、図2に示される位置関係にある。このときのワイヤ電極ELと被加工物WPとの間に発生する静電気力ωは、幾何学的に求めることができる。そこで、図2に示される静電気力が発生する領域の全体形状から領域αと領域βとに分けてそれぞれの領域における静電気力を計算する。

0049

領域αにおける静電気力ωαが作用するワイヤ電極ELの表面から被加工物WPの加工後側面SPまでの垂直距離は、ワイヤ電極ELの後端位置XSから中心位置XOまでの間で加工進行方向X+に距離xi離れるに従ってワイヤ電極ELの半径rと放電ギャップgの和から距離yi徐々に小さくなり、距離xiがワイヤ電極ELの半径rと等しくなる中心位置XOで放電ギャップgと等しくなる。したがって、領域αにおける静電気力ωαは、数3で表わすことができる。ただし、ワイヤ電極ELの中心位置XOの位置座標値を0とする。また、このときの適正平均加工電圧がVであるとする。

0050

0051

領域βにおける静電気力が作用するワイヤ電極ELの表面から被加工物WPの加工除去面SQまでの垂直距離は、ワイヤ電極ELの中心位置XOから先端位置XEまでの間で加工進行方向X+に距離xi離れるに従って放電ギャップgから距離r−yi−di徐々に大きくなる。取り代diは、数2と同じように三平方定理で求めることができる。したがって、領域βにおける静電気力ωβは、数4で表わすことができる。ただし、ワイヤ電極ELの中心位置XOの位置座標値を0とする。また、このときの適正平均加工電圧がVであるとする。

0052

0053

領域αにおける静電気力ωαと領域βにおける静電気力ωβとの和が静電気力ωであり、静電吸引力CFは、静電気力ωの加工進行方向X+に直交する方向の成分(垂直成分)に相当する。実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、予定の取り代d0において静電吸引力CF0と放電反発力EF0が釣り合っていることを前提にして変化する取り代diにおける静電吸引力CFiを計算するので、ここでは、数5で表わされるように、仮に静電気力ωを静電吸引力CFとしておく。

0054

0055

取り代が加工進行方向X+に対してワイヤ電極ELの両側に及ぶ場合は、ワイヤ電極ELが加工溝に挟まれる状態になる。そこで、片側の加工面に対して反対側の加工面に発生する静電気力を相殺するようにして静電吸引力CFを計算する必要がある。ただし、ワイヤ電極ELが加工溝に挟まれるような加工は、本質的には荒加工工程に相当するので、現実的にはセカンドカット以降の仕上げ加工工程で存在しない。したがって、ワイヤ電極ELが加工溝に挟まれるケースは、実用上は電子計算機における演算プロセス中断させないための計算工程として予備的に与えられるものであって、実質的には考慮する必要はない。

0056

適正平均加工電圧Vのときの取り代dが基準の取り代drよりも小さいときは、ワイヤ電極ELと被加工物WPとは、図3に示される位置関係にある。このときのワイヤ電極ELと被加工物WPとの間に発生する静電気力ωは、幾何学的に求めることができる。そこで、図3に示される静電気力が発生する領域の全体形状から領域αと領域βと領域γに分けてそれぞれの領域における静電気力を計算する。

0057

図3における領域αは、図2に示される領域αと同じであるから、領域αにおける静電気力ωαは、数3で得ることができる。また、図3における領域βにおける静電気力ωβは、ワイヤ電極ELの中心位置XOから分岐点対応点XDまでの間で垂直距離が図2における領域βと同じように変化するので、垂直距離が変化する加工進行方向X+における範囲を長さxに置き換えて、数4を適用して求めることができる。ただし、ワイヤ電極ELの中心位置XOの位置座標値を0とする。また、このときの適正平均加工電圧がVであるとする。

0058

領域γにおける静電気力が作用するワイヤ電極ELの表面から放電非曝露面に相当する被加工物WPの加工前側面SRまでの垂直距離は、分岐点対応点XDからワイヤ電極ELの先端位置XEまでの間で加工進行方向X+に距離xi−x離れるに従って距離g−dから距離r−yi徐々に大きくなり、ワイヤ電極ELの先端位置XEでワイヤ電極ELの半径rと放電ギャップgの和から取り代dを引いた距離になる。したがって、領域γにおける静電気力ωγは、数6で表わすことができる。ただし、ワイヤ電極ELの中心位置XOの位置座標値を0とする。また、このときの適正平均加工電圧がVであるとする。

0059

0060

領域αにおける静電気力ωαと領域βにおける静電気力ωβと領域γにおける静電気力ωγの総和が静電気力ωであり、静電吸引力CFは、静電気力ωの垂直成分に相当する。実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、予定の取り代d0において静電吸引力CF0と放電反発力EF0が釣り合っていることを前提にして変化する取り代diにおける静電吸引力CFiを計算するので、ここでは、数7で表わされるように、仮に静電気力ωを静電吸引力CFとしておく。

0061

0062

図4は、ワイヤ電極ELと被加工物WPを上から見たときの被加工物WPの上面における平面図である。図4は、ワイヤ電極ELと被加工物WPとの間に形成される加工間隙に発生する放電にともなって生じる放電衝撃力を示す。加工進行方向に直交する方向にワイヤ電極ELに作用する放電反発力EFは、所定単位期間に発生する複数の放電による放電衝撃力の成分を合成して表わされる合成衝撃力υの加工進行方向X+に直交する方向の成分(垂直成分)に相当する。

0063

放電衝撃力は、放電ギャップgの存在し得る加工間隙において発生する。加工間隙は、ワイヤ電極ELの中心位置XOから取り代dである加工工程における加工形状軌跡MPに下ろした垂線との交点(以下、中心点対応点という)MOと分岐点DPまでの間の加工除去面SQとワイヤ電極ELとの間に形成される。そのため、放電一発毎の放電点は不定であるが、所定単位期間における複数の放電に因る衝撃力の合成衝撃力υは、加工除去面SQにおける中心点対応点MOで発生する放電に因る放電衝撃力υ0と分岐点DPで発生する放電に因る放電衝撃力υ1までの放電衝撃力の平均とみなすことができる。

0064

したがって、合成衝撃力υは、加工除去面SQにおける除去面積が半分になる位置DHで作用すると仮定する。除去面積が半分になる位置DHは、凡そ取り代dの半分の取り代になる位置に相当する。加工進行方向X+に直交する方向にワイヤ電極ELに作用する放電反発力EFは、合成衝撃力υの垂直成分であるから、中心点対応点MOで生じる放電衝撃力υ0の垂直成分と分岐点DPで生じる放電衝撃力υ1の垂直成分との和の半分に等しい。

0065

ここで、ワイヤ電極ELの中心位置XOから分岐点対応点XDまでの距離xは、数1で計算されるので、ワイヤ電極ELの撓み量が実質0であるときの中心点対応点MOで生じる放電衝撃力υ0の成分と分岐点DPで生じる放電衝撃力υ1の成分とがなす角度θは、数8で求められる。また、初期設定の加工条件で予定の取り代d0におけるワイヤ電極ELの撓み量が0であるときの中心点対応点MOで生じる放電衝撃力の成分と分岐点DPで発生する放電衝撃力の成分とがなす角度θ0も同様に数8で求められる。

0066

0067

実際の加工では、予定の取り代d0においてワイヤ電極ELの撓み量を実質0にする静電吸引力CF0と釣り合っている放電反発力EF0が生じる放電エネルギを与える加工条件が設定されるわけであるから、加工中に取り代が変わって取り代diとなり、合成衝撃力υの方向が変わったときの静電吸引力CFiと釣り合う放電反発力EFiは、設定されている加工条件において発生する放電反発力EF0の成分に対する放電反発力EFiの割合で算出できる。よって、予定の取り代d0が取り代diに変化したときの放電反発力EFiは、数9で求めることができる。

0068

0069

平均加工電圧が与えられると加工速度が決定するサーボ系では、設定されている加工条件において、変化する取り代diで変動する適正平均加工電圧Viに対応して静電吸引力CFiとそれに釣り合う放電反発力EFiとを求めることができる。そのため、設定されている加工条件の組合せで予定の取り代d0を加工するときの静電吸引力CF0と放電反発力EF0とが釣り合う適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0を基準にして、変化する取り代diにおける適正平均加工電圧Viと適正加工速度Fiを得ることができる。

0070

そこで、設定されている加工条件の組合せで予定の取り代d0における静電吸引力CF0と放電反発力EF0とが釣り合っている基準となる初期の適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0を予め求めておく必要がある。実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、初期の適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0を計算で求めたとしても実際にワイヤ電極ELの撓み量が実質0になるかどうかを検証することが要求されるから、当初から試験加工を行なってワイヤ電極ELの撓み量が実質0である正確な適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0を得るようにしている。

0071

図5は、本発明のワイヤカット放電加工方法に適用されるサーボ装置のサーボ特性の例を示す。取り代diに対応して静電吸引力CFiと放電反発力EFiが釣り合う適正加工速度Fiでワイヤ電極ELを相対移動させるためには、所定単位期間毎に取り代dが変わることで変動する平均加工電圧Viを検出し、検出される平均加工電圧Viに応答して適正加工速度Fiにすることができるサーボ特性のサーボ装置が適用される。

0072

本発明のワイヤカット放電加工方法で適用し得る最適なサーボ装置は、図5点線で示されるような検出される平均加工電圧に対して静電吸引力と放電反発力を釣り合う適正加工速度になる理想的なサーボ曲線が得られるサーボ特性を有する。しかしながら、適正平均加工電圧Vに応答して適正加工速度Fが得られるサーボ曲線を変更調整して設定することは、熟練操作者であっても極めて困難である。

0073

そこで、実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、図5実線で示されるようなサーボ曲線が得られるサーボ特性を有するサーボ装置が適用される。実加工における取り代の変化に対応して取り得る適正平均加工電圧の範囲は、図5に示されるサーボ曲線上の特定の範囲Vkに限定される。特定の範囲Vkでは、点線で示される理想的なサーボ曲線に対する実線で示されるサーボ曲線との差は僅かであって、最大許容誤差1μm前後程度では、加工形状精度上、全く問題にならないことが判明している。

0074

ここで、放電電流パルスの時間幅が一定の放電加工回路(以下、オンクランプ回路という)の場合、所定単位期間における加工間隙の電圧の平均である平均加工電圧Vは、数10のとおり、放電周期における無負荷時間TWにおける無負荷電圧Vpと放電時間ONにおける加工電圧Vgの総和を無負荷時間TWと放電時間ONと休止時間OFとを合わせた放電周期で除して求めることができる。

0075

0076

試験加工によって初期設定の加工条件で予定の取り代d0における初期の適正平均加工電圧V0が得られている。また、無負荷電圧Vpは、直流電源の電圧に等しく、ワイヤ電極ELと被加工物WPの材質の組合せにおいて所定の加工条件で加工に寄与する正常放電が発生して放電電流が供給されているときの放電電圧Vgは、ほぼ一定である。例えば、ワイヤ電極ELの材質が黄銅で被加工物WPの材質が鉄または超硬であるときの放電電圧Vgは、約20Vである。したがって、初期設定の加工条件で予定の取り代d0における静電吸引力CF0と放電反発力EF0が釣り合っているときの無負荷時間TW0は、数11で求められる。

0077

0078

ワイヤカット放電加工の仕上げ加工工程における放電一発毎の放電時間ONは、放電周期全体の中では無視できる極短時間であるので、取り代diで静電吸引力CFiと放電反発力EFiが均等であるとしたときの無負荷時間TWiは、取り代d0における静電吸引力CF0と放電反発力EF0が均等であることから放電反発力EP0を静電吸引力CF0に代入して数12で計算できる。ただし、放電時間ONを考慮して無負荷時間TWiを計算することを否定するものではない。

0079

0080

既述のとおり、平均加工電圧Vは、数10によって求めることができる。所定単位期間において平均加工電圧Vが変動したときに静電吸引力CFiと放電反発力EFiが釣り合っているときの無負荷電圧TWiが数12で得られているので、したがって、所定単位期間における静電吸引力CFiと放電反発力EFiが釣り合う適正平均加工電圧Viは、数13によって求められる。

0081

0082

図5の実線で示されるようなサーボ曲線が得られるサーボ特性である場合、加工速度Fは、実加工上有効な特定の範囲Vkにおいて平均加工電圧Vに応答して比例的に変化するから、予定の取り代d0で適正平均加工電圧V0に対して適正加工速度F0であるときから、取り代が取り代diに変わって適正平均加工電圧Viに変動したとすると、適正加工速度Fiは、数14で求めることができる。

0083

0084

試験加工で得られている取り代d0でワイヤ電極ELの撓み量が実質0である初期の適正平均加工電圧V0に対応する初期の適正加工速度F0は信頼できるデータであるから、図5に示されるように、複数の取り代毎に数13と数14で求められる適正平均加工電圧Viと適正平均加工電圧Viに対応する適正加工速度Fiの複数のデータをプロットして適正平均加工電圧V0で適正加工速度F0のときのデータを中心に各データを接続すると、適正平均加工電圧Vi毎に適正加工速度Fiで相対移動するような要求されるサーボ曲線(近似曲線を含む)を得ることができる。

0085

実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、静電吸引力CFと放電反発力EFとが常に釣り合う適正平均加工電圧Vに対応する適正加工速度Fが得られるサーボ曲線を特定種類の加工条件のパラメータを設定することで変更調整して設定できるようにしている。具体的には、加工条件のパラメータとして平均加工電圧に対する加工速度の値を変化させるサーボ速度が設けられる。サーボ速度を設定して平均加工電圧に対する加工速度を変化させるということは、サーボ曲線の変化率速度比率)を変えることと同義である。特に、サーボ曲線が直線であるときは、実質的にサーボ曲線の傾きを変えることに相当する。

0086

したがって、設定されている加工条件で予定の取り代d0のときに静電吸引力CF0と放電反発力EF0が釣り合う適正平均加工電圧V0と適正加工速度F0に基づいて複数の取り代di毎に静電吸引力CFiと放電反発力EFiを計算し、静電吸引力CFiと放電反発力EFiとが釣り合う適正平均加工電圧Viと適正加工速度Fiを求めて、加工条件(サーボ条件)であるサーボ速度を設定することで適正平均加工電圧Viに対して適正加工速度Fiが得られるサーボ曲線を設定するようにする。

0087

そのため、加工中に所定単位時間毎に平均加工電圧Vを検出して、検出される平均加工電圧Vに応答して平均加工電圧Vで決定する加工速度Fでワイヤ電極ELを加工送りさせるとき、適正平均加工電圧Viに対して適正加工速度Fiが得られる設定されたサーボ曲線に従って検出される平均加工電圧Viに応答して適正加工速度Fiで加工送りされる。

0088

このようなことから、予定の取り代d0が取り代diに変わると加工間隙の初期の平均加工電圧V0が適正平均加工電圧Viに変動し、所定単位期間後に極間電圧検出装置7が適正平均加工電圧Viを検出する。サーボ装置8は、設定されいてるサーボ曲線に従って適正平均加工電圧Viに応答して適正加工速度F0を適正加工速度Fiに変更し、ワイヤ電極ELは、静電吸引力CFiと放電反発力EFiとが釣り合ってワイヤ電極ELの撓み量が実質0になる適正加工速度Fiで加工送りされる。その結果、仕上げ加工工程で取り代の変化に関係なく加工面が湾曲に形成されず、加工形状精度が一層向上する。

0089

また、実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、操作者は、サーボ速度を設定することでサーボ曲線を設定するだけであるから、操作者の負担が増大しない利益がある。さらに、放電加工機を提供するメーカの作業者は、いくつかの試験加工を行なって複数種類の加工条件の組合せと取り代毎の適正平均加工電圧と適正加工速度を記憶装置に与えておくことでワイヤ電極の撓み量が実質0にできる加工を実施できるようにさせておくことができるから、メーカの作業者の負担が軽減される点で有利である。しかも、サーボ曲線に従って適正加工速度で加工するから、電気的な加工条件に影響がなく、目的の加工に支障をきたさない。

0090

放電電流パルスの時間幅が一定ではない放電加工回路(以下、マルチ発振回路という)の場合、所定単位期間における無負荷時間TWを放電周期から求めることができない。しかしながら、マルチ発振回路は、極めて短い時間幅の放電電流パルスを供給するときに使用される放電加工回路であるため、放電電流パルスのオン時間である放電時間ONの放電周期全体の時間に占める割合が極僅かであり、80V以上の無負荷電圧Vpに対して放電電圧Vgが20V程度と低いところから、静電吸引力CFと放電反発力EFが釣り合う適正平均加工電圧Vは、殆んど無負荷時間TWにおける無負荷電圧Vpに依存していると言える。

0091

そのため、予定の取り代d0が取り代diに変わって静電吸引力CF0が静電吸引力CFiに変動し放電反発力EF0が放電反発力EFiに変動して釣り合っているとするならば、無負荷時間TWiが判らなくても、そのときの適正平均加工電圧Viは、所定単位期間における無負荷電圧Vpの割合がどの程度であるかで求めることができる。したがって、所定単位期間における無負荷電圧Vpに対する適正平均加工電圧Vの比率を“無放電比”Pとして、取り代diのときの無放電比Piであるときに、数15で求めることができる。

0092

0093

ここで、設定されている加工条件で予定の取り代d0のときの無負荷電圧Vpが一定であり、静電吸引力CF0と放電反発力EF0が釣り合っている適正平均加工電圧V0は、試験加工などによって信頼できる数値が判っているから、取り代d0のときの無放電比P0は、数16で得られる。

0094

0095

初期の適正平均加工電圧V0が適正平均加工電圧Viに変動して、静電吸引力CFiと放電反発力EFiがなお釣り合っているわけであるから、変化する取り代diにおける無放電比Piは、数17のとおり、予定の取り代d0における無放電比P0に静電吸引力CF0と放電反発力EP0との比を乗じて求めることができる。

0096

0097

加工速度Fは、設定されているサーボ曲線に従って平均加工電圧Vに比例的に増減する。無放電比Pは、無負荷電圧Vpに対する平均加工電圧Vの割合であるから、予定の取り代d0が取り代diに変わって適正平均加工電圧Viが変動し無放電比P0から無放電比Piに変化したとすると、適正加工速度Fiは、数18のとおり、適正加工速度F0から適正加工速度Fiに変わるときの取り代dの変化に対応する無負荷電圧Vpの割合の変化率で得ることができる。

0098

0099

設定される複数種類の加工条件の組合せにおいて、複数の平均加工電圧Viに対応する適正加工速度Fiのデータを得ることができたら、オンクランプ回路の場合と同様に、複数の取り代di毎に静電吸引力CFiと放電反発力EFiを計算し、静電吸引力CFiと放電反発力EFiとが釣り合う適正平均加工電圧Viと適正加工速度Fiを求めて、サーボ速度を設定することで常に適正平均加工電圧Viに対して適正加工速度Fiが得られるサーボ曲線を設定する。

0100

実施の形態のワイヤカット放電加工方法では、具体的に図5に示されるサーボ曲線が得られるサーボ特性のサーボ装置を適用しているが、すでに説明されているように、特定の期間Vkにおいて、平均加工電圧Viが与えられるときに静電吸引力CFiと放電反発力EFiが釣り合う適正加工速度Fiになるサーボ曲線を得るサーボ特性を有するサーボ装置であるならば、他のサーボ特性を有するサーボ装置であっても適用することができる。また、加工中に適正平均加工電圧Viと適正加工速度Fiを求めてサーボ速度を変更設定し、サーボ曲線を設定しながら加工を進めるようにすることができる。

0101

以上に説明される実施の形態のワイヤカット放電加工方法およびワイヤカット放電加工装置は、すでにいくつかの変形例が示されているように、本発明の技術思想を逸脱せず、本発明の作用効果を得ることができる範囲内で適宜変形することができ、または他の発明と組み合わせて応用することが可能である。

0102

本発明は、放電加工による金型加工部品加工、工具電極加工のような金属製品精密加工に有益である。本発明は、試験加工の回数を大幅に減らし、操作が容易で、金属製品の加工形状精度を一層向上させ、金属加工の技術の発展に寄与する。

0103

1コンピュータ数値制御装置
2モータ制御装置
3移動装置
4位置検出装置
5加工条件設定装置
6加工電源装置
7極間電圧検出装置
8サーボ装置
10入力装置
20解読装置
30指令装置
40記憶装置
50演算装置
60サーボ条件設定装置
ELワイヤ電極
WP被加工物
CF静電吸引力
EF放電反発力
r ワイヤ電極の半径
g放電ギャップ
d取り代
x ワイヤ電極の中心位置から分岐点対応点までの距離

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ