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技術 水処理剤および水処理方法

出願人 伯東株式会社
発明者 伊藤賢一打田百合子
出願日 2009年8月28日 (10年6ヶ月経過) 出願番号 2009-198551
公開日 2011年3月10日 (9年0ヶ月経過) 公開番号 2011-045861
状態 特許登録済
技術分野 金属の防食及び鉱皮の抑制 スケール防止
主要キーワード 水温制御装置 保全費用 不動態化皮膜 析出傾向 微生物腐食 誘引通風 ケイ酸鉄 ブローダウン量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2011年3月10日)のものです。
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図面 (1)

課題

本発明の課題は、重金属リンなどの環境汚染物質を全く含有しないか、あるいは極めて低い濃度で使用しても金属の腐食抑制効果が優れており、水系における金属表面のスケール付着を抑制しながら腐食抑制を効果的に行うことができる腐食抑制剤および腐食抑制方法を提供することにある。

解決手段

(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を有効成分として含むことを特徴とする水処理剤、及び該共重合体を対象水系に添加することを特徴とする水処理方法、更に該共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを有効成分として含むことを特徴とする水処理剤、及び該共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを対象水系に添加することを特徴とする水処理方法。

概要

背景

冷却水系温水系、ボイラ水系洗浄水工程水系などの各種水系において、水と接する金属材料には腐食スケールが発生しやすい環境にある。そこで腐食防止剤スケール抑制剤として、従来よりクロム酸塩亜鉛塩モリブデン酸塩などの重金属、各種リン系化合物などが使用されてきた。しかし、近年の環境問題重視、例えば毒性の高いクロム酸塩や亜鉛などの重金属類の環境への排出問題、リンによる湖沼富栄養化閉鎖性海域における赤潮発生などから、これらの化合物や重金属類の排水濃度規制強化され、排出量低減の方向に向かっている。そこで、従来品に替わる環境調和型処理剤として、カルボン酸系重合体を用いた種々の方法が提案された。

例えば、(メタアクリル酸およびそのエステルなどのモノエチレン系不飽和モノマー無水マレイン酸の100:40〜100:1(モル比)の共重合体加水分解物を使用する方法(特許文献1参照)、無水マレイン酸30〜80重量%とエチルアクリレート10〜40重量%とスチレンまたは1−デセン10〜30重量%の三元共重合体を使用する方法(特許文献2参照)、マレイン酸イソブチレンとの共重合体を添加し、ランジェリア指数を1. 5以上かつシリカ濃度とCa硬度の積を2000以上として管理する腐食抑制方法(特許文献3参照)、無水マレイン酸80〜90モル%と炭素数5〜12のオレフィン10〜20モル%の共重合体加水分解物を用いた金属の腐食抑制方法(特許文献4参照)が開示されている。しかし、周辺環境への影響を考慮して、重金属、リンを含有せず、満足できる金属の腐食抑制効果スケール抑制効果を示すような方法は、未だ得られていない。

概要

本発明の課題は、重金属やリンなどの環境汚染物質を全く含有しないか、あるいは極めて低い濃度で使用しても金属の腐食抑制効果が優れており、水系における金属表面のスケール付着を抑制しながら腐食抑制を効果的に行うことができる腐食抑制剤および腐食抑制方法を提供することにある。 (1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を有効成分として含むことを特徴とする水処理剤、及び該共重合体を対象水系に添加することを特徴とする水処理方法、更に該共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを有効成分として含むことを特徴とする水処理剤、及び該共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを対象水系に添加することを特徴とする水処理方法。 なし

目的

本発明の課題は、重金属やリンなどの環境汚染物質を全く含有しないか、あるいは極めて低い濃度で使用しても水と接する金属の腐食抑制効果が優れており、水系における金属表面のスケール付着を抑制しながら腐食抑制を効果的に行うことができる水処理剤および水処理方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
3件

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請求項1

(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を有効成分として含むことを特徴とする水処理剤

請求項2

(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を対象水系に添加することを特徴とする水処理方法

請求項3

(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体とともに、スルホン酸基含有ポリマーを有効成分として含むことを特徴とする水処理剤。

請求項4

(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体とともに、スルホン酸基含有ポリマーを対象水系に添加することを特徴とする水処理方法。

技術分野

0001

本発明は、工業用水系冷却水系温水系、ボイラ水系洗浄水工程水系、排水系などの各種水系における水と接する金属材料表面スケール付着抑制と腐食抑制を効果的に行うことができる水処理剤および水処理方法に関する。

背景技術

0002

冷却水系、温水系、ボイラ水系、洗浄水、工程水系などの各種水系において、水と接する金属材料には腐食スケールが発生しやすい環境にある。そこで腐食防止剤スケール抑制剤として、従来よりクロム酸塩亜鉛塩モリブデン酸塩などの重金属、各種リン系化合物などが使用されてきた。しかし、近年の環境問題重視、例えば毒性の高いクロム酸塩や亜鉛などの重金属類の環境への排出問題、リンによる湖沼富栄養化閉鎖性海域における赤潮発生などから、これらの化合物や重金属類の排水濃度規制強化され、排出量低減の方向に向かっている。そこで、従来品に替わる環境調和型処理剤として、カルボン酸系重合体を用いた種々の方法が提案された。

0003

例えば、(メタアクリル酸およびそのエステルなどのモノエチレン系不飽和モノマー無水マレイン酸の100:40〜100:1(モル比)の共重合体加水分解物を使用する方法(特許文献1参照)、無水マレイン酸30〜80重量%とエチルアクリレート10〜40重量%とスチレンまたは1−デセン10〜30重量%の三元共重合体を使用する方法(特許文献2参照)、マレイン酸イソブチレンとの共重合体を添加し、ランジェリア指数を1. 5以上かつシリカ濃度とCa硬度の積を2000以上として管理する腐食抑制方法(特許文献3参照)、無水マレイン酸80〜90モル%と炭素数5〜12のオレフィン10〜20モル%の共重合体加水分解物を用いた金属の腐食抑制方法(特許文献4参照)が開示されている。しかし、周辺環境への影響を考慮して、重金属、リンを含有せず、満足できる金属の腐食抑制効果スケール抑制効果を示すような方法は、未だ得られていない。

先行技術

0004

特公昭54−29998号公報
特許第2942991号公報
特公平4−33868号公報
特公平5−81320号公報

発明が解決しようとする課題

0005

本発明の課題は、重金属やリンなどの環境汚染物質を全く含有しないか、あるいは極めて低い濃度で使用しても水と接する金属の腐食抑制効果が優れており、水系における金属表面のスケール付着を抑制しながら腐食抑制を効果的に行うことができる水処理剤および水処理方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

本発明者は、ポリマーの合成技術と水に接する金属の腐食抑制効果ならびにスケール抑制効果の評価技術を駆使して、ポリマーの組成と水に接する金属の腐食抑制効果やスケール抑制効果との関係を鋭意検討した結果、イタコン酸を含む特定の共重合体が、イタコン酸ホモ重合体、マレイン酸ホモ重合体、フマル酸ホモ重合体などの単独重合体よりスケール防止効果が格段に大きくなり、卓越した腐食抑制効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。

0007

すなわち、請求項1に係る発明は、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を有効成分として含むことを特徴とする水処理剤である。

0008

請求項2に係る発明は、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を対象水系に添加することを特徴とする水処理方法である。

0009

請求項3に係る発明は、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体とともに、スルホン酸基含有ポリマーを有効成分として含むことを特徴とする水処理剤である。

0010

請求項4に係る発明は、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体とともに、スルホン酸基含有ポリマーを対象水系に添加することを特徴とする水処理方法である。

発明の効果

0011

本発明の水処理剤および水処理方法は、従来の重金属やリンなどを用いた水処理剤の腐食抑制効果と同程度以上の効果を有しているため、重金属やリンなどの環境汚染物質を全く含まないか、あるいは極めて低い濃度で使用でき、環境への影響がなく、かつ、スケール抑制効果も有するため、工場の安定操業、装置・設備保全費用の低減と安全運転に大きく寄与できる。

図面の簡単な説明

0012

実施例に使用した試験装置を示す系統図である。

0013

以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の水処理剤は、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を有効成分として含む。

0014

本発明で用いる共重合体は、イタコン酸系モノマーマレイン酸系モノマー及び/又はフマル酸系モノマーを共重合させて製造する。イタコン酸系モノマーとしては、イタコン酸およびその中和塩無水イタコン酸およびこれらの混合物などが挙げられる。上記中和塩としては、 例えばアルカリ金属塩(具体的にはカリウム塩ナトリウム塩など)、およびアンモニウム塩などが挙げられ、これらの1種以上であってもよい。マレイン酸系モノマーとしては、マレイン酸およびその中和塩、無水マレイン酸、およびこれらの混合物などが挙げられる。中和塩としては、上記イタコン酸系モノマーで例示したものと同じである。フマル酸系モノマーとしては、フマル酸およびその中和塩などが挙げられ、中和塩としては、上記イタコン酸系モノマーで例示したものと同じである。

0015

本発明で用いる共重合体におけるモノマー組成は、イタコン酸が10〜90重量%であるが、好ましくは40〜80重量%である。またマレイン酸とフマル酸の合計量は90〜10重量%であるが、好ましくは60〜20重量%である。

0016

本発明で用いる共重合体には、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸以外のその他のモノマーを、本発明効果を損なわない範囲で含有してもよいが、その含有範囲は全体のモノマー量の20重量%以下である。

0017

前記のその他のモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸クロトン酸などの不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアキルエステル類;(メタ)アクリルアミド;N‐アルキル置換(メタ)アクリルアミド類エチレンプロピレンイソプロピレンブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセンペンテンイソペンテン、オクテンイソオクテンなどのオレフィン類ビニルアルキルメチルエーテル類などがあげられ、これらの2種以上を用いてもよい。

0018

本発明で用いる共重合体の分子量は、通常は300〜3000、好ましくは400〜2000である。分子量がこの範囲を外れると、腐食抑制効果やスケール抑制効果が小さくなり好ましくない。なお、該共重合体はブロックまたはランダム共重合体の何れであってもよい。

0019

本発明で用いる共重合体の製造方法は特に限定されるものでなく、これら不飽和カルボン酸重合方法として一般に用いられている方法、すなわちモノマーである不飽和カルボン酸類を水溶液中、またはキシレントルエンイソプロピルアルコールなどの有機溶媒中で、過酸化水素過酸化ベンゾイル過硫酸塩、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの重合開始剤の存在下、必要に応じて重合調整剤を加えて加熱することにより製造される。

0020

本発明で用いる共重合体の分子量の調整は、重合開始剤の量、重合温度、重合時間、モノマー濃度、重合調整剤の種類や濃度、などを適宜変えることにより達成できる。重合反応の温度は重合開始剤の種類、溶媒の種類などにより異なるが、通常は還流温度または還流温度よりも低い温度に制御され、通常、40〜200℃の範囲である。重合開始剤は、重合反応開始時に一括添加するよりも、15分〜6時間程度かけて逐次的に滴下するのが好ましい。

0021

本発明で用いる共重合体の製造に用いる溶媒がトルエンやキシレンなどの非水系溶媒の場合、イタコン酸の替わりにイタコン酸エステル類や無水イタコン酸、マレイン酸の替わりに無水マレイン酸やマレイン酸エステル類、フマル酸の替わりにフマル酸エステル類などの非水系溶媒に溶解可能なモノマーを使用し、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの非水系溶媒に溶解可能な重合開始剤を用いる。無水物やエステルを含む共重合体を製造後、溶媒をデカンテーション蒸発により除去して、水を加えて加熱しながらエステルや無水物を加水分解して目的とする水溶性の共重合体を得ることができる。しかしながら、非水系溶媒中における重合では溶媒の除去工程や加水分解工程が必要であるため、操作が煩雑なだけでなく、これらの工程で使用される加熱用エネルギーコストや溶媒の費用が大きく、経済的でない。また、有害な有機溶媒が大気中や排水や土壌などに放出された場合の、環境へ人体への影響も無視できない。

0022

このため、本発明で用いる共重合体の製造法では、溶媒除去工程や加水分解工程が不要な水系重合法で製造することが好ましい。溶媒として主に水を使用した水系重合法の場合、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの水に溶解可能なモノマーを使用して、過酸化水素、過硫酸塩、水溶性アゾ系触媒などの水に溶解可能な重合開始剤を用いて製造される。ただし、このままでは、重合の反応率を十分上げることができず、かなりの量の未反応のイタコン酸、マレイン酸及び/又はフマル酸が残留するため、十分な腐食抑制効果やスケール抑制効果を得ることが難しい。

0023

そこで、水系重合法による該共重合体を収率よく合成するために共重合体の重合の際、イタコン酸、マレイン酸及び/又はフマル酸などのモノマーとともに、水酸化ナトリウム水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加することが好ましい。ここで使用されるアルカリ金属水酸化物の量は、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸の合計モル数に対してアルカリ金属水酸化物を0.2〜2のモル比で添加するのが好ましい。アルカリ金属水酸化物は重合の開始前に一括添加するか、あるいは重合反応段階で重合開始剤とともに逐次的添加あるいは一括添加する。

0024

水系重合法による共重合体の製造では、全体の製造仕込み量に対するモノマーの配合量は特に制限はないが、通常は10〜60重量%の範囲である。また、モノマーの添加時期として、イタコン酸は重合開始前に水とともに一括添加してもよく、重合反応段階で逐次的添加あるいは一括添加してもよいが、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸は重合開始前に水とともに一括添加するのが好ましい。

0025

水系重合法における重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸塩のいずれかを単独で使用するよりも、過酸化水素と過硫酸塩を併用することが好ましい。重合開始剤の量は、水系重合法による共重合体を収率よく合成するために製造仕込み量に対して過酸化水素が0.5〜20重量%、過硫酸塩が0.1〜5%重量の範囲が好ましく、重合反応温度は60〜120℃の範囲が好ましい。

0026

更に、水系重合では重合開始剤とともにレドックス触媒を添加するのが好ましい。好ましいレドックス触媒は、還元可能なカチオンであり、鉄、亜鉛、コバルトモリブデンクロムニッケルバナジウムおよびセシウムおよびそれらの組み合わせから得られる金属イオンを含む。好ましい金属イオンは硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄コバルト塩(例えば、硫酸コバルト六水和物)、バナジウム塩およびそれらの組み合わせである。レドックス触媒の量は、製造仕込み量に対して金属換算で0.001〜0.1重量%の範囲が好ましい。

0027

前記のアルカリ金属水酸化物の量、重合開始剤の量、金属触媒の量のいずれかが上記の範囲を外れると、モノマー反応率が十分上がらず、かなりの量の未反応のモノマーが残留するため、十分な腐食抑制効果やスケール抑制効果を得ることが難しい。

0028

さらには、水系重合の重合調整剤としてイソプロピルアルコール、2−ブチルアルコールなどの2級アルコール重亜硫酸塩亜硫酸塩などを添加してもよい。

0029

本発明で用いる共重合体を水系重合法で製造する場合に、共重合体におけるイタコン酸の比率が高いと発泡が生じ易いため、消泡剤を添加するのが好ましい。ここで使用する消泡剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級アルコールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物などの曇点が20℃以上のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤が、常温において水溶液中での分離を生じないため好ましい。

0030

本発明で用いるスルホン酸基含有ポリマーは、モノエチレン性不飽和スルホン酸を含有する重合体であり、好ましくはモノエチレン性不飽和スルホン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、あるいはモノエチレン性不飽和スルホン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸と他の共重合可能モノエチレン性不飽和単量体との共重合体であって、該共重合体におけるモノマー組成は、モノエチレン性不飽和スルホン酸が10〜90重量%であるが、好ましくは30〜70重量%であり、またモノエチレン性不飽和カルボン酸と他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体の合計量は10〜90重量%であるが、好ましくは30〜70重量%である。

0031

前記のモノエチレン性不飽和スルホン酸としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ブタジエンスルホン酸やイソプレンスルホン酸等の共役ジエンスルホン化物スチレンスルホン酸スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテルスルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸などの1種以上が用いられる。

0032

前記のモノエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの1種以上が用いられ、他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド類の(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテンなど;ビニルアルキルエーテルビニルメチルエーテルビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステルなどがあげられ、その1種または2種以上が用いられる。

0033

本発明で用いるスルホン酸基含有ポリマーは、好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と(メタ)アクリル酸の共重合体、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸と(メタ)アクリル酸の共重合体、共役ジエンスルホン化物と(メタ)アクリル酸の共重合体である。スルホン酸基含有ポリマーの分子量は、重量平均分子量として通常は1,000〜100,000であり、好ましくは4,000〜20,000である。

0034

本発明の水処理剤は、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重量比率が10〜90:90〜10であり、かつ(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%以上である共重合体を有効成分として含むことを特徴とし、その調製方法は、非水系溶媒を用いて重合後に得られた共重合体を加水分解して調製する水溶性の該共重合体の水溶液や、水系重合法によって得られる水溶性の該共重合体の水溶液をそのまま用いることができる。更に、取扱い上の必要に応じて、該共重合体水溶液を水で希釈して水処理剤を調製してもよい。また、本発明の、該共重合体とともにスルホン酸基含有ポリマーを有効成分として含むことを特徴とする水処理剤は、該共重合体水溶液と該スルホン酸基含有ポリマー水溶液を常温で撹拌混合することによって調製することができ、両者の混合順序に特に決まりはない。この水処理剤における該共重合体:スルホン酸基含有ポリマーの配合重量比率は90:10〜10:90の範囲であるが、好ましくは70:30〜30:70である。また、このようにして調製された水処理剤は、取扱い上の必要に応じて水で希釈することもできるし、水処理剤調製時に水を加えて希釈した形態の水処理剤を調製することもできる。

0035

本発明の水処理方法では、本発明の水処理剤を対象水系に添加する方法、本発明で用いる共重合体を対象水系に添加する方法、及び本発明で用いる共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを対象水系に別個に添加する方法があり、共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを別個に添加する場合の添加重量比率は、(該共重合体):(スルホン酸基含有ポリマー)が90:10〜10:90の範囲であるが、好ましくは70:30〜30:70の範囲である。

0036

本発明の水処理剤の対象水系への添加量は、対象とする水系の条件、特に水質、温度などにより異なるが、一般的には配合された共重合体の有効成分濃度として1〜1,000mg/L、好ましくは5〜500mg/L、より好ましくは10〜100mg/Lであり、また、共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを有効成分として含む水処理剤におけるスルホン酸基含有ポリマーの添加量は、一般的には配合されたスルホン酸基含有ポリマーの有効成分濃度として1〜1,000mg/L、好ましくは5〜500mg/L、好ましくは10〜100mg/Lである。

0037

また、本発明で用いる共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを対象水系に別個に添加する場合も、それぞれの添加量は対象とする水系の条件、特に水質、温度などにより異なるが、一般的には該共重合体、スルホン酸基含有ポリマーともにそれぞれ有効成分濃度として1〜1,000mg/L、好ましくは5〜500mg/L、より好ましくは10〜100mg/Lである。

0038

本発明の水処理剤の対象水系への添加、本発明で用いる共重合体の対象水系への添加、あるいは共重合体とスルホン酸基含有ポリマーの対象水系への別個添加においては、薬注ポンプを用いて対象水系のスケールや腐食が発生する箇所の上流部であって撹拌の良い場所に添加する。尚、対象水系が循環水系である場合は、水系のいずれの場所にも添加できるが、一般的には循環水槽の撹拌の良い場所に添加することが容易である。

0039

本発明の水処理剤および水処理方法は、炭酸カルシウム硫酸カルシウム珪酸マグネシウムシリカなどの各種スケールに対する析出防止や付着防止効果も有するため、スケール性の厳しい水質へも適用できる。

0040

本発明の水処理剤および水処理方法を適用する水質は、pHが6以上、好ましくはpHが8〜9.5の範囲であり、腐食抑制の観点からは、pH、Ca硬度、Mアルカリ度ならびにシリカ濃度が高いスケール性水質の方が好ましい。ここで、具体的にスケール性水質とは、リツナー指数RIを6.0以下、好ましくは5.0以下であり、RIがこの範囲になるように水系の水質を調整するのが好ましい。

0041

ここで、具体的にスケール性水質とは、リツナー指数:RIを6.0以下、好ましくは5.0以下であり、RIがこの範囲になるように水系の水質を調整するのが好ましい。
ここでRIは、炭酸カルシウムの析出傾向を示す指数であり、次式により計算される。
RI=2×pHs−pH
また、pHは循環水のpHであり、pHsは式(1)で示される炭酸カルシウムの飽和pHである。

0042

ここで、
pK2:炭酸の第2解離定数
pKs:炭酸カルシウムの溶解度積
pCa=−log[Ca硬度](mg−CaCO3/L)
pA=−log[Mアルカリ度](mg−CaCO3/L)
μ:イオン強度であり、次式で算出される。
μ=[電気伝導率](μS/cm)×0.0000175

0043

開放式循環冷却水系では、多数の熱交換器を有しており、運転条件絶えず変化することから、系内の温度分布を正確に把握することが困難である。そのため、本発明の計算に使用する温度は、開放式循環冷却水系における熱交換器の出口水の典型的な温度である40℃を用いる。40℃におけるpK2は10.2、また pKsは8.5である。pCa、pA、μは循環水のCa硬度、Mアルカリ度、電気伝導率をJIS K0101(工業用水試験方法)に記載の方法により測定して前述の式に代入して求めることができる。

0044

水系のRIを調整する方法は、通常、水系の濃縮度を上昇させて、補給水中に含まれるCa硬度とMアルカリ度成分の濃度やpHを上昇させることにより達成される。ただし、補給水中に含まれるCa硬度やMアルカリ度成分の濃度が十分小さい場合や濃縮度の上昇が困難な場合は、水系のRIを6以下あるいは5以下とすることが困難な場合がある。このような場合は、本発明の共重合体、あるいは本発明の共重合体とスルホン酸基含有ポリマーとともに少量の亜鉛やアルカリ性化合物を添加することにより、十分な腐食抑制効果を発揮させることができ、例えば、亜鉛化合物亜鉛換算で0.2〜3mg/L程度添加することにより、RIが6以上の腐食性水質であっても十分な腐食抑制効果を発揮させることができる。あるいは、水系のRIが6以下、あるいは5以下となるようにアルカリ性化合物を添加することにより、補給水中に含まれるCa硬度やMアルカリ度成分の濃度が少ない場合や濃縮度の上昇が困難な場合でも、アルカリ性化合物の添加量を調整することによりすることができる。

0045

ここで使用されるアルカリ性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム炭酸ナトリウム炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩重炭酸塩などである。

0046

水系の運転開始時には、本発明の本発明の共重合体、あるいは本発明の共重合体とスルホン酸基含有ポリマーとともに縮合リン酸塩を併用するのが好ましい。縮合リン酸塩は縮合度2以上のリン酸塩であるが、ピロリン酸塩(縮合度2)、トリポリリン酸塩(縮合度3)、テトラポリリン酸塩(縮合度4)、ヘキサメタリン酸塩などが使用できる。ここで一般に、ヘキサメタリン酸ナトリウム商品名で市販されているのは、平均縮合度が10以上の鎖状縮合リン酸塩であるが、より好ましい縮合リン酸塩は、平均縮合度が30〜100の鎖状縮合リン酸塩である。水系の運転開始時における縮合リン酸塩の添加量は通常3〜200mg/Lであるが、好ましくは5〜100mg/Lである。

0047

本発明の水処理剤および水処理方法が適用される被処理水系(対象水系)の水質は特に限定されないが、通常はpH6.0〜12.0、電気伝導率は5000μS/cm以下、Ca硬度ないしMg硬度は0〜1000mgCaCO3/L、Mアルカリ度は0〜500mgCaCO3/L、シリカは0〜250mg/L、塩化物イオンは0〜3000mg/L、硫酸イオンは0〜3000mg/L、全鉄は10ppm以下、好ましくは3ppm以下、アルミニウムは3mg/L以下、濁度ないし懸濁物質濃度は100度以下、好ましくは20度以下、リツナーの安定度指数は3.0以上、ランゲリア飽和指数は3.0以下の範囲である。

0048

本発明の水処理剤および水処理方法が適用される被処理水系の温度は特に限定されないが、通常は0〜300℃の範囲である。また、本発明の水処理剤および水処理方法が適用される被処理水系の流速は特に限定されないが、通常は0.1〜5.0m/sの範囲である。

0049

本発明の水処理剤および水処理方法が適用される被処理水系の半減時間は特に限定されないが、通常は300時間以下である。ここで半減時間は式:
半減時間〔h〕=(被処理水系の保有水量〔m3〕/ブローダウン水量〔m3/h〕)×0.693
で示される。

0050

本発明の本発明の共重合体、あるいは本発明の共重合体とスルホン酸基含有ポリマーとともに、腐食抑制剤として公知の別の種類の化合物、スケール抑制剤、スケール分散剤微生物障害抑制剤脱酸素剤pH調整剤清缶剤給復水系防食剤、消泡剤などの公知の化合物を併用して用いても良い。

0051

併用が好ましい腐食抑制剤としての化合物は、有機ホスホン酸ホスホノカルボン酸ホスフィノポリカルボン酸リン酸またはリン酸塩、及びモリブデン酸塩である。

0052

前記の有機ホスホン酸は、分子中に1個以上のホスホノ基を有する有機化合物であり、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アミノトリメチレンホスホン酸エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸などが挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸である。

0053

前記のホスホノカルボン酸は、分子中に1個以上のホスホノ基と1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物であり、具体的には2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸ホスホコハク酸などが挙げられ、好ましくは2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ホスホノポリマレイン酸である。ここで、ホスホノカルボン酸はローディア社からBRICORR288の商品名、またBWA社からBELCOR585の商品名で市販されている。ホスホノカルボン酸は、例えば、中性アルカリ性水性溶媒中で亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる(例えば特開平4−334392号公報参照)。また、ホスホノカルボン酸は、次亜リン酸カルボニル化合物イミン化合物との反応物反応開始剤の存在下で不飽和カルボン酸と反応させることにより得ることができる(特許第3284318号公報参照)。

0054

前記のホスフィノポリカルボン酸は、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、具体的にはアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるビスポリ(2−カルボキシエチルホスフィン酸、マレイン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、イタコン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ[2−カルボキシ−(2−カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物などが挙げられ、好ましくはアクリル酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物、イタコン酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物である。ホスフィノポリカルボン酸の調製は、通常、水性溶媒中で次亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより行なわれ、例えば特公昭54−29316号公報、特公平5−57992号公報、特公平6−47113号公報などに開示されている。また、ホスフィノポリカルボン酸は、バイオラボ社よりBELCLENE500、BELSPERSE164、BELCLENE400などの商品名で市販されている。

0055

本発明の水処理剤および水処理方法が対象とする水系設備の一部に銅、あるいは銅合金が存在する場合には、アゾール化合物を併用することが好ましい。アゾール化合物の例としてトリルトリアゾールベンゾトリアゾール置換ベンゾトリアゾールメルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。

0056

腐食やスケールとともに微生物障害は水系における主要な障害であるが、本発明の水処理剤および水処理方法では微生物の障害は防止できないので、微生物障害抑制剤を併用することが特に好ましい。併用される微生物障害抑制剤の例として、次亜塩素酸ナトリウム次亜塩素酸カルシウム液化塩素塩化臭素次亜塩素酸塩臭化物の反応物、クロロイソシアヌル酸類クロロジメチルヒダントイン酸類ブロモジメチルヒダントイン酸類、クロロブロモジメチルヒダントイン酸類等の水に溶解して次亜塩素酸及びまたは次亜臭素酸を生成する化合物;ヒドラジン;2−メチルイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−ジクロロイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン等のイソチアゾリン化合物;2,2−ジブロモ−2−ニトエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等の有機ブロム化合物メチレンビスチオシアネート、ビス−(1,4−ジブロムアセトキシ)−2−ブテンベンジルブロムアセテートソジウムブロマイド、α−ブロモシンナムアルデヒド、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛、2−(4−チアゾリルベンツイミダゾールヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ビス(トリクロルメチルスルホンジチオカーバメート、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオンブロム酢酸エチルチオフェニルエステル、α−クロ ルベンゾアルドキシムアセテート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、3−ヨード−2−プロペニルブチルカルバメートサリチル酸サリチル酸ナトリウムパラオキシ安息香酸エステル及びp−クロルm−キシレノール等が挙げられる。

0057

本発明の水処理剤および水処理方法において、併用するのが好ましい微生物障害抑制剤は、次亜塩素酸及びまたは次亜臭素酸を生成する化合物であるが、その添加量は遊離ハロゲン濃度(遊離塩素遊離臭素の合計)として通常0.05〜2mg/L(Cl2換算)である。

0058

本発明の水処理剤および水処理方法では、対象となる腐食の形態は特に限定されないが、全面腐食孔食隙間腐食酸素濃淡電池腐食、応力腐食割れガルバニック腐食微生物腐食、流れ誘起局部腐食エロージョンコロージョンキャビテーションコロージョン脱成分腐食脱亜鉛腐食などが含まれる。

0059

本発明の水処理剤および水処理方法は、スケール抑制効果を有するが、対象となるスケールの種類は特に限定されず、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩スケール;硫酸カルシウム、硫酸バリウム硫酸ストロンチウムなどの硫酸塩スケール;リン酸カルシウムリン酸亜鉛リン酸鉄リン酸アルミニウムなどのリン酸塩スケール;ケイ酸マグネシウムケイ酸カルシウムケイ酸アルミニウムケイ酸鉄ケイ酸亜鉛などのケイ酸塩スケール;無定形シリカスケール;水酸化マグネシウム水酸化アルミニウム酸化鉄水酸化鉄などが含まれる。

0060

ステンレス鋼チタン等の不動態化皮膜を形成する金属は、スケール付着部における隙間腐食を起因とした孔食や応力腐食割れが発生し易いが、本発明の水処理剤および水処理方法では、スケール付着を防止することにより、ステンレス鋼やチタン等の不動態化皮膜を形成する金属の腐食を間接的に防止することができる。

0061

以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0062

1.回転法による腐食抑制試験
(1)実施例に用いる共重合体
(重合体1)
500mLの5つ口フラスコに無水マレイン酸20重量部(0.20モル)、硫酸第一鉄7水和物0.03重量部、水40重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を23.8重量部(0.20モル)加えた。フラスコ冷却管攪拌機温度計窒素導入管滴下ロート取付け、全反応工程中、撹拌しながら窒素を連続的に通気した。液を90℃に加熱した後、イタコン酸20重量部(0.15モル)、48%水酸化カリウム水溶液9.0重量部(0.08モル)を水50重量部に溶解した液と35%過酸化水素16重量部と過硫酸ナトリウム0.6重量部を水24重量部に溶解した液をそれぞれ別個の滴下ロートに入れ、90℃に維持しながらそれぞれ2時間かけて滴下した。滴下終了後、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部を加えてから更に90℃を2時間維持し、重量平均分子量800のイタコン酸−マレイン酸(重量比46:54)共重合体を得た。高速液体クロマトグラフ法により残留モノマーを測定した結果、イタコン酸の反応率は100%、マレイン酸の反応率は88%であった。

0063

(重合体2〜重合体5)
無水マレイン酸とイタコン酸の仕込み量を変えた以外は、重合体1と同じ製造方法により表1に示す組成のイタコン酸−マレイン酸共重合体を製造した。

0064

(重合体6、重合体7)
過酸化水素と過硫酸ナトリウムの仕込み量を変えた以外は、重合体1と同じ製造方法により表1に示す組成のイタコン酸−マレイン酸共重合体を製造した。

0065

(重合体8)
無水マレイン酸20重量部の替わりにフマル酸20重量部を加えた以外は、重合体1と同じ製造方法によりイタコン酸−フマル酸(重量比50:50)共重合体を製造した。

0066

(重合体9)
500mLの5つ口フラスコにイタコン酸10重量部(0.08モル)、無水マレイン酸20重量部(0.20モル)、フマル酸10重量部(0.09モル)、硫酸第一鉄7水和物0.03重量部、水75重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を22.4重量部(0.19モル)加えた。フラスコに冷却管、攪拌機、温度計、窒素導入管、滴下ロートを取付け、全反応工程中、撹拌しながら窒素を連続的に通気した。液を90℃に加熱した後、35%過酸化水素16重量部と過硫酸ナトリウム0.6重量部を水24重量部に溶解した液を90℃に維持しながら90分間かけて滴下した。滴下終了後、更に90℃を2時間維持し、重量平均分子量800のイタコン酸−マレイン酸−フマル酸(重量比23:54:23)共重合体の23.9%水溶液を得た。高速液体クロマトグラフ法により残留モノマーを測定した結果、イタコン酸の反応率は100%、マレイン酸の反応率は90%、フマル酸の反応率は97%であった。

0067

(重合体10)
イタコン酸20重量部の替わりに、イタコン酸23.7重量部とアクリル酸11.8重量部とした以外は重合体1と同じ製造方法によりイタコン酸−マレイン酸−アクリル酸(重量比40:40:20)共重合体を製造した。

0068

(2)比較例に用いる重合体、共重合体
(重合体11)
無水マレイン酸を12.7重量部とし、イタコン酸20重量部の替わりにイタコン酸15.0重量部とアクリル酸12.8重量部とした以外は重合体1と同じ製造方法によりイタコン酸−マレイン酸−アクリル酸(重量比35:35:30)共重合体を合成した。

0069

(重合体12)
イタコン酸10重量部、無水マレイン酸20重量部、フマル酸10重量部の替わりにイタコン酸40重量部とした以外は重合体9と同じ製造方法によりイタコン酸重合体を合成した。

0070

(重合体13)
イタコン酸10重量部、無水マレイン酸20重量部、フマル酸10重量部の替わりに無水マレイン酸40重量部とした以外は重合体9と同じ製造方法によりマレイン酸重合体を合成した。

0071

(重合体14)
イタコン酸10重量部、無水マレイン酸20重量部、フマル酸10重量部の替わりにフマル酸40重量部とした以外は重合体9と同じ製造方法によりフマル酸重合体を合成した。

0072

(重合体15)
無水マレイン酸を20重量部とし、イタコン酸20重量部の替わりにアクリル酸23.7重量部とした以外は重合体1と同じ製造方法によりマレイン酸−アクリル酸(重量比50:50)共重合体を合成した。

0073

(重合体16)
無水マレイン酸20重量部の替わりにイタコン酸20重量部、イタコン酸20重量部の替わりにアクリル酸20重量部とした以外は重合体1と同じ製造方法によりマレイン酸−アクリル酸(重量比50:50)共重合体を合成した。

0074

(重合体17)
BASF製SOKALAN PA15(商品名、主成分はポリアクリル酸)をそのまま使用した。

0075

(重合体18)
特許第2942991号公報の実施例1に記載の方法により無水マレイン酸−エチルアクリレート−スチレン(重量比49:25:26)共重合体を合成した。

0076

(実施例1〜10)
実施例1〜10にそれぞれ重合体1〜10を、下記の回転法による腐食抑制試験に用いた。

0077

(比較例1〜8)
比較例1には重合体11、比較例2には重合体12、比較例3には重合体13、比較例4には重合体14、比較例5には重合体15、比較例6には重合体16、比較例7には重合体17、比較例8には重合体18を下記の回転法による腐食抑制試験に用いた。

0078

(比較例9)
下記の回転法による腐食抑制試験において、本発明の重合体及びその他の水処理剤を全く添加しないブランクである。

0079

(回転法による腐食抑制試験手順)
JIS K0100−1990工業用水腐食試験方法(回転法)に従って、寸法50×30×1mm、表面積0.316dm2の低炭素鋼(JIS G 3141SPCC−SB)試験片アセトン脱脂し、乾燥して重量を測定した。次に表−1に示す重合体を各々有効成分濃度として10mg/Lになるように試験水に添加した。試験液の水質は、pH:8.8、Mアルカリ度:300ppm、カルシウム硬度: 300ppm、塩化物イオン:212ppm、リツナー指数(40℃):4.5であった。JIS K0100−1990工業用水腐食試験方法(回転法)に従って、該試験液500mLを還流冷却管攪拌器付きフラスコに入れて40℃の恒温槽にて保温し、試験片を該試験方法に規定する腐食試験装置モーター回転軸保持器に取り付けて、40℃の試験液の入ったフラスコ中に浸漬し、線速度0.3m/secで3日間、連続で試験片を回転させた。3日後に試験片を 取り出し、表面に付着した腐食性生成物やスケール付着物を流水下、ブラシで除去し、乾燥させて試験片の重量を測定し、次式で腐食速度(mdd)を計算した。
腐食速度(mdd)=(試験片の重量減:mg)/〔(試験片表面積:dm2)×(試験日数:日)〕
また、走査電子顕微鏡により試験片の観察を行い、スケール性結晶付着状況を確認した。結果を表1に示す。

0080

スケール付着状況:
(−):付着なし (+):小程度の付着 (++):中程度の付着
(+++):かなりの付着

0081

表1の実施例1〜9の結果から、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体であって、(1)と(2)の配合重合比率が10〜90:90〜10である共重合体を対象水系に添加することによって、水と接触する金属の腐食とスケールを効果的に抑制できることが判った。また、実施例10と比較例1の結果を比較すると、(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の80重量%である共重合体を対象水系に添加することによって、水と接触する金属の腐食とスケールを効果的に抑制できるが、(1)と(2)の合計が共重合体のモノマー組成の70重量%であると、水と接触する金属の腐食とスケールを効果的に抑制できないことが判った。また、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含まない共重合体を用いた例である比較例2〜7の結果は実施例に比べて劣っており、(1)イタコン酸と(2)マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体は金属の腐食抑制とスケール抑制に効果を有することが判った。また、従来の技術である比較例8の結果と比較しても、表1の実施例1〜10に示された、イタコン酸と、マレイン酸及び/又はフマル酸を有効成分として含む共重合体を用いる本発明の水処理剤および水処理方法が格段に優れた腐食抑制効果とスケール抑制効果を得ていることが判った。

0082

2.オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験
本発明の共重合体とスルホン酸基含有ポリマーの併用処理の腐食防止効果およびスケール防止効果を評価した。

0083

(1)実施例
(実施例11)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体1と、下記のスルホン酸基含有ポリマー(1)を別個に添加して、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。
スルホン酸基含有ポリマー(1):
アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体の40重量%水溶液。〔共重合比(重量)60:40、重量平均分子量10,000〕

0084

(実施例12、13)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体1と、実施例11で用いたスルホン酸基含有ポリマー(1)を別個に添加して、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0085

(実施例14)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体1と、下記のスルホン酸基含有ポリマー(2)を別個に添加して、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。
スルホン酸基含有ポリマー(2):
アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸の共重合体の40重量%水溶液。〔共重合比(重量)50:50、重量平均分子量5,000〕

0086

(実施例15)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体6と、下記のスルホン酸基含有ポリマー(3)を別個に添加して、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。
スルホン酸基含有ポリマー(3):
アクリル酸とイソプロピルスルホン酸の共重合体の40重量%水溶液。
〔共重合比(重量)50:50、重量平均分子量10,000〕

0087

(実施例16)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体1を、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0088

(実施例17)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体6を、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0089

(実施例18)
前述の回転法による腐食抑制試験で用いた重合体1(有効成分18.5重量%)68.4gと、実施例11で用いた有効成分40重量%)31.6gを混合して一液とし、重合体1とスルホン酸基含有ポリマー(1)の有効成分重量比50:50になるように水処理剤1を調製した。
その水処理剤をオンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0090

(比較例10)
実施例11で用いたスルホン酸基含有ポリマー(1)を、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0091

(比較例11)
実施例14で用いたスルホン酸基含有ポリマー(2)を、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0092

(比較例12)
実施例15で用いたスルホン酸基含有ポリマー(3)を、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。

0093

(比較例13)
下記のポリアクリル酸と実施例11で用いたスルホン酸基含有ポリマー(1)を別個に添加して、オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験に用いた。
アクリル酸重合体
BASF製SOKALAN PA20(商品名、主成分はポリアクリル酸)をそのまま使用した。(分子量2500)

0094

(比較例14)
下記のオンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験において、本発明の水処理剤又は共重合体又はスルホン酸基含有ポリマー、及びその他の水処理剤を全く添加しないブランクである。

0095

(オンサイト試験法による腐食およびスケール防止評価試験の試験装置と試験手順
本発明の方法を評価するために用いた試験装置ならびに試験方法はJIS G0593−2002『水処理剤の腐食およびスケール防止評価試験方法』のオンサイト試験法.に準拠した。試験装置の概略を図1に示す。試験用伝熱管として外径12.7mm、長さ510mmの炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)を用いた。水槽2および配管を含む系全体の水容量は62Lとし、水槽の水温は35℃になるように水温制御装置9で制御した。試験用伝熱管評価部の線流速0.3m/sに相当する流量210L/hとなるように流量調整バルブ5で制御しながら循環ポンプ3で通水し、熱交換器7の熱流束は70kW/m2とした。冷却塔1は冷却能力1.8冷却トン誘引通風向流接触型のものを使用した。冷却塔入口・出口の循環水の温度差は15℃、蒸発水量は4.4L/hであった。循環水の電気伝導率を電気伝導率測定セル4で連続的に測定され、電気伝導率の入力信号より電気伝導率制御装置11を用いて濃縮度7倍に相当する電気伝導率になるようにブローダウンポンプ10を制御した。

0096

補給水12として四日市市水を使用した。四日市市水の水質はpH:7、電気伝導率:13mS/m、Ca硬度:38mg−CaCO3/L、Mg硬度:8mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:40mg−CaCO3/L、塩化物イオン:10mg/L、硫酸イオン:11mg/L、シリカ:12mg/Lであった。

0097

初期処理として水槽に四日市市水を張り、表2に示す水処理剤又は重合体とスルホン酸基含有ポリマー又は重合体のみを有効成分の合計濃度として200mg/Lとヘキサメタリン酸ソーダ(平均縮合度40)を12.5mg/L添加して、常温で48時間循環した。その後、熱負荷を開始し、熱負荷開始3日後に濃縮度が5倍に達したので、直ちにブローダウンを開始して濃縮度を7倍に維持した。ブローダウン開始と同時にブローダウン量に対して、表2に示す水処理剤又は重合体とスルホン酸基含有ポリマー又は重合体のみを、水処理剤注入装置13を使用して表2に示す有効成分濃度相当分を添加した。試験期間は1ヶ月間とした。試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、平均腐食速度最大腐食深さ、付着速度を測定した。結果を表2に示す。

0098

0099

表2の実施例11〜15と実施例16、17の結果を比較すると、本発明で用いる共重合体に、スルホン酸基含有ポリマーを併用することによって更に優れた腐食抑制効果とスケール抑制効果が得られることが判った。また、実施例11と実施例18の結果は差がなく、共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを別個に対象水系に添加しても、予め共重合体とスルホン酸基含有ポリマーを混合した水処理剤を調製して、その水処理剤を対象水系に添加しても、同等の効果が得られることが判った。比較例10〜12の結果はスルホン酸基含有ポリマーを単独で用いても良い腐食抑制効果とスケール抑制効果が得られないことを示しており、また、比較例13の結果からスルホン酸基含有ポリマーに本発明で用いる共重合体以外の重合体(ポリアクリル酸)を併用しても良い腐食抑制効果とスケール抑制効果が得られないことを示している。

0100

3.共重合体の重合参考例
(参考例1)
48%水酸化カリウムを添加しない以外は重合体1と同じ製造方法によりイタコン酸−マレイン酸共重合体を合成したが、イタコン酸の反応率は84%、マレイン酸の反応率は52%であった。

0101

(参考例2)
過硫酸ナトリウムを添加しない以外は重合体1と同じ製造方法によりイタコン酸−マレイン酸共重合体を合成したが、イタコン酸の反応率は87%、マレイン酸の反応率は70%であった。

0102

(参考例3)
硫酸第一鉄7水和物を添加しない以外は重合体1と同じ製造方法によりイタコン酸−マレイン酸共重合体を合成したが、イタコン酸の反応率は85%、マレイン酸の反応率は45%であった。

実施例

0103

参考例1〜3の結果は、本発明で用いられる共重合体の水系重合法において、アルカリ金属水酸化物の量、重合開始剤の量、金属触媒の量のいずれかが適切な範囲を外れると、モノマー反応率が十分上がらないことを示している。

0104

本発明は、開放循環式冷却水系密閉循環式冷却水系処理剤、一過式冷却水系、ボイラ水系、循環冷温水系、循環加熱水系などの水系における金属の腐食抑制とスケール抑制に利用することができる。

0105

1冷却塔
2水槽
3循環ポンプ
4電気伝導率測定セル
5流量調整バルブ
流量計
7熱交換器
8試験片保持器
9水温制御装置
10ブローダウンポンプ
11電気伝導率制御装置
12補給水
13 水処理剤注入装置

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