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技術 正極合剤層形成用スラリーおよび正極合剤層

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 濱重規若杉悟志
出願日 2009年4月30日 (11年7ヶ月経過) 出願番号 2009-110923
公開日 2010年11月18日 (10年0ヶ月経過) 公開番号 2010-262764
状態 未査定
技術分野 電池の電極及び活物質 二次電池(その他の蓄電池)
主要キーワード 球状導電体 成形冶具 充電形態 ノルマルアルカン 負極用合剤 SBR 硫化物系固体電解質材料 導電化剤
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2010年11月18日)のものです。
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図面 (4)

課題

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スチレン含有バインダー樹脂結着剤に用いた場合であっても、二次電池としての性能を良好なものとすることができる正極合剤層を提供することを主目的とする。

解決手段

本発明は、正極活物質固体電解質材料、結着剤、導電化剤、および溶剤からなり、全固体リチウム二次電池の正極合剤層を形成するために用いられる正極合剤層形成用スラリーであって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とする正極合剤層形成用スラリーを提供することにより、上記課題を解決する。

概要

背景

近年におけるパソコンビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。

現在市販されているリチウム電池は、可燃性有機溶剤溶媒とする有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。

これに対し、液体電解質固体電解質に変えて、電池を全固体化した全固体リチウム二次電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト生産性に優れると考えられている。

このような全固体リチウム二次電池には、正極層及び負極層(以下、単に電極層と称する場合がある)と、これらの間に配置される固体電解質層とが備えられ、電解質は、固体によって構成される。また、電極活物質のみを用いて粉末成形により電極層を構成する場合、電解質が固体であるため、電解質が電極層の内部へ浸透しにくく、電極活物質と電解質との界面が低減し、電池性能が低下してしまう。
このような問題に対して例えば特許文献1では、電極活物質の粉末と電解質の粉末とを混合した混合粉末を含有する電極合剤を用いて電極層とすることにより、界面の面積を増大させている。

このような全固体リチウム二次電池の電極層は固体によって構成されるため、可撓性、および加工性に乏しく、取り扱い性が悪いため、この点に関する改善が求められていた。
そこで、全固体リチウム二次電池に可撓性等を与えるために、活物質固体電解質材料および結着剤を溶媒に分散させて調製したスラリーを用いて形成した電極層の製造方法が提案されている。上記のようなスラリーを用いることで、湿式法により電極層を形成することができ、乾式法により電極層を形成する場合に比べ、製造工程を簡略化することが可能となる。このような結着剤としては、シリコーン系ポリマーを挙げることができるが、シリコーン系ポリマーを結着剤として用いた場合であっても、上述したような取り扱い性を十分には改善することができないといった問題があった。

一方、非特許文献1には、結着剤としてSBR(Styrene-butadiene rubber)を用いた場合に、上記シリコーン系ポリマーよりも高い結着性を示すことが開示されている。
しかしながら、上記結着剤としてSBRを用いた場合、電極層の膜の強度および隣接する層との密着性は向上するものの、シリコーン系ポリマーを結着剤として用いた場合に比べて電気抵抗が大きくなるといった問題がある。

ここで、一般に、全固体リチウム二次電池の電極層は、電子伝導性およびリチウムイオン伝導性の両者が関係する電気抵抗を低下させることが、全固体リチウム二次電池の性能向上の上で重要であるが、上記結着剤を電極層に添加した場合、このような電極層の電気抵抗は増大してしまう。上記電極層の電気抵抗の増大を抑制する方法としては、電子伝導性に寄与する導電化剤を電極層に添加する方法が考えられる。しかしながら、単に導電化剤を添加したのみでは、導電化剤を添加することによってリチウムイオン伝導性は低下する傾向にあることから、電極層の抵抗の増大を抑制することができない場合があり、結果として、全固体リチウム二次電池の性能を向上させることができない場合があるといった問題があった。

概要

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤に用いた場合であっても、二次電池としての性能を良好なものとすることができる正極合剤層を提供することを主目的とする。本発明は、正極活物質、固体電解質材料、結着剤、導電化剤、および溶剤からなり、全固体リチウム二次電池の正極合剤層を形成するために用いられる正極合剤層形成用スラリーであって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とする正極合剤層形成用スラリーを提供することにより、上記課題を解決する。

目的

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤に用いた場合であっても、二次電池としての性能を良好なものとすることができる正極合剤層を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

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請求項1

正極活物質固体電解質材料結着剤導電化剤、および溶剤からなり、全固体リチウム二次電池正極合剤層を形成するために用いられる正極合剤層形成用スラリーであって、前記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、前記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とする正極合剤層形成用スラリー。

請求項2

正極活物質、固体電解質材料、結着剤、および導電化剤からなり、全固体リチウム二次電池に用いられる正極合剤層であって、前記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、前記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とする正極合剤層。

請求項3

請求項2に記載された正極合剤層を有することを特徴とする全固体リチウム二次電池。

技術分野

0001

本発明は、全固体リチウム二次電池に用いられる正極合剤層において、結着剤としてスチレン含有バインダー樹脂を用いた場合に生じる正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制することができる正極合剤層形成用スラリーに関するものである。

背景技術

0002

近年におけるパソコンビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。

0003

現在市販されているリチウム電池は、可燃性有機溶剤溶媒とする有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。

0004

これに対し、液体電解質固体電解質に変えて、電池を全固体化した全固体リチウム二次電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト生産性に優れると考えられている。

0005

このような全固体リチウム二次電池には、正極層及び負極層(以下、単に電極層と称する場合がある)と、これらの間に配置される固体電解質層とが備えられ、電解質は、固体によって構成される。また、電極活物質のみを用いて粉末成形により電極層を構成する場合、電解質が固体であるため、電解質が電極層の内部へ浸透しにくく、電極活物質と電解質との界面が低減し、電池性能が低下してしまう。
このような問題に対して例えば特許文献1では、電極活物質の粉末と電解質の粉末とを混合した混合粉末を含有する電極合剤を用いて電極層とすることにより、界面の面積を増大させている。

0006

このような全固体リチウム二次電池の電極層は固体によって構成されるため、可撓性、および加工性に乏しく、取り扱い性が悪いため、この点に関する改善が求められていた。
そこで、全固体リチウム二次電池に可撓性等を与えるために、活物質固体電解質材料および結着剤を溶媒に分散させて調製したスラリーを用いて形成した電極層の製造方法が提案されている。上記のようなスラリーを用いることで、湿式法により電極層を形成することができ、乾式法により電極層を形成する場合に比べ、製造工程を簡略化することが可能となる。このような結着剤としては、シリコーン系ポリマーを挙げることができるが、シリコーン系ポリマーを結着剤として用いた場合であっても、上述したような取り扱い性を十分には改善することができないといった問題があった。

0007

一方、非特許文献1には、結着剤としてSBR(Styrene-butadiene rubber)を用いた場合に、上記シリコーン系ポリマーよりも高い結着性を示すことが開示されている。
しかしながら、上記結着剤としてSBRを用いた場合、電極層の膜の強度および隣接する層との密着性は向上するものの、シリコーン系ポリマーを結着剤として用いた場合に比べて電気抵抗が大きくなるといった問題がある。

0008

ここで、一般に、全固体リチウム二次電池の電極層は、電子伝導性およびリチウムイオン伝導性の両者が関係する電気抵抗を低下させることが、全固体リチウム二次電池の性能向上の上で重要であるが、上記結着剤を電極層に添加した場合、このような電極層の電気抵抗は増大してしまう。上記電極層の電気抵抗の増大を抑制する方法としては、電子伝導性に寄与する導電化剤を電極層に添加する方法が考えられる。しかしながら、単に導電化剤を添加したのみでは、導電化剤を添加することによってリチウムイオン伝導性は低下する傾向にあることから、電極層の抵抗の増大を抑制することができない場合があり、結果として、全固体リチウム二次電池の性能を向上させることができない場合があるといった問題があった。

0009

特開平8−195219号公報

先行技術

0010

T.Inada et al.,「Silicone as a binder in composite electrolytes」,Journal of Power Sources,(2003),119−121,p.948−950

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤に用いた場合であっても、二次電池としての性能を良好なものとすることができる正極合剤層を提供することを主目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明者等は、電子伝導性とリチウムイオン伝導性との良好なバランスを得ることができる結着剤と導電化剤との組み合わせがあると考え、鋭意検討した結果、正極合剤層の結着剤と導電化剤との組み合わせとして、シリコーン系ポリマーと炭素繊維とを用いた場合、およびスチレン含有バインダー樹脂と球状の炭素材料であるアセチレンブラックとを用いた場合は、いずれも正極合剤層の電気抵抗が増大するのにも関わらず、正極合剤層の結着剤と導電化剤との組み合わせとして、スチレン含有バインダー樹脂と炭素繊維とを用いた場合は、正極合剤層の電気抵抗を減少させることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
すなわち、本発明は、正極活物質、固体電解質材料、結着剤、導電化剤、および溶剤からなり、全固体リチウム二次電池の正極合剤層を形成するために用いられる正極合剤層形成用スラリーであって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とする正極合剤層形成用スラリーを提供する。

0013

本発明によれば、上記結着剤および導電化剤としてスチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維を組み合わせて用いることによって、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤として正極合剤層に用いた際に生じる電気抵抗の増大を抑制することが可能となる。したがって、上記正極合剤層形成用スラリーを用いることにより形成された正極合剤層は、二次電池の性能を大幅に低下させることなく、スチレン含有バインダー樹脂の結着性により、膜の強度が強く、正極集電体との密着性の高いものとすることができる。

0014

また、本発明は、正極活物質、固体電解質材料、結着剤、および導電化剤からなり、全固体リチウム二次電池に用いられる正極合剤層であって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とする正極合剤層を提供する。

0015

本発明によれば、導電化剤として炭素繊維を有することにより、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤として用いた際に生じる正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制することができる。これにより、二次電池の性能を大幅に低下させることなく、上記正極合剤層の結着剤としてスチレン含有バインダー樹脂を用いることが可能となるので、上記正極合剤層は、可撓性に優れ、膜の強度の高いものとすることができる。また、正極集電体等の隣接する層との密着性を高いものとすることができる。

0016

本発明は、上述した正極合剤層を有することを特徴とする全固体リチウム二次電池を提供する。

0017

本発明によれば、上述した正極合剤層を有することにより、二次電池の性能を大幅に低下させることなく、全固体リチウム二次電池に可撓性を付与することができるので、取り扱い性のよいものとすることが可能となる。また、正極合剤層が可撓性に優れ、膜の強度の高いものであることから、全固体リチウム二次電池を大型化することが可能となる。

発明の効果

0018

本発明においては、全固体リチウム二次電池の正極合剤層の結着剤および導電化剤として、スチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維を組み合わせて用いることにより、従来、正極合剤層に結着剤を添加した場合に問題となる正極合剤層内の電気抵抗の増大を抑制することが可能となる。また、結着性の高いスチレン含有バインダー樹脂を結着剤として用いることができるため、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて形成された正極合剤層は可撓性を有し、膜の強度の高いものとなる。また、正極合剤層が形成される正極集電体との密着性を高いものとすることができる。
また、上記正極合剤層の強度を高めることができるため、全固体リチウム二次電池を大型化する場合であっても対応することが可能となる。

図面の簡単な説明

0019

正極合剤層の一例を示す模式図である。
正極合剤層の電気抵抗の分布を示す分布図である。
本発明の全固体リチウム二次電池の一例を示す概略断面図である。

0020

本発明は、正極合剤層形成用スラリー、正極合剤層、および全固体リチウム二次電池に関するものである。以下、それぞれについて説明する。

0021

A.正極合剤層形成用スラリー
まず、本発明の正極合剤層形成用スラリーについて説明する。
本発明の正極合剤層形成用スラリーは、正極活物質、固体電解質材料、結着剤、導電化剤、および溶剤からなり、全固体リチウム二次電池の正極合剤層を形成するために用いられる正極合剤層形成用スラリーであって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とするものである。

0022

ここで、結着剤を正極合剤層に添加した場合、正極合剤層の電気抵抗が増大する理由としては、次のような理由が考えられる。
図1は正極合剤層の一例を示す模式図である。ここで、図1は、正極活物質2、固体電解質材料3、および結着剤4からなる正極合剤層1を示している。
上記正極合剤層の電気抵抗は、正極合剤層内の電子の伝導、およびリチウムイオンの伝導のしやすさによって決まるものである。
図示はしないが、結着剤を含まず、正極活物質および固体電解質材料のみからなる正極合剤層においては、各粒子は密な状態(凝集)で存在しているため、粒子間の電気抵抗は低いものと考えられる。
一方、図1(a)に示すように、正極合剤層中1に結着剤4を添加した場合は、正極合剤層1内の正極活物質2および固体電解質材料3の粒子を結着剤4が覆うことにより、粒子の分散性が大きくなることが考えられる。したがって、各粒子が凝集することなく分散して存在するようになるため、電子伝導リチウムイオン伝導阻害されて正極合剤層の電気抵抗が増大すると推定される。

0023

上述したように、上記正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制する方法としては、一般に、電子の伝導性に寄与する導電化剤を上記正極合剤層に添加する方法が考えられる。しかしながら、上記導電化剤はリチウムイオン伝導に寄与するものではない。したがって、導電化剤を添加した場合には、正極合剤層中にリチウムイオン伝導に寄与しない物質が多く存在することとなるので、リチウムイオン伝導は阻害されると考えられる。このため、導電化剤を正極合剤層に添加しても、正極合剤層の抵抗の増大を抑制することができない場合があり、結果として、全固体リチウム二次電池の性能を向上させることができない場合があるといった問題があった。

0024

発明者らは、上記電子伝導性とリチウムイオン伝導性との良好なバランスを得ることができる結着剤と導電化剤との組み合わせがあると考え、様々な結着剤と導電化剤との組み合わせについて検討を行った。
例えば、シリコーン系ポリマーは結着剤として用いられた場合に、正極合剤層の電子伝導性を比較的高いものとすることができるものであることが知られている。また、導電化剤としては、その形状が繊維状もしくは針状のものの方が球状のものよりも、電子伝導性を向上させることができることが知られている。しかしながら、結着剤と導電化剤との組み合わせとしてこの2つを正極合剤層に用いた場合は、結着剤としてシリコーン系ポリマーのみが添加された正極合剤層よりも電気抵抗が増大するという結果を得た。
また、例えば、結着剤として結着性の良好なスチレン含有バインダー樹脂が添加された正極合剤層は上述したシリコーン系ポリマーよりも電気抵抗の大きなものである。したがって、導電化剤を添加した場合は電気抵抗が減少することが予想されたが、導電化剤として球状の炭素材料であるアセチレンブラックを添加した場合には、導電化剤を含まないものよりも、正極合剤層の電気抵抗が増大するという結果を得た。

0025

このように、発明者らは正極合剤層の結着剤および導電化剤の組み合わせについて鋭意検討した結果、正極合剤層の結着剤および導電化剤の組み合わせとして、スチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維の組み合わせを用いた正極合剤層においては、正極合剤層の電気抵抗が大幅に減少することを見出し、これにより初めて正極合剤層の電気抵抗を減少させることができることを見出したのである。

0026

上記正極合剤層の結着剤および導電化剤として、スチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維を組み合わせて用いることによって、正極合剤層の電気抵抗が減少する理由としては明らかではないが、次のように考えられる。
スチレン含有バインダー樹脂はその結着性が高いことから、正極合剤層中の正極活物質および固体電解質材料の粒子の分散性が大きくなることが考えられる。そのため、スチレン含有バインダー樹脂が添加された正極合剤層の電気抵抗は大きくなると考えられる。
一方、図1(b)に示すように、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤4として用いた正極合剤層1に、炭素繊維を導電化剤5として添加した場合、結着剤4によって分散された正極合剤層2および固体電解質材料3の粒子間に、炭素繊維による電子伝導のネットワークが形成されることが考えられる。そのため、結着剤を添加したことによる電子伝導の低下を、上記電子伝導のネットワークによって補うことが可能になると考えられる。
また、上述したように、上記導電化剤は、正極合剤層中の電子伝導に寄与するものであるが、リチウムイオン伝導に寄与するものではない。したがって、導電化剤を添加した場合には、正極合剤層中にリチウムイオン伝導に寄与しない物質が多く存在することとなるので、リチウムイオン伝導は阻害されると考えられる。
しかしながら、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤に用いた正極合剤層においては、上記炭素繊維によってリチウムイオン伝導が低下することによる影響よりも、上記炭素繊維によって上述した電子伝導の低下が補われることによる効果のほうが大きいため、正極合剤層の電気抵抗を減少させることが可能になると考えられる。

0027

次に、結着剤の種類による電気抵抗の増減について説明する。
図2は、正極合剤層の電気抵抗の分布を示す分布図である。図2(a)は、結着剤としてスチレン含有バインダー樹脂を用いた場合、図2(b)はシリコーン系ポリマーを用いた場合について示している。
図2(a)に示すように、結着剤としてスチレン含有バインダー樹脂を用いた場合は、炭素繊維を添加することにより、正極合剤層中の電気抵抗は減少する。これについて考えられる理由は、上述した通りである。
一方、図2(b)に示すように、結着剤としてシリコーン系ポリマーを用いた場合は炭素繊維を添加することにより正極合剤層の電気抵抗は増大する。
この理由については次のように考えられる。
上記シリコーン系ポリマーは、上記スチレン含有バインダー樹脂よりも、結着性の弱いものである。したがって、結着剤としてシリコーン系ポリマーを用いた正極合剤層においては、正極活物質および固体電解質材料の粒子はある程度凝集して存在していると考えられる。そのため凝集した粒子の間では、電子の伝導を行うことができるので、シリコーン系ポリマーが正極合剤層中の電子伝導の低下に与える影響は、スチレン含有バインダー樹脂が正極合剤層中の電子伝導の低下に与える影響よりも小さいものと考えられる。
したがって、この正極合剤層中に導電化剤として炭素繊維を添加した場合は、炭素繊維が電子伝導の低下を補う効果は少ないものと考えられる。また、炭素繊維を添加することによって、正極合剤層内のリチウムイオン伝導が低下するので、正極合剤層の電気抵抗は増大するものと考えられる。

0028

上述したように、正極合剤層の電気抵抗は、正極合剤層の電子伝導性およびリチウムイオン伝導性によって決定されるものであり、上記正極合剤層の電子伝導性およびリチウムイオン伝導性は結着剤による分子の分散性の程度、結着剤自体のリチウムイオン伝導性の程度、導電化剤の形状等の様々な条件に影響されるものである。
本発明は、このように様々な条件に影響されて決定される正極合剤層の電気抵抗を低減させることが可能な結着剤および導電化剤の組み合わせとして、上記スチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維の組み合わせを見出したことに大きな特徴を有するものである。
また、上記スチレン含有バインダー樹脂は、高い結着性を有するものである。したがって、本発明においては、上記スチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維を組み合わせて正極合剤層に用いることで、二次電池の性能を大幅に低下させることなく、上記スチレン含有バインダー樹脂の高い結着性を利用して、強度の高い正極合剤層を製膜することが可能となり、また、正極集電体との密着性の高い正極合剤層を形成することが可能となる。

0029

1.スチレン含有バインダー樹脂
本発明に用いられるスチレン含有バインダー樹脂としては、分子内にスチレンを含有するものであり、二次電池の性能を大幅に低下させることなく、形成される正極合剤層に可撓性を付与し、かつ、上記正極合剤層および正極集電体の密着性を高いものとすることができる程度の結着性を有するものであれば特に限定されるものではない。

0030

このようなスチレン含有バインダー樹脂として、具体的には、スチレンブタジエンゴム(SBR),スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)等を挙げることができる。
ここで、SEBSとは、下記構造式(1)に示す化合物Aと、構造式(2)に示す化合物Bとの繰り返し構造ランダムに結合した構造である。

0031

0032

上記スチレン含有バインダー樹脂の含有量としては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて、二次電池の性能を大幅に低下させることなく正極合剤層を形成することができるのであれば特に限定されるものではないが、上記正極合剤層形成用スラリーの固形成分のうち、0.1質量%〜15質量%の範囲内、中でも0.3質量%〜10質量%の範囲内、特に0.5質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲に満たない場合、上記正極合剤層形成用スラリー内の粒子どうしの密着性、および上記正極合剤層形成用スラリーと正極集電体との密着性を十分なものとすることができないからであり、上記範囲を超える場合は、後述する炭素繊維を添加した場合であっても、形成された正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制するのは困難であるからである。
なお、上記正極合剤層形成用スラリーの固形成分とは、上記正極合剤層形成用スラリーの構成から溶剤を除いたものとする。

0033

2.炭素繊維
次に、本発明に用いられる炭素繊維について説明する。
ここで、本発明に用いられる炭素繊維は、アスペクト比が2〜1000の範囲内のものとする。
本発明においては、上記アスペクト比が、2〜1000の範囲内、中でも、5〜800の範囲内、特に、10〜500の範囲内であることが好ましい。本発明において、上記アスペクト比が上記範囲に満たない場合は、上記スチレン含有バインダー樹脂とともに用いても、正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制することが困難であるからであり、上記アスペクト比が上記範囲を超える炭素繊維は通常用いられないからである。

0034

また、上記炭素繊維の平均繊維径としては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極合剤層を形成した際に、電気抵抗の増大を抑制することができるのであれば特に限定されるものではないが、1nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内、特に100nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。上記炭素繊維の平均繊維径が上記範囲に満たない場合は、上記正極合剤層形成用スラリーの調製する際、または、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極合剤層を形成する際に、上記炭素繊維が切断されて、電気抵抗の増大を抑制することが困難になる可能性があるからである。また、上記炭素繊維の平均繊維径が上記範囲を超える場合は、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極集電体上に正極合剤層を形成する際の塗布性等を低下させるおそれがあるからである。
なお、本発明において、上記炭素繊維の平均繊維径はSEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。

0035

上記炭素繊維の平均長さとしては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極合剤層を形成した際に、電気抵抗の増大を抑制することができるのであれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも1μm〜100μmの範囲内、特に5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記炭素繊維の平均長さが上記範囲に満たない場合は、上記炭素繊維を正極合剤層に添加しても電気抵抗の増大を抑制することが困難になる可能性があるからである。また、上記炭素繊維の平均長さが上記範囲を超える炭素繊維は通常用いられないからである。
なお、本発明において、上記炭素繊維の平均長さはSEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。

0036

本発明の正極合剤層形成用スラリーにおける上記炭素繊維の含有量としては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて、二次電池としての性能に優れた正極合剤層を形成することができるのであれば特に限定されるものではないが、上記正極合剤層形成用スラリーの固形成分のうち、0.05質量%〜15質量%の範囲内、0.1質量%〜10質量%の範囲内、1質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。上記炭素繊維の含有量が上記範囲に満たない場合は、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて形成された正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制することが困難であるからであり、上記炭素繊維の含有量が上記範囲を超える場合は、不純物として正極合剤層内のリチウムイオン伝導を妨げるおそれがあるからである。

0037

3.正極活物質
本願に用いられる正極活物質は、一般的な正極合剤層に用いられるものと同様とすることが可能である。
このような正極活物質としては、具体的には、例えばLiCoO2、LiMnO2、Li2NiMn3O8、LiVO2、LiCrO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等を挙げることができる。

0038

上記正極活物質の平均粒径としては、一般的な全固体リチウム二次電池の正極合剤層に用いられるものと同様とすることができる。本発明においては、0.1μm〜100μmの範囲内、中でも1μm〜50μmの範囲内、特に5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。上記正極活物質の平均粒径が上記範囲に満たないものは、通常、正極活物質としては用いられないからであり、上記正極活物質の平均粒径が上記範囲を超える場合は、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極合剤層を製造する際の加工性を妨げるおそれがあるからである。
なお、本発明において、上記正極活物質の平均粒子径はSEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。

0039

本発明に用いられる正極活物質の含有量は、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて所望する正極合剤層を形成することが可能ならば特に限定されるものではないが、上記正極合剤層形成用スラリーの固形成分のうち、30質量%〜99質量%の範囲内、中でも40質量%〜95質量%の範囲内、特に50質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。上記正極活物質の含有量が上記範囲に満たない場合、形成された正極合剤層が全固体リチウム二次電池の電極層として機能しないおそれがあるからであり、上記正極活物質の含有量が上記範囲を超える場合、正極活物質以外の構成の含有量が少なくなり、正極合剤層としての性能が低下するからである。

0040

4.固体電解質材料
本発明に用いられる固体電解質材料は、一般的な正極合剤層に用いられる固体電解質材料と同様とすることができる。
このような固体電解質材料としては、例えば硫化物系固体電解質材料チオリシコン酸化物系固体電解質材料等を挙げることができる。本発明においては、中でもリチウムイオンの伝導性が高いことから、硫化物系固体電解質材料を用いることが好ましい。

0041

このような、硫化物系固体電解質材料としては、具体的にはLi、A、Sからなる硫化物系固体電解質材料(Li−A−S)を挙げることができる。上記硫化物系固体電解質材料Li−A−S中のAは、P、Ge、B、Si、SbおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種である。このような硫化物系固体電解質材料Li−A−Sとしては、具体的にはLi7P3S11、70Li2S−30P2S5、LiGe0.25P0.75S4、80Li2S−20P2S5、Li2S−SiS2等を挙げることができ、イオン伝導度が高いことから、特にLi7P3S11が好ましい。

0042

上記固体電解質材料の平均粒径としては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極合剤層を形成する際の加工性を優れたものとすることができ、かつ、形成された正極合剤層を二次電池としての性能に優れたものとすることができるのであれば、特に限定されるものではないが、1nm〜100μmの範囲内、中でも10nm〜50μmの範囲内、特に100nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記固体電解質材料の平均粒径が上記範囲に満たない場合、形成された正極合剤層中の固体電解質材料の分散性が大きくなりすぎ、上述した炭素繊維を添加した場合であっても、電子伝導性を向上させることが困難になるからであり、上記固体電解質材料の平均粒径が上記範囲を超える場合は、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて正極合剤層を形成する際の加工性を妨げるおそれがあるからである。
なお、本発明において、上記固体電解質材料の平均粒子径はSEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。

0043

また、上記固体電解質材料の含有量としては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて所望する正極合剤層を形成することができるのであれば特に限定されるものではないが、上記正極合剤層形成用スラリーの固形成分のうち、1質量%〜70質量%の範囲内、中でも5質量%〜60質量%の範囲内、特に10質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記固体電解質材料の含有量が上記範囲に満たない場合、または上記範囲を超える場合は、正極合剤層の性能が低下するおそれがあるからである。

0044

5.溶剤
本発明に用いられる溶剤は、一般的に電極層形成用スラリーに用いられるものと同様とすることができる。このような溶剤としては、具体的には、ヘプタン等のCnH2n+2で表されるノルマルアルカントルエンキシレン等の無極性溶媒が挙げられる。

0045

また、上記溶剤の含有量としては、上記正極合剤層形成用スラリーを用いて所望する正極合剤層を形成することができるのであれば特に限定されるものではないが、上記正極合剤層形成用スラリーの固形成分100重量部に対し、0.1重量部〜100000重量部の範囲内、中でも、1重量部〜10000重量部の範囲内、特に、10重量部〜1000重量部の範囲内であることが好ましい。上記溶剤の含有量が上記範囲に満たない場合、もしくは上記範囲を超える場合は、上記正極合剤層形成用スラリーを正極集電体上に塗布した場合、塗布ムラができ、上記正極合剤層を均一に形成することが困難であるからである。

0046

6.正極合剤層形成用スラリー
本発明の正極合剤層形成用スラリーは、上記スチレン含有バインダー樹脂、炭素繊維、正極活物質、固体電解質材料、および溶剤を有するものである。
本発明の正極合剤層形成用スラリーは、通常、正極合剤層を湿式法によって形成する際に用いられるものであり、正極集電体上に塗布される場合が多い。

0047

このような正極合剤層形成用スラリーの粘度としては、正極集電体上に上記正極合剤層形成用スラリーを均一に塗布することが可能な程度の粘度であれば特に限定されるものではない。

0048

本発明の正極合剤層形成用スラリーは、上記スチレン含有バインダー樹脂、炭素繊維、正極活物質、固体電解質材料、および溶剤を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な材料を適宜加えることができる。
本発明のスラリーには、その他必要に応じて粘度調整剤流動化剤などを添加してもよ
い。

0049

本発明の正極合剤層形成用スラリーは、上記各成分を混合して製造される。混合方法および混合順序は特に限定されない。また、混合には、ボールミルサンドミル顔料分散機、擂潰機超音波分散機ホモジナイザープラネタリーミキサーなどの混合機を用いることができる。

0050

B.正極合剤層
次に、本発明の正極合剤層について説明する。
本発明の正極合剤層は、正極活物質、固体電解質材料、結着剤、および導電化剤からなり、全固体リチウム二次電池に用いられる正極合剤層であって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とするものである。

0051

本発明によれば、上記正極合剤層は、結着剤および導電化剤としてスチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維を含有することにより、結着剤としてスチレン含有バインダー樹脂を用いた場合に起こる正極合剤層の電気抵抗の増大を抑制することが可能となる。これにより、上記正極合剤層は、可撓性を有し、膜の強度の高いものとすることができる。また、上記正極合剤層は、正極集電体等の隣接する層との密着性の高いものとすることができる。

0052

上記スチレン含有バインダー樹脂、正極活物質、炭素繊維、および固体電解質材料については、「A.正極合剤層形成用スラリー」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。

0053

上記正極合剤層の膜厚としては、通常の全固体リチウム二次電池に用いられるものと同様とすることができ、全固体リチウム二次電池の用途によって適宜調整されるものである。

0054

このような正極合剤層の形成方法としては、正極合剤層が可撓性を有し、膜の強度の高いものであり、二次電池としての性能に優れたものとすることができるのであれば、特に限定されるものではないが、湿式法であることが好ましい。具体的には、「A.正極合剤層形成用スラリー」の項で説明した正極合剤層形成用スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させることにより形成することが好ましい。

0055

上記正極合剤層を形成する際に用いられる塗布方法としては、正極集電体上に均一な膜厚で正極合剤層を形成することができるのであれば特に限定されるものではなく、一般的な塗布方法を用いることができる。具体的には、ダイコータグラビアコータコンマコータ、およびドクターブレードを用いた塗布方法等が挙げられる。

0056

本発明の正極合剤層は、上記スチレン含有バインダー樹脂、正極活物質、炭素繊維、および固体電解質材料を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な材料を適宜含有していてもよい。

0057

C.全固体リチウム二次電池
本発明の全固体リチウム二次電池は、正極活物質、固体電解質材料、結着剤、および導電化剤からなる正極合剤層を有する全固体リチウム二次電池であって、上記結着剤がスチレン含有バインダー樹脂であり、上記導電化剤が炭素繊維であることを特徴とするものである。

0058

本発明の全固体リチウム二次電池を図を用いて説明する。
図3は、本発明の全固体リチウム二次電池の一例を示す概略断面図である。
図3に示される全固体リチウム二次電池20は、スチレン含有バインダー樹脂、炭素繊維、正極活物質、および固体電解質材料から構成される正極合剤層1と、正極合剤層1上に形成された固体電解質層10と、固体電解質層10を正極合剤層1と挟持するように設置された負極層11とを有するものである。通常、これらを挟持するように正極合剤層1上に正極集電体31と、負極層11上に負極集電体32とが設けられており、さらに、これら全体を覆うように電池ケース40が配されている。
このような本発明の全固体リチウム二次電池においては、少なくとも、上記正極合剤層を有するものであれば特に限定されるものではなく、通常は、上記固体電解質層、および上記負極層を有するものである。また、通常は、上述したように、正極集電体、負極集電体、電池ケース等を有する。

0059

本発明によれば、上述した正極合剤層を有することにより、二次電池の性能を大幅に低下させることなく、全固体リチウム二次電池に可撓性を付与することができるので、取り扱い性のよいものとすることが可能となる。また、正極合剤層の膜の強度が強くなるので、全固体リチウム二次電池を大型化することが可能となる。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池の各部材について説明する。

0060

1.正極合剤層
本発明に用いられる正極合剤層は、スチレン含有バインダー樹脂と、正極活物質と、炭素繊維と、固体電解質材料と、から構成されるものである。上記正極合剤層は、上述した「B.正極合剤層」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。

0061

2.固体電解質層
本発明の全固体リチウム二次電池は、通常、固体電解質層を有するものである。
上記固体電解質層に用いられる上記固体電解質材料としては、所望の全固体リチウム二次電池を得ることができるのであれば、特に限定されるものではない。例えば硫化物系固体電解質材料、チオリシコン、酸化物系固体電解質材料等を挙げることができる。通常は、上述した正極合剤層に用いられる固体電解質材料と同様のものが好適に用いられる。

0062

また、上記固体電解質層中に、結着剤を添加してもよい。上記固体電解質層に可撓性を付与することができ、固体電解質層の強度を高めることができるからである。このような結着剤としては、一般的な固体電解質層に用いられるものであれば特に限定されるものではない。

0063

上記固体電解質層の膜厚としては、固体電解質層として機能するのであれば、特に限定されるものではなく、通常の全固体リチウム二次電池に用いられる固体電解質層の膜厚と同様の膜厚とすることができる。

0064

3.負極層
上記負極層に用いられる負極材料としては、一般的な全固体リチウム二次電池に用いられる材料と同様のものを使用することができる。例えば、負極としての機能を有する金属箔等の負極材料のみからなるもの、負極活物質と固体電解質材料とを混合して負極用合剤としたもの等を挙げることができる。また、必要に応じて、導電性を向上させるために、アセチレンブラック、ケッチェンブラックカーボンファイバー等の導電助剤を含有していても良い。

0065

また、上記負極層中に、結着剤を添加してもよい。上記負極層に可撓性を付与することができ、負極層の強度を高めることができるからである。このような結着剤としては、一般的な負極層に用いられるものと同様とすることができる。

0066

上記負極層の膜厚としては、通常の全固体リチウム二次電池に用いられる負極層の厚さと同様の厚さのものを用いることができる。

0067

4.その他の構成
上記全固体リチウム二次電池において、上述した正極合剤層、固体電解質層、および負極層以外の構成、例えば正極集電体、負極集電体および電池ケース等その他の構成について、以下詳細に説明する。

0068

(1)正極集電体
本発明に用いられる正極集電体は、上記正極合剤層の集電を行うものである。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS、アルミニウムニッケル、鉄、チタン、およびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密質集電体であっても良く、多孔質集電体であっても良い。

0069

(2)負極集電体
本発明に用いられる負極集電体は、上記負極層の集電を行うものである。上記負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS、銅、ニッケル、およびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。さらに、上記負極集電体は、緻密質集電体であっても良く、多孔質集電体であっても良い。

0070

(3)その他の構成
上述した部材以外のその他の構成、例えば、電池ケース、コイン型電池ケース等の封止に用いられる樹脂等について説明する。
上記電池ケース、上記樹脂等に関しては、一般的な全固体リチウム二次電池と同様のものを用いることができる。
具体的には、上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、上記電池ケースの代わりに絶縁リング等を用いても良い。また、上記電池ケースは、集電体の機能を兼ね備えたものであっても良い。具体的には、SUS(ステンレス鋼)製の電池ケースを用意し、その一部を集電体として用いる場合等を挙げることができる。また、上記樹脂としては、吸水率の低い樹脂が好ましく、例えばエポキシ樹脂等が挙げられる。

0071

5.全固体リチウム二次電池
本発明により得られる全固体リチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用の全固体リチウム二次電池等として用いることができる。
また、本発明により得られる全固体リチウム二次電池の形状は、コイン型ラミネート型円筒型、角型等を挙げることができ、中でもラミネート型、角型が好ましく、特にラミネート型が好ましい。

0072

また、上記全固体リチウム二次電池の製造方法としては、所望する全固体リチウム二次電池を製造することができるのであれば特に限定されるものではない。正極合剤層については、「B.正極合剤層」の項で説明したように、湿式法によって形成されることが好ましい。上記固体電解質層、および負極層を湿式法によって形成してもよいし、乾式法によって形成してもよい。

0073

なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

0074

以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。

0075

(正極合剤層形成用スラリーの調製)
下記の表1〜表3に示す配合量で、試料1〜試料7の正極合剤層形成用スラリーを調製した。

0076

0077

0078

0079

測定用セルの形成)
上述した正極合剤層形成用スラリーをドクターブレードを用いてSUS箔に塗布し、溶剤のヘプタンを120℃で乾燥させて正極合剤層形成膜を形成した。これを1cm2の円形切り取り、正極合剤層とした。
次に、不活性ガス中で下記のような方法によって全固体リチウムイオン二次電池(測定用セル)を作製した。
まず、固体電解質Li7P3S11粉末65mgを、成形冶具中に挿入して、1ton/cm2でプレス成形して、固体電解質層を形成した。この成形冶具中に上記正極合剤層を挿入し1ton/cm2でプレス成形して固体電解質層と正極合剤層とを一体化させた。次に、固体電解質層が正極合剤層と負極合剤層とで挟持されるように、成形冶具中に負極合剤として、グラファイト6.0mg、およびLi7P3S11粉末6.0mgを挿入し、4.3ton/cm2でプレス成形して固体電解質層と負極合剤層とを一体化させて、測定用セルを得た。

0080

(測定)
上記測定セルをSOC80%に充電し、交流インピーダンス測定によって正極合剤層の内部抵抗測定をした。
電池充電条件としては、充電形態がCC充電、電流レートを0.155mA/cm2(0.1C)、上限電圧を4.1V、下限電圧を3.3Vとした。
また、交流インピーダンス測定条件としては、周波数は1MHz〜10mHz、印加電圧は5mVデータ数41、温度保持時間2時間とした。結果を表4に示す。

0081

0082

[評価]
(炭素繊維の有無について)
試料1を用いて形成した測定用セルを実施例1、試料2を用いて形成した測定用セルを比較例1とした。
SBRを結着剤に用いた場合、炭素繊維を含有する実施例1においては、抵抗値が560Ω/cm2となり、炭素繊維を含有しない比較例1においては、抵抗値が900Ω/cm2となった。
また、試料4を形成した測定用セルを実施例2、および試料5を用いて形成した測定用セルを比較例2とした。
SEBSを結着剤に用いた場合、炭素繊維を含有する実施例2においては、抵抗値が930Ω/cm2となり、炭素繊維を含有しない比較例2においては、抵抗値が3680Ω/cm2となった。
これにより、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤として正極合剤層に用いた場合、炭素繊維を添加することにより電気抵抗を低減させることができることを確認した。

0083

(結着剤の種類について)
試料6および試料7を用いて形成された測定用セルを比較例3および比較例4とした。正極合剤層の結着剤として、シリコーンを用いた場合は、炭素繊維を添加すると電気抵抗が増加することを確認した。

0084

(導電化剤の種類について)
試料3を用いて形成された測定用セルを比較例5とした。導電化剤として炭素繊維の代わりに球状導電体であるアセチレンブラック(表1では、ABと記載する。)が添加された比較例5においては抵抗値が930Ωとなり、導電化剤を含まない比較例1に比べても抵抗値は大きくなった。
これにより、スチレン含有バインダー樹脂を結着剤として正極合剤層に用いた場合、球状の炭素材料では効果がなく、繊維状の構造を持つ炭素繊維等の炭素材料を用いた時に電気抵抗を低減させることができることを確認した。

0085

(バインダー樹脂の有無について)
表5に示す配合量で試料8および試料9の正極合剤を調製した。また、固体電解質層としてLi7P3S11(50mg)、負極層としてIn箔(厚さ100μm)を用いて、乾式法により測定セルを形成した。試料8を用いたものを比較例6、試料9を用いたものを比較例7とした。また、上述した測定方法と同様にして、測定用セルの電気抵抗を測定した。結果を表4に示す。
炭素繊維を含有しない比較例7に比べて、炭素繊維を含有する比較例6の電気抵抗は大きくなった。これにより、正極合剤層に炭素繊維のみを加えた場合は、電気抵抗が増加することを確認した。

0086

実施例

0087

以上、実施例および比較例から、スチレン含有バインダー樹脂および炭素繊維を組み合わせて用いることにより、形成された全固体リチウム二次電池の正極合剤層の電気抵抗を低減することができることが確認できた。

0088

1 …正極合剤層
2 …正極活物質
3 …固体電解質材料
4 …結着剤
5 …導電化剤
10 …固体電解質層
11 …負極層
20 …全固体リチウム二次電池

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