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課題

本発明の課題は、生体投与しても副作用の懸念がほとんどなく、かつ、十分なトリプシノーゲン活性抑制作用(又はトリプシン阻害作用)を発揮するトリプシノーゲン活性化抑制剤、あるいは、膵炎の予防・治療剤等を提供することにある。

解決手段

ガラクトサミン又はその誘導体を利用することを特徴とする。ガラクトサミン又はその誘導体は、トリプシンによる、トリプシノーゲンからトリプシンへの分解(トリプシノーゲンの活性化)を抑制する効果を有しているため、トリプシノーゲン活性化抑制剤や膵炎の予防・治療剤として用いることができる。

概要

背景

近年、食文化の欧米化が進んだ結果、脂肪分酒類の過剰摂取による急性及び慢性膵炎患者が増加している。膵炎の発症メカニズムは完全には判明していないが、膵液消化酵素によって、膵臓自体が消化されて炎症を起こすという点では共通している。本来、膵臓トリプシンの不活性前駆体であるトリプシノーゲンは、膵液中に分泌され、膵管を通って十二指腸に達し、そこで発現されているエンテロキナーゼによって活性化される。ところが何らかの原因によりトリプシノーゲンが膵臓中で早期に活性化されてトリプシンに変化すると、そのトリプシンが膵臓中の他のプロテアーゼ前駆体(例えば、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、プロエラスターゼ、プロカルボキシペプチダーゼ、及び、プロテアーゼにより活性化されるレセプター等(非特許文献1及び2))を連鎖的に活性化し、活性化されたプロテイナーゼ膵臓細胞破壊誘導することによって、急性膵炎を発症する。また、このような炎症がより緩やかに繰り返し長期間にわたって起こると、膵臓の正常な細胞が徐々に破壊されていき、慢性膵炎を発症する。

これら膵炎の予防・治療剤として、様々なトリプシン阻害剤が開発されている。例えば特許文献1には、ウイッチヘーゼルローズマリーレンギョウムクゲチョウジバナバ、フウ、セイヨウヤマハッカ及びザクロから成る群より選ばれる少なくとも1種類の植物又はその抽出物を含有するトリプシン阻害剤が記載されており、また、特許文献2には、グアニジノ安息香酸誘導体からなるトリプシン阻害剤が記載されている。さらに、他のトリプシン阻害剤として、「フオイパン」(登録商標)としても知られ、慢性膵炎における急性症状の緩解や術後逆流性食道炎に対して主に用いられるカモスタットメシル酸塩や、「エフオーワイ」(登録商標)としても知られ、急性膵炎、汎発性血管内血液凝固症に対して主に用いられるガベキサートメシル酸塩が知られている。しかし、天然成分由来のトリプシン阻害剤では、未だ十分な効果が得られているとはいえず、また、フオイパン等の合成化合物からなるトリプシン阻害剤においては、副作用の問題があり、改善の余地があった。

一方、本発明者らは、ウシの膵臓のトリプシン(BPT)やブタのそれ(PPT)と、糖タンパク質のN−グリカンとの結合性を調べた。非特許文献3には、その結果として、BPT及びPPTのいずれも、17種類の糖−ビオチニルポリアクリルアミド(BP)プローブ(ポリアクリルアミド骨格の−CONH2基に、短いスペーサー(−OCH2CH2CH2−)を介して糖をグリコシド結合共有結合させたプローブ;例えばα−マンノースBPプローブについて図5参照)のうち、α−マンノース(α−Man);α−マンノース−6−リン酸(α−Man−6P);N−アセチルノイラミン酸α2,6ガラクトースβ1,4グルコース(Neu5Acα2,6Galβ1,4Glc);α−ガラクトース(α−Gal);又は、β−グルコース(β−Glc);のプローブには、高い結合力を示したが、BPT及びPPTのいずれもα−N−アセチルガラクトサミン(α−GalNAc)等には結合しなかった、と記載されている(非特許文献3の32ページの“RESULTS”の第1段落)。

以上のような非特許文献3の結果を考慮すると、BPTやPPTのいずれにも結合しなかった「α-GalNAcの1位にスペーサーが結合した化合物」(α−GalNAcの1位のヒドロキシ基ブトキシ基置換された化合物)をはじめとする、α−GalNAcの1位のヒドロキシ基がアルコキシ基に置換された化合物等が、トリプシノーゲンやトリプシンの活性の阻害剤や促進剤として機能する可能性はきわめて低いと考えられた。

概要

本発明の課題は、生体投与しても副作用の懸念がほとんどなく、かつ、十分なトリプシノーゲン活性化抑制作用(又はトリプシン阻害作用)を発揮するトリプシノーゲン活性化抑制剤、あるいは、膵炎の予防・治療剤等を提供することにある。ガラクトサミン又はその誘導体を利用することを特徴とする。ガラクトサミン又はその誘導体は、トリプシンによる、トリプシノーゲンからトリプシンへの分解(トリプシノーゲンの活性化)を抑制する効果を有しているため、トリプシノーゲン活性化抑制剤や膵炎の予防・治療剤として用いることができる。なし

目的

本発明の課題は、生体に投与しても副作用の懸念がほとんどなく、かつ、十分なトリプシノーゲン活性化抑制作用(又はトリプシン阻害作用)を発揮するトリプシノーゲン活性化抑制剤、あるいは、膵炎の予防・治療剤等を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

ガラクトサミン又はその誘導体を含有することを特徴とするトリプシノーゲン活性化抑制剤

請求項2

ガラクトサミン誘導体を含有することを特徴とする膵炎の予防・治療剤

請求項3

トリプシノーゲン活性化抑制剤の製造におけるガラクトサミン又はその誘導体の使用。

請求項4

膵炎の予防・治療剤の製造におけるガラクトサミン誘導体の使用。

技術分野

0001

本発明は、トリプシノーゲン活性化抑制剤や、膵炎の予防・治療剤等に関する。

背景技術

0002

近年、食文化の欧米化が進んだ結果、脂肪分酒類の過剰摂取による急性及び慢性の膵炎の患者が増加している。膵炎の発症メカニズムは完全には判明していないが、膵液消化酵素によって、膵臓自体が消化されて炎症を起こすという点では共通している。本来、膵臓トリプシンの不活性前駆体であるトリプシノーゲンは、膵液中に分泌され、膵管を通って十二指腸に達し、そこで発現されているエンテロキナーゼによって活性化される。ところが何らかの原因によりトリプシノーゲンが膵臓中で早期に活性化されてトリプシンに変化すると、そのトリプシンが膵臓中の他のプロテアーゼ前駆体(例えば、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、プロエラスターゼ、プロカルボキシペプチダーゼ、及び、プロテアーゼにより活性化されるレセプター等(非特許文献1及び2))を連鎖的に活性化し、活性化されたプロテイナーゼ膵臓細胞破壊誘導することによって、急性膵炎を発症する。また、このような炎症がより緩やかに繰り返し長期間にわたって起こると、膵臓の正常な細胞が徐々に破壊されていき、慢性膵炎を発症する。

0003

これら膵炎の予防・治療剤として、様々なトリプシン阻害剤が開発されている。例えば特許文献1には、ウイッチヘーゼルローズマリーレンギョウムクゲチョウジバナバ、フウ、セイヨウヤマハッカ及びザクロから成る群より選ばれる少なくとも1種類の植物又はその抽出物を含有するトリプシン阻害剤が記載されており、また、特許文献2には、グアニジノ安息香酸誘導体からなるトリプシン阻害剤が記載されている。さらに、他のトリプシン阻害剤として、「フオイパン」(登録商標)としても知られ、慢性膵炎における急性症状の緩解や術後逆流性食道炎に対して主に用いられるカモスタットメシル酸塩や、「エフオーワイ」(登録商標)としても知られ、急性膵炎、汎発性血管内血液凝固症に対して主に用いられるガベキサートメシル酸塩が知られている。しかし、天然成分由来のトリプシン阻害剤では、未だ十分な効果が得られているとはいえず、また、フオイパン等の合成化合物からなるトリプシン阻害剤においては、副作用の問題があり、改善の余地があった。

0004

一方、本発明者らは、ウシの膵臓のトリプシン(BPT)やブタのそれ(PPT)と、糖タンパク質のN−グリカンとの結合性を調べた。非特許文献3には、その結果として、BPT及びPPTのいずれも、17種類の糖−ビオチニルポリアクリルアミド(BP)プローブ(ポリアクリルアミド骨格の−CONH2基に、短いスペーサー(−OCH2CH2CH2−)を介して糖をグリコシド結合共有結合させたプローブ;例えばα−マンノースBPプローブについて図5参照)のうち、α−マンノース(α−Man);α−マンノース−6−リン酸(α−Man−6P);N−アセチルノイラミン酸α2,6ガラクトースβ1,4グルコース(Neu5Acα2,6Galβ1,4Glc);α−ガラクトース(α−Gal);又は、β−グルコース(β−Glc);のプローブには、高い結合力を示したが、BPT及びPPTのいずれもα−N−アセチルガラクトサミン(α−GalNAc)等には結合しなかった、と記載されている(非特許文献3の32ページの“RESULTS”の第1段落)。

0005

以上のような非特許文献3の結果を考慮すると、BPTやPPTのいずれにも結合しなかった「α-GalNAcの1位にスペーサーが結合した化合物」(α−GalNAcの1位のヒドロキシ基ブトキシ基置換された化合物)をはじめとする、α−GalNAcの1位のヒドロキシ基がアルコキシ基に置換された化合物等が、トリプシノーゲンやトリプシンの活性の阻害剤や促進剤として機能する可能性はきわめて低いと考えられた。

0006

特開2005−053818号公報
特公昭60−49185号公報

先行技術

0007

Pancreas, 21, 57-62 (2000)
Curr. Opin. Struct. Biol., 2, 713-720 (1992)
J. Biol. Chem., 281, 8528-8538 (2006)

発明が解決しようとする課題

0008

本発明の課題は、生体投与しても副作用の懸念がほとんどなく、かつ、十分なトリプシノーゲン活性化抑制作用(又はトリプシン阻害作用)を発揮するトリプシノーゲン活性化抑制剤、あるいは、膵炎の予防・治療剤等を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、BPTやBPTG(ウシトリプシノーゲン)と、糖との結合性を調べるために、非特許文献3と同様に、糖−BPプローブを用いたアッセイを行なった。この糖−BPプローブとは、前述したように、ポリアクリルアミド骨格の−CONH2基に、短いスペーサー(−OCH2CH2CH2−)を介して糖をグリコシド結合で共有結合させたプローブである。非特許文献3のアッセイでは糖としてα−GalNAcを用いた糖−BPプローブ(α−GalNAc BPプローブ)はBPTに結合しなかったが、今回の実験では、予想に反して、その糖BPプローブが、BPTやBPTGに対して高い結合性、しかもα−Manよりも高い結合性を有していることを見い出した。さらに、本発明者らは、BPTによるBPTGからBPTへの分解(BPTGの活性化)に対して、Me-GalNAc、GalN(ガラクトサミン)、及びβ−GalNAcが顕著な抑制効果を有していることを見い出し、本発明を完成するに至った。なお、α−GalNAc BPプローブに関するアッセイの結果が、非特許文献3における結果と逆になった理由は定かではないが、非特許文献3で用いたα−GalNAcBPプローブ(現在入手不可)に何らかの問題があった可能性が考えられる。また、非特許文献3で用いている糖はすべてD体であった。

0010

すなわち本発明は、(1)ガラクトサミン又はその誘導体を含有することを特徴とするトリプシノーゲン活性化抑制剤に関する。

0011

また本発明は、(2)ガラクトサミン誘導体を含有することを特徴とする膵炎の予防・治療剤に関する。

0012

さらに本発明は、(3)トリプシノーゲン活性化抑制剤の製造におけるガラクトサミン又はその誘導体の使用に関する。

0013

また本発明は、(4)膵炎の予防・治療剤の製造におけるガラクトサミン誘導体の使用に関する。

発明の効果

0014

本発明のトリプシノーゲン活性化抑制剤は、生体分子に基づく成分を有効成分としているため生体に投与しても副作用の懸念がほとんどなく、かつ、十分なトリプシノーゲン活性化抑制効果(及び/又はトリプシン阻害効果)を発揮することができる。また、本発明の膵炎の予防・治療剤は、副作用の懸念がほとんどなく、かつ、膵炎に対する十分な予防・治療効果を発揮することができると考えられる。

図面の簡単な説明

0015

BPTGからBPTへの変化に対する糖の影響を調べるために行なったSDS−PAGEの結果を示す図である。A:Me−α−Gal、B:Me−β−Gal、C:Me−α−Man、D:Me−α−GlcNAc、E:Me−α−GalNAc、F:GalN・HCl、G:GalNAc、H:L−Fuc、I:D−Fuc、但し「*」は0.1M Me−α−GalNAc(20min)の結果を示す。
種々の糖存在下におけるBPTG活性化率推移を示す図である。
BPTG又はBPTと、D−GalNAcとのプレインキュベーションによる活性化抑制効果の比較を示す図である。
ロットの異なるBPTGおよびBPTと、α−GalNAc−BP又はα−Man−BPとの結合(pH7.5)を、ELISAにより検出した結果を示す図である。
α−Manを持つ糖−BP−プローブの構造を示す図である。
糖−BPプローブを用いたELISAによるBPTGの糖結合性(pH7.5とpH5.5)の検出結果を示す図である。
SPRによるBPTG固定化センサーチップへの糖の結合の検出結果を示す図である。
BPTのBAPAを基質とした酵素活性への糖の影響の結果を示す図である。
BPTG、BPTと、アプロチニン(BPTI)との結合に与える糖の影響を示す図である。

0016

本発明のトリプシノーゲン活性化抑制剤は、ガラクトサミン(以下、「GalN」ともいう。)又はその誘導体を含有する限り特に制限されず、本発明における「GalN」とは、D体のGalN、L体のGalNのいずれであってもよいが、D体のGalNが好ましい。また、上記GalNとしては、本発明におけるトリプシノーゲン活性化抑制効果(又はトリプシン阻害効果)を有している限り、α−GalN、β−GalNのいずれであってもよい。さらに、上記のGalNの誘導体としては、本発明におけるトリプシノーゲン活性化抑制効果(又はトリプシン阻害効果)を有している限り特に制限されず、例えば、α−GalNAc;β−GalNAc;GalNAcの1位のヒドロキシ基が、メトキシ基エトキシ基、ブトキシ基、フェニルオキシ基、p−ニトロフェニルオキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基アミノ基; Fmoc基;種々の糖残基又はオリゴ糖鎖などに置換された化合物や、GalNAcの2位のN−アセチル基が、遊離アミノ基;N−硫酸基;N−グリコリル基などに置換された化合物や、GalNAcの3位、4位又は6位のヒドロキシ基が、硫酸基;O−アセチル基;リン酸基;種々の糖残基又はオリゴ糖鎖などに置換された化合物や、メチルα−ガラクトミニド、メチルβ−ガラクトサミニドなどの化合物や、これらの化合物の塩などを好適に例示することができる。上記の化合物の塩としては、例えば、化合物の塩酸塩リン酸塩硝酸塩硫酸塩、酢酸塩プロピオン酸塩酪酸塩吉草酸塩クエン酸塩フマル酸塩マレイン酸塩リンゴ酸塩等の酸付加塩、及びナトリウム塩カリウム塩カルシウム塩等の金属塩を例示することができ、中でも酸付加塩を好適に例示することができ、中でも塩酸塩をより好適に例示することができる。本発明において特に好ましいGalN又はその誘導体としては、D体のGalN及びその塩や、D体のα−GalNAcの1位のヒドロキシ基がメトキシ基に置換された化合物(Me−α−GalNAc)及びその塩や、D体のα−GalNAcの1位のヒドロキシ基がフェニル基又はニトロフェニル基に置換された化合物及びその塩等を挙げることができ、さらに好ましいものとして、D体のGalNの塩酸塩(GalN・HCl)や、Me−α−GalNAcを挙げることができる。

0017

また、本発明のトリプシノーゲン活性化抑制剤に含有されるGalN又はその誘導体の形態としては、特に制限されず、GalN又はその誘導体自体であってもよいし、GalN又はその誘導体同士がα結合及び/又はβ結合により結合する糖鎖の形態であってもよいし、GalN又はその誘導体やその糖鎖が、GalN又はその誘導体以外の糖、タンパク質ペプチド核酸、脂質等の他の生体分子と結合する生体分子複合体であってもよいが、特に優れたトリプシノーゲン活性化抑制効果が期待できる点で、GalN又はその誘導体同士がα結合により結合する糖鎖の形態や、該糖鎖を含む生体分子複合体、すなわちオリゴ糖鎖、糖タンパク質、糖脂質、または多糖鎖などの形態であることが好ましい。

0018

本発明において「トリプシノーゲン活性化抑制効果」とは、トリプシンによる、トリプシノーゲンからトリプシンへの分解(トリプシノーゲンの活性化)を抑制する効果を意味し、トリプシノーゲンに結合して保護作用を示すことによって、トリプシンへの分解を抑制する効果の他、トリプシンに結合することによって、トリプシノーゲンからトリプシンへの分解を抑制する効果も含まれる。あるGalN又はその誘導体がトリプシノーゲン活性化抑制効果を有しているかどうかは、例えば、後述の実施例1記載の「糖によるトリプシノーゲン活性化抑制実験」と同様の実験によって容易に確認することができる。具体的には、後述の実施例1記載の実験と同様の実験において、トリプシン溶液の添加から20分間経過後のサンプル中の「BPT/BPTG+BPT」(以下、単に「BPT/BPTG+BPT」ともいう。)が、そのGalN又はその誘導体を添加した場合に、それを添加していない場合に比べて、低いときは、そのGalN又はその誘導体はトリプシノーゲン活性化抑制効果を有しているといえる。本発明における「トリプシノーゲン活性化抑制効果」の好ましい程度としては、後述の実施例1記載の実験と同様の実験において、GalN又はその誘導体を添加した場合の「BPT/BPTG+BPT」が、GalN又はその誘導体を添加していない場合の「BPT/BPTG+BPT」に対する割合として60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下、最も好ましくは30%以下である場合を例示することができる。

0019

上記のトリプシノーゲンとしては、ヒト、サルマウスラットハムスターモルモット、ウシ、ブタ、ウマウサギヒツジヤギネコイヌ等の哺乳類由来のトリプシノーゲンやそれらのアイソフォームを好適に例示することができ、中でもヒト由来のトリプシノーゲンやそのアイソフォームをより好適に例示することができ、上記のトリプシンとしては、前述の哺乳類由来のトリプシンやそれらのアイソフォームを好適に例示することができ、中でもヒト由来のトリプシンやそのアイソフォームをより好適に例示することができる。なお、本発明におけるGalN又はその誘導体は、いずれか1種類のトリプシノーゲンに対して、その活性化抑制効果を有していればよい。

0020

上記のGalNの入手方法としては、市販のものを用いてもよいし、ガラクトースから公知の方法で誘導してもよい。また、GalNの誘導体についても、導入する置換基の部位や置換基の種類等に応じて適宜製造することができる。また、GalN又はその誘導体が結合した糖鎖や、GalN又はその誘導体を含む生体高分子複合体などについても、同様に適宜製造することができる。

0021

本発明の膵炎の予防・治療剤は、GalN又はその誘導体を含有する限り特に制限がされず、このGalN又はその誘導体や、その好ましい態様については前述したとおりである。なお、本明細書の背景技術においても述べたように、膵炎は、膵液の消化酵素によって、膵臓自体が消化されて炎症を生じるものであるので、トリプシノーゲン活性化抑制効果を有しているGalN又はその誘導体を用いれば、膵炎の予防効果や治療効果を得ることができる可能性が極めて高い。本発明における「膵炎の予防効果」とは、本発明におけるGalN又はその誘導体を投与しない場合に比べて、それを投与した場合に、膵炎の発症の程度が軽減又は抑止される効果を意味し、本発明における「膵炎の治療効果」とは、本発明におけるGalN又はその誘導体を投与しない場合に比べて、それを投与した場合に、膵炎の程度が改善又は治癒する効果を意味する。膵炎の発症の程度や膵炎の程度は、膵臓の組織の状態や血中のアミラーゼの濃度等を基準に適宜評価することができる。

0022

上記の本発明のトリプシノーゲン活性化抑制剤や膵炎の予防・治療剤(以下、両剤を併せて「本発明の剤」ともいう。)は、GalN又はその誘導体による、トリプシノーゲンからトリプシンへの活性化抑制効果や膵炎の予防・治療効果が得られる限り、GalN又はその誘導体の他に、他のトリプシノーゲン活性化抑制剤や、アプロチニン等のトリプシン阻害剤や、他の膵炎の予防・治療剤などの任意成分を含んでいてもよい。

0023

本発明の剤に含有されるGalN又はその誘導体は、常法によって適宜の製剤とすることができる。製剤としては散剤顆粒剤などの固形製剤であってもよいが、特にインビボにおける膵炎の予防・治療効果を得る観点からは、溶液剤、乳剤懸濁剤などの注射用液剤や、注射用のゲル剤とすることが好ましい。前述の液剤の製造方法としては、例えばGalN又はその誘導体を溶剤と混合する方法や、さらに懸濁化剤乳化剤を混合する方法を好適に例示することができ、前述のゲル剤の製造方法としては、例えばGalN又はその誘導体をゼラチン混和する方法を好適に例示することができる。以上のように、本発明におけるGalN又はその誘導体を製剤とする場合には、製剤上の必要に応じて、適宜の薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤結合剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤緩衝剤安定化剤無痛化剤防腐剤抗酸化剤着色剤などの任意成分を配合することができる。

0024

前述の溶剤としては、精製水生理的食塩水リンゲル液エタノールプロピレングリコールグリセリンポリエチレングリコールマクロゴールなどの親水性溶剤や、オリーブ油ラッカセイ油ゴマ油ツバキ油ナタネ油脂肪酸モノグリセリド脂肪酸ジグリセリド高級脂肪酸エステル流動パラフィンなどの油性溶剤を例示することができ、また、前述の懸濁化剤としては、ステアリルトリエタノールアミンラウリル硫酸ナトリウムラウリルアミノプロピオン酸レシチン塩化ベンザルコニウム塩化ベンゼトニウムモノステアリン酸グリセリンポリビニルアルコールポリビニルピロリドンカルボキシメチルセルロースナトリウムメチルセルロースヒドロキシメチルセルロースヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルセルロースポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油アラビアゴムベントナイトなどを例示することができ、さらに、前述の乳化剤としては、アラビアゴム、ゼラチン、レシチン、コレステロール卵黄、ベントナイト、ビーガムセタノール、モノステアリン酸グリセリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸などを例示することができる。

0025

前述の溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトールトレハロース安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン炭酸ナトリウムクエン酸ナトリウムサリチル酸ナトリウム酢酸ナトリウムなどを例示することができ、また、前述の賦形剤としては、乳糖白糖D−ソルビトールデンプン、α化デンプン、コーンスターチ、D−マンニトール、デキストリン結晶セルロース、アラビアゴム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、血清アルブミンなどを例示することができ、さらに、前述の結合剤としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを例示することができる。

0026

前述の等張化剤としては、塩化ナトリウム塩化カリウム、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトールラクトースサッカロース、グリセリン、尿素などを例示することができ、また、前述の緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、グリセリンなどを例示することができ、さらに、前述の防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類クロロブタノールベンジルアルコールフェネチルアルコールデヒドロ酢酸ソルビン酸などを例示することができる。前述の安定化剤としては、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸ナトリウムアミノ酸ヒト血清アルブミンなどを例示することができ、また、前述の無痛化剤としては、ブドウ糖グルコン酸カルシウム塩酸プロカインなどを例示することができ、さらに、前述の抗酸化剤としては、亜硫酸塩アスコルビン酸などを例示することができる。また、前述の着色剤としては、タール系色素カラメルベンガラ二酸化チタン、エリスアンド・エベラルド社のFD&Cブルー2号ならびにFD&Cレッド40号などのFD&C染料などを例示することができる。

0027

本発明の剤を膵炎の予防や治療に用いる場合における、本発明の剤の投与方法としては、膵炎の予防・治療効果が得られる限り特に制限されず、静脈内投与や膵臓の炎症部位への直接投与、経口投与腹腔内投与を例示することができる。また、本発明の剤の投与量や投与回数や投与濃度は、膵炎の状態や患者の体重等に応じて、適宜調節することができる。

0028

本発明の膵炎の予防・治療剤の対象となる膵炎としては、膵液の消化酵素によって、膵臓自体が消化される炎症に関連している限り、急性膵炎であっても慢性膵炎であってもよいが、急性膵炎を特に好適に例示することができる。また、膵炎に対して予防・治療効果を発揮する結果として、敗血症、膵臓の周囲の臓器腎臓大腸など)の炎症、仮性嚢胞、膵壊死感染性膵壊死などの、膵炎の合併症に対しても、予防・治療効果を発揮する。

0029

また、本発明には、トリプシノーゲン活性化抑制剤の製造におけるGalN又はその誘導体の使用や、GalN又はその誘導体をトリプシノーゲン活性化抑制剤として使用する方法や、トリプシノーゲンの活性化抑制におけるGalN又はその誘導体の使用や、膵炎の予防・治療剤の製造におけるGalN又はその誘導体の使用や、GalN又はその誘導体を膵炎の予防・治療剤に使用する方法や、膵炎の予防・治療におけるGalN又はその誘導体の使用や、GalN又はその誘導体を哺乳動物(特にヒト)に投与することを特徴とする膵炎の予防・治療方法も含まれる。これらの使用や方法における文言の内容やその好ましい態様は、前述したとおりである。

0030

本発明のトリプシノーゲン活性化抑制剤は、膵炎の予防や治療の他に、腸内での消化抑制剤腸管細胞の増殖・分化調節剤組織溶解抑制剤等として用いることができる。なお、本発明におけるGalN又はその誘導体のトリプシノーゲン活性化抑制効果が、GalN又はその誘導体がトリプシンに結合することによって、トリプシノーゲンからトリプシンへの分解を抑制(すなわち、トリプシンのセリンプロテアーゼ活性を抑制)することにより発揮される場合は、また、本発明のトリプシノーゲン活性化抑制剤は、トリプシノーゲンが存在しない条件下でもトリプシン阻害剤として利用することができる他、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、トロンビンプラスミンプラスミノーゲンアクチベータートリプターゼマトリプターゼ及びプロテアーゼにより活性化されるレセプター、の活性化抑制剤としても利用することができる。

0031

以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。

0032

1.[糖によるトリプシノーゲン活性化抑制実験]
(1)材料
本実験には以下の材料を用いた。なお、カッコ内にはコード番号を示す。
ウシ膵臓トリプシノーゲン(BPTG)は、MP Biomedicals, Inc.製のもの(101195)を用い、ウシ膵臓トリプシン(BPT)は、和光純薬株式会社製のもの(204-13951)を用い、Phenylmethylsulfonyl Fluoride(PMSF)は、Nacalai Tesque, INC.製のもの(27327-52)を用い、Methyl-α-D-galactopyranoside(Me−α−Gal)は、Sigma-Aldrich Corporation製のもの(M1379-25MG)を用い、1-O-Methyl-β-D-galactopyranoside(Me−β−Gal)は、Nacalai Tesque, INC.製のもの(22526-34)を用い、Methyl-α-D-Mannopyranoside(Me−α−Man)は、和光純薬株式会社製のもの(131-08021)を用い、Methyl-N-acetyl-2-deoxy-α-D-glucosaminide(Me−α−GlcNAc)は、Sigma-Aldrich Corporation製のもの(M0257-100MG)を用い、Methyl-N-acetyl-2-deoxy-α-D-galactosaminide(Me−α−GalNAc)は、Toronto Research Chemicals, Inc.製のもの(M275310)を用い、D−ガラクトサミン塩酸塩(GalN・HCl)は、生化学工業製のもの(Lot.S6701)を用い、N−アセチル−D−ガラクトサミン(GalNAc)は、Toronto Research Chemicals Inc.製のもの(A17700)を用い、L−フコース(L−Fuc)は、Fluka AG, Chem.Fabrik製のものを用い、D−フコース(D−Fuc)は、和光純薬株式会社製のものを用いた。

0033

(2)方法及び結果
トリプシンによるトリプシノーゲンからトリプシンへの分解(トリプシノーゲンの活性化)に対して、糖がどのような影響を与えるかを調べるために、BPTGをBPT及び糖存在下でアッセイした場合の、BPTG量やBPT量の変化を、SDS−PAGEによる分子量の変化によって確認した。具体的には、以下の方法で行なった。
BPTG、BPT、及び上記1.(1)記載の9種類の各糖を、それぞれ別のエッペンチューブ分取し、さらにそれぞれのエッペンチューブにTBS溶液[10mM Tris−HCl(pH7.5),150mM NaCl]を添加して、5.0mg/mlのBPTG溶液、3.7mg/mlのBPT溶液、及び0.3Mの各糖溶液を調製した。

0034

1種類の糖溶液に関して、新たな500μlエッペンチューブを12本用意し、12本すべてに前述のBPTG溶液を160μlずつ分取した後、さらに、その12本のうち6本のエッペンチューブには前述のTBSを110μlずつ添加し、残りの6本のエッペンチューブにその1種類の糖溶液を110μlずつ添加して撹拌した。その後、上で20〜30分間インキュベートした。その後、これら12本のエッペンチューブにBPT溶液を30μlずつ添加して攪拌し、37℃で反応させた。この状態での反応液はいずれもpH 4.6となるように調整した。BPT溶液の添加から0分後、2分後、5分後、10分後、15分後、20分後の各時点で、糖溶液を含むエッペンチューブ(BPTG+糖溶液+BPT)と、糖溶液を含まないエッペンチューブ(BPTG+TBS+BPT)をそれぞれ1本ずつ氷上に移すとともに、50mMPMSF(トリプシン阻害剤)を含むTBS溶液を3.2μl加え混合し、反応を停止させた。これらの一連の操作を、他の8種類の糖溶液に関しても行なった。

0035

このようにして得られた各サンプルから、1サンプルあたり40μlずつ分取し、そこにサンプルバッファー(5x)を10μlずつ添加した後、100℃で5分ボイルして泳動用サンプルを調製した。それらの泳動用の各サンプル(7μg)について、ポリアクリルアミドゲル濃縮ゲルにおいてはPAG濃度3%、泳動ゲルにおいてはPAG濃度12%)を用い、25mA/gelで1.5時間、Laaemmli法により、SDS−PAGEを行った。泳動後のポリアクリルアミドゲルをCoomassie brilliant blue染色液中で約10分間染色した後、脱色液中で過剰な色素脱染した。その後、その泳動ゲルをスキャナー読み取り、各糖における各時間のサンプル中のBPTGやBPT量の推移を調べた。その結果を図1に示す。図1の各パネルにおける「+」は、その糖を添加したサンプル(その糖の存在下におけるサンプル)であることを意味し、「−」は、その糖を添加していないサンプル(その糖の非存在下におけるサンプル)を意味する。また、図1のSDS−PAGEにおけるBPTGやBPTのバンド染色強度は、各タンパク質の量に比例するので、図1のSDS−PAGEにおけるBPTGやBPTのバンドの染色強度を、Image J (1.37v, National Institutes of Health)のソフトウエアを利用して数値化し、BPTGがBPTに変化した割合を算出した。具体的には、図1の各糖における各時間のサンプル中のBPTGとBPTの量の和に対するBPTの割合(BPT/BPTG+BPT;以下、「BPTGの活性化率」ともいう。)を算出し、その「BPTGの活性化率」の推移をグラフ化した。その結果を図2に示す。

0036

図1及び図2の結果から、Me−α−GalとMe−α−GlcNAc、L−FucならびにD−Fucにおいては、糖の添加の有無にかかわらず、時間の経過と共にBPTGが分解されて、BPTへと変化していることが示され、また、Me−β−GalやMe−α−ManやGalNAcにおいては、時間の経過と共にBPTGが分解されてはいるものの、糖の添加によって、わずかではあるが、BPTGからBPTへの分解が抑制されていることが示され、さらに、GalN・HClでは糖の添加によって、BPTGからBPTへの分解がかなり抑制されていることが示され、また、Me−α−GalNAcにおいては、糖の添加により、20分経過後でもBPTGはほとんど分解せず、BPTGからBPTへの分解が顕著に抑制されていることが示された。Me−α−GalNAcやGalN・HClによるトリプシノーゲンの分解抑制(活性化抑制)のメカニズムの詳細は未だ明らかではないが、トリプシノーゲンに結合した糖がトリプシノーゲンの不活性構造を保護する可能性、又は、トリプシンに結合した糖がトリプシンのタンパク質分解活性阻害する可能性が考えられる。なお、0.1M Me−α−GalNAcでは、糖とBPTGを氷上で20分間プレインキュベートした直後の0minにおいて、BPTGのバンドが常に薄くなったが、その後37℃の保温でバンドの濃さは復活した。この原因は不明であるが、BPTGの構造変化により、0℃付近での溶解度が変化した可能性も考えられる。また、GalN・HClは、溶液中ではGalNのα体とβ体が生じ、GalNAcは、溶液中ではGalNAcのα体とβ体が生じる。

0037

さらに、前述の[糖によるトリプシノーゲン活性化抑制実験]において、BPTGを0.1M D−GalNAcの存在下、氷上で20分間プレインキュベーションする過程を行わず、代わりに30μlのBPT溶液に110μlの0.3M D−GalNAc(終濃度0.24Mとなる)又は110μlの糖を含まないTBS溶液を加えて混合し、氷上で20分間プレインキュベーションしてから、糖とプレインキュベーションしていないBPTG溶液160μLを加え、同様に活性化実験を行った。同時に実施例1の条件でも活性化実験を行い、両者の結果を比較した。その結果を図3に示す。図3の結果から、BPTを0.1M D−GalNAcとプレインキュベーションした場合、BPTGはコントロール(糖非存在下)と同様に活性化され、活性化抑制が起こらなかった。すなわち糖による阻害作用はBPTGとのプレインキュベーションによってのみ起こることが示された。したがってD−GalNAcによる活性化抑制効果は、BPTGと糖の結合によって、トリプノーゲンの不活性構造が安定化され、BPTGのN末端にある活性化ペプチドが切断されにくくなるためと考えられ、トリプシンと糖の結合によるものではないことが示された。すなわち、トリプシン活性阻害剤を基本とするこれまでの膵炎抑制剤とは異なり、本薬剤はトリプシノーゲンに作用して活性化を抑制するという新規なメカニズムに基づいてトリプシノーゲン等のプロ酵素の活性化を抑制することがわかった。本化合物は特にトリプシン阻害剤が効かないような場合の新規な膵炎の治療・予防方法に用い得る可能性が高い。

0038

2.[ELISA法による糖結合性分析
(1)材料
本実験には以下の材料を用いた。
BPTG、BPT及びPMSFは、実施例1で用いたものと同様のものを用い、糖-biotinylated polyacrylamide probes(糖−BPプローブ)は、GlycoTech Co.(Gaithersburg, Maryland 20879)製のもの(ポリアクリルアミド骨格の−CONH2基に、短いスペーサー(−OCH2CH2CH2−)を介して糖をグリコシド結合で共有結合させたプローブ;例えばα−マンノースBPプローブについて図4参照)を用い、avidin-biotin-horseradish peroxidase complex(ABC−HRP)は、SIGMA社製のもの(S5512)を用い、o-phenylene diamine(OPD)は、和光純薬株式会社製のもの(161-11851)を用いた。

0039

(2)方法及び結果
実施例1で示された、トリプシノーゲンからトリプシンへの分解(トリプシノーゲンの活性化)に対する糖の抑制効果が、BPTGやBPTの糖結合性と関連があるかどうかを調べるために、以下のようなELISA法による糖結合性分析を行なった。
BPTG、BPTをそれぞれ3mg計り取り、2.94mlの10mM TBS(pH7.5)と60μlの0.2MPMSF溶液を加えて溶解し、4℃で1時間、プレインキュベーションして、1mg/mlのBPTG溶液、及び、BPT溶液を調製した。これらの溶液を10mM TBS(pH7.5)で0.1〜15μg/mlに希釈し、マイクロタイタープレート(Immulon 1B,Thermo Scientific社製)の各ウエルにそれぞれ100μlずつ添加した。4℃、2時間インキュベーションすることによりBPTG及びBPTをプレートに固定化した。各300μlの10mM TBS(pH7.5)で各ウエルを3回洗浄した後、各300μlの3% BSA(10mM TBS,pH7.5)を添加して、4℃で一晩ブロッキングした。10mM TBS(pH7.5)に、各糖(α−Man、α−Man−6−リン酸、α−Gal、α−GalNAc、α−NeuAc、β−Gal又はLac)−BPプローブ又は糖を持たないPAAプローブを10μg/mlとなるように加えた溶液を100μlずつ各ウエルに添加して、1時間室温で反応させた。各300μlの10mM TBS(pH7.5)で各ウエルを3回洗浄した後、各100μlの0.7μg/ml ABC−HRPを添加して、室温で1時間結合反応させた後、各300μlの10mM TBS(pH7.5)で各ウエルを3回洗浄した。次に、各200μlの発色液[OPD 8mg,50mMクエン酸リン酸バッファー(pH5.0)20ml,30%H2O2 8μl]を各ウエルに添加して、室温で25分間発色させた後、各50μlの2.5N H2SO4を各ウエルに添加して発色を停止させた。マイクロプレートリーダー(MPR−80,Bio-Rad社製)を用いて、490nmの吸光度を測定した。以上の結合実験を、TBSの代わりに10mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を用いても、全く同様の手順で行った。

0040

その結果を図4ならびに図6に示す。
図4からわかるように、BPTGとBPTは、α‐Manを持つ糖BP−プローブには糖を持たないPAAプローブより高い結合性を示し、α−GalNAcを持つ糖−BPプローブには、顕著に高い結合性を示した。また、BPTGについて別ロット製品を用いて同様の実験を行なったが、同様の結果であった。

0041

また、図6に示すように、十二指腸内のpHであるpH7.5において、BPTGについて、GalNAcを含む糖鎖を中心に、他の糖BP−プローブとの結合活性を調べたところ、BPTGがα−GalNAc−BPに対してだけでなく、β−GalNAc−BPに対する結合活性を持っていることが新たに明らかになった。pH7.5において、α−NeuAc,β−Gal,又はLacを持つ糖−BPプローブには、糖を持たないPAAプローブと同程度以下の低い結合性しか示さなかった。したがって、pH7.5においてもBPTGへのGalN及びその誘導体の結合と、BPTG活性化抑制効果があると考えられ、実際にpH5.5および実施例1のpH 4.6と同様に、pH7.5においてもBPTG活性化抑制効果が観測されている(データ示さず)。一方、チモーゲン顆粒内のpHであるpH5.5において、BPTGのα−GalNAc−BPに対する結合量は、pH7.5の結果と同様に、BPTG濃度に依存して増強した。図6の結果から、pH5.5においては、pH7.5の場合と比べてα−Man−6−P及びα−Gal−BPに対する結合活性がほとんど消失し、対照的にα−NeuAc−BPに対する結合活性がpH7.5の時と比べて著しく増強した。それ以外の結合する糖の種類にはほとんど差がみられなかった。BPTGやBPTの糖結合性の高低に関するこれらの結果(BPTGに関する図4A、Bおよび図6)の傾向は、実施例1における糖(Me−α−GalNAc、Me−α−Man、Me−α−Gal、Me−β−Gal)のBPTG活性化抑制効果の高低の結果の傾向と一致していた。

0042

3.[SPRによるBPTGと糖との相互作用解析
SPRを用いて、BPTGと糖との相互作用解析を行なった。操作は全てBIACORE2000(GE Healthcare Bio-Sciences KK)を用い、付属マニュアルに従って操作を行った。リガンドの固定化はアミンカップリング法を用いて、10μl/minで各ステップを14分間ずつ行った。ランニング緩衝液には、HBS−EP bufferに終濃度0.2mMになるように0.2MPMSF−エタノール溶液を加えて使用した。CM5センサーチップをランニング緩衝液で平衡化した後、アミンカップリングキットにより、チップ表面をEDC/NHSで活性化した。リガンドに用いたBPTGやBPTは、あらかじめ2mg秤りとった後、960μlの10mM CH3COOH−CH3COONa buffer(pH6.0)に溶解し、0.2M PMSF−エタノール溶液を40μl加え(終濃度8mM)、4℃、1時間振盪した(プレインキュベーション)。これを10mM CH3COOH−CH3COONa buffer(pH6.0)に、保護糖としてMe−α−Man、Me−α−Gal又はD−GalNAcを終濃度が各0.2 Mになるように加えた緩衝液を用いて10μg/mlに希釈した後、センサーチップにインジェクトして固定化を行った。残っているN-hydroxysuccinimide esterを1.0Mエタノールアミン・HCl(pH 8.0)でブロックした後、10mM HClで1分間洗浄してから測定に使用した。固定化されたBPTGは3743.6RU、BPTは8014.9RUであった。リファレンスセル対照セル)には、タンパク質溶液を固定化せずに、同様のEDC/NHS活性化と1.0M エタノールアミン・HCl(pH8.0)によるブロッキングを行ったフローセルを用いた。アナライトには、Me−α−Man,Lac,Me−α−GalNAc,Me−β−Galを、それぞれ0.05,0.1,0.15,0.2,0.25,0.3Mの濃度になるように、ランニング緩衝液を用いて調製した。アナライトの糖類を含むランニング緩衝液をBPTG固定化センサーチップ上に20μL/minの流速で90秒間インジェクトし、次にTBSで溶出を行った。この実験の結果を図7に示す。

0043

図7に示すように、Me−α−Man,Lac,Me−β−Galをアナライトとして添加した際には、インジェクト終了とともに全てのアナライトが解離していた。一方、Me−α−GalNAcをアナライトとして添加したところ、フローセルに固定化したBPTGおよびBPT(BPTについては結果を示していない)とMe−α−GalNAcの結合は、インジェクト終了後もほとんど解離せず、濃度依存的にBPTGやBPTとの結合が示された。BPTGやBPTの最大結合量をもとに速度論的解析を行ったところ、BPTGとMe−α−GalNAcとのKAは1×106(M−1)、BPTとMe−α−GalNAcとのKAは2×106(M−1)と算出された。これは、多くのレクチンと特異的な単糖とのKAが104〜5(M−1)の範囲であることを考慮すると、BPTGとMe−α−GalNAcとの間の結合や、BPTとMe−α−GalNAcとの間の結合はかなり強力で有意なものであると考えられる。

0044

4.[トリプシン酵素活性への影響]
(1)材料
本実験には以下の材料を用いた。
BPT(Bovine pancreatic trypsin)は、Sigma-Aldorich社製のT1426を用い、BAPA(N-α-Benzoyl-DL-arginine-p-nitroanilide hydrochloride)は、株式会社ペプチド研究所製のものを用い、Me−α−Man(Methyl-α-mannoside)は、Sigma-Aldorich社製のものを用い、GalN・HCl(D-Galactosamine hydrochloride)は、生化学工業株式会社製のものを用い、GalNAc(N-Acethyl-D-galactosamine)は、和光純薬工業株式会社製の013-12821を用い、Me−α−GalNAc(o-Methyl-N-Acetyl-2-deoxy-D-galactosamine)は、Tronto Research Chemicals Inc.社製のM275310を用いた。

0045

(2)方法および結果
各種の糖について、基質濃度を変化させてBPTの酵素反応速度を測定し、Lineweaver-Burk plotにより解析して、各種の糖のトリプシン酵素活性に与える影響について調べた。
トリプシンの酵素活性測定には、基質としてBAPAを用いた。BAPAを14.2mg量し、1065μlのDMSOに完全に溶解した後、0.1M Tris−HCl buffer(pH7.9)−20mM CaCl2−30mM NaCl(TBS−Ca)を2200μl加えて、あらかじめ10mM BAPA溶液を調製した。次いで、このBAPA溶液をさらに希釈して0mMから3mMの各濃度の基質BAPA溶液を調製した。BPTは2.4mgを秤量し、酸性で安定であるため、1mM HCl−20mM CaCl2溶液0.5mlに溶解し、200μMのBPT溶液を調製した。このBPT溶液からさらに希釈して6μMのトリプシン酵素溶液を調製した。Me−α−Man、GalN・HCl、GalNAc、Me−α−GalNAc についてTBS−Caを加えて、1mM から0.2Mの各糖溶液を数段階調製した。糖溶液140μlと6μMトリプシン溶液10μlをあらかじめ混合して15分間37℃でプレインキュベートした。マイクロプレートに、37℃でプレインキュベートした各濃度の基質BAPA溶液を1ウエルあたり150μl加え、次に、37℃でプレインキュベートした糖−トリプシン混合溶液を1ウエルあたり150μlずつ加えた。素早く撹拌後、マイクロプレートリーダーVient X(DS Pharma Biomedical)を用いて、30秒おきに5分間410nmで吸光度を測定した。基質濃度の逆数1/[S]を横軸に、反応速度の逆数1/[v]を縦軸にとり、Lineweaver Burk Plotにより解析して、各種の糖のBPT酵素活性に与える影響について考察した。その結果を図8に示す。

0046

図8の結果から分かるように、GalN・HCl濃度を0mMから100mMに上げると、わずかながらKmは増加し、Vmaxが82%((6.8×100)/8.3)に減少した。この変化は非拮抗型の活性阻害に近い変化である(図8A)。一方、0−100mMの範囲のGalNAc存在下では、BPTの酵素活性はVmaxで8%(100−[(7.7×100)/8.4])の減少にすぎず、Kmはほとんど変化がなかった(図8B)。対照的にMe−α−Manの存在下ではKmの減少傾向が示された。Me−α−GalNAcについては、5mM以下までの濃度範囲でしか実験できなかったが、Kmの増加(13%)と、僅かなVmaxの増加が示唆された。以上、結合性の高い糖によるBPT酵素活性への影響はいずれも小さく、トリプシノーゲンの活性化抑制効果を完全に説明することはできないと考えられた。また、最も影響のあったGalN・HClの結果をDixon plotにより解析すると、非拮抗型(または非拮抗・不拮抗混合型)の阻害形式が示された。参考値として、阻害定数Kiは約300mMと求められた。これはGalN・HClのBPTG活性化抑制作用が、BPTに対する阻害によるものではなく、BPTGに結合してタンパク質分解から保護する効果が主であることと矛盾しない結果であると考えられる。

0047

5.[ELISA法によるBPTGとアプロチニンの結合分析と糖の影響]
(1)材料
本実験には以下の材料を用いた。
BPTG、BPT、糖及びPMSFは、実施例1と同様の物を用い、アプロチニンはウシ膵臓由来の物をSIGMA社から購入して用い、NHS−ビオチン(PIERCE社製)を用いてマニュアル通りにビオチン標識して使用した。ELISAに必要な試薬は実施例2と同様の物を用いた。

0048

(2)方法及び結果
膵臓由来の内在性トリプシン阻害剤として知られているアプロチニン(BPTI)との結合が、BPTGやBPTの糖結合性に影響があるかどうかを調べるために、ELISA法による結合性分析を行なった。
実施例2と同様にして、PMSF処理を行ったBPTG溶液、及び、BPT溶液を調製し、これらの溶液を10mM TBS(pH7.5)で希釈し、マイクロタイタープレート(Immulon 1B,Thermo Scientific社製)の各ウエルに添加して、BPTG及びBPTをプレートに固定化した。実施例2と同様にしてTBS(pH7.5)を緩衝液に用いて洗浄した後、BSAによるブロッキングを行った。0.1Mの各糖(Me−α−Man、Me−β−Gal又はGalN・HCl)のTBS(pH7.5)溶液を100μlずつ各ウエルに添加して、1時間室温で反応させた。各300μlの緩衝液で各ウエルを3回洗浄した後、各100μlのビオチン化アプロチニン10μg/mlを添加して、室温で1時間結合反応させた。その後、各300μlの緩衝液で3回洗浄した後、各100μlの0.7μg/mlのABC−HRPを添加して、室温で1時間結合反応させた後、各300μlの緩衝液で3回洗浄した。次に、各200μlの発色液[OPD 8mg,50mMクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)20ml,30%H2O2 8μl]を各ウエルに添加して、室温で25分間発色させた後、50μlの2.5N H2SO4を添加して発色を停止させた。各ウエル中液体について、マイクロプレートリーダー(MPR-80,Bio-Rad社製)を用いて、490nmの吸光度を測定した。その結果を図9に示す。

実施例

0049

図9の結果から分かるように、GalN・HClが存在することによって、BPTGとアプロチニンとの結合が増強することが示された。一方、BPTGと結合しないMe−β−Galや、結合するが活性化阻害をほとんど示さないMe−α−Manでは、糖を含まないコントロールと差が無い結果であった。これらの結果から、GalN誘導体は、上記実施例1〜4で示されたトリプシノーゲンを安定化してトリプシンによる分解から保護する効果に加えて、アプロチニン(トリプシンに対する膵臓の内在性阻害剤)とトリプシノーゲンとの結合を増強することにより、活性トリプシンを阻害することによってもトリプシノーゲンを保護する機構膵細胞内で起こることが予測される。すなわち膵臓内のアプロチニン存在下では、GalN誘導体による膵炎抑制効果はさらに高まることが推測される。

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