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技術 疲労強度と切削加工性に優れたフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼および該非調質鋼からなるコモンレールシステムに使用されるレール部品

出願人 山陽特殊製鋼株式会社ボッシュ株式会社
発明者 田中高志久保賢一エドルメイアヨーナス
出願日 2009年5月14日 (11年7ヶ月経過) 出願番号 2009-117178
公開日 2010年11月25日 (10年1ヶ月経過) 公開番号 2010-265506
状態 特許登録済
技術分野 燃料噴射装置 鍛造 鋼の加工熱処理 物品の熱処理
主要キーワード 交差穴 レール部品 湿式潤滑 切削性向上 部品強度 熱間鍛造材 摩耗量比 完成部品
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (4)

課題

Caなどの快削性元素を添加せずに超硬ドリル加工などの切削加工性を保ち、高価な合金元素を極力使用せずに疲労強度を向上させたフェライトパーライト型熱間鍛造用非調質鋼を提供する。

解決手段

質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜1.60%、P:0.035%以下、S:0.005〜0.035%、Al:0.005〜0.050%、V:0.10〜0.30%、N:0.0300%以下、O:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ、炭素当量Ceqが0.70≦Ceq≦1.05を満足し、熱間圧延もしくは熱間鍛造した後、空冷した状態で、0.2%耐力が550MPa以上および引張強度に対する0.2%耐力の割合である耐力比が62%以上を満足するフェライト−パーライト組織であるフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼。

概要

背景

鋼部品の製造において、製造コスト低減の観点から、熱間鍛造後焼入焼戻し処理や浸炭焼入焼戻しなどを行わずに、強度を得ることができる非調質鋼が注目されている。これらの非調質鋼には、フェライトパーライト系非調質鋼やベイナイト系非調質鋼やマルテンサイト系非調質鋼がある。ところで、ベイナイト系やマルテンサイト系の非調質鋼は強度では優れるが、ドリル加工性などの切削性の面ではフェライト−パーライト系非調質鋼に劣る。そこで強度とドリル加工性などの切削性が両立できる高強度フェライト−パーライト型非調質鋼が求められている。切削性向上については、鋼成分のS量の増量やPb、Bi、Ca、Teなどの特殊な快削性元素の添加などで対応しているのが実情である(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかし、特許文献1の非調質鋼は疲労強度の面で不十分であり、また、特許文献2の非調質鋼はコストアップ鋼材の製造性が悪いなどの点で問題がある。しかも、これらの特許文献における切削性と強度を両立した熱間鍛造用非調質鋼は、一般のエンジン部品を対象とするものであるが、ディーゼルエンジン燃料噴射システム用レール部品を対象とするものではない。

ディーゼルエンジンの燃料噴射システム用のレール部品について説明すると、このレール部品は主にディーゼルエンジン車に使用されるエンジンへの燃料噴射システムであるコモンレールシステムの中の一部品であり、高圧化された燃料をエンジンへの噴射する前に一旦貯めておくための中空形状の部品でレールもしくは蓄圧室とも呼ばれる。機能的には、高い内圧が繰り返し負荷されるために、高疲労強度が求められると同時に、製造面では、交差穴複数箇所あけられるために、高いドリル加工性が求められる部品である。

ところで、上記のレール部品については、コモンレールシステムの圧力レベルによっては、現在でも非調質鋼が使用されている場合もある。しかし、より高圧な圧力レベルが求められるような場合は、非調質鋼ではなく、調質鋼を用いて焼入れ処理した鋼が使用されることが多い(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このものは非調質鋼ではなく、かつ、特殊な成分および特殊な製造工程を経て製造するものである。

ところで、ドリル加工などの切削加工をする場合、完成部品の精度の問題から焼入れ処理の前ではなく、焼入れ処理後硬化した状態で、ドリル加工などの切削加工を施す必要がある。しかし、鋼部品は、例えば焼戻しマルテンサイト組織となっているので、硬度組織の点で加工性に関しては非常に厳しい。そこで、加工性の改善のために、Biといった特殊な元素を添加して対応している(例えば、特許文献4参照。)のが実情である。しかし、このBiを添加した鋼は成分系から非調質鋼でないのは明らかであり、切削性改善のために上記のようにBiを必須元素としており、また、実施例では、硫化物系介在物の大きさは記載されているものの、実際使われる工程を想定した場合の疲労強度は記載がなく不明である。

概要

Caなどの快削性元素を添加せずに超硬ドリル加工などの切削加工性を保ち、高価な合金元素を極力使用せずに疲労強度を向上させたフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼を提供する。 質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜1.60%、P:0.035%以下、S:0.005〜0.035%、Al:0.005〜0.050%、V:0.10〜0.30%、N:0.0300%以下、O:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ、炭素当量Ceqが0.70≦Ceq≦1.05を満足し、熱間圧延もしくは熱間鍛造した後、空冷した状態で、0.2%耐力が550MPa以上および引張強度に対する0.2%耐力の割合である耐力比が62%以上を満足するフェライト−パーライト組織であるフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼。

目的

本発明が解決しようとする課題は、Pb、Bi、Te、Ca、Mgなどの特殊な元素を一切添加することなく、切削加工性を保ちつつ、高価な合金元素を極力使用することなく、疲労強度を向上させる鋼成分範囲からなるフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼とし、鋼の製造時や部品製造時の製造性を損なうことなく、ディーゼルエンジンにおける燃料噴射システムであるコモンレールシステムに使用される高強度のレール部品用の鋼を安価に提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

この技術が所属する分野

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請求項1

質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜1.60%、P:0.035%以下、S:0.005〜0.035%、Al:0.005〜0.050%、V:0.10〜0.30%、N:0.0300%以下、O:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ、式(1)で示す炭素当量Ceqが0.70≦Ceq≦1.05を満足し、熱間圧延もしくは熱間鍛造した後、空冷した状態で、0.2%耐力が550MPa以上、引張強度に対する0.2%耐力の割合である耐力比が62%以上を満足するフェライトパーライト組織であることを特徴とするフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼。Ceq=C%+(1/7)Si%+(1/5)Mn%+(1/9)Cr%+(1/2)V%・・・(1)

請求項2

質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜1.60%、P:0.035%以下、S:0.005〜0.035%、Al:0.005〜0.050%、V:0.10〜0.30%、N:0.0300%以下、O:0.0080%以下を含有し、さらにNi:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜0.70%、Mo:0.01〜0.20%、Cu:0.01〜0.50%、Ti:0.005〜0.050%から選択した1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ、式(1)で示す炭素当量Ceqが0.70≦Ceq≦1.05を満足し、熱間圧延もしくは熱間鍛造した後、空冷した状態で、0.2%耐力が550MPa以上、引張強度に対する0.2%耐力の割合である耐力比が62%以上を満足するフェライト−パーライト組織であることを特徴とするフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼。

請求項3

請求項1または2に記載のフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼からなることを特徴とするディーゼルエンジン燃料噴射システムであるコモンレールシステム用のレール部品

請求項4

請求項3に記載のフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼を1000〜1300℃で熱間鍛造もしくは熱間圧延により成形してなることを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射システムであるコモンレールシステム用のレール部品。

技術分野

0001

本発明は、熱間鍛造後焼入焼戻しなどの熱処理を行うことなく、超硬ドリル加工性などの切削加工性を損なうことなく高い疲労強度が得られる熱間鍛造用非調質鋼およびその鋼材を用いて製造されるディーゼルエンジン燃料噴射システムであるコモンレールシステムに使用されるレール部品に関する。

背景技術

0002

鋼部品の製造において、製造コスト低減の観点から、熱間鍛造後に焼入焼戻し処理や浸炭焼入焼戻しなどを行わずに、強度を得ることができる非調質鋼が注目されている。これらの非調質鋼には、フェライトパーライト系非調質鋼やベイナイト系非調質鋼やマルテンサイト系非調質鋼がある。ところで、ベイナイト系やマルテンサイト系の非調質鋼は強度では優れるが、ドリル加工性などの切削性の面ではフェライト−パーライト系非調質鋼に劣る。そこで強度とドリル加工性などの切削性が両立できる高強度フェライト−パーライト型非調質鋼が求められている。切削性向上については、鋼成分のS量の増量やPb、Bi、Ca、Teなどの特殊な快削性元素の添加などで対応しているのが実情である(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかし、特許文献1の非調質鋼は疲労強度の面で不十分であり、また、特許文献2の非調質鋼はコストアップや鋼材の製造性が悪いなどの点で問題がある。しかも、これらの特許文献における切削性と強度を両立した熱間鍛造用非調質鋼は、一般のエンジン部品を対象とするものであるが、ディーゼルエンジンの燃料噴射システム用のレール部品を対象とするものではない。

0003

ディーゼルエンジンの燃料噴射システム用のレール部品について説明すると、このレール部品は主にディーゼルエンジン車に使用されるエンジンへの燃料噴射システムであるコモンレールシステムの中の一部品であり、高圧化された燃料をエンジンへの噴射する前に一旦貯めておくための中空形状の部品でレールもしくは蓄圧室とも呼ばれる。機能的には、高い内圧が繰り返し負荷されるために、高疲労強度が求められると同時に、製造面では、交差穴複数箇所あけられるために、高いドリル加工性が求められる部品である。

0004

ところで、上記のレール部品については、コモンレールシステムの圧力レベルによっては、現在でも非調質鋼が使用されている場合もある。しかし、より高圧な圧力レベルが求められるような場合は、非調質鋼ではなく、調質鋼を用いて焼入れ処理した鋼が使用されることが多い(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このものは非調質鋼ではなく、かつ、特殊な成分および特殊な製造工程を経て製造するものである。

0005

ところで、ドリル加工などの切削加工をする場合、完成部品の精度の問題から焼入れ処理の前ではなく、焼入れ処理後硬化した状態で、ドリル加工などの切削加工を施す必要がある。しかし、鋼部品は、例えば焼戻しマルテンサイト組織となっているので、硬度組織の点で加工性に関しては非常に厳しい。そこで、加工性の改善のために、Biといった特殊な元素を添加して対応している(例えば、特許文献4参照。)のが実情である。しかし、このBiを添加した鋼は成分系から非調質鋼でないのは明らかであり、切削性改善のために上記のようにBiを必須元素としており、また、実施例では、硫化物系介在物の大きさは記載されているものの、実際使われる工程を想定した場合の疲労強度は記載がなく不明である。

先行技術

0006

特開平10−212559号公報
特開平7−179986号公報
特開2007−231353号公報
特開2005−154886号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明が解決しようとする課題は、Pb、Bi、Te、Ca、Mgなどの特殊な元素を一切添加することなく、切削加工性を保ちつつ、高価な合金元素を極力使用することなく、疲労強度を向上させる鋼成分範囲からなるフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼とし、鋼の製造時や部品製造時の製造性を損なうことなく、ディーゼルエンジンにおける燃料噴射システムであるコモンレールシステムに使用される高強度のレール部品用の鋼を安価に提供することである。さらに切削加工性を損なうことなく、耐力や疲労強度に優れたフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼を用いて製造したコモンレールシステムに使用するレール部品を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

上記の課題を解決するための本発明は、請求項1の手段では、質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜1.60%、P:0.035%以下、S:0.005〜0.035%、Al:0.005〜0.050%、V:0.10〜0.30%、N:0.0300%以下、O:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ、式(1)で示す炭素当量Ceqが0.70≦Ceq≦1.05を満足し、熱間圧延もしくは熱間鍛造した後、空冷した状態で、0.2%耐力が550MPa以上、および、引張強度に対する0.2%耐力の割合である耐力比が62%以上をそれぞれ満足するフェライト−パーライト組織からなるフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼である。
Ceq=C%+(1/7)Si%+(1/5)Mn%+(1/9)Cr%+(1/2)V%・・・(1)

0009

請求項2の手段では、質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.40〜1.00%、Mn:1.00〜1.60%、P:0.035%以下、S:0.005〜0.035%、Al:0.005〜0.050%、V:0.10〜0.30%、N:0.0300%以下、O:0.0080%以下を含有し、さらにNi:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜0.70%、Mo:0.01〜0.20%、Cu:0.01〜0.50%、Ti:0.005〜0.050%から選択した1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、かつ、式(1)で示す炭素当量Ceqが0.70≦Ceq≦1.05を満足し、熱間圧延もしくは熱間鍛造した後、空冷した状態で、0.2%耐力が550MPa以上、引張強度に対する0.2%耐力の割合である耐力比が62%以上を満足するフェライト−パーライト組織からなるフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼である。

0010

請求項3の手段では、請求項1または2の手段のフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼からなるディーゼルエンジンの燃料噴射システムであるコモンレールシステム用のレール部品である。

0011

請求項4の手段では、請求項3の手段のフェライト−パーライト型熱間鍛造用非調質鋼を1000〜1300℃で熱間鍛造もしくは熱間圧延により成形してなるディーゼルエンジンの燃料噴射システムであるコモンレールシステム用のレール部品である。

0012

本発明の非調質鋼の化学成分の限定理由について説明する。なお、%は質量%で示す。
C:0.30〜0.50%
Cは、機械構造用部品としての強度を確保するために必要な元素で、このためには0.30%以上を必要とする。しかし、0.50%より多すぎると硬度を上昇し、かつ、フェライトの割合が減少して切削性が悪化する。そこで、Cは0.30〜0.50%とし、望ましくは0.35〜0.45%とする。

0013

Si:0.40〜1.00%
Siは、脱酸効果を確保し、フェライトに固溶して強化させ、強度を向上するために0.40%以上を必要とする。しかし、1.00%より多く含有すると、その効果は飽和し、熱間加工性および切削性を悪化する。そこで、Siは0.40〜1.00%、望ましくは0.50〜0.80%とする。

0014

Mn:1.00〜1.60%
Mnは、脱酸効果を確保し、フェライトに固溶して強化させ、強度を向上し、さらに、MnSを生成して切削性を向上するために1.00%以上を必要とする。しかし、1.60%より多く含有すると脱酸効果は飽和し、さらに熱間鍛造後にベイナイト組織を生成して切削性を悪化する。そこで、Mnは1.00〜1.60%、望ましくは1.20〜1.40%とする。

0015

P:0.035%以下
Pは、不純物として含有されるが、0.035%より多いと靱性を悪化する。そこでPは、0.035%以下とする。

0016

S:0.005〜0.035%
Sは、Mnと結合してMnSを生成し、切削性の向上効果を確保するために0.005%以上を必要とする。しかし、0.035%より多く含有すると疲労強度や衝撃強度を悪化する。そこで、Sは0.005〜0.035%、望ましくは0.010〜0.025%とする。

0017

Al:0.005〜0.050%
Alは、脱酸効果を確保し、さらにAlNを生成して熱間鍛造時の結晶粒粗大化を抑制ために必要な元素で、0.005%以上を必要とする。しかし、0.050%より多すぎると、Al2O3の増加により加工性を悪化する。そこで、Alは0.005〜0.050%とする。

0018

V:0.10〜0.30%
Vは、熱間鍛造後の空冷時にVCとして析出し、フェライトを強化し、疲労強度や耐力を向上する。さらにV添加により生成するVNを核として初析フェライトが安定して球状に析出し、切削性を向上させる元素であり、このためにはVは0.10%以上を必要とする。しかし、Vが0.30%より多いと硬度が大きく上昇して切削性を悪化し、さらにコストアップとなる。そこで、Vは0.10〜0.30%、望ましくは0.14〜0.24%とする。

0019

N:0.0300%以下
Nは、Alと結合してAlNを生成して熱間鍛造時の結晶粒の粗大化を抑制し、またVと結合してVNを生成して析出強化やフェライト析出の核として働き、結晶粒の微細化に寄与する元素である。しかし、Nが0.0300より多くても、その効果は飽和し、さらに窒化物が粗大化して、強度や切削性や熱間加工性が低下する。そこで、Nは0.0300%以下とする。さらに、上記のAlNやVNを積極的に利用する場合には、Nは0.0050〜0.0300%、望ましくは0.0080〜0.0200%とする。

0020

O:0.0080%
Oは、多く含有されると酸化物を増加し、かつ、酸化物の大形化により疲労強度を低下する。そこで、Oは0.0080%以下、望ましくは0.0050%以下とする。

0021

炭素当量Ceqを0.70≦Ceq≦1.05に限定する理由
熱間鍛造用非調質鋼の熱間圧延もしくは熱間鍛造後の硬さは、炭素当量によりある程度予測が可能である。圧延後もしくは鍛造後の硬さは、高ければ高いほど耐力や疲労強度の向上には有利であるが、加工に対しては不利である。上記の成分範囲を満たしても炭素当量Ceqが下限を外れた場合は必要とされる耐力が得られず部品強度不足し、上限を外れた場合は硬度の大幅な上昇やベイナイト組織の生成により切削加工性が劣化する。したがって、疲労強度と加工性の両立をさせるために炭素当量Ceqを上記範囲に限定する。

0022

以上、請求項1の手段の成分について説明したが、これらの中で、特に重要な元素は、C、S、Vであり、切削加工性を劣化させずに必要となる疲労強度を得る範囲として、Cは0.30〜0.50%、Sは0.005〜0.035%、かつ、Vは0.10〜0.30%であることを見出したものであり、さらに、その特性とコスト面の関係から、望ましくは、Cは0.35〜0.45%、Sは0.010〜0.025%、かつ、V:0.14〜0.24%とするものである。そして、これらの鋼は熱間鍛造、空冷、切削加工という工程を経て製造される燃料噴射システムに用いられるレール部品に最適な成分系であることを見出して得られた、フェライト−パーライト型の熱間鍛造用非調質鋼である。

0023

さらに、請求項2の手段において、請求項1の手段の非調質鋼の化学成分に、さらに1種または2種以上を選択的に加える非調質鋼の化学成分について以下に説明する。ただし、これらの選択元素において1種または2種以上を選択する元素の下限値は0%を超えることはいうまでもない。

0024

Ni:0.01〜0.50%
Niは、靭性を向上する元素であるが、少なすぎると靱性が十分でなく、多すぎるとコストアップとなり、さらに熱間鍛造後にベイナイト組織を生成して切削性を悪化するので、Niは0.01〜0.50%とする。

0025

Cr:0.01〜0.70%
Crは、固溶強化により強度を向上する元素であるが、少なすぎると強度が十分に向上されず、多すぎるとコストアップとなり、さらに熱間鍛造後にベイナイト組織を生成して切削性を悪化するので、Crは0.01〜0.70%とする。

0026

Mo:0.01〜0.20%
Moは、靭性を向上する元素であるが、少なすぎると靱性が十分でなく、多すぎるとコストアップとなり、さらに熱間鍛造後にベイナイト組織を生成して切削性を悪化するので、Moは0.01〜0.20%とする。

0027

Cu:0.01〜0.50%
Cuは、析出強化により強度を向上する元素であるが、少なすぎると強度が十分に向上されず、多すぎるとコストアップとなり、熱間加工性を悪化するので、Cuは0.01〜0.50%とする。

0028

Ti:0.005〜0.050%
Tiは、CやNと結合してTiCやTiNやTiCNを生成し、熱間鍛造後の粒成長を抑える作用をする元素であり、そのためには0.005%以上を必要とする。しかし、Tiが0.050%より多すぎると、切削性および靭性を悪化する。そこで、Tiは0.005〜0.050%とする。

発明の効果

0029

本発明は、上記の手段とすることで、Pb、Bi、Te、Ca、Mgなどの切削性を向上させる特殊な元素を一切添加することなく、切削加工性を保ちつつ、高価な合金元素を極力使用することなく、0.2%耐力が550MPa以上で、0.2%耐力を引張強度で除した耐力比が62%以上である、疲労強度に優れ、かつ、超硬ドリルなどの切削加工性に優れた非調質鋼であり、この非調質鋼を用いたディーゼルエンジンにおける燃料噴射システムであるコモンレールシステムのレール部品は、耐力や疲労強度に優れ、安価であるなど、本発明は従来にない優れた効果を奏するものである。

図面の簡単な説明

0030

熱間鍛造材から引張試験片および回転曲げ疲労試験片を採取する方向を示す図である。
φ6mmの引張試験片を示す図である。
φ8mmの平滑回転曲げ疲労試験片を示す図である。

実施例

0031

本発明の実施の形態について、表および図面を参照して説明する。本発明の手段の熱間鍛造用非調質鋼を溶製し、得られた鋼を用いて製造されるディーゼルエンジンの燃料噴射システムであるコモンレールシステムに使用するレール部品もしくは蓄圧室の製造工程を模擬した工程で、熱間鍛造用非調質鋼の特性の確認を行った。以下に順次説明する。

0032

試験片作製手順として、先ず、表1−1、表1−2、表1−3に示す化学組成の鋼を100kg真空溶解炉で溶製して鋼とし、これらからなる鋼材を1200℃で加熱して熱間鍛造により、図1に示すように、厚さ25mm、幅110mmの鋼材に延伸した後、空冷して熱間鍛造材とした。なお、表1−1、表1−2、表1−3の比較例における備考の記載は本願の鋼の化学成分の量および炭素当量Ceqから外れるものを示しており、成分が外れている鋼種53〜70については炭素当量Ceqを記載していない。なお、これらの表1−1、表1−2および表1−3において、Ni、Cr、MoおよびCu欄の含有量が本発明の成分範囲の下限値の0.01%未満で不可避不純物として含有されている場合、Tiの欄の含有量が本発明の成分範囲の下限値の0.005%未満で不可避不純物として含有されている場合およびその他の欄でCaが含有されていない場合に、それらを「−」で示している。

0033

0034

0035

0036

φ6mm引張試験片
上記の厚み25mm、幅110mmの熱間鍛造材を図1に示す鍛造延伸方向に対して直角方向に長さ18mmで切断し、この切断片を、図2に示すφ6mmの引張試験片に仕上げ加工した。得られた引張試験片を用いて、室温にて引張試験を実施し、引張強度を測定して0.2%耐力およびその0.2%耐力を引張強度で除して耐力比を求めた。

0037

超硬ドリル磨耗試験
切削加工性は超硬ドリルの磨耗量測定にて行った。図1に示す熱間鍛造材の幅を1/2とし、得られた厚み25mm、幅55mmの熱間鍛造材を長さ250mmで切断し、さらに厚み20mmへ機械加工して超硬ドリル磨耗試験片とした。超硬ドリル摩耗試験は、この厚み20mmの試験片を用いて、切削速度50m/min、送り速度500mm/minでφ3mm超硬ドリルにより、湿式潤滑のもとで、20mmの貫通穴の加工で1000穴を加工し、このドリル逃げ面の磨耗量を測定した。

0038

回転曲げ疲労試験片(φ8mm平滑回転曲げ疲労試験片)
また、さらに厚み25mm、幅110mmの図1に示す熱間鍛造材を長さ18mmで切断し、図3に示すφ8mmの平滑回転曲げ疲労試験片に仕上げ加工した。回転曲げ疲労試験は、この試験片を用いて、小野式回転曲げ疲労試験にて、107サイクル破断しない最も高い応力疲労限として実施した。

0039

この場合、一般的なV添加系で、かつ、高S系のフェライト−パーライト型非調質鋼である比較例の鋼種53の疲労限の値およびドリルの逃げ面の摩耗量を値をそれぞれ1.00として発明例および比較例の各鋼種の疲労限の比およびドリルの逃げ面の摩耗量の比を計算し、これらの値を疲労限度比および摩耗量比として、表2−1、表2−2、表2−3に指標として、ミクロ組織、0.2%耐力および耐力比と共に示した。これらにおいて、疲労限度比は高いほど優れ、ドリル摩耗量比は低いほど優れている。

0040

上記の表2−1、表2−2、表2−3において、熱間鍛造後のミクロ組織を観察して、ベイナイト組織が生成したものは、その後の試験を実施することなく、これらを「−」で示し、さらに引張試験において、0.2%耐力が550MPa未満だったものは、摩耗試験と回転曲げ試験を実施することなく、これらを「−」で示した。

0041

0042

0043

0044

以上、表2−1、表2−2、表2−3に見られるように、発明例の鋼種は、全てミクロ組織がフェライト−パーライト組織である。これらにおいて、比較例の鋼種53と比較すると、発明例の鋼種では、特殊な元素を添加せずとも、ドリル摩耗量の悪化を10%未満に抑えつつ、回転曲げ疲労強度を15%以上向上させることができた。また、切削性向上元素としてCaを添加した比較例の鋼種70と比較しても、本発明例の鋼種は遜色がなかった。これらに対し、比較例の鋼種は、疲労限度比および摩耗量比を求め得たフェライト−パーライト組織である鋼種の中で、鋼種55はCが本発明の上限値より大きく、摩耗量比が2.50と高く、鋼種57はSiが本発明の上限値より大きく、摩耗量比が2.38と高く、鋼種60はSが本発明の下限値より少なく、摩耗量比が5.88と極めて高く、鋼種61はSが本発明の上限値より大きく、疲労限度比が0.87と低く、鋼種65はTiが本発明の上限値より大きく、摩耗量比が1.89と高く、鋼種66はVが本発明の上限値より大きく、摩耗量比が3.45と高く、鋼種68はNが本発明の上限値より大きく、摩耗量比が4.17と高く、鋼種69はOが本発明の上限値より大きく、疲労限度比が0.81と低い。鋼種71および72は、請求項の成分範囲を満足しているが、炭素当量Ceqが請求の範囲を外れており、下限値より低い鋼種71は耐力値が低く、上限値より高い鋼種72はベイナイト組織が生成しており強度と加工性を両立できない。

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