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課題・解決手段

本発明は、熱ショックタンパク質(Hsp)およびタンパク質導入ドメイン(PTD)のコンジュゲートを含有する、心疾患神経変性疾患、およびアポトーシスにより引き起こされる疾患および病状治療するための薬学的組成物に関する。本発明に従って、PTD-Hsp70は、低酸素条件下でアポトーシスを効果的に抑制する。

概要

背景

アポトーシスは、“プログラムされた細胞死”とも呼ばれ、細胞が種々のシグナル刺激を受けたとき、すなわち細胞がもう必要でないとき、または細胞が、その有機体の完全な状態に対する脅威を表すときに、細胞が自身を破壊するメカニズムである。アポトーシスは、活発で、よく制御されたプロセスであり、これは、成体個体の生命を維持するのに必要なだけでなく、胚形成形態形成および変態の間にも必要であり、ホルモンおよび種々の化学物質により引き起こされる細胞死と関連している。アポトーシスが不適切な時期に起こったり、あるいは不可欠なアポトーシスが阻害されたりすると、種々の疾患、たとえば癌および自己免疫疾患が起こり得る。

アポトーシスは、核酸凝縮およびDNAの一定サイズへの崩壊、並びに細胞内小器官小胞体細胞膜等の変化を含む、種々の現象につながる。また、死細胞が、周囲の細胞に悪影響を及ぼすことなく食作用により除去され得るように、アポトーシスは進行する。

また、単離された移植用臓器のアポトーシスも起こり得る。単離された臓器におけるアポトーシスの妨害は、臓器移植成功率を高める。単離された臓器を移植まで保護するための保護溶液は、臓器移植の成功率を高めるための重要なファクターである。現在広く使用される臓器保護溶液には、Viaspan TM、ウィスコシン大学の溶液HTK TM (ヒスチジン-トリプトファンケトグルタレート溶液)、SGF (シリカゲル濾過血漿) 等が含まれる。

再灌流は、一般に有益であると考えられるが、幾つかのメカニズムにより組織損傷を引き起こす。臨床的に、開心術心臓移植、および心疾患逆転において、虚血−再灌流による損傷に対する心筋の保護は、最大の臨床的関心事の問題である。再灌流による酸素供給(再酸素供給)の回復後の低酸素性損傷の増悪は、他のタイプの臓器移植において、並びに肝臓、腸、脳、腎臓、および他の虚血性症候群において、細胞損傷の重要なメカニズムである。

有機保護溶液の組成は、重要なファクターであり、近年、臓器の乾燥を防止し、臓器の浸透圧を維持するためのファクターに加えて、臓器のアポトーシスを阻害するための種々の化合物を添加する方法が提案されている。

シャペロンは、細菌、植物および動物細胞において、生理的およびストレス条件下で、タンパク質フォールディングを助ける、機能的に関連のあるタンパク質グループである。(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004))。また、シャペロンは、タンパク質複合体トランスロケーションを促進し、分解のための基質提示するのを助け、タンパク質の凝集を抑制する。重要なサブグループの高度に保存されたシャペロンは、ATP依存性熱ショックタンパク質(Hsps)である。

正常な条件下で、Hspsは、新たに合成されたポリペプチド鎖細胞内分子シャペロンとして機能し、フォールディングおよびサブユニット組立ての間、並びに細胞より小さい(subcellular)膜を通って適切な細胞コンパートメントへのタンパク質のトランスロケーションの間に、それらの凝集を防止する。幾つかのHspsは、不適切にフォールディングされたタンパク質、および細胞ストレス(たとえば、酸化および高温)の条件下で安定性の低下した結果フォールディングされていないタンパク質の除去に関与する。ほとんどのHspファミリーは、ストレス誘導性メンバーに加えて、構成的に発現されるメンバーを含有する。

熱ショックタンパク質70(Hsp70)は、多くの細胞内メカニズムに関与する、高度に保存されたタンパク質シャペロンである。Hsp70は、細胞内ストレスにより誘導され、ストレス誘導性アポトーシスを抑制する。また、Hsp70は、免疫調節能を有し、抗炎症性サイトカイン生産を刺激することが知られている。(Van Eden, W., et al., Nat. Rev. Immunol. 5:318-330 (2005) 参照)。加えて、Hsp70は、腫瘍壊死因子(TNF)により引き起こされる炎症性ショックを防止し、抗原提示を誘導する。

Hsp70を含むHspファミリーのメンバーは、慢性炎症性疾患においてT細胞を調節して、炎症により引き起こされるアポトーシスを防止または中断することが知られている。(Van Eden, W., et al., Nat. Rev. Immunol. 5: 318-330 (2005) 参照)。たとえば、Hsp70由来ペプチドが、実験的に誘導された関節炎に対して保護を誘導することが示された(Tanaka, S., et al., J. Immunol. 163: 5560-5565 (1999))。

神経変性疾患、たとえばアルツハイマー病およびハンチントン病ポリグルタミン病)は、誤ってフォールディングされ凝集したタンパク質の異常な蓄積によりおそらく引き起こされる典型的な疾患であり、これら疾患は、Hsp70のシャペロンとしての作用により阻害されると考えられる。アポトーシスは、虚血後ニューロン死ぬ方法の一つである。海馬のCA1ニューロンにおけるHsp70の過剰発現は、ニューロンの生存が増大する条件下において、タンパク質凝集の形跡を減少させることが示されている(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004))。

また、虚血性および低酸素性アポトーシスは、異常な酸化の条件下において安定性の低下した結果、不適切にフォールディングされているかまたはフォールディングされていないタンパク質の除去不良によって起こり得る。Hsp70は、コシペロンHsp40と共に作用して、グルコースまたは酸素−グルコースの欠乏時に、大脳星状細胞の虚血性または低酸素性アポトーシスを抑制することが報告されている(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004)参照)。これらインビトロ傷害モデルは、発作の間の虚血性損傷に関与する傷害の局面の幾つかを模倣する。

更に、糖尿病におけるHsp70の機能も知られており、膵臓ベータ細胞に対するラジカル誘導性傷害は、Hsp70の過剰発現により抑制される(Burkart, V., et al.,JBC 275: 19521-19528 (2000); およびMargulis et al., Diabetes 40: 1418-1422 (1994)参照)。

Hsp70などの巨大分子をインビトロまたはインビボにおいて細胞に効率よくデリバーする方法が望まれる。一般に、生細胞は、タンパク質および核酸などの巨大分子を透過させることができない。小さいサイズを有する幾つかの物質のみが、生細胞の膜を低速度で通過し、細胞内の細胞質細胞小器官または核に入ることができる。ほとんどの巨大分子は、細胞に入ることができず、かかる巨大分子を使用した治療、予防および診断に制限を課す。治療、予防および診断の目的のために調製される物質は、効果的な量で細胞にデリバーされなければならないため、これら物質を細胞にデリバーするための種々の方法が開発されている。

巨大分子をインビトロにおいて細胞にデリバーするための方法には、エレクトロポレーションリポソームを用いた膜融合、DNAでコーティングされたマイクロプロジェクタイルを用いた高速ボンバードメントリン酸カルシウム−DNA沈殿物とのインキュベーションDEAE-デキストラン介在性トランスフェクション改変されたウイルスの核酸による感染、および単一細胞への直接マイクロインジェクションが挙げられる。近年、ナノ粒子を使用して巨大分子をインビボまたはインビトロにおいて細胞にデリバーする試みが為されているが、これらの方法は、技術レベルおよび臨床効果の観点から、まだ初期段階にある。また、これらの方法は、典型的には、巨大分子を細胞の幾つかのみにデリバーすることができ、巨大分子を細胞にデリバーする時間および効率は、臨床的に適用可能な段階にまだ達していない。また、これらの方法は、ターゲット細胞以外の多数の細胞に望ましくない影響を及ぼし得る。よって、細胞にダメージを与えることなく、生理的に活性な巨大分子をインビボおよびインビトロの両方において細胞に効率よくデリバーする一般的方法が求められている。

その結果、タンパク質トランスダクションドメイン(PTDs)が研究された。PTDsの研究のなかで最もよく研究されたのは、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)の転写因子であるTatタンパク質である(Schwarze S.R., et al., Science 285(5433): 1569-1572 (1999)参照)。このタンパク質は、正電荷アミノ酸が集中して分布したアミノ酸残基45-57(YGRKKRRQRRR)からなる場合、86アミノ酸からなる完全な形態の場合と比べて、効率よく細胞膜を通過することが見出された(Fawell, S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 664-668 (1994)参照)。PTDとして機能することが見出された他のアミノ酸配列には、HSV-1(単純ヘルペスウイルスタイプ1)のVP22タンパク質のアミノ酸残基267-300(Elliott, G., et al., Cell 88: 223-233 (1997)参照)、およびショウジョウバエ(Drosophila)のANTP(アンテナペディア(Antennapedia))タンパク質のアミノ酸残基339-355(Schwarze, S.R., et al., TrendsPharmacol Sci. 21: 45-48 (2000)参照)が含まれる。

PTDsを使用して物質を細胞へデリバーするための技術は、細菌で産生された医学的および薬理学的組換えタンパク質を所望の動物細胞にデリバーすることにより、天然の構造および機能を有する医学的タンパク質の産生を可能にする。

概要

本発明は、熱ショックタンパク質(Hsp)およびタンパク質導入ドメイン(PTD)のコンジュゲートを含有する、心疾患、神経変性疾患、およびアポトーシスにより引き起こされる疾患および病状を治療するための薬学的組成物に関する。本発明に従って、PTD-Hsp70は、低酸素条件下でアポトーシスを効果的に抑制する。A

目的

本発明の一つの目的は、熱ショックタンパク質(Hsp)ポリペプチドをインビボでデリバーすることにより、アポトーシスおよびアポトーシスにより引き起こされる疾患の発症を効果的に抑制することである

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

タンパク質導入ドメイン(PTD)および熱ショックタンパク質(Hsp)を含む融合タンパク質であって、HspがHsp70またはcvHspである融合タンパク質。

請求項2

前記Hsp70が、HSPA1A、HSPA1B、HSPA1L、HSPA2A、HSPA2B、HSPA4、HSPA5、HSPA6、HSPA7、HSP8AおよびHSP9Aからなる群より選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項3

前記Hsp70がHSPA1Aである、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項4

前記融合タンパク質が、(i) 配列番号11;(ii)配列番号12;(iii) 配列番号13;(iv)配列番号14;(v) 配列番号15;(vi)配列番号16;(vii) 配列番号17;(viii)配列番号18;(ix)配列番号19;(x) 配列番号20; および(xi)配列番号21からなる群より選択されるHsp70アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項5

前記融合タンパク質が、配列番号22のcvHspアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項6

前記融合タンパク質が、配列番号11のHspA1Aアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項7

前記PTDが、(i) 配列番号1;(ii)配列番号2;(iii) 配列番号3;(iv)配列番号4;(v) 配列番号5; (vi)配列番号6;(vii) 配列番号7;(viii)配列番号8; および(ix)配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項8

前記PTDおよび前記熱ショックタンパク質が、直接的な共有結合ペプチド結合、またはリンカーにより互いに連結される、請求項1に記載の融合タンパク質。

請求項9

前記リンカーが、1〜5個のアミノ酸を含む非開裂リンカーである、請求項8に記載の融合タンパク質。

請求項10

前記リンカーが、Gly-Gly-Glyを含む、請求項8に記載の融合タンパク質。

請求項11

前記リンカーが、開裂リンカーである、請求項8に記載の融合タンパク質。

請求項12

請求項1に記載の融合タンパク質を、一または複数の薬学的に許容可能な賦形剤と混合して含む薬学的組成物

請求項13

少なくとも一つの抗血小板薬抗凝固薬抗血栓薬、またはHspコシペロン(co-chaperone)を更に含む、請求項12に記載の薬学的組成物。

請求項14

PTD、並びに(i) 配列番号11;(ii)配列番号12;(iii) 配列番号13;(iv)配列番号14;(v) 配列番号15;(vi)配列番号16;(vii) 配列番号17;(viii)配列番号18;(ix)配列番号19;(x) 配列番号20; (xi)配列番号21; および(xii) 配列番号22からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質。

請求項15

細胞組織または器官生存能力を長期化するための方法であって、細胞集団、組織または器官を、前記細胞集団、組織または器官の一または複数の細胞でアポトーシスを抑制するのに効果的な量のPTD-Hspと接触させ、これにより、前記細胞集団、組織または器官の生存能力を、未処理の細胞集団、組織または器官と比較して長期化する方法。

請求項16

前記細胞集団、組織または器官を、生体外(ex vivo)または生体内(in vivo)でPTD-Hsp溶液と接触させる、請求項15に記載の方法。

請求項17

前記細胞集団における細胞が、分化した細胞または前駆細胞である、請求項15に記載の方法。

請求項18

前記細胞集団における細胞が、幹細胞である、請求項15に記載の方法。

請求項19

前記幹細胞が、造血幹細胞間葉系幹細胞間質系幹細胞または神経幹細胞である、請求項18に記載の方法。

請求項20

前記造血幹細胞が、それを必要としている個体に移植され、前記造血幹細胞が、血液細胞に分化することができる、請求項19に記載の方法。

請求項21

前記個体が、白血病または血液の癌の患者である、請求項20に記載の方法。

請求項22

前記間葉系幹細胞が、それを必要としている個体に移植され、前記間葉系幹細胞が、骨細胞軟骨細胞含脂肪細胞または心筋細胞に分化することができる、請求項19に記載の方法。

請求項23

前記間葉系幹細胞が、心臓に移植される、請求項19に記載の方法。

請求項24

前記心臓が、梗塞心臓である、請求項23に記載の方法。

請求項25

前記間葉系幹細胞が、心筋細胞に分化することができる、請求項23または24に記載の方法。

請求項26

前記神経幹細胞が、それを必要としている個体に移植され、前記神経幹細胞が、神経細胞または非神経細胞に分化することができる、請求項19に記載の方法。

請求項27

前記非神経細胞が、星状膠細胞または稀突起膠細胞である、請求項26に記載の方法。

請求項28

前記細胞集団における細胞が、神経系細胞(neural cell)、線維芽細胞平滑筋細胞腫瘍細胞造血細胞単球マクロファージ上皮細胞ケラチノサイト、神経細胞(nerve cell)、内皮細胞顆粒球赤血球リンパ球および血小板からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。

請求項29

前記神経系細胞が、ニューロンである、請求項28に記載の方法、

請求項30

前記細胞集団における細胞が、損傷細胞であり、前記接触が、前記損傷細胞の再生につながる、請求項15に記載の方法。

請求項31

前記細胞集団における細胞が、対象の生成物を産生し、これにより、前記対象の生成物のインビトロでのバイオ生産を増大させる、請求項15に記載の方法。

請求項32

前記接触が、移入(transfusion)の間に起こる、請求項15に記載の方法。

請求項33

前記接触が、前記細胞集団、組織または器官の移植の間に起こる、請求項15に記載の方法。

請求項34

前記器官または組織の再灌流により引き起こされる前記損傷細胞における損傷が、減少する、請求項30に記載の方法。

請求項35

前記接触が、前記細胞集団、組織または器官の切除の前または切除と同時に、前記細胞集団、組織または器官のドナーにPTD-Hspを投与することによる、請求項15に記載の方法。

請求項36

前記器官が固形の器官である、請求項35に記載の方法。

請求項37

前記固形の器官が、心臓、膵臓腎臓または肝臓から選択される、請求項36に記載の方法。

請求項38

前記器官が心臓である、請求項37に記載の方法。

請求項39

前記PTD-Hspが溶液中にある、請求項15に記載の方法。

請求項40

前記溶液が、低温保存溶液である、請求項39に記載の方法。

請求項41

前記溶液が、ある濃度のガラス化(vitrification)組成物を更に含み、前記ガラス化が、細胞集団、組織または器官の中、および溶液中の両方で起こる、請求項40に記載の方法。

請求項42

アポトーシスの上昇レベルにより特徴づけられる病的状態治療方法であって、かかる治療を必要とする個体に、その状態を治療するのに効果的な量のPTD-Hspを投与することを含む方法。

請求項43

前記病的状態が、ストレス誘導性病状である、請求項42に記載の方法。

請求項44

前記ストレス誘導性の病状が、虚血イベントの結果である、請求項43に記載の方法。

請求項45

前記虚血イベントが、虚血性脳梗塞による発作、虚血性急性腎不全、腸の虚血心筋梗塞による虚血性心疾患再灌流後心筋の虚血および障害、肝臓の虚血、脳の虚血、および網膜虚血からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。

請求項46

前記病的状態が、慢性変性疾患である、請求項42に記載の方法。

請求項47

前記慢性変性疾患が、アルツハイマー病パーキンソン病ハンチントン病多発性硬化症筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄延髄萎縮症脱神経性萎縮症、脊髄筋ジストロフィー(SMA)、網膜色素変性および緑内障小脳変性症および新生児黄疸耳硬化症、発作、痴呆、並びに連続的な遅発性神経細胞壊死(DND) からなる群より選択される神経変性疾患である、請求項46に記載の方法。

請求項48

前記慢性変性疾患が、変性萎縮である、請求項46に記載の方法。

発明の分野

0001

本発明は、熱ショックタンパク質(Hsp)などの対象分子およびタンパク質導入ドメイン(PTD)のコンジュゲートを含有する、心疾患神経変性疾患、およびアポトーシスにより引き起こされる疾患および病状治療するための新規薬学的組成物、並びに前記薬学的組成物をデリバーするための方法に関する。

背景技術

0002

アポトーシスは、“プログラムされた細胞死”とも呼ばれ、細胞が種々のシグナル刺激を受けたとき、すなわち細胞がもう必要でないとき、または細胞が、その有機体の完全な状態に対する脅威を表すときに、細胞が自身を破壊するメカニズムである。アポトーシスは、活発で、よく制御されたプロセスであり、これは、成体個体の生命を維持するのに必要なだけでなく、胚形成形態形成および変態の間にも必要であり、ホルモンおよび種々の化学物質により引き起こされる細胞死と関連している。アポトーシスが不適切な時期に起こったり、あるいは不可欠なアポトーシスが阻害されたりすると、種々の疾患、たとえば癌および自己免疫疾患が起こり得る。

0003

アポトーシスは、核酸凝縮およびDNAの一定サイズへの崩壊、並びに細胞内小器官小胞体細胞膜等の変化を含む、種々の現象につながる。また、死細胞が、周囲の細胞に悪影響を及ぼすことなく食作用により除去され得るように、アポトーシスは進行する。

0004

また、単離された移植用臓器のアポトーシスも起こり得る。単離された臓器におけるアポトーシスの妨害は、臓器移植成功率を高める。単離された臓器を移植まで保護するための保護溶液は、臓器移植の成功率を高めるための重要なファクターである。現在広く使用される臓器保護溶液には、Viaspan TM、ウィスコシン大学の溶液HTK TM (ヒスチジン-トリプトファンケトグルタレート溶液)、SGF (シリカゲル濾過血漿) 等が含まれる。

0005

再灌流は、一般に有益であると考えられるが、幾つかのメカニズムにより組織損傷を引き起こす。臨床的に、開心術心臓移植、および心疾患の逆転において、虚血−再灌流による損傷に対する心筋の保護は、最大の臨床的関心事の問題である。再灌流による酸素供給(再酸素供給)の回復後の低酸素性損傷の増悪は、他のタイプの臓器移植において、並びに肝臓、腸、脳、腎臓、および他の虚血性症候群において、細胞損傷の重要なメカニズムである。

0006

有機保護溶液の組成は、重要なファクターであり、近年、臓器の乾燥を防止し、臓器の浸透圧を維持するためのファクターに加えて、臓器のアポトーシスを阻害するための種々の化合物を添加する方法が提案されている。

0007

シャペロンは、細菌、植物および動物細胞において、生理的およびストレス条件下で、タンパク質フォールディングを助ける、機能的に関連のあるタンパク質グループである。(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004))。また、シャペロンは、タンパク質複合体トランスロケーションを促進し、分解のための基質提示するのを助け、タンパク質の凝集を抑制する。重要なサブグループの高度に保存されたシャペロンは、ATP依存性熱ショックタンパク質(Hsps)である。

0008

正常な条件下で、Hspsは、新たに合成されたポリペプチド鎖細胞内分子シャペロンとして機能し、フォールディングおよびサブユニット組立ての間、並びに細胞より小さい(subcellular)膜を通って適切な細胞コンパートメントへのタンパク質のトランスロケーションの間に、それらの凝集を防止する。幾つかのHspsは、不適切にフォールディングされたタンパク質、および細胞ストレス(たとえば、酸化および高温)の条件下で安定性の低下した結果フォールディングされていないタンパク質の除去に関与する。ほとんどのHspファミリーは、ストレス誘導性メンバーに加えて、構成的に発現されるメンバーを含有する。

0009

熱ショックタンパク質70(Hsp70)は、多くの細胞内メカニズムに関与する、高度に保存されたタンパク質シャペロンである。Hsp70は、細胞内ストレスにより誘導され、ストレス誘導性アポトーシスを抑制する。また、Hsp70は、免疫調節能を有し、抗炎症性サイトカイン生産を刺激することが知られている。(Van Eden, W., et al., Nat. Rev. Immunol. 5:318-330 (2005) 参照)。加えて、Hsp70は、腫瘍壊死因子(TNF)により引き起こされる炎症性ショックを防止し、抗原提示を誘導する。

0010

Hsp70を含むHspファミリーのメンバーは、慢性炎症性疾患においてT細胞を調節して、炎症により引き起こされるアポトーシスを防止または中断することが知られている。(Van Eden, W., et al., Nat. Rev. Immunol. 5: 318-330 (2005) 参照)。たとえば、Hsp70由来ペプチドが、実験的に誘導された関節炎に対して保護を誘導することが示された(Tanaka, S., et al., J. Immunol. 163: 5560-5565 (1999))。

0011

神経変性疾患、たとえばアルツハイマー病およびハンチントン病ポリグルタミン病)は、誤ってフォールディングされ凝集したタンパク質の異常な蓄積によりおそらく引き起こされる典型的な疾患であり、これら疾患は、Hsp70のシャペロンとしての作用により阻害されると考えられる。アポトーシスは、虚血後ニューロン死ぬ方法の一つである。海馬のCA1ニューロンにおけるHsp70の過剰発現は、ニューロンの生存が増大する条件下において、タンパク質凝集の形跡を減少させることが示されている(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004))。

0012

また、虚血性および低酸素性アポトーシスは、異常な酸化の条件下において安定性の低下した結果、不適切にフォールディングされているかまたはフォールディングされていないタンパク質の除去不良によって起こり得る。Hsp70は、コシペロンHsp40と共に作用して、グルコースまたは酸素−グルコースの欠乏時に、大脳星状細胞の虚血性または低酸素性アポトーシスを抑制することが報告されている(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004)参照)。これらインビトロ傷害モデルは、発作の間の虚血性損傷に関与する傷害の局面の幾つかを模倣する。

0013

更に、糖尿病におけるHsp70の機能も知られており、膵臓ベータ細胞に対するラジカル誘導性傷害は、Hsp70の過剰発現により抑制される(Burkart, V., et al.,JBC 275: 19521-19528 (2000); およびMargulis et al., Diabetes 40: 1418-1422 (1994)参照)。

0014

Hsp70などの巨大分子をインビトロまたはインビボにおいて細胞に効率よくデリバーする方法が望まれる。一般に、生細胞は、タンパク質および核酸などの巨大分子を透過させることができない。小さいサイズを有する幾つかの物質のみが、生細胞の膜を低速度で通過し、細胞内の細胞質細胞小器官または核に入ることができる。ほとんどの巨大分子は、細胞に入ることができず、かかる巨大分子を使用した治療、予防および診断に制限を課す。治療、予防および診断の目的のために調製される物質は、効果的な量で細胞にデリバーされなければならないため、これら物質を細胞にデリバーするための種々の方法が開発されている。

0015

巨大分子をインビトロにおいて細胞にデリバーするための方法には、エレクトロポレーションリポソームを用いた膜融合、DNAでコーティングされたマイクロプロジェクタイルを用いた高速ボンバードメントリン酸カルシウム−DNA沈殿物とのインキュベーションDEAE-デキストラン介在性トランスフェクション改変されたウイルスの核酸による感染、および単一細胞への直接マイクロインジェクションが挙げられる。近年、ナノ粒子を使用して巨大分子をインビボまたはインビトロにおいて細胞にデリバーする試みが為されているが、これらの方法は、技術レベルおよび臨床効果の観点から、まだ初期段階にある。また、これらの方法は、典型的には、巨大分子を細胞の幾つかのみにデリバーすることができ、巨大分子を細胞にデリバーする時間および効率は、臨床的に適用可能な段階にまだ達していない。また、これらの方法は、ターゲット細胞以外の多数の細胞に望ましくない影響を及ぼし得る。よって、細胞にダメージを与えることなく、生理的に活性な巨大分子をインビボおよびインビトロの両方において細胞に効率よくデリバーする一般的方法が求められている。

0016

その結果、タンパク質トランスダクションドメイン(PTDs)が研究された。PTDsの研究のなかで最もよく研究されたのは、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)の転写因子であるTatタンパク質である(Schwarze S.R., et al., Science 285(5433): 1569-1572 (1999)参照)。このタンパク質は、正電荷アミノ酸が集中して分布したアミノ酸残基45-57(YGRKKRRQRRR)からなる場合、86アミノ酸からなる完全な形態の場合と比べて、効率よく細胞膜を通過することが見出された(Fawell, S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 664-668 (1994)参照)。PTDとして機能することが見出された他のアミノ酸配列には、HSV-1(単純ヘルペスウイルスタイプ1)のVP22タンパク質のアミノ酸残基267-300(Elliott, G., et al., Cell 88: 223-233 (1997)参照)、およびショウジョウバエ(Drosophila)のANTP(アンテナペディア(Antennapedia))タンパク質のアミノ酸残基339-355(Schwarze, S.R., et al., TrendsPharmacol Sci. 21: 45-48 (2000)参照)が含まれる。

0017

PTDsを使用して物質を細胞へデリバーするための技術は、細菌で産生された医学的および薬理学的組換えタンパク質を所望の動物細胞にデリバーすることにより、天然の構造および機能を有する医学的タンパク質の産生を可能にする。

0018

本発明の一つの目的は、熱ショックタンパク質(Hsp)ポリペプチドをインビボでデリバーすることにより、アポトーシスおよびアポトーシスにより引き起こされる疾患の発症を効果的に抑制することである。

0019

上記目的を達成するため、本発明は、PTDと熱ショックポリペプチドのコンジュゲート(PTD-Hsp)を提供する。本発明のPTD-Hspコンジュゲートは、PTDの細胞内貫通およびデリバリー効果によって、細胞へのデリバリーのために容易に膜を通過する。

0020

本発明の一つの態様は、細胞集団を効果的な量のPTD-Hspと接触させることにより、細胞集団のアポトーシスを低下させるか、または阻害する方法である。

0021

更なる態様は、アポトーシスの上昇レベルにより特徴づけられる病的状態を治療、予防または抑制する方法であって、かかる治療を必要とする個体に、その病的状態を治療するのに効果的な量のPTD-Hspを投与することによる方法である。

0022

本発明の更なる態様は、損傷細胞再生させる方法であって、効果的な量のPTD-Hsp中で細胞を保存することを含む方法である。

0023

本発明の別の態様は、阻害および/または抑制する量のPTD-Hspと細胞を接触させることにより、細胞集団の生存を拡大または増大させるための方法である。

0024

本発明の更なる態様は、細胞、組織または器官生存能力を長期化するための方法であって、細胞集団、組織または器官を、阻害および/または抑制する量のPTD-Hspと接触させることを含む方法である。

0025

また本発明は、対象の生成物を産生する宿主細胞をPTD-Hspと接触させることにより、インビトロでのバイオ生産を増大させる方法を含む。

0026

上記態様のすべてにおいて、Hspの一または複数の断片、誘導体または類似体とPTDとの融合も想定される。

0027

また本発明は、局所投与ルートを介してPTD-Hspコンジュゲートを投与することにより、全身性副作用を最小限にするか、または回避することができる。

図面の簡単な説明

0028

図1Aは、発現されたHspA1AおよびPTD-HspA1Aタンパク質を示す。単離、精製されたHspA1AおよびPTD-HspA1A融合タンパク質は、SDS-PAGEを行い、クマシーブルー染色により分析した。HspA1Aの分子量(mw)は約70 kDaであり、PTD-HspA1Aのmwは約72 kDaである。
図1Bは、Jurkat T細胞でのPTD-HspA1Aの発現を示す。Jurkat T細胞を含む培地に1μlのタンパク質を添加し、1時間培養した。PTD-コンジュゲートタンパク質のみが細胞に導入された。
図1Cは、濃度依存的な手法でのPTD-HspA1Aのアポトーシス抑制を示す。細胞を0.5μMスタウロスポリンで処理してアポトーシスを誘導した。種々の濃度のPTD-HspA1Aを添加し、アポトーシスの程度について細胞を分析した。PTD-HspA1Aの量が増大すると細胞の生存は増大した。Conは、Jurkat T細胞のみを表し、STSは、スタウロスポリンを表す。
図2A−Eは、PTD-HspA1Aを低酸素条件下において間葉系幹細胞MSC)に導入し、そのアポトーシス抑制効果について調査した実験を表す。種々の濃度の精製PTD-HspA1Aを間葉系幹細胞(MSC)に導入した(図2A)。
図2Bは、低酸素条件低酸素)下でのMSCのアポトーシスが、WST-1シグナルの増大により示されるとおり、HspA1Aの存在で抑制されたことを示す。
図2Cは、MSCでの相対カスパーゼ−3活性が、低酸素条件下においてHspA1Aの存在で抑制されたことを示す。
図2Dは、ATPレベルが、MSCで、低酸素条件下においてHspA1Aの存在で増大したことを示す。
図2Eは、低酸素条件下でのMSCへのHspA1Aの導入が、Baxタンパク質の発現を抑制し、発現レベルを維持しながらJNK(c-Jun N-末端キナーゼストレス活性プロテインキナーゼ)のリン酸化(すなわち活性化)を阻害し、これによりアポトーシスを抑制したことを示す。
図3A−Fは、網膜変性モデルにおける網膜細胞写真である。抗癌剤MNUにより誘導されるアポトーシスを有する網膜の変性モデルにおいて、光受容細胞層の変性は、網膜の中心部分から開始して起こった(図3A)。網膜の中心部分は、コントロールグループとは異なり、光受容細胞層の細胞の減少を示し、不規則な形態に変化した。
網膜の中間部分では、細胞へのダメージはほとんどなく、細胞層は、中心部分の写真よりも多く維持された(図3B)。
網膜の周辺部分は、その外観をほぼ完全に維持した(図3C)。
図3D−Fは、PTD-HspA1Aの投与後の結膜を示す。網膜の中心部分は、光受容細胞層への重大なダメージを示したが、その一部において保存されており、これは、PTD-HspA1Aが、コントロールグループと比較して効果を有することを示す(図3D)。
網膜の中間部分では、網膜の中心部分の写真よりも正常な光受容細胞が明らかに観察できるとおり、光受容細胞が多く保存された(図3E)。
網膜の周辺部分では、光受容細胞層は、全身投与の場合とほとんど同程度に保存された(図3F)。周辺部分は、形態学的にほとんど正常であった。
図4は、HspA1Aを発現している腸上皮細胞の正常な維持を示す。単離された腸上皮細胞を二つのグループに分け、その一方のみに43℃での熱ショックを与え、HspA1Aタンパク質の発現を誘導した。HspA1Aタンパク質を発現している細胞は正常に維持され(左の写真)、一方、HspA1Aタンパク質を発現していないグループの細胞は、核および細胞質の凝縮を示した(右の写真)。
図5は、宿主心筋層における、Hph-1-HspA1Aで処理されたDAPI-標識MSCsとHph-1-HspA1Aで処理されなかったDAPI-標識MSCsの比較を示す。
図6A−Cは、梗塞心筋層へのHspA1A-MSCの移植後の心筋層の修復の分析を示す。(図6A)H & EおよびDAPIダブル染色は、生存可能成熟心筋細胞が、移植から4週間後までに瘢痕領域浸潤したことを示す。(図6B)DAPIおよび心臓特異的マーカーCTn T、MHC、またはCav2.1のダブル染色は、心臓特異的マーカーがDAPI-標識細胞で発現することを示す。心臓特異的マーカーは赤で示す。(図6C)DAPIおよびコネキシン-43またはN-カドヘリンのダブル染色は、MSC-由来の心筋細胞が、移植された細胞と宿主筋細胞境界区域で、コネキシン-43およびN-カドヘリンを発現することを示す。コネキシン-43およびN-カドヘリン染色は緑で示す。
図7A−Bは、Hsc70のアポトーシス抑制効果を示す。(図7A)Hsc70の精製。
(図7B)濃度依存的な手法でのHsc70のアポトーシス抑制効果。コントロールは、処理なしのJurkat T細胞を表し、STSは、スタウロスポリン処理を表す。
図8A−Bは、cvHspのアポトーシス抑制効果を示す。(図8A)cvHspの精製。
(図8B)濃度依存的な手法でのcvHspのアポトーシス抑制効果。
図9は、ヒトHsp70ファミリーのメンバーを記載した表を示す。

発明の詳細な説明

0029

アポトーシス性およびネクローシス性細胞死、および他のプログラムされた細胞死の経路は、虚血性脳傷害、心臓疾患、および神経変性疾患にしばしば関与する。本発明は、ペプチドタンパク質導入ドメイン(PTD)と熱ショックタンパク質(Hsp)のコンジュゲートまたは融合体を使用して、アポトーシス性細胞死を治療または予防するための方法を包含する。本発明のコンジュゲートは、PTDコード遺伝子をHsp遺伝子とクローニングにより融合させることにより調製することができる。本発明で使用されるPTDsは、タンパク質、ペプチドおよび化合物を、皮膚、眼球または気道を通って体内にデリバーすることができるため、ポリペプチドとのコンジュゲートとして提供されると、ポリペプチドをインビボにおいて局所領域にデリバーすることができる。

0030

本発明の一つの態様は、アポトーシス性細胞死を治療または予防するためのPTD-Hsp70コンジュゲートの使用である。本発明によれば、Hsp70は、PTDの細胞内貫通およびデリバリー効果によって細胞膜を容易に通過し、細胞にデリバーされる。細胞へデリバーされたコンジュゲートは、細胞内プロテアーゼにより分解され、その結果、分離されたHsp70が、疾患を阻害し治療する効果およびアポトーシスを抑制する効果を示す。

0031

本発明の別の態様は、アポトーシスを受けている一または複数の細胞が細胞死から保護されるように、細胞集団を効果的な量のPTD-Hspと接触させることにより、細胞集団のアポトーシスを低下させるか、または阻害する方法である。細胞は、分化した細胞または前駆細胞とすることができ、神経系細胞(neural cell)(たとえばニューロン)、線維芽細胞平滑筋細胞腫瘍細胞造血細胞単球マクロファージ上皮細胞ケラチノサイト神経細胞(nerve cell)、内皮細胞顆粒球、単球、赤血球リンパ球および血小板を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される“接触させる(contacting)”の用語は、細胞をPTD-Hspに晒すことにより、細胞においてアポトーシスを阻害し、細胞を増殖および蓄積させることを意味する。細胞は、生体外(ex vivo)または生体内(in vivo)でPTD-Hspと接触させることができる。

0032

本発明の別の態様は、アポトーシスの上昇レベルにより特徴づけられる病的状態を治療、予防または抑制する方法であって、かかる治療を必要とする個体に、その病的状態を治療するのに効果的な量のPTD-Hspを投与することによる方法である。想定される病的状態は、ストレス誘導性の病状、たとえば虚血、および慢性変性疾患、たとえば神経変性疾患および変性萎縮を含むが、これらに限定されない。

0033

虚血の病状は、虚血性脳梗塞による発作、虚血性急性腎不全、腸虚血、心筋梗塞による虚血性心疾患再灌流後心筋虚血および障害、肝虚血、脳虚血(たとえば脳卒中からの脳虚血など)、および網膜虚血を含むが、これらに限定されない。

0034

神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄延髄萎縮症脱神経性萎縮症、脊髄筋ジストロフィー(SMA)、網膜の色素変性および緑内障小脳変性症および新生児黄疸耳硬化症、発作、痴呆、並びに連続的な遅発性神経細胞壊死(DND) を含むが、これらに限定されない。

0035

更なる心臓の変性疾患は、重症筋無力症ウイルス性心筋炎自己免疫性心筋炎鬱血性心筋症および慢性心筋炎)、肥大型心臓および心不全による心筋障害または死、不整脈原性右心室心筋症、心不全、および冠動脈バイパスグラフトを含むが、これらに限定されない。

0036

他の変性疾患には、以下のものが含まれる:アルコール性肝炎ウイルス性肝炎腎疾患(たとえば、糸球体腎炎)、溶血性尿毒症性症候群など、後天性免疫不全症候群AIDS)、炎症性皮膚疾患、たとえば中毒性表皮壊死症(TEN)および多形滲出性紅斑移植片対宿主病(GVH)、放射線障害、抗癌剤、抗ウイルス剤などによる副作用アジ化ナトリウムシアン化カリウムなどの毒性薬剤による障害、骨髄形成異常症、たとえば再生不良性貧血など、プリオン病、たとえばクロイツフェルトヤコブ病脊髄損傷外傷性脳損傷、自己免疫疾患および移植拒絶反応と関連した細胞傷害性T細胞またはナチュラルキラー細胞介在性アポトーシス、ミトコンドリア薬物毒性、たとえば化学療法またはHIV療法の結果、ウイルス、細菌または原生動物の感染、炎症または炎症性疾患炎症性腸疾患敗血症および敗血症性ショック卵胞から卵母細胞への段階、卵母細胞から成熟卵への段階および精子(たとえば、卵巣組織凍結させ移植する方法、人工受精)、皮膚損傷高レベル放射線、熱、火傷化学薬品、太陽、および自己免疫疾患への露出による)、骨髄異形成症候群(MDS)(骨髄細胞の死)、膵炎変形性関節症関節リウマチ乾癬、糸球体腎炎、アテローム性動脈硬化症、および移植片対宿主病、網膜周皮細胞アポトーシス、網膜ニューロンアポトーシス緑内障、虚血に由来する網膜の損傷、糖尿病性網膜症呼吸症候群、糖尿病(たとえば、インスリン依存性糖尿病)、自己免疫疾患、後天性ポリグルタミン病、メンケベルク硬化症後天性免疫不全疾患(AIDS)と関連した脳症ミオパシーおよび筋ジストロフィー、糸球体硬化症、メンケベルク中膜硬化症、炎症性腸疾患、クローン病自己免疫性肝炎ヘモクロマトーシスおよびウィルソン病、アルコール性肝炎、様々な病因急性肝不全胆管の疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧アポトーシス誘導脱毛症および化学療法剤の使用と関連したアポトーシス。

0037

本発明の別の態様は、阻害および/または抑制する量のPTD-Hspと細胞を接触させることにより、細胞集団の生存を拡大または増大させるための方法であって、細胞集団においてアポトーシスを抑制し、これにより細胞集団の生存を拡大または増大させる方法である。本明細書で使用される“拡大させる(expanding)”の用語は、現存する細胞集団の細胞数を増大させることを意味する。“生存(survival)”の用語は、典型的には生体外(ex vivo)で、細胞の生存能力を維持することを指すが;この用語は、生体内(in vivo)を含むことも意図する。生存は、数時間から数日またはそれ以上であり得る。細胞集団は、分化した細胞または前駆細胞、顆粒球、単球、赤血球、リンパ球または血小板から構成することができる。

0038

本方法は、効果的な量のPTD-Hspと所望の細胞を接触させ、これにより細胞集団においてアポトーシスを阻害または抑制することを含む。本明細書で使用される“接触させる(contacting)”の用語は、細胞をPTD-Hspに晒すことにより、細胞においてアポトーシスを阻害し、細胞を増殖および蓄積させることを意味する。細胞は、生体外(ex vivo)または生体内(in vivo)でPTD-Hspと接触させることができる。

0039

本発明の更なる態様は、損傷細胞を再生させる方法であって、効果的な量のPTD-Hspを含む溶液中で細胞を保存することを含む方法である。

0040

本発明の更なる態様は、細胞、組織または器官の生存能力を長期化するための方法であって、細胞集団、組織または器官を、細胞集団、組織または器官の一または複数の細胞でアポトーシスを抑制するのに効果的な量のPTD-Hspと接触させ、これにより、細胞集団、組織または器官の生存能力を、未処理の細胞集団、組織または器官と比較して長期化する方法である。細胞集団における細胞は、損傷細胞とすることができ、それによりPTD-Hspとの接触は、損傷細胞の再生につながる。処理された細胞、組織および器官は、とりわけ移入または移植のために使用され得る。細胞集団、組織または器官は、細胞集団、組織または器官の移入の間または移植の間にPTD-Hspと接触させることができる。

0041

細胞は、分化した細胞または前駆細胞とすることができ、幹細胞(たとえば造血幹細胞、間葉系幹細胞、間質系幹細胞または神経幹細胞)、神経系または神経細胞(たとえばニューロン)、線維芽細胞、平滑筋細胞、腫瘍細胞、造血細胞、単球、マクロファージ、上皮細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、顆粒球、赤血球、リンパ球および血小板を含むが、これらに限定されない。

0042

造血幹細胞は、それを必要とする個体に移植することができ、血液細胞に分化させることができる。個体は、白血病または血液の癌の患者とすることができる。

0043

間葉系幹細胞(MSCs)は、二以上のタイプの間葉細胞系統に分化させることが可能な細胞である。MSCsは、鳥類、並びにマウスラットウサギイヌおよびヒトを含む哺乳類種から同定され、培養されている(U.S. Pat. No. 5,486,359参照)。ヒトMSCsの単離、精製および培養拡大は、その中で詳細に記載される。MSCsは、それを必要とする個体に移植することができ、骨細胞(bone cells)(たとえば骨細胞(osteocytes))、軟骨細胞(cartilage cells)(たとえば軟骨細胞(chondrocytes))、脂肪細胞(たとえば含脂肪細胞)、または心筋細胞に分化させることができる。MSCsは、梗塞心臓を含む心臓に移植することができる。

0044

神経系細胞は、それを必要とする個体に移植することができ、神経細胞、たとえばニューロン、または非神経細胞、たとえば星状細胞または稀突起膠細胞に分化させることができる。

0045

更に、細胞集団、組織または器官は、アポトーシスを阻害するためにPTD-Hspと接触させることにより、バイオ生産の間に細胞の生存能力を増大させることができる。バイオ生産を向上させることにより、細胞は、より長い期間生存し、より長い期間所望の生成物を生産および/または分泌し、これにより生成物の収率の増大につながる。アポトーシスを妨害する能力は、標準的な必須増殖因子とは無関係に細胞を生存させ、培地の補充物質のコストを低減する。

0046

本明細書で使用される“接触させる(contacting)”の用語は、細胞をPTD-Hspに晒すことにより、細胞においてアポトーシスを阻害し、細胞を増殖および蓄積させることを意味する。細胞は、生体外(ex vivo)または生体内(in vivo)でPTD-Hspと接触させることができる。

0047

“長期化する(prolonging)”の用語は、移植用の組織または器官が、本発明の方法を用いた処理により、PTD-Hspで処理されていない同様の組織または器官と比較して保護されることを意味する。移植用の細胞または器官をPTD-Hspと接触させることは、アポトーシスを阻害し、これにより器官を保護し、生存能力を長期化すると考えられる。

0048

細胞集団、組織または器官は、器官または組織の再灌流により引き起こされる損傷が、減少するか、または妨害されるように、移入または移植の間に生体外(ex vivo)または生体内(in vivo)でPTD-Hspと接触させてもよい。この接触は、細胞集団、組織または器官の切除の前、または切除と同時に、組織または器官のドナーにPTD-Hspを投与することにより起こすことができる。器官は、任意の固体器官とすることができ、心臓、膵臓、腎臓、または肝臓を含むが、これらに限定されない。

0049

PTD-Hspは、溶液中、たとえば低温(hypothermic)保存溶液中に存在してもよく、保存は、凝固点以上の温度で行われてもよいし、凝固点以下の温度で行われてもよい。低温保存の基本的な挑戦は、広範囲にわたる細胞損傷または細胞死を引き起こすことなく、逆行可能な状態で物質を保護することである。この溶液は、溶液中および細胞、組織または器官の両方において氷晶の形成を妨害するのに効果的な量のガラス化(vitrification)組成物を更に含んでいてもよい。米国特許第6,045,990(参照により本明細書に組み込まれる)は、低温保存からの生存および回復は、保護溶液または媒体中に抗アポトーシス剤を含めることにより向上させることができることをある程度実証する。

0050

当該方法は、a)細胞、組織または器官を、i)アポトーシスを阻害する組成物およびii)溶液のガラス化に充分な量のガラス化組成物を含む低温保存溶液と接触させること;およびb)細胞、組織または器官をガラス化することを含み、ここでガラス化は、細胞、組織または器官の中、並びに細胞、組織または器官を含む低温保存溶液および細胞、組織または器官に含まれる低温保存溶液中の両方で起こる。

0051

ガラス化は、細胞外および細胞内環境の中で氷核形成を妨害する薬剤であって、溶液の同種核形成温度より低いガラス転移温度(Tg)を有する薬剤を含む低温保存溶液の使用により達成される。低温保存溶液中のサンプルの温度をガラス転移温度以下に低下させることにより、溶液、並びに溶液中の細胞、組織または器官のガラス化につながる。これらの環境下では、サンプルが固体になるため、細胞内また細胞周囲結晶性形成がない。一または複数の抗アポトーシス剤を含めることにより、このタイプの保護の後に標準的に起こるアポトーシス細胞死を妨害することを助ける。

0052

更に別の態様において、本発明は、移植以外に利用するためのインビトロ培養細胞の生存を増大させるための方法を提供する。発酵の間の細胞死は、アポトーシスであることが示されており、このためアポトーシスの阻害は、バイオ生産の間に細胞の生存能力を増大させる。アポトーシスの阻害は、インビトロでバイオ生産を向上させる際に有用であり、対象の生成物を産生する宿主細胞をPTD-Hspと接触させ、PTD-Hspが一または複数の細胞でアポトーシスを抑制し、これによりインビトロで細胞の生存を増大させる。バイオ生産を向上させることにより、細胞は、より長い期間生存し、より長い期間所望の生成物を生産および/または分泌し、これにより生成物の収率の増大につながる。アポトーシスを妨害する能力は、標準的な必須増殖因子とは無関係に細胞を生存させ、培地の補充物質のコストを低減する。

0053

バイオ生産に対するPTD-Hspの有効性は、幾つかの手法で測定することができる:1)様々な時点で培養物中のアポトーシス細胞のパーセンテージを決定する;2)所望の生成物の生産に関して培養物の有効な寿命を決定する;3)細胞1グラムあたりまたは培養物の体積あたりの生成物の収率を測定する;または4)生成物の最終純度を測定する。

0054

タンパク質導入ドメイン(PTD)
PTDは、全身または局所投与により、インビボおよびインビトロにおいて、対象のタンパク質、ペプチドおよび化合物の細胞へのデリバリーまたは取込みを効果的に可能にする。投与ルートは、とりわけ筋内、腹腔内、静脈内、口、、皮下、内皮粘膜、および吸入のルートが含まれる。このため、PTDは、タンパク質、ペプチドおよび/または化合物とのコンジュゲートとして提供される場合、局所領域、たとえば皮膚、眼球または気道にタンパク質、ペプチドおよび/または化合物をデリバーすることができる。

0055

本発明者らは、種々のPTDsを互いに比較し、その結果、PTDsは、比較的多数のリジンおよびアルギニンを含有し、特にアルギニンは細胞への物質のデリバリーに重要であることを見出した。このことは、正電荷のアミノ酸からなる人工ペプチドも、物質をデリバリーする効果を有するという事実により裏付けられた(Laus, R., et al., Nature Biotechnol. 18: 1269-1272 (2000)参照)。

0056

アルギニン残基またはリジン残基が、チャンネル構造を形成するためにPTD自体のある位置に存在するという仮説に反して、あるタンパク質は、9〜12個のアルギニン残基または9〜12個のリジン残基により細胞にデリバーされることが見出された(Rothbard, J.B., et al., Nature Med. 6:1253-1257 (2000)参照)。また、PTDが、細胞に巨大分子をデリバーするために細胞膜を破壊するという仮説に反して、PTDと共有結合または非共有結合で結合したターゲットタンパク質のみが、細胞にデリバーされることが見出された。我々の研究結果は、PTDによる細胞への物質のデリバリーは、37℃および4℃の両方において効果的に起こることを実証した。

0057

MTS(膜トランスロケーティング配列(Membrane Translocating Sequence))は、上述の既存のPTDsとは異なる特徴を有する新規PTDである。MTSは、FGF(線維芽細胞増殖因子)のシグナルペプチドのアミノ酸配列に基いて合成され、構築された(Jo, D., et al., Nat. Biotechnol. 19: 929-933 (2001)参照)。しかし、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、上述の既存のPTDアミノ酸のものとは顕著に異なる以下の特徴を有する:(a)3〜5個のアルギニンまたはリジン残基が、セリンまたはトレオニン残基のように、不連続に存在し、グルタミン酸またはアスパラギン酸は存在しない;(b)少なくとも一の塩基性アミノ酸および6〜12個の疎水性アミノ酸が存在する;(c)セリン、トレオニンおよび小さなサイズの疎水性アミノ酸の数は多く、グルタミン酸およびアスパラギン酸の数は少ない;(d)C−末端部分は、多数のセリン、リジンおよびロイシン残基を含有する;(e)一または二の塩基性アミノ酸が集まり、10個のランダムなアミノ酸が、これら塩基性アミノ酸の間に存在する。すなわち、MTSなどのPTDsは、既存のPTDsのアミノ酸構成の特徴を有していない。

0058

本発明者らは、フォールディングされていないタンパク質は、複雑な三次元構造を有するタンパク質よりずっと効率的にデリバーされ、フォールディングされていないタンパク質は、細胞および細胞内オルガネラにデリバーされた後、細胞または細胞外オルガネラから放出されないことを見出した。更に、PTDsは、レセプターとともにエンドサイトーシスファゴサイトーシスも利用しないが、細胞表面に存在するチャンネルを使用し得る。このため、アラニンおよびバリンなどの疎水性アミノ酸は、PTDに存在すべきである。

0059

本発明者らは、ヒト転写因子Hph-1のアミノ酸残基858−868からなるペプチドが、細胞に物質をデリバーするためのペプチドとして使用された場合、ターゲットタンパク質、核酸、脂肪炭水化物または化合物を、インビボまたはインビトロにおいて真核細胞または原核細胞の細胞質、オルガネラまたは核にデリバーすることができることを見出し、これにより本発明を完成させた。

0060

本発明においてPTDとして使用するために、本発明者らは、固体合成法を用いて幾つかのペプチドを構築したが、所望のデリバリー領域および使用されるリンカーの種類に応じて他の種類のPTDを使用できることを理解すべきである。PTDは、3〜30個のアミノ酸、より好ましくは5〜15個のアミノ酸から構成され、その少なくとも30%は、好ましくはアルギニン残基である。しかし、アルギニン残基を含まないPTDsも想定される。

0061

一つの態様は、ヒト(およびマウス)転写因子HPH-1に由来するHph-1-PTD(YARVRRRGPRR)(配列番号1)の使用を含む。別の態様は、Sim-2のPTD(AKAARQAAR)(配列番号2)の使用を含む。

0062

他の態様は、HIV-1ウイルスタンパク質TatのPTDs(YGRKKRRQRRR)(配列番号3)、ショウジョウバエ(Drosophila)のアンテナペディア(Antennapedia)タンパク質(Antp)(RQIKIWFQNRRMKWKK)(配列番号4)、HSV-1構造タンパク質Vp22(DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE)(配列番号5)、Gタンパク質シグナリングレギュレーターR7(RRRRRRR)(配列番号6)、MTS(AAVALLPAVLLALLAPAAADQNQLMP)(配列番号7)、並びに短い両親媒性ペプチドキャリアPep-1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV)(配列番号8)およびPep-2(KETWFETWFTEWSQPKKKRKV)(配列番号9)を含むが、これらに限定されない。

0063

熱ショックタンパク質(Hsp)
上記目的を達成するため、本発明は、PTDとポリペプチド、たとえばHspシャペロン、コシャペロン、または低分子量の熱ショックタンパク質または小さいストレスタンパク質(smHsp)とのコンジュゲートを提供する。

0064

Hspsは、その単量体の分子量に基いて、Hsp10、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp90およびHsp100ファミリーを含む、およそ6つのファミリーに分類される。Hsp40は、Hsp70活性のためのコシャペロンである(Van Eden, W., et al., Nat. Rev. Immunol. 5: 318-330 (2005))。Hspファミリーは、高度に保存され、幾つかの哺乳類ファミリーメンバーは、高度に保存された微生物相同物を有し、これにより哺乳類と微生物の相同物との間の免疫学的交差認識が得られる(Van Eden, W., et al., Nat. Rev. Immunol. 5: 318-330 (2005))。

0065

smHSPファミリーのタンパク質は、主にアクチン重合化および細胞骨格組織化の調整を介して、タンパク質のフォールディングおよび輸送を安定化する役割を果たすことが示されている。C末端にある約80〜100残基の進化的に保存されたα−クリスタリン(crystalline)ドメインの存在が、すべてのsmHSPsを特徴づけている。このドメインは、サイズおよび配列が変化するN末端ドメインに先行され、トランケーションを含む多くの改変を受けることが知られているあまり保存されていない短いC末端伸長部がその後に続く。smHSPsの例は、cvHsp、αB-クリスタリン、αA-クリスタリン、Hsp20、Hsp β-2、Hsp-類似27およびHsp27が含まれる(Krief et al., J. Biol. Chem. 274: 36592-36600 (1999)参照)。

0066

本発明の一つの態様は、PTDとHsp70ファミリーのタンパク質のメンバーとのコンジュゲートである。Hsp70ファミリーのタンパク質は、複数タイプの細胞死、たとえばネクローシス細胞死、典型的なアポトーシス、およびカスパーゼに依存せずBcl-2によりブロックされないその他のプログラムされた細胞死経路を抑制することが示されている(Giffard, R.G., et al., J. Exp. Biol. 207: 3213-3220 (2004)参照)。Hsp70ファミリーのタンパク質のメンバーは、HspA1A、HspA1B、HspA1L、HspA2A、HspA2B、HspA4、HspA5、HspA6、HspA7、Hsp8A (Hsc70)、Hsp9Aを含むが、これらに限定されず、更に想定される。これらHsp70ファミリーのタンパク質のメンバーのアミノ酸配列を以下に提供する。

0067

HspA1Aのヌクレオチド配列(配列番号10)は以下のとおりである:

0068

HspA1Aのアミノ酸配列(配列番号11)は以下のとおりである:

0069

HspA1Bのアミノ酸配列(配列番号12)は以下のとおりである:

0070

HspA1Lのアミノ酸配列(配列番号13)は以下のとおりである:

0071

HspA2Aのアミノ酸配列(配列番号14)は以下のとおりである:

0072

HspA2Bのアミノ酸配列(配列番号15)は以下のとおりである:

0073

HspA4のアミノ酸配列(配列番号16)は以下のとおりである:

0074

HspA5のアミノ酸配列(配列番号17)は以下のとおりである:

0075

HspA6のアミノ酸配列(配列番号18)は以下のとおりである:

0076

HspA7のアミノ酸配列(配列番号19)は以下のとおりである:

0077

Hsp8A (HSC70) のアミノ酸配列(配列番号20)は以下のとおりである:

0078

Hsp9Aのアミノ酸配列(配列番号21)は以下のとおりである:

0079

本発明の別の態様は、PTDと低分子量の熱ショックタンパク質または小さいストレスタンパク質cvHspとのコンジュゲートである。ツーハイブリッド(two-hybrid)および共免疫沈降の実験において、cvHspは、心臓において細胞骨格タンパク質α−フィラミンを結合することが示されている。心臓および骨格筋での最大の発現により特徴づけられるα−フィラミンの組織分布は、cvHspの組織分布と関連している。cvHspのなかで、α−クリスタリンドメインの(アミノ酸56−119に相当する)64アミノ酸のドメインが、フィラミンとの相互作用にとって重要であり、このことは、cvHspがシャペロンタンパク質として機能することを示唆する。更に、cvHspの発現パターンおよび推定の役割と矛盾しない病態生理学を備えた幾つかの遺伝病が、心筋症と関連がある領域、染色体1p36.23-p34.3にマッピングされた(Krief et al., J. Biol. Chem. 274: 36592-36600 (1999)参照)。

0080

cvHspのアミノ酸配列(配列番号22)は以下のとおりである:

0081

また本発明は、PTDとHspポリペプチドの断片、誘導体もしくは類似体、たとえばHspA1A、HspA1B、HspA1L、HspA2A、HspA2B、HspA4、HspA5、HspA6、HspA7、Hsp8A (Hsc70)、Hsp9A、またはcvHspの断片、誘導体もしくは類似体とのコンジュゲートを提供する。

0082

本発明のペプチドコンジュゲートは、標準的なクローニング技術および当業者に公知のルーチンやり方を用いて、PTDコード遺伝子をHsp遺伝子と融合し、インビトロまたはインビボにおいて融合タンパク質を発現させることにより調製することができる。

0083

PTD-Hspコンジュゲートは、直接的な共有結合、ペプチド結合、またはリンカーにより互いに連結させることができる。とりわけ、PTD-Hspコンジュゲートは、ある種の酵素により特異的に切断される領域を含有するリンカーにより互いに連結させることができる。リンカーは、治療の目的および方針に依存して、また、局所部位での効果を最大限にするために、変化させてもよく、細胞内で容易に切断される-O-または-S-S-結合を含有するリンカーを使用すべきである。切断部位のないリンカー(非切断リンカー)が使用されてもよい。リンカーの長さは、典型的には1〜10アミノ酸、好ましくは1〜5アミノ酸である。リンカーは、アミノ酸Gly-Gly-Glyを含有してもよい。全身的な効果を避けるため、ペプチド結合を含有するスペーサーリンカーを導入することが一般的には好ましい。リンカーは、アミノカプロン酸とすることができる。

0084

また、上記適用の全てのためのPTD-HspmRNAの使用も想定される。

0085

定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される幾つかの用語をここにまとめる。特段の規定がない限り、ここで使用される技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する技術分野において通常の技術を有する者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。

0086

ここで使用される「虚血」の用語は、血液を供給する血管の絞窄閉塞または遮断により引き起こされる、体の部分への血液の不十分な流れまたは不足を意味する。虚血は、組織の低酸素症につながる。低酸素症または虚血関連の傷害は、心臓傷害を含む。

0087

ここで使用される「再灌流」の用語は、心臓発作または発作の後のように血液の供給が遮断された既に虚血性の組織または器官に血液の流れを回復させることを意味する。

0088

ここで使用される「ネクローシス」の用語は、とりわけ体の局所領域、たとえば心筋層における、傷害または疾患による細胞または組織の死を意味する。

0089

ここで使用される「アポトーシス」の用語は、プログラムされた細胞死を意味する。

0090

ここで使用される「心臓傷害」の用語は、心臓および/または関連組織(たとえば、心膜大動脈および他の関連の血管)を伴う任意の慢性または急性の病的イベントを包含することを意図し、虚血−再灌流傷害鬱血性心不全心停止、心筋梗塞、薬剤などの化合物により引き起こされる心臓毒性寄生生物感染、細菌、真菌リケッチア、またはウイルスによる心臓損傷劇症アミロイドーシス心臓手術、心臓移植、および外傷性心臓傷害(たとえば、穿通性または鈍性の心臓傷害、または大動脈弁破裂)を含むが、これらに限定されない。

0091

ここで使用される「神経変性疾患」の用語は、脳、脊柱、神経、および/または関連組織を伴う任意の変性イベントを包含することを意図し、虚血−再灌流傷害、薬剤などの化合物により引き起こされる神経毒性、および寄生生物感染による神経損傷を含むが、これらに限定されない。

0092

ここで使用される「ガラス化する(vitrifying)」の用語は、溶液中で、並びに当該溶液中に懸濁もしくは当該溶液で灌流された細胞、組織もしくは器官中で、ガラス状態確立することを意味する。「ガラス状態」は、結晶を形成することなく液体から形成されたアモルファス固体である。ガラス状態は、ここで使用されるとおり、より詳細には、氷晶を形成することなく液体から形成された固体を指す。ガラス化は、溶液のガラス転移温度(Tg)が当該溶液の同種核形成温度より低い場合、溶液の温度を当該溶液のガラス転移温度(Tg)以下に下げることにより達成され、その結果、当該溶液について、並びに当該溶液中に懸濁もしくは当該溶液で灌流された細胞、組織もしくは器官について、ガラス状態が確立される。すなわち、「ガラス化」は、ここで使用されるとおり、細胞、組織または器官がガラス化される場合、細胞、組織または器官の中(すなわち、組織および器官を含む細胞の中)、および周囲の材料中(すなわち、低温保存溶液中)の両方で起こる。ガラス質の保存は、好ましくは、低温保存溶液のTg以下の温度で行われる。

0093

ここで使用される「低温保存溶液」の用語は、生理的温度以下の温度で細胞、組織、または器官を保存することができる溶液を指す。ここで記載される方法のための低温保存溶液は、同種核形成温度より低いTgを有し、その結果、当該溶液は、温度をTg以下に下げると、結晶性固体ではなくガラスを形成する。結晶形成ではないガラス化は、Tgより高い温度で氷晶形成を阻害する一または複数の薬剤の存在により、低温保存溶液中で起こる。この特性を有する低温保存溶液は、当該技術分野で公知である。好ましい低温保存溶液は、以下に記載される。低温保存溶液の用語は、組織培養増殖培地を単独で含まない。

0094

ここで使用される「阻害する」の用語は、かかる阻害を受けていない活性と比較して、少なくとも5%、好ましくはそれ以上、たとえば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、100%を含んで100%まで活性を低下させることを意味する。よって、薬剤は、同じアポトーシス刺激を受けているが薬剤なしのサンプルと比較して、少なくとも5%アポトーシスを阻害する。

0095

ここで使用される「ポリペプチド」の用語は、単一の「ポリペプチド」、並びに複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、ペプチド結合により結合した二以上のアミノ酸の任意の鎖を含む。よって、ここで使用されるとおり、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、「オリゴペプチド」、「オリゴマー」、または二以上のアミノ酸の鎖を指すために使用される任意の他の用語を含むがこれらに限定されない用語が、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」の用語は、これら用語の何れかの代わりに、または交換可能に使用することができる。この用語は、翻訳後修飾、たとえばグリコシル化アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化タンパク分解切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を受けたポリペプチドを更に含む。「タンパク質」の用語は、タンパク質の断片、類似体および誘導体であって、基準タンパク質と本質的に同じ生物学的活性または機能を保持する断片、類似体および誘導体を含むことが意図される。

0096

タンパク質の「断片、誘導体または類似体」は、(i)一または複数のアミノ酸残基が、保存もしくは非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)と置換されたもの(このように置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によりコードされるものであってもコードされないものであってもよい);または(ii)一または複数のアミノ酸残基が、置換基を含むもの;または(iii)成熟ポリペプチドが、別の化合物、たとえばポリペプチドの半減期を増大させる化合物(たとえば、ポリエチレングリコール)と融合したもの;または(iv)追加のアミノ酸、たとえばポリペプチドの精製のために使用されるリーダーまたは分泌配列が、成熟ポリペプチドに融合したものとすることができる。かかる断片、誘導体および類似体は、ここでの教示から、当業者の範囲内であると考えられる。

0097

幾つかのアミノ酸残基、たとえば5〜10、1〜5、1〜3、2、または1個のアミノ酸残基が、任意の組合せで置換、欠失または付加されたタンパク質のアミノ酸配列を有する変異体、類似体、誘導体および断片が、特に好ましい。本発明のタンパク質の特性および活性を変化させないサイレントな置換、付加および欠失が、これらのなかで特に好ましい。また、保存的置換が、この点で特に好ましい。

0098

本発明の変異体の例は、一または複数のアミノ酸と一または複数の他のアミノ酸との置換に加えて、上記で規定される融合タンパク質である。当業者は、種々のアミノ酸が同様の特性を有することを認識している。物質の一または複数のアミノ酸は、当該物質の所望の活性を失うことなく、一または複数の他のアミノ酸としばしば置換することができる。

0099

よって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンのアミノ酸は、しばしば互いに置換することができる(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)。これらの可能な置換のうち、グリシンおよびアラニンが、(比較的短い側鎖を有するため)互いに置換するために使用され、バリン、ロイシンおよびイソロイシンが、(疎水性の大きな脂肪族側鎖を有するため)互いに置換するために使用されることが好ましい。しばしば互いに置換することができる他のアミノ酸には、フェニルアラニンチロシンおよびトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);リジン、アルギニンおよびヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミンアミド側鎖を有するアミノ酸);およびシステインおよびメチオニン硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)が含まれる。この性質の置換は、しばしば「保存的」または「半保存的アミノ酸置換と称される。

0100

ここで使用される「融合タンパク質」、「融合ポリペプチド」、「キメラタンパク質」、および「キメラポリペプチド」の用語は、交換可能であり、対象ポリペプチドまたはタンパク質とタンパク質導入ドメイン(PTD)とを含むポリペプチドおよびタンパク質を指す。

0101

ここで使用されるPTD-Hsp「コンジュゲート」の用語は、PTDタンパク質とHspタンパク質との融合体、並びにPTDコード遺伝子とHsp遺伝子構築物との融合体の両方を指す。

0102

ここで使用される「対象タンパク質」、「所望のポリペプチド」、「所望のタンパク質」または「ターゲットタンパク質」の用語は、交換可能であり、タンパク質分子全体またはその一部を指す。ポリペプチドまたはタンパク質の他の部分は、細胞応答を誘導することができる。

0103

ここで使用される「治療剤」の用語は、被検体にデリバーされたときに、被検体の徴候を治療、すなわち治癒、改善または軽減するか、または被検体の所定の疾患または病状(たとえば虚血またはアポトーシス)を阻害するか、または末期の疾患または病状の進行を遅らせることにより被検体の寿命を延ばす分子、たとえばタンパク質、脂質、炭水化物、核酸または化合物を指す。

0104

ここで使用される「治療用融合タンパク質」の用語は、被検体にデリバーされたときに、被検体の徴候、所定の疾患または病状(たとえば虚血またはアポトーシス)を治療、すなわち治癒、改善または軽減するか、または末期の疾患または病状の進行を遅らせることにより被検体の寿命を延ばすポリペプチドを指す。

0105

ポリペプチド
本発明の治療用ポリペプチドは、熱ショックタンパク質(Hsps)である。Hsp70ファミリーのHspsが好ましい。Hsp70ファミリーにおける哺乳類Hspsの例は、BIP (GRP78)、mHSP70 (GRP75)、HspA1A、HspA1B、HspA1L、HspA2A、HspA2B、HspA4、HspA5、HspA6、HspA7、Hsp8A (Hsc70)、およびHsp9Aを含むが、これらに限定されない。また、smHspファミリーのHspsも好ましい。smHspsファミリーメンバーの例は、cvHsp、αB-クリスタリン、αA-クリスタリン、Hsp20、Hsp β-2、Hsp-類似27およびHsp27を含むが、これらに限定されない。

0106

また、上述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体、または変異体、およびその任意の組み合わせも、本発明のポリペプチドとして含まれ、これらは、アポトーシスの病状および/または神経変性の病状または疾患を予防または治療、すなわち治癒、改善、重症度を軽減、または低減するために使用される。

0107

本発明の更なる態様は、上述のポリペプチドのアミノ酸配列の何れかと、少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。

0108

実用的な事項として、任意の特定のポリペプチドが、たとえば配列番号11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータープログラム、たとえばBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711) を使用して慣用的に決定することができる。Bestfitは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981) のローカルホモロジーアルゴリズムを使用して、二つの配列の間でホモロジーの最大セグメントみつける。Bestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用して、特定の配列が本発明のレファレンス配列と、たとえば95%同一であるか否かを決定する場合、レファレンスアミノ酸配列の全長に対して同一性のパーセンテージが計算されるよう、かつレファレンス配列のアミノ酸の総数の5%までのホモロジーのギャップ許容されるように、当然パラメーターが設定される。

0109

ポリヌクレオチド
更に、本発明は、融合タンパク質またはキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチド、これを含有する組換え発現ベクタープラスミドおよび他のポリヌクレオチド構築物(まとめて「発現ベクター」と称される)、これら発現ベクターで形質転換された微生物、並びにこれらポリヌクレオチドを得るための方法、および前記ベクターを用いて形質転換細胞を得るための方法に関する。適切な宿主細胞を、発現ベクターで形質転換することができる。

0110

ここで使用される「発現ベクター」の用語は、遺伝的材料(すなわち核酸)からつくられる構築物を指す。典型的には、発現ベクターは、細菌の宿主細胞、たとえば大腸菌で機能的な複製起点、および発現ベクターを含む細菌の宿主細胞を検出するための選択マーカーを含有する。本発明の発現ベクターは、プロモーター配列を含有し、ここに記載される遺伝的エレメントであって、挿入されたコード配列が、真核細胞で転写翻訳され得るように配置された遺伝的エレメントを含む。ここに記載されるある態様において、発現ベクターは、閉環DNA分子である。

0111

「発現」の用語は、コード配列によりコードされる生成物の生物学的産生を指す。多くの場合、コード配列を含むDNA配列は転写され、メッセンジャーRNA(mRNA)を形成する。その後、メッセンジャーRNAは、翻訳され、関連の生物学的活性を有するポリペプチド産物を形成する。また、発現のプロセスは、転写のRNA産物に更なる処理工程を含んでもよく、たとえばイントロンを除去するためのスプライシング、および/またはポリペプチド産物の翻訳後プロセッシングを含んでもよい。

0112

本発明の融合タンパク質またはキメラタンパク質は、組換えDNA技術により調製することができる。本発明に従って、所望のタンパク質コードする遺伝子配列が単離、合成、または入手され、PTDペプチドをコードするDNA配列に動作可能に連結される。PTDペプチドをコードするDNA配列に動作可能に連結された所望のタンパク質の遺伝子を含有するハイブリッド遺伝子は、キメラ遺伝子と称される。必要に応じて、所望のタンパク質をコードする遺伝子配列は、リンカー配列を介して、PTDペプチドをコードするDNA配列に動作可能に連結されてもよい。

0113

リンカーペプチド」の用語は、発現されるタンパク質に含有される場合、好ましくは親水性領域を提供するアミノ酸残基の任意の配列を規定することを意図する。かかる親水性領域は、タンパク分解性切断部位において酵素による切断を促進することができる。

0114

キメラ遺伝子は、所望のキメラタンパク質を適切な形質転換宿主で発現させることができる発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、挿入されたキメラ遺伝子を必要な調節配列とともに提供し、適切な形質転換宿主において発現を制御する。

0115

核酸構築物は、ベクター、たとえば発現ベクターの形態とすることができ、とりわけ、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、たとえば細菌プラスミド、バクテリオファージトランスポゾン酵母エピソーム、挿入エレメント酵母染色体エレメント、ウイルス、たとえばバキュロウイルスパポバウイルス、たとえばSV40ワクシニアウイルスアデノウイルス鶏痘ウイルス仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス由来のベクター、およびこれらの組み合わせに由来するベクター、たとえばプラスミドとバクテリオファージの遺伝的エレメントに由来するベクター、たとえばコスミドおよびファージミド(phagemid)を含み得る。一般に、核酸を宿主で維持、伝播または発現してポリペプチドを発現するのに適した任意のベクターが、これに関して、発現のために使用することができる。

0116

本発明の融合タンパク質の発現を制御する調節エレメントは、プロモーター領域、5’非翻訳領域、シグナル配列キメラコード配列、3’非翻訳領域、および転写終結部位を含む。宿主から培地に分泌される融合タンパク質は、シグナル配列も含有する。

0117

同様に、種々の翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらは、リボソーム結合部位、および翻訳開始および終結コドンを含むが、これらに限定されない。

0118

組み換えベクターを調製し、これを使用して宿主細胞を形質転換し、宿主細胞でベクターを複製し、生物学的に活性な外来ポリペプチドおよびタンパク質を発現させるための方法および材料は、Principles of Gene Manipulation, by Old and Primrose, 2nd edition (1981)、およびSambrook et al., Molecular Cloning, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (2001)に記載され、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。

0119

ここで使用される「DNAポリヌクレオチド」の用語は、環状または直鎖状プラスミド、または他の直鎖状DNAであり得、これは、非感染性および非統合性であってもよい(すなわち、脊椎動物細胞ゲノム統合されない)。直鎖状プラスミドは、以前は環状であったが、たとえば制限エンドヌクレアーゼでの消化により直鎖状にされたプラスミドである。直線DNAは、ある状況で有利であり得、たとえば、Cherng, J.Y., et al., J. Control. Release 60: 343-353 (1999)、およびChen, Z.Y., et al., Mol. Ther. 3: 403-410 (2001)に記載されるとおりであり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。

0120

本発明の更なる態様は、キメラ遺伝子を含むベクターを含み、これは、上述のキメラ遺伝子を含むベクターのヌクレオチド配列の何れかと、少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のヌクレオチドを含む。

0121

本発明の他の態様は、キメラ遺伝子を含み、これは、上述のキメラ遺伝子のヌクレオチド配列の何れかと、少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のヌクレオチドを含む。

0122

実用的な事項として、任意の特定のベクターまたはキメラ遺伝子が、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータープログラム、たとえばBestfit program (Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711) を使用して慣用的に決定することができる。Bestfitは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981) のローカルホモロジーアルゴリズムを使用して、二つの配列の間でホモロジーの最大セグメントをみつける。Bestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用して、特定の配列が本発明のレファレンス配列と、たとえば95%同一であるか否かを決定する場合、レファレンスヌクレオチド配列の全長に対して同一性のパーセンテージが計算されるよう、かつレファレンス配列のヌクレオチドの総数の5%までのホモロジーのギャップが許容されるように、当然パラメーターが設定される。

0123

コドンの最適化
“コドンの最適化”は、対象の被検体、たとえばヒトの細胞において発現を向上させるために、天然の配列の少なくとも一つ、二つ以上、または相当数のコドンを、当該被検体の遺伝子において更に高い頻繁、または最も高い頻繁で使用されるコドンに置換することにより核酸配列を改変することと規定される。様々な種が、特定のアミノ酸のある種のコドンについて特定の偏りを示す。

0124

一つの側面において、本発明は、ポリヌクレオチド発現構築物またはベクター、および治療用ポリペプチドをコードするコドン最適化コード領域核酸断片、およびその断片、変異体、または誘導体を含む宿主細胞、および被検体の疾患を治療または予防するために、ポリヌクレオチド発現構築物、ベクター、宿主細胞を使用する種々の方法に関する。

0125

ここで使用される「コドン最適化コード領域」の用語は、少なくとも一つ、または二つ以上、または相当数のコドンを、当該被検体の遺伝子において更に高い頻繁で使用される一以上のコドンに置換することにより、所定の被検体の細胞での発現のために適合された
核酸コード領域を意味する。

0126

任意のポリペプチド鎖のアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列における偏りは、遺伝子をコードする配列のバリエーションを許容する。各コドンは、3つのヌクレオチドからなり、DNAを含むヌクレオチドは、4つの特定の塩基に限定されるため、64通りのヌクレオチドの組み合わせが存在し、そのうち61通りがアミノ酸をコードする(残りの3つのコドンが翻訳を終結させるシグナルをコードする)。多くのアミノ酸は、2つ以上のコドンにより指定される。たとえば、アラニンおよびプロリンのアミノ酸は、4つのトリプレットにコードされ、セリンおよびアルギニンは、6つのトリプレットにコードされるが、トリプトファンおよびメチオニンは、たった1つのトリプレットにコードされる。この縮重により、DNAにコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させることなく、DNAの塩基組成を広範囲にわたって変化させることができる。

0127

コンセンサス配列
本発明は、更に、特定のコンセンサス配列、およびその断片、誘導体および変異体を備えた治療用融合タンパク質を発現するキメラ遺伝子を含有する発現プラスミドに関する。「コンセンサス配列」は、たとえば、互いに比較された二つ以上の配列の各位置に最もよく存在するアミノ酸を表す理想化配列である。コンセンサス配列は、理論的な代表アミノ酸配列であり、ここで各アミノ酸は、天然に存在する異なる配列の当該部位に最も頻繁に存在するアミノ酸である。また、この用語は、理論的なコンセンサスに近い実際の配列を指す。コンセンサス配列は、たとえば、共有の機能的または構造的目的を有する配列から誘導することができる。これは、ホモロジーを最大にすることが可能なように、特定の構造的または機能的ドメインの多くの公知例を整列させることにより規定することができる。各々の特定のアミノ酸が、その位置において合理的に優位である場合、配列は、コンセンサスとして一般に受け入れられ、比較の基準を形成する配列の多くは、かなりわずかな置換、たとえば0〜約100置換によりコンセンサスと関連する。一般的に、野生型比較配列は、コンセンサス配列と、少なくとも約50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。よって、本発明のポリペプチドは、コンセンサス配列と、約50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。

0128

「コンセンサスアミノ酸」は、コンセンサスタンパク質において所定の位置を占めるように選択されたアミノ酸である。コンセンサスアミノ酸を選択するために組織化されたシステムは、“手動”の分析および計算によるコンピュータープログラムまたは一以上のコンピュータープログラムの組み合わせとすることができる。配列させたアミノ酸配列の各位置についてコンセンサスアミノ酸を得た場合、これらコンセンサスアミノ酸は、コンセンサスタンパク質のアミノ酸配列を得るために“一列に並べられる(line up)”。

0129

治療用途
アポトーシス性およびネクローシス性細胞死、および他のプログラムされた細胞死の経路は、虚血性脳傷害、心臓疾患、および神経変性疾患にしばしば関与する。上述の治療用融合タンパク質は、アポトーシスおよびアポトーシスにより引き起こされる疾患の発症を効果的に抑制するための医薬の製造において使用することができる。

0130

本発明の治療用融合タンパク質は、一または複数の化合物または構築物と共に投与されてもよい。他の化合物は、抗血小板薬剤、抗凝固薬剤、または抗血栓薬剤カスパーゼ阻害剤、並びに、Hspファミリーのメンバー(たとえば、コシャペロンHsp40)を含む他のポリペプチドを含むが、これらに限定されない。

0131

本発明の治療用融合タンパク質は、以下の細胞または細胞タイプターゲットにすることができる:幹細胞(たとえば、造血幹細胞、間葉系幹細胞、間質系幹細胞または神経幹細胞)、心臓血管細胞、たとえば心筋細胞、心室筋細胞心房筋細胞、心臓幹細胞、内皮細胞、血管平滑筋細胞ペースメーカー細胞筋線維芽細胞または線維芽細胞、神経系細胞、たとえばニューロン(神経細胞またはニューロイトとも称される)、腫瘍細胞、マクロファージ、上皮細胞、ケラチノサイト、顆粒球、赤血球、リンパ球または血小板。細胞は、分化した細胞であっても前駆細胞であってもよい。

0132

心臓の特定遺伝子の発現を誘導するために間葉系幹細胞(MSCs)に適用することが可能な一連の特殊処理が、本明細書に開示される。その状況は、ラット、イヌおよびヒトのMSCsに効果的である。MSCsの処理は、(1)胎生期、新生期および成体のラットの心臓細胞とMSCsを共に培養すること;(2)胎生期、新生期および成体の心筋細胞を用いてMSCsのヘテロカリオンをつくるために化学的融合剤(fusigen)(たとえば、ポリエチレングリコールまたはセンダイウイルス)を使用すること;(3)細胞外マトリクスおよび心臓組織で見出される関連分子を含む哺乳類の心臓抽出物とともにMSCsをインキュベートすること;(4)MSCsを増殖因子および分化誘導剤で処理すること;(5)MSCsを機械的および/または電気的に刺激すること;および(6)MSCsを心筋細胞と機械的および/または電気的にカップリングさせることを含む。心筋細胞へと発達するMSCsは、胎生期の心臓組織に見出されるタンパク質を最初に発現し、その後、成体の形態に発達する。心筋細胞に特異的なタンパク質の発現の検出は、以下のものに対する抗体、たとえばミオシン重鎖モノクローナル抗体MF20、筋小胞体カルシウムATPアーゼ(SERCA1) (mnAb 10D1) またはコネキシン43に対する抗体を用いたギャップ結合を用いて行われる。

0133

心臓傷害は、移植されたMSCsを用いて筋発生を向上させる組織応答を促進する。このため、MSCsは、梗塞ゾーンに導入され、瘢痕形成の程度を低下させ、心室の機能を増大させる。これにより、新たな筋が、梗塞心筋セグメント内につくられる。MSCsは、梗塞組織ゾーンに直接浸潤される。これら細胞の統合およびその後の分化が特徴づけられ、介入のタイミングは、急性心筋梗塞の患者が、まず医療注意払うようになり、第一線の治療を受けて、安定化し、その後、必要であれば心筋の代償療法が介入する臨床上のセッティングを模倣するようにデザインされる
心臓の4つのチャンバーのうち、左心室は、血液を体の循環系を通って加圧して拍出する役割を主に担う。左心室は、最も厚い心筋の壁を有し、鬱血性心不全に起因する心筋傷害が最も頻繁に起こる部位である。鬱血性心不全の進行度または重症度は、適切なドナー臓器入手可能になればすぐに心臓移植が必要なケースから、永続的な傷害がほとんどまたは全く観察されず、治療が主に予防的であるケースまで多岐にわたる。

0134

結果として生じる心筋梗塞の重症度、すなわち関与している左心室の筋質量のパーセンテージは、約5パーセント〜約40パーセントまで変動し得る。これは、一つの連続的虚血であろうと、小さな虚血性病変の集まりであろうと、約2 cm2〜約6 cm2の水平方向の患部面積と1-2 mm〜1-1.5 cmの厚みを有する、組織の病変部を表す。梗塞の重症度は、どの管が関与しているか、および治療的介入が開始されるまでにどのくらいの時間が経過したかにかなり左右される。

0135

本発明に従って使用される間葉系幹細胞は、自己由来同種異系由来、または異種由来の順に好ましく、その選択は、治療の必要性の緊急度に大きく依存する。生命が危険な状況にある患者は、充分な数の自己由来のMSCsを培養している間、人工心肺で維持されてもよいし、あるいは自己由来のMSCs以外のものを使用して初期治療を提供することができる。

0136

方法および投与
本発明は、治療用融合タンパク質、またはその断片、変異体または誘導体を、一または複数の薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤と混合して、デリバーするための方法を提供する。治療用融合タンパク質は、組換えタンパク質として、とりわけ融合タンパク質、または精製サブユニットとして提供され、これは、本明細書に記載される組成物等の組成物を投与した際に被検体で治療応答が引き起こされるように、本明細書に記載される一または複数の組成物を被検体に投与することを含む。デリバリーは、たとえば皮膚、鼻、目を通して、筋、脳または心臓に、あるいは静脈内注射により行うことができる。

0137

“被検体”の用語は、生きている生物、たとえばヒト、サル乳牛ヒツジウマブタ畜牛ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、これら由来の培養細胞、およびこれらのトランスジェニック種を包含することを意図する。好ましい態様において、被検体はヒトである。

0138

脊椎動物”の用語は、単一の“脊椎動物”、並びに複数の“脊椎動物”を包含することを意図し、哺乳類および鳥類、並びに魚類爬虫類、および両生類を含む。

0139

“哺乳類”の用語は、単一の“哺乳類”および複数の“哺乳類”を包含することを意図し、ヒト;霊長類、たとえば類人猿、サル(たとえば、フクロウザルリスザル、オマキザル、アカゲザルアフリカミドリザルパタスザル、カニクイザル、およびオナガザル)、オランウータンヒヒテナガザル、およびチンパンジーイヌ科、たとえばイヌおよびオオカミネコ科、たとえばネコ、ライオン、およびトラウマ科、たとえばウマ、ロバ、およびシマウマ食用動物、たとえばウシ、ブタ、およびヒツジ;有蹄動物、たとえばシカおよびキリンクマ科、たとえばクマ;およびウサギ、マウス、フェレットアザラシクジラなどその他のものを含むが、これらに限定されない。特に、哺乳類は、ヒト被検体、食用動物またはコンパニオンアニマルとすることができる。

0140

“鳥類”の用語は、単一の“鳥類”および複数の“鳥類”を包含することを意図し、野生水鳥、たとえばアヒルガチョウアジサシミズナギドリ、およびカモメ;並びに飼いならされた鳥類種、たとえばシチメンチョウニワトリウズラキジ、ガチョウ、およびアヒルを含むが、これらに限定されない。また、“鳥類”の用語は、スズメ目、たとえばムクドリおよびセキセイインコを包含する。

0141

本発明は、更に、本明細書に記載される一または複数の組成物をヒトに投与することを含む、治療応答を引き起こす、向上させる、または調整するための方法を提供する。この方法において、組成物は、一または複数のポリペプチド、またはその断片、変異体または誘導体を含んでいてもよく、ここで当該タンパク質は、組換えタンパク質として、とりわけ融合タンパク質、または精製サブユニットとして提供される。

0142

ここで使用される“治療応答”は、組成物が被検体にデリバーされた際に、本明細書に開示されるように、組成物に対するポジティブな反応を誘発する被検体の能力を指す。

0143

上述のとおり、本発明の組成物は、疾患または疾患の病状を治療的に治療および予防するために使用することができる。ここで規定されるとおり、“治療”は、被検体の疾患または疾患の徴候の重症度を予防、治癒、遅延または軽減するため、および/または疾患が悪化しないように、一または複数の本発明の組成物を使用することを指す。

0144

本発明の一部として想定されるアポトーシスにより引き起こされるか、またはアポトーシスにつながる疾患または疾患の病状は、以下のものを含むが、これらに限定されない:虚血/低酸素症、たとえば、心臓虚血、心臓低酸素症−再酸素化、心臓虚血−再灌流傷害、虚血性心疾患、心不全、心臓肥大、心臓手術、外傷性心臓傷害、冠動脈血管形成術、血管の欠陥または遮断(血流の閉塞)、先天性心疾患、鬱血性心不全、心臓細胞の筋再生、化学療法剤誘導性心筋症、心筋梗塞、心停止、心臓毒性、寄生生物感染による心臓損傷、劇症心アミロイドーシス、心臓移植、または外傷性心臓または脳傷害、虚血性脳梗塞による発作、虚血性または出血性発作、虚血性急性腎不全、腸虚血、心筋梗塞による虚血性心疾患(再灌流後の心筋虚血および障害、肝虚血、脳虚血(たとえば脳卒中からの脳虚血など)、凍傷および網膜虚血、頭蓋内出血クモ膜下出血血栓溶解剤誘導型など)、血栓、低酸素症誘導性アポトーシス、および虚血−再灌流後の組織損傷。

0145

更なる心臓の変性疾患は、ウイルス性心筋炎、自己免疫性心筋炎(鬱血性心筋症および慢性心筋炎)、肥大型心臓および心不全による心筋障害または死、不整脈原性右心室心筋症、心不全、および冠動脈バイパスグラフトを含むが、これらに限定されない。

0146

網膜神経および視神経の虚血は、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症の間、硝子体内手術の間、網膜変性、たとえば網膜色素変性、および加齢性黄斑変性において起こり得る。

0147

本発明の一部として想定されるアポトーシスにより引き起こされるか、またはアポトーシスにつながる神経変性疾患または疾患の病状は、以下のものを含むが、これらに限定されない:重症筋無力症、アルツハイマー病、パーキンソン病を含むパーキンソン症候群、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症または運動ニューロン疾患(ALS)、脊髄延髄萎縮症、脱神経性萎縮症、脊髄筋ジストロフィー(SMA)、網膜の色素性変性および緑内障、小脳変性症および新生児黄疸、耳硬化症、発作、痴呆、連続的な遅発性神経細胞死(DND)、運動ニューロン疾患(ALS)、びまん性大脳皮質萎縮、レヴィ小体痴呆、ピック病中脳辺縁系皮質(mesolimbocortical)痴呆、視床変性、球麻痺、皮質−線条体−脊髄変性、大脳皮質基底核神経節変性症、大脳小脳変性、痙攣性不全対麻痺を有する家族性痴呆、多糖体小体病、シャイ−ドレーガー症候群オリーブ橋小脳萎縮症、進行性核上性麻痺変形性筋失調症、ハレルフォルデン−シュパッツ病、メージュ病、家族性振戦、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、有棘赤血球舞踏病フリードライヒ運動失調症ホームズ家族性皮質性小脳萎縮症、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、進行性脊髄筋萎縮症進行性球麻痺原発性側索硬化症遺伝性筋萎縮症、痙性対麻痺腓骨筋萎縮肥厚性間質性多発ニューロパシー遺伝性多発神経炎性失調視神経症、糖尿病性網膜症、および眼筋麻痺。当業者であれば、これらの軽度、中程度または重度の神経変性の病状が、本発明の方法に従って治療され得ることを理解する。

0148

アポトーシスにより引き起こされるか、またはアポトーシスにつながる他の変性疾患は、以下のものを含むが、これらに限定されない:変性萎縮、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、腎疾患(たとえば、糸球体腎炎)、溶血性尿毒症症候群など、後天性免疫不全症候群(AIDS)、炎症性皮膚疾患、たとえば中毒性表皮壊死症(TEN)および多形滲出性紅斑、移植片対宿主病(GVH)、放射線障害、抗癌剤、抗ウイルス剤などによる副作用、アジ化ナトリウム、シアン化カリウムなどの毒性薬剤による障害、骨髄形成異常症、たとえば再生不良性貧血など、プリオン病、たとえばクロイツフェルト−ヤコブ病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、自己免疫疾患および移植拒絶反応と関連した細胞傷害性T細胞またはナチュラルキラー細胞介在性アポトーシス、ミトコンドリアの薬物毒性、たとえば化学療法またはHIV療法の結果、ウイルス、細菌または原生動物の感染、炎症または炎症性疾患、炎症性腸疾患、敗血症および敗血症性ショック、卵胞から卵母細胞への段階、卵母細胞から成熟卵への段階および精子(たとえば、卵巣組織を凍結させ移植する方法、人工受精)、皮膚損傷(高レベルの放射線、熱、火傷、化学薬品、太陽、および自己免疫疾患への露出による)、骨髄異形成症候群(MDS)(骨髄細胞の死)、膵炎、変形性関節症、関節リウマチ、乾癬、糸球体腎炎、アテローム性動脈硬化症、および移植片対宿主病、網膜周皮細胞アポトーシス、網膜ニューロンアポトーシス緑内障、虚血に由来する網膜の損傷、糖尿病性網膜症、呼吸症候群、糖尿病(たとえば、インスリン依存性糖尿病)、自己免疫疾患、後天性ポリグルタミン病、メンケベルク硬化症、後天性免疫不全疾患(AIDS)と関連した脳症、ミオパシーおよび筋ジストロフィー、糸球体硬化症、メンケベルク中膜硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫性肝炎、ヘモクロマトーシスおよびウィルソン病、アルコール性肝炎、様々な病因の急性肝不全、胆管の疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アポトーシス誘導性脱毛症および化学療法剤の使用と関連したアポトーシス。

0149

“予防”の用語は、被検体に治療応答を引き起こすために本発明の一または複数の組成物を使用することを指す。本発明の任意の組成物が、すべての疾患の徴候を完全に治癒または除去することを必要としない。

0150

ある態様において、本発明の一または複数の組成物は、本明細書に記載の方法により被検体にデリバーされ、これにより効果的な治療応答を達成する。より具体的には、本発明の組成物は、被検体の任意の組織に投与することができ、任意の組織は、皮膚、筋、脳組織肺組織肝臓組織脾臓組織骨髄組織胸腺組織、心臓組織、たとえば、心筋層、心内膜、および心膜、リンパ組織血液組織骨組織膵臓組織腎臓組織胆嚢組織、胃組織腸組織精巣組織、卵巣組織、子宮組織膣組織直腸組織、神経系組織、眼組織腺組織組織、および結合組織、たとえば軟骨を含むが、これらに限定されない。好ましい組織は、心臓および脳組織である。

0151

本発明の間葉系幹細胞(MSC)療法は、以下のものを含む幾つかの投与ルートにより提供することができる。まず、心臓内筋注入は、開胸外科手術の必要性を回避し、注入可能な液体懸濁調製液中にMSCsが存在する場合、または液体形態で注入可能であって、損傷を受けた心筋層の部位で半固体になる生体適合性メディウム中にMSCsが存在する場合に使用することができる。慣用的な心臓内シリンジまたは制御可能な関節鏡デリバリー装置は、ニードル内腔または穴が、MSCsにダメージを与えない充分な直径(たとえば30ゲージ以上)である限り、使用することができる。また、注入可能な液体懸濁MSC調製液は、連続的ドリップまたはボーラスの何れかにより、静脈内に投与することができる。心臓へのダイレクト物理的アクセスを伴う開胸外科手術の間、記載される形態のMSCデリバリー調製液の全てが、利用可能な選択肢である。

0152

用量の範囲の代表的な例は、約20−約50μlの体積の、10−40×106MSCs/mlを含有する注入可能な懸濁液である。単位体積あたりの細胞の濃度は、キャリアメディウムが液体であろうと固体であろうと、実質的に同じ範囲内である。デリバーされるMSCsの量は、固体の“パッチ”タイプが開胸手術の間に適用される場合、通常更に多いが、注入によるフォローアップ療法は、上述のとおりである。しかし、治療の頻度および期間は、組織関与の程度(パーセンテージ)(たとえば、5〜40%左心室質量)に依存して変化する。

0153

組織関与が5〜10%の範囲である場合、20−50μlの注入調製液中の100万個のMSCsを1回だけ投与することで治療することが可能である。注入メディウムは、任意の薬学的に許容可能な等張液とすることができる。例として、リン酸緩衝生理食塩水PBS)、DMEMなどの培養メディウム(好ましくは血清フリー)、生理食塩水または5%デキストロース水溶液が挙げられる。

0154

組織関与重症度レベルが20%前後の範囲より高い場合、20−50μl(10−40×106MSCs/ml)の複数回の注入が想定される。フォローアップ療法が、追加の投薬を伴ってもよい。

0155

非常に重症の場合、たとえば組織関与重症度レベルが40%前後の範囲である場合、長期(数ヶ月まで)の維持量アフターケアによる更に延長した期間の複数回の等価用量が、指示されてもよい。

0156

更に、本発明の組成物は、被検体の任意の内腔に投与することができ、任意の内腔は、肺、口、鼻腔腹膜腔、腸、任意の心腔、静脈、動脈、毛細血管リンパ腔子宮腔腔、直腸腔、関節腔脳室、脊髄の脊椎管、眼の腔、唾液腺または肝臓の管腔を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物を、唾液腺または肝臓の管腔に投与した場合、唾液腺または肝臓のそれぞれから被検体の血流にポリペプチドがデリバーされるように、所望のポリペプチドが唾液腺および肝臓で発現される。唾液腺、肝臓および膵臓を用いた胃腸系分泌器官への特定の投与様式は、米国特許第5,837,693号および第6,004,944号に開示され、これらは、全体として、参照により本明細書に組み込まれる。

0157

開示される方法に従って、本発明の組成物は、注入、静脈内、筋内(i.m.)、皮下(s.c.)、または肺内ルートにより投与することができる。その他の適切な投与ルートは、気管内点滴注入、経皮、眼内、鼻内、吸入、腔内、管内(たとえば膵臓への)および実質組織内(すなわち任意の組織への)投与を含むが、これらに限定されない。静脈内投与については、適切な薬学的に許容可能なキャリアを使用することができ、たとえばリン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、または静脈内への薬剤の投与に使用される他の材料が挙げられる。経皮デリバリーは、皮内(たとえば真皮または表皮への)、経皮(たとえば皮膚を通しての)、および粘膜経由(すなわち皮膚もしくは粘膜組織への、または皮膚もしくは粘膜組織を通しての)投与を含むが、これらに限定されない。腔内投与は、口、膣、直腸、鼻、腹膜、または腸の腔への投与、並びに髄腔内(すなわち脊髄への)、室内(すなわち脳室または心室への)、心房内(すなわち心房への)、およびクモ膜下(すなわち脳のクモ膜下腔への)投与を含むが、これらに限定されない。

0158

その投与様式により、治療応答を必要とするヒトの病状に対して治療応答を引き起こすのに充分な量で、所望の組織において、所望のペプチドまたはタンパク質がデリバーされるか、または発現される限り、任意の投与様式を使用することができる。

0159

本発明の投与手段は、以下のものを含む:針注入(たとえば無菌水性分散液、好ましくは等張)、経皮、カテーテル注入、バイオリスティック注入器(biolistic injectors)、粒子加速器(たとえば、“遺伝子銃”または空気圧“針なし”注入器)、Med-E-Jet (Vahlsing, H., et al., J. Immunol. Methods171: 11-22 (1994))、Pigjet (Schrijver, R., et al., Vaccine 15: 1908-1916 (1997)), Biojector (Davis, H., et al., Vaccine 12: 1503-1509 (1994); Gramzinski, R., et al., Mol. Med. 4: 109-118 (1998)), AdvantaJet (Linmayer, I., et al., Diabetes Care 9: 294-297 (1986)), Medi-jector (Martins, J., and Roedl, E. J., Occup. Med. 21: 821-824 (1979))、ゲルフォームスポンジ貯蔵体、その他の市販の貯蔵体材料(たとえばヒドロゲル)、浸透圧ポンプ(たとえばAlzaミニポンプ)、経口または坐剤の固体の薬学的調合物、たとえば錠剤丸剤軟質および硬質カプセル剤液剤懸濁剤シロップ剤顆粒剤およびエリキシル剤局所用皮膚クリームまたはゲル、およびデカンティング、ポリヌクレオチドでコーティングされた縫合糸の使用(Qin, Y., et al., Life Sciences 65: 2193-2203 (1999))または外科手術の間の局所適用

0160

特定の投与様式は、針ベースの筋内注入およびカテーテル注入を介した肺適用である。また、本発明の組成物を投与するために、エネルギーアシテッドプラスミドデリバリー(EPAD)法が使用されてもよい。かかる方法は、注入組織への短い電気的パルスを伴い、電気穿孔法として一般に公知の手法である。Mir, L.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 96: 4262-7 (1999); Hartikka, J., et al., Mol. Ther. 4: 407-15 (2001); Mathiesen, I., Gene Ther. 6: 508-14 (1999); Rizzuto G., et al., Hum. Gen. Ther. 11: 1891-900 (2000)を一般に参照されたい。この段落で引用される各文献は、全体として、参照により本明細書に組み込まれる。

0161

本発明の一または複数の組成物の効果的な量の決定は、幾つかの因子、たとえば、融合タンパク質、その変異体または誘導体が発現されるか、または直接投与されるか、被検体の年齢、体重および性別、治療を必要とする正確な病状およびその重症度、投与ルート、融合タンパク質のインビボでの半減期、摂取効率、および治療すべき面積などに依存する。治療は、患者の応答を考慮して、臨床判断に基いて、必要であれば繰り返すことができる。

0162

“薬学的に効果的な量”または“治療上効果的な量”は、病状に対する治療または臨床応答を引き起こすのに充分な量である。“薬学的に効果的な量”または“治療上効果的な量”の用語は、交換可能である。上述の因子に基いて、正確な量、投薬の回数、および投薬のタイミングの決定は、当該技術分野の通常の技術の範囲内であり、主治医または獣医により容易に決定される。

0163

哺乳類、とりわけヒトへの投与については、有効成分の1日投与量は、0.01 mg/kg体重から、典型的には約1 mg/kgであることが予測される。上述の投与量は、平均的なケースの模範である。当然、より多い投与量または少ない投与量が正当な場合があり、これらは、ピコモルおよびナノモルの濃度を含み、本発明の範囲内である。

0164

また、本発明は、本明細書に開示される融合タンパク質、および追加の薬学的に活性な薬剤を含む組成物に関する。融合タンパク質および関連の薬学的に活性な薬剤は、薬学的に許容可能な一または複数のキャリアまたは賦形剤と組み合わせて使用され得る。かかるキャリアは、希釈剤(たとえば、ラクトース、デキストロース、スクロースマンニトールソルビトールセルロースおよび/またはグリシン)、潤滑剤(たとえば、シリカタルクステアリン酸およびポリエチレングリコール)、結合剤(たとえば、ケイ酸アルミニウムマグネシウムでんぷんゼラチントラガカントメチルセルロースカルボキシルメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン)、および崩壊剤、たとえば、でんぷん、寒天アルギン酸、またはそのナトリウム塩、および/または吸収剤着色剤香味剤、および甘味剤、生理食塩水、緩衝生理食塩水、リポソーム、水、グリセロールエタノール、およびその組み合わせを含むが、これらに限定されない。

0165

本発明の組成物は、任意の種々の緩衝液中で可溶化され得る。適切な緩衝液は、たとえば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、通常の生理食塩水、トリス緩衝液、およびリン酸ナトリウム(たとえば150 mMリン酸ナトリウム)を含む。不溶性ポリヌクレオチドは、弱酸または弱塩基中で可溶化され、その後、緩衝液を用いて所望の体積に希釈され得る。緩衝液のpHは、必要に応じて調整され得る。更に、適切な浸透圧を提供するために、薬学的に許容可能な添加剤を使用することができる。かかる添加剤は、当業者の範囲内である。インビボで使用される水性組成物については、無菌の発熱物質フリーの水を使用することができる。かかる調合物は、ヒトへの投与に適した薬学的に許容可能な組成物を調製するために、効果的な量のポリヌクレオチドを適量の水溶液とともに含有する。

0166

本発明の組成物は、公知の方法に従って調剤することができる。適切な調製方法は、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition, A. Osol, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)、およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1995) に記載され、これらは、全体として、参照により本明細書に組み込まれる。組成物は、水溶液として投与され得るが、エマルジョン、ゲル、液剤、懸濁剤、凍結乾燥形態、または当該技術分野で公知の任意の他の形態として調剤することもできる。

0167

以下の実施例は、例証の目的のためだけに含められ、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により規定される。実施例で引用されるすべての文献は、全体として、参照により本明細書に組み込まれる。

0168

実施例1
PTD-HspA1Aを含有する発現ベクターの調製
HSPA1Aをコードする塩基配列を、ヒト転写因子Hph-1(GenBankAccession No: U63386)のN末端から858番目のアミノ酸(チロシン)から868番目のアミノ酸(アルギニン)までのペプチド領域をコードする塩基配列と連結させるために、以下の塩基配列を有するプライマーを合成した: Hph-1のN末端から858番目のアミノ酸(チロシン)から868番目のアミノ酸(アルギニン)までの塩基配列を有するpET28B(+)ベクターへのクローニングのための制限酵素EcoRIに対応する塩基配列;およびクローニングのための制限酵素HindIIIに対応する塩基配列であって、HSPA1Aの塩基配列の5’末端および3’末端に対応する配列を備えたもの。PCRは、上述のプライマー、鋳型としてのHSPA1Aタンパク質の全遺伝子を含有するpRSベクター (Invitrogenから商業的に入手可能)、およびpfu turboDNAポリメラーゼ(Stratagene, cat.# 600252-51) を用いて行った。

0169

PCR反応産物を、制限酵素EcoRIおよびHindIIIで切断し、QuiaquickPCR精製キット(QIAGEN, cat.# 28104) を用いて精製した。精製された産物を、pET28B(+) (Invitrogenから商業的に入手可能, Cat.No. V360-20B) のBg1II部位にクローニングした。調製された組換えベクターを“pHph-2-Hsp70”と名付けた。

0170

実施例2
E. coli形質転換体の調製、および融合タンパク質の発現および精製
E. coliBL21-DE3 (ATCCNo. 53863) を、熱ショック形質転換により、実施例1で調製された発現ベクターpHph-2-HSP70で形質転換し、形質転換されたE. coli株を、4 mlのLB培地接種し、37℃で14時間、撹拌しながらプレインキュベートした。その後、プレ培地を、250 mlのLB培地 (10 g/lカゼイン膵液消化物、5 g/l酵母抽出物、10 g/l塩化ナトリウム) に接種し、37℃で3時間培養した。その後、1 mMIPTG (イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド; GibcoBRLcat.# 15529-019) を培地に添加し、その混合物を37℃で4時間培養して、融合タンパク質の発現を誘導した。培地を、4℃において6,000 rpmで20分間遠心分離し、上清を除去し、沈殿物を残した。沈殿物を10 mlの緩衝液1 (50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、10 mMイミダゾール、pH 8.0) 中に溶解し、超音波処理装置(Heat systems, ultrasonic processor XL) を用いて、氷上で300 Wの強度で6秒間、超音波処理し、その後、冷却した。超音波処理および冷却の工程は、トータル超音波処理時間が8分に達するように繰り返した。溶解物を、4℃において12,000 rpmで10分間遠心分離し、破壊されたE. coli細胞を除去し、純粋な溶解物のみを回収した。回収された溶解物に、0.5 mlの50% Ni2+-NTAアガローススラリー(Qiagen, cat# 30230) を添加し、融合タンパク質とNi2+-NTAアガロースとが互いに結合するように、懸濁液を、4℃において200 rpmで1時間撹拌した。混合物を、0.8×4 cmクロマトグラフィーカラム(BioRad, cat.# 731-1550) に通した。得られた材料を、4 mlの緩衝液2 (20 mM Tris-HCl、500 mM NaCl、20 mMイミダゾール、pH 7.9) で2回洗浄し、1 mlの緩衝液3 (50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、300mMイミダゾール、pH 8.0) で処理し、これにより融合タンパク質フラクションを得た。このフラクションを、PD-10脱塩カラム(Amersham-Pharmacia Biotech cat.# 17-0851-01) を用いて脱塩した。単離、精製されたPTD-HSPA1A融合タンパク質を、SDS-PAGEにかけ、その後、クマシーブルー染色により分析した。

0171

実施例3
PTD-HspA1Aのアポトーシス抑制効果
HspA1Aタンパク質およびPTD-コンジュゲートHspA1Aタンパク質を精製し (図1A)、1μlの各タンパク質を、Jurkat T細胞を含む培地に添加し、1時間培養した。その結果、PTD-コンジュゲートタンパク質のみが細胞に導入されたことを観察することができた (図1B)。また、細胞を、0.5μMスタウロスポリン(STS) で処理して、アポトーシスを誘導し、種々の濃度のPTD-HspA1Aを添加し、アポトーシスの程度について細胞を分析した。その結果は、PTD-Hsp70が、濃度依存的な手法でアポトーシス抑制効果を示すことを明らかにする (図1C)。図1Cにおいて、conは、Jurkat T細胞のみを表し、STSは、スタウロスポリンを表す。

0172

実施例4
低酸素条件下におけるPTD-HspA1Aのアポトーシス抑制効果
PTD-HspA1Aを、低酸素条件下において間葉系幹細胞(MSC) に導入し、そのアポトーシス抑制効果について調査した。図2Aは、種々の濃度の精製PTD-HspA1AをMSCに導入したことを示す。低酸素条件下でのMSCのアポトーシスが、HspA1Aの存在で抑制されたことが観察された (図2B、2Cおよび2D)。とりわけ、低酸素条件(低酸素)下でのMSCのアポトーシスは、WST-1シグナルの増大により示されるとおり、HspA1Aの存在で抑制された。テトラゾリウム塩(WST-1) は、ミトコンドリアの呼吸鎖に属するコハク酸テトラゾリウムレダクターゼ系により、ホルマザンに分割される。細胞集団が増えると、培養上清に存在するレダクターゼの量の増加に付随して、WST-1のホルマザン色素への変換が増大する。また、HspA1Aの導入が、Baxタンパク質の発現を抑制し、発現レベルを維持しながらJNK(c-Jun N-末端キナーゼ、ストレス活性化プロテインキナーゼ)タンパク質のリン酸化(すなわち活性化)を阻害し、これによりアポトーシスを抑制したことが示された (図2E)。

0173

実施例5
網膜の変性モデルにおけるPTD-HspA1Aのアポトーシス抑制効果
Sprague−Dawleyラット(グループにつきn=3) は、60 mg/kgMNU(N-メチル-N-ニトロソウレア) の腹腔内注入を受け、そのすぐ後に、1 mg PTD-hspA1Aの腹腔内注入を受けた。注入は、24時間の間隔で (エレクトロチノグラム直後から72時間まで) 6日間繰り返した。

0174

実験の開始から24時間、48時間、72時間および6日後に、ERG(エレクトロレチノグラム) を行った。7日目に、深い麻酔を誘導し、ラットの胸腔を開き、ラットを、4% PFA(パラホルムアルデヒド) を用いた心臓灌流(transcardiac perfusion) により固定し、その後、眼球を単離し、4% PFA中に浸漬した。その後、眼球の前区切り出し、後方眼杯パラフィンブロック包埋し、6μmの厚さの切片に切り、切片をH&E (ヘマトキシリンおよびエオシン) で染色し、網膜層の変化について観察した。

0175

抗癌剤MNUにより誘導されるアポトーシスを有する網膜の変性モデルにおいて、光受容細胞層の変性は、常に網膜の中心部分から開始して起こった。したがって、網膜の中心部分は、コントロールグループとは異なり、光受容細胞層の細胞の減少を示し、不規則な形態に変化したことを見出すことができた (図3A)。

0176

網膜の中間部分では、細胞層は、中心部分の写真よりも多く維持された。しかし、細胞への僅かなダメージがあったことを観察することができる (図3B)。

0177

網膜の周辺部分は、その外観をほぼ完全に維持したことを観察することができる (図3C)。

0178

PTD-HspA1Aは、結膜下に局所的に投与し、局所投与から7日後に観察を行った。局所投与は、最初の投与から3日間のみ行った。

0179

網膜の中心部分は、光受容細胞層への重大なダメージを示したが、その一部において保存されていた。これは、PTD-HspA1Aが、コントロールグループと比較して効果を有することを明らかに示唆する (図3D)。

0180

網膜の中間部分の写真を参照すると、写真の周辺部分に向かって進行するとおり、光受容細胞が多く保存されたことを観察することができ、網膜の中心部分の写真よりも正常な光受容細胞が明らかに観察できた (図3E)。

0181

網膜の周辺部分では、光受容細胞層は、全身投与の場合とほとんど同程度に保存された。また、周辺部分は、形態学的にほとんど正常であったことを観察することができる (図3F)。

0182

これら結果は、PTD-HspA1Aが、網膜の変性モデルにおいてアポトーシスを抑制することを示す。

0183

実施例6
PTD-HspA1Aを用いた臓器保存溶液中での臓器保護効果
単離され腸上皮細胞を二つのグループに分け、その一方のみに43℃での熱ショックを与え、HspA1Aタンパク質の発現を誘導した。細胞を37℃で2時間インキュベートし、回収し、その後、Wisconsin University溶液中において4℃で24時間保存した。その後、細胞を37℃で2時間インキュベートした。細胞を10%ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン&エオシンで染色し、観察した。HspA1Aタンパク質を発現している細胞は正常に維持され(図4、左の写真)、一方、HspA1Aタンパク質を発現していないグループの細胞は、核および細胞質の凝縮を示した(図4、右の写真)ことが観察された。この結果は、HspA1Aが、臓器保存溶液中で臓器保護効果を示すことを明らかにする。

0184

実施例7
梗塞心筋におけるMSC移植に対するPTD-HspA1Aのアポトーシス抑制効果
心筋傷害のための間葉系幹細胞(MSC) 療法は、細胞移植後の生存能力の低さのために固有限界があることが知られている。傷害のないマウス心臓に移植された細胞の生存率は、移植4日後に1%未満であることが報告されている (Toma, C., et al.,Circulation 105: 93-98 (2002))。このため、梗塞心臓に移植された幹細胞の生存を改善する必要がある。

0185

MSCの作成
骨髄由来の間葉系幹細胞(MSC) を、4週齢のSprague-Dawleyオスラット(約100g) の大腿骨および脛骨から、10%胎仔ウシ血清および1%抗生物質ペニシリンおよびストレプトマイシン溶液を補充したダルベッコ改変イーグル培地−低グルコースからなる10 mlのMSC培地を用いた吸引により、採取した。骨髄は、パーコール−分離により単離し、単核細胞を回収した。回収された細胞を2回洗浄し、10% FBS-DMEMに再懸濁し、フラスコ中で1×106 細胞/100 cm2で培養した。培養物を、5% CO2を含有する加湿大気中に37℃で維持した。48時間または72時間後、非接着細胞を捨て、接着細胞をPBSで2回洗浄した。培養物は、3日または4日ごとに約10日間にわたって、新しい完全培地に新たに交換した。更なる精製のために、MSCをIsolex磁性細胞選択システム(Nexell Therapeutics Inc. CA, USA) にかけた。要するに、細胞懸濁物を、抗-CD34モノクローナル抗体とインキュベートし、数回洗浄して非結合の抗体を除去し、マウス由来の抗-CD34抗体を認識するヒツジ抗-マウスIgGでコーティングしたDynabeads(登録商標)M-450と混合した。チャンバーに磁界をかけ、CD34+細胞−ビーズ複合体を、残りの細胞懸濁物から磁気的に分離することができた。その後、残りのCD34-ネガティブフラクションを更に増殖させた。細胞を、0.25%トリプシンおよび1 mMEDTAを用いて37℃で5分間にわたって採取し、100 cm2プレート上で再培養した。再培養後10日目に、細胞を、増殖率の評価のために、非放射性比色定量アッセイWST-1 (Boehringer Mannheim) により定量した。定量は、製造者推奨されるとおりテトラゾリウム塩の切断に基づき、このプロセスが95%純度で3×106細胞を産生したことを示した。

0186

外科的処置
オスSprague−Dawleyラット(200 ± 30 g) において、左冠状動脈下降枝の外科的閉塞により、心筋梗塞を起こした (グループにつきn=8)。外科的プロセスは、共焦点顕微鏡下で行った。要するに、ケタミン(10 mg/kg) およびキシラジン(5 mg/kg) を用いて、ラットを処置のために鎮静させて麻酔をかけ、ラットの3番目と4番目の肋骨を切断して、肋間隙を通して心臓を露出させた。その後、左冠状動脈を、5-0 プロレン(prolene)縫合糸(ETHICON, UK) を用いて、その起点から2-3 mmを結紮した。閉塞から60分後、止血鉗子を除去し、結紮糸を心臓の表面で緩くして、再灌流のためにスネアをはずした。その傷を巾着縫合で閉じた。手術の間ずっと、Harvard呼吸装置を用いて、95% O2および5% CO2を動物通気した。偽手術の動物は、冠状動脈の縫合糸を結紮しなかった点を除いて、同様に処理された。48時間の手術死亡率は10%であった。

0187

MSC移植
梗塞の誘導から48日目に、梗塞を生き抜いた動物にMSC移植を行った。移植の日に、生存MSCをDAPIで標識した。無菌のDAPI溶液を、50μg/mlの最終濃度で培地に添加した。その色素を培養皿に30分間残存させ、細胞をPBSで6回洗い流して、余分な未結合のDPAIを除去した。その後、標識された細胞を、0.25% (w/v)トリプシンを用いて引き離し、移植用の血清フリー培地に懸濁した。細胞移植のために、MSC (2.0×105細胞) を10μl血清フリー培地に懸濁し、30-ゲージ針のHamiltonシリンジを用いて、梗塞領域に注入した。

0188

移植されたMSCの検出
MSCの移植から4日後、動物を安楽死させ、10%中性緩衝ホルムアルデヒドを用いた心臓灌流(transcardiac perfusion) により固定した。その後、心臓を単離し、10%中性緩衝ホルムアルデヒド中に24時間浸漬した。その後、各心臓をパラフィンブロックに包埋し、6μmの厚さの切片に切った。その後、切片にH&Eおよび/または種々の免疫組織化学的染色を行った。図5に観察されるとおり、H&EおよびDAPIダブル染色は、Hph-1-HspA1Aで処理された心臓では、未処理の心臓と比較して、より多くの生存幹細胞が集まっていることを示し、これは、生存可能な成熟心筋細胞が、移植から4週間後までに瘢痕領域に浸潤したことを示す。H&Eで染色されたセクションは、移植された細胞と宿主の心筋細胞の境界区域を示す。

0189

移植された細胞が、心筋細胞と同様の細胞に分化したことを確認するため、我々は、心臓特異的マーカー、CTn T、MHC、およびCav2.1が、DAPI染色領域において検出可能であることを免疫組織化学により示した。また、宿主の心筋細胞領域におけるDAPI-染色HspA1A-MSCは、コネキシン-43およびN-カドヘリンの発現を示した (図6)。

0190

胸壁音波心臓図検査により測定された心臓の大きさおよび性能を、表1に示す。ベースライン(すなわち、梗塞後、細胞移植前) において、心エコー検査パラメーターは、グループの間で有意な差はなかった。左心室拡張終期径 (LVEDD)、左心室収縮終期径 (LVESD)、左心室拡張終期容積(LVEDV)、および左心室収縮終期容積 (LVESV) は、HSPA1A-MSCグループにおいて、コントロールグループと比べて有意に減少した。%短縮率(fractional shortening)(FS) および%駆出率(EF) は、HSPA1A-MSCグループにおいて、コントロールグループと比べて有意に向上した。HSPA1A-MSCの移植は、MSCグループと比べて、収縮期性能の更なる増大 (%FSの37.7%増加および%EFの28.7%増加) につながった。梗塞ゾーンにおけるピーク円周方向歪およびピーク径方向歪は、HspA1A-MSCグループにおいて、他の何れのグループと比べても増大した。また、グローバル円周方向歪およびグローバル径方向歪も、HspA1A-MSCグループにおいて、他の何れのグループと比べても有意に増大した。これらデータは、PTD-HspA1Aの導入が、アポトーシスの阻害メカニズムに有意な影響を及ぼすことを示唆した。

0191

値は、平均値±S.D.で示す。LVEDD=左心室拡張終期径、LVESD=左心室収縮終期径、FS=短縮率、LVEDV=左心室拡張終期容積、LVESV=左心室収縮終期容積、S cir=円周方向歪、およびS rad=径方向歪。

0192

実施例8
PTD-Hsc70のアポトーシス抑制効果
HSC70 (HSP8Aとも称される) は、高度に保存された熱ショックタンパク質70ファミリーの構成メンバーであり、これは、形質転換細胞においておそらく更に高いレベルで、全細胞タンパク質の〜1%を一般に含む (Bakkenist, C.J., et al., Cancer Res. 59: 4219-4221 (1999))。

0193

PTD−コンジュゲートHsc70タンパク質を、図7Aに示すとおり精製した。0.5μMスタウロスポリン(STS) でJurkat T細胞を処理することにより、Jurkat T細胞でアポトーシスを誘導した。その後、種々の濃度のPTD-Hsc70を添加し、アポトーシスの程度について細胞を分析した。その結果は、PTD-Hsc70が、濃度依存的な手法でアポトーシス抑制効果を示すことを明らかにする (図7B)。

0194

実施例9
PTD-cvHspのアポトーシス抑制効果
cvHspは、心臓血管の熱ショックタンパク質である (Krief et al., J. Bio.l Chem. 274(51): 36592-36600 (1999))。

0195

PTD−コンジュゲートcvHspタンパク質を、図8Aに示すとおり精製した。0.5μMスタウロスポリン(STS) でJurkat T細胞を処理することにより、Jurkat T細胞でアポトーシスを誘導した。その後、種々の濃度のPTD-Hsc70を添加し、アポトーシスの程度について細胞を分析した。その結果は、PTD-cvHspが、濃度依存的な手法でアポトーシス抑制効果を示すことを明らかにする (図8B)。

0196

詳細な説明のセクションは、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図し、概要のセクションおよび要約書のセクションは、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図しないことを認識すべきである。概要のセクションおよび要約書のセクションは、本発明者により想定される、全てではない一または複数の本発明の模範的態様を記載してもよく、このため、概要のセクションおよび要約書のセクションは、本発明および添付の特許請求の範囲を限定することを意図しない。

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