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技術 圧電磁器の物理量算出方法

出願人 京セラ株式会社
発明者 大森実
出願日 2009年4月24日 (11年2ヶ月経過) 出願番号 2009-105954
公開日 2010年11月11日 (9年7ヶ月経過) 公開番号 2010-258188
状態 未査定
技術分野 圧電、電歪、磁歪装置 圧電・機械振動子,遅延・フィルタ回路
主要キーワード 有限要素法プログラム 機能劣化 電束密度 非線形項 業会標準規格 弾性スティフネス 遷移過程 圧電セラミック振動子
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この項目の情報は公開日時点(2010年11月11日)のものです。
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図面 (7)

課題

少ない要素数圧電磁器解析を行うことができるとともに、未分極状態から分極状態への遷移過程表現することで非線形圧電現象を考慮できる圧電磁器の物理量算出方法を提供する。

解決手段

圧電磁器の物性値および自発ひずみを用いて、一つの有限要素を構成する複数の結晶方位セルドメインウォールが変化する駆動力の式および非線形項取り入れ圧電基本式とから求めた仮想バタフライカーブ、仮想のD−Eヒステリシスカーブが、実測のカーブ近似するように、駆動力の式のパラメータを求め、多数の有限要素について計算実行し、圧電磁器の物理量を求める方法であって、結晶方位が複数のセルから構成され、該複数のセルについてそれぞれ駆動力の式の値を求め、該駆動力の式の値がある一定値を超えたセルについてはドメインウォールを変化させて、仮想のバタフライカーブ、仮想のD−Eヒステリシスカーブを求める。

概要

背景

圧電磁器強誘電体ドメインが動くことにより、電場応力に対して非線形応答を示すこと(非線形圧電現象)が知られている。非線形圧電現象は圧電磁器に大きな電場を印加した場合に顕著であり、電場に対する電束密度、ひずみの非線形な変化を描いたカーブはそれぞれD−Eヒステリシスカーブバタフライカーブと呼ばれる。この非線形圧電現象が生じる実際のデバイスとしては、大きな変位を生じさせるために大きな電場や応力を印加する圧電アクチュエータが知られている。

非線形圧電現象は圧電磁器部品の機能を高めるためには有用であるが、一方で圧電磁器部品の機能劣化クラックの原因となっている。従って大きな電場や応力を印加する必要のある圧電デバイスでは、非線形圧電現象を考慮した高度な設計が必要である。

一般に大きな変位を必要とする圧電デバイスでは、PbZrO3とPbTiO3の固溶体であるPZTが用いられる。このPZTの圧電定数は、結晶系が菱面晶相(PbZrO3リッチ側)と正方晶相(PbTiO3リッチ側)との境界であるモルフォトロピック相境界(MPB)においてピークを示すことが知られている。MPBでは大きな圧電定数が得られる一方、強誘電体ドメインが動きやすく、非線形圧電現象も顕著である。

大きな電場や応力を印加する圧電デバイスでは非線形圧電現象が大きな影響を及ぼすため、この現象を考慮することのできる設計技術シミュレーション技術が必要である。しかし非線形圧電現象を考慮できるプログラムは現在市販されておらず、研究者によっていくつかの計算手法が提案されている状況である。例えば、1つの要素が単独の強誘電体ドメインであり、その分極方向を電場や応力に応じて90°もしくは180°変化させる有限要素法の計算手法が提案されている(非特許文献1参照)。また、強誘電体ドメインの動きを考慮せず、現象論的なパラメータを導入することで非線形圧電現象を表現する有限要素法の計算手法が提案されている(非特許文献2参照)。

概要

少ない要素数で圧電磁器の解析を行うことができるとともに、未分極状態から分極状態への遷移過程を表現することで非線形圧電現象を考慮できる圧電磁器の物理量算出方法を提供する。圧電磁器の物性値および自発ひずみを用いて、一つの有限要素を構成する複数の結晶方位セルドメインウォールが変化する駆動力の式および非線形項取り入れ圧電基本式とから求めた仮想のバタフライカーブ、仮想のD−Eヒステリシスカーブが、実測のカーブに近似するように、駆動力の式のパラメータを求め、多数の有限要素について計算実行し、圧電磁器の物理量を求める方法であって、結晶方位が複数のセルから構成され、該複数のセルについてそれぞれ駆動力の式の値を求め、該駆動力の式の値がある一定値を超えたセルについてはドメインウォールを変化させて、仮想のバタフライカーブ、仮想のD−Eヒステリシスカーブを求める。

目的

本発明は、少ない要素数で圧電磁器の解析を行うことができるとともに、未分極状態から分極状態への遷移過程を表現することで非線形圧電現象を考慮できる圧電磁器の物理量算出方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

圧電磁器が有する弾性スティフネスマトリクス圧電定数マトリクス、誘電率マトリクスからなる物性値を得るとともに、自発ひずみ、バタフライカーブおよびD−Eヒステリシスカーブを実測して得る第1ステップと、前記圧電磁器の物性値および自発ひずみを用いて、一つの有限要素を構成する複数の結晶方位セルドメインウォールが変化する駆動力の式と非線形項自発分極、自発ひずみ)を取り入れた圧電基本式とから求めた仮想のバタフライカーブおよび仮想のD−Eヒステリシスカーブが、前記圧電磁器から得られた実測の前記バタフライカーブおよび前記D−Eヒステリシスカーブに近似するように、前記駆動力の式のパラメータを求める第2ステップと、前記パラメータを用いた前記駆動力の式と前記非線形項(自発分極、自発ひずみ)を取り入れた圧電基本式とを用いて、多数の有限要素について、該多数の有限要素の少なくとも一つに電場および荷重の少なくとも一種印加し、もしくは前記多数の有限要素の少なくとも一つに変位を与えて有限要素法で計算を実行し、前記圧電磁器の応力分極およびひずみのうち少なくとも一種を求める第3ステップとを具備する圧電磁器の物理量算出方法であって、前記第2ステップ中において、前記結晶方位が複数のセルから構成され、該複数のセルについてそれぞれ前記駆動力の式の値を求め、該駆動力の式の値がある一定値を超えたセルについてはドメインウォールを変化させて、前記仮想のバタフライカーブおよび前記仮想のD−Eヒステリシスカーブを求めることを特徴とする圧電磁器の物理量算出方法。

請求項2

前記第2ステップ中において、前記駆動力の式の値がある一定値を超えた場合には、前記セルのドメインウォールの方向変化または前記セルのドメインウォールの平行移動が発生したとして、前記仮想のバタフライカーブおよび前記仮想のD−Eヒステリシスカーブを求めることを特徴とする請求項1記載の圧電磁器の物理量算出方法。

技術分野

0001

本発明は、圧電磁器物理量算出方法に関し、特に、圧電磁器に大きな電場応力印加した際に生じる非線形圧電現象を考慮した圧電磁器の物理量算出方法に関するものである。

背景技術

0002

圧電磁器は強誘電体ドメインが動くことにより、電場や応力に対して非線形応答を示すこと(非線形圧電現象)が知られている。非線形圧電現象は圧電磁器に大きな電場を印加した場合に顕著であり、電場に対する電束密度、ひずみの非線形な変化を描いたカーブはそれぞれD−Eヒステリシスカーブバタフライカーブと呼ばれる。この非線形圧電現象が生じる実際のデバイスとしては、大きな変位を生じさせるために大きな電場や応力を印加する圧電アクチュエータが知られている。

0003

非線形圧電現象は圧電磁器部品の機能を高めるためには有用であるが、一方で圧電磁器部品の機能劣化クラックの原因となっている。従って大きな電場や応力を印加する必要のある圧電デバイスでは、非線形圧電現象を考慮した高度な設計が必要である。

0004

一般に大きな変位を必要とする圧電デバイスでは、PbZrO3とPbTiO3の固溶体であるPZTが用いられる。このPZTの圧電定数は、結晶系が菱面晶相(PbZrO3リッチ側)と正方晶相(PbTiO3リッチ側)との境界であるモルフォトロピック相境界(MPB)においてピークを示すことが知られている。MPBでは大きな圧電定数が得られる一方、強誘電体ドメインが動きやすく、非線形圧電現象も顕著である。

0005

大きな電場や応力を印加する圧電デバイスでは非線形圧電現象が大きな影響を及ぼすため、この現象を考慮することのできる設計技術シミュレーション技術が必要である。しかし非線形圧電現象を考慮できるプログラムは現在市販されておらず、研究者によっていくつかの計算手法が提案されている状況である。例えば、1つの要素が単独の強誘電体ドメインであり、その分極方向を電場や応力に応じて90°もしくは180°変化させる有限要素法の計算手法が提案されている(非特許文献1参照)。また、強誘電体ドメインの動きを考慮せず、現象論的なパラメータを導入することで非線形圧電現象を表現する有限要素法の計算手法が提案されている(非特許文献2参照)。

先行技術

0006

Mechanics of Materials, 36, pp.959-973, 2004
International Journal of Solid and Structure, 43, pp.7197-7222, 2006

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、非特許文献1に開示された計算手法では、1つの有限要素シングルドメインとして扱っているため、D−Eヒステリシスカーブやバタフライカーブを表現するのに1,000個程度の有限要素を必要としている。従ってこの手法では個々の要素の表現力不足しており、実際の圧電デバイスを計算するには非現実的な要素数を必要とするという問題点があった。

0008

また非特許文献2に開示された計算手法では、強誘電体ドメインの動きを考慮せず、現象論的なパラメータを導入することで1つの有限要素でD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを表現している。しかしこの手法では、電場を印加して未分極状態から分極状態となる遷移過程は表現できておらず、D−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブでは、未分極状態から分極状態への遷移過程では電束密度、ひずみが0となっている。

0009

すなわち、実際の圧電アクチュエータでは電極端付近に疲労やクラック等の問題が生じることが多く、この領域では種々の程度に分極された領域が存在しており、この領域の応力を正しく求めるには周辺部の未分極状態の要素から電極端付近の大きく分極された要素までを計算する必要があるため、この手法では電極端先端の応力状態上手く計算できないという問題点があった。

0010

本発明は、少ない要素数で圧電磁器の解析を行うことができるとともに、未分極状態から分極状態への遷移過程を表現することで非線形圧電現象を考慮できる圧電磁器の物理量算出方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明の圧電磁器の物理量算出方法は、圧電磁器が有する弾性スティフネスマトリクス圧電定数マトリクス、誘電率マトリクスからなる物性値を得るとともに、自発ひずみ、バタフライカーブおよびD−Eヒステリシスカーブを実測して得る第1ステップと、
前記圧電磁器の物性値および自発ひずみを用いて、一つの有限要素を構成する複数の結晶方位セルドメインウォールが変化する駆動力の式と非線形項自発分極、自発ひずみ)を取り入れた圧電基本式とから求めた仮想のバタフライカーブおよび仮想のD−Eヒステリシスカーブが、前記圧電磁器から得られた実測の前記バタフライカーブおよび前記D−Eヒステリシスカーブに近似するように、前記駆動力の式のパラメータを求める第2ステップと、
前記パラメータを用いた前記駆動力の式と前記非線形項(自発分極、自発ひずみ)を取り入れた圧電基本式とを用いて、多数の有限要素について、該多数の有限要素の少なくとも一つに電場および荷重の少なくとも一種を印加し、もしくは前記多数の有限要素の少なくとも一つに変位を与えて有限要素法で計算を実行し、前記圧電磁器の応力、分極およびひずみのうち少なくとも一種を求める第3ステップとを具備する圧電磁器の物理量算出方法であって、
前記第2ステップ中において、前記結晶方位が複数のセルから構成され、該複数のセルについてそれぞれ前記駆動力の式の値を求め、該駆動力の式の値がある一定値を超えたセルについてはドメインウォールを変化させて、前記仮想のバタフライカーブおよび前記仮想のD−Eヒステリシスカーブを求めることを特徴とする。

0012

本発明の圧電磁器の物理量算出方法では、1つの有限要素が仮想的に複数の結晶方位の領域に分けられ、1つの有限要素の物理量は複数の結晶方位の寄与を合計したものであり、複数の結晶方位はそれぞれ異なる自発分極、自発ひずみを持つ複数の仮想的なセルより構成され、各セルの体積比率外部電場外部応力及びドメインウォールの駆動力によって非線形に変化し、結果として1つの有限要素で非線形圧電現象を表現することができる。

0013

この計算手法では、1つの有限要素で多数のドメインの動きを計算しており、ある大きさの電場を印加した場合に一部のドメインは動くがその他は動かない、といったことが可能である。このため、1つの有限要素でD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブや未分極から分極状態への遷移過程を表現することができる。

0014

また、本発明の圧電磁器の物理量算出方法は、前記第2ステップ中において、前記駆動力の式の値がある一定値を超えた場合には、前記セルのドメインウォールの方向変化または前記セルのドメインウォールの平行移動が発生したとして、前記仮想のバタフライカーブおよび前記仮想のD−Eヒステリシスカーブを求めることを特徴とする。これにより、非線形圧電現象を精度良く表現することができる。

発明の効果

0015

本発明によれば、少ない要素数で圧電磁器の物理量を、非線形圧電現象を考慮して精度良く算出できるとともに、未分極状態から分極状態への遷移過程を表現することができる。

図面の簡単な説明

0016

本発明の圧電磁器の物理量算出方法のフローチャートである。
本発明の圧電磁器の物理量算出方法の第2ステップを詳細に説明するためのフローチャートである。
強誘電体ドメイン構造の説明図であり、(a)はPZTのTEM透過電子顕微鏡写真、(b)はドメイン構造の模式図、(c)はPZT単位格子の模式図である。
本発明に係るドメインウォールの2つの動き、方向変化と平行移動の模式図である。
強誘電体ドメイン構造の説明図であり、a軸c軸を区別しない場合のドメインウォールのとり得る方向の模式図である。
PZTのD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブについて実測と作成した有限要素法プログラムでの計算結果とを比較した図である。

0017

本発明の圧電磁器の物理量算出方法について、図1を用いて説明する。

0018

第1ステップ
先ず、圧電磁器の各種物性値および駆動力のパラメータを求める。

0019

物理量を算出しようとする圧電磁器の各種物性値を求める。求める物性値は、弾性スティフネスマトリクス〔c〕、圧電e定数マトリクス〔e〕、誘電率マトリクス〔ε〕であり、EMAS試験(EMAS−6100、圧電セラミック振動子電気的試験方法日本電子材料工業会標準規格)により求める。

0020

また、圧電磁器のドメインの自発ひずみの大きさγSPを、X線回折測定にて求める。

0021

さらに、圧電磁器のD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを測定する。

0022

第2ステップ
次に、1つの有限要素(要素ということもある)で仮想的なD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを計算し、その仮想のD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブが、実測のD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブに近似するようにパラメータをフィッティングする。

0023

具体的には、図2に示すように、初期では要素は未分極とし、要素に与える電場を変化させながら要素に生じる電束密度、ひずみを計算する。

0024

図2のフローチャートについて順を追って説明する。まず未分極の要素にある小さな電場を与え、下記の非線形項(自発分極、自発ひずみ)を取り入れた圧電基本式(e形式)より要素の電場、応力、ひずみ、電束密度を計算する。

0025

0026

未分極の状態では非線形項である自発分極、自発ひずみ、および圧電e定数マトリクスは共に0である。次に得られた電場、応力よりドメインウォールの方向変化、平行移動の駆動力Fd、Fpを計算し、ドメインウォールの状態を求める(ドメインウォールの計算については後述の「第2ステップの詳細説明」を参照)。ドメインウォールの状態より要素の自発分極、自発ひずみ、および圧電e定数マトリクスを計算することができる。

0027

電場が小さい場合にはドメインウォールの状態は変化しないため反復計算は不要であり、次の電場の計算に移る。電場が大きくなってくるとドメインウォールの状態が大きく変化するため、収束計算が必要になり、1つの電場に対する収束計算の回数が多くなる。電場を変化させながら上述の計算を繰り返し、各電場での要素の{E}、{T}、{D}、{S}、自発分極、自発ひずみ等の物理量を得る。

0028

なお、D−Eヒステリシスカーブでの縦軸は要素としての電束密度であり、線形項{D}と自発分極の和である。またバタフライカーブの縦軸は同じく要素としてのひずみであり、線形項{S}と自発ひずみの和である。この結果、仮想的なD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブが得られる。次に得られた仮想的なD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブと実測したD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブとを比較し、実測したD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブに近い結果が得られるようパラメータを変更しながら仮想的なD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを計算する。この繰り返しにより、実測したカーブに近い仮想的なD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを計算するためのパラメータを算出する。

0029

第3ステップ
第1ステップ、第2ステップで得られた各種物性値及びパラメータを用いて多数の有限要素にて計算を実行し、応力、分極およびひずみの分布を求める。

0030

第2ステップについて詳細に説明する。

0031

図3は本発明に係る強誘電体ドメイン構造の説明図であり、(a)はPZTの透過電子顕微鏡(TEM)写真、(b)はドメイン構造の模式図、(c)はPZT単位格子の模式図である。ここでの説明はPZTが正方晶であるとして行う。

0032

正方晶のPZT単位格子には(Zr,Ti)原子の位置によりa軸とc軸があり、自発分極の方向がc軸方向である。また自発ひずみによりc軸方向はa軸方向と比べて1%程度長くなっている。

0033

また、図3(b)に示すように、単位格子の分極方向が揃っている領域をドメインと呼び、ドメインはドメインウォールにより区切られている。このドメインウォールを挟んでドメインの分極方向が90°異なる場合には、このドメインウォールのことを90°ドメインウォールという。正方晶PZTには90°ドメインウォールと180°ドメインウォールが存在することが知られているが、ここでは180°ドメインについては考慮しない。

0034

PZT多結晶体図3(a)に示すように個々の結晶粒がドメインウォールの方向が揃った複数の領域に区切られており、このドメインウォールの方向が揃った領域のことを、本願ではセルという。一般的にPZTは多結晶体で使用され、結晶粒子は圧電デバイスのサイズと比べて非常に小さいため、圧電デバイスの解析を行う際には多数の結晶粒子を含む領域を計算する必要がある。

0035

本発明の圧電磁器の物理量算出方法では、ドメインの動きとして、図4に示すように90°ドメインウォールの法線ベクトルの変化(以下ドメインウォールの方向変化ということがある)とドメインウォールの平行移動を考える。なお、ここでのドメインウォールの法線ベクトルとは、ドメインウォールの2つの法線ベクトルのうち、ドメインウォールが形成されている領域の平均的な分極方向に近い方を指す。電場を印加した場合には、(図4(a))の状態から、セルの平均的な分極方向が印加電場の方向に近くなるようにドメインウォールの方向が変化することと(図4(b))、印加電場に近い自発分極を持つドメインの領域が広がるようにドメインウォールが平行移動すること(図4(c))の2通りの動きが生じる。

0036

なお、図5に示すように、正方晶のa軸とc軸を区別しない場合には、1つの結晶方位についてドメインの自発分極の方向は6通りである。90°ドメインウォールの法線ベクトルは、ドメインウォールが区切る2つのドメインの体積が等しい場合のセルの平均的な分極方向に等しく、そのとり得る方向は12通りである。

0037

例えば、a軸、c軸がx、y、z軸に平行である方位を持つ結晶のドメインウォールの法線ベクトルは、具体的には、以下で表される。

0038

0039

ドメインウォールの方向はどの方向にでも自由に変化できるのではなく、とり得る方向の中で電場や応力に応じて変化する。正方晶ではドメインウォールの変化する角度は60°、90°、120°、180°の4通りである。

0040

また本発明の圧電磁器の物理量算出方法では、1つの要素で複数の結晶方位を考慮し、個々の結晶方位での計算結果の寄与を合計したものが要素の計算結果となる。またそれぞれの結晶方位は上述のように6通りの自発分極を持つドメイン、及び90°ドメインウォールを形成する2つのドメインの組み合わせにより12通りの平均的な分極方向を持つセルより構成されている。未分極状態では個々の結晶方位について12のセルの体積比率は等しく、また個々のセルについてドメインウォールが区切る2つのドメインの体積比率は等しい。未分極状態に電場を印加すると、一部のセルのドメインウォールの方向変化によりセルの体積比率が変化し、またドメインウォールの平行移動によりドメインウォールが区切る2つのドメインの体積比率が変化する。

0041

さらに本発明によれば、あるセルのドメインウォールの法線ベクトルが、例えば、図4(a)に示すi方向から図4(b)に示すj方向へと変化する駆動力Fdは以下の式で計算される。

0042

0043

Fdの値がある閾値を超えた場合には、ドメインウォールの方向変化が発生し、ドメインウォールの法線ベクトルがi方向のセルの体積比率は0になり、その分j方向の法線ベクトルを持つセルの体積比率が増加する。ここで、ドメインウォールの方向変化の閾値は、4通りのドメインウォールの方向変化に対応し4つ存在する。また、Fdの計算では

0044

0045

の値は常にドメインウォールが2つのドメインを等しい体積に区切って計算することが望ましい。

0046

また本発明によれば、f方向とg方向の自発分極を持つドメインを区分する90°ドメインウォールが、g方向の自発分極を持つドメインの領域が広がるように平行移動する場合の駆動力Fpは以下の式で計算される。

0047

0048

Fpがある閾値を超えた場合には、ドメインウォールの平行移動が発生し、f方向の自発分極を持つドメインの体積比率が減少し、その分g方向の自発分極を持つドメインの体積比率が増加する。

0049

これらのドメインウォールの動きは図2のフローチャートにて前述の(1)、(2)式の計算後に計算され、各セルの自発分極、自発ひずみおよび圧電e定数マトリクスの寄与を全て計算して体積比率を乗じて和を取ることで要素の自発分極、自発ひずみおよび圧電e定数マトリクスが計算される。

0050

なお、上記形態では、PZTが正方晶である場合について説明したが、菱面体晶の場合も本発明を適用できる。この場合には、ドメインウォールで区切られているドメイン間の自発分極のなす角度を菱面体晶に対応した角度に変更する必要がある。

0051

先ず、応力、分極およびひずみのうち少なくとも一種の物理量を算出しようとする圧電磁器について、分極した状態での弾性スティフネスマトリクス〔c〕、圧電e定数マトリクス〔e〕、誘電率マトリクス〔ε〕をEMAS試験により求め、圧電磁器のドメインの自発ひずみの大きさγspを、X線回折測定にて求めた。結果を表1に記載した。さらに、圧電磁器のD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを測定した。

0052

次に、本発明の圧電磁器の物理量算出方法を用いた有限要素法プログラムにより、仮想的なD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブを求め、図6に示した実測したD−Eヒステリシスカーブ、バタフライカーブについてフィッティングを行った。フィッティングパラメータを表2に記載した。

0053

この計算は1つの有限要素で行った。また1つの有限要素内では649通りの結晶方位についてドメインの動きを計算し、その寄与を合計して有限要素の物理量を計算した。本発明の計算手法では、1つの有限要素で非線形圧電現象を表現することができ、かつ未分極から分極状態への遷移過程についても直線ではなく実験結果を再現できた。

0054

0055

実施例

0056

この後、多数の要素で計算実行し、応力、分極、ひずみ分布を得た。図1に、応力分布を記載した。なお、表1、2において、例えば、1.29E+11とは1.29×1011を意味する。

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