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課題
解決手段
概要
背景
アスベストは、化学的安定性や耐熱性に優れた性質を持つ事から建築物の壁面や配管等の保温材料として広く使用されてきた。しかしながら、飛散したアスベストを人間が吸引すると、人体内への蓄積が起こり、重大な健康被害が起こる事が安全性評価により明らかになった。これを受けて、アスベスト代替技術が進展し、その結果、アスベストを使用した建築材料や保温材料が廃棄物として大量に発生している。
アスベスト含有廃棄物の発生、収集、運搬、処理については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により、それぞれの処理基準が定められており、特にアスベストの飛散に関しては厳重な管理が義務づけられている。
アスベスト含有廃棄物の処理方法としては、専用の電気炉を用いた溶融処理方法(例えば、特許文献1)等が知られている。また、連続稼働している処理設備へアスベスト含有廃棄物を連続投入する処理方法も知られている。
概要
金属精錬とアスベスト処理とを安全かつ低コストで同時実施する方法を提供すること。電気炉1において、銑鉄又は合金鉄の金属原料4の精錬を行うと同時にアスベスト含有廃棄物を処理する方法であって、アスベスト含有廃棄物を密封して電気炉1内へ投入すること、及び、アスベスト含有廃棄物投入時に、電気炉1内雰囲気を炉外雰囲気よりも負圧に設定を行って、アスベストの炉外への飛散を抑制することを特徴とする方法。
目的
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
電気炉において、銑鉄又は合金鉄の精錬を行うと同時にアスベスト含有廃棄物を処理する方法であって、アスベスト含有廃棄物を密封して電気炉内へ投入すること、及び、アスベスト含有廃棄物投入時に、電気炉内雰囲気を炉外雰囲気よりも負圧に設定することを特徴とする方法。
請求項2
アスベスト含有廃棄物投入時の電気炉内雰囲気の圧力が、炉外雰囲気の圧力よりも9.8Pa(1.0mmH2O)〜294.2Pa(30mmH2O)低い、請求項1に記載の方法。
請求項3
アスベスト含有廃棄物の投入量が、電気炉内に投入した銑鉄又は合金鉄の精錬用原料の総質量に対して20質量%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
請求項4
アスベスト含有廃棄物を、電気炉内の銑鉄又は合金鉄の精錬用原料の表面へ投入する、請求項3に記載の方法。
請求項5
アスベスト含有廃棄物を、炉内点検用扉から炉内へ投入する、請求項4に記載の方法。
請求項6
銑鉄又は合金鉄の精錬とアスベスト含有廃棄物の処理との同時実施を連続的に行う、請求項1に記載の方法。
技術分野
0001
本発明は、金属精錬とアスベスト処理とを同時に行う方法に関するものである。より詳しくは、電気炉において、銑鉄又は合金鉄の精錬を行うと同時にアスベスト含有廃棄物を処理する方法に関するものである。
背景技術
0002
アスベストは、化学的安定性や耐熱性に優れた性質を持つ事から建築物の壁面や配管等の保温材料として広く使用されてきた。しかしながら、飛散したアスベストを人間が吸引すると、人体内への蓄積が起こり、重大な健康被害が起こる事が安全性評価により明らかになった。これを受けて、アスベスト代替技術が進展し、その結果、アスベストを使用した建築材料や保温材料が廃棄物として大量に発生している。
アスベスト含有廃棄物の発生、収集、運搬、処理については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により、それぞれの処理基準が定められており、特にアスベストの飛散に関しては厳重な管理が義務づけられている。
アスベスト含有廃棄物の処理方法としては、専用の電気炉を用いた溶融処理方法(例えば、特許文献1)等が知られている。また、連続稼働している処理設備へアスベスト含有廃棄物を連続投入する処理方法も知られている。
先行技術
0003
特開2008−246270号公報
発明が解決しようとする課題
0004
しかしながら、専用の処理設備では、その建設コストや稼働コストがかさむというコスト面での課題がある。また、従来のアスベスト含有廃棄物の処理設備への連続投入では、設備稼働時(特に、廃棄物投入時)にアスベストが飛散する危険性が高いという安全面での課題がある。したがって、コスト面及び安全面で満足のいくアスベスト含有廃棄物の処理方法が求められている。
課題を解決するための手段
0005
本発明者らが上記課題について鋭意検討した結果、電気炉を用いた金属精錬において、炉外雰囲気よりも負圧に保持した電気炉内へ密封したアスベスト含有廃棄物を投入することにより、金属精錬と同時にアスベスト含有廃棄物を処理することができることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
0006
すなわち、本発明は、
(1)電気炉において、銑鉄又は合金鉄の精錬を行うと同時にアスベスト含有廃棄物を処理する方法であって、
アスベスト含有廃棄物を密封して電気炉内へ投入すること、及び、
アスベスト含有廃棄物投入時に、電気炉内雰囲気を炉外雰囲気よりも負圧に設定する
ことを特徴とする方法;
(2)アスベスト含有廃棄物投入時の電気炉内雰囲気の圧力が、炉外雰囲気の圧力よりも9.8Pa(1.0mmH2O)〜294.2Pa(30mmH2O)低い、前記(1)に記載の方法;
(3)アスベスト含有廃棄物の投入量が、電気炉内に投入した銑鉄又は合金鉄の精錬用原料の総質量に対して20質量%以下である、前記(1)又は(2)に記載の方法;
(4)アスベスト含有廃棄物を、電気炉内の銑鉄又は合金鉄の精錬用原料の表面へ投入する、前記(3)に記載の方法;
(5)アスベスト含有廃棄物を、炉内点検用扉から炉内へ投入する、前記(4)に記載の方法;並びに
(6)銑鉄又は合金鉄の精錬とアスベスト含有廃棄物の処理との同時実施を連続的に行う、前記(1)に記載の方法。
に関するものである。
発明の効果
0007
本発明の方法は、後述する実施例で示されるように、既存の金属精錬設備(電気炉)を用いて金属精錬と同時にアスベスト含有廃棄物を処理することができるので、専用設備を用いたアスベスト処理方法と比較して、建設コストや稼働コストの面で有利である。更に本発明の方法は、電気炉内を負圧に維持してアスベスト投入を行うため、連続処理を行ってもアスベストを飛散させる危険性がなく、安全面でも有利である。
図面の簡単な説明
0009
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明で処理するアスベスト含有廃棄物とは、アスベスト(石綿)を含んだ廃棄物をいう。具体例としては、アスベストを含む防音材、断熱材、絶縁材や建築材等の廃棄物があげられる。
なお、精錬する金属の組成への影響を少なくするため、アスベスト含有廃棄物から金属を予め取り除いておくことが好ましい。但し、アスベスト含有廃棄物中に金属が含まれていても、電気炉内への投入量を調節することで、所望の組成を有する金属を精錬することができる。
本発明は、廃棄物中のアスベスト含量に特に制限されることなく実施することができる。
本発明に用いるアスベスト含有廃棄物の大きさや重量は、電気炉の投入口から投入可能であれば、特に制限されない。
0010
大気中への飛散防止のため、アスベスト含有廃棄物を密閉容器内へ密封させておく。本発明では、密閉容器ごと電気炉内へ投入することができる。密閉容器の大きさ、形状及び材質は、電気炉に備えられた投入口から投入可能な大きさであり、かつ、運搬時に破れてアスベストが飛散しないものであれば制限はない。
密閉容器の材質としては、例えば、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンやナイロン)や金属等が挙げられる。密閉容器としては、ビニール袋(ポリ塩化ビニル製)と結束帯との組み合わせや蓋付きバケツ等を用いることができる。具体例として、建築物の天井や壁面に使用された断熱材に由来するアスベスト含有廃棄物22を封入した二重ビニール袋23(材質:ポリプロピレン)と結束帯21(材質:ナイロン)を図1に示す。
0011
密閉容器材料は、アスベスト処理工程時に精錬される金属(銑鉄又は合金鉄)を構成する元素(例えば、ポリ塩化ビニル中の炭素)を含んでいることがある。このような密閉容器を用いる場合でも、電気炉内への投入量を調節することで、所望の組成を有する銑鉄及び合金鉄を得ることができる。
0012
本発明で使用する電気炉としては、銑鉄又は合金鉄の精錬に使用できるものであれば特に制限なく、一般の金属精錬用電気炉を用いることができる。
電気炉の具体例としては、発熱方式の相違に基づき、電気抵抗によって発熱させる電気抵抗炉、アークの発熱を利用するアーク炉や、誘導加熱を利用する誘導炉等が挙げられる。これらのなかでは、熱効率及び有害物質(重金属等)の飛散防止の観点から、電気抵抗炉が好ましい。
本発明で使用する電気炉(抵抗炉)の典型例の断面図を図2に概略する。この電気炉1は、密閉型でほぼ円筒状の容器の形態をしている。電気炉には、3本の電極2(図中表記は2本)と、金属精錬用の原料を電気炉内へ投入する16本の原料投入装置3(図中表記は2本)が上壁を通して設けられている。精錬工程において、電気炉内に投入した金属精錬用原料4は、電極先端付近でジュール熱により溶解し、上から半溶融層12、コークス層13、スラグ層14、精錬金属層15の順に分離している。電極2は、コークス層13内に没入した状態で保持している。原料投入装置3は、上端にホッパー3aとホッパー下部から電気炉内へ投入する管3bで構成されていて、精錬工程中に電気炉内へ順次原料4を投入している(原料のチョークフィードという)。また、電気炉1の上壁には、電気炉内から発生したガスの取り出し口5並びに電気炉内部点検及び廃アスベスト投入兼用の扉6が、下部には精錬した金属の取り出し口7および、金属取り出し口よりも高い位置にスラグ(滓)取り出し口8が設置されている。電気炉内で発生したガスは、電気炉内圧力調整用ファン9を用いてガス取り出し口5を経て炉外へと排出され、更に、湿式集塵機10及びプリコートフィルター11を通過させることにより除塵した後、燃料用ガスとして使用する。
0013
本発明の精錬工程で得られる金属は、銑鉄又は合金鉄である。銑鉄及び合金鉄に含まれる鉄以外の元素の種類について特に制限はない。具体例としては、銑鉄では炭素、合金鉄ではケイ素、マンガン、マグネシウム等が挙げられる。
銑鉄及び合金鉄に含まれる鉄以外の元素の含有量についても特に制限はない。なお、精錬工程時に処理されるアスベスト含有廃棄物は、上述の銑鉄及び合金鉄を構成する元素(例えば、鉄、ケイ素、マグネシウム)を含んでいることがある。このようなアスベスト含有廃棄物を用いる場合には、電気炉内への投入量を調節することで、所望の組成を有する銑鉄及び合金鉄を得ることができる。
0014
本発明で用いる精錬用原料は、一般的な銑鉄又は合金の精錬において用いられるものと同じである。例えば、銑鉄を精錬する場合、原料としては鉄鉱石、コークスや鉄屑等が挙げられる。例えば、ケイ素とマンガンと鉄との合金(フェロシリコンマンガン)を精錬する場合、原料としては鉄鉱石、ケイ石、マンガン鉱石やコークス等が挙げられる。
0015
本発明では精錬工程とアスベスト処理工程とを電気炉内で同時に行う。
金属精錬用原料及びアスベスト含有廃棄物の電気炉内への投入順序に特に制限はないが、先ず金属精錬用原料を電気炉へ投入して加熱を行い、その後、アスベスト含有廃棄物を投入すると、アスベストの溶融処理を行うための熱源確保の点で好ましい。
なお、銑鉄又は合金鉄の精錬用原料とアスベスト含有廃棄物とをそれぞれ断続的又は連続的に供給して、本発明を連続的に実施することができる。
0016
本発明では、アスベスト含有廃棄物投入時において、電気炉内の圧力を炉外雰囲気(通常は、大気圧(101324.8Pa(10332.3mmH2O)))よりも低く設定する。アスベスト含有廃棄物投入時の炉内雰囲気を炉外雰囲気よりも負圧に設定することにより、アスベスト含有廃棄物の炉内投入時のアスベストの炉外への飛散を抑制することができる。アスベスト含有廃棄物投入時の電気炉内の圧力は、炉外雰囲気よりも9.8Pa(1.0mmH2O)〜294.2Pa(30.0mmH2O)低いことが好ましく、炉外雰囲気よりも49.0Pa(5.0mmH2O)〜98.1Pa(10.0mmH2O)低いことが特に好ましい。
炉内雰囲気の調節は、通常の電気炉内圧力調整手段(例えば、図2の電気炉内圧力調整用ファン9)を用いて行うことができる。
アスベスト含有廃棄物投入後の電気炉内の圧力について、炉外雰囲気よりも負圧の状態を解除してもよく、負圧状態を保持してもよい。
尚、精錬時の炉内雰囲気はCOガス濃度が高いので、炉内雰囲気の圧力を炉外雰囲気の圧力よりも大幅に低く設定すると、炉内へ空気(酸素)が入り込み、爆発する可能性がある。かかる危険性を回避すべく、アスベスト含有廃棄物投入後も炉内雰囲気を負圧に保持する場合は、空気の過剰流入が起こらないように設定する(例えば、大気圧よりも0Pa(0mmH2O)〜49.0Pa(5.0mmH2O)低い圧力)ことが好ましい。
炉外からの空気流入を回避するため、アスベスト含有廃棄物投入後の電気炉内の圧力を炉外雰囲気よりも高く設定(例えば、大気圧よりも0Pa(0mmH2O)〜49.0Pa(5.0mmH2O)高い圧力)してもよい。
アスベスト含有廃棄物投入時の負圧状態を解除した場合、その後のアスベスト含有廃棄物投入を行う際には、再度、炉内圧力を炉外雰囲気よりも負圧に設定する。
また、アスベスト含有廃棄物投入時に加えて、金属精錬用原料投入時にも、アスベスト含有廃棄物投入時と同様の炉内雰囲気の負圧設定を行って、アスベストの炉外への飛散を更に抑制してもよい。
0017
電気炉内への金属精錬用原料及びアスベスト含有廃棄物の投入量は、金属精錬(所望の組成を有する金属が得られること)とアスベスト処理とを同時に実施できる量であれば特に制限されないが、炉内でのアスベスト含有廃棄物の溶融処理に由来するスラグの大量生成による金属精錬効率の低下を抑制するため、電気炉内に投入した金属精錬用原料の総質量に対して20質量%以下のアスベスト含有廃棄物を投入することが好ましく、6.5質量%以下のアスベスト含有廃棄物を投入することがより好ましい。
尚、金属精錬用原料とアスベスト含有廃棄物とをそれぞれ断続的に電気炉内へ投入することにより精錬とアスベスト処理の同時実施を連続的に行う場合、上述の「電気炉内に投入した金属精錬用原料の総質量」とは、アスベスト含有廃棄物の投入後から次の投入前までに電気炉内へ投入された金属精錬用原料の総質量をいう。
0018
アスベスト含有廃棄物の投入装置に特に制限はなく、一般的な電気炉に設けられている炉内点検用扉(例えば、図2の扉6)を用いてもよく、別途、アスベスト含有廃棄物投入用の扉を設けてもよい。投入用扉の数、形状(開口面積)や開閉方式は、電気炉内圧力を炉外雰囲気よりも負圧に保ちつつ、アスベスト含有廃棄物を投入することが可能であれば特に制限されない。
アスベスト含有廃棄物の電気炉内への投入は、人力で行ってもよく、機械(例えば、ベルトコンベア)を用いて行ってもよい。
0019
アスベスト含有廃棄物の電気炉内における投入位置に特に制限はないが、先ず精錬用原料を電気炉へ投入して加熱を行い、その後、加熱された精錬用原料の表面へアスベスト含有廃棄物を投入することが好ましい。炉内における精錬用原料の表面温度(通常、30〜200℃)は他の部分(図2の半溶融層12、コークス層13、スラグ層14、精錬金属層15)よりも温度が低いので、アスベスト含有廃棄物を封入する密閉容器が炉内投入後に直ちに溶解してアスベスト含有廃棄物が飛散する危険性を回避することができる。
0020
電気炉内の温度は、金属精錬とアスベスト処理とを同時に実施できる温度であれば特に制限されないが、炉外排出時のスラグの温度が1500℃以上となるように電気炉を操作すると、金属精錬とアスベスト処理とを効率よく行うことができるので好ましい。
0021
精錬処理で生じた銑鉄又は合金鉄は電気炉の下部に蓄積するので、炉の下部に設けた金属取り出し口(図2の金属の取り出し口7)から取り出すことができる。取り出した銑鉄又は合金は、通常の精錬処理で得られた銑鉄又は合金と同様に利用することができる。
銑鉄又は合金と共にスラグ(滓)が生成する。電気炉内においてスラグは精錬金属よりも上方に蓄積するので、前述の金属取り出し口よりも高い位置に設けたスラグ取り出し口(図2のスラグ取り出し口8)から取り出すことができる。取り出されたスラグは無害であるため、そのまま埋め立ててもよく、建築用資材(砂利や砕石の代替)として利用してもよい。
0022
以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。
実施例:フェロシリコンマンガン(ケイ素とマンガンと鉄との合金)の精錬とアスベスト含有廃棄物処理との同時実施
電気炉として、図2に示す構造を有する3相エルー式密閉式電気炉(電気抵抗炉)を使用した。この電気炉の主な仕様は以下の通りであった。
生産能力:フェロシリコンマンガンについて65000×103kg/年
トランス容量:50000kVA
炉の直径:15m
炉の高さ:6m
電極の直径:1.7m
0023
精錬する金属はフェロシリコンマンガンであった。精錬用原料として、下記表1に示す組成を有する原料混合物を用いた。
0024
表1:フェロシリコンマンガン精錬用原料の組成
金属精錬と同時に処理したアスベスト含有廃棄物は、アスベストを含む断熱材の廃材であった。アスベスト含有廃棄物は、密閉容器(二重ビニール袋(ポリプロピレン製)と結束帯(材質:ナイロン)内に密閉された状態で使用した。
0025
電気炉の操業は以下の手順で行った。
はじめに、ホッパーと管とから構成される原料投入装置を通してフェロシリコンマンガン精錬用原料を炉内へ投入した。次いで、電極を通して負荷(負荷:24000kW、電圧:100〜200V、抵抗:500〜600μΩ)をかけて精錬を行った。
精錬開始から48時間経過後から、以下の手順によりアスベスト含有廃棄物の同時処理を開始して、精錬とアスベスト処理との同時実施を連続的に行った。
アスベスト含有廃棄物の電気炉内へ投入時には、電気炉の負荷を0kWにし、電気炉内圧力調整用ファンを用いて炉内圧力を炉外雰囲気よりも98.1Pa(10.0mmH2O)低い圧力へと調節した。炉外雰囲気の圧力は大気圧(101324.8Pa(10332.3mmH2O))であった。炉内圧力調節後、炉内点検用扉からベルトコンベアを用いて、密閉容器内に封入した状態のままのアスベスト含有廃棄物を、電気炉内の加熱された状態にある精錬用原料の表面上へ投入した。アスベスト含有廃棄物の初回投入量は、既に炉内へ投入された精錬用原料の総質量に対して3質量%であった。アスベスト含有廃棄物投入後、炉内点検用扉を閉め、電気炉負荷を24000kWへと戻すことにより、アスベスト含有廃棄物の溶融処理とフェロシリコンマンガンの精錬とを同時に実施した。
アスベスト含有廃棄物の溶融処理とフェロシリコンマンガンの精錬とを同時に実施している間(但し、アスベスト含有廃棄物の電気炉内投入時を除く)は、炉内圧力を炉外雰囲気よりも0〜9.8Pa(0〜1mmH2O)高い圧力に保持した。同時実施中の電気炉内の雰囲気温度は200〜400℃に保持した。炉外排出時のスラグの温度は1511℃であった。
精錬用原料及びアスベスト含有廃棄物の炉内への投入はそれぞれ断続的に行った。その際のアスベスト含有廃棄物の投入量は、当該アスベスト含有廃棄物の投入後から次の投入前までに電気炉内へ投入された精錬用原料の総質量に対して3質量%であった。尚、アスベスト含有廃棄物の炉内への投入時には上述の電気炉負荷の調節(0〜24000kW)を行った。
精錬用原料の総投入量は137×103kgであり、アスベスト含有廃棄物の総投入量は4×103kgであった。したがって、アスベスト含有廃棄物の総投入量は、金属精錬用原料の総質量に対して3質量%であった。
0026
金属精錬についての評価
(1)アスベスト含有廃棄物を投入しなかったことを除き、上述の実施例と同様にして行った精錬(以下、通常精錬という)により得られたフェロシリコンマンガン(以下、通常品という)の組成と、本発明の実施例により得られたフェロシリコンマンガンの組成とを分析した。分析結果を、JIS G 2304に規定されるフェロシリコンマンガンの組成と共に以下の表2に示す。
表2:フェロシリコンマンガンの組成(単位:質量%)
実施例のフェロシリコンマンガンの組成は、通常品において許容される組成の変動の範囲内にある通常品の組成と実質的に同一であり、かつ、JIS規格を満たすものであった。この結果より、本発明に従いアスベスト処理と共に金属精錬を行った場合でも、通常精錬と同様の金属精錬を行うことができることが理解される。
(2)実施例(金属精錬とアスベスト処理との同時実施)によって生じたスラグの組成と、通常精錬により得られたスラグの組成とを分析した。分析結果を以下の表3に示す。
表3:スラグの組成(単位:質量%)
0027
アスベスト含有廃棄物処理についての評価
本発明(金属精錬とアスベスト処理との同時実施)においてアスベストが処理されることを確認するために、実施例を行った際に電気炉内で生成したスラグ、電気炉内で発生したガス及びプリコートフィルターに集められた塵(プリコートフィルターダスト)についてアスベスト濃度を測定した。いずれの測定も、アスベスト投入後2〜3日後に採取したサンプルに対して行った。
更に、本発明の実施中(特に、アスベスト含有廃棄物の炉内投入時)にアスベストの炉外への飛散が起こらないことを確認するために、実施例を行った際の炉外雰囲気(アスベスト含有廃棄物を電気炉内へ投入する時の炉外雰囲気)についてアスベスト濃度を測定した。各測定対象について使用した測定方法を以下の表4に示す。
表4:アスベスト濃度の測定方法
実施例
0028
測定結果を以下の表5に示す。
表5:アスベスト濃度測定結果
実施例において生成したスラグ、電気炉内発生ガス及びプリコートフィルターダストのアスベスト濃度はいずれも法定基準を満たすものであった。この結果より、本発明に従い金属精錬と同時にアスベストを処理(無害化)できることが理解される。
更に、アスベスト含有廃棄物を電気炉内へ投入する時の炉外雰囲気におけるアスベスト濃度も法定基準を満たすものであった。この結果より、本発明は、アスベストを飛散させることなく安全に実施することができることが理解される。
0029
本発明は、金属精錬及びアスベスト処理に利用することが可能である。
0030
1:電気炉
2:電極
3:原料投入装置
3a:ホッパー
3b:管
4:金属精錬用原料
5:ガス取り出し口
6:扉
7:金属取り出し口
8:スラグ取り出し口
9:電気炉内圧力調整用ファン
10:湿式集塵機
11:プリコートフィルター
12:半溶融層
13:コークス層
14:スラグ層
15:精錬金属層
21:結束帯
22:アスベスト含有廃棄物
23:二重ビニール袋