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課題
解決手段
概要
背景
電子機器の小型、高性能化において、半導体チップに含まれる半導体集積回路等は高集積化、高速処理化を要求されてきた。このために、電子機器に搭載される半導体チップは、発熱量を増大する状況にある。一方、半導体チップの発熱は、動作特性の不安定化や性能の劣化、さらには内部の半導体素子の破損を招く懸念があることから、電子機器は冷却装置を搭載しており、冷却装置によって半導体チップが所定の温度以上とならないように冷却している。
一般的に、半導体チップの冷却は、発熱体である半導体チップにヒートシンクを接続し、半導体チップからの発熱をヒートシンクに熱伝達し、その熱を、ファンによってヒートシンクに送風される空気に熱伝達して放熱している。
しかし、発熱体とヒートシンクとの間の熱伝達において、両者の直接的な接触は、固体同士の接触のため界面熱抵抗が大きくなり、熱伝達性能を低下させることになる。よって、この問題の対応策として、熱伝導性グリースや、熱伝導性シートを介して発熱体にヒートシンクを熱的に接続させ、界面熱抵抗を小さくする工夫がなされている。しかし、この熱伝導性グリースや熱伝導性シートは、熱伝導率が小さく、熱伝導性能を十分に得ることのできない状況にある。
この界面熱抵抗と熱伝導率との両特性の向上を図る方法として、液体金属を使用する技術が開示されている。液体金属は、金属材料における高い熱伝導率を有し、また、使用温度範囲において液体状であることから、固体に対し広い面積で連続的な接触が図られ、低い界面熱抵抗を有することができる。
また、発熱体からの発熱を効率よく冷却するための冷却装置は、発熱体からより多くの熱を受熱するとともに、受熱した熱をより多く放熱する構造とすることが必要である。より多くの熱を放熱する方法としては、発熱体からの発熱を冷媒液に熱伝達して、冷媒液を循環させて熱移送し、任意の場所において大型のラジエータを設けて放熱する水冷方式が好適である。そのため、近年、この水冷方式による冷却装置の開発が盛んである。
ここで、この大型のラジエータによる放熱性能を十分に生かすには、発熱体から出来る限り多くの熱を受熱することが必要である。しかし、前述したように、従来の水冷装置は、一般的に、発熱体と受熱部部材との熱的な接続を、熱伝導性グリースや、熱伝導性シートによって行っていることから、熱伝達性能が十分ではない。よって、空冷方式の冷却はもとより、水冷方式の冷却装置においても、発熱体からの受熱性能の向上は、冷却装置として重要である。
前述したように、発熱体からの受熱部材への熱伝達において、低い界面熱抵抗、高い熱伝導率を有する液体金属を介して行えば、受熱性能の大幅な向上が図れる。
例えば、この液体金属を使用する技術として、特開昭58−199546号公報(特許文献1)、特開平6−88226号公報(特許文献2)、および特開2004−146819号公報(特許文献3)が開示されている。
しかし、上記の先行技術には解決しなければならない課題が存在している。例えば、特許文献1に記載されている半導体冷却装置では、半導体チップの背面に接して設けられ、液体金属を収容する容器と、外部に突起が設けられ、内部に冷媒液を通流する2次冷却体とを有し、容器に収容した液体金属が、容器と2次冷却体の突起とを熱的に接続する構成としている。しかし、特許文献1に記載の技術においては、半導体チップと、液体金属を収容している容器との熱的な接続部をペースト等で固定していることから、従来技術と同様に、半導体チップと容器との界面熱抵抗を小さくすることはできない。また、液体金属を容器に封止することに関しても記載されていない。
特許文献2に記載されている基板保持装置は、基板台の表面部に設けられていて液体金属を溜める液体金属溜めと、液体金属溜め内に、その上に押さえ付けられる基板の裏面に密着するように充填された液体金属と、液体金属溜めの周りにおいて液体金属が漏れないように基板台と基板との間をシールするパッキンと、基板台の内部に設けられていて冷媒が供給される冷媒通路とを備えて、基板と基板台との間の熱伝達手段を改善している。しかし、特許文献2に記載の技術においては、基板を基板台に保持する場合に液体金属の漏れない取り扱いや操作を行うための押し出し機構、あるいは液体金属を覆うフィルムを専用に付加している。これらは、装置の大型化の要因となり、また、熱伝達を阻害する要因となる。
特許文献3に記載されている伝熱方法は、半導体チップと熱拡散部との間に、高伝導率の液体金属の薄い層を設けて半導体チップを冷却しており、液体金属をシールにより封じ込める構造である。シールには液体金属による充填と液体によって占められた空間の排気とを可能にする開口部を設け、液体金属の充填後には、プラグを用いて開口部をシールする構成としている。また、シールは液体の膨張および収縮、相変化に対応できるとしている。しかし、特許文献3に記載の技術においては、熱拡散部を含む熱伝達デバイスを半導体チップ上で組み立て、液体金属の層を構成する状況であり、半導体チップの交換等において、液体金属や熱拡散部の取り扱い等についての作業性の問題が想定される。
概要
半導体チップの発熱を冷却する冷却装置における発熱体からヒートシンクへの熱伝達を向上するとともに、半導体チップの交換時の操作性等を容易とする電子機器を提供する。半導体チップ2に保持枠体7を付設して、保持枠体7を取り付けた状態で半導体チップ2を冷却装置6から着脱可能とする構成とし、冷却装置6の受熱部材61は、保持枠体7にシール部材8を介して結合される構造とし、保持枠体7と受熱部材61との結合によって、半導体チップ2の熱伝達面22と保持枠体7と受熱部材61とで密閉空間を形成し、密閉空間内において前記半導体チップ2の熱伝達面22と熱伝達面に対向する受熱部材61の内壁底面612とに熱的に接続するように液体金属5を収容させて、液体金属5によって、半導体チップ2の発熱を受熱部材61に熱伝達する構成とする。
目的
特開昭58—199546号公報
特開平6−88226号公報
特開2004−146819号公報
先行技術には、半導体チップに液体金属を接触させて界面熱抵抗を改善することの開示はあるものの、特に、半導体チップを交換する際等において、液体金属が漏れないように取り扱いのできる作業性のよい冷却装置は開示されておらず、このような液体金属の取り扱いや半導体チップ交換の作業性のよい冷却装置を提供する
効果
実績
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請求項1
半導体チップの発熱を冷却する冷却装置において、前記半導体チップは、保持枠体を接合されており、前記冷却装置の受熱部材は、前記保持枠体にシール部材を介して着脱可能に結合され、前記保持枠体と前記受熱部材との結合によって、前記半導体チップの熱伝達面と前記保持枠体と前記受熱部材とで密閉空間を形成し、前記密閉空間内において液体金属を収容して、前記液体金属によって、前記半導体チップの発熱を前記受熱部材に熱伝達することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
請求項2
請求項1に記載された冷却装置において、前記冷却装置は、前記液体金属を貯留する貯留部材と、前記液体金属を前記貯留部材から前記受熱部材に移送可能に接続した連接管とを備えることを特徴とする半導体チップ用の冷却装置。
請求項3
請求項2に記載された冷却装置において、さらに、前記受熱部材及び前記貯留部材に一体的に形成されたヒートシンク部材を備えることを特徴とする半導体チップ用の冷却装置。
請求項4
請求項2に記載された冷却装置において、前記冷却装置は、前記受熱部材を前記半導体チップに装着する以前においては、前記液体金属の全量を前記貯留部材に収容し、前記受熱部材を前記半導体チップに装着した後において、前記貯留部材が押圧されると、前記液体金属の少なくとも一部を前記貯留部材から前記受熱部材に移送することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
請求項5
請求項1乃至4のいずれかに記載された冷却装置において、前記保持枠体に配管により接続された受入容器を備え、前記半導体チップからの熱伝達により膨張した前記液体金属の一部を前記受入容器に移送することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
請求項6
請求項5に記載された冷却装置において、前記受入容器としてアキュムレータを用い、該アキュムレータが押圧されると、前記受熱部材に収容された液体金属を前記貯留部材に移送することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
請求項7
請求項5に記載された冷却装置において、前記受入容器を、前記保持枠体と前記配管の接続部よりも上方に設置することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
請求項8
請求項1に記載された冷却装置を搭載した電子機器。
技術分野
0001
本発明は、トランジスタ等の半導体素子から構成される半導体チップ等の発熱体を載置する機器に係わり、半導体チップ等の冷却を行うための冷却装置を小型で、効率良い装置として備える電子機器に関するものである。
背景技術
0002
電子機器の小型、高性能化において、半導体チップに含まれる半導体集積回路等は高集積化、高速処理化を要求されてきた。このために、電子機器に搭載される半導体チップは、発熱量を増大する状況にある。一方、半導体チップの発熱は、動作特性の不安定化や性能の劣化、さらには内部の半導体素子の破損を招く懸念があることから、電子機器は冷却装置を搭載しており、冷却装置によって半導体チップが所定の温度以上とならないように冷却している。
一般的に、半導体チップの冷却は、発熱体である半導体チップにヒートシンクを接続し、半導体チップからの発熱をヒートシンクに熱伝達し、その熱を、ファンによってヒートシンクに送風される空気に熱伝達して放熱している。
0003
しかし、発熱体とヒートシンクとの間の熱伝達において、両者の直接的な接触は、固体同士の接触のため界面熱抵抗が大きくなり、熱伝達性能を低下させることになる。よって、この問題の対応策として、熱伝導性グリースや、熱伝導性シートを介して発熱体にヒートシンクを熱的に接続させ、界面熱抵抗を小さくする工夫がなされている。しかし、この熱伝導性グリースや熱伝導性シートは、熱伝導率が小さく、熱伝導性能を十分に得ることのできない状況にある。
この界面熱抵抗と熱伝導率との両特性の向上を図る方法として、液体金属を使用する技術が開示されている。液体金属は、金属材料における高い熱伝導率を有し、また、使用温度範囲において液体状であることから、固体に対し広い面積で連続的な接触が図られ、低い界面熱抵抗を有することができる。
0004
また、発熱体からの発熱を効率よく冷却するための冷却装置は、発熱体からより多くの熱を受熱するとともに、受熱した熱をより多く放熱する構造とすることが必要である。より多くの熱を放熱する方法としては、発熱体からの発熱を冷媒液に熱伝達して、冷媒液を循環させて熱移送し、任意の場所において大型のラジエータを設けて放熱する水冷方式が好適である。そのため、近年、この水冷方式による冷却装置の開発が盛んである。
ここで、この大型のラジエータによる放熱性能を十分に生かすには、発熱体から出来る限り多くの熱を受熱することが必要である。しかし、前述したように、従来の水冷装置は、一般的に、発熱体と受熱部部材との熱的な接続を、熱伝導性グリースや、熱伝導性シートによって行っていることから、熱伝達性能が十分ではない。よって、空冷方式の冷却はもとより、水冷方式の冷却装置においても、発熱体からの受熱性能の向上は、冷却装置として重要である。
0005
前述したように、発熱体からの受熱部材への熱伝達において、低い界面熱抵抗、高い熱伝導率を有する液体金属を介して行えば、受熱性能の大幅な向上が図れる。
例えば、この液体金属を使用する技術として、特開昭58−199546号公報(特許文献1)、特開平6−88226号公報(特許文献2)、および特開2004−146819号公報(特許文献3)が開示されている。
0006
しかし、上記の先行技術には解決しなければならない課題が存在している。例えば、特許文献1に記載されている半導体冷却装置では、半導体チップの背面に接して設けられ、液体金属を収容する容器と、外部に突起が設けられ、内部に冷媒液を通流する2次冷却体とを有し、容器に収容した液体金属が、容器と2次冷却体の突起とを熱的に接続する構成としている。しかし、特許文献1に記載の技術においては、半導体チップと、液体金属を収容している容器との熱的な接続部をペースト等で固定していることから、従来技術と同様に、半導体チップと容器との界面熱抵抗を小さくすることはできない。また、液体金属を容器に封止することに関しても記載されていない。
0007
特許文献2に記載されている基板保持装置は、基板台の表面部に設けられていて液体金属を溜める液体金属溜めと、液体金属溜め内に、その上に押さえ付けられる基板の裏面に密着するように充填された液体金属と、液体金属溜めの周りにおいて液体金属が漏れないように基板台と基板との間をシールするパッキンと、基板台の内部に設けられていて冷媒が供給される冷媒通路とを備えて、基板と基板台との間の熱伝達手段を改善している。しかし、特許文献2に記載の技術においては、基板を基板台に保持する場合に液体金属の漏れない取り扱いや操作を行うための押し出し機構、あるいは液体金属を覆うフィルムを専用に付加している。これらは、装置の大型化の要因となり、また、熱伝達を阻害する要因となる。
0008
特許文献3に記載されている伝熱方法は、半導体チップと熱拡散部との間に、高伝導率の液体金属の薄い層を設けて半導体チップを冷却しており、液体金属をシールにより封じ込める構造である。シールには液体金属による充填と液体によって占められた空間の排気とを可能にする開口部を設け、液体金属の充填後には、プラグを用いて開口部をシールする構成としている。また、シールは液体の膨張および収縮、相変化に対応できるとしている。しかし、特許文献3に記載の技術においては、熱拡散部を含む熱伝達デバイスを半導体チップ上で組み立て、液体金属の層を構成する状況であり、半導体チップの交換等において、液体金属や熱拡散部の取り扱い等についての作業性の問題が想定される。
先行技術
0009
特開昭58—199546号公報
特開平6−88226号公報
特開2004−146819号公報
発明が解決しようとする課題
0010
先行技術には、半導体チップに液体金属を接触させて界面熱抵抗を改善することの開示はあるものの、特に、半導体チップを交換する際等において、液体金属が漏れないように取り扱いのできる作業性のよい冷却装置は開示されておらず、このような液体金属の取り扱いや半導体チップ交換の作業性のよい冷却装置を提供することが求められている。
課題を解決するための手段
0011
上記課題を解決するために、本発明に係る冷却装置は、次の構成を備える。すなわち、
半導体チップの発熱を冷却する冷却装置において、前記半導体チップは、保持枠体を接合されており、前記冷却装置の受熱部材は、前記保持枠体にシール部材を介して着脱可能に結合され、前記保持枠体と前記受熱部材との結合によって、前記半導体チップの熱伝達面と前記保持枠体と前記受熱部材とで密閉空間を形成し、前記密閉空間内において液体金属を収容して、前記液体金属によって、前記半導体チップの発熱を前記受熱部材に熱伝達することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
発明の効果
0012
本発明の冷却装置の構成によって、半導体チップ等の発熱体からの発熱を冷却する冷却装置を小型の構造とすることができ、発熱体からヒートシンクへの熱伝達を向上させ、半導体チップ等の発熱体の交換時における作業性、操作性等を改善することができる。
図面の簡単な説明
0013
本実施形態における電子機器を模式的に例示した概略構成図である。
本実施形態における半導体チップと冷却装置との組み立て状態を例示する構成図である。
図2に示す冷却装置の分解斜視図である。
本実施形態における冷却装置が、半導体チップに装着される前の状態を例示する模式図である。
本実施形態における冷却装置が、半導体チップに装着された状態を例示する模式図である。
本実施形態における半導体チップと冷却装置との組み立て状態を例示する構成図である。
実施例
0014
以下、本発明における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態における電子機器を模式的に例示した概略構成図である。図1に示すように、電子機器1は、発熱体である半導体チップ2(例えば、CPU)を載置した回路基板3、および電子部品や回路部品12を載置した他の回路基板11などを筐体4内に搭載している。さらに、筐体4の内部には、半導体チップ2を冷却するための冷却装置6を搭載している。
冷却装置6は、図1の例では、半導体チップ2からの熱を受ける受熱部材61、受熱部材61が受けた熱を放熱するためのヒートシンク62や冷却用ファン13を備え、さらに、後述する貯留部材63、保持枠体7、アキュムレータ9等を備えている。
図1の例では、回路基板3の下方に半導体チップ2が配置され、半導体チップ2の下方に受熱部材61が配置され、受熱部材61の下方にヒートシンク62が配置されているが、本発明は、このような配置に限定されるものではない。
0015
図2は、本実施形態における半導体チップと冷却装置との組み立て状態を例示する構成図である。また、図3は、図2に示す冷却装置の分解斜視図である。各図において、説明を分かり易くするために、構成部品の一部は割愛して示している。
本発明は、発熱体と受熱部材との熱伝達の性能の向上等に関する技術であり、本実施の形態において、ヒートシンク62は、受熱部材から熱伝達の説明を分かり易くするために空冷方式のヒートシンクとして説明しているが、ヒートシンク部は空冷方式に限定されるものではない。
図2に示すように、回路基板3上に載置された半導体チップ2は、半導体チップ2の周辺側部21において、保持枠体7の側壁部71と接合部材(図示しない)によって固着されている。また、半導体チップ2の熱伝達面22を、保持枠体7の内側部において、保持枠体7の下方位置に突出させている。保持枠体7は、冷却装置6の一部を構成するものである。
0016
一方、図2、及び図3に示すように、冷却装置6は、更に、受熱部材61と、受熱部材61の外側に一体的に形成されたヒートシンク62を備えている。受熱部材61は、断面が略凹状の容器であって、液体金属5を収容するものであり、保持枠体7と結合するための結合部である鍔部611を備える。保持枠体7の鍔部72と受熱部材61の鍔部611とは、シール部材8を介してネジ等の締結部材(図示しない)により締結され、結合する。シール部材8は、受熱部材61の鍔部611の平面に形成された溝613に嵌合されて設置されている。このようにして、半導体チップ2と保持枠体7と受熱部材61との3つの部材によって囲まれた内部を、略密閉の密閉空間として構成している。後述するように、この密閉空間に液体金属5を導入することにより、半導体チップ2を冷却する。ここで、半導体チップ2と保持枠体7と受熱部材61との3つの部材によって形成された密閉空間における密閉とは、半導体チップ2と保持枠体7と受熱部材61との3つの部材によって囲まれた密閉空間に導入された液体金属5が、漏出しない程度以上の密閉度を意味するものとする。
0017
なお、受熱部材61は、熱伝導性の良い銅材等の金属製材料によって形成されることが好ましい。また、ヒートシンク62は、熱伝達の観点において、前述のように受熱部材61と同一部材にて一体的に形成されることが好ましい。さらに、図3に示すように、後述する貯留部材63と受熱部材61とを保持する部材である板状部材622にヒートシンク62を形成し、一体的な構造として構成してもよい。
また、シール部材8を設置するための溝は、上記説明では、受熱部材61の鍔部611の平面に形成するものとしたが、保持枠体7の鍔部72に設けることも可能である。
0018
次に、保持枠体7側に関連して設置される構造物について説明する。保持枠体7は、図2の例では断面がL字形状であり、半導体チップ2と固着するための接合部である側壁部71と、受熱部材61の鍔部611と対向し、受熱部材61と結合するための結合部である鍔部72を有する。また、保持枠体7の鍔部72には、配管73を固着して設けている。配管73は、前記半導体チップ2と保持枠体7と受熱部材61との3つの部材によって囲まれた密閉空間、つまり受熱部材61の内側と、後述するアキュムレータ9とを接続する。
なお、配管73は、受熱部材61の内側に通じるものであれば、側壁部71に接続しても良く、また、鍔部72、あるいは側壁部71のいずれかに設けられる接続部材(図示せず)によって着脱自在に接続される構造であっても良い。
また、保持枠体7は、図6に示すように、半導体チップ2が薄い、すなわち、その厚さ(図6においては、半導体チップ2の上下方向のサイズ)が小さい場合は、半導体チップ2の熱伝達面22の周辺部と接合するようにすることも可能である。
0019
さらに、冷却装置6は、受熱部材61と隣接して配置される貯留部材63を備え、受熱部材61と貯留部材63とは、連接管64によって接続されている。貯留部材63の内側には液体金属5が収容されており、液体金属5は、連接管64を通じて受熱部材61の内側、つまり、前記半導体チップ2と保持枠体7と受熱部材61との3つの部材によって囲まれた密閉空間に導入される。前述したように、貯留部材63を、受熱部材61のヒートシンク62を形成する板状部材622の伸延した部分(図3において二点鎖線で示す部分)に保持される構成とすることで、受熱部材61、ヒートシンク62、貯留部材63が、冷却装置6として一体的に構成できる。このように、貯留部材63は、フィン状のヒートシンク62を受熱部材61において一体的に形成する場合には、受熱部材61のヒートシンク62をそのまま貯留部材63の方向(図3において二点鎖線の方向)に伸延させ、受熱部材61と同一の材質によって一体的に形成しても良い。もちろん、この場合には、伸延された板状部材622において、貯留部材63の領域にもフィン状のヒートシンク62を形成することによって、放熱面積の拡大を図ることができる。
また、貯留部材63の上面631部には、下方への押圧によって弾性変形する、例えば膜状の弾性部材632を設けている。弾性部材632は、押圧することにより、貯留部材63内の液体金属5を連接管64内へ押し出すためのもので、薄い金属板等により構成することができる。弾性部材632が押圧されると、貯留部材63内の空気圧及び弾性部材632により、液体金属5を押下することにより、液体金属5を連接管64内へ押し出す。
連接管64には、後述する液留め部材10(図2、図3においては記載せず)を有している。
0020
さらに、配管73の保持枠体7と接続されている側と対向する他端には、アキュムレータ9が接続されている。アキュムレータ9は、後述するように、半導体チップ2からの発熱により、受熱部材61内の液体金属5が体積膨張したときに、配管73を通して、該膨張した液体金属5の一部を受け入れる受入容器として機能する。また、アキュムレータ9が押圧されると、受熱部材61内の液体金属5を、貯留部材63に戻すことができるものである。アキュムレータ9は、配管73を着脱自在に接続するための接続部91を有している。アキュムレータ9の上部、あるいは外周部には空気吸入弁92を有している。空気吸入弁92により、アキュムレータ9の内外の空気が流通可能となっている。すなわち、アキュムレータ9を押圧して容積を縮小することによって、アキュムレータ9内の空気によって空気吸入弁92は外部方向に向かって押圧され閉鎖する。アキュムレータ内部の空気は、配管73側からアキュムレータ9から排出される。アキュムレータ9の押圧を解除することによって、アキュムレータ9の容積が増加されるが、アキュムレータ9内部の圧力が外部の圧力より小さいことから空気吸入弁92がアキュムレータ9の内側に向かって押圧され開放となり、外部の空気が空気吸入弁92よりアキュムレータ内に吸入される。
0021
次に、冷却装置6が半導体チップ2に装着される前の状態と、冷却装置6が半導体チップ2に装着された状態とについて、順を追って説明する。
図4は、本実施形態における冷却装置が、半導体チップに装着される前の状態を例示する模式図である。図5は、本実施形態における冷却装置が、半導体チップに装着された状態を例示する模式図である。各部材の形状や大きさは、説明を分かり易くするために記述しており、実体を特定するものではない。
図4に示すように、半導体チップ2に装着する以前の冷却装置6においては、液体金属5(ハッチング部分)の全量を貯留部材63内に収容している。また、連接管64に液留め部材10が設けられている。液留め部材10は、連接管64の流路途中において、液留駒101をバネ102によって、矢印(a)方向に押圧、偏倚して流路を遮断する構成としている。すなわち、液留め部材10によって、液体金属5が連接管64を通して受熱部材61に流出されないようにしている。このことから、半導体チップ2に対する冷却装置6の着脱の作業時において、冷却装置6における液体金属5の漏洩等の問題を回避することができる。
0022
次に、冷却装置6を半導体チップ2に装着した状態について、図5を用いて説明する。一部の説明は前述と重複するが、図5に示すように、冷却装置6は、受熱部材61を半導体チップ2に対向して配置し、半導体チップ2に固着されている保持枠体7の鍔部72と、受熱部材61の鍔部611とをシール部材8を介在して、図示しないネジ等によって押圧しながら締結する。この保持枠体7と受熱部材61との締結によって、前述したように、半導体チップ2の熱伝達面22と受熱部材61と保持枠体7とによる密閉空間が形成される。また、半導体チップ2の熱伝達面22は、該密閉空間内に位置して配置されることになる。この受熱部材61の内壁底面612と半導体チップ2の熱伝達面22との間の距離は、両者を固体接触させたときの固体部分の接触において生じる間隙を埋め尽くし、界面熱抵抗を小さくするに十分な数100μm程度以上あれば良い。
0023
受熱部材61と半導体チップ2が対向して設置され、前記密閉空間が形成された後、貯留部材63に設けられた弾性部材632を下方に押圧、すなわち、図5の矢印(c)方向に押圧して、貯留部材63の内部に収容している液体金属5を連接管64に通流させる。液体金属5が連接管64内に押し出されて移動する力によって、液留駒101がバネ102の偏倚力に抗して連接管64の流路より退避、すなわち、図5の矢印(b)方向に退避され、液体金属5が受熱部材61側に移送される。図5に示すように、液体金属5が、半導体チップ2の熱伝達面22、および受熱部材61の内壁対向面612に接触する状態となるまで、液体金属5を貯留部材63から移動させる。その際、液体金属5は、受熱部材61及び半導体チップ2の隙間において熱伝達の界面材料となるように十分に充填される必要がある。そのために、貯留部材63等において、液体金属5の移動量を確認できるセンサーや装置(図示せず)を有していることが好ましい。
所定量の液体金属5が受熱部材61内に移動されると、弾性部材632の押圧を停止することにより、液体金属5への圧力が解除され、液留駒101は、バネ102によって、連接管64の流路内に復帰して流路を遮断する。このとき、貯留部材63内、受熱部材61内、あるいは連接管64の流路内に液体金属5が滞留したままであっても良い。
0024
ここで、液体金属5は、半導体チップ2の熱伝達面22の面積である約数100mm2と接触させるに足りる量であればよいので、半導体チップ2と受熱部材61との隙間空間である距離が数100μmの空間に充填する約数100mm3分の容量を移動させるに過ぎない。したがって、貯留部材63に設けた弾性部材632を押圧することで移送できるものである。
このように、図5の状態において、半導体チップ2の熱伝達面22と受熱部材61の内壁底面612との間に液体金属5が浸漬され、半導体チップ2からの発熱が、界面材料である液体金属5によって、受熱部材61に熱伝達されることで高性能な冷却が可能となる。
0025
次に、半導体チップ2からの発熱を冷却装置6によって冷却する作用について説明する。受熱部材61に充填された液体金属5は、液体のため、半導体チップ2の熱伝達面22、および受熱部材61の内壁底面612に対して低い界面熱抵抗の作用をなす界面材料として構成されている。さらには、液体金属5は、例えば、ガリューム合金等に代表されるような材料を使用することによって、熱伝導率は約50W/m・Kを実現することができる。これは、熱伝導性グリース等の約1W/m・Kと比較しても非常に大きな熱伝導性を有することを示している。すなわち、半導体チップ2からの発熱は、熱伝達面22から液体金属5に低界面熱抵抗状態において熱伝達され、液体金属5の高熱伝導特性によって液体金属5内を熱伝導され、さらには液体金属5から低界面熱抵抗状態において受熱部材61に熱伝達されることになる。
以上のように、熱伝達部材として液体金属5を使用することによって半導体チップ2の発熱を冷却装置6の受熱部材61に高効率に熱伝達できる。
0026
受熱部材61に熱伝達された熱は、受熱部材61と一体に形成されているヒートシンク62に熱伝導され、ファンによって送風される冷却風に熱伝達されて放熱される。このように、発熱体からより多くの熱を受熱することに加えて、放熱性能を向上することによって、さらに高性能の冷却を行うことができる。よって、ファンによる冷却風への熱伝達による冷却に替えて、冷媒液によって熱移送して大型のラジエータにより放熱する方法としても良いことは言及するまでもない。
0027
一方、この半導体チップ2からの発熱を受熱した液体金属5は、温度上昇に伴って体積膨張を生じる。ここで、受熱部材61と締結された保持枠体7には、前述したように配管73が接続され、配管73の他端には、アキュムレータ9が接続部91を介して接続されている。このアキュムレータ9には、受熱部材61内の液体金属5の温度上昇によって生じる体積膨張に対し、受熱部材61との接続された配管73を通して、液体金属5の一部を移送させ流入することができる。これによって、受熱部材61内の密閉空間内に充填した界面材料である液体金属5の体積膨張の圧力増加による問題を回避することができる。
0028
また、故障等により、電子機器1に搭載された半導体チップ2の取替えが必要になった際には、冷却装置6を半導体チップ2から取り外すことになる。この場合、アキュムレータ9を押圧して、空気吸入弁92より取り込んだ空気の圧力によって、受熱部材61内に充填されている液体金属5を、連接管64を通して貯留部材63の方向、すなわち、図5の白抜き矢印(d)方向の反対方向に通流させて、液留駒101をバネ102の偏倚力に抗して連接管64の流路より矢印(b)方向に退避させ、液体金属5を貯留部材63に移送させる。このように、液体金属9を受熱部材61から排出することによって、上方部が開放された略凹状の容器である受熱部材61が液体金属5を保有しないことになるので、冷却装置6の交換等の取り扱い時に、液体金属5の漏洩等の問題を回避することができる。
また、半導体チップ2を冷却装置6から切り離すには、配管73をアキュムレータ9の接続部91において取り外し、次に、回路基板3を電子機器1から取り外せばよい。なお、上記説明では、配管73をアキュムレータ9の接続部91において取り外すようにしているが、保持枠体7側に配管73を取り外すための接続部を設けてもよいことは勿論である。
0029
以上のような構成によって、半導体チップの発熱を冷却する冷却装置において、低い界面熱抵抗、高い熱伝導率を有する液体金属によって発熱体からヒートシンクへの熱伝達を向上して効率よく冷却し、かつ半導体チップの交換時における液体金属の漏洩を回避して冷却装置6の取り扱いを容易にすることができる。また、以上のような構成を用いた冷却装置により、発熱体の冷却を可能とした電子機器を提供することができる。
なお、上記の実施形態は、電子機器に搭載された半導体チップを冷却する冷却装置として記載しているが、本発明の冷却装置は、電子機器に搭載される半導体チップに限定されものではなく、近年、急激に市場を拡大している太陽光発電の半導体パネルにおける発熱体の冷却においても対応可能とされるものである。
0030
以上の、本明細書の記載から、次の発明を把握することができる。すなわち、
第1の発明は、半導体チップの発熱を冷却する冷却装置において、前記半導体チップは、保持枠体を接合されており、前記冷却装置の受熱部材は、前記保持枠体にシール部材を介して着脱可能に結合され、前記保持枠体と前記受熱部材との結合によって、前記半導体チップの熱伝達面と前記保持枠体と前記受熱部材とで密閉空間を形成し、前記密閉空間内において液体金属を収容して、前記液体金属によって、前記半導体チップの発熱を前記受熱部材に熱伝達することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
このような構成により、半導体チップを効果的に冷却するとともに、半導体チップの交換時における作業性を改善することができる。
0031
第2の発明は、第1の発明に記載された冷却装置において、前記冷却装置は、前記液体金属を貯留する貯留部材と、前記液体金属を前記貯留部材から前記受熱部材に移送可能に接続した連接管とを備えることを特徴とする半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、半導体チップに対する冷却装置の装着の作業時において、冷却装置における液体金属の漏洩等の問題を回避することができる。
第3の発明は、第2の発明に記載された冷却装置において、さらに、前記受熱部材及び前記貯留部材に一体的に形成されたヒートシンク部材を備えることを特徴とする半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、放熱効率を向上するとともに、放熱面積の拡大を図ることができる。
第4の発明は、第2の発明に記載された冷却装置において、前記冷却装置は、前記受熱部材を前記半導体チップに装着する以前においては、前記液体金属の全量を前記貯留部材に収容し、前記受熱部材を前記半導体チップに装着した後において、前記貯留部材が押圧されると、前記液体金属の少なくとも一部を前記貯留部材から前記受熱部材に移送することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、半導体チップに対する冷却装置の装着の作業時において、冷却装置における液体金属の漏洩等の問題をさらに改善することができる。
0032
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかに記載された冷却装置において、前記保持枠体に配管により接続された受入容器を備え、前記半導体チップからの熱伝達により膨張した前記液体金属の一部を前記受入容器に移送することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、受熱部材内の密閉空間内に充填した液体金属5の体積膨張の圧力増加による問題を回避することができる。
第6の発明は、第5の発明に記載された冷却装置において、前記受入容器としてアキュムレータを用い、該アキュムレータが押圧されると、前記受熱部材に収容された液体金属を前記貯留部材に移送することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、半導体チップに対する冷却装置の取り外しの作業時において、冷却装置における液体金属の漏洩等の問題を改善することができる。
0033
第7の発明は、第5の発明に記載された冷却装置において、前記受入容器を、前記保持枠体と前記配管の接続部よりも上方に設置することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、前記受入容器内や前記配管内の液体金属の重量により、受熱部材内の液体金属に圧力を加えることができ、液体金属と半導体チップ、あるいは液体金属と受熱部材との間の接触度、熱伝導度を高めることができる。
第8の発明は、第1の発明に記載された冷却装置を搭載した電子機器。
0034
第9の発明は、半導体チップの発熱を冷却する冷却装置において、前記半導体チップは、回路基板上に保持枠体を一体的に接合して付設されてなり、前記冷却装置の受熱部材は、前記保持枠体にシール部材を介して結合され、前記半導体チップと着脱可能とした構造であって、前記保持枠体と前記受熱部材との結合によって、前記半導体チップの熱伝達面と前記保持枠体と前記受熱部材とで密閉空間を形成し、前記半導体チップの熱伝達面が、前記受熱部材の内壁底面に対向して配設され、前記密閉空間内において前記半導体チップの熱伝達面と前記熱伝達面に対向する受熱部材の内壁底面とを熱的に接続するように液体金属を収容し、前記液体金属によって、前記半導体チップの発熱を前記受熱部材に熱伝達することを特徴とした半導体チップ用の冷却装置。
このような構成により、半導体チップを効果的に冷却するとともに、半導体チップの交換時における作業性を改善することができる。
0035
第10の発明は、発明9に記載された冷却装置において、前記冷却装置は、さらに、前記液体金属を貯留する貯留部材と、前記液体金属を前記貯留部材から前記受熱部材に移送可能に接続する連接管と、前記受熱部材、あるいは前記受熱部材および前記貯留部材に一体的に形成されたヒートシンク部材とを備えることを特徴とする半導体チップ用の冷却装置。このような構成により、半導体チップに対する冷却装置の装着の作業時において、冷却装置における液体金属の漏洩等の問題を回避することができる。
0036
1・・・電子機器、 2・・・半導体チップ、 3・・・回路基板、 4・・・筐体、5・・・液体金属、 6・・・冷却装置、 61・・・受熱部材、 611・・・鍔部、 62・・・ヒートシンク、 63・・・貯留部材、 632・・・弾性部材、 64・・・連接管、7・・・保持枠体、 72・・・鍔部、 73・・・配管、 8・・・シール部材、 9・・・アキュムレータ、 91・・・接続部、 92・・・空気吸入弁、 10・・・液留め部材。