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技術 ジルコニウム材料

出願人 株式会社日立製作所
発明者 石橋良稲垣正寿笠原茂樹平野明彦曽根田秀夫戸高義一東宏昭大西由城梅本実
出願日 2009年3月27日 (11年8ヶ月経過) 出願番号 2009-079323
公開日 2010年10月14日 (10年2ヶ月経過) 公開番号 2010-229507
状態 特許登録済
技術分野 原子炉燃料及び部品の製造 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード ジルコニウム材料 未加工材 Sn含有率 逆変態温度 弾性ひずみ ねじり加工 超微細結晶 冷間加工材
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課題

耐食性を損なうことなく、高強度で、かつ、十分な延性を有するジルコニウム材料を提供する。

解決手段

ジルコニウム合金に3GPa以上の圧力を負荷した状態で、45以上の塑性ひずみを付与する冷間加工を施すことにより、生成したω相と加工前から存在するα相からなる2相組織とした後、250〜500℃で焼鈍することにより、平均結晶粒径が100〜1000nmの微細結晶組織を有するジルコニウム材料を得る。

概要

背景

ジルコニウム及びジルコニウム合金(以下、ジルコニウム材料とも呼ぶ。)は、耐食性及び耐薬品性に優れることから、化学製品製造装置機器用材料に用いられる。また、生体適合性に優れることから、インプラントなどを含む医療用器具材料にも用いられる。さらに、熱中性子吸収断面積が小さいことから、燃料被覆管チャンネルボックスなどの原子炉内機器用材料として用いられている。

装置・機器コンパクト化、省スペース化や軽量化の要望に対して、構成部品薄肉化や小寸法化を達成するために部材の高強度化が要求されている。

高強度化したジルコニウム合金(ジルコニウム材料)としては、下記のような公知例がある。

特許文献1には、Biを1.5〜6重量%、Nbを0.5〜3重量%添加した高張力ジルコニウム合金が開示されている。

特許文献2には、Biを1.5〜6重量%、Snを1〜4重量%、Nbを0.5〜3重量%添加した高張力ジルコニウム合金が開示されている。

特許文献3には、Nbを10〜20重量%、Alを0.5〜2.5重量%、Snを1.0〜3.0重量%添加した高強度ジルコニウム合金が開示されている。

特許文献4には、Nb0.3〜0.6重量%、Sn0.7〜1.0重量%、若しくはNb0.05〜0.3重量%、Sn0.8〜1.6重量%、及び酸素(O)600〜1400ppmを主要添加元素とし、Fe、Cr、Mo、Cu又はMnを追加して耐食性と強度を向上したジルコニウム合金組成物提示されている。

しかしながら、上記公知例における化学成分の調整による高強度化では、特許文献4で引張強さが720〜830MPaであり、これ以上の高強度化は耐食性など他特性と両立させるために成分範囲制約を受けると考えられる。

特許文献5には、Zr−Sn−Fe−Cr系のジルコニウム合金材を対象として、「溶体化処理(β焼入れ処理)」、「熱間加工」、「焼鈍冷間加工の繰り返し」及び「最終焼鈍」なる製造工程において、それぞれの条件を最適化した高耐食性・高強度ジルコニウム合金材の製造方法が開示されている。この特許文献5においては、β焼入れ処理時の冷却速度を速くした場合に強度を向上させ、0.2%耐力に関して470MPaまで増加させている。引張強さが記載されていないが、特許文献1〜4における化学成分の調整による引張強さを上回らないと推定される。

ジルコニウム及びジルコニウム合金を、例えば70%冷間圧延した場合、引張強さが500MPaから680MPaと向上するものの、延性が低下してしまう。これを焼鈍すると延性は回復し、引張強さは冷間加工前の値450MPaから520MPaに増加しているものの、従来の加工方法では十分な強度の向上は難しい。

強度向上については言及していないが、特許文献6及び特許文献7には、メカニカルアロイング法にて機械的攪拌合金化を施した粉末固化成形して平均結晶粒径を100nm以下としたジルコニウム合金が開示されている。結晶粒微細化強化により強度が増加していることが予測されるが、粉末冶金プロセスによる活性なジルコニウム合金の製造方法であるため、不純物混入抑制のために工数が増えるという点で改善が望まれている。

特許文献8には、純Zr粉末を機械的に混合攪拌し、非晶質化或いは微細結晶化した金属粉末を、静水圧下で固化し、熱処理により金属組織結晶化した、平均結晶粒径500nm以下の結晶からなる軽水炉ナノ結晶ジルコニウムライナが開示されている。

非特許文献1には、粒径30nm程度のω相を有する純ジルコニウムが開示されている。

概要

耐食性を損なうことなく、高強度で、かつ、十分な延性を有するジルコニウム材料を提供する。ジルコニウム合金に3GPa以上の圧力を負荷した状態で、45以上の塑性ひずみを付与する冷間加工を施すことにより、生成したω相と加工前から存在するα相からなる2相組織とした後、250〜500℃で焼鈍することにより、平均結晶粒径が100〜1000nmの微細結晶組織を有するジルコニウム材料を得る。

目的

結晶粒微細化強化により強度が増加していることが予測されるが、粉末冶金プロセスによる活性なジルコニウム合金の製造方法であるため、不純物混入抑制のために工数が増えるという点で改善が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

α相とω相とからなる二相組織若しくはα単相組織を有し、平均結晶粒径が100〜1000nmであり、延性が10%以上であることを特徴とするジルコニウム材料

請求項2

質量基準で、0.3%以下のFe、0.027%以下のC、0.025%以下のN、0.3%以下のNi、0.3%以下のCr、1.9%以下のSn、及び0.16%以下のOを含み、残部がZrと不可避不純物とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム材料。

請求項3

質量基準で、0.3%以下のFe、0.027%以下のC、0.008%以下のN、0.3%以下のNi、0.3%以下のCr、1.9%以下のSn、0.010%以下のHf、及び0.16%以下のOを含み、残部がZrと不可避不純物とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のジルコニウム材料。

請求項4

ジルコニウム合金に3GPa以上の圧力を負荷した状態で、45以上の塑性ひずみを付与する冷間加工を施した後、250〜500℃で焼鈍することを特徴とするジルコニウム材料の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ジルコニウム材料に関する。

背景技術

0002

ジルコニウム及びジルコニウム合金(以下、ジルコニウム材料とも呼ぶ。)は、耐食性及び耐薬品性に優れることから、化学製品製造装置機器用材料に用いられる。また、生体適合性に優れることから、インプラントなどを含む医療用器具材料にも用いられる。さらに、熱中性子吸収断面積が小さいことから、燃料被覆管チャンネルボックスなどの原子炉内機器用材料として用いられている。

0003

装置・機器コンパクト化、省スペース化や軽量化の要望に対して、構成部品薄肉化や小寸法化を達成するために部材の高強度化が要求されている。

0004

高強度化したジルコニウム合金(ジルコニウム材料)としては、下記のような公知例がある。

0005

特許文献1には、Biを1.5〜6重量%、Nbを0.5〜3重量%添加した高張力ジルコニウム合金が開示されている。

0006

特許文献2には、Biを1.5〜6重量%、Snを1〜4重量%、Nbを0.5〜3重量%添加した高張力ジルコニウム合金が開示されている。

0007

特許文献3には、Nbを10〜20重量%、Alを0.5〜2.5重量%、Snを1.0〜3.0重量%添加した高強度ジルコニウム合金が開示されている。

0008

特許文献4には、Nb0.3〜0.6重量%、Sn0.7〜1.0重量%、若しくはNb0.05〜0.3重量%、Sn0.8〜1.6重量%、及び酸素(O)600〜1400ppmを主要添加元素とし、Fe、Cr、Mo、Cu又はMnを追加して耐食性と強度を向上したジルコニウム合金組成物提示されている。

0009

しかしながら、上記公知例における化学成分の調整による高強度化では、特許文献4で引張強さが720〜830MPaであり、これ以上の高強度化は耐食性など他特性と両立させるために成分範囲制約を受けると考えられる。

0010

特許文献5には、Zr−Sn−Fe−Cr系のジルコニウム合金材を対象として、「溶体化処理(β焼入れ処理)」、「熱間加工」、「焼鈍冷間加工の繰り返し」及び「最終焼鈍」なる製造工程において、それぞれの条件を最適化した高耐食性・高強度ジルコニウム合金材の製造方法が開示されている。この特許文献5においては、β焼入れ処理時の冷却速度を速くした場合に強度を向上させ、0.2%耐力に関して470MPaまで増加させている。引張強さが記載されていないが、特許文献1〜4における化学成分の調整による引張強さを上回らないと推定される。

0011

ジルコニウム及びジルコニウム合金を、例えば70%冷間圧延した場合、引張強さが500MPaから680MPaと向上するものの、延性が低下してしまう。これを焼鈍すると延性は回復し、引張強さは冷間加工前の値450MPaから520MPaに増加しているものの、従来の加工方法では十分な強度の向上は難しい。

0012

強度向上については言及していないが、特許文献6及び特許文献7には、メカニカルアロイング法にて機械的攪拌合金化を施した粉末固化成形して平均結晶粒径を100nm以下としたジルコニウム合金が開示されている。結晶粒微細化強化により強度が増加していることが予測されるが、粉末冶金プロセスによる活性なジルコニウム合金の製造方法であるため、不純物混入抑制のために工数が増えるという点で改善が望まれている。

0013

特許文献8には、純Zr粉末を機械的に混合攪拌し、非晶質化或いは微細結晶化した金属粉末を、静水圧下で固化し、熱処理により金属組織結晶化した、平均結晶粒径500nm以下の結晶からなる軽水炉ナノ結晶ジルコニウムライナが開示されている。

0014

非特許文献1には、粒径30nm程度のω相を有する純ジルコニウムが開示されている。

0015

特開2000−26930号公報
特開2000−26929号公報
特開2001−124882号公報
特許第3057074号公報
特開平6−248403号公報
特開平7−260972号公報
特開2001−27683号公報
特開平9−5468号公報

先行技術

0016

Scripta Materia 58 (2008) pp.219〜222

発明が解決しようとする課題

0017

本発明の目的は、耐食性を損なうことなく、高強度で、かつ、十分な延性を有するジルコニウム材料を提供することにある。

課題を解決するための手段

0018

本発明のジルコニウム材料は、α相とω相とからなる二相組織若しくはα単相組織を有し、平均結晶粒径が100〜1000nmであり、延性が10%以上であることを特徴とする。

0019

また、本発明のジルコニウム材料の製造方法は、ジルコニウム合金に3GPa以上の圧力を負荷した状態で、45以上の塑性ひずみを付与する冷間加工を施した後、250〜500℃で焼鈍することを特徴とする。

発明の効果

0020

本発明によれば、ジルコニウム合金の特性である耐食性を損なうことなく、構成部品の薄肉化及び小寸法化を達成することができ、装置・機器のコンパクト化、省スペース化及び軽量化を図ることができる。

図面の簡単な説明

0021

本発明の条件検討に用いた高圧ねじり加工試験装置の要部を示す模式断面図である。
純ジルコニウムの高圧ねじり加工試験における負荷圧力残留ω相割合との関係を示すグラフである。
純ジルコニウムに高圧ねじり加工を施した後のビッカース硬さと相当塑性ひずみとの関係の負荷圧力依存性を示すグラフである。
ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施した後のビッカース硬さと相当塑性ひずみとの関係の負荷圧力依存性を示すグラフである。
純ジルコニウム及びジルコニウム合金に付与した相当塑性ひずみとビッカース硬さとの関係を示すグラフである。

0022

本発明は、新規なジルコニウム及びジルコニウム合金(ジルコニウム材料とも呼ぶ。)に関し、特に、耐薬品性、耐食性と高強度が要求される部材、機器及び構造物に好適なジルコニウム及びジルコニウム合金に関する。

0023

本発明は、冷間加工及び熱処理条件を規定することによって、平均結晶粒径100〜1000nmのα+ω相(α相とω相とからなる二相組織)若しくはα単相微細結晶組織(α単相組織)及び延性を有する高強度ジルコニウム材料を提供するものである。

0024

本発明のジルコニウム材料は、α相とω相とからなる二相組織若しくはα単相組織を有し、平均結晶粒径が100〜1000nmであり、延性が10%以上であることを特徴とする。

0025

本発明のジルコニウム材料は、平均結晶粒径及び延性に関する上記特徴を有するとともに、質量基準で、0.3%以下のFe、0.027%以下のC、0.025%以下のN、0.3%以下のNi、0.3%以下のCr、1.9%以下のSn、4.5%以下のHf、及び0.16%以下のOを含み、残部がZrと不可避不純物とで構成されていることを特徴とする。

0026

本発明のジルコニウム材料は、平均結晶粒径及び延性に関する上記特徴を有するとともに、質量基準で、0.3%以下のFe、0.027%以下のC、0.008%以下のN、0.3%以下のNi、0.3%以下のCr、1.9%以下のSn、0.010%以下のHf、及び0.16%以下のOを含み、残部がZrと不可避不純物とで構成されていることを特徴とする。

0027

結晶粒微細化強化は、強度が粒径の平方根反比例するという経験的なホール・ペッチ則によって表され、比較的延性を維持して高強度化できる方法として知られている。しかし、その効果によって顕著な高強度材が得られるのは、結晶粒径が数μm以下となる場合である。

0028

通常の冷間加工の範囲、例えば圧延率70%程度では、高密度転位を導入することにより、引張強度は加工前の450MPaから700MPa程度に増加するが、延性は低下する。この70%冷間圧延材を600℃以上で焼鈍して再結晶させることによって、平均結晶粒径数十μmの微細結晶を得ることができるが、引張強さは520MPa程度となり、加工前と比べて増加しているものの増加量は小さい。

0029

本発明のジルコニウム材料は、冷間加工時の負荷圧力、付与する塑性ひずみ量の条件、及び冷間加工後の熱処理条件を調整することにより、平均結晶粒径1000nm以下のα+ω二相若しくはα単相微細結晶組織を有し、高強度、かつ、十分な延性を有することを特徴とする。

0030

常温常圧のジルコニウム(Zr)及び合金元素微量添加したジルコニウム合金は、六方晶のα相(工業用純ジルコニウムの場合、格子定数a:3.2Å、c:5.1Å、c/a軸比1.6、空間群P63/mmc)が安定であるが、高圧では六方晶のω相(工業用純ジルコニウムの場合、格子定数a:5.0Å、c:3.1Å、c/a軸比0.6、空間群P6/mmm)が安定である。

0031

最近、ω相が安定な高圧下で大きな塑性ひずみ量(単に塑性ひずみともいう。)を付与することにより、常圧に戻してもω相が残留することがわかってきた。

0032

高圧下で大きな塑性ひずみ量を付与したジルコニウム及びジルコニウム合金は、粒径20〜150nmのω+α二相微細結晶組織を呈している。ω相がα相に逆変態すると、α単相微細結晶に変わるとともに、結晶粒内転位密度も低下し、塑性変形能、すなわち延性を回復することができる。

0033

ω相からα相への逆変態が開始する温度は、250〜400℃であり、α相の再結晶開始温度500〜600℃と比べて低い。このことから、逆変態を利用すると、結晶粒成長が進む高温で焼鈍しなくとも、結晶粒内の転位密度の低い微細結晶組織を得ることが可能となる。その結果、延性のある高強度材料を得ることができる。

0034

高圧下で大きな塑性ひずみ量を付与した後、常圧に戻してもω相が残留するためには、好適な負荷圧力と付与塑性ひずみがある。負荷圧力は3GPa以上、望ましくは5GPa以上であり、付与塑性ひずみは相当塑性ひずみ量にして45以上である。

0035

残留したω相が逆変態を開始する温度は化学成分によって異なり、250〜400℃であるため、焼鈍温度の下限を250℃以上とした。一方、冷間加工のままのω+α二相微細結晶組織中にあるα相は高転位密度の微細結晶を呈しており、逆変態温度以上に焼鈍すると転位密度が低下するとともに、ω相の逆変態によって生じた新しいα相粒侵食され、焼鈍温度が高くなるにつれて塑性変形能が高くなる。しかし、焼鈍温度が高すぎると結晶が粗大化し、微細結晶化による高強度化の優位性が薄れる。そこで、焼鈍温度の上限を通常の冷間加工材の再結晶開始温度より低い500℃以下とした。

0036

以下、組成に関する百分率(%)は質量基準である。

0037

スズ(Sn)は、ジルコニウム合金でα相安定化元素として作用し、強度を増加させる主要元素である。耐食性の観点からは、Snの含有率を低いほど望ましいと考えられている。Sn含有率が1.9%より大きくなると、耐食性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のSn含有率は、1.9%以下とすることが望ましい。

0038

鉄(Fe)は、ジルコニウム合金で耐食性を向上させる元素として添加されている。使用環境に応じて、他の耐食性向上元素であるクロム(Cr)及びニッケル(Ni)とのバランス添加量が設定されている。ただし、Fe含有率が0.3%より大きくなると、耐食性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のFe含有率は、0.3%以下とすることが望ましい。

0039

クロム(Cr)は、ジルコニウム合金で耐食性を向上させる元素として添加されている。使用環境に応じて、他の耐食性向上元素であるFe及びNiとのバランスで添加量が設定されている。ただし、Cr含有率が0.3%より大きくなると、耐食性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のCr含有率は、0.3%以下とすることが望ましい。

0040

ニッケル(Ni)は、ジルコニウム合金で耐食性を向上させる元素として添加されている。使用環境に応じて、他の耐食性向上元素であるFe及びCrとのバランスで添加量が設定されている。ただし、Ni含有率が0.3%より大きくなると、耐食性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のNi含有率は、0.3%以下とすることが望ましい。

0041

炭素(C)は、ジルコニウムとの親和力が大きく、炭化物を形成しやすい。固溶強化により機械的強度を増加させる役割がある一方、C含有率が0.027%より大きくなると、耐食性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のC含有率は、0.027%以下とした。

0042

窒素(N)は、ジルコニウムとの親和力が大きく、窒化物を形成しやすい。固溶強化により機械的強度を増加させる役割がある。N含有率が0.025%より大きくなると、耐食性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のN含有率は、0.025%以下とすることが望ましい。0.025%以下とした。また、更に耐食性の要求される使用環境では、本発明のジルコニウム合金のN含有率は、0.008%以下とすることが望ましい。

0043

酸素(O)は、ジルコニウムとの親和力が大きく、通常の溶解プロセスでは0.06〜0.16%程度取り込まれる。固溶強化で機械的強度を増加させる役割をする一方、O含有率が0.16%より大きくなると、延靭性が低下する。このため、本発明のジルコニウム合金のO含有率は、0.16%以下とすることが望ましい。

0044

ハフニウム(Hf)は、ジルコニウムの精錬時から不純物として含まれる。本発明においては、一般の純ジルコニウムの規格ASTM)に従い、Hf含有率が4.5%以下のジルコニウム合金を用いた。また、Hfは、ジルコニウムと比べて熱中性子吸収断面積が600倍と大きいため、熱中性子吸収断面積を小さくすること要求される原子炉炉内機器の材料として適用する場合においては、ジルコニウム合金にHfが含有することを極力避けたい。Hf含有率が0.010%より大きくなると、中性子経済性が低下する。この場合、本発明のジルコニウム合金のHf含有率は、0.010%以下とすることが望ましい。

0045

純ジルコニウム及び上記の範囲の合金元素を含むジルコニウム合金は、常温常圧では通常α単相が安定であり、3GPa以上の静水圧下で冷間加工することにより常圧に戻してもω相が残留する。所定の高圧下冷間加工を実施した後、250〜500℃に焼鈍することにより、平均結晶粒径100〜1000nmの微細結晶組織を有し、十分な延性を有する高強度ジルコニウム材料が得られる。

0046

上記の条件を満たす高強度のジルコニウム材料を構成部品に用いることにより、ジルコニウム材料が本来有する耐食性を損なうことなく、構成部品の薄肉化や小寸法化を達成することができ、装置・機器のコンパクト化、省スペース化及び軽量化を図ることができる。

0047

表1は、本発明の実施例として用いられた供試材の化学成分である。純ジルコニウムは、工業用純ジルコニウムである。ジルコニウム合金は、耐食性向上のため、Fe、Cr及びNiが添加されている。いずれの材料も、溶体化熱処理熱間圧延につづき、冷間圧延で成形した後、焼鈍熱処理を施している。ここで、純ジルコニウムといえども他の成分を含有するものであり、純ジルコニウム及び上記ジルコニウム合金をまとめてジルコニウム合金と呼ぶ場合もある。

0048

0049

図1は、本発明の条件検討に用いた高圧ねじり加工試験装置の要部を示す模式断面図である。

0050

本図に示す高圧ねじり加工試験装置は、本発明の加工条件を検討するにあたり、負荷圧力(静水圧)及び付与塑性ひずみを定量的に取り扱うためのものである。供試材より板厚0.85mm、直径10mmの試験片1を切り出し、この試験片1を上部アンビル2と下部アンビル3との間に設けた試験片圧縮部で挟み、所定の圧力4を負荷した状態で一方のアンビルを回転速度0.2rpmで回転させた。この結果、試験片1には、下記式(1)に示すせん断ひずみγが付与される。

0051

0052

上記式(1)において、rは回転中心からの距離、Nは回転回数、tは圧力を負荷した状態での板厚0.65mmである。本手法では非常に大きなひずみを付与することができ、弾性ひずみに対して塑性ひずみが非常に大きくなるため、塑性ひずみとして扱った。引張塑性ひずみに相当する塑性ひずみ量εeqを、せん断塑性ひずみγから下記式(2)にて換算した。

0053

0054

図2は、純ジルコニウムの高圧ねじり加工試験における負荷圧力と残留ω相割合との関係を示すグラフである。本図は、純ジルコニウムの高圧ねじり加工試験において1回転させた後測定したω相割合に及ぼす負荷圧力の影響を示したものである。

0055

ω相割合は、研磨した試験片面をX線回折測定し、回折プロファイルからRietveld解析により算出した。ω相は負荷圧力3GPa以上で観察された。本図から、残留ω相割合は、負荷圧力の増加に伴って増加することがわかる。

0056

なお、高圧ねじり加工試験装置の機械的強度の問題から、負荷圧力10.2GPa以下において高圧ねじり加工試験を行っているが、この試験条件を越える負荷圧力をかけた場合も、現在までの知見によれば、ω相が異なる相に変化することはないと考えられる。したがって、負荷圧力10.2GPa以上においても、所望の残留ω相が得られると推定される。

0057

図3は、純ジルコニウムに高圧ねじり加工を施した後のビッカース硬さと相当塑性ひずみとの関係の負荷圧力依存性を示すグラフである。本図は、純ジルコニウムの高圧ねじり試験において1回転させた後測定したビッカース硬さに及ぼす負荷圧力の影響を示したものである。

0058

ビッカース硬さは、試験片の研磨面を測定しており、各測定位置の回転中心からの距離に応じて上記式(1)及び(2)から算出した相当塑性ひずみに対するビッカース硬さを示している。

0059

本図から、負荷圧力1.5GPaの場合に比べて、負荷圧力5GPa以上の場合、ビッカース硬さが0.4〜1.4GPa増加しており、図2に示したω相が生成する負荷圧力(3GPa以上)ではビッカース硬さが増加していることがわかる。

0060

図4は、ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施した後のビッカース硬さと相当塑性ひずみとの関係の負荷圧力依存性を示すグラフである。

0061

本図に示すジルコニウム合金においては、高圧ねじり試験で10回転させた後、ビッカース硬さを測定している。

0062

本図に示すジルコニウム合金においても、図3に示す純ジルコニウムと同様に、ω相が生成しない負荷圧力1.5GPaでのビッカース硬さに対して、ω相が生成する負荷圧力7.5GPaでのビッカース硬さが高い値を示していることがわかる。負荷圧力1.5GPaの場合、大きなひずみ量で塑性変形したα相であるのに対して、負荷圧力3.0GPa以上の場合大きなひずみ量で塑性変形したα+ω二相である。

0063

このように、負荷圧力3.0GPa以上で大きな塑性ひずみを付与することにより、本来、ω相は、高圧安定相であるにも関わらず、常圧に戻しても残留しており、同じひずみ量だけ塑性変形したα単相よりも高い硬さを示す。

0064

図5は、純ジルコニウム及びジルコニウム合金に付与した相当塑性ひずみとビッカース硬さとの関係を示すグラフである。

0065

本図における純ジルコニウムは、高圧ねじり試験で負荷圧力7.5GPaにて回転数を変えて回転させた複数の試験片のビッカース硬さを測定し、広範囲における相当塑性ひずみに対するビッカース硬さを示したものである。また、ジルコニウム合金についても、高圧ねじり試験で負荷圧力7.5GPaにて10回転させた後測定したビッカース硬さを示している。

0066

純ジルコニウムのビッカース硬さは、相当塑性ひずみが45以上で、ジルコニウム合金のビッカース硬さも相当塑性ひずみ量が120以上でほぼ一定値となっており、塑性変形に伴う加工組織変化が定常状態になっていることを示している。

0067

このような状態での材料組織は、結晶粒径が20〜100nmの超微細結晶ω+α相組織を呈し、各結晶粒界は高角粒界からなる。定常状態になる前の材料組織は、超微細結晶ω+α相組織ではあるもののサブグレインが多く、この材料を焼鈍すると結晶粒の粗大化が早期に生じる。すなわち、45以上の相当塑性ひずみ量を付与することにより、焼鈍時の結晶粒粗大化を抑制する効果がある。

0068

表2は、本発明の供試材の材料組織及びビッカース硬さを示したものである。

0069

本表においては、図5におけるビッカース硬さがほぼ一定となった条件の試験片に対して、種々の温度で焼鈍し、X線回折により同定した構成相TEM観察で測定した結晶粒径(分布)、及びビッカース硬さを示している。

0070

純ジルコニウムに高圧ねじり加工を施さない場合、α相を有し、結晶粒径の平均値は20μmである。純ジルコニウムに高圧ねじり加工(加工条件は7.5GPa、10回転。以下、表2の説明において同じ。)を施し、熱処理を施さない場合、ω+α相を有し、結晶粒径は20〜100nm(平均結晶粒径は60nm)である。純ジルコニウムに高圧ねじり加工を施し、280℃、1時間の熱処理を施した場合、α相を有し、結晶粒径は60〜300nm(平均結晶粒径は180nm)である。

0071

ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施さない場合、α相を有し、結晶粒径の平均値は20μmである。ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施し、熱処理を施さない場合、ω+α相を有し、結晶粒径は20〜150nm(平均結晶粒径は85nm)である。ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施し、300℃、1時間の熱処理を施した場合、α+ω相を有し、結晶粒径は40〜350nm(平均結晶粒径は195nm)である。ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施し、400℃、1時間の熱処理を施した場合、α相を有し、結晶粒径は100〜400nm(平均結晶粒径は250nm)である。ジルコニウム合金に高圧ねじり加工を施し、500℃、1時間の熱処理を施した場合、α相を有し、結晶粒径は300〜950nm(平均結晶粒径は625nm)である。

0072

0073

純ジルコニウムについては、示差熱分析により、ω相からα相への逆変態を示す吸熱反応が250℃から開始し、280℃でピークを示していた。

0074

280℃で焼鈍した純ジルコニウムは、α単相の微細結晶組織を呈し、ビッカース硬さが3.0GPaとなり、未加工材と比べて高い値を示した。

0075

ジルコニウム合金については、示差熱分析により、ω相からα相への逆変態を示す吸熱反応が250℃から開始し、350℃でピークを示していた。400℃以上に焼鈍することによりα単相に逆変態していた。500℃で焼鈍した材料(ジルコニウム合金)においても、結晶粒径が300〜950nm(平均結晶粒径625nm)となり、結晶粒径1000nm以下であった。ビッカース硬さも未加工材と比べて高い値を示した。

0076

表2に示す純ジルコニウムの280℃焼鈍材、及びジルコニウム合金の400℃焼鈍材から、日本工業規格(JIS Z2201)の金属材料引張試験片掲載されている5号試験片を参考に縮小した引張試験片を切り出し、室温にて初期ひずみ速度1×10−3s−1で引張試験を実施した結果を表3に示す。すなわち、表3は、本発明の供試材の室温における引張試験結果を示したものである。本表においては、引張特性として、それぞれの供試材の0.2%耐力、引張強さ及び伸び(延性を表す。)を示している。

0077

0078

本発明の供試材は、上記日本工業規格に記載されている純ジルコニウム及びジルコニウム合金と比較して、0.2%耐力及び引張強さに関して高い値を示し、かつ、同程度以上の延性を保持している。

0079

すなわち、250〜500℃で焼鈍することにより、平均結晶粒径100〜1000nmの微細結晶α単相組織と、十分な延性を有する高強度ジルコニウム及びジルコニウム合金を得ることができる。

実施例

0080

なお、表3には示していないが、熱処理を施さない場合、0.2%耐力及び引張強さは1000MPa以上の値を示すが、伸びの値が2〜3%となり、十分な延性(10%以上)を確保することができない。

0081

本発明は、優れた耐食性、耐薬品性及び生体適合性、高強度、並びにコンパクト化、省スペース化及び軽量化が望まれている化学製品製造装置機器、インプラント等を含む医療用器具・部材、原子炉の炉内機器に適用可能である。

0082

1:試験片、2:上部アンビル、3:下部アンビル、4:圧力。

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