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技術 半導体レーザ素子

出願人 シャープ株式会社
発明者 川口佳伸谷善彦伊藤茂稔
出願日 2009年7月24日 (11年0ヶ月経過) 出願番号 2009-173146
公開日 2011年2月10日 (9年6ヶ月経過) 公開番号 2011-029381
状態 拒絶査定
技術分野 半導体レーザ
主要キーワード 凹部溝 短絡領域 X線回折法 外部バイアス電圧 近隣領域 電気双極子モーメント マルチモ キャップ封止
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (15)

課題

本発明の課題は、分離電極タイプの半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域キャリア寿命を短くし、以って良好な自励発振特性を得ること(すなわち容易に自励発振すること)にある。

解決手段

本発明の半導体レーザ素子は、基板上に少なくともn型半導体層と活性層p型半導体層とが積層されており、該n型半導体層または該基板に接触するn側電極と、該p型半導体層または該基板に接触するp側電極と、共振器とを備え、該p側電極および該n側電極の少なくとも一方は、該共振器の長手方向に対して交差する分割領域によって電気的に2領域以上に分離されており、該活性層は、その少なくとも一部において、該n型半導体層と該p型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していることを特徴とする。

概要

背景

半導体レーザ素子は、現在、たとえば記憶容量の大きな光ディスク装置、より具体的にはBD(Blu-ray Disk)の読み取り用および書き込み用光源などに多く用いられている。

しかしながら、半導体レーザ素子を光源として用いたBDの読み取りおよび書き込みにおいても、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)といった旧来の光ディスク装置と同様に、ディスク面から半導体レーザ素子への戻り光雑音が問題となっている。

このような戻り光雑音への対策としては、従来から、駆動電流変調させる高周波重畳を利用する方法と、半導体レーザ素子自らが出力変動を行なう自励発振特性を利用する方法の2つの方法がある。いずれの方法も多モード発振状態にして可干渉性を低下させることで、雑音特性を改善している。

高周波重畳を利用する方法と、自励発振特性を利用する方法とを比較すると、高周波回路をシステムに組み込む必要のない後者の方法が、半導体レーザ素子の低コスト化かつ小型化を実現できるため有利とされている。しかしながら、半導体レーザ素子を用いたBDにおいては、高周波重畳を利用する方法しか実現されていないのが現状であり、自励発振特性を利用した自励発振型レーザ素子を用いる方法の実用化は未だされていない状況にある。

自励発振型レーザ素子の使用を可能とするためには、可飽和吸収領域を半導体レーザ素子の内部に形成する必要があるが、その形成方法によって3つのタイプに分けることができる。

第1のタイプは、活性層の上部および/または下部に可飽和吸収の機能を有する層を設けるタイプ(「可飽和吸収層形成タイプ」)である。

第2のタイプは、ストライプ構造を有する半導体レーザ素子において、横方向の屈折率差(Δn)を小さくして活性層における光閉じ込めを弱めて、横方向の光分布電流分布に対して広げることで、利得領域の横方向近隣領域ストライプ部の外側の活性層)を可飽和吸収領域として利用するタイプ(「Δn調整タイプ」)である。

第3のタイプは、電極を2領域以上に分離することにより電流注入されない電流非注入領域共振器長手方向の一部に設けて、この電流非注入領域を可飽和吸収領域として利用するタイプ(「分離電極タイプ」)である。

これらの3タイプのうち、分離電極タイプは、通常の実用化されている半導体レーザ素子から、半導体層の構造を変えることなく、比較的容易なプロセスで作製できるというメリットがある。特開2004−186678号公報(特許文献1)には、このような分離電極タイプの窒化物半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域として機能する電流非注入領域に対応するp側電極とn側電極とを電気的に短絡させたり、pn接合逆バイアス印加することで、自励発振が得られることが開示されている。また、特開2007−081196号公報(特許文献2)には、電流非注入領域を利得領域で発生したレーザ光の検知に用いる技術が開示されている。

概要

本発明の課題は、分離電極タイプの半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域のキャリア寿命を短くし、以って良好な自励発振特性を得ること(すなわち容易に自励発振すること)にある。本発明の半導体レーザ素子は、基板上に少なくともn型半導体層と活性層とp型半導体層とが積層されており、該n型半導体層または該基板に接触するn側電極と、該p型半導体層または該基板に接触するp側電極と、共振器とを備え、該p側電極および該n側電極の少なくとも一方は、該共振器の長手方向に対して交差する分割領域によって電気的に2領域以上に分離されており、該活性層は、その少なくとも一部において、該n型半導体層と該p型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していることを特徴とする。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

基板上に少なくともn型半導体層と活性層p型半導体層とが積層されており、前記n型半導体層または前記基板に接触するn側電極と、前記p型半導体層または前記基板に接触するp側電極と、共振器とを備え、前記p側電極および前記n側電極の少なくとも一方は、前記共振器の長手方向に対して交差する分割領域によって電気的に2領域以上に分離されており、前記活性層は、その少なくとも一部において、前記n型半導体層と前記p型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、前記第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生している、半導体レーザ素子

請求項2

前記活性層は、1または複数の井戸層と1または複数の障壁層とを有する量子井戸構造または多重量子井戸構造を有しており、その井戸層において、前記n型半導体層と前記p型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、前記第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生している、請求項1に記載の半導体レーザ素子。

請求項3

前記第2内部電界は、格子歪みに起因するピエゾ電界である、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。

請求項4

前記活性層は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成され、前記n型半導体層は、前記活性層の[000+1]方向に位置し、前記p型半導体層は、前記活性層の[000−1]方向に位置する、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項5

前記n型半導体層と前記p型半導体層とは、それぞれ窒化物半導体層である、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項6

前記窒化物半導体層は、それぞれウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成される、請求項5に記載の半導体レーザ素子。

請求項7

前記基板は、窒化物半導体結晶である、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項8

前記窒化物半導体結晶は、ウルツ鉱型結晶構造を有する、請求項7に記載の半導体レーザ素子。

請求項9

前記窒化物半導体結晶は、GaNである、請求項7または8に記載の半導体レーザ素子。

請求項10

前記活性層は、圧縮歪みを受けたInGaNである、請求項1〜9のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項11

前記活性層は、その上面が(000−1)面であって、前記p型半導体層は、前記活性層の[000−1]方向に位置する、請求項4〜10のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項12

前記活性層は、その上面が(000+1)面であって、前記p型半導体層は、前記活性層の[000−1]方向に位置する、請求項4〜10のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項13

前記n型半導体層と前記p型半導体層とは、それぞれ活性層と同じ結晶方位を有している、請求項4〜12のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項14

前記基板は、活性層と同じ結晶方位を有している、請求項8〜13のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項15

前記半導体レーザ素子は、自励発振特性を備える、請求項1〜14のいずれかに記載の半導体レーザ素子。

請求項16

前記分割領域によって分離された少なくとも1領域の電極は、該電極の反対側の電極との間で短絡されることにより短絡領域を形成するとともに、該短絡された電極以外の少なくとも1領域の電極は、該電極の反対側の電極との間で短絡されていない非短絡領域を形成する、請求項1に記載の半導体レーザ素子。

請求項17

請求項1に記載の半導体レーザ素子を光源として用いた光ディスク装置

請求項18

請求項1に記載の半導体レーザ素子を用いた画像表示装置

技術分野

0001

本発明は半導体レーザ素子に関し、特に、共振器長手方向に対して交差する分割領域によって電極電気的に2領域以上に分離されている半導体レーザ素子に関する。

背景技術

0002

半導体レーザ素子は、現在、たとえば記憶容量の大きな光ディスク装置、より具体的にはBD(Blu-ray Disk)の読み取り用および書き込み用光源などに多く用いられている。

0003

しかしながら、半導体レーザ素子を光源として用いたBDの読み取りおよび書き込みにおいても、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)といった旧来の光ディスク装置と同様に、ディスク面から半導体レーザ素子への戻り光雑音が問題となっている。

0004

このような戻り光雑音への対策としては、従来から、駆動電流変調させる高周波重畳を利用する方法と、半導体レーザ素子自らが出力変動を行なう自励発振特性を利用する方法の2つの方法がある。いずれの方法も多モード発振状態にして可干渉性を低下させることで、雑音特性を改善している。

0005

高周波重畳を利用する方法と、自励発振特性を利用する方法とを比較すると、高周波回路をシステムに組み込む必要のない後者の方法が、半導体レーザ素子の低コスト化かつ小型化を実現できるため有利とされている。しかしながら、半導体レーザ素子を用いたBDにおいては、高周波重畳を利用する方法しか実現されていないのが現状であり、自励発振特性を利用した自励発振型レーザ素子を用いる方法の実用化は未だされていない状況にある。

0006

自励発振型レーザ素子の使用を可能とするためには、可飽和吸収領域を半導体レーザ素子の内部に形成する必要があるが、その形成方法によって3つのタイプに分けることができる。

0007

第1のタイプは、活性層の上部および/または下部に可飽和吸収の機能を有する層を設けるタイプ(「可飽和吸収層形成タイプ」)である。

0008

第2のタイプは、ストライプ構造を有する半導体レーザ素子において、横方向の屈折率差(Δn)を小さくして活性層における光閉じ込めを弱めて、横方向の光分布電流分布に対して広げることで、利得領域の横方向近隣領域ストライプ部の外側の活性層)を可飽和吸収領域として利用するタイプ(「Δn調整タイプ」)である。

0009

第3のタイプは、電極を2領域以上に分離することにより電流注入されない電流非注入領域を共振器の長手方向の一部に設けて、この電流非注入領域を可飽和吸収領域として利用するタイプ(「分離電極タイプ」)である。

0010

これらの3タイプのうち、分離電極タイプは、通常の実用化されている半導体レーザ素子から、半導体層の構造を変えることなく、比較的容易なプロセスで作製できるというメリットがある。特開2004−186678号公報(特許文献1)には、このような分離電極タイプの窒化物半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域として機能する電流非注入領域に対応するp側電極とn側電極とを電気的に短絡させたり、pn接合逆バイアス印加することで、自励発振が得られることが開示されている。また、特開2007−081196号公報(特許文献2)には、電流非注入領域を利得領域で発生したレーザ光の検知に用いる技術が開示されている。

先行技術

0011

特開2004−186678号公報
特開2007−081196号公報

発明が解決しようとする課題

0012

自励発振特性を得るためには、利得領域に対して可飽和吸収領域においてキャリア寿命が十分短くなる必要がある。可飽和吸収領域に位置するp側電極とn側電極とを短絡させたり、可飽和吸収領域のpn接合に対して逆バイアスを印加させたりすることは、このようにして半導体層に生じた内部電界を利用することにより、可飽和吸収領域において光吸収により生じたキャリアを活性層から掃き出すことによって、キャリア寿命を短くさせることができる。

0013

この場合、逆バイアスを印加させることは、空乏層に生じる内部電界を大きくするとともに、空乏層領域を拡げることができるので、確実にキャリア寿命を短くすることができる。しかしながら、自励発振特性を有する半導体レーザ素子をBDの光源として実用化するためには、逆バイアスを印加する機構を新たに設ける必要があり、システムの簡略化や小型化の観点から望ましくない。したがって、その実用化のためには、p側電極とn側電極との短絡のみによって有効な自励発振特性を得る必要があると考えられる。

0014

この点に関し、特許文献1では、窒化物半導体GaAs系に比べてバンドキャップが大きいため内部電界が大きくなるので、キャリア寿命の短縮に有利であると述べられている。しかしながら、p側電極とn側電極との短絡のみで実用化に耐え得る自励発振特性を得るためには、よりキャリア寿命を短くする必要がある。たとえば、広い温度範囲で自励発振特性を示すことや、長時間の使用後にも自励発振特性を維持するためには、よりキャリア寿命を短くして、自励発振特性を示すトレランスを大きくすることが有効である。

0015

一方、自励発振型半導体レーザ素子では、閾値電流近傍での光出力の急激な立ち上がりが発生するという難点があるが、キャリア寿命をより短くすることによって、可飽和吸収領域を小さくしても自励発振特性を示すようにすれば、このような問題に対しても有効となる可能性がある。

0016

また、特許文献2には、電流非注入領域を利得領域で発生したレーザ光の検知に用いる技術が開示されているが、この技術において検知に用いられる電流としては、光吸収により生じたキャリアが活性層から掃き出される際に発生する光誘起電流を利用している。上述のように自励発振特性を目的としたキャリア寿命の短縮は、光誘起電流の増大にも繋がるので、レーザ光の検知技術にも用いることが可能である。光誘起電流の増大は、レーザ光の検知の際の精度向上や、電流非注入領域に印加するバイアス電圧のトレランス増大というメリットがある。

0017

よって、本発明の課題は、分離電極タイプの半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域のキャリア寿命を短くし、以って良好な自励発振特性を得ること(すなわち容易に自励発振すること)にある。

課題を解決するための手段

0018

本発明の半導体レーザ素子は、基板上に少なくともn型半導体層と活性層とp型半導体層とが積層されており、該n型半導体層または該基板に接触するn側電極と、該p型半導体層または該基板に接触するp側電極と、共振器とを備え、該p側電極および該n側電極の少なくとも一方は、該共振器の長手方向に対して交差する分割領域によって電気的に2領域以上に分離されており、該活性層は、その少なくとも一部において、該n型半導体層と該p型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していることを特徴とする。

0019

また、上記活性層は、1または複数の井戸層と1または複数の障壁層とを有する量子井戸構造または多重量子井戸構造を有しており、その井戸層において、上記n型半導体層と上記p型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、上記第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生している構造とすることが好ましい。

0020

ここで、上記第2内部電界は、格子歪みに起因するピエゾ電界であることが好ましい。また、上記活性層は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成され、上記n型半導体層は、上記活性層の[000+1]方向(本発明においては[0001]方向をこのように[000+1]方向とも記す)に位置し、上記p型半導体層は、上記活性層の[000−1]方向に位置することが好ましい。

0021

また、上記n型半導体層と上記p型半導体層とは、それぞれ窒化物半導体層であることが好ましく、該窒化物半導体層は、それぞれウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されることが好ましい。

0022

また、上記基板は、窒化物半導体結晶であることが好ましく、該窒化物半導体結晶は、ウルツ鉱型結晶構造を有することが好ましく、さらにGaNであることが好ましい。

0023

また、上記活性層は、圧縮歪みを受けたInGaNであることが好ましい。また、上記活性層は、その上面が(000−1)面であって、上記p型半導体層は、上記活性層の[000−1]方向に位置することが好ましい。また、上記活性層は、その上面が(000+1)面(本発明においては(0001)面をこのように(000+1)面とも記す)であって、上記p型半導体層は、上記活性層の[000−1]方向に位置することが好ましい。

0024

また、上記n型半導体層と上記p型半導体層とは、それぞれ活性層と同じ結晶方位を有していることが好ましく、上記基板は、活性層と同じ結晶方位を有していることが好ましい。

0025

本発明の上記半導体レーザ素子は、自励発振特性を備えることが好ましく、上記分割領域によって分離された少なくとも1領域の電極は、該電極の反対側の電極との間で短絡されることにより短絡領域を形成するとともに、該短絡された電極以外の少なくとも1領域の電極は、該電極の反対側の電極との間で短絡されていない非短絡領域を形成することが好ましい。

0026

そして、本発明は、上記の半導体レーザ素子を光源として用いた光ディスク装置にも係わり、同じく上記の半導体レーザ素子を用いた画像表示装置にも係わる。

発明の効果

0027

本発明の半導体レーザ素子は、上記のような構成を有することにより、可飽和吸収領域のキャリア寿命を短くし、以って良好な自励発振特性を得ること(すなわち容易に自励発振すること)ができるという優れた効果を有する。

図面の簡単な説明

0028

本発明の半導体レーザ素子の一実施形態を示すリッジ構造中央部の模式的断面図である。
本発明の半導体レーザ素子の一実施形態を示す端面に平行な模式的断面図である。
本発明の半導体レーザ素子の一実施形態を示すp側電極側の模式的平面図である。
窒化物半導体の結晶構造を模式的に表わした結晶構造図である。
ピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向との異同と、バンド構造との関係を示すバンド構造図である。
本発明の半導体レーザ素子の図2とは異なる実施形態を示す端面に平行な模式的断面図である。
図6の活性層周辺を拡大した拡大断面図である。
本発明の半導体レーザ素子のパッド電極パターンの一例を示した平面図である。
実施例の半導体レーザ素子の活性層付近バンド図である。
比較例の半導体レーザ素子の活性層付近のバンド図である。
本発明の半導体レーザ素子の図2および図6とは異なる実施形態を示す端面に平行な模式的断面図である。
図9とは異なる実施例の半導体レーザ素子の活性層付近のバンド図である。
本発明の半導体レーザ素子の図2図6および図11とは異なる実施形態を示す端面に平行な模式的断面図である。
図13の活性層周辺を拡大した拡大断面図である。

0029

以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本明細書の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。なお、本発明において「上面」とは、基板においては半導体層が形成される側を示し、各半導体層においては基板から遠くなる側を示す。

0030

また、以下の実施の形態の説明では、基板として窒化物半導体結晶を用い、半導体層として窒化物半導体層を用いた窒化物半導体レーザ素子を中心として説明するが、本発明の半導体レーザ素子はこのような窒化物半導体レーザ素子のみに限られるものではない。

0031

<半導体レーザ素子>
図1は、本発明の半導体レーザ素子として窒化物半導体レーザ素子100を例にとり、その一実施形態を模式的に示した断面図である。すなわち、図1は、窒化物半導体レーザ素子100のリッジ構造中央部の共振器の長手方向に平行な断面図である。これに対し、図2も、本発明の半導体レーザ素子である窒化物半導体レーザ素子の一実施形態を模式的に示した断面図であるが、窒化物半導体レーザ素子の端面に平行な断面図であって、図1の断面図とは直交する方向の断面図である。一方、図3は、本発明の半導体レーザ素子である窒化物半導体レーザ素子の一実施形態を示すp側電極側の模式的平面図である。すなわち、図3は窒化物半導体レーザ素子のp側電極側を上方とした場合の上面図である。

0032

図1図3に示されるような本発明の窒化物半導体レーザ素子100は、n型のGaN等からなる基板10上に、少なくともn型半導体層であるn型窒化物半導体層20と、活性層30と、p型半導体層であるp型窒化物半導体層40とがこの順に積層されている。しかし、積層の順序はこれのみに限られるものではなく、たとえば図11に示されるように、基板10上に、少なくともp型半導体層であるp型窒化物半導体層40と、活性層30と、n型半導体層であるn型窒化物半導体層20とがこの順に積層されている態様とすることもできる。このように、本発明においては、基板上に少なくともn型半導体層と活性層とp型半導体層とが積層されている限り、各半導体層の積層の順序は特に限定されない。

0033

本発明において、基板10は、窒化物半導体結晶であることが好ましく、ウルツ鉱型結晶構造を有していることがより好ましく、GaN(特にウルツ鉱型結晶構造を有するGaN)であることがさらに好ましい。これは、その上に形成する各半導体層の結晶性を良好なものにすることができるとともに、活性層に後述の第2内部電界を容易に発生させることができるからである。

0034

このような基板10は、その上面、すなわち半導体層が積層される側の面が(000−1)面であることが好ましい。活性層上面を結晶性を損なうことなく容易に(000−1)面とすることができ、これにより第2内部電界を後述する所期の方向に発生させることができるからである。

0035

また、n型半導体層とp型半導体層とは、それぞれ窒化物半導体層であることが好ましく、その窒化物半導体はそれぞれウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されることが好ましい。また、活性層は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されることが好ましい。より好ましくは、n型半導体層と活性層とp型半導体層とはいずれもウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成され、基板をGaNとした場合にはこのGaNと結晶方位を同一とすることが好ましく、いずれも上面が(000−1)面となっていることが好ましい。これにより各層の下面はそれぞれ(000+1)となっていることが好ましい。なお、図2の左側の表記は、これを模式的に表わしたものである。これらの結晶構造および結晶方位が好ましい理由は後述する。

0036

図1および図2においては、基板10の裏面に、基板10に接触してn側電極80が形成されているが、このn側電極80はn型半導体層に接触させて形成することもできる。これに対し、p側電極70は、p型半導体層であるp型窒化物半導体層40に接触して形成されている。

0037

また、本発明の半導体レーザ素子は、半導体層(図2ではp型窒化物半導体層40)の一部が除去されたリッジストライプ型の構造(本発明では単に「リッジ構造」とも記す)を有することが好ましい。この場合、リッジストライプ部55以外の領域(すなわちリッジストライプ部55の側面部およびその側面部に続く平面部)には絶縁膜60が形成されていて、このリッジストライプ部55の表面部(上面部)のみに電流は注入されることになる。したがって、図2におけるこのリッジストライプ部55の表面部の幅とほぼ同等の幅を有し、活性層30を中心として長手方向に広がる領域が共振器90として作用する。本発明の半導体レーザ素子は、このような共振器90を備えるものであるが、図3の共振器90の表記は正確には共振器90の長手方向の位置を示したものである。

0038

なお、本発明において、「窒化物半導体」とは、III−V族化合物半導体において、V族元素窒素である場合の総称として用いるが、V族元素が窒素のみの場合に限られるものではなく、窒素の一部が他の元素置換されていても窒化物半導体に含めるものとする。

0039

<電極の分離>
本発明の半導体レーザ素子において、p側電極70およびn側電極80のうち少なくとも一方は、共振器90の長手方向に対して交差する分割領域95によって電気的に2領域以上に分離されていることを要する。具体的には、たとえば図1および図3に示したように、p側電極70(分割領域95によって分離される前の状態を仮定した場合の長手方向に連続して存在するp側電極)は、共振器90の長手方向に対して交差する分割領域95によってp側電極71とp側電極72とに分離される。このp側電極71とp側電極72とは、互いに電気的に分離されたものであり、便宜的にp側電極71側の領域を第1領域91と呼び、p側電極72側の領域を第2領域92と呼ぶものとする。なお、図1および図3では、p側電極70が2領域に分離される態様を示しているが、このような領域の分離は2領域以上に分離されていてもよい。また、n側電極80が分離されていてもよい。また、分割領域95には電極が形成されていないので、この分割領域95によって分離される各々の領域は電気的に分離されるものとなる。

0040

そして、第1領域91に対して通常の半導体レーザ素子と同様に電流注入を行なうと、この領域がレーザ発振を生じさせる利得領域となる(なお、この場合、第1領域91が後述の非短絡領域である)。一方、第2領域92に対しては電流注入を行なわないこととすると、この第2領域92が可飽和吸収領域となる。この可飽和吸収領域とは、利得領域で発振されたレーザ光の一部を吸収し、その吸収量がこの領域におけるキャリア密度増減に伴い変化する作用を有する領域となるため、このような可飽和吸収領域を有する本発明の半導体レーザ素子は自励発振特性を備えたものとなる。なお、このように2領域だけではなく3領域以上に電極が分離されている場合も、電流注入の有無や大小によって、利得領域または可飽和吸収領域として機能する領域がそれぞれ少なくとも1領域以上形成されることになる。

0041

なお、p型窒化物半導体層40は、GaAs系の化合物半導体またはn型窒化物半導体層20などに比べて極めて電気抵抗が高いという特徴を有する。このため、p側電極70を分割領域95により分離する場合は、この分割領域95の幅(ここでいう「幅」とは共振器90の長手方向に平行な距離(長さ)をいう)を1〜10μm程度とするだけでも、電気的な分離が可能となる。分割領域95は、上述の通り電流注入が行なわれないので可飽和吸収領域として機能するが、電極がないためにキャリアの掃き出しを十分に行なうことができない。したがって、キャリア寿命が短くならず単なる吸収領域となる可能性があるので、自励発振特性の観点からはできるだけ分割領域の幅を小さくすることが好ましい。故に、p側電極70を電気的に分離する方が、n側電極80を電気的に分離するよりも分割領域の幅を小さくしても、電気的な分離を行なうことができるため好ましい。なお、分割領域の窒化物半導体層を除去することによっても電気的な分離は可能である。

0042

<短絡>
上記のように分割領域によって分離された少なくとも1領域の電極は、該電極の反対側の電極との間で短絡されることにより短絡領域を形成するとともに、該短絡された電極以外の少なくとも1領域の電極は、該電極の反対側の電極との間で短絡されていない非短絡領域を形成することが好ましい。これを、図1および図3を例にとり具体的に説明すると次のようになる。

0043

すなわち、第1領域91に対して通常の半導体レーザ素子と同様に電流注入を行なうと、この領域がレーザ発振を生じさせる利得領域となる。この場合、第1領域91が上記でいう非短絡領域である。なぜなら、p側電極71と、n側電極80(p側電極71の反対側の電極に相当する)とが短絡されることなく電流が注入されるからである。

0044

これに対し、第2領域92は電流が注入されず可飽和吸収領域となるものであるが、この第2領域92において、さらにp側電極72と、n側電極80(p側電極72の反対側の電極に相当する)とを短絡させることにより上記でいう短絡領域とする。このように可飽和吸収領域を短絡領域とすることにより、活性層で発生するキャリアの掃き出しを促進させることができ、以ってキャリア寿命を短くすることができるため好ましい。

0045

なお、図1および図3においては、このようなp側電極とn側電極との短絡を具体的に表わしていないが、このような短絡の手段としては、たとえばワイヤボンディング導電性膜の両電極への接触など、種々の手法を用いることができる。

0046

一方、上記のように両電極を電気的に短絡させるだけではなくバイアス電圧を印加させることでもキャリア寿命を制御することが可能となる。たとえば、キャリア寿命を短くするためには、pn接合に対して逆バイアス電圧を印加することが有効である。これは、逆バイアス電圧の印加により、内部電界が大きくなるとともに、さらに空乏層が拡がることで活性層へ掛かる電界が強まる結果、キャリアの掃き出しが促進されるからである。しかしながら、当該半導体レーザ素子の実用性を考慮すると、逆バイアス電圧を印加することなく、p側電極とn側電極との短絡のみで自励発振特性を得ることが望まれる。

0047

なお、本発明において、上記のようにp側電極とn側電極とを短絡せずとも、キャリア寿命が十分に短ければ、自励発振特性を得ること(自励発振させること)は可能である。

0048

<内部電界>
本発明の半導体レーザ素子の活性層は、その少なくとも一部において、n型半導体層とp型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していることを特徴とする。これにより、本発明の半導体レーザ素子は、好適な自励発振特性を備えたものとなる。以下において、本発明の半導体レーザ素子が、自励発振特性を容易に得ること(容易に自励発振すること)ができる原理について説明する。

0049

なお、以下では、半導体レーザ素子として窒化物半導体レーザ素子100を例にとり、かつ活性層30がウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成され、その上面が(000−1)面であり、n型半導体層であるn型窒化物半導体層20がこの活性層30の[000+1]方向に位置し、p型半導体層であるp型窒化物半導体層40がこの活性層30の[000−1]方向に位置する場合について説明する。

0050

まず、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶は、図4に示すような結合構造を有している。図中IIIは、III族元素を示し、たとえばAl、Ga、In等が該当する。また図中Nは、窒素原子を示す。また、図中央に位置するIII族元素から同じく図中央に位置するNに向かう向きが[000+1]方向、それと180°反対の向きが[000−1]方向と一般に定義されるため、本明細書でもこの定義に従う。

0051

このような結晶構造では、歪みが生じていない場合は、電気双極子モーメントが互いに相殺されるため分極は現れない。しかし、圧力、張力などにより結晶格子に歪みが生じると、電気双極子モーメントが完全に相殺できなくなり、分極が現れる。そして、この分極により生じる電界を一般にピエゾ電界といい、上記の場合、このピエゾ電界は格子歪みに起因したものである。

0052

このピエゾ電界は、通常の電界と同様に方向を有しており、その方向は、格子歪みが引張応力により発生する歪み(引張歪み)であるか圧縮応力により発生する歪み(圧縮歪み)であるかに依存して変化する。上記のように活性層の上面が(000−1)面であり、その活性層の成長面内に圧縮歪みが掛かった場合にはピエゾ電界の方向は[000−1]の方向、すなわち結晶成長の方向と同じ方向に生じる。一方、その成長面内に引張歪みが掛かった場合には、ピエゾ電界の方向は上記とは逆の[000+1]方向、すなわち結晶成長の方向とは反対の方向に生じる。

0053

一方、活性層は、その上下にp型半導体層とn型半導体層とが積層されることから、内部電界としては上記のピエゾ電界に加えて、p型半導体層とn型半導体層とのpn接合による内部電界も発生する。なお、本発明においては、便宜上、このpn接合による内部電界を第1内部電界といい、ピエゾ電界のようにこの第1内部電界とは異なる種の内部電界を第2内部電界という場合がある。このpn接合による内部電界、すなわち第1内部電界の方向はn型半導体からp型半導体へ向かう方向に生じる。

0054

したがって、以上より明らかなように、pn接合による内部電界(第1内部電界)およびピエゾ電界(第2内部電界)の方向は、活性層の上面が(000+1)面または(000−1)面のどちらであるか、また活性層の結晶成長時に加わる歪みが圧縮歪みであるか引張歪みであるか、さらに活性層の上面側がp型半導体層であるかn型半導体層であるか、に依存して変化することになる。

0055

このため、基板をGaNで構成し、活性層をInGaNで構成する場合、InGaNはGaNよりも格子定数が大きいため、活性層の結晶成長面内に圧縮歪みが加わっており(すなわち活性層は圧縮歪みを受けたInGaNで構成されることになる)、活性層の上面を(000−1)面とすれば、ピエゾ電界は結晶成長方向と同じ方向である[000−1]方向に生じる。pn接合による内部電界はn型半導体層からp型半導体層へ向かう方向であるので、活性層の上面側の[000−1]方向にp型半導体層を配置し、その反対側である[000+1]方向にn型半導体層を配置すれば、pn接合による内部電界は活性層の[000−1]方向に生じ、ピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向とは同じ方向に生じることになる。すなわち、第1内部電界の方向と第2内部電界の方向が同じ方向となる。

0056

なお、このように第1内部電界の方向と第2内部電界の方向が同じ方向となる限り、本発明の効果は得られるため、上記活性層の上面が(000+1)面となる場合には、活性層に対するp型半導体層とn型半導体層との積層順序逆転させ、該p型半導体層を上記活性層の[000−1]方向に位置させることが好ましい。

0057

通常、活性層は周辺の層に比べてバンドギャップが小さく、バンドキャップが小さい材料は格子定数が大きい傾向にある。このため、活性層は、通常、結晶成長時に圧縮歪みを受ける。ウルツ鉱型結晶構造の窒化物半導体結晶では圧縮歪みを受けると、[000−1]方向にピエゾ電界が生じるので、活性層に生じるピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向とを同じ方向とするためには、活性層の[000−1]方向にp型半導体層を配置させ、その反対側である[000+1]方向にn型半導体層を配置させればよい。

0058

ここで、図5に、ピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向との異同と、バンド構造との関係を模式的に示す。図5中、(a)はピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向とが同じ方向である場合を示し、(b)はピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向とが反対方向に生じる場合を示し、(c)はピエゾ電界が発生せず、pn接合による内部電界のみが存在する場合を示す。

0059

ピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向とが反対方向に生じる場合は、ピエゾ電界が強く活性層に掛かると図5中(b)のような形のバンド構造となり、活性層内のキャリアは閉じ込められやすい状況となる。これは、本来なら、pn接合による内部電界によって電子はn型半導体層側へ、正孔はp型半導体層側へ輸送されてキャリア寿命が短くなるのに対して、pn接合の内部電界の方向とは反対の方向のピエゾ電界が活性層に掛かることにより、キャリア輸送が妨げられてキャリア寿命が短くならないという現象が示される。

0060

これに対して、ピエゾ電界が存在しない場合は、図5中の(c)のようなバンド構造から分かるとおり、pn接合による内部電界の作用によって電子はn型半導体層側へ、正孔はp型半導体層側へ掃き出されやすい状況にある。

0061

一方、さらにピエゾ電界の方向とpn接合による内部電界の方向とが同じ方向に生じる場合(図5中の(a))は、pn接合による内部電界(第1内部電界)とピエゾ電界(第2内部電界)とによる両電界の作用により、電子はn型半導体層側へ輸送され、正孔はp型半導体層側へ輸送されるので、活性層からキャリアがより掃き出されやすい状態にあることが分かる。活性層内のキャリアが掃き出されやすいと、キャリア寿命が短くなる。

0062

したがって、本発明の半導体レーザ素子において、活性層は、n型半導体層とp型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、第1内部電界とは異なる種の第2内部電界(すなわち上記のようなピエゾ電界)が発生すれば、上記の第2領域92の可飽和吸収領域にて光吸収により活性層に生じたキャリアは、その寿命が短くなるため自励発振が起こりやすくなるのである。

0063

なお、このような第2内部電界は、必ずしも活性層の全体において発生する必要はなく、その少なくとも一部において発生すれば上記のような効果を得ることができる。これは、自励発振特性に主に影響を与えるのは活性層の内のキャリアが集中して存在する領域であり、少なくともそのような領域に上記のような第2内部電界が発生していれば、本発明の効果が得られるためである。

0064

なお、図5は、活性層が空乏層内に完全に含まれる場合を想定している。活性層が空乏層内に含まれる割合が大きいほどキャリアの掃き出しは促進されて、自励発振は起こりやすくなる。

0065

一方、活性層が1または複数の井戸層と1または複数の障壁層とを有する量子井戸構造または多重量子井戸構造を有する場合は、その井戸層においてn型半導体層とp型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していれば、本発明の効果は得られる。このように、井戸層において上記のような内部電界状態とすることによって本発明の効果が得られるのは、前述の通り自励発振特性に影響を主に与えるのは、キャリアが集中して存在する領域であり、量子井戸構造または多重量子井戸構造においては井戸層にキャリアが集中して存在しているためである。

0066

一方、上記では第2内部電界として格子歪みに起因するピエゾ電界について説明したが、本発明のこのような効果は、pn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が活性層の少なくとも一部に発生していれば得られるので、このような第2内部電界としては格子歪みに起因するピエゾ電界のみに限られず、他の種類の種々の内部電界が含まれる。

0067

たとえば、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶では、歪みが加わっていない場合でも、結晶非対称性から自発分極が生じる。このような自発分極により発生する内部電界も第2内部電界として挙げることができる。ただし、GaNとInNでは、自発分極の大きさはほぼ同じであるので、活性層がInGaNである場合には、自発分極は無視できる。

0068

また、活性層が[000−1]方向と[000+1]方向の間の方向を上面としている場合にも、その結晶成長方向にピエゾ電界、つまりバンド構造に影響を与えるような第2内部電界が発生する。このピエゾ電界の方向は、結晶方位によって決まり、pn接合による内部電界の方向と同じ方向となるような結晶方位であれば、本発明の効果は得られる。

0069

また、ピエゾ電界は、活性層が上記のようなウルツ鉱型結晶構造である場合のみに限られることなく発生する。たとえば、活性層が閃亜鉛鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶で構成される場合やGaAs系半導体で構成される場合であっても、その成長方向が<111>方向であって格子歪みを受けている様な場合には、その成長方向にピエゾ電界は発生する。このため、そのピエゾ電界の方向がpn接合による内部電界と同じ方向であれば、本発明の効果は得られる。

0070

さらに、活性層が上記したような内部電界状態である限り、本発明の効果は得られるので、p型半導体層の構造および組成、ならびにn型半導体層の構造および組成は特に限定されない。したがって、p型半導体層およびn型半導体層の結晶方位は活性層と同じ結晶方位でなくてもよく、たとえば、上面が(000+1)面であっても良い。

0071

また、p型半導体層およびn型半導体層は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されていなくてもよく、たとえば、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有した窒化物半導体、ウルツ鉱型の結晶構造を有した酸化物半導体などを用いることもできる。したがって、本発明の半導体レーザ素子は、窒化物半導体レーザ素子(半導体層が窒化物半導体層で構成されるレーザ素子)に限定されるものではない。

0072

ただし、n型半導体層、活性層、およびp型半導体層は、同じ結晶構造で同じ結晶方位を有した同系統材料で構成することが好ましい。これにより、最も高品質な結晶を容易に作製することができるからである。このため、本発明の活性層が、その上面が(000−1)面であるウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶で構成される場合は、n型半導体層およびp型半導体層も同じく上面が(000−1)面であるウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶で構成されることが好ましい。なお、本発明において、同じ結晶方位を有するとは、各層(基板を含む)を構成する結晶の各上面における結晶方位が同じである場合にそれらの結晶方位が同じであると表現するものとする。

0073

また、活性層が上記のような内部電界状態である限り本発明の効果は得られるので、基板に関しても特に限定されることはない。たとえば、基板をサファイアとし、そのサファイアの(0001)面上に上面が(000−1)面であるウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体層を形成することができる。ただし、基板も、その上に積層される半導体層と同じ結晶構造で同じ結晶方位を有した同系統材料で構成することが好ましい。これにより、最も高品質な半導体層を容易に作製できるからである。そして特に、基板と活性層との結晶方位を同じ結晶方位とすることが好ましい。これにより、最も高品質な活性層を容易に作製できるためである。

0074

つまり、活性層が上面を(000−1)面とするウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶で構成される場合は、上面が(000−1)面である窒化物半導体基板を用いることが好ましく、特に比較的安価に入手できるGaN基板を用いることが特に好ましい。

0075

<半導体レーザ素子の具体的構造>
本発明の半導体レーザ素子は、図1図3に示すように、基板10上に、半導体層としてたとえば複数の窒化物半導体層が形成される。すなわち、この半導体層としては、少なくとも、n型半導体層であるn型窒化物半導体層20、窒化物半導体結晶等からなる活性層30、およびp型半導体層であるp型窒化物半導体層40が含まれる。これらは、基板10側から、n型半導体層、活性層30およびp型半導体層の順に積層された構造を有している。

0076

また、半導体層(好ましくはp型窒化物半導体層40)は、一部が除去されていて、ストライプ状(細長状)のリッジストライプ部55が設けられている。

0077

このような本発明の半導体レーザ素子は、以上の半導体層を基板上に含む限り、他の任意の層を含むことができる。以下、各構成についてさらに詳述する。

0078

<基板>
基板10は、前述の通り特に限定されるものではないが、窒化物半導体結晶で構成されることが好ましく、その窒化物半導体結晶はウルツ鉱型結晶構造を有することが好ましく、GaNであることが好ましい。より好ましくは、基板10は、ウルツ鉱型の結晶構造を有していて、上面が(000−1)面であるGaNで構成されることが好適である。

0079

このような基板10としては、上記以外にも、たとえば結晶構造としてはウルツ鉱型や閃亜鉛型などが挙げられ、材料はサファイア、SiC、GaAs、Si、AlN、AlGaN、InGaNなどが挙げられる。

0080

なお、前述の通り、活性層30としてpn接合による内部電界の方向と同じ方向のピエゾ電界を生じさせることが最も容易であることから、このような基板10としては上面が(000−1)面であるウルツ鉱型の結晶構造を有するGaNが最も好ましい。

0081

<n型半導体層>
n型半導体層としては、n型窒化物半導体層であることが好ましい。このようなn型窒化物半導体層20は、たとえば、n型バッファ層、n型コンタクト層、n型クラッド層、n型ガイド層などからなる。n型バッファ層とn型コンタクト層とは省略可能である。基板10としてGaN基板を用いた場合には、基板10上に直接、n型クラッド層を形成することもできる。この他にも、ホールブロック層を設けたり、導電性がn型でない層を一部に設けたり、特に限定なく種々の構造を用いることができる。また、n型窒化物半導体層20には、n型不純物として、Si、OなどのIV族元素またはVI族元素などのいずれか1つ以上が含まれる。中でも、Siが好ましい。不純物濃度は、5×1016cm-3〜1×1021cm-3程度の範囲とすることができる。好ましくは、1×1017cm-3〜5×1018cm-3程度である。

0082

そして、n型半導体層であるこのようなn型窒化物半導体層は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されることが好ましい。前述の通り、基板や活性層と同じ結晶構造で同じ結晶方位であることが好ましいからである。したがって、n型半導体層としては、特に上面が(000−1)面であるウルツ鉱型の結晶構造を有した窒化物半導体結晶により構成される窒化物半導体層が最も好適である。

0083

<p型半導体層>
p型半導体層としては、p型窒化物半導体層であることが好ましい。このようなp型窒化物半導体層40は、たとえばp型キャリアブロック層、p型クラッド層、p型ガイド層、p型コンタクト層などからなる。p型ガイド層とp型コンタクト層とは省略可能である。この他にも、活性層30とp型キャリアブロック層との間に中間層を設けたり、導電性がp型でない層を一部に設けたり、特に限定なく種々の構造を用いることができる。

0084

また、p型窒化物半導体層40は、p型不純物として、Mg、Be、Zn、Cなどの元素をいずれか1つ以上含む。中でも、MgまたはCが好ましい。不純物濃度は、5×1016cm-3〜1×1021cm-3程度の範囲とすることができる。好ましくは、5×1018cm-3〜2×1020cm-3程度である。

0085

そして、p型半導体層であるこのようなp型窒化物半導体層は、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されることが好ましい。前述の通り、基板や活性層と同じ結晶構造で同じ結晶方位であることが好ましいからである。したがって、p型半導体層としては、特に上面が(000−1)面であるウルツ鉱型の結晶構造を有した窒化物半導体結晶により構成される窒化物半導体層が最も好適である。

0086

<活性層>
活性層30は、上述のように、n型半導体層とp型半導体層との間に設けられている。このような活性層30は、井戸層と障壁層とを有する量子井戸構造を有していることが好ましい。また、量子井戸構造としては、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸MQW)構造とすることもできる。

0087

活性層の導電型は、特に限定されることはなく、不純物ドーピングを行なわなくてもよいし、p型不純物および/またはn型不純物を5×1016cm-3〜1×1021cm-3程度の範囲でドーピングしてもよい。

0088

このような活性層は、前述の通り、第2内部電界の発生を考慮すると、ウルツ鉱型結晶構造を有する窒化物半導体結晶により構成されることが好ましく、圧縮歪みを受けたInGaNで構成することが特に好ましい。

0089

<窒化物半導体結晶の組成など>
n型半導体層、活性層およびp型半導体層をそれぞれ構成する窒化物半導体結晶としては、上記に特に例示したものの他、たとえば、GaN、AlGaN、InGaN、AlN、InN、AlInGaNなどを挙げることができる。さらに、このような窒化物半導体結晶としては、III族元素としてB(ホウ素)が一部に置換されたものを用いてもよいし、V族元素としてのN(窒素)の一部をP(リン)、As(砒素)で置換されたものを用いてもよい。どのような材料、組成、層厚のものを用いるかは、レーザ波長帯、光閉じ込め、作製上の都合等を鑑みて適宜選択することができる。

0090

いずれの層も、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属化学気相デポジション)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy;分子線エピタキシャル)法およびスパッタ法などの気相成長法超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法またはフラックス法などの液相成長法などを用いて作製することができ、これらの各成長法をそれぞれ単独であるいは2つ以上の成長法を適宜組み合わせるなど、特に限定なく種々の成長法を用いることができる。なお、基板にサファイアを用いる場合には、成長面の制御性に優れているので、MBE法を用いることが好ましい。

0091

また、n型半導体層とp型半導体層は、上記の窒化物半導体結晶に変えてZnOまたはGaAs系等の材料により構成することもできる。

0092

<リッジ構造>
本発明の半導体レーザ素子では、好適な実施形態としてp型半導体層またはn型半導体層の少なくとも一部に、上記したストライプ状(細長状)のリッジストライプ部55が設けられていることが好ましい。このリッジストライプ部55は、電流狭窄機能と、ストライプ内外で屈折率差をつけて横方向の光閉じ込めを行なう導波路機能とを有する。

0093

リッジストライプ部55の幅(端面に平行な断面における横方向の長さ)は、1.0μm〜20.0μm程度である。光ディスクシステム光源用途などでレーザ光をシングルモードにする必要がある場合には、リッジストライプ部55の幅は、1.0μm〜3.0μm程度であるのが好ましい。ディスプレイ用途などでマルチモードでもよい場合には、最大光出力を高めるために、リッジストライプ部55の幅は、2.0μm〜20.0μm程度となる。なお、リッジストライプ部55の断面形状(端面に平行な断面形状)が台形である場合は、リッジストライプ部55の幅とは上底の長さをいうものとする。

0094

また、リッジストライプ部55の高さ(端面に平行な断面における縦方向の長さ)は、0.1μm〜2.0μm程度である。リッジストライプ部55の幅および高さは、横方向の光閉じ込めに大きく影響を及ぼすため、その点を考慮して設定することが好ましい。

0095

<共振器および端面>
本発明の半導体レーザ素子は、図1に示すように、端面110と端面120とを共振器端面とする共振器を有している。このような端面110および端面120は、基板10の成長主面に対して垂直な面であることが好ましい。また、基板10がGaNで構成される場合であってその成長主面が{0001}面となる場合、端面110および端面120は、それぞれ{1−100}面または{11−20}面とすることができる。

0096

また、端面110および端面120を劈開により形成する場合は、劈開面平坦性を考慮して{1−100}面とすることが特に好ましい。また、このような端面を形成する方法としては、劈開以外にもドライエッチングを用いてエッチミラーの端面とする方法などを挙げることができる。

0097

<絶縁膜>
p型半導体層の上面(すなわちp側電極側)には、絶縁膜60が形成されていることが好ましい。この絶縁膜60は、リッジストライプ部55の上面部分(すなわちp側電極と接する部分)の少なくとも一部においてp型半導体層を露出させるようにして形成する必要がある。

0098

また、絶縁膜60は、Si、Ti、Ta、Al、Zr、Nb、Hf、Znなどの酸化物、窒化物酸窒化物などから構成することができる。このような絶縁膜60は、単層で形成してもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。また、上記構成材料は、単結晶、多結晶アモルファスまたはこれらの混在状態といった種々の形態で用いることができる。中でも、生産の容易さ、密着性熱安定性を考慮すると、絶縁膜60は、Siの酸化物、Zrの酸化物、Alの窒化物、Siの窒化物、Siの酸化物とTiの酸化物との積層構造などにより構成することが好ましい。絶縁膜60の厚みは、50Å〜5000Å程度である。

0099

<p側電極およびその分離>
上記絶縁膜60の上面(基板から遠くなる側)には、p側電極70が形成される。このp側電極70は、リッジストライプ部55の上面部分でp型半導体層に接触する。換言すれば、このp側電極70は、リッジストライプ部55の上面部分を除き、p型半導体層とは絶縁膜60を挟むことにより絶縁されていることが好ましい。

0100

このようなp側電極70は、前述の通り、図1および図3に示されるように共振器の長手方向に対して交差する分割領域95によって電気的に2領域以上に分離されている。このような構造とすることにより、各領域(図1の場合は第1領域91と第2領域92が相当する)を独立して電気的に駆動することができる。

0101

図1に示した実施形態においては、p側電極71が形成された第1領域91とp側電極72が形成された第2領域92の2領域に分離されており、長手方向の長さが第2領域92の方が短くなっている。この場合、第1領域91のみに電流注入を行なうことで第1領域91が利得領域となり、第2領域92には電流を注入せず可飽和吸収領域とすることができる。しかし、これは一例であって、共振器90の長手方向の長さ(「共振器長」ともいう)に対して各領域の長さ(すなわち分離された各電極の長さ)をどのように割り当てるかは、所望される種々の特性を考慮して適宜設計することができる。

0102

たとえば、第2領域92を長くするほど共振器内のトータルでの光吸収量が増大し、閾値電流やスロープ効率が悪化し、閾値電流近傍での光出力の急激な立ち上がりが発生する光出力範囲が大きくなるなどのデメリットがある一方で、自励発振特性を示しやすくなる(すなわち自励発振しやすくなる)というメリットがある。この場合に限らず、閾値電流やスロープ効率などのレーザの基本特性と自励発振の起こりやすさは常にトレードオフの関係にある。この関係を打ち破るためには、可飽和吸収領域におけるキャリア寿命をより短くして、自励発振特性を示す範囲で可能な限り可飽和吸収領域を小さくするしかない。したがって、第2領域92は短い方が好ましく、少なくとも第1領域91よりも短くすることが好ましい。より好ましくは、この第2領域92は第1領域91の1/10程度の長さよりもさらに短くすることが好適である。2領域よりも多くの領域に分離されている場合でも同様の現象を考慮して適宜設計するとよい。

0103

なお、可飽和吸収領域とする領域(上記の場合第2領域92)のp側電極とn側電極とは、前述の通り、電気的に短絡されていることが好ましい。このような短絡は、たとえば対応するp側電極とn側電極とを直接ワイヤボンディングしたり、両電極間実装用のステムの端子を介することにより行なうことができる。他にも、端面などに設けられた導電性の薄膜を介するなど、種々の手法を用いることができる。

0104

また、可飽和吸収領域におけるp側電極とn側電極とは、上記のように電気的に短絡させずに、バイアス電圧を印加させることも可能である。この場合、pn接合に対して逆方向のバイアス電圧を印加させるとキャリア寿命がより短くなり、自励発振特性を向上させることができる。この場合においても本発明の半導体レーザ素子は、従来の半導体レーザ素子に比べて同等の自励発振特性を得るのに要するバイアス電圧を小さくできるという効果がある。また、半導体レーザ素子を用いるシステムの都合によって順方向のバイアス電圧しか印加できないような場合であっても、本発明の半導体レーザ素子は従来の窒化物半導体レーザ素子に比べて自励発振特性を示しやすいという効果を示す。可飽和吸収領域をレーザ光の検知に用いる場合においても光誘起電流が大きくなり検知精度が向上する効果があるので、本発明の半導体レーザ素子をそのような用途に好適に用いることができる。

0105

このようなp側電極70は、たとえばPd(パラジウム)、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Au(金)、Mo(モリブデン)、Ir(イリジウム)、Rh(ロジウム)などの金属やこれらの金属の少なくとも1種を含む合金から構成することができる。また、このようなp側電極70としては、上記のような金属または合金を単層で形成してもよいし、2層以上の積層構造として形成してもよい。中でも、コンタクト抵抗を小さくでき、安定性も高いことから、Pd/Mo、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Au/Pdの組み合わせ(積層の順序は左側の金属を半導体層側とする)が好ましい。p側電極70を積層構造に構成した場合の各層の厚みは、50Å〜5000Å程度とすることができる。一方、p側電極全体の厚みは、1000Å〜50000Åとすることが好ましい。

0106

なお、このようなp側電極70は、半導体層の積層順序により基板と接触するようにして形成することもできる。

0107

<n側電極>
n側電極80は、基板10がGaN基板のような導電性基板である場合、図1および図2に示すように、基板10の裏面(半導体層が積層される面とは反対側の面)上に基板10と接触するようにして形成することができる。この場合、n側電極80は、基板10の裏面の全面に形成してもよいし、その一部に形成してもよい。駆動電圧の上昇を抑える観点からその全面に形成することが好ましい。

0108

一方、基板10がサファイア基板のような絶縁性基板の場合には、エッチングによって他の半導体層を除去することによって露出したn型半導体層上に、n型半導体層と接触するようにしてn側電極を形成する必要がある。したがって、n側電極の生産の容易さを考慮すると、基板10としてはGaN基板を用いることが好ましい。

0109

また、n側電極80は、たとえばHf、Al、Mo、Pt、Au、W(タングステン)、Ti(チタン)、Cr(クロム)などの金属やこれらの金属の少なくとも1種を含む合金から構成することができる。また、このようなn側電極80としては、上記のような金属または合金を単層で形成してもよいし、2層以上の積層構造として形成してもよい。中でも、コンタクト抵抗を小さくでき、安定性も高いことから、Hf/Al/Mo/Pt/Au、Ti/Pt/Auの組み合わせ(積層の順序は左側の金属を半導体層側とする)が好ましい。n側電極80を積層構造に構成した場合の各層の厚みは、50Å〜5000Å程度とすることができる。一方、n側電極全体の厚みは、1000Å〜50000Åとすることが好ましい。

0110

なお、このようなn側電極80は、半導体層の積層順序によりn型半導体層と接触するようにして形成することもできる。

0111

<電極のパターンニング
絶縁膜60、p側電極70およびn側電極80は、実装の段階での利便性などを考慮して、適宜、パターニングが施されていてもよい。絶縁膜60、p側電極70およびn側電極80は、それぞれの機能を有する限りにおいて、厚み、形状、パターンなどを適宜変更することができる。たとえば、p側電極70が、リッジストライプ部55の側面に、一部または全面回りこむ形状になっていてもよい。このように構成することにより、駆動電圧を低減することが可能となる。特にp側電極70は、第1領域91(p側電極71)と第2領域92(p側電極72)の各々に対してワイヤボンディングを行ないやすいようにリッジストライプ部55から離れた領域にワイヤボンディング用のパッド電極を有していることが好ましい。

0112

コーティング膜
端面110および端面120にはそれぞれ、COD(Catastrophic Optical Damage:瞬時光学損傷)レベルを向上させたり、所望のレーザ諸特性が得られるような反射率にするために、コーティング膜200およびコーティング膜300を形成することができる。通常の半導体レーザ素子と同様に一方の反射率を他方より低くして、その側を光出射側とし、反射率の高い側を光反射側とする。反射率は光出射側が10%〜70%程度、光反射側が70〜99%程度である。このように反射率が両側の端面で異なっていると共振器内部での光強度分布が非対称になるので、可飽和吸収領域を共振器内のどの位置に配置させるかによって、自励発振特性やレーザ基本特性が異なってくる。よって、実用上の仕様などにしたがって、適宜配置を考慮する必要がある。

0113

コーティング膜200およびコーティング膜300は、Al、Si、Zr、Ta、Ga、Y、Nb、Hf、Zn、Tiなどの酸化物や、Al、Si、Ga、Bなどの窒化物または酸窒化物などにより構成することができ、単層であってもよいし2層以上に積層された多層であってもよい。このようなコーティング膜は、通常50〜1000nm程度の厚みを有することが好適である。

0114

<共振器長およびチップ幅
本発明の半導体レーザ素子の共振器長(長手方向の長さ)は、300μm〜3000μm程度の長さとすることができる。好ましくは、400μm〜1000μm程度である。また、本発明の半導体レーザ素子のチップ幅(共振器長を長手方向とした場合の横方向の長さ)は、100μm〜1000μm程度である。好ましくは、150μm〜400μm程度である。

0115

<製造方法>
本発明の半導体レーザ素子の製造方法について、半導体層として窒化物半導体層を形成する場合を例にとり、図1図3を参照して説明する。

0116

まず、MOCVD法などの結晶成長法を用いて、基板10上に、n型窒化物半導体層20、活性層30およびp型窒化物半導体層40を順次成長させる。MOCVD法以外に、MBE法やスパッタ法などの気相成長法、超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法やフラックス法などの液相成長法などを用いて形成することもできる。また、2つ以上の成長法を組み合わせることもできる。このように窒化物半導体層の形成方法としては、特に限定なく種々の成長法を用いることができる。なお、活性層において、第2内部電界を発生させるためには、臨界膜厚以下の層厚にする必要がある。臨界膜厚とは、それ以上の膜厚では結晶中にクラック転位等が生じて歪みが緩和してしまう層厚のことである。臨界膜厚の値は、歪み量によって変わり、たとえば、InGaNがGaNに対して歪んでいれば、In組成が高いほど臨界膜厚は薄くなる。臨界膜厚以下であれば、活性層は歪みを維持できるので、ピエゾ電界よりなる第2内部電界を発生させることができる。臨界膜厚は、X線回折法などで予め知ることができる。

0117

次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを用いて、p型窒化物半導体層40の少なくとも一部に、ストライプ状(細長状)のリッジストライプ部55を形成する。そして、各種真空蒸着法、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相デポジション)法などを用いて、p型窒化物半導体層40上に、そのリッジストライプ部55の側面部およびそれに続く平面部を覆うように絶縁膜60を形成する。

0118

続いて、各種真空蒸着法、スパッタ法、CVD法などを用いて、絶縁膜60上に、p型窒化物半導体層40に接触するp側電極70を形成する。この場合、特性を向上させるために、p側電極(金属膜)形成後に、100℃〜500℃程度の温度でアニール処理を行なってもよい。このようなアニール処理を行なうことによって、良好なオーミック電極を得ることができる。

0119

一方、共振器の長手方向と交差する方向に電極が形成されない分割領域95を設けるために、p側電極70に対してマスキング処理などを施す。これ以外の方法として、電極を形成した後に、マスキング処理を行なわずにフォトリソグラフィ技術を利用してウェットエッチングなどにより電極を除去することで分割領域を設けることもできる。さらに、電極だけでなく分割領域に位置する窒化物半導体層を除去することもできる。

0120

その後、基板10を分割し易くするために、基板10の裏面(窒化物半導体層が形成される側とは反対側の面)を研削または研磨することにより、基板10を70μm〜300μm程度の厚みまで薄くする。

0121

そして、各種真空蒸着法、スパッタ法、CVD法などを用いて、基板10の裏面上に、n側電極80を形成する。なお、n側電極80の形成前に、ドライエッチング、アッシング逆スパッタなどによって基板10の裏面を清浄にすることにより、n側電極80と基板10との密着性を高めることもできる。また、p側電極70と同様に、特性を向上させるために、n側電極80(金属膜)形成後に、100℃〜500℃程度の温度でアニール処理を行なってもよい。このようなアニール処理を行なうことによって、p側電極70と同様、良好なオーミック電極を得ることができる。

0122

以上の工程(ウェハプロセス)により、ウェハが形成される。
次に、上記の工程で得られたウェハを、劈開によってバー状に分割(バー分割)する。具体的には、まず、ウェハの表面および裏面の少なくとも一方に、ダイヤモンドポイントなどによってスクライブラインを形成する。このとき、所望の電極パターンが得られる位置にスクライブラインを入れる必要がある。また、電極のパターニングとバー分割位置とを調節することによって、共振器端面付近にp側電極70が形成されていない構造とすることもできる。このような構造にすることによって、デバイス特性を向上させることができる場合もある。

0123

上記のようにして形成されるスクライブラインは、劈開の補助線役割を有する。また、これとは異なる方法として、スクライブラインによらず、ドライエッチングなどで予め凹部溝を設けておくことによっても同様の役割を得ることができる。スクライブラインは、少なくともウェハの端にあればよいが、ウェハの内側に破線状に設けることで、劈開の直線性を良好にすることもできる。そして、スクライブラインの形成後、ウェハに適宜力を与えることにより劈開を行なうことができる。劈開面は、基板10の成長主面(窒化物半導体層の成長面)に対して垂直な面であるのが好ましい。

0124

また、このとき、バー分割位置によって、半導体レーザ素子の共振器長が規定される。なお、上述したように、共振器長は、300μm〜3000μm程度の長さとすることができる。好ましくは、400μm〜1000μm程度である。

0125

次に、図1に示したように、バー分割によって形成された端面110および端面120に対して、それぞれコーティング膜200およびコーティング膜300を形成する。コーティング膜200およびコーティング膜300の形成は、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法やマグネトロンスパッタ法などの各種スパッタ法を用いることができる。また、スパッタ法を2種以上を組み合わせてもよい。

0126

また、コーティング膜の成膜前および成膜後の少なくと一方のタイミングで、アルゴン酸素、窒素、水素またはこれらのガスの2種以上を含む混合ガスなどのガスを用いたプラズマ照射や、加熱処理などを行なってもよい。

0127

続いて、コーティング膜200およびコーティング膜300が形成されたバー状の素子(図示せず)を、チップ状に分割(チップ分割)する。このとき、チップ分割位置によって、チップ幅が規定される。チップ幅は、上述したように、100μm〜1000μm程度とすることができる。好ましくは、150μm〜400μm程度である。チップ分割の方法は、バー分割で用いた方法と同様、スクライブラインを形成するスクライブ法を利用するとよい。このチップ分割は、バー分割の方向に対して垂直方向の向きに行なうのが好ましい。このようにして、本発明の半導体レーザ素子が製造される。

0128

上記の製造方法により得られた本発明の半導体レーザ素子は、+(プラス)用の端子と−(マイナス)用の端子とを備えたステムに、はんだ銀ペーストなどを用いて電気的に接続される。

0129

半導体レーザ素子をジャンクションアップ方式で実装する場合には、n側電極80とステム本体とを電気的に接続し、利得領域である第1領域のp側電極と+側端子とをボンディングワイヤを介して接続する。可飽和吸収領域に相当する第2領域のp側電極は−側端子にボンディングワイヤを介して接続すると、同じく−側端子と接続するn側電極との間で電気的に短絡されることになる。また、第2領域のp側電極は、n側電極と接続されたステム本体と接続することでもn側電極と電気的に短絡することができる。

0130

また、半導体レーザ素子とステムとの間に放熱性向上のためのサブマウントを設けることもできる。この場合、サブマウントとn側電極80とを電気的に接続するとともに、サブマウントとステムの−側端子とをワイヤボンディングすればよい。可飽和吸収領域に相当する第2領域のp側電極をサブマウントとボンディングワイヤを介して接続すれば電気的な短絡ができるようになる。

0132

<用途>
本発明の半導体レーザ素子は、良好な自励発振特性を備え、容易に自励発振を行なうことができる。このため、可飽和吸収領域に逆バイアスを印加する必要がないので、BDの光源として用いる際に、システムの簡略化や小型化が可能となる。また、可飽和吸収領域を小さくしても自励発振が起こるので、閾値電流近傍での光出力の急激な立ち上がりを抑制することができる。

0133

さらに、本発明の半導体レーザ素子は、このように優れた特性を有するため、これを光源(特に読み取り光源)として用いることにより光ディスク装置に極めて好適に使用することができる。また、画像表示装置においても極めて好適に使用することができる。このように、BDなどの光ディスク用途だけでなく、画像表示を行なうディスプレイ用途においても多波長モード発振状態になることで、スペックルノイズ低減効果があるため、本発明の半導体レーザ素子は、これらの用途において極めて好適に用いることができる。

0134

一方、本発明の半導体レーザ素子は、可飽和吸収領域を流れる光誘起電流をレーザ光出力検知に用いる半導体レーザ装置においても極めて好適に用いることができる。

0135

以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0136

<実施例1>
本実施例の半導体レーザ素子を、その構造を模式的に示す図6および図7(ただしこれらの図において各層の厚みは本実施例の実際の厚みを反映していない場合もある)を参照して説明する。

0137

まず、基板10としては、n型GaN基板を用いた。この基板10の成長主面の結晶方位は(000−1)面とした(図4参照)。

0138

また、n型半導体層としてのn型窒化物半導体層20は、n型GaN層21、n型クラッド層22およびn型ガイド層23を含むように構成した。p型半導体層としてのp型窒化物半導体層40は、キャリアブロック層41、p型ガイド層42、p型クラッド層43およびp型コンタクト層44を含むように構成した。

0139

具体的には、基板10上に、MOCVD法を用いて、0.2μm(200nm)の厚みを有するn型GaN層21、2.2μm(2200nm)の厚みを有するn型Al0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層22、0.17μm(170nm)の厚みを有するn型GaNからなるn型ガイド層23、活性層30、0.007μm(7nm)の厚みを有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるキャリアブロック層41、0.10μm(100nm)の厚みを有するp型GaNからなるp型ガイド層42、0.55μm(550nm)の厚みを有するp型Al0.04Ga0.96Nからなるp型クラッド層43、0.1μm(100nm)の厚みを有するp型GaNからなるp型コンタクト層44を順次形成した。

0140

活性層30は、図7に示すように、n型ガイド層23上に、15nmの厚みを有するIn0.02Ga0.98Nからなる第1障壁層31を形成した後、この第1障壁層31上に、7.5nmの厚みを有するIn0.09Ga0.91Nからなる2つの井戸層32と、この2つの井戸層32に挟まれていて6nmの厚みを有するIn0.03Ga0.97Nからなる第2障壁層33を形成した。そして、井戸層32上に、最も上層となる15nmの厚みを有する最終障壁層34(In0.02Ga0.98N層)を形成した。すなわち、本実施例では、活性層30を、2つの量子井戸層(井戸層32)を含む多重量子井戸構造に構成した。

0141

これらの窒化物半導体層を構成する窒化物半導体結晶の成長原料としては、III族元素の原料として、トリメチルガリウム((CH3)3Ga:TMGa)、トリメチルインジウム((CH3)3In:TMIn)およびトリメチルアルミニウム((CH3)3Al:TMAl)を用い、V族元素の原料として、アンモニア(NH3)を用いた。導電性制御のための不純物であるドープ元素としては、n型がSiで原料はシラン(SiH4)を用い、p型がMgで原料はシクロペンタジエニルマグネシウム(CP2Mg)を用いた。ドーピング量は、n型GaN層21およびn型クラッド層22が4×1018cm-3、n型ガイド層23が1×1018cm-3、キャリアブロック層41が1×1019cm-3、p型ガイド層42、p型クラッド層43およびp型コンタクト層44がいずれも5×1018cm-3である。なお、活性層には、意図的なドーピングは行なわなかった。

0142

成長温度は、n型窒化物半導体層20が1025℃、活性層30が780℃、p型窒化物半導体層40が1075℃である。

0143

また、図6に示すリッジストライプ部55の形成は、フォトリソグラフィを利用したICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチング法を用いて行なった。リッジストライプ部55の幅は、1.7μmとした。また、リッジストライプ部55は、[1−100]方向に延びるように形成した。

0144

続いて、p型窒化物半導体層40上に、絶縁膜60を形成した。絶縁膜60は、SiO2/TiO2の2層構造(SiO2がp型窒化物半導体層40側)とした。層厚は、170nm/50nmである。成膜には、EB(Electron Beam)蒸着法を用いた。成膜後、フォトリソグラフィ技術などを用いて、所定のパターンの絶縁膜60を得た。

0145

次に、Pd/Mo/Auの積層構造(Pdが絶縁膜60側)からなるp側電極70を、絶縁膜60上に形成した。p側電極70の層厚は、50nm/15nm/200nmである。成膜には、EB(Electron Beam)蒸着法を用いた。成膜後、フォトリソグラフィ技術などを用いて、所定のパターンのp側電極70を得た。

0146

この際、領域分離のための分割領域が[11−20]方向に形成されるように、p側電極70が形成されない領域を周期的にパターニングした。分割領域の幅は10μmとした。また、1チップにつき領域が2つになり、各々の領域に対してワイヤボンディングが行なえるように図8のようなパターンのパッド電極とした。p側電極の積層構造のうち、Auがパッド電極を主に構成している。第1パッド電極は第1領域(p側電極71)に、第2パッド電極は第2領域(p側電極72)に、それぞれ電気的に接続されていて、その間のL字型の領域には電極が形成されておらず、この領域が分割領域95に相当する。なお、リッジストライプ部を点線で図中に示している。また、所定のバー分割位置にてバー分割を行なうと共振器長が600μmで、その中に570μm(第1領域)と20μm(第2領域)の2領域が設けられるようなパターンとなっている。また、この第2領域のp側電極72は、後述のワイヤボンディングにより、n側電極80と短絡され、該第2領域は短絡領域を形成することになる。

0147

p側電極70の形成後に、研削機および研磨機を用いて基板10の厚み(ウェハ厚)を120μmとなるように研磨した。その後、n側電極80として、基板10の裏面上にHf/Al/Mo/Pt/Au(Hfが基板側)を、EB蒸着法を用いて形成した。層厚は、5nm/150nm/36nm/18nm/250nmである。そして、金属膜形成後(p側電極70およびn側電極80の形成後)に、500℃でアニール処理を行なうことによって良好なオーミック電極を得た。

0148

その後、劈開により[11−20]方向と平行方向にウェハのバー分割を行なった。これにより、図1に示すような、対向する一対の共振器端面(端面110および端面120)を得た。端面110および端面120の結晶方位は{1−100}面である。また、バー分割は、共振器長が600μmとなるように行なった。

0149

続いて、ECRスパッタ法を用いて、共振器端面上にコーティング膜を形成した。端面110にはAlON/Al2O3/SiO2/Al2O3(AlONが端面110側)からなるコーティング膜200を形成した。層厚は20nm/110nm/68nm/60nmである。反射率は405nmにおいて30%であった。端面120にはAlON/Al2O3/(SiO2/TiO2)4(AlONが端面120側)からなるコーティング膜300を形成した(なお、「(SiO2/TiO2)4」は「SiO2/TiO2」を構成単位とする層を4層積層させたことを示す)。層厚は20nm/110nm/(68nm/44nm)4である。反射率は405nmにおいて95%であった。

0150

続いて、チップ幅が400μmとなるように、チップ分割を行なうことにより、本実施例の半導体レーザ素子である窒化物半導体レーザ素子を得た。

0151

そして、得られた窒化物半導体レーザ素子をキャンパッケージ型の半導体レーザ装置に実装した。この際、第1パッド電極(p側電極71)はステムの+端子とワイヤボンディングし、一方第2パッド電極(p側電極72)はn側電極と電気的に接続されたステムの−端子とワイヤボンディングすることで、第1領域91は利得領域となり、第2領域92はキャリア寿命の短い可飽和吸収領域となる。この結果、可飽和吸収領域は反射率の高い共振器端面(端面120)側に配置されることになる。

0152

本実施例の半導体レーザ素子について、バンド計算を行なった結果を図9に示す。本実施例においては、外部バイアス電圧は印加していない。また、本実施例の活性層はInGaNであるので、自発分極については前述のとおり無視した。また、各層はGaNの格子定数に揃うことで歪みを有しているものとした。すなわち、InGaNからなる活性層であれば必ず圧縮歪みを受けているものとした。

0153

本実施例の活性層の結晶方位は基板から引き継いでおり、(000−1)面が上面である。このため、活性層の井戸層にはpn接合による第1内部電界と同じ方向に格子歪み(格子不整合による歪み)に起因したピエゾ電界(第2内部電界)が生じており、図9に示すように井戸層ではn型半導体層側が下がるようなバンド図になる。

0154

これに対し、比較例1として、p型半導体層、活性層、n型半導体層が、いずれも(000+1)面を上面とする点のみが本実施例の半導体レーザ素子と異なる点を除き、他は本実施例と全く同様にして半導体レーザ素子を作製し、この半導体レーザ素子についてもバンド計算を行なった。その結果を図10に示す。この比較例1においても、外部バイアス電圧は印加していない。

0155

比較例1の半導体レーザ素子では、本実施例の半導体レーザ素子と大きさが同じで方向が反対方向のピエゾ電界が各半導体層の界面に生じる。したがって、比較例1の半導体レーザ素子の活性層の井戸層には、pn接合による第1内部電界と反対の方向にピエゾ電界(第2内部電界)が生じる。

0156

このため、図9および図10を比較すると明らかなように、本実施例の半導体レーザ素子では、その井戸層においてn型半導体層側が下がるようなバンドになっているのに対して、比較例1の半導体レーザ素子では、その井戸層においてn型半導体層側が上がるようなバンドとなっている。

0157

この比較例1のようなバンド図であると、光吸収によって活性層(井戸層)に生じたキャリアは井戸層から外へ掃き出されにくくなる。

0158

因みに、この比較例1の場合、逆バイアス電圧を印加すると、n型半導体層側が引き下げられるようなバンドの形となり、逆バイアス電圧の増加にしたがい次第にキャリアが掃き出されやすくなる。すなわち、比較例1では、逆バイアス電圧を5V印加して始めて自励発振が観測された。なお、自励発振の有無は光オシロスコープで行なうことができる。

0159

これに対して、本実施例では、逆バイアス電圧を印加しなくても、井戸層においてn型半導体層側が下がるバンドの形になっているので、光吸収によって活性層(井戸層)に生じたキャリアは速やかに井戸層外へ掃き出され、第1内部電界と第2内部電界の作用によって、電子はn型半導体層側、正孔はp型半導体層側へ速やかに拡散していく。

0160

したがって、本実施例では活性層に発生したキャリアの寿命を短くすることができるのに対して、比較例1の活性層ではキャリヤ寿命を短くすることは期待できない。これにより、本実施例の半導体レーザ素子は、容易に自励発振特性を示す(自励発振しやすい)ものとなる。現に、本実施例の半導体レーザ素子では、逆バイアス電圧を印加することなく自励発振が確認できた。

0161

このように本実施例の半導体レーザ素子により優れた効果が示されるのは、本発明のような分離電極タイプ(p側電極およびn側電極の少なくとも一方が共振器の長手方向に対して交差する分割領域によって電気的に2領域以上に分離されたもの)の半導体レーザ素子において、活性層が、少なくともその一部において(本実施例では井戸層において)、n型半導体層とp型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界(本実施例では格子歪みに起因するピエゾ電界)が発生していることによるものである。

0162

なお、本発明においては、上記活性層のうち、障壁層においても、pn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していることが好ましい。しかし、障壁層には、井戸層と異なり、第1内部電界の方向とは反対方向の第2内部電界が生じることがある。図9では、ピエゾ電界(第2内部電界)は、井戸層において生じた方向とは反対方向に生じ(すなわち第1内部電界と反対の方向に生じ)、その結果、第2内部電界はpn接合による第1内部電界によって相殺されるため、第1内部電界が第2内部電界よりも大きい場合に限って井戸層と同方向の内部電界(第1内部電界と第2内部電界とが相殺された結果の内部電界)を障壁層が有することになる(本実施例である図9はこの場合を示している)。

0163

したがって、本発明の効果は、活性層が量子井戸構造または多重量子井戸構造を有する場合、少なくとも井戸層においてn型半導体層とp型半導体層とのpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、該第1内部電界とは異なる種の第2内部電界が発生していれば得られる。

0164

なお、上記の点を満たしている限り、本実施例の半導体レーザ素子の構造以外の構造として種々の変形を行なうことができる。たとえば、窒化物半導体層に代えて、半導体層(活性層)としてAlGaInP系またはAlGaAs系等の半導体層を、GaAs{111}基板上に作製すれば、格子不整合に起因するピエゾ電界が発生するので、本発明の効果を奏することができる。

0165

ただし、窒化物半導体層はバンドギャップが大きいというと特徴を有するため、pn接合による第1内部電界が他の半導体系に比べて大きい。そのため、窒化物半導体層は分離電極タイプの半導体レーザ素子において自励発振を得るのにより適しており、本発明の効果を顕著に示すことができる。

0166

なお、本実施例では可飽和吸収領域である第2領域92のp側電極72とn側電極80とが短絡されているが、必ずしも短絡されている必要はない。この短絡は可飽和吸収領域のキャリア寿命をより短くするためのものであるので、短絡せずとも自励発振が得られるような場合は、あえて短絡を行なう必要はない。また、半導体層の成長条件によっては、p型半導体層やn型半導体層の一部が活性層の結晶方位と異なるものになる可能性もあるが、本発明の効果は、活性層について所望の結晶方位となっていれば得られる。なお、結晶成長の上面が(000+1)面であるか(000−1)面であるかは、CBED(convergent beam electron diffraction)法またはCAICISSCoAxial Impact Collision Ion Scattering Spectroscopy)などの手法で確認することができる。

0167

本実施例の半導体レーザ素子は、可飽和吸収領域に逆バイアス電圧を印加することなく自励発振が得られるので、BDの光源(特に読み取り光源)として用いる際に、システムの簡略化や小型化が可能となる。また、可飽和吸収領域を小さくしても自励発振が起こるので、閾値電流近傍での光出力の急激な立ち上がりを抑制することができる。

0168

また、可飽和吸収領域を流れる光誘起電流をレーザ光出力検知に用いる半導体レーザ装置に本実施例の半導体レーザ素子を用いた際にも、光誘起電流が増大するので検知能力が向上する。

0169

また、BD用途だけでなく、画像表示を行なうディスプレイ用途としても、多波長モード発振状態になることで、スペックルノイズの低減効果がある。

0170

<実施例2>
本実施例の半導体レーザ素子は、窒化物半導体レーザ素子であって、基板10としてp型GaN基板を用い、かつ図11に示すように活性層30の上面が(000+1)面であって、活性層30の下側、すなわち[000−1]方向にp型窒化物半導体層40が位置し、[000+1]方向にn型窒化物半導体層20が位置している点、およびそれに伴いp側電極70とn側電極80との配置関係が上下逆転している点を除き、実施例1の半導体レーザ素子と同様の構造を有している。

0171

本実施例の半導体レーザ素子においても、活性層の井戸層にはpn接合による第1内部電界の方向と同じ方向に、格子歪み(格子不整合による歪み)に起因したピエゾ電界(第2内部電界)が生じる。本実施例の半導体レーザ素子のバンド計算の結果を示すと、後述の図12と同様のものとなり、実施例1でバンド計算を実施した構造(図9)を基準として、半導体層の積層構成上下反転させた場合についての計算結果となる。このように、本実施例の半導体レーザ素子のような半導体層の積層構成によっても本発明の効果が得られることが分かる。

0172

<実施例3>
本実施例は、半導体レーザ素子として窒化物半導体レーザ素子に関するものであり、その端面に平行な断面の模式的な断面図を図13(各層の厚みを正確には反映していない)に示す。

0173

まず、基板10として、上面を(000+1)面とするn型GaNを用いた。実施例2のようにp型GaNからなる基板を用いると、実施例1の半導体層の積層構成を上下反転させることで、所望の窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。しかし、そのようなp型GaNからなる基板は入手が困難であるので、n型GaN基板を用いた。

0174

図13に示すように、p型窒化物半導体層40は、p型クラッド層43、p型ガイド層42、キャリアブロック層41を含むように構成し、n型窒化物半導体層20は、n型ガイド層23、n型クラッド層22、n型GaN層21を含むように構成した。

0175

具体的には、基板10上に、MOCVD法を用いて、1.0μm(1000nm)の厚みを有するp型Al0.04Ga0.96Nからなるp型クラッド層43、0.10μm(100nm)の厚みを有するp型GaNからなるp型ガイド層42、0.007μm(7nm)の厚みを有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるキャリアブロック層41、活性層30、0.17μm(170nm)の厚みを有するn型GaNからなるn型ガイド層23、0.55μm(550nm)の厚みを有するn型Al0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層22、0.1μm(100nm)の厚みを有するn型GaN層21を順次形成した。

0176

活性層30は、図14に示すように、キャリアブロック層41上に、15nmの厚みを有するIn0.02Ga0.98Nからなる第1障壁層31を形成した後、この第1障壁層31上に、7.5nmの厚みを有するIn0.09Ga0.91Nからなる2つの井戸層32と、この2つの井戸層32に挟まれていて6nmの厚みを有するIn0.03Ga0.97Nからなる第2障壁層33を形成した。そして、井戸層32上に、最も上層となる15nmの厚みを有する最終障壁層34(In0.02Ga0.98N層)を形成した。すなわち、本実施例では、実施例1と同様、活性層30を、2つの量子井戸層(井戸層32)を含む多重量子井戸構造に構成した。

0177

これらの窒化物半導体層を構成する窒化物半導体結晶の成長原料としては、III族元素の原料として、トリメチルガリウム((CH3)3Ga:TMGa)、トリメチルインジウム((CH3)3In:TMIn)およびトリメチルアルミニウム((CH3)3Al:TMAl)を用いた。また、V族元素の原料として、アンモニア(NH3)を用いた。導電性制御のための不純物であるドープ元素としては、n型がSiで原料はシラン(SiH4)を用い、p型がMgで原料はシクロペンタジエニルマグネシウム(CP2Mg)を用いた。ドーピング量は、n型GaN層21、n型クラッド層22が4×1018cm-3、n型ガイド層23が1×1018cm-3、キャリアブロック層41が1×1019cm-3、p型クラッド層43、p型ガイド層42がいずれも5×1018cm-3である。

0178

また、活性層には意図的なドーピングは行なわなかった。
成長温度は、p型窒化物半導体層40が1075℃、活性層30が780℃、n型窒化物半導体層20が1025℃である。

0179

また、図13に示すリッジストライプ部55の形成は、フォトリソグラフィを利用したICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチング法を用いて行なった。実施例1と異なり、n型窒化物半導体層20の一部を除去してリッジストライプ部55を形成した。リッジストライプ部55の幅は、1.7μmとした。また、リッジストライプ部55は、[1−100]方向に延びるように形成した。

0180

また、絶縁膜60とn側電極80とを図13に示すとおり形成した。絶縁膜60は実施例1と同様の材料および構成とし、同様の方法で形成した。n側電極80は、実施例1と同じ材料および構成とし、実施例1のp側電極70に相当する位置に形成した。

0181

一方、p側電極70は実施例1と同じ方法で基板10の裏面に形成することはできないので、リッジストライプ部55が設けられていない領域において、p型クラッド層43が露出される深さまでICPドライエッチング法を用いて掘り込んで(各半導体層を除去し)、露出されたp型クラッド層43の上面に接触してp側電極70を形成した。p側電極70の材料と構成は、実施例1と同じである。

0182

続いて、n側電極80を、共振器の長手方向に対して交差する分割領域95によって電気的に2領域に分離した。ただし、n型窒化物半導体層20はp型窒化物半導体層40に比べて低抵抗であるので、n側電極80を分離するだけでは隣接する領域間を電気的に十分に分離することは困難であるので、分割領域95の位置にあるn型窒化物半導体層20をICPドライエッチング法を用いて活性層の上部辺りまで掘り込んだ(除去した)。この工程はリッジストライプ部55の形成と同時に行なった。

0183

その後、実施例1と同じ方法で基板の薄化、端面の形成、コーティング膜の形成、チップ分割、実装などを行なうことにより、本実施例の窒化物半導体レーザ素子を得た。

0184

本実施例の半導体レーザ素子についてバンド計算を行なうと、図12のようになり、実施例1と同様に井戸層からキャリアが掃き出されやすい構造になっているので、可飽和吸収領域のキャリア寿命を短くできる。そのため、本実施例の半導体レーザ素子は自励発振が起こりやすくなっており、逆バイアスを印加することなく自励発振が得られた。したがって、本実施例の半導体レーザ素子は、実施例1の半導体レーザ素子と同様に優れた効果を示すものであった。

0185

上記で説明した本発明の実施の形態の半導体レーザ素子は、上記した実施例に限定されるものではなく、上記した実施例以外の構成とすることもできる。

0186

以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。

実施例

0187

今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

0188

10基板、20 n型窒化物半導体層、21 n型GaN層、22 n型クラッド層、23 n型ガイド層、30活性層、31 第1障壁層、32井戸層、33 第2障壁層、34最終障壁層、40 p型窒化物半導体層、41キャリアブロック層、42 p型ガイド層、43 p型クラッド層、44 p型コンタクト層、55リッジストライプ部、60絶縁膜、70,71,72 p側電極、80 n側電極、90共振器、91 第1領域、92 第2領域、95 分割領域、100窒化物半導体レーザ素子、110,120 端面、200,300コーティング膜。

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