図面 (/)
課題
解決方法
概要
背景
デジタルスチルカメラ等に使用されるCCDやCMOSなどの固体撮像素子は可視光域から1100nm付近の近赤外域にわたる分光感度を有している。したがって、そのままでは良好な色再現性を得ることができないので、赤外線を吸収する特定の物質が添加された近赤外線カットフィルタガラスを用いて視感度を補正している。この近赤外線カットフィルタガラスは、近赤外域の波長を選択的に吸収し、かつ高い耐候性を有するように、フツリン酸ガラスにCuOを添加した光学ガラスが開発され使用されている(特許文献1:特開平6−16451号公報)。
フツリン酸ガラスのようなフッ化物ガラスの粘度は、温度の上昇とともに急激に低下し、液相温度付近(1000℃程度)ですでに10−2Pa・sにまで下がることが知られている。そのため、板状ガラスの成形方法の1つである、ロールアウト法を適用して、溶融したフツリン酸ガラスをロール間で挟持しつつ搬送するといったことは、溶融状態における粘性が低くロール間から溶融ガラスが流れ落ちてしまうため、極めて困難である。
かかる問題に鑑み、本出願人は、フツリン酸ガラス等の溶融状態で粘性の低いガラスを好適に板状に成形できる成形方法について出願している(特許文献2:特開2003−171127号公報)。この発明は、温度検出工程で検出した加工成形したガラスの表面温度に基づいて、圧延ローラの表面温度を個別に調節する工程を有し、脈理、歪の発生や、例えばフツリン酸ガラスを成形する場合のフッ素の揮発損失などを抑制しつつ板状ガラスを高精度に、しかも効率よく成形できる板状ガラスの成形方法である。
特開平6−16451号公報
特開2003−171127号公報
しかしながら、上述のようにして得た板状ガラスは、後の徐冷工程や研磨工程において、割れが発生しやすくなり、生産性が劣化するとともに、材料の無駄も多くなるという不具合があった。
概要
板状ガラスの製造過程において、割れ等を防止して生産性の向上をる。溶融炉から連続的に流出する溶融ガラスをコンベアにより搬送させ、前記溶融ガラスの表面に複数の圧延ローラを摺接させて前記溶融ガラスを厚さ方向に加工成形して板状ガラスを製造する際に、前記複数の圧延ローラの少なくとも一つを、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成し、前記圧延ローラを前記溶融ガラスに摺接させる際に、前記溶融ガラスの両端部を冷却圧延加工する。
目的
本発明は、板状ガラスの製造過程において、割れ等を防止して生産性の向上を図ることを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
請求項1
溶融炉から連続的に流出する溶融ガラスをコンベアにより搬送させ、前記溶融ガラスの表面に複数の圧延ローラを摺接させて前記溶融ガラスを厚さ方向に加工成形する板状ガラスの製造方法において、前記複数の圧延ローラの少なくとも一つは、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成されており、前記圧延ローラを前記溶融ガラスに摺接させる際に、前記溶融ガラスの両端部を冷却圧延加工することを特徴とする、板状ガラスの製造方法。
請求項2
前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成された前記圧延ローラの少なくとも一つは、前記中央部において前記溶融ガラスと摺接し、前記溶融ガラスの厚さを制限するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項3
前記溶融ガラスを前記コンベアにより搬送する際に、前記溶融ガラスの両側面にガイド部材を摺接させ、前記溶融ガラスの搬送幅を規制するとともに、前記溶融ガラスの前記両端部を冷却することを特徴とする、請求項1又は2に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項4
前記コンベアの、前記溶融ガラスの前記両端部が位置する近傍を選択的に冷却することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項5
前記コンベアの選択的な冷却は、冷媒を吹き付けることによって行うことを特徴とする、請求項4に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項6
前記冷媒は水であることを特徴とする、請求項5に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項7
前記冷媒は圧縮気体であることを特徴とする、請求項5に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項8
前記コンベアの選択的な冷却は、前記コンベアの、前記溶融ガラスの前記両端部が位置する近傍にヒートシンクを形成して行うことを特徴とする、請求項4に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項9
前記溶融ガラスがフッ素を含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の板状ガラスの製造方法。
請求項10
溶融炉から連続的に流出する溶融ガラスを搬送させるコンベアと、前記溶融ガラスの表面に摺接させ、前記溶融ガラスを厚さ方向に加工成形する複数の圧延ローラとを具える板状ガラスの成形装置において、前記複数の圧延ローラの少なくとも一つは、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、板状ガラスの製造装置。
請求項11
前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成された前記圧延ローラの少なくとも一つは、前記中央部において前記溶融ガラスと摺接し、前記溶融ガラスの厚さを制限するように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の板状ガラスの製造装置。
請求項12
前記コンベアにより搬送される前記溶融ガラスの両側面と摺接して、前記溶融ガラスの搬送幅を規制するガイド部材と、前記ガイド部材を冷却する第1の冷却機構とを具えることを特徴とする、請求項10又は11に記載の板状ガラスの製造装置。
請求項13
前記コンベアの、前記溶融ガラスの前記両端部が位置する近傍を選択的に冷却する第2の冷却機構を具えることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一に記載の板状ガラスの製造装置。
請求項14
前記第2の冷却機構は、前記コンベアを構成する無限軌道の内周において、前記コンベアの、前記溶融ガラスの流出位置よりも上流側に設けられた、水を散布する噴霧機構であることを特徴とする、請求項13に記載の板状ガラスの製造装置。
請求項15
前記第2の冷却機構は、前記コンベアを構成する無限軌道の内周において、前記コンベアの、前記溶融ガラスの流出位置よりも上流側に設けられた、圧縮気体を噴きつける空冷機構であることを特徴とする、請求項13に記載の板状ガラスの製造装置。
請求項16
前記第2の冷却機構は、前記コンベアの、前記溶融ガラスの搬送面と相対する側の面に形成されたヒートシンク構造であることを特徴とする、請求項13に記載の板状ガラスの製造装置。
請求項17
前記溶融ガラスがフッ素を含有することを特徴とする、請求項10〜16のいずれか一に記載の板状ガラスの製造装置。
技術分野
背景技術
0002
デジタルスチルカメラ等に使用されるCCDやCMOSなどの固体撮像素子は可視光域から1100nm付近の近赤外域にわたる分光感度を有している。したがって、そのままでは良好な色再現性を得ることができないので、赤外線を吸収する特定の物質が添加された近赤外線カットフィルタガラスを用いて視感度を補正している。この近赤外線カットフィルタガラスは、近赤外域の波長を選択的に吸収し、かつ高い耐候性を有するように、フツリン酸ガラスにCuOを添加した光学ガラスが開発され使用されている(特許文献1:特開平6−16451号公報)。
0003
フツリン酸ガラスのようなフッ化物ガラスの粘度は、温度の上昇とともに急激に低下し、液相温度付近(1000℃程度)ですでに10−2Pa・sにまで下がることが知られている。そのため、板状ガラスの成形方法の1つである、ロールアウト法を適用して、溶融したフツリン酸ガラスをロール間で挟持しつつ搬送するといったことは、溶融状態における粘性が低くロール間から溶融ガラスが流れ落ちてしまうため、極めて困難である。
0004
かかる問題に鑑み、本出願人は、フツリン酸ガラス等の溶融状態で粘性の低いガラスを好適に板状に成形できる成形方法について出願している(特許文献2:特開2003−171127号公報)。この発明は、温度検出工程で検出した加工成形したガラスの表面温度に基づいて、圧延ローラの表面温度を個別に調節する工程を有し、脈理、歪の発生や、例えばフツリン酸ガラスを成形する場合のフッ素の揮発損失などを抑制しつつ板状ガラスを高精度に、しかも効率よく成形できる板状ガラスの成形方法である。
0005
特開平6−16451号公報
特開2003−171127号公報
発明が解決しようとする課題
0007
本発明は、板状ガラスの製造過程において、割れ等を防止して生産性の向上を図ることを目的とする。
課題を解決するための手段
0008
上記課題を解決すべく、本発明は、
溶融炉から連続的に流出する溶融ガラスをコンベアにより搬送させ、前記溶融ガラスの表面に複数の圧延ローラを摺接させて前記溶融ガラスを厚さ方向に加工成形する板状ガラスの製造方法において、
前記複数の圧延ローラの少なくとも一つは、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成されており、前記圧延ローラを前記溶融ガラスに摺接させる際に、前記溶融ガラスの両端部を冷却圧延加工することを特徴とする、板状ガラスの製造方法に関する。
0009
また、本発明は、
溶融炉から連続的に流出する溶融ガラスを搬送させるコンベアと、前記溶融ガラスの表面に摺接させ、前記溶融ガラスを厚さ方向に加工成形する複数の圧延ローラとを具える板状ガラスの成形装置において、
前記複数の圧延ローラの少なくとも一つは、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、板状ガラスの製造装置に関する。
0010
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を実施した。その結果、以下の事実を見出すに至った。
0011
フツリン酸ガラス等の溶融状態で粘度の低いガラスや粘度の温度特性が急峻であるガラスを成形する場合、圧延ローラとコンベアを用いた方法で成形された板状ガラスは、幅方向の中央部に比べて両端部の板厚が厚くなる傾向がある。この理由として、圧延ローラとコンベアとの隙間を通過したガラスは、十分に冷却されておらず未だ粘度が低い状態にある。そのため、圧延ローラ通過により、一旦は幅方向の板厚が均一になるもののガラスの粘度が低いため、圧延ローラ通過後のガラスは表面張力により両端部に引っ張られることで幅方向中央部が薄く変形し、両端部が厚くなる。
0012
上述のような板状ガラスの幅方向における板厚の変動は、コンベアの後段に設けられる補助ローラによりある程度補整されるものの十分ではなかった。特に、圧延ローラ通過前後のガラスの板厚差が大きい、つまり元の板厚に対して圧延ローラによる圧延量を大きくすることで板状ガラスの板厚を薄く成形しようとすると、幅方向の両端部が顕著に厚くなる傾向にあり、前記板状ガラスの板厚分布が顕著に増大する結果となっていた。
0013
このため、徐冷工程では前記板状ガラス内に発生する熱応力が不均一となることによって前記板状ガラス内に割れが生じ、研磨工程では、端部に荷重が集中することで前記板状ガラスに割れが発生しやすくなることを見出した。
0014
したがって、本発明では、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成した圧延ローラを用いて、前記溶融ガラスに摺接させる際に、前記溶融ガラスの両端部を冷却圧延加工するようにしている。このため、溶融状態のガラスの両端部を速やかに硬化させることができるので、上述のように、表面張力に起因して前記両端部が厚くなるのを防止することができる。
0015
さらに、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成した前記圧延ローラでは、前記中央部を通過する前記溶融ガラスの量が、前記外周部を通過する前記溶融ガラスの量よりも多くなる。したがって、かかる観点からも、前記溶融ガラスの両端部が厚くなるのを効果的に防止することができるようになる。
0016
上述した説明から明らかなように、本発明は、板状ガラスの割れが、製造過程における幅方向の特に端部の厚さが増大し、板厚分布の不均一性が増大することに起因するものであるという原因の究明に基づいてなされたものである。
0017
また、上記板状ガラスの端部が厚くなると、前記研磨工程における両端部の加工量が多くなるので、上述した板状ガラスの端部除去は、上記研磨工程の効率化、すなわち製造工程の効率化の観点からも有効である。
0018
なお、一般に、研磨工程は、ガラス板の表面を平滑に粗研磨するための1次研磨処理と、粗研磨されたガラス板の表面をさらに平滑に精密研磨するための2次研磨処理とに分けられるが、本発明における研磨処理は前者、すなわち1次研磨処理を意味するものである。
0019
また、一般にフッ素成分を含有するフツリン酸ガラスにおいては、ガラスの両端部が厚くなると、ガラスが固まるのに時間を要し、これによりガラス成分中のフッ素が揮散することで脈理が生じてしまう。脈理が生じると、かかる部分の屈折率がその他の部分の屈折率と相異なるようになるため、上述したようなフィルタガラスとして用いることができなってしまう。本発明では、上述したように、両端部を積極的に冷却圧延加工してガラスを固化させるため、脈理が生じにくいという効果も得ることができ、上述した不都合を回避することができる。
0020
特開2002−265229号には、ガラス板の幅を規定する一対の対向する側壁と、底面とを備えた鋳型内に、溶融ガラスを連続して鋳込み、上流側から下流側へと移動させる際に、前記側壁に近い部位ほど、より上流側から冷却を開始することが開示されている。しかしながら、かかる技術は、目的とするガラス板を鋳込み成形によって得るものであり、溶融ガラスをコンベア上に流出させた後に圧延加工を行う本発明の製造方法とは基本的な製法及び装置構成が異なる。
0021
また、上記文献には、溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成された圧延ローラを用い、前記溶融ガラスに摺接させる際に、前記溶融ガラスの両端部を冷却圧延加工することについては教示されていないとともに、何らの示唆もない。
0022
なお、本発明の一態様においては、前記溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成された前記圧延ローラの少なくとも一つは、前記中央部において前記溶融ガラスと摺接し、前記溶融ガラスの厚さを制限するように構成する。
0023
このような圧延ローラを用いることにより、溶融ガラスの両端部を冷却圧延加工しつつ、溶融ガラスの中央部の冷却も十分に行うことが可能となる。また、前記圧延ローラを溶融ガラスに最初に摺接する位置に設けた場合、コンベアにより搬送される溶融ガラスを堰き止め、溶融ガラスを幅方向に押し広げることができる。これにより、溶融ガラスを適切な幅を有する板状成形ガラスに成形可能となる。
0024
また、本発明の一態様においては、前記溶融ガラスを前記コンベアにより搬送する際に、前記溶融ガラスの両側面にガイド部材を摺接させ、前記溶融ガラスの搬送幅を規制するとともに、所定の第1の冷却機構によって前記ガイド部材を冷却し、前記溶融ガラスの前記両端部を冷却するようにすることができる。この場合、前記溶融ガラスの両端部をさらに速やかに硬化させることができるので、上述のように、表面張力に起因して前記両端部が厚くなるのを防止することができる。また、これに付随した脈理の生成防止や研磨工程の効率化を図ることができる。
0025
さらに、本発明の一態様においては、所定の第2の冷却機構を用いて、前記コンベアの、前記溶融ガラスの前記両端部が位置する近傍を選択的に冷却することができる。この場合も、前記溶融ガラスの両端部をさらに速やかに硬化させることができるので、上述のように、表面張力に起因して前記両端部が厚くなるのを防止することができる。また、これに付随した脈理の生成防止や研磨工程の効率化を図ることができる。
0026
なお、上述した第2の冷却機構は、前記コンベアを構成する無限軌道の内周において、前記コンベアの、前記溶融ガラスの流出位置よりも上流側に設けられた、水を散布する噴霧機構とすることができる。この場合、使用する冷媒は水である。
0027
また、前記第2の冷却機構は、前記コンベアを構成する無限軌道の内周において、前記コンベアの、前記溶融ガラスの流出位置よりも上流側に設けられた、圧縮気体を噴きつける空冷機構とすることができる。この場合、使用する冷媒は圧縮気体である。
0028
さらに、前記第2の冷却機構は、前記コンベアの、前記溶融ガラスの搬送面と相対する側の面に形成されたヒートシンク構造とすることができる。この場合は、前記ヒートシンク構造の大きな熱容量を利用して、溶融ガラスの両端部の熱を吸収し、前記両端部を間接的に冷却する。
発明の効果
0029
以上説明したように、本発明によれば、板状ガラスの製造過程において、割れ等を防止して生産性の向上を図ることができる。
発明を実施するための最良の形態
0030
以下、本発明のその他の特徴及び利点などに関し、発明を実施するための最良の形態に基づいて詳細に説明する。
0032
図1に示す板状ガラス成形装置1は、溶融状態のガラス3aが入れられた溶融窯2と、溶融窯2の下方に設けられたコンベア4と、コンベア4の搬送方向において、溶融窯2から前方に順次に設けられた複数の圧延ローラ6、複数の補助ローラ7、図示しない切断ユニットとを有している。また、コンベア4の側方には、溶融窯2の下方位置からガラス搬送方向に向けて一対のガイド部材10が設けられている。
0033
溶融窯2は、下方に開口部2aを有しており、所定量の溶融ガラスをコンベア4上に流出できるように構成されている。
0034
ここにコンベア4は、短冊状の複数のプレート4aが、レール上で連結されたエンドレスのチェーンである。個々のプレート4aは、耐熱性、耐食性に優れた材料で形成されている。プレート4aにおけるガラス3aとの接触面及びガイド部材8の摺動面は、成形される板状ガラスの表面を平滑に仕上げ、且つガイド7との間での摩耗を抑制するために、極めて平滑に仕上げられている。
0035
このようなプレート4aの材料としては、例えばSUS304、SUS304L、SUS321、SUS316、SUS316L、SUS310Sといったステンレス鋼などの金属の他、石材やセラミックスなどが例示される。また、コンベア4は、隣り合うプレート4aどうしの隙間に溶融状態のガラス3aが流れ込まないようにするために、この隙間が1mm以下になるように個々のプレート4aが連結されている。
0036
圧延ローラ6は、コンベア4のガラス3aの搬送面と対向するように、例えば6セット設けられている。また、これらの圧延ローラ6の長手方向がコンベア4のガラス3aの搬送方向と直交するように配置され、かつ各々が上流側から下流側へ並設されている。圧延ローラ6は、耐熱性及び耐食性に優れた金属材料により形成されている。この圧延ローラ6の内部には冷却水が流され、水冷される。
0037
本発明においては、圧延ローラ6の少なくとも一つが、例えば図2に示すように、長手方向の中央部において、断面が半円状の凹部6aが形成され、外周部の直径が中央部の直径に比較して大きくなるように構成されている。また、図3に示すように、長手方向の中央部において、断面が矩形状の凹部6bが形成され、外周部の直径が中央部の直径に比較して大きくなるように構成されている。
0038
なお、圧延ローラ6の残部は、外周部の直径と中央部の直径とが略同一な、一般の圧延ローラとする。
0039
また、図2及び3に示すような構成の圧延ローラは、コンベア4の搬送方向の上流側に設けることもできるし、下流側に設けることもできる。また、合計6セットの圧延ローラの内、前記搬送方向における前記上流側と前記下流側との間の、略中央部に設けるようにすることもできる。
0040
補助ローラ7は、コンベア4のガラス搬送方向における圧延ローラ6の下流側に設けられ、コンベア4のガラス搬送面と対向するように例えば3セット設けられている。また、これらの補助ローラ7は長手方向がコンベア4のガラス搬送方向と直交するように配置され、かつ各々が上流側から下流側へ並設されている。補助ローラ7は、圧延ローラ6と同様に、耐熱性及び耐食性に優れた金属材料により形成されている。この補助ローラ7の内部には冷却水が流され補助ローラ7は水冷される。
0041
なお、圧延ローラ6のみで均一な板厚の板状成形ガラス3bが得られる場合は、これら補助ローラ7は省略可能である。
0042
ガイド部材10は、各々が均一の厚さで成形されており、耐熱性、耐食性に優れた金属で形成されている。コンベア4および圧延ローラ6の外筒との接触面は、互いの摩耗を抑制するために、極めて平滑に仕上げられている。
0043
溶融窯2からコンベア4上に流出した溶融状態のガラス3aは、コンベア4によって連続的に搬送され、その表面が複数の圧延ローラ6と摺接することによって厚さ方向に圧延成形される。この際、圧延ローラ6の少なくとも一つが図2及び3に示すように、溶融ガラス3aの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成されている。したがって、溶融ガラス3aに摺接させる際に、溶融ガラス3aの両端部を冷却圧延加工し、速やかに硬化させることができるので、上述のように、表面張力に起因して前記両端部が厚くなるのを防止することができる。
0044
さらに、前記圧延ローラでは、前記中央部を通過する溶融ガラス3aの量が、前記外周部を通過する溶融ガラス3aの量よりも多くなるので、上述した冷却圧延加工の効果と相伴って、溶融ガラス3aの両端部が厚くなるのを効果的に防止することができるようになる。
0045
その後、溶融状態のガラス3aは、その表面が複数の補助ローラ7と摺接することによって厚さ方向の形状が整えられる。この際、溶融状態のガラス3aは、ガイド部材10により、その搬送幅を規制され、画定される。こうして溶融ガラス3aは成形され、板状成形ガラス3bとなる。
0046
その後、板状成形ガラス3bは切断ユニットに送られ、その搬送方向と直交する方向に切断される。これによって、板状成形ガラス3bからは、所定の長さ及び幅の板状成形ガラスが連続的に形成されることになる。
0047
所定の大きさに切断された板状成形ガラス3bは、その後、図示しない研磨処理機中に配置し、研磨処理(ラップ処理)がなされることになる。なお、通常、研磨処理機はバッチ式であって、複数の板状成形ガラス3bをセットして一括処理がなされる。
0048
ガラス3aがフツリン酸ガラス等の溶融状態で粘度の低いガラスや粘度の温度特性が急峻なガラスである場合、圧延ローラとコンベアとを用いて板状成形した場合、これらの隙間を通過した後においても、十分に冷却されておらず未だ粘度が低い状態にある。このため、一旦は幅方向の板厚が均一になるもののガラスの粘度が低いため、その表面張力により両端部に引っ張られることで幅方向中央部が薄く変形し、両端部が厚くなる傾向がある。
0049
本実施形態においては、上述したように、溶融ガラス3aの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成された圧延ローラを用い、溶融ガラス3aに摺接させる際に、溶融ガラス3aの両端部を冷却圧延加工するようにしている。このため、溶融ガラス3aの両端部を速やかに硬化させることができるので、上述のように、表面張力に起因して前記両端部が厚くなるのを防止することができる。
0050
さらに、前記圧延ローラでは、前記中央部を通過する溶融ガラス3aの量が、前記外周部を通過する溶融ガラス3aの量よりも多くなる。したがって、かかる観点からも、溶融ガラス3aの両端部が厚くなるのを効果的に防止することができるようになる。
0051
この結果、圧延ローラ6を通過した後の溶融ガラス3a、すなわち板状成形ガラス3bの厚さは幅方向において極めて均一となるので、切断ユニット、さらには研磨処理機へ搬送させる際の徐冷過程において、板状成形ガラス3b内に発生する熱応力が均一となる。また、研磨工程では、板状成形ガラス3bの端部に荷重が集中することを抑制できる。したがって、板状成形ガラス3bの上記熱応力や研磨処理における端部への荷重集中による割れを抑制することができる。このため、製造過程における板状成形ガラス3bの割れの発生頻度を激減させることができ、製造歩留まりを向上させることができる。
0052
なお、板状成形ガラス3bは、成形幅方向の中央部に比べて端部が厚くなると、上記研磨処理における両端部の加工量が多くなるので、上述した板状ガラスの端部除去は、上記研磨処理の効率化、すなわち製造工程の効率化の観点からも有効である。
0053
また、溶融状態のガラス3aの両端部が厚くなるのを防止しているので、溶融ガラス3aが固まるのに要する時間を短縮化することができる。したがって、特にフツリン酸ガラス等を用いた場合に、ガラス成分中のフッ素が揮散することに起因した脈理の発生を抑制することができるようになる。この結果、板状成形ガラス3bの全体に亘って屈折率を均一化することができ、フィルタガラスとして好適に用いることができる。
0055
図4に示すように、本態様では、ガイド部材10のガラスとの接触面には、外径がガイド部材10の厚さとほぼ同一径かもしくはわずかに小さい径で成形された、第1の冷却機構としてのパイプ11が接触するように配置されている。パイプ11内には冷却水が流れるようになっている。
0056
本態様によれば、ガイド部材10によって、溶融ガラス3aの両端部をさらに速やかに硬化させることができるので、上述のように、表面張力に起因して前記両端部が厚くなるのを防止することができる。また、これに付随した脈理の生成防止や研磨工程の効率化を図ることができる。
0057
なお、その他の構成について図1に示す構成要素と同一であるので、説明を省略する。
0058
図5は、本発明の板状ガラスの製造装置の他の例における要部を模式的に示す斜視図である。本態様では、コンベア4を構成する無限軌道の内周において、コンベア4の、溶融ガラス3aの流出位置よりも上流側に、第2の冷却機構としての散水装置12を設けるとともに、空気吹付け装置14を設けている。
0059
本態様では、散水装置12から、コンベア4の、溶融ガラス3aの前記両端部が位置する近傍に選択的に水を噴射して冷却するとともに、空気吹付け装置14から同じくコンベア4の、溶融ガラス3aの前記両端部が位置する近傍に選択的に圧縮空気を吹付け、コンベア4に付着した水滴を乾燥除去するようにしている。
0060
したがって、コンベア4の、溶融ガラス3aの前記両端部が位置する近傍を選択的に冷却することが出来るので、溶融ガラス3aの前記両端部をさらに速やかに硬化させることができるようになる。したがって、上述のように、溶融ガラス3aの前記両端部が表面張力に起因して厚くなるのを防止することができ、それに付随し脈理の生成防止や研磨工程の効率化を図ることができる。
0062
図6は、本発明の板状ガラスの製造装置のその他の例における要部を模式的に示す断面図であり、コンベア4の周辺領域を拡大して示す図である。
0063
本態様では、第2の冷却機構として、コンベア4の、溶融ガラス3aの搬送面と相対する側の面にヒートシンク構造16を設けている。したがって、ヒートシンク構造16の大きな熱容量を利用して、溶融ガラス3aの両端部の熱を吸収し、前記両端部を間接的に冷却することができるようになる。
0064
この結果、コンベア4の、溶融ガラス3aの前記両端部が位置する近傍を選択的に冷却することが出来るので、溶融ガラス3aの前記両端部をさらに速やかに硬化させることができるようになる。したがって、上述のように、溶融ガラス3aの前記両端部が表面張力に起因して厚くなるのを防止することができ、それに付随し脈理の生成防止や研磨工程の効率化を図ることができる。
0065
なお、ヒートシンク構造16は、熱伝導に優れた部材、例えば金属材料からなる部材を、コンベア4の上記相対する面に付着させることによって形成することができる。前記金属材料としては、銅やアルミニウム、あるいはこれらの合金を用いることができる。
0066
図1に示す装置において、溶融窯側から2番目及び3番目に配置される圧延ローラ6を図2に示すような構成とした場合(実施例1)、及び図3に示すような構成とした場合(実施例2)それぞれにおいて、上述したような製造工程に基づいてフツリン酸ガラスからなる板状成形ガラスを得た。なお、図2に示す圧延ローラ6においては、中央部において、幅60mm、曲率半径750mmの凹部6aを形成し、図3に示す圧延ローラ6においては、中央部において、幅110mm、深さ1ミリの凹部6bを形成した。また、図2及び図3に示す圧延ローラ6の有効幅(図1において圧延ローラ6とガラス3aとが接するガイド部材10にて規制された幅)は、いずれも145mmとした。
0068
表1には、前記板状成形ガラスの板状成形における割れの発生頻度、あるいは後工程の研磨工程における割れの発生頻度及び研磨工程における擦り残し度合いを示した。
0069
また、比較のために、図9には、凹部を有しない、外周部と中央部との直径が略同一の、通常の圧延ローラのみを用いて板状成形ガラスを得た場合の、幅方向の板厚分布測定結果(2枚測定)を示し、同様に割れの発生頻度等を表1に示した(比較例)。
0070
図7〜9に示す結果から明らかなように、図2及び図3に示すような溶融ガラスの両端部に摺接する外周部の直径が中央部の直径よりも大きくなるように構成した圧延ローラを使用して板状成形ガラスを得ることにより、幅方向中央部の板厚の薄肉状態が緩和され幅方向の板厚分布が均一化することが分かる。
0071
また、表1から明らかなように、図2及び図3に示すような構成の圧延ローラを用いて板状成形ガラスを製造する場合は、その幅方向の板厚が均一であることに起因して、板状成形中及び研磨工程における割れの発生頻度が、汎用の圧延ローラを用いた場合に比較して、十分に低いことが分かる。また、研磨工程における擦り残しが少ないことが分かる。
0072
0073
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
0074
例えば、図1に示す装置において、溶融窯2からコンベア4上に流出した溶融状態のガラス3aの状態を図示しない撮像装置で撮像し、得られた画像を演算処理することによって所定制御信号を得、圧延ローラ6及び補助ローラ7の回転速度やコンベア4との隙間を制御し、目的とする板厚の板状成形ガラス3bが得られるようにすることもできる。
図面の簡単な説明
0075
本発明の板状ガラスの製造方法に使用する板状ガラス成形装置の要部を模式的に示す斜視図である。
図1に示す装置の圧延ローラの概略構成を示す断面図である。
同じく、図1に示す装置の圧延ローラの概略構成を示す断面図である。
本発明の板状ガラスの製造装置の他の例における要部を模式的に示す斜視図である。
本発明の板状ガラスの製造装置の他の例における要部を模式的に示す斜視図である。
本発明の板状ガラスの製造装置のその他の例における要部を模式的に示すコンベアの断面図である。
実施例で得た板状成形ガラスの、幅方向の板厚分布を示すグラフである。
同じく、実施例で得た板状成形ガラスの、幅方向の板厚分布を示すグラフである。
同じく、実施例で得た板状成形ガラスの、幅方向の板厚分布を示すグラフである。