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技術 ガスバリア膜の製造方法、太陽電池用ガスバリアフィルム、および、ディスプレイ用ガスバリアフィルム

出願人 富士フイルム株式会社
発明者 高橋年哉殿原浩二高橋伸輔
出願日 2009年3月17日 (11年9ヶ月経過) 出願番号 2009-064446
公開日 2010年9月30日 (10年3ヶ月経過) 公開番号 2010-215967
状態 特許登録済
技術分野 エレクトロルミネッセンス光源 積層体(2) CVD
主要キーワード 補助検出 サブチャンバ内 窒素含有ラジカル ガイドフィルム 最大面 ガイドベース 基板ロール 高耐酸化性
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

ガスバリア性のみならず、耐酸化性にも優れるガスバリア膜の製造方法、および、これを利用する太陽電池用ガスバリアフィルム、および、ディスプレイ用ガスバリアフィルムを提供する。

解決手段

ガスバリア膜の成膜のためのプラズマ放電を開始した後に、所定の時間が経過する前のプラズマを、前記ガスバリア膜の製造に用いないことにより、前記課題を解決する。

概要

背景

光学素子液晶ディスプレイ有機ELディスプレイなどの表示装置半導体装置薄膜太陽電池等の各種の装置における防湿性を要求される部位や部品食品衣料品電子部品等の包装に用いられる包装材料に、ガスバリア膜水蒸気バリア膜)が形成されている。また、PET等のプラスチックフィルムにガスバリア膜を成膜してなるガスバリアフィルムが、前記用途を含め、各種の用途に利用されている。
ガスバリア膜としては、酸化硅素酸窒化硅素酸化アルミニウム等の各種の物質からなる膜が知られている。これらのガスバリア膜の1つとして、窒化硅素窒化シリコン)からなるガスバリア膜が知られている。また、窒化硅素からなるガスバリア膜の製造方法としては、プラズマCVDが知られている。

例えば、特許文献1には、シランガスおよびアンモニアガスと、キャリアガスとを用いて、プラズマCVDによって基板表面に窒化硅素膜からなるガスバリア膜を成膜するに際し、基板温度を200℃以下に保つと共に、シランガスに対するアンモニアガスの流量比を調整することにより、Si/N比組成比が異なる窒化硅素膜を2層以上成膜する、ガスバリア膜の製造方法が記載されている。
特許文献1に記載される製造方法によれば、高温高湿環境における耐酸化性が高く、ピンホールが少なく、かつ透明性(光学透過率)も高いガスバリア膜を得ることができる。

概要

ガスバリア性のみならず、耐酸化性にも優れるガスバリア膜の製造方法、および、これを利用する太陽電池用ガスバリアフィルム、および、ディスプレイ用ガスバリアフィルムを提供する。ガスバリア膜の成膜のためのプラズマ放電を開始した後に、所定の時間が経過する前のプラズマを、前記ガスバリア膜の製造に用いないことにより、前記課題を解決する。

目的

特開2008−214677号公報






ガスバリア膜が酸化されれば、ガスバリア性が低下し、目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

プラズマCVDによって、シリコン窒化物シリコン炭化物、および、シリコン炭窒化物のいずれかのガスバリア膜を製造するに際し、前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した後、所定時間が経過するまでのプラズマを用いずに、前記ガスバリア膜を製造することを特徴とするガスバリア膜の製造方法。

請求項2

長尺基板長手方向に搬送しつつ、この基板に前記ガスバリア膜を成膜する請求項1に記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項3

前記プラズマ放電を開始して所定時間が経過したら、前記基板および成膜したガスバリア膜の少なくとも一方にマーキングを行なう請求項2に記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項4

前記マーキングが目視可能な印を付けるものである請求項3に記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項5

前記長尺な基板は、先端側に製品とはならないガイドベースを有するものであり、前記前記ガイドベースと製品となる基板との境目成膜室に到達する前に前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始し、かつ、前記ガイドベースと製品となる基板との境目が成膜室に到達した後、第2の所定時間が経過した時点を、前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した後、前記所定時間が経過した時点と見なす請求項2〜4のいずれかにガスバリア膜の製造方法。

請求項6

前記ガイドベースが、製品となる基板と同じ材料で形成される請求項5に記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項7

先に請求項1〜6のいずれかによるガスバリア膜が成膜された基板に、さらに、ガスバリア膜を成膜する請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項8

前記基板の表面が有機物である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項9

基板の温度を120℃以下に保ちつつ、前記ガスバリア膜を成膜する請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項10

静止成膜速度で300nm/min以上の成膜速度で、前記ガスバリア膜を成膜する請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項11

前記所定時間が3秒以上である請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項12

基板へのガスバリア膜の成膜を防止するシャッタを用い、前記シャッタの閉塞中にプラズマ放電を開始し、かつ、前記シャッタを開放した時点を、前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始したと見なす請求項1〜11のいずれかにガスバリア膜の製造方法。

請求項13

前記シャッタが、前記基板と同じ材料で形成される請求項12に記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項14

前記シャッタが、誘電体材料で形成される請求項12に記載のガスバリア膜の製造方法。

請求項15

シート状の基板に、請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法でガスバリア膜を成膜した太陽電池用ガスバリアフィルム

請求項16

シート状の基板に、請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法でガスバリア膜を成膜したディスプレイ用ガスバリアフィルム。

技術分野

0001

本発明は、プラズマCVDを用いるガスバリア膜の製造方法に関し、詳しくは、優れたガスバリア性のみならず、優れた耐酸化性も有するガスバリア膜を成膜できるガスバリア膜の製造方法、および、これを利用する太陽電池用ガスバリアフィルムおよびディスプレイ用ガスバリアフィルムに関する。

背景技術

0002

光学素子液晶ディスプレイ有機ELディスプレイなどの表示装置半導体装置薄膜太陽電池等の各種の装置における防湿性を要求される部位や部品食品衣料品電子部品等の包装に用いられる包装材料に、ガスバリア膜(水蒸気バリア膜)が形成されている。また、PET等のプラスチックフィルムにガスバリア膜を成膜してなるガスバリアフィルムが、前記用途を含め、各種の用途に利用されている。
ガスバリア膜としては、酸化硅素酸窒化硅素酸化アルミニウム等の各種の物質からなる膜が知られている。これらのガスバリア膜の1つとして、窒化硅素窒化シリコン)からなるガスバリア膜が知られている。また、窒化硅素からなるガスバリア膜の製造方法としては、プラズマCVDが知られている。

0003

例えば、特許文献1には、シランガスおよびアンモニアガスと、キャリアガスとを用いて、プラズマCVDによって基板表面に窒化硅素膜からなるガスバリア膜を成膜するに際し、基板温度を200℃以下に保つと共に、シランガスに対するアンモニアガスの流量比を調整することにより、Si/N比組成比が異なる窒化硅素膜を2層以上成膜する、ガスバリア膜の製造方法が記載されている。
特許文献1に記載される製造方法によれば、高温高湿環境における耐酸化性が高く、ピンホールが少なく、かつ透明性(光学透過率)も高いガスバリア膜を得ることができる。

先行技術

0004

特開2008−214677号公報

発明が解決しようとする課題

0005

ガスバリア膜が酸化されれば、ガスバリア性が低下し、目的とするガスバリア性を発現できなくなってしまう。そのため、特許文献1にも記載されるように、ガスバリア膜には、用途によって、ガスバリア性のみならず、優れた耐酸化性も要求される。例えば、太陽電池に用いられるガスバリアフィルムには、85℃で85%RHという高温高湿環境下でも十分な耐酸化性を有することが要求され、また、ディスプレイに用いられるガスバリアフィルムには、60℃で90RHという高温高湿環境下でも十分な耐酸化性を有することが要求される。
このような要求特性を満たすために、各種のガスバリア膜や、ガスバリア膜の製造方法が提案されている。しかしながら、近年、ガスバリア膜へのこれらの特性に対する要求は、益々、厳しくなっている。そのため、特許文献1に記載されるように、ガスバリアフィルムの組成比や成膜時の基板温度の制御を行なうのみでは、十分なガスバリア性や耐酸化性を得られない場合も多い。
これに応じて、ガスバリア性のみならず、高温多湿環境下での耐酸化性にもより優れたガスバリア膜を、安定して製造できる製造方法の出現が望まれている。

0006

本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、ガスバリア性のみならず、高温多湿環境下での耐酸化性にも優れたガスバリア膜を、安定して成膜することができるガスバリア膜の製造方法、および、この製造方法によるガスバリアフィルムを提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

前記目的を達成するために、本発明のガスバリア膜の製造方法は、プラズマCVDによって、シリコン窒化物シリコン炭化物、および、シリコン炭窒化物のいずれかのガスバリア膜を製造するに際し、前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した後、所定時間が経過するまでのプラズマを用いずに、前記ガスバリア膜を製造することを特徴とするガスバリア膜の製造方法を提供する。

0008

このような本発明のガスバリア膜の製造方法において、長尺な基板を長手方向に搬送しつつ、この基板に前記ガスバリア膜を成膜するのが好ましく、また、前記プラズマ放電を開始して所定時間が経過したら、前記基板および成膜したガスバリア膜の少なくとも一方にマーキングを行なうのが好ましく、この際において、前記マーキングが目視可能な印を付けるものであるのが好ましく、さらに、前記長尺な基板は、先端側に製品とはならないガイドベースを有するものであり、前記前記ガイドベースと製品となる基板との境目成膜室に到達する前に前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始し、かつ、前記ガイドベースと製品となる基板との境目が成膜室に到達した後、第2の所定時間が経過した時点を、前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した後、前記所定時間が経過した時点と見なすのが好ましく、この際において、前記ガイドベースが、製品となる基板と同じ材料で形成されるのが好ましい。
また、前記本発明の製造方法によるガスバリア膜が成膜された基板に、さらに、ガスバリア膜を成膜するのが好ましく、また、前記基板の表面が有機物であるのが好ましく、また、基板の温度を120℃以下に保ちつつ、前記ガスバリア膜を成膜するのが好ましく、また、静止成膜速度(静止レート)で300nm/min以上の成膜速度で、前記ガスバリア膜を成膜するのが好ましく、また、前記所定時間が3秒以上であるのが好ましい。
さらに、基板へのガスバリア膜の成膜を防止するシャッタを用い、前記シャッタの閉塞中にプラズマ放電を開始し、かつ、前記シャッタを開放した時点を、前記ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始したと見なすのが好ましく、この際において、前記シャッタが、前記基板と同じ材料で形成されるのが好ましく、あるいは、前記シャッタが、誘電体材料で形成されるのが好ましい。

0009

また、本発明の太陽電池用ガスバリアフィルムは、シート状の基板に、前記本発明の製造方法でガスバリア膜を成膜した太陽電池用ガスバリアフィルムを提供するものであり、さらに、本発明のディスプレイ用ガスバリアフィルムは、シート状の基板に、前記本発明の製造方法でガスバリア膜を成膜したディスプレイ用ガスバリアフィルムを提供する。

発明の効果

0010

このような本発明によれば、プラズマが不安定で、十分な耐酸化性を得ることが出来ない、プラズマ放電の開始から所定時間経過後までのプラズマを用いず、この所定時間が経過した後の、放電が安定して、目的とするガスバリア性および耐酸化性が得られるプラズマのみを用いて、ガスバリア膜を製造する。
そのため、本発明によれば、ガスバリア性のみならず、高温高湿環境下における耐酸化性にも優れたガスバリア膜を安定して製造できる。従って、このような本発明は、例えば液晶ディスプレイ等の各種のディスプレイ用のガスバリアフィルムや太陽電池用のガスバリアフィルムのように、高いガスバリア性のみならず、高い高温多湿環境下での耐酸化性を有するガスバリア膜が要求される各種の用途に、好適に利用可能である。

図面の簡単な説明

0011

本発明のガスバリア膜の製造方法を実施する製造装置の一例を概念的に示す図である。
本発明のガスバリア膜の製造方法に利用される基板の一例を概念的に示す図である。
本発明のガスバリア膜の製造方法に利用される基板の一例の構成を概念的に示す図である。
プラズマ放電を開始した後の時間経過と水素ラジカル由来する発光強度との関係を示すグラフである。

0012

以下、本発明のガスバリア膜の製造方法、ならびに、太陽電池用ガスバリアフィルムおよびディスプレイ用ガスバリアフィルムについて、添付の図面に示される好適例を基に、詳細に説明する。

0013

図1に、本発明のガスバリア膜の製造方法を実施する製造装置の一例を概念的に示す。
図示例のガスバリア膜の製造装置10は、長尺な基板Z(フィルム原反)を長手方向に搬送しつつ、この基板Zの表面にプラズマCVDによってガスバリア膜を成膜(製造/形成)して、ガスバリアフィルムを製造するものである。
また、この製造装置10は、長尺な基板Zをロール状に巻回してなる基板ロール20から基板Zを送り出し、長手方向に搬送しつつガスバリア膜を成膜して、ガスバリア膜を成膜した基板Z(すなわち、ガスバリアフィルム)をロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)による成膜を行なう装置である。

0014

なお、本発明の製造方法において、基板(成膜基板)は、図示例のような長尺なシート状物が好適に例示されるが、それ以外にも、所定長に切断されたシート状物(カットシート)、レンズ光学フィルタなどの光学素子、有機ELや太陽電池などの光電変換素子、液晶ディスプレイや電子ペーパーなどのディスプレイパネル等、各種の物品(部材/基材)も、基板として好適に利用可能である。

0015

また、基板の材料にも、特に限定はなく、プラズマCVDによるガスバリア膜の形成が可能なものであれば、各種の材料が利用可能であり、プラスチックフィルム(樹脂フィルム)等の有機物からなる基板でも、金属やセラミック等の無機物からなる基板でもよい。
ここで、本発明は、図示例のようなガスバリアフィルムの製造に好適であり、従って、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートポリエチレンポリプロピレンポリスチレンポリアミドポリ塩化ビニルポリカーボネートポリアクリロニトリルポリイミドポリアクリレートポリメタクリレートなどの有機物からなるシート状の基板(プラスチックフィルム)を用いるのが、好適である。

0016

また、本発明においては、プラスチックフィルムやレンズ等を基材として、その上に、保護層、接着層、光反射層遮光層平坦化層緩衝層応力緩和層等の、各種の機能を得るための層(膜)が形成されている物を基板として用いてもよい。
この際においては、基材の上に1層のみの層が形成された物を基板として用いてもよく、あるいは、図2に概念的に示すように、基材Bの上に、層a〜層fのような複数の膜を形成した物を基板として用いてもよい。また、基材Bの上に1層もしくは複数層の膜が形成されている基板においては、その層の中の1以上の層(図2であれば、層a〜層fの何れか1層以上)が、本発明の製造方法で形成したガスバリア膜であってもよい。また、本発明によるガスバリア膜と、それ以外の膜とを交互に形成してなる基板も好適に利用可能であり、この際には、前記それ以外の層は、同じ材料からなる層でも、異なる材料からなる層でもよい。さらに、基材Bの上に1層以上の膜を有する基板は、その層の中の1層以上の層(図2であれば、層a〜層fの何れか1層以上)が、パターニングされていてもよい。

0017

ここで、本発明においては、このような基材上に1層以上の膜を有する基板を用いる場合には、最上層すなわち成膜面となる膜は、有機物であるのが好ましい。
すなわち、本発明の製造方法においては、ガスバリア膜の成膜面は、有機物であるのが好ましい。この点に関しては、後に詳述する。

0018

なお、基板の表面に、ガスバリア膜の膜厚を大きく上回るサイズの凹凸異物があると、ガスバリア性が劣化し、高い耐酸化性が得られても、目的のガスバリア性が得られない可能性が生じる。
そのため、用いる基板は、表面が十分に平滑で異物の付着が少ないものが好ましい。

0019

前述のように、図1に示す製造装置10は、長尺な基板Zを巻回してなる基板ロール20から基板Zを送り出し、基板Zを長手方向に搬送しつつガスバリア膜を成膜して、再度、ロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロールによる成膜を行なう装置である。この製造装置10は、供給室12と、成膜室14と、巻取り室16とを有する。
なお、製造装置10は、図示した部材以外にも、各種のセンサ搬送ローラ対や基板Zの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基板Zを所定の経路で搬送するための各種の部材(搬送手段)等、プラズマCVDによる成膜を行なう装置が有する各種の部材を有してもよい。
加えて、プラズマCVDによる成膜室が複数あってもよいし、プラズマCVD以外の蒸着フラッシュ蒸着スパッタ等の何らかの成膜を行う成膜室やプラズマ処理等の表面処理室が1つ以上連結されていてもよい。

0020

供給室12は、回転軸24と、ガイドローラ26と、真空排気手段28とを有する。また、供給室12の最下流部には、検出手段54が設けられる。
長尺な基板Zを巻回した基板ロール20は、供給室12の回転軸24に装填される。
回転軸24に基板ロール20が装填されると、基板Zは、供給室12から、成膜室14を通り、巻取り室16の巻取り軸30に至る所定の搬送経路を通される(送通される)。
製造装置10においては、基板ロール20からの基板Zの送り出しと、巻取り室16の巻取り軸30における基板Zの巻き取りとを同期して行なって、長尺な基板Zを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、成膜室14において、基板Zに、プラズマCVDによるガスバリア膜の成膜を連続的に行なう。

0021

ここで、図示例においては、基板Zは、全域が製品(ガスバリアフィルム)に対応するものではなく、好ましい態様として、図3に示すように、先端側にガイドベースZgを有し、ガイドベースZgの後が、製品に対応するフィルムベースZfとなっている。

0022

前述のように、製造装置10においては、基板Zにガスバリア膜を成膜するために、基板Zに供給室12から巻取り室16の巻取り軸30まで挿通する必要がある。従って、原料ガスの供給およびプラズマ励起電力(プラズマ放電)の開始前に成膜室14の成膜領域(一例として、シャワー電極38と対面する位置)よりも下流側(巻取り室16側=先端側)に至ってしまう基板Zには、ガスバリア膜を成膜できず無駄になってしまう。
ここで、高いガスバリア性や透明性、さらには耐酸化性等を有する高品質なガスバリアフィルムを得るためには、基板表面に清浄化処理平滑化処理等の各種の処理を施した、高品質な必要がある。すなわち、高品質なガスバリアフィルムを製造するためには、基板Zも高価になってしまう。
従って、このような高価な基板を無駄にすることは、ガスバリアフィルムの製造コストを向上する原因の1つになってしまう。

0023

そのため、図示例の基板Zにおいては、製品となるフィルムベースZfの前に、安価なガイドベースZgを設け、供給室12から巻取り軸30まで挿通した状態で、少なくとも成膜位置よりも下流側がガイドベースZgとなるようにする。
このような基板Zを用いることにより、高価なフィルムベースZfの無駄を大幅に減少して、ガスバリアフィルムの製造コストを低減することができる。

0024

ガイドベースZgには、特に限定はなく、供給室12から巻取り軸30まで安定した挿通が可能で、かつ、供給室12から巻取り軸30までに配置される搬送手段(各ガイドローラや後述するドラム36等)による安定搬送が可能な各種のシート状物(帯状ひも状でも可)が、全て利用可能である。
好ましくは、フィルムベースZfと同じ材料で形成されたシート状のガイドベースZgが例示される。基板Zを、このような構成とすることにより、ガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eが成膜空間を通過する際におけるプラズマ放電状態すなわちプラズマの変動を少なくすることができ、より迅速に、プラズマの安定化すなわちガスバリアフィルムの成膜の安定化を図ることができる。

0025

また、ガイドベースZgの長さにも、特に限定はなく、製造装置10の装置構成や、供給室12から巻取り軸30までの基板Zの搬送長、基板Zの搬送経路、プラズマ放電等の開始と基板搬送開始とのタイミング等に応じて、フィルムベースZfが無駄にならない距離を、適宜、設定すればよい。

0026

ここで、後述するが、製造装置10においては、供給室12の最下流部に位置する検出手段54によって、後述する検出手段54によってガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eを検出し、境目eが成膜室14に至ったことを検出する。
そのため、必要に応じて、基板Zに、ガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eを検出するための印(マーク)を付けてもよい。一例として、可視光による検出が可能(目視可能)な印、赤外光紫外光によって検出可能な印、基板Zの搬送やガスバリア膜の成膜の妨害にならない大きさの段差や凸部等の機械的な検出が可能な印が例示される。このような印は、基板Zの表面(ガスバリア膜の成膜面)に設けても、裏面に設けてもよい。また、境目eを検出する印として、基板Zに貫通孔を設けてもよい。
これらの印は、必ずしも、ガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eに設ける必要はなく、ガイドベースZgに設けてもよい。すなわち、製造装置10において、基板Zの搬送速度は、当然、既知であるので、境目eと印との距離が分かれば、印を検出することで、境目eが成膜室14に至ったことを検出できる。
また、印を設けるのではなく、境目eを検出し易くするために、ガイドベースZgとフィルムベースZfとで色調や光透過率に差をつけてもよく、ガイドベースZgとフィルムベースZfとで表面粗さに差を設けてもよい。これらの差も、基板Zの裏面でも表面でもよい。

0027

基板Zに、このような境目eの検出補助手段を設けることにより、より正確に、本発明の製造方法を実施することが可能になる。また、複数の補助検出手段を併用してもよい。

0028

供給室12は、図示しない駆動源によって回転軸24を図中時計方向に回転して、基板ロール20から基板Zを送り出し、ガイドローラ26によって所定の経路を案内して、基板Zを、隔壁32に設けられたスリット32aから、成膜室14に送る。なお、検出手段54に関しては、後に詳述する。

0029

図示例の製造装置10においては、好ましい態様として、供給室12に真空排気手段28を、巻取り室16に真空排気手段60を、それぞれ設けている。これらの室に真空排気手段を設け、成膜中は、後述する成膜室14と同じ真空度(圧力)とすることにより、隣接する室の圧力が、成膜室14の真空度(ガスバリア膜の成膜)に影響を与えることを防止している。
真空排気手段28には、特に限定はなく、ターボポンプメカニカルブースターポンプロータリーポンプドライポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空排気手段が、各種、利用可能である。この点に関しては、後述する他の真空排気手段50および60も同様である。

0030

なお、本発明においては、全ての室に真空排気手段を設けるのに限定はされず、処理として真空排気が不要な供給室12および巻取り室18には、真空排気手段は設けなくてもよい。但し、これらの室の圧力が成膜室14の真空度に与える影響を小さくするために、スリット32a等の基板Zが通過する部分を可能な限り小さくし、あるいは、室と室との間にサブチャンバを設け、このサブチャンバ内減圧してもよい。
また、全室に真空排気手段を有する図示例の製造装置10においても、スリット32a等の基板Zが通過する部分を可能な限り小さくするのが好ましい。

0031

前述のように、基板Zは、ガイドローラ26によって案内され、成膜室14に搬送される。
成膜室14は、基板Zの表面に、CCP(Capacitively Coupled Plasma容量結合プラズマ)−CVDによって、シリコン窒化物、シリコン炭化物、および、シリコン炭窒化物のいずれかのガスバリア膜を成膜(形成)するものである。
なお、本発明において、プラズマCVDは、図示例のようなCCP−CVDに限定はされず、ICP(Inductively Coupled Plasma誘導結合プラズマ)−CVD、マイクロ波CVD、ECR(Electron Cyclotron Resonance)−CVD、大気圧バリア放電CVD等、各種のプラズマCVDが、全て利用可能である。また、Cat(Catalytic触媒)−CVDにおいても、同様の原理によって同様の効果を得ることができる。

0032

図示例において、成膜室14は、ドラム36と、シャワー電極38と、ガイドローラ40および42と、ガス供給手段46と、高周波電源48と、真空排気手段50と、マーキング手段52と、制御手段56とを有する。また、供給室12の最下流部すなわち成膜室14の直前には、検出手段54が配置される。

0033

成膜室14のドラム36は、中心線を中心に図中反時計方向に回転する円筒状の部材で、ガイドローラ40によって所定の経路に案内された基板Zを、周面の所定領域に掛け回して、基板Zを後述するシャワー電極38に対面する所定位置に保持しつつ、長手方向に搬送する。

0034

このドラム36は、CCP−CVDにおける対向電極としても作用(ドラム36とシャワー電極とで電極対を形成)する。
そのため、ドラム36には、バイアス電源が接続され、あるいは、接地アース)されている(共に、図示省略)。もしくは、ドラム36は、バイアス電源の接続と、接地とが切り換え可能であってもよい。

0035

ここで、本発明の製造方法においては、基板の温度を120℃以下にして、ガスバリア膜を成膜するのが好ましい。さらに、基板の温度を80℃以下にして、ガスバリア膜を成膜するのが、特に好ましい。
基板温度を120℃以下にしてガスバリア膜を成膜することにより、耐熱性の低いPEN等のプラスチックフィルム基板や、耐熱性の低い有機材料を基材として用いる基板にも、好適に高いバリア性および耐酸化性を有するガスバリア膜を成膜でき、また、低応力のガスバリア膜を成膜できる等の点で好ましい結果を得る。さらに、基板温度を80℃以下にしてガスバリア膜を成膜することにより、より耐熱性の低いPET等のプラスチックフィルム基板にも、好適に高バリア性で高耐酸化性を有するガスバリア膜を成膜することができ、また、低応力のガスバリア膜を成膜できる等の点で好ましい結果を得る。

0036

図示例の製造装置10においては、この120℃以下でのガスバリア膜の成膜を行なうために、ドラム36は、基板Zの温度を120℃以下に保つ温度調節手段を兼ねるのが好ましく、すなわち、温度調節手段を内蔵するのが好ましい。
ドラム36の温度調節手段には、特に限定はなく、冷媒等を循環する温度調節手段、ピエゾ素子等を用いる冷却手段等、各種の温度調節手段が、全て利用可能である。

0037

シャワー電極38は、CCP−CVDによる成膜に利用される、公知のシャワー電極である。
図示例において、シャワー電極38は、一例として、中空直方体であり、1つの最大面をドラム36の周面に対面して、この最大面の中心からの垂線がドラム36の法線と一致するように配置される。また、シャワー電極38のドラム36との対向面には、多数の貫通穴が全面的に形成される。

0038

なお、図示例の製造装置10において、成膜室14には、図示例においては、シャワー電極(CCP−CVDによる成膜手段)が、1個、配置されているが、本発明は、これに限定はされず、基板Zの搬送方向に、複数のシャワー電極を配列してもよい。この点に関しては、CCP−CVD以外のプラズマCVDを利用する際も同様であり、例えば、ICP−CVDによってガスバリア膜を成膜(製造)する際には、誘導電界誘導磁場)を形成するため(誘導コイルを、基板Zの搬送方向に、複数、配置してもよい。
また、本発明は、シャワー電極を用いてガスバリア膜を成膜するのにも限定はされず、通常の板状の電極と、ガス供給ノズルとを用いるものであってもよい。

0039

ガス供給手段46は、プラズマCVD装置等の真空成膜装置に用いられる公知のガス供給手段であり、シャワー電極38の内部に、原料ガスを供給する。
前述のように、シャワー電極38のドラム36との対向面には、多数の貫通穴が供給されている。従って、シャワー電極38に供給された原料ガスは、この貫通穴から、シャワー電極38とドラム36との間に導入される。

0040

本発明のガスバリア膜の製造方法は、ガスバリア膜として、シリコン窒化物、シリコン炭化物、および、シリコン炭窒化物のいずれかを成膜(形成)する。
具体的には、窒化シリコン、炭化シリコン炭化窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸炭化シリコン、酸化窒化炭化シリコン、窒化水素化シリコン、炭化水素化シリコン、窒化炭化水素化シリコン、酸化窒化水素化シリコン、酸化炭化水素化シリコン、酸化窒化炭化水素化シリコン等が例示される。

0041

原料ガスは、成膜するガスバリア膜に応じて、公知のガスを利用すればよい。
例えば、ガスバリア膜として窒化シリコン膜を形成する場合であれば、原料ガスとして、シランガスおよび/またはジシランと、アンモニアガスおよび/またはヒドラジンおよび/または窒素ガスとを用いればよい。
また、原料ガスとしては、これらに加え、窒素ガス、水素ガスヘリウムネオンアルゴンクリプトンキセノンラドンなどの不活性ガスを併用してもよい。

0042

なお、本発明の製造方法で成膜するガスバリア膜には、目的とするガスバリア膜以外にも、不可避的に混入してしまう各種の物質が混在してもよいのは、もちろんである。例えば、シランガスと、アンモニアガスと、窒素ガスと、水素ガスとを用いて窒化硅素からなるガスバリア膜を成膜する際には、窒化硅素以外にも、水素など、不可避的に混入してしまう各種の物質が混在してもよいのは、もちろんである。
また、本発明の製造方法で製造するガスバリア膜は、結晶構造を有しても、アモルファス状でもよく、あるいは、両者が混在してもよい。

0043

また、本発明の製造方法は、ガスバリア膜の原料として、ガス(気体状の原料)を使用するのに限定はされず、液体状の原料を用い、液体の原料を気化してガスバリア膜を成膜してもよい。例えば、ガスバリア膜として炭化窒化シリコン膜を形成する場合であれば、液体状の原料として、HMDSN(ヘキサメチルジシラザン)および/またはTMSテトラメチルシラン)等が利用可能である。
あるいは、ガス状の原料と、液体状の原料との両者を併用して、ガスバリア膜を成膜してもよい。

0044

高周波電源48は、シャワー電極38に、プラズマ励起電力を供給する電源である。高周波電源48も、各種のプラズマCVD装置で利用されている、公知の高周波電源が、全て利用可能である。
さらに、真空排気手段50は、プラズマCVDによるガスバリア膜の成膜のために、成膜室内を排気して、所定の成膜圧力に保つものであり、前述のように、真空成膜装置に利用されている、公知の真空排気手段である。

0045

このガス供給手段46、高周波電源48、および、真空排気手段50は、共に、制御手段56によって、その動作を制御される。制御手段56に関しては、後に詳述する。

0046

マーキング手段52は、制御手段56の指示に応じて、基板Z(フィルムベースZf)に、マーキング(印付け)を行なうものである。
具体的には、マーキング手段52は、制御手段56の指示の下、基板ZすなわちフィルムベースZfにマーキングを行なう。このマーキングに関しては、後に詳述する。

0047

マーキング手段52によるマーキングの方法には、特に限定は無く、ガスバリア膜の成膜後に検出可能なマーキングを行なう方法が、全て利用可能である。
一例として、ガスバリアフィルム(本発明の製造方法を利用する製品)が透明である場合には、レーザ光による焼き付けレーザマーキング)や各種の記録ヘッドを利用する着色のように、目視可能な印を形成するマーキングを施すのが好ましい。
あるいは、赤外線紫外線等によって検出可能なマーキングであってもよい。さらには、レーザ光や機械的な手段による穿孔によって、マーキングを行なってもよい。

0048

マーキングの位置にも、特に限定はないが、ガスバリア膜を成膜した基板において、製品となる領域外に行なうのが好ましい。例えば、図示例のような長尺な基板Zであれば、幅方向(長手方向と直交する方向)の端部近傍に、マーキングを行なうのが好ましい。
また、マーキングは、ガスバリア膜に行なってもよく、あるいは、基板Zの裏面(ガスバリア膜の非成膜面)に行なってもよい。ガスバリア膜の強度や、マーキングによる衝撃の大きさ等によっては、ガスバリア膜にマーキングを行なうと、膜に、ヒビ割れを生じてしまう可能性が有る。そのため、このような点を加味すると、裏面にマーキングを行なう方が、有利である。

0049

前述のように、供給室12の最下流部すなわち成膜室14の直上流部には、検出手段54が配置される。
検出手段54は、供給室12から巻取り室16に搬送される基板ZのガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目e(前記印を含む)を検出して、境目eを検出した事の情報を制御手段56に送る部位である。
後に詳述するが、本発明の製造方法においては、ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した後、所定時間(第1の所定時間)が経過する以前のプラズマは、ガスバリア膜の製造に使用しない。ここで、図示例においては、基板Zとして、ガイドベースZgを有する基板Zを用いる。このようなガイドベースZgを用いる場合には、好ましい態様として、ガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eが成膜室14(真空チャンバ)に到達した後、第2の所定時間が経過するまでを、前記プラズマ放電を開始した後、に第1の所定時間が経過するまでの時間と見なして、この間のプラズマは、ガスバリア膜の成膜に使用しない。

0050

検出手段54による境目eの検出方法には、特に限定はなく、境目eや、ガイドベースZgとフィルムベースZfの状態等に応じた、各種の検出方法が利用可能である。
例えば、境目eが可視光によって検出可能であれば、可視光を用いた各種の光学的な検出方法によって、境目eを検出すればよい。また、境目eが赤外光や紫外光で検出可能であれば、これらの光を用いた各種の検出方法によって、境目eを検出すればよい。また、境目eが段差や凸部等の機械的に検出可能なものであれば、検出部材を接触させて衝撃等によって検出する方法を利用すればよく、あるいは、段差や凸部を光学的に検出するようにしてもよい。
また、ガイドベースZgとフィルムベースZfとで、色や光透過性に違いがある場合には、光学的な手段を用いて基板Zの色や光透過性を検出することで、境目eを検出してもよい。さらに、ガイドベースZgとフィルムベースZfとで、表面粗さ等の表面性状に違いがある場合には、表面粗さ等を検出することで、境目eを検出してもよい。
また、複数の境目eの検出方法を併用してもよい。

0051

なお、図示例においては、基板Zの表面側(ガスバリア膜の成膜面側)から、ガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eを検出しているが、本発明は、これに限定はされず、裏面側(成膜面と逆面)側から、境目eを検出してもよい。

0052

制御手段56は、ガス供給手段46からの各種の原料ガスの供給、高周波電源48からシャワー電極38へのプラズマ励起電力の供給、成膜室14の圧力、基板Zの温度、電極間の距離等を制御するものである。
ここで、本発明のガスバリア膜の製造方法においては、ガスバリア膜の成膜のためのプラズマ放電を開始した後、第1の所定時間が経過する以前のプラズマをガスバリア膜の製造に用いない以外は、ガスバリア膜の成膜条件には、特に限定は無い。
従って、原料ガスの流量、成膜圧力、プラズマ励起電力、プラズマ励起電力の周波数電極間距離、基板へのバイアス電位印加、基板Zの温度等の成膜条件は、通常のプラズマCVDによるガスバリア膜の成膜と同様に、形成するガスバリア膜の種類、目的とする成膜速度、目的とするガスバリア膜の厚さ、使用する原料ガスの種類、成膜室の構成や大きさ、基板Z(基板Zを構成する基材)の物性等に応じて、適宜、設定すればよい。
さらに、ガスバリア膜の膜厚にも、特に限定はなく、用途や要求されるガスバリア性等に応じて、十分なガスバリア性を発現できる膜厚を、適宜、設定すればよい。但し、ガスバリア膜の膜厚が5nm未満であると、ガスバリア膜の殆どが表面自然酸化状態となってしまう可能性が有るので、ガスバリア膜の膜厚は、5nm以上とするのが好ましい。

0053

本発明においては、成膜速度は、基板Zの搬送を停止した状態(静止成膜速度)で、300nm/min以上とするのが好ましい。
後に詳述するが、本発明は、ガスバリア膜の成膜のためのプラズマ放電を開始した後、所定時間が経過する以前のプラズマを用いずに、ガスバリア膜を製造する。本発明は、これにより、放電が不安定な状態でのプラズマによるガスバリア膜の成膜に起因する耐酸化性の低下を抑止して、ガスバリア性のみならず、高温多湿環境下での耐酸化性にも優れたガスバリア膜を、安定して製造することを可能にしている。
ここで、成膜速度が大きいほど、放電開始直後のプラズマの不安定に起因する耐酸化性の低下は大きい。また、成膜速度が大きいほど、原料ガスの供給量も多くする必要が有るが、原料ガスの総供給量が多い程、放電が安定するまでに、時間がかかり、すなわち、耐酸化性の低下も大きくなる。

0054

すなわち、本発明の製造方法においては、成膜速度を静止成膜速度で300nm/min以上とすることにより、放電が不安定な状態でのプラズマによるガスバリア膜の耐酸化性低下を抑止するという本発明の効果を、好適に発現することができる。特に、成膜速度を静止成膜速度で500nm/min以上とすることにより、この効果を、さらに好適に発現でき、より好ましい。

0055

また、制御手段56は、検出手段54から、基板ZのガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eを検出した旨の情報を受けたら、検出手段54と成膜室14との距離から、境目eが成膜室14に至るタイミングを検出し、境目eが成膜室14に至った後、適宜、設定された第2の所定時間が経過した時点で、マーキング手段52にマーキングをするように指示を出す。

0056

マーキング手段52は、この指示に応じて、基板Zの表面にマーキングを行なう。図示例においては、マーキング手段52は、成膜領域(シャワー電極38)よりも上流側に位置するので、このタイミングでマーキングを行なえば、マーキングの位置は、必ず、境目eが成膜室14に至った後、第2の所定時間が経過(プラズマ放電の開始後、第1の所定時間が経過)した後に、成膜領域に至る位置となる。
あるいは、マーキング手段52を成膜領域よりも下流に配置し、制御手段56は、マーキング手段52の位置と、基板Zの搬送速度とから、境目eが成膜室14に至った後、第2の所定時間が経過(同前)した時点で成膜領域に至った位置に、マーキングを行なうように、マーキング手段52にマーキングの指示を出してもよい。

0057

なお、図示例の製造装置10は、好ましい態様として、ガイドベースZgを有する基板Zを用いている。しかしながら、本発明の製造方法においては、ガイドベースZgを有さない基板Zにも、好適に利用可能である。
なお、ガイドベースZgを有さない基板Zとは、全部がフィルムベースZfである基板Zのみならず、ガイドベースZgを有する基材を用いるものの、境目eを含む領域に、既に各種の機能を発現するための膜が形成されている基板Zも、対象にしてもよい。すなわち、後者の基板Zは、ガイドベースZgを有する基板として扱っても、ガイドベースZgを有さない基板として扱ってもよい。

0058

このガイドベースZgを有さない基板Zを用いる場合には、制御手段56は、高周波電源48がシャワー電極38にプラズマ励起電力を供給した時点、すなわち、ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した時点から、第1の所定時間が経過したら、同様に、マーキング手段52にマーキングをするように指示を出す。
また、ガイドベースZgを有する基板Zを用いる場合において、ガイドベースZgの長さやプラズマ放電開始のタイミング等の都合により、プラズマ放電を開始した時点で、境目eが成膜領域もしくは成膜室14を通過してしまっている場合にも、同様に、制御手段56は、ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した時点から、第1の所定時間が経過したら、マーキング手段52にマーキングをするように指示を出す。
さらに、ガスバリア膜の成膜中に、プラズマ励起電力の供給を停止し(あるいは、不要に停止し)、その後、回復した場合にも、制御手段56は、同様に、プラズマ放電を再開した時点から、第1の所定時間が経過したら、同様に、マーキング手段52にマーキングをするように指示を出す。

0059

なお、ガイドベースZgを有する基板Zの場合には、基板ZのガイドベースZgとフィルムベースZfとの境目eが、成膜室14に到達した後、第2の所定時間を経過した後に、マーキングを行なうことの理由については、後に詳述する。

0060

本発明の製造方法によって製造されたガスバリアフィルムは、マーキング位置よりも先端側の領域は、ガスバリアフィルムすなわち製品とはしない。また、成膜中に放電を停止して回復した場合には、放電停止位置とマーキング位置との間の領域も、ガスバリアフィルムとしないで取り除く。すなわち、本発明においては、ガスバリア膜の成膜のための放電開始から、第1の所定時間が経過(図示例においては、境目eが成膜室14に至った後、第2の所定時間が経過)するまでのプラズマは、製造に使用しない。
これにより、本発明は、ガスバリア性のみならず、高温高湿環境下でも高い耐酸化性を有するガスバリア膜を、安定して製造することを可能にしている。

0061

シリコン窒化物、シリコン炭化物、および、シリコン炭窒化物からなるガスバリア膜をプラズマCVDによって成膜すると、十分なガスバリア性のみならず、十分な耐酸化性が得られない場合が有る。
本発明者は、その原因を鋭意検討した結果、プラズマ放電は、放電を開始した後、ある程度の時間が経過しないと、安定せず、この不安定な状態のプラズマ放電によるプラズマで成膜したガスバリア膜は、ガスバリア性のみならず、十分な耐酸化性を有さないことを見出した。また、この耐酸化性の低下は、成膜面が有機物である場合に、より顕著に生じることも見出した。

0062

図4に、シランガス、アンモニアガス、窒素ガス、および、水素ガスを用いた窒化硅素からなるガスバリア膜の成膜において、成膜のためのプラズマ放電開始からの、水素ラジカルに由来する656nmの発光の発光強度の時間変化の一例を示す。なお、水素ラジカルは、水素ガスからだけではなく、シランガスやアンモニアガスからも多く生成される。よって、単に水素ラジカルの量に対応するだけではなく、シリコン含有ラジカル窒素含有ラジカル等の挙動間接的に知ることができる。
図4に示されるように、水素ラジカルの発光強度は、プラズマ放電を開始(0)した直後に急激に立ち上がり、時間経過と共に減少して、3秒を経過した当たりで落ち着く。従って、プラズマ放電の開始直後は、放電の状態が不安定であり、この状態のプラズマで成膜したガスバリア膜は、目的とするガスバリア性および耐酸化性を発現しない。

0063

本発明は、上記知見を基に成されたものであり、前述のように、プラズマ放電を開始した後、第1の所定時間を経過する以前のプラズマは、ガスバリア膜の製造に使用しない。このような本発明によれば、プラズマ放電が安定した状態でのプラズマのみを用いて、ガスバリア膜を製造するので、ガスバリア性のみならず、高温高湿環境下での耐酸化性にも優れるガスバリア膜を、安定して製造することができる。特に、不安定なプラズマ放電による耐酸化性の低下が顕著な有機物からなる成膜面を有する基板Zには、好適である。
また、図示例のようなロール・ツー・ロールによってガスバリア膜を製造する場合(ロール・ツー・ロールによるガスバリアフィルムの製造装置)では、目的とする性能が得られない領域を、確実に摘出して排除できる。

0064

ここで、ガイドフィルムZgを有する基板Zは、プラズマ放電が安定した後でも、ガイドフィルムZgとフィルムベースZfとの境目eがプラズマ放電領域すなわち成膜領域を通過する際に、ガイドフィルムZgとフィルムベースZfとの表面性状の違いなどによって、境目eにおいてプラズマの状態が変動し、すなわち、放電開始時と同様に、プラズマ放電が不安定になってしまう。
従って、ガイドフィルムZgを有する基板Zを用いる場合には、境目eが成膜領域を通過した後、前記第1の所定時間を経過する前のプラズマは製造には使用しないのが好ましい。

0065

そのため、本発明においては、ガイドフィルムZgを有する基板Zを用いる場合には、境目eが成膜室14に至った後、境目eが成膜空間を超えて、その後、さらに、確実に前記第1の所定時間が経過する時間となるように、適宜、設定された、第2の所定時間を用い、境目eが成膜室に至った後、第2の所定時間が経過する前のプラズマは、ガスバリアフィルムの製造には用いないのが好ましい。
すなわち、ガイドフィルムZgを有する基板Zを用いる場合には、境目eが成膜室14に至った時点から、第2の所定時間を経過したことを、プラズマ放電開始から第1の所定時間が経過したと見なすのが好ましい。

0066

図示例では、これに応じて、前述のように、境目eが成膜室14に至った後、第2の所定時間が経過したら、マーキングを行なうように、制御手段56がマーキング手段52に指示を出す。

0067

なお、ガイドベースZgを有する基板Zを用いる場合には、フィルムベースZfと同じ材料で形成されたガイドベースZgを有する基板Zを用いることにより、境目eが成膜領域を通過する際におけるプラズマ放電の変動を少なくすることができ、好ましいのは、前述のとおりである。すなわち、フィルムベースZfと同じ材料で形成されたガイドベースZgを有する基板Zを用いることにより、境目eが成膜室14に至った時間からの第2の所定時間を短くでき、好ましい。

0068

なお、ガイドフィルムZgを有する基板Zを用いる場合には、境目eが成膜領域を超えた後、前記第1の所定時間が経過した時点で、マーキング手段52によるマーキングを行なうようにしてもよい。すなわち、境目eが成膜領域を超えた時点を、プラズマ放電開始と見なしてもよい。
この際において、成膜領域は、一例として、基板Zがシャワー電極38(プラズマ励起電力を供給される電極(CCP−CVDの場合には誘導コイル))と対面する領域、ラジカルによる発光が確認できる領域、装置構成や成膜速度等に応じて、適宜、設定した領域等とすればよい。

0069

このような本発明の製造方法で製造したガスバリア膜は、優れたガスバリア性のみならず、優れた耐酸化性を有する。
一例として、太陽電池に利用されるガスバリアフィルムには、3×10-3[g/(m2・day)]以下の水蒸気透過率と、85℃で85%RHの環境下(例えば、千時間放置)でも、前記ガスバリア性を保持できることが要求される。また、有機EL等の各種のディスプレイに利用されるガスバリアフィルムには、さらに高い1×10-5[g/(m2・day)]以下の水蒸気透過率と、60℃で90%RHの環境下(同前)でも、前記ガスバリア性を保持できることが要求される。
本発明の製造方法によれば、いずれの要求も満たすガスバリアフィルムを、安定して製造できる。また、本発明によれば、優れた耐酸化性を有するため、耐酸化性を確保するための無機膜を、別途、積層する必要も無くすことができ、すなわち、他の層の積層に起因する透明性の低下も抑制できる。すなわち、本発明のガスバリアフィルムは、有機物からなる表面を有する基板Zに特に好適な点も相まって、高い耐酸化性および透明性を要求される、ディスプレイ用のガスバリアフィルムや、太陽電池用のガスバリアフィルムに、好適である。

0070

前記第1の所定時間、すなわち、プラズマ放電を開始した後(境目eが放電領域を通過した後)後、目的とするガスバリア性および耐酸化性を有するガスバリア膜が製造できる状態にまでプラズマ放電が安定するまでの時間は、製造するガスバリア膜の種類、原料ガスの種類、プラズマ励起電力等によって異なる。従って、これらに応じて、目的とするガスバリア膜が製造できる状態にまでプラズマ放電が安定するまでの時間を、適宜、設定すればよい。
あるいは、実験的に、プラズマ放電開始後、目的とするガスバリア膜が製造できる状態にまでプラズマ放電が安定するまでの時間を求めてもよい。

0071

ここで、本発明者の検討によれば、多くの場合、プラズマ放電を開始した後、3秒以上が経過すれば、放電が安定して、目的とする性能を有するガスバリア膜が製造できるプラズマ放電となる。特に、放電開始後、10秒以上が経過すれば、より確実に、目的とする性能を有するガスバリア膜が製造できる、安定したプラズマ放電となる。
従って、本発明において、第1の所定時間は、3秒以上、特に、10秒以上とするのが好ましい。また、第2の所定時間は、基板の搬送速度や成膜室の構成等に応じて、境目eが成膜室14に至り、成膜領域を通過した後、確実に3秒(特に10秒)を超える時間を、適宜、設定すればよい。

0072

以下、成膜室14におけるガスバリア膜の成膜の作用を説明することにより、制御手段56、検出手段54およびマーキング手段52、ならびに、本発明のガスバリア膜の製造方法について、より詳細に説明する。
前述のように、回転軸24に基板ロール20が装填されると、基板Zは、基板ロール20から引き出され、供給室12からガイドローラ26によって案内されて成膜室14に至り、成膜室14において、ガイドローラ40に案内されて、ドラム36の周面の所定領域に掛け回され、ガイドローラ42によって案内されて巻取り室16に至り、ガイドローラ58に案内されて巻取り軸30に至る所定の搬送経路を通される。

0073

供給室12から供給され、ガイドローラ40によって所定の経路に案内された基板Zはドラム36に支持/案内されつつ、所定の搬送経路を搬送される。なお、成膜室14内は、真空排気手段50によって所定の真空度に減圧され、また、供給室12は真空排気手段28によって、巻取り室16は真空排気手段60によって、それぞれ所定の真空度に減圧されている。
さらに、シャワー電極38には、ガス供給手段46から原料ガス、すなわち、Si−H結合を有する原料ガスと、N−H結合を有する原料ガスと、窒素ガス、水素ガスおよび希ガスの少なくとも1以上とが供給される。これにより、シャワー電極38と基板Z(ドラム36)との間に、原料ガスが供給される。

0074

原料ガスの供給量および成膜室14の真空度が安定したら、シャワー電極38には、高周波電源48から、プラズマ励起電力が供給され、プラズマ放電が開始される。なお、ガイドフィルムZgを有さない基板Zを用いる場合には、この放電開始から第1の所定時間が経過したら、マーキング手段52によるマーキングが行なわれるのは、前述のとおりである。
また、図示例の製造装置10においては、ドラム36が対向電極となり、ドラム36とシャワー電極38とで、CCP−CVDにおける電極対を構成するのは、前述のとおりである。

0075

シャワー電極38へのプラズマ励起電力の供給によって、シャワー電極38とドラム36との間でプラズマが励起され、原料ガスからラジカルが生成されて、ドラム36によって支持されつつ搬送される基板Zの表面にガスバリア膜が成膜される。

0076

ここで、基板Zの搬送が開始されたら、検出手段54は、基板Zの境目eの検出を開始し、境目eを検出した時点で、制御手段56に、境目eを検出した旨の連絡をする(検出信号を送る)。
制御手段56は、検出信号を受けたら時間計測を開始し、検出手段54と成膜室14との距離および搬送速度から、境目eが成膜室14に至るタイミングを知見し、境目eが成膜室14に至った後、第2の所定時間が経過した時点で、マーキングを行なうように、マーキング手段52に指示を出す。
これに応じて、マーキング手段52は、基板Zの表面にマーキング、例えば、レーザ光による焼き付け(レーザマーキング)を行なう。

0077

前述のように、マークキングされた位置よりも先端側の基板Z(ガスバリアフィルム)は、プラズマ放電が十分に安定しない状態で、ガスバリア膜を成膜されている不適正な領域である可能性が有るので、取り除く必要がある。
従って、このようなマーキングを行なうことにより、ガスバリア膜を成膜した後に、容易に不適正な領域を検出することが可能となる。

0078

ところで、本発明の製造方法は、図2に示されるように、基材Bの上に多数の層(膜)を形成した物を基板として用いてもよい。また、ガスバリア膜は、ピンホールによるガスバリア性の低下を低減するために、異なる層を介して、複数層が形成される場合も多い。
例えば、図2に示される例であれば、層b、dおよびfとしてガスバリア膜を成膜し、それ以外の層a,cおよびeは、他の機能を有する層を形成することも有る。

0079

ここで、基板Zの搬送速度は、当然、既知である。従って、放電開始後、第1の所定時間が経過する前(もしくは、成膜室14に境目eが至った後、第2の所定時間が経過する前)にガスバリア膜を成膜された領域(以下、便宜的に、「不適正領域」とする)を、時間管理によって検出し、全てのガスバリア膜で、不適正領域を一致するように基板Zを挿通し、あるいは、プラズマ放電の開始を制御することは、可能ではある。しかしながら、前述のように多数層のガスバリア膜を成膜する場合には、回転軸24に基板ロール20が装填され、巻取り軸30まで挿通されることにより、時間で管理した不適正領域の位置に、誤差が生じる可能性も高い。さらに、適正領域も不適正領域も同様に透明である場合には、このような方法では、誤差が生じる可能性は、より高くなる。
これに対し、レーザ光による焼付けのような目視(可視光による検出)可能なマーキングや、赤外線等によって検出可能なマーキングを行なうことにより、多数層のガスバリア膜を成膜する際にも、確実に、不適正領域を検出することができる。
従って、このようなマーキングを行なうことにより、このように多数層のガスバリア膜を成膜した場合であっても、各層のガスバリア膜における不適正領域を確実に検出して、不適正な製品を提供することを、防止できる。

0080

ガスバリア膜を成膜された基板Z(すなわち、ガスバリアフィルム)は、ドラム36からガイドローラ42に搬送され、ガイドローラ42によって案内されて、成膜室14と巻取り室16とを隔離する隔壁56に形成されたスリット56aから、巻取り室16に搬送される。

0081

図示例において、巻取り室16は、ガイドローラ58と、巻取り軸30と、真空排気手段60とを有する。
巻取り室16に搬送された基板Z(ガスバリアフィルム)は、ガイドローラ58に案内されて巻取り軸30に搬送され、巻取り軸30によってロール状に巻回されガスバリアフィルムロールとして、次の工程に供される。
また、先の供給室12と同様、巻取り室16にも真空排気手段30が配置され、成膜中は、巻取り室16も、成膜室14における成膜圧力に応じた真空度に減圧される。

0082

本発明の製造方法によって製造されたガスバリアフィルムは、マーキング位置よりも上流側の領域は、製品としないで、排除される。すなわち、ガスバリア膜の成膜のための放電開始から、第1の所定時間が経過するまでのプラズマは、製造に使用しない。

0083

以上の例は、本発明のガスバリア膜の製造方法を、ロール・ツー・ロールによるガスバリアフィルムの製造に利用した例であるが、本発明は、これに限定はされず、シート状の基板や、レンズやディスプレイ等の光学素子、太陽電池等にガスバリア膜を成膜してもよいのは、前述のとおりである。すなわち、本発明は、いわゆるバッチ式によるプラズマCVD装置でのガスバリア膜の製造に利用してもよい。

0084

また、バッチ式によるガスバリア膜の製造の際には、ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始した後、第1の所定時間が経過したら、基板をプラズマ放電領域(成膜領域)に移動する等の手段で、第1の所定時間が経過する前のプラズマを用いずに、ガスバリア膜を製造してもよいが、好ましくは、シャッタを設け、基板と、原料ガスの導入位置や電極とを隔離し、ガスバリア膜となるラジカルが基板に至らないようにする。
ここで、シャッタを用いる場合には、プラズマ放電を開始した後、第1の所定時間が経過した後に、シャッタを開放することで、第1の所定時間が経過する前のプラズマを用いずに、ガスバリア膜を製造するようにする。すなわち、シャッタ開放時を、ガスバリア膜を成膜するためのプラズマ放電を開始時と見なす。これにより、同様に、第1の所定時間が経過する前のプラズマを用いずに、ガスバリア膜を製造できる。
なお、シャッタを用いる構成は、図1に示すようなロール・ツー・ロールによるガスバリアフィルムの製造にも、利用可能である。すなわち、プラズマ放電を開始した後、第1の所定時間が経過した後に、シャッタを開放し、もしくは、境目eが成膜室14に至った後、第2の所定時間が経過した後に、シャッタを開放すればよい。

0085

シャッタを利用する場合には、シャッタは、可能な限りプラズマ状態に影響を与えないものがよい。
この点を考慮すると、シャッタの形成材料としては、基板(特に基板の表面)と同じ材料が最適である。また、基板と同じ材料の使用が困難である場合には、誘電体材料からなるシャッタが好ましい。なお、シャッタは、全てを上記条件を満たす材料で形成してもよいが、基板との対向面や電極との対向面など、シャッタの一部について、上記条件を満たす材料で形成してもよい。
また、同様の理由で、シャッタは、閉塞状態開放状態とにおける放電空間の体積変化が小さいサイズ(体積)であるのが好ましく(例えば3%以下の体積変化)、かつ、可能な範囲で、基板に近接する位置に設置されることが好ましい。

0086

以上、本発明のガスバリア膜の製造方法、太陽電池用ガスバリアフィルムおよびディスプレイ用ガスバリアフィルムについて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。

0087

図1に示される製造装置10を用いて、CCP−CVD法によって基板Zに、窒化硅素からなるガスバリア膜を成膜した。

0088

基板Zは、幅300mm、厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製ルミラーT60)を用いた。なお、この基板Zは、ガイドフィルムZgを有さない、全域がフィルムベースZfの基板である。

0089

基板ロール20を回転軸24セットして、基板Zを引き出し、ガイドロール26および40、ドラム36(温度調節手段内蔵)、ガイドロール42および58を経て巻取り軸30に至る所定の経路で挿通して、巻取り軸30に巻き掛けた。
次いで、製造装置10の全ての扉を閉塞して、真空排気手段28、50、および60を駆動して、真空排気を開始した。また、平行して基板Zの搬送も開始した。基板Zの搬送速度は、3.3m/minとした。
全室の圧力が0.01Paとなった時点で、ガス供給手段46からシャワー電極38へ、原料ガスとして、シランガス(SiH4)、アンモニアガス(NH3)、窒素ガス(N2)、および水素ガス(H2)を供給し、さらに、全室の圧力が80Paとなるように、各真空排気手段の排気量を調整した。
なお、原料ガスの流量は、シランガスおよびアンモニアガスは100sccm、窒素ガスは850sccm、水素ガスは350sccmとした。

0090

成膜室14内の圧力が安定したら、高周波電源48からシャワー電極38に、周波数13.56MHz、1600Wのプラズマ励起電力を供給して、プラズマ放電を開始し、基板Zの表面に窒化硅素からなるガスバリア膜を成膜し、PETフィルムを基板とするガスバリアフィルムを作製した。この条件下でのガスバリア膜の成膜速度は、静止成膜速度で310nm/minで、ガスバリア膜の厚さは30nmとした。ガスバリア膜の厚さは、予め行なった実験に応じて制御した。
なお、成膜中は、ドラム36が内蔵する温度調節手段によって、基板温度が80℃以下となるように調節した。

0091

作製したガスバリアフィルムについて、プラズマ放電開始後0〜3秒未満の間にガスバリア膜を成膜した領域、プラズマ放電開始後3〜6秒未満の間にガスバリア膜を成膜した領域、プラズマ放電開始後6〜9秒未満の間にガスバリア膜を成膜した領域、および、プラズマ放電開始後9〜12秒の間でガスバリア膜を成膜した領域をサンプリングした。なお、各領域は、基板Zの搬送速度と、プラズマ放電開始および基板Zの搬送停止のタイミングとから、知見した。
サンプルについて、成膜直後、60℃で90%RHの環境に1000時間保管した後、および、85℃で85%RHの環境に1000時間保管した後の水蒸気透過率を評価した。また、前記1000時間保管後のサンプルに関しては、耐酸化性も評価した。

0092

[水蒸気透過率]
モコン法によって水蒸気透過率[g/(m2・day)]を測定した。なお、水蒸気透過率がモコン法の測定限界を超えたサンプルについては、カルシウム腐食法(特開2005−283561号公報に記載される方法)によって、水蒸気透過率を測定した。
[耐酸化性]
保管後における膜組成を、XPS(X-ray photoelectron spectroscopyアルバックファイ社製 Quantera SXM)によって測定し、耐酸化性を評価した。評価は、膜全体の組成のうち、保管前に酸化している表面や界面を除いた領域(膜厚で5〜45nmの領域)の酸素窒素の比(O/N値)について、
保管前後の差が±3%以内(実質的に変化なし) を◎;
保管前から保管後での増加が3%超10%以内 を○;
保管前から保管後での増加が10%超50%以内 を△;
保管前から保管後での増加が50%超を×; とした。
結果を下記表1に示す。

0093

実施例

0094

上記表1に示されるように、プラズマ放電を開始した後、3秒以内にガスバリア膜が成膜された領域では、プラズマ放電が安定していないと考えられ、他の領域に比して、作製直後でもガスバリア性が十分であり、また、高温多湿環境下での耐酸化性も低く、かつ、ガスバリア性も大きく劣化している。
これに対し、プラズマ放電を開始した後、3秒以上経過した後にガスバリア膜が成膜された領域では、作製直後のガスバリア性も良好であり、かつ、高温多湿環境下での耐酸化性も向上し、かつ、ガスバリア性の劣化も低下している。さらに、6秒以上経過した後にガスバリア膜が成膜された領域、特に、9秒以上経過した後にガスバリア膜が成膜された領域では、作製直後および高温多湿環境下に放置した後も、良好なガスバリア性を有し、また、高温多湿環境下での耐酸化性も十分である。
なお、12秒を経過した以降にガスバリア膜を成膜した領域に関して、ランダムにサンプリングして、同様の検査を行なった結果、全て、9〜12秒に成膜した領域と同等以上の結果が得られた。
以上の結果より、本発明の効果は、明らかである。

0095

液晶ディスプレイ等の各種のディスプレイや太陽電池の製造のように、高いガスバリア性のみならず、優れた透明性および耐酸化性を有するガスバリア膜が要求される各種の製品の生産に、好適に利用可能である。

0096

10製造装置
12供給室
14成膜室
16巻取り室
20基板ロール
24回転軸
26,40,42,58ガイドローラ
28,50,60真空排気手段
30巻取り軸
32,56隔壁
36ドラム
38シャワー電極
46ガス供給手段
48高周波電源
52マーキング手段
54 検出手段
56 制御手段

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