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技術 神経疾患の予防または治療のうち少なくともいずれかを行うための(S)−ロスコビチンの使用

出願人 ニューロキン
発明者 ティムシット、セルジュメン、ベネディクトメイヤー、ローラン
出願日 2007年3月30日 (12年9ヶ月経過) 出願番号 2009-502153
公開日 2009年9月3日 (10年4ヶ月経過) 公開番号 2009-531399
状態 特許登録済
技術分野 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬 窒素含有縮合複素環(3) 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 化合物または医薬の治療活性 非環式または炭素環式化合物含有医薬 プリン,テリジン系化合物
主要キーワード 拠り所 立体性 ペナンブラ 各処理条件 壊死性コア 血栓溶解処置 デスモテプラーゼ スティール
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題・解決手段

本発明は、6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチルプロピルアミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうち少なくとも1つを、神経疾患、特に神経病変に関連した神経疾患の予防または治療のうち少なくともいずれか一方を目的とした医薬品の製造に使用することに関する。

概要

背景

興奮毒性とは、グルタミン酸受容体を過剰に活性化してニューロン死をもたらす興奮性アミノ酸蓄積に相当する(非特許文献1)。興奮性アミノ酸とは、アスパラギン酸カイニン酸およびその誘導体の一部など数多くのメンバーを含んでなる一群グルタミン酸構造アナログを表し、強力なニューロン興奮剤として知られている。グルタミン酸は、疑う余地なく最も良く解析された興奮性アミノ酸である。興奮性アミノ酸の作用は、NMDA型、AMPA型およびカイニン酸型の、代謝調節型かつイオンチャネル型グルタミン酸受容体によって伝達される。

よって興奮毒性は、数々の神経疾患、特に急性および慢性の神経疾患に関連した神経病変発症において主要な役割を果たしている(非特許文献2〜4)。
従って、特に興奮毒性の現象に関連している神経病変の予防または治療のうち少なくともいずれかを行うために神経保護作用を有する化合物を同定かつ解析することは好都合なことである。

ロスコビチンのR異性体およびラセミ混合物をニューロンのアポトーシスの治療において使用することは、既に特許文献1に記載されている。この特許文献は、ロスコビチンの抗有糸分裂特性を明らかにし、特に、細胞分裂サイクルもしくはアポトーシスに関与する種々のサイクリン依存性キナーゼ(cdk)タンパク質に対するロスコビチンの阻害活性を示している。その結果に基づいて、かつ細胞の分裂サイクルとアポトーシスとの周知の関係(非特許文献5)を拠り所として、上記特許文献の著者らはニューロンのアポトーシスに対しロスコビチンが作用する可能性を示唆している。

いくつかの化合物がすでに神経病変の治療に使用されているものの、ある種の毒性のような副作用を有する場合もあれば、効果が不十分な場合もある。
欧州特許第0874847号明細書
オルニー、JW(Olney JW)およびイシマル、MJ(Ishimaru MJ)、1999年、「Excitotoxic cell death.Cell death and diseases of the nervous system」、ヒューマナプレス社(Humana Press Inc)、p.197−219
チェ(Choi)、1998年、TrendsNeurosci,vol.11,p.465−459
コイル(Coyle)およびパットファルケン(Puttfarcken)、1993年、Science,vol.262,p.689−695
リプトン(Lipton)およびローゼンバーグ(Rosenberg)、1994年、New Engl J Med,vol.330,p.613−622
バーミューレン(Vermeulen)ら、2003年、Cell Prolif.,vol.36(3),p.131−49

概要

本発明は、6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチルプロピルアミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうち少なくとも1つを、神経疾患、特に神経病変に関連した神経疾患の予防または治療のうち少なくともいずれか一方を目的とした医薬品の製造に使用することに関する。

目的

本発明の目的は、(S)−ロスコビチンすなわち6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチル)]プロピル]アミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうち少なくとも1つを、神経疾患の予防または治療のうち少なくともいずれかのための医薬品を製造するために使用することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチルプロピルアミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうち少なくとも1つの、神経疾患の予防または治療のうち少なくともいずれか一方を目的とした医薬品の製造のための使用。

請求項2

前記神経病変興奮毒性現象に関連していることを特徴とする、請求項1に記載の使用。

請求項3

前記神経疾患は慢性または急性の神経疾患であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の使用。

請求項4

前記慢性の神経疾患は、−神経変性疾患であって、−錐体外路症候群を伴う疾患、特にパーキンソン病進行性核上性麻痺スティール・リチャードソンオルウスキー症候群)、多系統萎縮症および線条体黒質変性症;−認知症、特にアルツハイマー病血管性認知症レビー小体病、前頭側頭型認知症、大脳皮質基底核変性症およびハンチントン舞踏病、ならびに−その他の神経変性疾患、特に筋萎縮性側索硬化症およびクロイツフェルトヤコブ病;および−脱髄疾患、特に多発性硬化症、急性散在性アレルギー脳炎、Devic病(ニューロミエロパシー)およびミエリン障害を伴う遺伝性疾患、特にペリツェウス・メルツバッハー病からなる群から選択される、請求項3に記載の使用。

請求項5

前記急性の神経疾患は、−てんかん;−てんかん重積状態;−脳卒中、特に虚血性のもの;−脳出血;−心停止時の脳低酸素状態;−頭蓋外傷性障害;ならびに−局所性脳低酸素状態または全脳低酸素状態のうち少なくともいずれか一方を引き起こす神経疾患であって、特に体外循環時に、特に心血管インターベンションおよび頸動脈手術の際に発生するものからなる群から選択される、請求項3に記載の使用。

請求項6

脳出血は、血栓溶解剤、特に組織プラスミノーゲン活性化因子の使用と関係している、請求項5に記載の使用。

請求項7

前記医薬品は、ドネペジルセレギリンリバスチグミンガランタミンメマンチンおよびリルゾールからなる群から選択される少なくとも1つの抗神経変性剤をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。

請求項8

前記医薬品は、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼウロキナーゼおよびデスモテプラーゼからなる群から選択される少なくとも1つの血栓溶解剤をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。

請求項9

前記医薬品は、アスピリンチクロピジンクロピドグレルペルサンチンアブシキシマブおよびフルルビプロフェンからなる群から選択される少なくとも1つの血小板凝集阻害剤をさらに含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。

請求項10

前記医薬品は、経口投与直腸投与経皮投与経肺投与経鼻投与舌下投与および非経口投与、特に皮内投与皮下投与筋肉内投与静脈内投与動脈内投与、脊髄内投与、関節内投与、胸膜内投与および腹腔内投与によって投与することが可能である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。

請求項11

前記医薬品は、錠剤カプセル剤ピル剤、シロップ剤懸濁剤溶液散剤顆粒剤乳剤ミクロスフェア、注射可能な溶液、下用スプレー剤および皮膚パッチ剤からなる群から選択された形態である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。

請求項12

前記6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうち1つは、前記医薬品中に単位用量あたり100mg〜5g、好ましくは100mg〜2gの範囲の量で存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。

請求項13

前記医薬品は医薬として許容可能な担体をさらに含んでなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。

技術分野

0001

本発明は、神経疾患、特に興奮毒性という現象に特に関係した神経病変に関連のある神経疾患の、治療および予防の分野に関する。より具体的には、本発明は(S)−ロスコビチン化学名:6(ベンジルアミノ)2(S)[[1(ヒドロキシメチル)]プロピルアミノ]−9−イソプロピルプリン)の新規治療用途に関する。

背景技術

0002

興奮毒性とは、グルタミン酸受容体を過剰に活性化してニューロン死をもたらす興奮性アミノ酸蓄積に相当する(非特許文献1)。興奮性アミノ酸とは、アスパラギン酸カイニン酸およびその誘導体の一部など数多くのメンバーを含んでなる一群グルタミン酸構造アナログを表し、強力なニューロン興奮剤として知られている。グルタミン酸は、疑う余地なく最も良く解析された興奮性アミノ酸である。興奮性アミノ酸の作用は、NMDA型、AMPA型およびカイニン酸型の、代謝調節型かつイオンチャネル型グルタミン酸受容体によって伝達される。

0003

よって興奮毒性は、数々の神経疾患、特に急性および慢性の神経疾患に関連した神経病変の発症において主要な役割を果たしている(非特許文献2〜4)。
従って、特に興奮毒性の現象に関連している神経病変の予防または治療のうち少なくともいずれかを行うために神経保護作用を有する化合物を同定かつ解析することは好都合なことである。

0004

ロスコビチンのR異性体およびラセミ混合物をニューロンのアポトーシスの治療において使用することは、既に特許文献1に記載されている。この特許文献は、ロスコビチンの抗有糸分裂特性を明らかにし、特に、細胞分裂サイクルもしくはアポトーシスに関与する種々のサイクリン依存性キナーゼ(cdk)タンパク質に対するロスコビチンの阻害活性を示している。その結果に基づいて、かつ細胞の分裂サイクルとアポトーシスとの周知の関係(非特許文献5)を拠り所として、上記特許文献の著者らはニューロンのアポトーシスに対しロスコビチンが作用する可能性を示唆している。

0005

いくつかの化合物がすでに神経病変の治療に使用されているものの、ある種の毒性のような副作用を有する場合もあれば、効果が不十分な場合もある。
欧州特許第0874847号明細書
オルニー、JW(Olney JW)およびイシマル、MJ(Ishimaru MJ)、1999年、「Excitotoxic cell death.Cell death and diseases of the nervous system」、ヒューマナプレス社(Humana Press Inc)、p.197−219
チェ(Choi)、1998年、TrendsNeurosci,vol.11,p.465−459
コイル(Coyle)およびパットファルケン(Puttfarcken)、1993年、Science,vol.262,p.689−695
リプトン(Lipton)およびローゼンバーグ(Rosenberg)、1994年、New Engl J Med,vol.330,p.613−622
バーミューレン(Vermeulen)ら、2003年、Cell Prolif.,vol.36(3),p.131−49

発明が解決しようとする課題

0006

従って、神経病変を治療するための特性が改善された化合物が依然として必要とされている。

課題を解決するための手段

0007

驚くべきことに、本発明者らは、ロスコビチンのS異性体により上述の不都合を全てまたは部分的に解消することが可能となること、ならびにロスコビチンのS異性体はR異性体よりも優れた神経保護効果を有することを発見した。よって本発明者らはここで、特定の化合物すなわち(S)−ロスコビチンを、特に興奮毒性の現象に関係した神経病変の効果的な予防または治療のうち少なくともいずれかを行うために同定かつ解析した。

0008

(S)−ロスコビチンのこの神経保護作用は特に予想外のことである。具体的には、(S)−ロスコビチンは、細胞の分裂サイクルもしくはアポトーシスに関与する種々のサイクリン依存性キナーゼ(cdk)タンパク質の阻害については、(R)−ロスコビチンよりも弱い。特に、cdk−5、cdk−1/サイクリンBおよびcdc2/サイクリンBキナーゼタンパク質に対する(S)−ロスコビチンの阻害活性は、(R)−ロスコビチンの阻害活性より低い(De Azevedoら,Eur.J.Biochem.243,518−526,1997;Bachら,The Journal of Biochemical Chemistry,280,35,31208−31219)。ちなみにこれらのキナーゼタンパク質、特にcdk−5およびcdc2/サイクリンBは、ニューロン死において役割を果たすことが知られている(DhavanおよびTsai,2001;Busserら、1998)。

0009

第1の態様によれば、本発明の目的は、(S)−ロスコビチンすなわち6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチル)]プロピル]アミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうち少なくとも1つを、神経疾患の予防または治療のうち少なくともいずれかのための医薬品を製造するために使用することである。

0010

「(S)−ロスコビチン」とは、下式

0011

の化合物、6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチル)]プロピル]アミノ]−9−イソプロピルプリン)を指し、特にエナンチオマー過剰率が90%以上、特に95%以上、さらには99%以上、あるいは99.5%以上にもなるものを指す。

0012

エナンチオマー過剰率は、次式すなわち((S)−ロスコビチン−(R)−ロスコビチン/(S)−ロスコビチン+(R)−ロスコビチン)×100で定義することができる。
(S)−ロスコビチンは、当業者に良く知られた方法に従って、例えばHavlicekら,J.Med.Chem,1997,40,408およびWangら,Tetrahefron:Asymmetry,2001,12,2891に記載されているような、2,6−ジクロロプリンからの3工程の合成によって得ることができる。

0013

(S)−ロスコビチンは、アレクシスコーポレイション(Alexis Corporation)から参照番号ALX−350−293−M001として入手することもできる。

0015

(S)−ロスコビチンの医薬として許容可能な塩は、当業者に良く知られた方法により得ることができる。
概して「神経疾患」とは、「神経病変」を特徴とする疾患を意味する。「神経病変」とは、神経系の解剖学的かつ生理学的特徴における構造的変化を指す。該病変は微視的な場合もあれば肉眼見える場合もある。該病変は外傷由来する場合もあれば、疾患、特に急性もしくは慢性の神経疾患を原因とする場合もある。これらの神経病変は様々な種類の細胞、ニューロン、アストロサイトオリゴデンドロサイトミクログリアおよびこれらの細胞の前駆細胞に影響を及ぼす可能性がある。

0016

ある場合には、神経病変は興奮毒性の現象と関係している。
特に、神経病変の予防または治療のうち少なくともいずれか一方は(S)−ロスコビチンの神経保護活性と関連している。

0017

神経保護」とは、化合物が、健康な神経細胞または病気の神経細胞のうち少なくともいずれかの死を予防する能力を指す。神経細胞とは神経系の細胞、特に脳の細胞を意味する。これらの神経細胞は、特にニューロン、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトから選ばれる場合がある。

0018

神経保護は、神経系の病気、特に急性もしくは慢性の神経系の病気の場合に特に有利である。具体的には、これらの病気は細胞死をもたらす神経細胞の変性と関連する場合がある。従ってこのことから、上記の神経細胞または該神経細胞の少なくとも一部であって健康なものまたは病気のもののうち少なくともいずれかの死について、予防または遅延のうち少なくともいずれかを行うために化合物を使用することが可能となる。

0019

例えば、脳卒中の後には一部の神経細胞が即座に(またはほぼ即座に)死ぬことによって、いわゆる「壊死性コア」が明確となる。しかしながら、壊死性コアに隣接して、細胞が徐々に冒されてから細胞死に至る、いわゆる「半影帯(ペナンブラ)」領域も存在する。

0020

神経保護作用を有するある種の治療薬を使用することにより、これらの細胞の少なくとも一部が神経死に向かうプロセスを抑制することができる。
本発明の使用の特定の実施形態によれば、神経疾患は慢性神経疾患である。

0021

「慢性神経疾患」とは、該疾患の症状が初期には軽微であるが、徐々に、例えば数年かけて進行かつ悪化しうる神経疾患を指す。
慢性神経疾患の中には次のものを挙げることができる:
神経変性疾患(Adams and Victor;Third edition;McGraw−Hill book company;1995)であって:
錐体外路症候群を伴う疾患、特にパーキンソン病進行性核上性麻痺スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群)、多系統萎縮症および線条体黒質変性症
認知症、特にアルツハイマー病血管性認知症レビー小体病、前頭側頭型認知症、大脳皮質基底核変性症およびハンチントン舞踏病、ならびに
− その他の神経変性疾患、特に筋萎縮性側索硬化症およびクロイツフェルトヤコブ病(Choi,1988;Coyle and Puttfarcken,1993;Lipton and Rosenberg,1994);
脱髄疾患、特に多発性硬化症、急性散在性アレルギー脳炎、Devic病(ニューロミエロパシー)およびミエリン障害を伴う遺伝性疾患、特にペリツェウス・メルツバッハー病。

0022

別の特定の実施形態によれば、神経疾患は急性神経疾患、特に虚血性脳血管傷害である。
「急性神経疾患」とは、該疾患の症状および臨床的兆候が初期において非常に著明であり、急速に、例えば数日後には安定化する神経疾患を指す。

0023

急性神経疾患には:
てんかん
てんかん重積状態;
− 脳卒中、特に虚血性のもの;
脳出血
心停止時の脳低酸素状態;
頭蓋外傷性障害;ならびに
局所性脳低酸素状態または全脳低酸素状態のうち少なくともいずれか一方を引き起こす神経疾患であって、特に体外循環時に、特に心血管インターベンションおよび頸動脈手術の際に発生するもの、が含まれる。

0024

脳出血とは脳実質内出血および髄膜出血を指す。髄膜出血の後では血管けいれんに関連して虚血が生じる場合がある。(S)−ロスコビチンは髄膜出血後の脳虚血を防止または低減すると考えられる。

0025

特に、ある種の脳出血は、血栓溶解剤、特に組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)の使用と関係する場合がある。詳細には、虚血性脳卒中から1時間のうちに血栓溶解剤を使用すると脳出血を引き起こす場合がある。このような脳出血は、虚血性傷害の際の血栓溶解処置の主な副作用である。従って、(S)−ロスコビチンは、血液脳関門を保護することによって脳出血が発生するリスクを低減するために、血栓溶解剤との併用において有利であると考えられる。(S)−ロスコビチンは脳内皮細胞において抗アポトーシス剤として作用すると考えられる。脳内皮細胞は、血液脳関門の主要な構成要素のうちの1つである。

0026

本発明の医薬品は、少なくとも1つの抗神経変性剤、特に慢性かつ/または急性の神経疾患(より具体的には虚血性脳卒中)の治療または予防のうち少なくともいずれかを意図した薬剤をさらに含んでもよい。

0027

「抗神経変性剤」とは、神経系の変性の治療または予防のうち少なくともいずれかを行うための化合物を指す。抗神経変性剤の例には、ドネペジルセレギリンリバスチグミンおよびガランタミンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ならびにメマンチンおよびリルゾールのような抗グルタミン酸作動薬が挙げられる。従って、(S)−ロスコビチンを、アルツハイマー病またはその他の認知症、例えば血管性認知症、レビー小体病、前頭側頭型認知症、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン舞踏病もしくはパーキンソン病の認知症などについて、抗コリンエステラーゼ性医薬品(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)または抗グルタミン酸作動性医薬品(メマンチン)と併用することができる。(S)−ロスコビチンを、筋萎縮性側索硬化症についてリルゾールと併用することも考えられる。

0028

(S)−ロスコビチンおよび抗神経変性剤を、同時に、別々に、または時間を経て段階的に、投与することが可能である。
(S)−ロスコビチンおよび抗神経変性剤は、本発明の医薬品において10/1〜1/10のモル比で存在することができる。

0029

本発明の医薬品は、少なくとも1つの血栓溶解剤をさらに含むことができる。
「血栓溶解剤」とは、血液の塊を溶解することのできる物質、例えば組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、ストレプトキナーゼウロキナーゼおよびデスモテプラーゼなどを指す。

0030

(S)−ロスコビチンおよび血栓溶解剤を、同時に、別々に、または時間を経て段階的に、投与することが可能である。
(S)−ロスコビチンおよび血栓溶解剤は、本発明の医薬品において100/1〜1/100のモル比で存在することができる。

0031

血栓溶解剤は副作用を有する場合があり、例えば脳出血を引き起こすことがある。(S)−ロスコビチンを、少なくとも1つの血栓溶解剤(特にt−PA)と併用することにより、副作用の一部(得に脳出血のリスク)を低減することができる。

0032

本発明の医薬品は、少なくとも1つの血小板凝集阻害剤をさらに含んでもよい。
「血小板凝集阻害剤」の例には、アセチルサリチル酸塩酸チクロピジンクロピドグレルジピリダモールアブシキシマブおよびフルルビプロフェンが挙げられる。

0033

(S)−ロスコビチンを、虚血性脳卒中について血小板凝集阻害剤と併用することができる。
(S)−ロスコビチンおよび血小板凝集阻害剤を、同時に、別々に、または時間を経て段階的に、投与することが可能である。

0034

(S)−ロスコビチンおよび血小板凝集阻害剤は、本発明の医薬品において10/1〜1/10のモル比で存在することができる。
本発明の医薬品は様々な経路で投与することが可能である。例えば、本発明の医薬品に使用可能な投与方法には、経口投与直腸投与経皮投与経肺投与経鼻投与舌下投与および非経口投与、特に皮内投与、皮下投与筋肉内投与静脈内投与動脈内投与、脊髄内投与、関節内投与、胸膜内投与および腹腔内投与が挙げられる。

0035

特に、神経疾患が急性神経疾患である場合、本発明の医薬品の好ましい投与経路は、静脈内投与、筋肉内投与、舌下投与および経皮投与であり、好ましくは静脈内投与および筋肉内投与、最も好ましくは静脈内投与である。

0036

特に、神経疾患が慢性神経疾患である場合、本発明の医薬品の好ましい投与経路は経口投与である。
本発明の医薬品は、1回または複数回に分けて投与することもできるし、持続放出として、特に連続潅流で投与することもできる。

0037

本発明の医薬品は、様々な形態、具体的には、錠剤カプセル剤ピル剤、シロップ剤懸濁剤溶液散剤顆粒剤乳剤ミクロスフェアおよび注射可能な溶液からなる群から選択された形態であってよく、好ましくは錠剤、注射可能な溶液、下用スプレー剤および皮膚パッチ剤でよい。

0038

上記の様々な形態は、当業者に良く知られた方法で得ることができる。
非経口投与に適した製剤、この投与経路に適した医薬として許容可能なビヒクル、ならびに相応の製剤化技法および投与技法を、当業者に良く知られた方法で、具体的には手引書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences(第20版、2000年、米国ペンシルニアイースト所在マック・パブリシングカンパニー(Mack Publishing Co.))に記載の方法で実施することができる。

0039

別の特定の実施形態によれば、6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ]−9‐イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうちの少なくとも1つは、医薬品中に単位用量あたり50mg〜5g、特に100mg〜2gの範囲の量で存在する。

0040

本発明の医薬品は、1日あたり1回または複数回投与、好ましくは1日あたり1〜4回投与として投与することができる。
好都合には、(S)−ロスコビチンを1日あたり1〜200mg/kgの範囲の量で投与することができる。

0041

好都合には、医薬品は、50mg〜5gの範囲の量の6−(ベンジルアミノ)−2(S)−[[1−(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ]−9−イソプロピルプリン)または医薬として許容可能なその塩のうちの少なくとも1つを含んでなる。

0042

本発明の使用の別の特定の実施形態によれば、医薬品は医薬として許容可能な担体をさらに含んでなる。
「医薬として許容可能な担体」とは、医薬製品における使用に適した任意の材料を指す。

0044

本発明の医薬品は、該組成物の総重量に対する比率重量比で5%〜99%、特に重量比で10%〜90%、特定的には重量比で20%〜75%の範囲の、医薬として許容可能な担体を含むことができる。

0045

本発明のその他の利点および特徴については、以下の図面および実施例から明らかとなろう。
以下の図面および実施例は例示のために示すものであり、限定を意味するものではない。

発明を実施するための最良の形態

0046

実施例
I.ニューロン死に対する(S)−ロスコビチンの神経保護作用の検討
I.1.in vitro興奮毒性モデル海馬細胞の神経混合培養物における(S)−ロスコビチンの神経保護作用の検討
このモデルは、齢18日(E18)のラット海馬から採取してグルタミン酸アナログであるカイニン酸(KA)に曝露したニューロン細胞およびグリア細胞の混合培養物に相当する。in vivoにおける細胞の環境をより十分に反映するために、ニューロンの単独培養系よりも上記混合培養系が選択された。この培養条件下では、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトはカイニン酸処理の影響を受けなかった。図8は、このようにして厳密なニューロンの複合的興奮毒性細胞モデルにおいて観察されたニューロン死を例証している。

0047

グルタミン酸作動性のアゴニストであるカイニン酸が、本実験における興奮毒性剤としてin vitroで選択された。この選択は、ネクローシス型の細胞死をもたらすNMDAアゴニストと比較してカイニン酸がプログラム細胞死を誘発することを示したin vivo実験に特に基づいたものである(Portera−Cailliau;1997)。このプログラム細胞死は急性および慢性の神経疾患においても観察されることが多い。グルタミン酸の重要性および関連性は、市販の抗グルタミン酸作動性医薬品がこれまでアルツハイマー病(メマンチン、Reisberg 2003;N.Eng.J.Med:348:1333−1341)および筋萎縮性側索硬化症(リルゾール)のヒトに用いられているという事実から、近年際立ってきた。

0048

I.1.1.実験プロトコール
海馬細胞培養物を、胚齢18日(E18)のウィスター(Wistar)ラットから、Medinaら(1994,J.Neurophysiol.,72,456−465)に記載されているようにして調製した。in vitroで10日間培養した後、細胞を、カイニン酸または(S)−ロスコビチンのうち少なくともいずれか一方の存在下でインキュベートした。培養物を濃度200μMのカイニン酸に5時間曝露した。この条件により培養物中のニューロンを40%〜50%死滅させることが可能である。(S)−ロスコビチンは、5種類の異なる濃度(0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μMおよび5μM)について、単独またはカイニン酸と組み合わせて試験した。培養物中の細胞への(S)−ロスコビチンの添加は、カイニン酸と同時、またはカイニン酸の添加の前(1時間前)もしくは後(1、2、もしくは3時間後)とした。

0049

培養物中の細胞を、カイニン酸または試験化合物のうち少なくともいずれか一方とともに5時間インキュベートしてからニューロン死を観察した。対照DMSOおよびH2Oのビヒクルのみとともにインキュベートした。

0050

ニューロン死は、位相差顕微鏡下での観察と、細胞死のマーカーであるヨウ化プロピジウム(PI)の使用とにより評価した。ヨウ化プロピジウムは、死細胞核酸に特異的に結合する赤色のマーカーである。代表の視野のニューロンを計数した。3例の個々の培養物から、1条件あたり少なくとも5視野(ニューロン総数およそ150)について調査した。

0051

各々の実験条件について、ニューロン死滅率(%)を、ヨウ化プロピジウムで標識されたニューロンの数と、位相差顕微鏡観察で示されたニューロンの総数との比で表した。
試験化合物の神経保護作用を測定するために、相対的ニューロン死(RND)を算出し、神経保護指数(NI)を以下のように定義した:
RND=ニューロン死(%)(KA+試験化合物)−ニューロン死(%)(対照)/ニューロン死(%)(KA)−ニューロン死(%)(対照)
ならびに
NI=100%−RND
定義から、カイニン酸のみで処理した細胞における相対的ニューロン死(%)(RND)は100%、神経保護指数(NI)は0となった。

0052

50%の神経保護指数(NI)を得るために必要な試験化合物の濃度をCN50:神経保護濃度とした。
I.1.2結果
I.1.2.1(S)−ロスコビチンの神経保護作用
ニューロン死に対する(S)−ロスコビチンの作用(図1に示す)を、培養の中間期にカイニン酸と同時に(S)−ロスコビチンを添加した場合について評価した。ニューロン死(%)(RND)はカイニン酸処理群では100%であったが、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、および5μMの(S)−ロスコビチンの存在下ではそれぞれ81.5%、50.8%、27.9%、21.6%および15.3%であった。

0053

先に定義した神経保護指数(NI)は、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、および5μMの(S)−ロスコビチン用量についてそれぞれ18.5%、49.2%、72.1%、78.4%および84.7%であった。

0054

従って(S)−ロスコビチンの神経保護作用は用量依存的である。
先に定義した神経保護濃度は、(S)−ロスコビチンについて0.19μMと測定された(図2)。

0055

I.1.2.2 (S)−ロスコビチンの神経保護作用の治療濃度域の測定
(S)−ロスコビチンの神経保護作用の治療濃度域(図3に示す)を、該化合物が培養の中間期にカイニン酸の添加と同時またはその前(1時間前、T−1)もしくは後(1時間後、2時間後もしくは3時間後;T+1、T+2、T+3)に添加された場合について、ニューロンを保護する同化合物の能力を計測することにより測定した。様々な濃度の(S)−ロスコビチンについて検討した(0.5μM、1μMおよび5μM)。ニューロン死(%)(RND)は、カイニン酸処理群では様々な試験時間において100%であり、0.5μM、1μM、および5μMの(S)−ロスコビチンの存在下においてはそれぞれ、T−1では23.3%、−10.4%、−14.4%、T0では27.9%、21.6%、15.3%、T+1では64.9%、30.7%、19.5%、T+2では66.4%、44.8%、14.7%、ならびにT+3では71.0%、71.7%、65.3%であった。

0056

先に定義した神経保護指数(IN)は、0.5μM、1μM、および5μMの(S)−ロスコビチン用量についてそれぞれ、T−1では76.6%、110.4%、114.4%、T0では72.1%、78.4%、84.7%、T+1では35.1%、69.3%、80.5%、T+2では33.6%、55.2%、85.3%、ならびにT+3では29.0%、28.3%、34.7%であった。

0057

(S)−ロスコビチンの神経保護作用は、該化合物が毒性薬剤後の2時間までに培養物に添加される場合に観察される。加えて、(S)−ロスコビチンの作用は用量依存的である。さらに、(S)−ロスコビチンは、カイニン酸によって引き起こされるニューロン死に対する予防効果を有する。

0058

I.2 in vitro複合的興奮毒性モデル:ラット海馬の器官培養物における(S)−ロスコビチンの神経保護作用の検討
器官培養物は、培養下におかれた器官移植片である。該培養物は、in vitro条件の制御と、in situ環境に近い組織複雑性との組み合わせという利点を有している。具体的には、この培養物中では神経組織器官構造が維持される(Stoppiniら,1991,J Neurosci Methods,vol.37,pages 173−182)。該培養物はかなり広がるが立体性を維持し、錐体神経の典型的な形態が保たれる。シナプスの構成および固有の海馬繊維の走行はin vivoの状態と同じように展開される。同様に、培養物中のシナプスの成熟および形成プロセスは、in vivoについて記述されたプロセス(Mullerら,1993,Dev Brain Res,vol.71,pages 93−100;Buchsら,1993,Dev Brain Res,vol.71,pages 81−91)を反映している。

0059

I.2.1実験プロトコール
日齢(P2)のラットの海馬を用いて、Stoppiniら,1991,J Neurosci Methods,vol.37,pages 173−182の方法により器官培養を実施した。ラットは断頭により屠殺する。脳を解剖媒体(1×PBS、5.85g/lグルコース)中で4℃にて解剖した。組織チョッパー(McIlwain)を用いて厚さ400μmの横断切片を作製する。分離させたら、切片多孔質(0.4μM)かつ透明なメンブレンインサート(直径30mm)上で、培地(1×MEM、20%ウマ血清、1mg/lインスリン)中に置く。

0060

培地全体を2日ごとに交換する。培養物は、CO2濃度が高く(5%)湿潤な雰囲気インキュベータ内で37℃に維持する。
培養17日後、血清を含んだ培地を、ヨウ化プロピジウム(PI;7.5μM)を含む新鮮無血清培地に交換する。PI添加の24時間後、この培地を、PIとカイニン酸(5μM)または(S)−ロスコビチン(20μM)のうち少なくともいずれか一方とを含んだ新鮮な無血清培地に交換する。対照は、ビヒクル(DMSOおよびH2O)のみとともにインキュベートした。24時間後に培養物を4%パラホルムアルデヒド溶液で固定する。

0061

細胞死は、ヨウ化プロピジウム標識を使用してImageJソフトウェア(NIH)により定量する。PIの強度は、各処理条件についてCA3領域中で計測する。
神経保護作用は、前節(I.1.1)で定義したような相対的ニューロン死のパラメータ(RND)として測定することにより調べる。

0062

I.2.2 結果
PIの蛍光強度は、カイニン酸および(S)−ロスコビチンの両方で処理した培養物のCA3領域において、カイニン酸のみで処理したものと比較して著しく低減される(図4a)。カイニン酸により誘発された細胞死について、ImageJソフトウェアを使用した定量も実施した。本発明者らの結果から、RNDは、KA/(S)−ロスコビチン存在下では30.7%であり、KAのみの存在下では任意に100%であることが示された(図4b)。

0063

これらの結果から、一方ではラット海馬の器官培養物に対して(S)−ロスコビチンが毒性作用をもたないこと、他方ではニューロン死に対する(S)−ロスコビチンの神経保護作用が示された。

0064

I.3 in vivo虚血モデル:マウス持続性局所虚血モデルに対する(S)−ロスコビチンの神経保護作用の検討
このモデルは、成体動物中大脳動脈電気凝固による片側性閉塞で構成される(MCAo:Tamuraら,1981,J Cereb Blood Flow,vol.1,pages 53−60の改変法)。マウスでは、このモデルにより同側半球の側頭‐頭頂皮質にほぼ例外なく発症する。この病変はMCAo後3時間で明らかとなり、その大きさは時間と共に拡がり24時間で最大に達する(Gueganら,1998,Exp Neurol,vol.154,pages 371−380)。この段階では、虚血領域にある細胞の大多数アポトーシス細胞形態学的かつ生化学的特徴を有している(Gueganら,1998,Exp Neurol,vol.154,pages 371−380;Gueganら,1998,Mol Brain Res,vol 55,pages 133−140)。

0065

I.3.1実験プロトコール
体重20〜25gの60日齢の雄のC57b/6マウスに、Tamuraら,1981,J Cereb Blood Flow Metab,vol.1,pages 53−60)の改変法に従って虚血を発生させた(Gueganら,1998, Exp Neurol,vol.154,pages 371−380)。抱水クロラール(50mg/kg)で動物を麻酔した。中大脳動脈(MCA)を外科的に露出させ、次いでバイポーラクランプを用いて電気凝固させた。動物の体温外科処置の間中30℃に維持した。MCAの閉塞後3時間で頸椎脱臼により動物を屠殺した。

0066

(S)−ロスコビチンを、2つの方法すなわち脳室内投与および全身投与によって投与した。脳室内(ICV)経路については、(S)−ロスコビチンを、クレブスリンゲル液中500μMの濃度で、MCAの閉塞の48時間前に動物の右側脳室移植された浸透圧マイクロポンプ(Alzet)を用いて次の定位座標すなわち前後方向=0、横方向=−0.8、深さ=2(ブレグマに対して)に投与した。全身性の経路(IP)については、(S)−ロスコビチンを、0.05MのHCl溶液中25mg/kgの濃度で、MCAの閉塞の15分前および1時間後の2回の腹腔内注射により投与した。対照の動物にはビヒクル(ICVについては1%DMSO、IPについては0.05MのHCl)のみを与えた。

0067

脳の病変の体積を、2,3,5トリフェニル塩化テトラゾリウムTTC)で着色することにより測定した。この着色は、ミトコンドリア酵素の正しい機能に基づいている。着色の強度は機能的なミトコンドリアの数を反映している。よってこの着色により、傷害を受けた領域を健康な領域から区別することが可能となる。動物は、MCAの閉塞後3時間で頸椎脱臼により屠殺した。脳を解剖して切り分け、1mm厚の冠状切片とした。次いでこの切片を1%TTC溶液で10分間着色し、NIHのImageJソフトウェアを用いて解析した。TTC着色強度に基づき、3時間の時点で3つの領域、すなわち無色の壊死性コア、わずかに着色したペナンブラ領域、および高度に着色した健康な組織を測定することが可能であった(図5)。よって、この壊死性コア、ペナンブラ領域、および病変全体コア+ペナンブラ)の体積を測定した。

0068

I.3.2 結果
結果を図6に示す。脳室内(ICV)投与法を用いた(S)−ロスコビチンの投与により、MCAの閉塞後3時間で病変の総体積が対照と比較して27.7%低減された(対照群は18.74mm3、(S)−ロスコビチン投与群では13.54mm3)。壊死性コアの体積はこの2群間で変化のないまま(対照群は6.06mm3、(S)−ロスコビチン投与群では5.39mm3)であるが、ペナンブラ領域の大きさについては、(S)−ロスコビチン投与群について対照群と比較すると顕著な低下(35.8%)が観察された(対照群は12.68mm3、(S)−ロスコビチン投与群は8.14mm3)(図6A)。

0069

全身投与法(IP)を用いた(S)−ロスコビチンの投与により、MCAの閉塞後3時間で病変の総体積が対照と比較して30.7%低減された(対照群は20.34mm3、(S)−ロスコビチン投与群は14.10mm3)。壊死性コアの体積はこの2群間で変化のないまま(対照群は5.03mm3、(S)−ロスコビチン投与群では4.88mm3)であるが、ペナンブラ領域の大きさについては、(S)−ロスコビチン投与群について対照群と比較すると顕著な低下(38.9%)が観察された(対照群は15.31mm3、(S)−ロスコビチン投与群は9.22mm3)(図6B)。

0070

これらの結果は、(S)−ロスコビチンが、マウスの持続性局所虚血モデルという重症モデルにおいて病変の体積に対する神経保護作用を有することを示している。(S)−ロスコビチンはペナンブラ領域の体積に作用するが病変の壊死性コアに対しては作用しない。さらに、これらの結果は、(S)−ロスコビチンが同化合物の全身投与後に有効であることを示し、(S)−ロスコビチンが脳血管関門を通過することができることを示唆している。

0071

II (S)−ロスコビチンおよび(R)−ロスコビチンの神経保護作用の比較
ニューロン死に対する(S)−ロスコビチンの作用を、上記のI.1.で述べたようなin vitroの実験系において(R)−ロスコビチンの作用と比較した。

0072

(R)−ロスコビチン存在下におけるニューロン死(%)(RND)を図7に示す。
濃度0.5μMの(S)−ロスコビチンにより27.9%のRNDを得ることが可能となるが、濃度0.5μMの(R)−ロスコビチンで得られるRNDは62%である。このように、上記の条件下では、(S)−ロスコビチンは(R)−ロスコビチンに比べて2倍のニューロンについて死滅を抑制することができる。

0073

(R)−ロスコビチンの神経保護濃度(CN50)は0.65μMであり、(S)−ロスコビチンについては0.19μMである。従って同数のニューロンの死滅を抑制するためには(S)−ロスコビチンの3倍以上の(R)−ロスコビチンが必要である。

0074

以上の実験は、(S)−ロスコビチンの神経保護作用が(R)−ロスコビチンの神経保護作用よりも大きいことを明らかに示している。

図面の簡単な説明

0075

in vitro興奮毒性モデル:カイニン酸に曝露した海馬細胞の神経混合培養物(アストロサイト、ニューロン、オリゴデンドロサイト)における(S)−ロスコビチンの神経保護作用を示すヒストグラム。**p<0.05;*p<0.01(スチューデントt検定)。
カイニン酸に曝露した海馬細胞の神経混合培養物における(S)−ロスコビチンの神経保護濃度(CN50)を示すグラフ
カイニン酸に曝露した海馬細胞の神経混合培養物に対する、様々なインキュベーション時間での(S)−ロスコビチンの作用を示すヒストグラム。**p<0.05;*p<0.01(スチューデントt検定)。
in vitro複合的興奮毒性モデル:ラット海馬の器官切片培養物における(S)−ロスコビチンの神経保護作用を示す図。 (A)ヨウ化プロピジウムで標識し、DMSOとH2O(対照)、またはカイニン酸、またはカイニン酸と(S)−ロスコビチン、のいずれかとともにインキュベーションした後の、ラット海馬CA3領域における細胞死の観察。 (B)ヨウ化プロピジウムで標識し、DMSOとH2O(対照)、またはカイニン酸、またはカイニン酸と(S)−ロスコビチン、のいずれかとともにインキュベーションした後の、ラット海馬CA3領域における相対的ニューロン死(RND)をヒストグラム形式で示す。*p<0.01(スチューデントt検定)。
in vivoの持続性局所虚血モデルにおけるマウス脳の「壊死性コア」および「ペナンブラ領域」の特徴を示す図。(A)MCAoの3時間後に、2,3,5トリフェニル塩化テトラゾリウム(TTC)で着色された成体マウス脳の冠状切片の写真。3つの状領域を着色の強度に従って同定し、境界を定めることができる。すなわち「壊死性コア」、「ペナンブラ領域」および健康な組織である。 (B)MCAoの3時間後に、2,3,5TTCで着色された「壊死性コア」、「ペナンブラ領域」および健康な組織の相対的な着色強度の、ImageJソフトウェアによる計測。*p<0.01(スチューデントt検定)。
in vivoのマウスの持続性局所虚血モデルにおける(S)−ロスコビチンの神経保護作用を示すヒストグラム。(S)−ロスコビチンを、脳室内(IVC)投与(A)または全身(IP)投与(B)により投与した。壊死性コア、ペナンブラ領域における相対的な着色強度を計測することにより、細胞死を測定した。*p<0.01(スチューデントt検定)。
in vitro興奮毒性モデル:カイニン酸に曝露された海馬細胞の神経混合培養物における(S)−ロスコビチンおよび(R)−ロスコビチンの神経保護指数(NI)の比較を示す図。
海馬混合培養物を用いたカイニン酸による選択的ニューロン死を示す図。(a‐c)10〜15日間培養された、E18ラット胚の単離海馬細胞を、様々な種類の細胞に特異的な抗体を用いた免疫組織化学法およびパッチクランプ記録法により解析した。(a)10日間培養した細胞の位相差顕微鏡下の写真。(b)10日間培養し、抗GFAP抗体(赤色)、抗クラスIIIβチューブリン抗体(緑色)および抗04抗体(青色)で標識した細胞の共焦点蛍光顕微鏡写真。海馬培養物はニューロン細胞およびグリア細胞をいずれも含んでいる。(c)10日間(上側ライン)および15日間(下側ライン)培養したニューロンの細胞構造全体のボルテージクランプ記録を示すライン。(d)ニューロンの興奮毒性モデルを、カイニン酸処理した海馬の10日間混合培養物を用いて作製した。対照条件下(左側)または200μMカイニン酸処理条件下(右側)の培養物を、抗クラスIIIβチューブリン抗体で免疫標識したもの(上側)または細胞死のマーカーであるヨウ化プロピジウムで標識したもの(PI;下側)の蛍光顕微鏡写真。カイニン酸で処理された培養物では、対照培養物と比較して、βチューブリンで示される細胞密度が低下し、ヨウ化プロピジウムで標識される細胞が増加していることに留意されたい。(e)対照培養物中またはカイニン酸で処理された培養物中における、クラスIIIβチューブリンを発現している細胞の相対的な割合(%)を示すグラフ。(f)カイニン酸の、用量依存的なニューロン興奮毒性。本発明者らの条件下では、およそ50%のニューロンを死滅させるためには200μMのカイニン酸で5時間処理する必要がある。p<0.01(t検定)。

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