図面 (/)

技術 鋳造金属の均質化および熱処理

出願人 ノベリス・インコーポレイテッド
発明者 ロバート・ブルース・ワグスタッフウェイン・ジェイ・フェントン
出願日 2006年10月27日 (14年4ヶ月経過) 出願番号 2008-536895
公開日 2009年4月2日 (11年10ヶ月経過) 公開番号 2009-513357
状態 特許登録済
技術分野 連続鋳造 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード 空気圧ジャッキ サポートハウジング 歪勾配 出力トレース 臨界表面 化学的転移 枯渇領域 ワイパー位置
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2009年4月2日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (20)

課題・解決手段

熱間および冷間圧延のような更なる加工を容易にする微細組織を有する金属インゴット鋳造する方法。急速冷却を実現するようにインゴットの外側表面に冷却液スプレーを向けた、ダイレクトチル鋳造モールドまたは相等物で金属を鋳造する。出てくるエンブリオニックインゴットがまだ完全に固体ではない位置で表面から冷却剤を除去し、凝固潜熱溶融コア顕熱とが隣接する固体シェルの温度を金属のその場均質化のための変態温度より高い収束温度に上昇させる。その後更なる従来の均質化工程が必要ない。本発明はまたこのような合金熱間加工前熱処理にも関する。

概要

背景

金属合金、とりわけアルミニウム合金は、多くの製品の製造に用いるシート物品および板物品を製造するために、後に圧延熱間加工等を受けるインゴットまたはビレットを製造するために溶融した形態からしばしば鋳造される。インゴットはしばしばダイレクトチル(DC)鋳造 (direct chill cast)により作られる。しかし、電磁鋳造(electromagnetic casting)のような(例えば、米国特許第3,985,179号および4,004,631号に示される。両方ともGoodrichらによる)等価な鋳造方法があり、これらも用いられている。以下の記載は主としてDC鋳造に関するが、しかし鋳造金属に同じか同等の微細組織(または微細構造、microstructure)の特性を生じる、これらの鋳造方法にも同じ原理が適用される。

インゴットを作るための金属(例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金、本明細書では、以下総称してアルミニウムという)のDC鋳造は、初期において下方に移動可能なプラットフォーム(しばしばボトムブロック(bottom block))といわれる)によりその下方端部を閉じられた、浅く、オープンエンド(または開口端を備えた)で、軸方向に垂直なモールド内で通常実施される。モールドは、水冷ジャケットに取り囲まれており、この水冷ジャケットを介し、モールド壁を外側から冷却するように水のような冷却流体が連続して循環している。溶融したアルミニウム(または他の金属)を、冷却されているモールドの上方端より導入し、そしてこの溶融金属がモールドの内側表面近傍凝固するとプラットフォームを下方に移動する。プラットフォームの有効な連続した動きと、対応するモールドへの連続した溶融アルミニウムの供給とにより、モールドの下の有効なスペースにのみ制限される所望の長さのインゴットを作ることができる。DC鋳造の更なる詳細についてはEnnorによる米国特許第2,301,027号(その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)および他の特許より得ることができる。

装置のいくつかの変更により、DC鋳造は、また水平方向、すなわち垂直でない方向、にも実施可能であり、この場合鋳造操作(または鋳造操業)は、実質的に連続で行える。本明細書の以下においては、垂直方向のダイレクトチル鋳造について記載するが、しかし同じ原理は水平DC鋳造にも適用される。

垂直DC鋳造のモールドの下方(出口側)端部より出てくるインゴットは、外側は凝固しているが、しかし中心コアはまだ溶融している。すなわち、溶融金属のプールが、溶融金属溜まり(または溶融金属のサンプ、sump of molten metal)として、下方に移動するインゴットの中心部を、モールドの下の幾ばくかの長さに亘り下方に延在している。このサンプ(sump)は、インゴットのコア部分が完全に凝固するまでインゴットがその外側表面から内側に凝固することから、下方に向かって徐々に減少する断面を有する。凝固した外側シェルと溶融したコアとを有する、鋳造金属の部分をエンブリオニックインゴット(embryonic ingot)という。エンブリオニックインゴットは完全に凝固すると鋳造インゴットとなる。

ダイレクトチル鋳造法の重要な特徴として、連続供給される、水のような冷却流体がモールド直下を進行するエンブリオニックインゴットと直接接触することがあり、これにより金属表面が直接冷却される。このインゴット表面の直接冷却は、インゴットの表面部分凝固状態に維持することと、インゴットの内部の冷却および凝固を促進することの両方を行う。

従来は、単一の冷却ゾーンがモールドの下に設けられている。通常、このゾーン冷却作用は、モールド直下でインゴットの表面に沿った実質的に連続的な水の流れを均一に導入することによりもたらされ、水は例えばモールド冷却ジャケットの下方端部より送出される。この手順において、水は、相当の力および運動量を有し、インゴット表面に対し十分な角度でインゴット表面に衝突し、連続してインゴット表面上を下方に流れるが、しかしインゴット表面の温度が水の温度に接近するまで冷却効果は減少していく。

通常、熱い金属上の冷却水に、最初、2つの沸騰現象が生じる。主に水蒸気より成るフィルムが、ジェット停滞領域(stagnant region)の液体の直下に形成し、この直ぐ近傍で、上記領域の付近、ジェットの両側およびジェットの下で典型的な核膜沸騰(nucleate film boiling )が起こる。インゴットが冷却され、バブル核生成および攪拌効果が低下すると、最終的に水力学的条件がインゴットの最下部端部においてインゴットの表面全体に亘り膜が自由落下するように変わるまで、流体流および熱境界層条件が、強制対流がインゴットの中間部(bulk)を降下するように変わる。

このようにして形成されるダイレクトチル鋳造インゴットは、様々な厚さおよび幅のシートプレートのような物品を形成するように、概して熱間圧延および冷間圧延、または他の熱間加工が行われる。しかしながら、金属をより使い易い形態に変えるように、および/または圧延製品最終特性を改良するように、多くの場合、圧延または他の熱間加工の前に均質化工程(homogenization procedure)が通常必要である。均質化は、顕微鏡レベルでの濃度勾配平衡にする(equilibrate)ために実施する。均質化工程は、鋳造インゴットを高温(概して遷移温度、例えば合金ソルバス温度(solvus temperature)、より高い温度、しばしば450℃より高く、通常(多くの合金で)500℃〜630℃)で相当な時間(例えば数時間、概して30時間以下)加熱することを含む。

凝固の初期段階または最終段階に起因する、鋳造製品に見出される微細組織の欠陥のために、この均質化工程が必要となる。顕微鏡レベルでは、DC鋳造合金の凝固は5つのイベントにより特徴付けられる。(1)初晶(primary phase)の核生成(この頻度は、結晶粒微細化剤の存在と関連してもよく、またはしなくてもよい)。 (2)結晶粒を規定するセルデンドライトまたはセルとデンドライトとの混合組織の形成。 (3)非平衡凝固条件の支配によるセルおよび/またはデンドライト構造からの溶質の排出。 (4)凝固している初晶の体積変化により促進される、排出された溶質の移動、および (5)排出された溶質の濃化および最終反応(たとえば共晶)温度でのその凝固。

得られた金属の構造は、従って極めて複雑で、また粒内に亘ってのみならず、比較的軟らかい領域と比較的硬い領域とが共存している、金属間化合物相の近傍領域に亘って濃度変化を有するという特徴を有し、もし改良および変化させなければ最終製品として許容できない最終厚さでの特性の変化をもたらす。

均質化は、溶質元素分配における顕微鏡レベルの欠陥を是正するように、および界面に存在する金属間化合物の構造を改良するように構成された熱処理を表すのに概して用いられている総称である。均質化工程の許容される結果は以下を含んでいる。
1.結晶粒内元素分布がより均一になる。
2.結晶粒界および3重点に鋳造時に形成した任意の低融点成分粒子(たとえば共晶物)が粒内に再溶解する。
3.所定の金属間化合物粒子化学的転移(chemical transformation)および構造変態(または構造転移、structure transformation)を受ける。
4.鋳造中に形成された大きな金属間化合物粒子(例えば、包晶物(peritectics))が加熱中に破砕され得るおよび丸くなり得る。
5.加熱中に析出物(後に材料の強度を向上させるのに用いることができるようなもの)が溶解し、インゴットが再びソルバス(または溶解度曲線、solvus)より下の温度に溶解され、一定の温度で保持され核生成成長が可能となるか又は室温に冷却された、そして熱間加工温度予熱されることから、溶解の後、結晶粒に均一に析出し、再分配される。

いくつかの場合、実際にDC鋳造の間に鋳造時に導入された応力場の差を是正するようにインゴットに熱処理を適用する必要がある。当該技術分野の通常の知識を有する者は、このような応力に対応して凝固後または凝固前にクラックを生じる合金を明らかにし得る。

凝固後のクラック(post-solidification crack)は、凝固が完了した後、結晶粒を横切るようなクラックを形成する、鋳造中に生じる顕微鏡レベルのストレスにより発生する。これは、インゴット表面の温度(温度が下がると、歪勾配をインゴットに生ずるので)を鋳造の工程の間、高いレベルに維持することにより、および通常通り鋳造したインゴットを鋳造後直ちにストレス除去用(stress relieving)の炉に運ぶことにより、通常是正している。

凝固前のクラック(pre-solidification crack)もまた、鋳造中に生じる顕微鏡レベルのストレスにより発生する。しかしながら、この場合、凝固の間に形成した顕微鏡レベルのストレスは結晶粒界を低融点共晶ネットワーク(凝固時の溶質の排出と関係する)に沿った破壊(tearing)およびせん断変形(shearing)により除去される。中心部から表面への線形温度勾配の差(linear temperature gradient differential)(すなわち、現れたインゴットの表面から中心への温度の微分係数)を均等化することによりこのようなクラックを首尾よく緩和できることが見出されている。

これらの欠陥はインゴットを多くの用途で許容できないものとする。鋳造時のインゴットの表面冷却速度を制御することにより、この問題を克服しようとする多くの試みが為されている。例えば、凝固後にクラックを形成する傾向のある合金において、Zeiglarは米国特許第2,705,353号でインゴットの内部の熱が冷却された表面を再加熱し得るように、モールドの下から少し離れたインゴットの表面から冷却材を取り除くようにワイパーを用いた。意図は表面の温度を約300°F(149℃)より高いレベル、好ましくは通常の焼鈍範囲約400°F〜650°F(204℃〜344℃)に維持することであった。

Zeiglarは、米国特許第4,237,961号で、膨らますことができる(inflatable)、エラストーマワイピングカラーの形態の拭き取り装置を備えた別のダイレクトチル鋳造システムを示している。これは、上述したZeiglarの特許と同じ基本的な目的を果たし、インゴットの表面温度内部応力を除去するのに十分なレベルに維持する。Zeiglarの特許の実施例では、インゴットの表面は焼鈍の範囲である約500°F(260℃)の温度に維持される。この手順の目的はインゴットの内部で過剰な熱応力の生成を予防することにより、非常に大きな断面のインゴットの鋳造を可能にすることであった。

凝固前のクラックを形成する傾向のある合金において、Brysonは米国特許第3,713,479号で、冷却速度を低下するようにより小さい強度の2つのレベルのウォータスプレー冷却を用い、インゴットが降下するにつれて、より長い距離インゴットの下方に延在させ、この結果、この方法で認められる全体の鋳造速度を増加できる可能性を示した。

冷却水を除去するためにワイパーを用いた別のダイレクトチル鋳造装置の構成が、Ohatakeらによるカナダ特許第2,095,085号に示されている。この構成では、第1および第2の水冷ジェットが用いられ、その後、水を除去するようにワイパーが用いられ、このワイパーの後、第3のジェットが用いられる。

概要

熱間および冷間圧延のような更なる加工を容易にする微細組織を有する金属インゴットを鋳造する方法。急速冷却を実現するようにインゴットの外側表面に冷却液スプレーを向けた、ダイレクトチル鋳造モールドまたは相等物で金属を鋳造する。出てくるエンブリオニックインゴットがまだ完全に固体ではない位置で表面から冷却剤を除去し、凝固の潜熱溶融コア顕熱とが隣接する固体シェルの温度を金属のその場均質化のための変態温度より高い収束温度に上昇させる。その後更なる従来の均質化工程が必要ない。本発明はまたこのような合金の熱間加工前の熱処理にも関する。

目的

従って、特定の例示的実施形態は(a)少なくとも1つの供給源(source)から溶融金属を該溶融金属の外周を制限する領域に供給し、外周部分に前記溶融金属を供給する工程と、(b)前記金属の外周部分を冷却し、外側固体シェルと内側溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(c)前記領域に更に溶融金属を供給しながら、溶融金属の外周を制限する前記領域から離れる方向に前記エンブリオニックインゴットを進行し、前記固体シェルの内部に含まれる前記溶融コアが前記領域を越えて延在する工程と、(d)前記金属の外周を制限する前記領域より出てきた前記エンブリオニックインゴットの外側表面を該外側表面に向けて液体冷却剤を供給することにより冷却する工程と、(e)有効な量の冷却剤を除去後、前記溶融コアからの内部熱が前記溶湯コアに隣接する前記固体シェルを再加熱するように、進行方向と垂直な断面が前記溶融コアの部分と交差する、前記エンブリオニックインゴットの外側表面の位置において、前記エンブリオニックインゴットの外側表面より前記液体冷却剤を有効な量(最も好ましくは全部)除去し、これにより前記溶融コアと前記固体シェルそれぞれの温度が425℃以上の収束温度に近づく工程と、を含む金属インゴットの鋳造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

(a)少なくとも1つの供給源から溶融金属を溶融金属の外周を制限する領域に供給し、外周部分に溶融金属を供給する工程と、(b)金属の外周部分を冷却し、外側固体シェルと内部溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(c)前記領域に更に溶融金属を供給しながら、溶融金属の外周を制限する領域から離れる方向にエンブリオニックインゴットを進行し、固体シェルの内部に含まれる溶融コアが前記領域を越えて延在する工程と、(d)金属の外周を制限する領域より出てきたエンブリオニックインゴットの外側表面を、該外側表面に向けて液体冷却剤を供給することにより冷却する工程と、を含み、有効な量の冷却剤を除去後、溶融コアからの内部熱が溶融コアに隣接する固体シェルを再加熱するように、進行方向と垂直な断面が前記溶融コアの部分と交差する、前記エンブリオニックインゴットの外側表面の位置において、エンブリオニックインゴットの外側表面より有効な量の液体冷却剤を除去し、これにより前記溶融コアと前記固体シェルそれぞれの温度が425℃以上の収束温度に近づくこと特徴とする金属インゴット鋳造方法

請求項2

工程(a)の前記溶融金属が、ダイレクトチル鋳造モールドの少なくとも1つの入口に供給され、前記ダイレクトチル鋳造モールドはこれにより溶融金属の外周を制限する前記領域を規定し、工程(e)において前記有効な量の液体冷却剤が取り除かれる、前記インゴットの前記外側表面の前記位置がモールドの前記少なくとも1つの出口から離れた距離にあり、前記エンブリオニックインゴットは前記ダイレクトチル鋳造モールドの少なくとも1つの出口から工程(c)に進むことを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項3

前記溶融金属が2以上の供給源から供給され、それぞれの供給源からの溶融金属は前記モールドの異なる入口に供給されることを特徴とする請求項2に記載の方法。

請求項4

前記収束温度が450℃以上になるように前記距離をすることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。

請求項5

前記距離が2〜6インチであることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。

請求項6

前記距離が2〜4インチであることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。

請求項7

前記有効な量の前記冷却液の除去の前に、エンブリオニックインゴットの前記外側表面の温度を350℃より低くすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

請求項8

コアの温度とシェルの温度を425℃より高い前記収束温度に、金属の少なくとも部分的な均質化が起こるのに有効な時間保持するように、前記インゴットの前記外側表面の前記位置を選択することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。

請求項9

前記時間が金属の完全な均質化が起こるのに有効な時間であることを特徴とする請求項8に記載の方法。

請求項10

前記時間が少なくとも10分であることを特徴とする請求項8に記載の方法。

請求項11

前記時間が少なくとも15分であることを特徴とする請求項8に記載の方法。

請求項12

前記時間が少なくとも20分であることを特徴とする請求項8に記載の方法。

請求項13

前記時間が少なくとも30分であることを特徴とする請求項8に記載の方法。

請求項14

前記時間以上の後、前記インゴットを更なる冷却液との接触により焼入れることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の方法。

請求項15

前記更なる冷却液と接触する際に前記インゴットが425℃以上であることを特徴とする請求項14に記載の方法。

請求項16

冷却液が水を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の方法。

請求項17

前記位置で前記エンブリオニックインゴットから前記冷却液をワイピングすることによりエンブリオニックインゴットの表面から冷却液を除去することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。

請求項18

インゴットの外側表面に冷却液を供給する速度を制御し、前記位置でエンブリオニックインゴットの表面から冷却液を完全に蒸発させることにより、前記位置でエンブリオニックインゴットの表面から冷却液を取り除くことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。

請求項19

核膜沸騰により前記位置でエンブリオニックインゴットの表面から冷却液を除去することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。

請求項20

前記核膜沸騰を促進するように前記冷却液にガスを加えることを特徴とする請求項19に記載の方法。

請求項21

前記位置でガスのジェットを冷却液に向けることにより、エンブリオニックインゴットの表面から冷却液を除去することを特徴する請求項1〜16のいずれかに記載の方法。

請求項22

前記領域に供給する金属が少なくとも1つのアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の方法。

請求項23

前記少なくとも1つのアルミニウム合金が非熱処理型アルミニウム合金であることを特徴とする請求項22記載の方法。

請求項24

前記少なくとも1つのアルミニウム合金が熱処理型アルミニウム合金であることを特徴とする請求項22記載の方法。

請求項25

アルミニウム合金が、AA1000シリーズ合金、AA3000シリーズ合金、AA4000シリーズ合金、AA5000シリーズ合金から成る群より選択される合金であることを特徴とする請求項23記載の方法。

請求項26

アルミニウム合金が、AA2000シリーズ合金、AA6000シリーズ合金、AA7000シリーズ合金から成る群より選択される合金であることを特徴とする請求項24記載の方法。

請求項27

アルミニウム合金がAA8000シリーズ合金であることを特徴とする請求項22に記載の合金。

請求項28

アルミニウム合金が、AA3003、AA3104、AA3004から成る群より選択されることを特徴とする請求項22記載の方法。

請求項29

前記冷却液の除去後、完全に凝固した鋳造インゴットを形成するようにエンブリオニックインゴットを冷却するかまたは放冷することを特徴とする請求項1〜28のいずれかに記載の方法。

請求項30

完全に凝固した鋳造インゴットを、その後の圧延に適した形状にすることを特徴とする請求項29に記載の方法。

請求項31

前記モールドにより、エンブリオニックインゴットの外側表面が断面において非円形とし、前記インゴットの前記外側表面の周りで同じ収束温度となるように、前記少なくとも1つの出口からの前記距離が前記外側表面の周りの異なる部位で変化していることを特徴とする請求項2〜31のいずれかに記載の方法。

請求項32

前記外側表面の周りの前記距離の変化が、前記部位に隣接する液体コアから得られる潜熱に比例していることを特徴とする請求項31に記載の方法。

請求項33

(a)少なくとも1つの供給源から溶融金属を溶融金属の外周を制限する領域に供給し、外周部分に前記溶融金属を供給する工程と、(b)金属の外周部分を冷却し、外側固体シェルと内部溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(c)前記領域に更に溶融金属を供給しながら、溶融金属の外周を制限する領域から離れる方向にエンブリオニックインゴットを進行し、固体シェルの内部に含まれる溶融コアが前記領域を越えて延在する工程と、(d)金属の外周を制限する領域より出てきたエンブリオニックインゴットの外側表面を、該外側表面に向けて液体冷却剤を供給することにより冷却する工程と、(e)有効な量の冷却剤を除去後、溶融コアからの内部熱が溶融コアに隣接する固体シェルを再加熱するように、進行方向と垂直な断面が前記溶融コアの部分と交差する、前記エンブリオニックインゴットの外側表面の位置において、エンブリオニックインゴットの外側表面より有効な量の液体冷却剤を除去し、これにより前記シェルの前記外側表面の温度を降下前に最大回復温度まで上昇させ、前記回復温度が425℃以上である工程と、を含むことを特徴とする金属インゴットの鋳造方法。

請求項34

請求項1〜33のいずれかに記載の方法により製造された金属インゴット。

請求項35

冷却液の除去を除いて同じ方法とそれに続く別工程の完全均質化とにより作られた、同じ金属のインゴットと実質的に同一の結晶微細構造を有することを特徴とする請求項34に記載の金属インゴット。

請求項36

(a)請求項1〜33のいずれかに記載の方法で鋳造金属インゴットを製造する工程と、(b)インゴットを熱間加工し、加工した物品を製造する工程と、を含み、前記インゴットを製造する工程(a)と前記熱間加工工程(b)との間に凝固した金属インゴットの均質化なしに、熱間加工を行うことを特徴とする金属シート物品の製造方法。

請求項37

前記インゴットが工程(b)で熱間加工され、前記インゴットの前記金属の均質化温度より低い温度で前記熱間加工が為されることを特徴とする請求項36に記載方法

請求項38

鋳造金属インゴットを所定の温度で熱間加工する準備のために、前記インゴットを加熱する方法であって、(a)前記所定の温度よりも低く、金属中で析出物核生成が起こる核生成温度に前記インゴットを予熱し、核生成を起こす工程と、(b)析出物の成長が起こる析出物成長温度に前記インゴットを更に加熱し、金属中で析出物を成長させる工程と、(c)工程(b)の後、前記インゴットがまだ前記所定の熱間加工温度に達していない場合、熱間加工のために、前記インゴットを前記所定の熱間加工温度に更に加熱する工程と、を含むことを特徴とする方法。

請求項39

工程(a)のインゴットの温度が核生成温度の範囲内で徐々に増加することを特徴とする請求項38に記載の方法。

請求項40

前記インゴットの温度が25℃より低い速度で上昇することを特徴とする請求項38または39に記載の方法。

請求項41

金属がアルミニウム合金であることを特徴とする請求項38〜41のいずれかに記載の方法。

請求項42

前記アルミニウム合金が深絞り性を有することを特徴とする請求項41に記載の方法。

請求項43

前記合金がAA3003およびAA3104からなる群から選択されることを特徴とする請求項41に記載の方法。

請求項44

前記核生成を開始する温度が380℃〜450℃の範囲であり、インゴットが前記温度に2〜4時間保持されることを特徴とする請求項41〜43のいずれかに記載の方法。

請求項45

前記析出物の成長を開始する温度が480℃〜550℃であり、インゴットが前記温度に少なくとも10時間保持されることを特徴とする請求項41〜44のいずれかに記載の方法。

請求項46

前記インゴットが請求項1に記載のインゴットを引用したものであることを特徴とする請求項38〜45に記載の方法。

請求項47

(a)少なくとも1つの供給源から溶融金属を溶融金属の外周を制限する領域に供給し、外周部分に前記溶融金属を供給する工程と、(b)金属の外周部分を冷却し、外側固体シェルと内部溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(c)前記領域に更に溶融金属を供給しながら、溶融金属の外周を制限する領域から離れる方向にエンブリオニックインゴットを進行し、固体シェルの内部に含まれる溶融コアが、溶融金属の外周を制限する前記領域を越えて延在する工程と、(d)金属の外周を制限する領域より出てきたエンブリオニックインゴットの外側表面を、該外側表面に向けて液体冷却剤を供給することにより冷却する工程と、(e)進行方向と垂直な断面が前記溶融コアの部分と交差する、エンブリオニックインゴットの外側表面の位置において、エンブリオニックインゴットの外側表面より液体冷却剤の有効な部分を除去し、これにより実質的に冷却液のない、前記インゴットの一部分を形成して、前記溶融金属からの内部熱が溶融金属に隣接する前記一部分の固体シェルを再加熱し、これにより前記コアの温度と前記シェルの温度とのそれぞれを金属のその場均質化の起こる、金属の変態温度より高い温度に近づける工程と、(f)前記収束温度に前記一部分の均質化が起こるのに有効な時間保持した後、前記インゴットの前記一部分を焼き入れる工程と、を含むことを特徴とする金属インゴットの鋳造方法。

請求項48

工程(a)の前記溶融金属が、ダイレクトチル鋳造モールドの少なくとも1つの入口に供給され、前記ダイレクトチル鋳造モールドはこれにより溶融金属の外周を制限する前記領域を規定し、工程(e)において前記実質的な部分の液体冷却剤が取り除かれる、前記インゴットの前記外側表面の前記位置がモールドの前記少なくとも1つの出口から離れた距離にあり、前記エンブリオニックインゴットは前記ダイレクトチル鋳造モールドの少なくとも1つの出口から工程(c)に進むことを特徴とする請求項47に記載の方法。

請求項49

前記収束温度が425℃以上であることを特徴とする請求項47または48に記載の方法。

請求項50

(a)1以上のモールド入口と1以上のモールド出口とを有するダイレクトチル鋳造モールドを備える工程と、(b)鋳造モールドの少なくとも1つの入口に溶融金属を供給する工程と、(c)モールドを冷却して金属の外周部分を凝固し、これにより外側固体シェルと内部溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(d)エンブリオニックインゴットをモールドの少なくとも1つの出口を越えて連続的に進め、これにより固定シェルの内部に含まれる溶融コアがモールドの前記少なくとも1つの出口を越えて延在する工程と、(e)エンブリオニックインゴットの外側表面に向けて冷却液を供給することにより、モールドから出てくるエンブリオニックインゴットを冷却し、エンブリオニックインゴットの凝固を継続する工程と、(f)インゴットが完全に固体のインゴットに変わる前に、前記冷却液をエンブリオニックインゴットの表面から除去し、溶融コアからの内部熱がコアに隣接する固体シェルを再加熱し、これにより前記コアの温度と前記シェルの温度とが収束温度で平衡となる工程であって、前記冷却液は、前記少なくとも1つのモールド出口から、前記収束温度が前記金属のその場均質化を受ける変態温度より高くなる離れた距離にある前記表面から除去する工程と、(g)前記インゴットを冷却または放冷する工程と、(h)均質化を介することなく、前記インゴットを熱間圧延に有効な温度に予熱する工程と、(i)前記インゴットを熱間圧延する工程とを含み、前インゴットを前記熱間圧延に有効な温度よりも低い核生成温度に加熱し、該核生成温度で、前記インゴット内で核生成を起こすのに有効な時間保持することを含む第1工程と、熱間圧延のために前記インゴットを前記核生成温度から前記熱間圧延に有効な温度に加熱し、前記インゴットを前記熱間圧延に有効な温度で、工程(i)の前記熱間圧延の前に結晶成長が起こる時間保持することを含む第2工程との2工程で工程(h)の予熱を実施することを特徴とする、鋳造可能な金属鋳造品の連続または半連続ダイレクトチル鋳造方法。

請求項51

前記変態温度が425℃以上であることを特徴とする請求項50に記載の方法。

請求項52

(a)ダイレクトチル鋳造により得られたインゴットを鋳造温度から焼き入れる工程と、(b)熱間圧延に有効な温度に前記インゴットを予熱する工程と、(c)前記熱間圧延に有効な温度で前記インゴットを熱間圧延する工程と、を含み、前インゴットを前記熱間圧延に有効な温度よりも低い核生成温度に加熱し、該核生成温度で前記インゴット内で核生成を起こすのに有効な時間保持することを含む第1工程と、熱間圧延のために前記インゴットを前記核生成温度から前記熱間圧延に有効な温度に加熱し、前記インゴットを前記熱間圧延に有効な温度で、工程(c)の前記熱間圧延の前に結晶成長が起こる時間保持することを含む第2工程との2工程で工程(b)の予熱を実施することを特徴とする、DC鋳造により得たインゴットの熱間圧延方法

請求項53

前記第1工程が前記インゴットを380℃〜450℃の範囲の温度に加熱する工程を含むことを特徴とする請求項52に記載の方法。

請求項54

前記第1工程の前記温度が2〜4時間保持されることを特徴とする請求項52または53に記載の方法。

請求項55

前記インゴットを前記核生成温度まで約50℃/時間の平均速度で加熱することを特徴とする請求項52〜54のいずれかに記載の方法。

請求項56

前記第2工程が前記インゴットを480℃〜550℃の温度まで加熱する工程と含むことを特徴とする請求項52〜55のいずれかに記載の方法。

請求項57

前記第2工程の前記温度が予熱工程全体に亘り、10〜24時間の範囲で保持されることを特徴とする請求項56に記載の方法。

請求項58

前記インゴットが前記核生成温度から前記熱間圧延に有効な温度に約50℃/時間の速度で加熱されることを特徴とする請求項56または57に記載の方法。

請求項59

ノンコア微細構造を有する凝固金属を得るのに有効な条件下で金属を鋳造しインゴットを形成する工程を含むことを特徴とする予め均質化をしなくても熱間圧延可能な金属インゴットの製造方法。

請求項60

前記条件が前記金属の前記鋳造の際に前記インゴットをその場均質化を起こすのに有効な変態温度よりも高い温度で10〜30分保持する工程を含むことを特徴とする請求項59に記載の方法。

請求項61

前記条件がその場均質化を起こすのに有効な変態温度よりも高い温度で前記インゴットを15〜20分保持する工程を含むことを特徴とする請求項60に記載の方法。

請求項62

破砕した微細組織を有する凝固金属を得るのに有効な温度と時間の条件下で金属を鋳造しインゴットを形成する工程を含むことを特徴とする、予め均質化をしなくても熱間圧延可能な金属インゴットの製造方法。

請求項63

インゴットの冷却後に分離した均質化工程により破砕した微細組織を有する凝固金属を得るのに有効な温度と時間の条件下で金属を鋳造しインゴットを形成する工程を含むことを特徴とする、予め均質化をしなくても熱間圧延可能な金属インゴットの製造方法。

請求項64

前記条件が前記金属の前記鋳造の際に前記インゴットをその場均質化を起こすのに有効な変態温度よりも高い温度で10〜30分保持する工程を含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。

請求項65

前記条件が前記インゴットをその場均質化を起こすのに有効な変態温度よりも高い温度で15〜20分保持する工程を含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。

請求項66

(a)1以上のモールド入口と1以上のモールド出口とを有するダイレクトチル鋳造モールドを備える工程と、(b)鋳造モールドの少なくとも1つの入口に溶融金属を供給する工程と、(c)モールドを冷却して金属の外周部分を凝固し、これにより外側固体シェルと内部溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(d)エンブリオニックインゴットをモールドの少なくとも1つの出口を越えて連続的に進め、これにより固定シェルの内部に含まれる溶融コアがモールドの前記少なくとも1つの出口を越えて延在する工程と、(e)エンブリオニックインゴットの外側表面に向けて冷却液を供給することにより、モールドから出てくるエンブリオニックインゴットを冷却し、エンブリオニックインゴットの凝固を継続する工程と、(f)インゴットがまだ完全に固体に変態していない位置で前記冷却液をエンブリオニックインゴットの表面から除去し、溶融コアからの内部熱がコアに隣接する固体シェルを再加熱し、これにより前記コアの温度と前記シェルの温度が収束温度で平衡となる工程であって、前記冷却液は、前記少なくとも1つのモールド出口から、前記収束温度が425℃以上になる離れた距離にある前記表面から除去する工程と、(g)工程(f)の前記インゴットの前記鋳造の異なる段階において、前記ワイパーの下方で前記収束温度の差を最小にするように、前記鋳造の異なる段階の間前記位置を変える工程と、を含むことを特徴とする鋳造可能な金属鋳造品の連続または半連続ダイレクトチル鋳造方法。

請求項67

鋳造の初期の段階ではその後の段階よりも前記位置を前記モールドに近づけることを特徴とする請求項66記載の方法。

請求項68

鋳造の終了段階では、前記位置を前記モールドと関連して移動することを特徴とする請求項66記載の方法。

請求項69

1以上のモールド入口と1以上のモールド出口と少なくとも1つのモールドギャビティとを有する鋳造モールドと、前記少なくとも1つのモールドキャビティのための少なくとも1つの冷却ジャケットと、前記少なくとも1つの出口より出てくるエンブリオニックインゴットの外面に沿って冷却液が流れるように構成される液体冷却剤の供給装置と、前記少なくとも1つの出口から離れた距離にあり、前記エンブリオニックインゴットの外面から前記液体冷却剤を除去する手段と、前記冷却剤除去手段を前記少なくとも1つの出口に向かうようにおよび離れるように動かし、これによりインゴットを鋳造している際に、前記距離を変えることが可能となる装置と、を含む、連続または半連続で金属インゴットをダイレクトチル鋳造する装置。

請求項70

前記鋳造モールドがダイレクトチル鋳造モールドであることを特徴とする請求項69に記載の装置。

技術分野

0001

本発明は金属とりわけ金属合金鋳造材ならびにこれをシート及び板物品のような金属製品を形成するのに適した形態にする鋳造材の処理に関する。

背景技術

0002

金属合金、とりわけアルミニウム合金は、多くの製品の製造に用いるシート物品および板物品を製造するために、後に圧延熱間加工等を受けるインゴットまたはビレットを製造するために溶融した形態からしばしば鋳造される。インゴットはしばしばダイレクトチル(DC)鋳造 (direct chill cast)により作られる。しかし、電磁鋳造(electromagnetic casting)のような(例えば、米国特許第3,985,179号および4,004,631号に示される。両方ともGoodrichらによる)等価な鋳造方法があり、これらも用いられている。以下の記載は主としてDC鋳造に関するが、しかし鋳造金属に同じか同等の微細組織(または微細構造、microstructure)の特性を生じる、これらの鋳造方法にも同じ原理が適用される。

0003

インゴットを作るための金属(例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金、本明細書では、以下総称してアルミニウムという)のDC鋳造は、初期において下方に移動可能なプラットフォーム(しばしばボトムブロック(bottom block))といわれる)によりその下方端部を閉じられた、浅く、オープンエンド(または開口端を備えた)で、軸方向に垂直なモールド内で通常実施される。モールドは、水冷ジャケットに取り囲まれており、この水冷ジャケットを介し、モールド壁を外側から冷却するように水のような冷却流体が連続して循環している。溶融したアルミニウム(または他の金属)を、冷却されているモールドの上方端より導入し、そしてこの溶融金属がモールドの内側表面近傍凝固するとプラットフォームを下方に移動する。プラットフォームの有効な連続した動きと、対応するモールドへの連続した溶融アルミニウムの供給とにより、モールドの下の有効なスペースにのみ制限される所望の長さのインゴットを作ることができる。DC鋳造の更なる詳細についてはEnnorによる米国特許第2,301,027号(その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)および他の特許より得ることができる。

0004

装置のいくつかの変更により、DC鋳造は、また水平方向、すなわち垂直でない方向、にも実施可能であり、この場合鋳造操作(または鋳造操業)は、実質的に連続で行える。本明細書の以下においては、垂直方向のダイレクトチル鋳造について記載するが、しかし同じ原理は水平DC鋳造にも適用される。

0005

垂直DC鋳造のモールドの下方(出口側)端部より出てくるインゴットは、外側は凝固しているが、しかし中心コアはまだ溶融している。すなわち、溶融金属のプールが、溶融金属溜まり(または溶融金属のサンプ、sump of molten metal)として、下方に移動するインゴットの中心部を、モールドの下の幾ばくかの長さに亘り下方に延在している。このサンプ(sump)は、インゴットのコア部分が完全に凝固するまでインゴットがその外側表面から内側に凝固することから、下方に向かって徐々に減少する断面を有する。凝固した外側シェルと溶融したコアとを有する、鋳造金属の部分をエンブリオニックインゴット(embryonic ingot)という。エンブリオニックインゴットは完全に凝固すると鋳造インゴットとなる。

0006

ダイレクトチル鋳造法の重要な特徴として、連続供給される、水のような冷却流体がモールド直下を進行するエンブリオニックインゴットと直接接触することがあり、これにより金属表面が直接冷却される。このインゴット表面の直接冷却は、インゴットの表面部分凝固状態に維持することと、インゴットの内部の冷却および凝固を促進することの両方を行う。

0007

従来は、単一の冷却ゾーンがモールドの下に設けられている。通常、このゾーン冷却作用は、モールド直下でインゴットの表面に沿った実質的に連続的な水の流れを均一に導入することによりもたらされ、水は例えばモールド冷却ジャケットの下方端部より送出される。この手順において、水は、相当の力および運動量を有し、インゴット表面に対し十分な角度でインゴット表面に衝突し、連続してインゴット表面上を下方に流れるが、しかしインゴット表面の温度が水の温度に接近するまで冷却効果は減少していく。

0008

通常、熱い金属上の冷却水に、最初、2つの沸騰現象が生じる。主に水蒸気より成るフィルムが、ジェット停滞領域(stagnant region)の液体の直下に形成し、この直ぐ近傍で、上記領域の付近、ジェットの両側およびジェットの下で典型的な核膜沸騰(nucleate film boiling )が起こる。インゴットが冷却され、バブル核生成および攪拌効果が低下すると、最終的に水力学的条件がインゴットの最下部端部においてインゴットの表面全体に亘り膜が自由落下するように変わるまで、流体流および熱境界層条件が、強制対流がインゴットの中間部(bulk)を降下するように変わる。

0009

このようにして形成されるダイレクトチル鋳造インゴットは、様々な厚さおよび幅のシートやプレートのような物品を形成するように、概して熱間圧延および冷間圧延、または他の熱間加工が行われる。しかしながら、金属をより使い易い形態に変えるように、および/または圧延製品最終特性を改良するように、多くの場合、圧延または他の熱間加工の前に均質化工程(homogenization procedure)が通常必要である。均質化は、顕微鏡レベルでの濃度勾配平衡にする(equilibrate)ために実施する。均質化工程は、鋳造インゴットを高温(概して遷移温度、例えば合金ソルバス温度(solvus temperature)、より高い温度、しばしば450℃より高く、通常(多くの合金で)500℃〜630℃)で相当な時間(例えば数時間、概して30時間以下)加熱することを含む。

0010

凝固の初期段階または最終段階に起因する、鋳造製品に見出される微細組織の欠陥のために、この均質化工程が必要となる。顕微鏡レベルでは、DC鋳造合金の凝固は5つのイベントにより特徴付けられる。(1)初晶(primary phase)の核生成(この頻度は、結晶粒微細化剤の存在と関連してもよく、またはしなくてもよい)。 (2)結晶粒を規定するセルデンドライトまたはセルとデンドライトとの混合組織の形成。 (3)非平衡凝固条件の支配によるセルおよび/またはデンドライト構造からの溶質の排出。 (4)凝固している初晶の体積変化により促進される、排出された溶質の移動、および (5)排出された溶質の濃化および最終反応(たとえば共晶)温度でのその凝固。

0011

得られた金属の構造は、従って極めて複雑で、また粒内に亘ってのみならず、比較的軟らかい領域と比較的硬い領域とが共存している、金属間化合物相の近傍領域に亘って濃度変化を有するという特徴を有し、もし改良および変化させなければ最終製品として許容できない最終厚さでの特性の変化をもたらす。

0012

均質化は、溶質元素分配における顕微鏡レベルの欠陥を是正するように、および界面に存在する金属間化合物の構造を改良するように構成された熱処理を表すのに概して用いられている総称である。均質化工程の許容される結果は以下を含んでいる。
1.結晶粒内元素分布がより均一になる。
2.結晶粒界および3重点に鋳造時に形成した任意の低融点成分粒子(たとえば共晶物)が粒内に再溶解する。
3.所定の金属間化合物粒子化学的転移(chemical transformation)および構造変態(または構造転移、structure transformation)を受ける。
4.鋳造中に形成された大きな金属間化合物粒子(例えば、包晶物(peritectics))が加熱中に破砕され得るおよび丸くなり得る。
5.加熱中に析出物(後に材料の強度を向上させるのに用いることができるようなもの)が溶解し、インゴットが再びソルバス(または溶解度曲線、solvus)より下の温度に溶解され、一定の温度で保持され核生成成長が可能となるか又は室温に冷却された、そして熱間加工温度予熱されることから、溶解の後、結晶粒に均一に析出し、再分配される。

0013

いくつかの場合、実際にDC鋳造の間に鋳造時に導入された応力場の差を是正するようにインゴットに熱処理を適用する必要がある。当該技術分野の通常の知識を有する者は、このような応力に対応して凝固後または凝固前にクラックを生じる合金を明らかにし得る。

0014

凝固後のクラック(post-solidification crack)は、凝固が完了した後、結晶粒を横切るようなクラックを形成する、鋳造中に生じる顕微鏡レベルのストレスにより発生する。これは、インゴット表面の温度(温度が下がると、歪勾配をインゴットに生ずるので)を鋳造の工程の間、高いレベルに維持することにより、および通常通り鋳造したインゴットを鋳造後直ちにストレス除去用(stress relieving)の炉に運ぶことにより、通常是正している。

0015

凝固前のクラック(pre-solidification crack)もまた、鋳造中に生じる顕微鏡レベルのストレスにより発生する。しかしながら、この場合、凝固の間に形成した顕微鏡レベルのストレスは結晶粒界を低融点共晶ネットワーク(凝固時の溶質の排出と関係する)に沿った破壊(tearing)およびせん断変形(shearing)により除去される。中心部から表面への線形温度勾配の差(linear temperature gradient differential)(すなわち、現れたインゴットの表面から中心への温度の微分係数)を均等化することによりこのようなクラックを首尾よく緩和できることが見出されている。

0016

これらの欠陥はインゴットを多くの用途で許容できないものとする。鋳造時のインゴットの表面冷却速度を制御することにより、この問題を克服しようとする多くの試みが為されている。例えば、凝固後にクラックを形成する傾向のある合金において、Zeiglarは米国特許第2,705,353号でインゴットの内部の熱が冷却された表面を再加熱し得るように、モールドの下から少し離れたインゴットの表面から冷却材を取り除くようにワイパーを用いた。意図は表面の温度を約300°F(149℃)より高いレベル、好ましくは通常の焼鈍範囲約400°F〜650°F(204℃〜344℃)に維持することであった。

0017

Zeiglarは、米国特許第4,237,961号で、膨らますことができる(inflatable)、エラストーマワイピングカラーの形態の拭き取り装置を備えた別のダイレクトチル鋳造システムを示している。これは、上述したZeiglarの特許と同じ基本的な目的を果たし、インゴットの表面温度内部応力を除去するのに十分なレベルに維持する。Zeiglarの特許の実施例では、インゴットの表面は焼鈍の範囲である約500°F(260℃)の温度に維持される。この手順の目的はインゴットの内部で過剰な熱応力の生成を予防することにより、非常に大きな断面のインゴットの鋳造を可能にすることであった。

0018

凝固前のクラックを形成する傾向のある合金において、Brysonは米国特許第3,713,479号で、冷却速度を低下するようにより小さい強度の2つのレベルのウォータスプレー冷却を用い、インゴットが降下するにつれて、より長い距離インゴットの下方に延在させ、この結果、この方法で認められる全体の鋳造速度を増加できる可能性を示した。

0019

冷却水を除去するためにワイパーを用いた別のダイレクトチル鋳造装置の構成が、Ohatakeらによるカナダ特許第2,095,085号に示されている。この構成では、第1および第2の水冷ジェットが用いられ、その後、水を除去するようにワイパーが用いられ、このワイパーの後、第3のジェットが用いられる。

発明が解決しようとする課題

0020

例示的形態および態様は、鋳造した金属インゴットの通常の均質化(高温度での数時間の加熱が必要な方法)の際に得られた特性と同等または同一の金属学的特性が、エンブリオリック鋳造インゴットの冷却されるシェルの温度と未だ溶融している内部の温度とを、多くのアルミニウム合金で概して少なくとも425℃であり、好ましくは所望の変態(または変化、transformation)が起こる(少なくとも部分的に)期間、この温度または温度付近に保持される、金属のその場均質化が起こる変態温度以上に収束することにより、インゴットに付与されるという観察結果に基づく。

0021

驚くべきことに、所望の金属的変化は比較的短い時間(例えば10〜30分)でこのような方法により得られ、このような結果を得ることができる手順は鋳造操作(操業)自身に組み入れることが可能であり、これにより高価で不便な均質化工程の必要性を回避できる。特定の理論に縛られることは望まないが、合金は顕著な後方拡散(backward-diffusion)効果(固体、液体の何れかまたは両方及びこれらの混合した「柔らかな(mushy)」形態において)により従来の均質化工程での是正のための相当な時間が必要となる従来の冷却の間の望ましくない金属学的特性を伴う時間よりも短い時間で所望の金属学的変化が作られ維持されるためであると言える。

0022

従来の鋳造インゴットにおいて均質化が通常行われていない場合でも、インゴットの加工が容易になるよう特性を得られる改良された特性を有する製品を供給できる。

課題を解決するための手段

0023

上述のその場均質化を含む鋳造方法は、必要に応じてその後、インゴットを鋳造装置から取り出す前に、例えば進行する鋳造インゴットの先導部(leading part)を冷却液のプールに浸漬するように、焼入れ操作を行ってもよい。この焼入れは、エンブリオニックインゴットの表面に供給した冷却液を取り除き、適切な金属学的変態(または変化)に十分な時間を経た後に実施する。

0024

用語「その場均質化(in-situ homogenization)」は、鋳造と冷却の後、実施される従来の均質化により得られる微細組織の変化と同等の微細組織変化を鋳造工程の間に達成できるこの現象記述するために、本発明者らにより名付けた。同様に、用語「その場焼入れ(in-situ quench)」は、鋳造工程の間で、その場均質化の後に実施される焼入れ工程を記述するために名付けた。

0025

本発明の実施形態は、例えば2005年1月20日発行の米国特許公開公報第2005−0011630号または2004年3月16日発行の米国特許第6,705,384号に記載のような、2以上の金属(または2つの異なる供給源からの同じ金属)の複合インゴットの鋳造に適用することができる。この種のインゴットは1つの金属より成る一体のインゴット(monolithic ingot)と殆ど同じ方法で鋳造されるが、しかし、鋳造モールド等は、内側モールド壁または鋳造インゴットに組み入れられる連続的に供給される固体金属ストリップにより分離された2以上の入口(inlet)を有する。1またはそれ以上の出口(outlet)を通り一端モールドを出ると、複合インゴットは液体により冷却され、この液体の冷却剤は、一体のインゴットと同じ方法で除去され、同じまたは同等の効果を生じる。

0026

従って、特定の例示的実施形態は(a)少なくとも1つの供給源(source)から溶融金属を該溶融金属の外周を制限する領域に供給し、外周部分に前記溶融金属を供給する工程と、(b)前記金属の外周部分を冷却し、外側固体シェルと内側溶融コアとを有するエンブリオニックインゴットを形成する工程と、(c)前記領域に更に溶融金属を供給しながら、溶融金属の外周を制限する前記領域から離れる方向に前記エンブリオニックインゴットを進行し、前記固体シェルの内部に含まれる前記溶融コアが前記領域を越えて延在する工程と、(d)前記金属の外周を制限する前記領域より出てきた前記エンブリオニックインゴットの外側表面を該外側表面に向けて液体冷却剤を供給することにより冷却する工程と、(e)有効な量の冷却剤を除去後、前記溶融コアからの内部熱が前記溶湯コアに隣接する前記固体シェルを再加熱するように、進行方向と垂直な断面が前記溶融コアの部分と交差する、前記エンブリオニックインゴットの外側表面の位置において、前記エンブリオニックインゴットの外側表面より前記液体冷却剤を有効な量(最も好ましくは全部)除去し、これにより前記溶融コアと前記固体シェルそれぞれの温度が425℃以上の収束温度に近づく工程と、を含む金属インゴットの鋳造方法を提供することが可能である。

0027

この収束は、好ましい場合、液体冷却剤を除去した後温度の回復を示す、インゴット表面を測定することで追跡できる。この温度の回復は、合金または相の変態温度より高い温度、そして好ましくは426℃より高い温度、でピークに達する必要がある。

0028

上述の方法において、工程(a)の溶融金属は、好ましは、ダイレクトチル鋳造モールドの少なくとも1つの入口に供給され、前記ダイレクトチル鋳造モールドは、これにより前記溶融金属の外周を制限する領域を形成し、工程(e)において液体冷却剤が取り除かれるインゴットの外側表面の実質的な部分がモールドの少なくとも1つの出口から離れた距離にあり、前記エンブリオニックインゴットは前記ダイレクトチル鋳造モールドの少なくとも1つの出口から工程(c)に進む。本鋳造方法(すなわち、溶融金属の供給)は、所望により連続または半連続でよい。

0029

液体冷却剤はワイピングまたは他の方法により外側表面より除去できる。好ましくはインゴットを取り囲むワイパーを備え、所望であれば、ワイパーの位置は鋳造操作の異なる段階で、例えばこのような異なる段階でワイパーの位置を変えなければ生じ得る収束温度の違いを最小にするように、変えることができる。

0030

別の例示的実施形態においては、金属インゴットを連続的又は半連続的にダイレクトチル鋳造するための装置であって、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口と少なくとも1つのモールドギャビティ(またはモールド凹部、mold cavity)とを有する鋳造モールドと、前記少なくとも1つのモールドキャビティのための少なくとも1つの冷却ジャケットと、前記少なくとも1つの出口より出てくるエンブリオニックインゴットの外面に沿って冷却液(または液体冷却剤)が流れるように構成される液体冷却剤の供給装置と、前記少なくとも1つの出口から離れた距離にあり、前記エンブリオニックインゴットの外面から前記液体冷却剤を除去する手段と、前記冷却剤除去手段を前記少なくとも1つの出口に向かうようにおよび離れるように動かし、インゴットを鋳造している際に、距離を変えることが可能となる装置と含む、装置を具備している。

0031

他の例示的実施形態は、上述した方法で凝固した金属インゴットを製造する工程と、インゴットを熱間加工し、加工した物品を製造する工程とを含み、インゴットを製造する工程(a)と熱間加工する工程(b)との間で凝固した金属インゴットを均質化することなく、熱間加工することを特徴とする金属シート物品の製造方法を提供する。熱間加工は、例えば熱間圧延でよく、所望であれば熱間圧延の後、冷間圧延を行ってよい。用語「熱間加工」は例えば熱間圧延、押し出しおよび鍛造のような工程を含んでもよい。

0032

別の例示的実施形態は、予め均質化を行わなくても熱間加工ができる金属インゴットの製造方法を提供し、この製造方法は、金属を鋳造しノンコア(またはコアの無い、non-core)微細組織(または微細構造、microstructure)または代わりに破砕された(fractured)微細構造(鋳造組織において現れる金属間化合物粒子が破砕されている)を形成するのに有効な温度および時間の条件下でインゴットを形成する工程を含む。

0033

少なくともいくつかの例示的実施形態では、初期の流体による冷却の際に、例えばソルバス温度のような変態温度より低い温度に焼入れられた表面近くのインゴットの端部に存在するセルの端部に向かって凝固の際に偏析する溶質元素はデンドライトおよび/またはセルを横断する固体拡散により再分配され、またインゴットの中心領域のデンドライトおよび/またはセルの端部に通常偏析するこれら溶質元素は、凝固の際の温度および時間で均質な液体から溶質が成長および粗大化する前のデンドライトおよび/またはセルに後方に向かって拡散される。この後方への拡散結果は、均質な混合物から溶質元素を取り除き、均質な混合物の溶質元素の濃度を減少させ(すなわち、単位体積のデンドライト/セル境界あたり鋳造された金属間化合物の体積比率を最少にする)、インゴット全体に亘るマクロな偏析の影響を減少させる。その時点では如何なる高融点の成分および金属間化合物も、いったん凝固すると、デンドライト/セル境界の枯渇領域(denuded region)を特定の収束温度における最大の溶解限に対応する濃度と同等または近い濃度にする高温での金属中に存在するシリコン(Si)または他の元素のバルク拡散により容易に改善される。同様に、融点の高い共晶物(または準安定成分および金属間化合物)も、収束温度に到達し、2つの隣接する2相領域に一般的な混合相領域に保持されれば、構造がさらに改良し、または更に改良/変態する。これに加えて、名目上より高い融点の鋳造成分および金属間化合物は、破砕または球状化し得る。また低融点の鋳造成分および金属間化合物は、鋳造工程の際に、バルク材料内で溶解または拡散しやすい。

0034

別の例示的実施形態は、所定の熱間加工温度で熱間加工ためにインゴットを準備するように鋳造金属インゴットを加熱する方法を提供する。本方法は、(a)所定の温度よりも低く、金属中で析出物の核生成が起こる核生成温度にインゴットを予熱し、核生成を起こす工程と、(b)析出物の成長が起こる析出物成長温度にインゴットを更に加熱し、金属中で析出物を成長させる工程と、(c)工程(b)の後、インゴットがまだ所定の熱間加工温度に達していなければ、熱間加工に備えてインゴットをさらに前記所定の熱間加工温度に加熱する工程とを含む。熱間加工工程は好ましくは、熱間圧延を含み、インゴットは好ましくはDC鋳造により鋳造される。

0035

本方法によれば、均質化および熱間圧延で一般的に形成する分散質(dispersoid)は、熱間圧延温度までの2段階のインゴットの予熱および保持時間の間に生じ、インゴットでの分散質の集団の寸法および分散は、十分に短い時間であるけれども、完全に均質化工程を行った後に通常見出されるのと同様か、またはそれより優れている。

0036

好ましくは、本方法は、金属インゴットの熱加工工程を備え、
(a)インゴットをソルバス上の組成に対応する温度まで予熱する工程と、
(b)過飽和の材料の部分が加熱中に固溶体より析出し、析出物の核生成に寄与する工程と、
(c)所定の時間インゴットをこの温度で保持する工程と、
(d)インゴットの温度をソルバス上の組成に対応する温度まで上げる工程と、
(e)加熱の第2段階において、過飽和の部分が固溶体より析出し、析出物の成長に寄与する工程と、
(f)所定の時間、インゴットをこの温度で保持し、より大きくより安定な析出物の成長を促進する、より小さな(熱的に不安定な)析出物から溶質を拡散させる、または徐々に温度を上げて、所定の温度での保持を要せずに成長に寄与する、溶質元素の濃度増加を起こす工程と、を含む。

発明を実施するための最良の形態

0037

本明細書の以下の記述は、アルミニウムのダイレクトチル鋳造について言及しているが、しかしこれはあくまで一例である。本発明の例示的実施形態は、金属インゴットの各種方法に適用可能であり、殆どの金属、とりわけ軽金属合金、特に450℃より高い変態温度を有し、鋳造後でかつ圧延のような熱間加工の前に均質化が必要な軽金属に適用可能である。アルミニウムをベースとする金属に加え、鋳造可能な他の金属の例は、マグネシウム、銅、亜鉛、鉛−錫および鉄をベースとする金属を含む。例示的実施形態はまた、均質化工程の結果生ずる5つの影響のちの1つが認められる(これらの工程についての上述の記載を参照されたい。)純アルミニウムまたは他の金属にも適用し得る。

0038

添付の図面の図1は、本発明の例示的実施形態の1つの例示的な形態に係る工程の少なくとも一部を実施するのに用いることができる垂直DC鋳造機10の一例を簡潔に示す垂直断面図である。当業者は、もちろんこのような鋳造機は、例えば複数の鋳造テーブルの一部を形成するように、全てが同じように同時に動作する鋳造機の大きなグループの一部を形成できることを認識するであろう。

0039

溶融金属12が、モールド入口15を介して垂直方向に向いた水冷モールド14に導入され、そしてエンブリオニックインゴット16としてモールド出口17から出てくる。エンブリオニックインゴットは、完全に固体の鋳造インゴットが作られるまでエンブリオニックインゴットが冷却されるにつれて厚くなる(ライン19で示すように)固体外側シェル26の内部に液体金属コア24を有している。モールド14は溶融金属の外周を規定および溶融金属を冷却し固体シェル26の形成を開始し、そして冷却されている金属は図1に矢印Aで示される進行方向に出て行きモールドから離れる。冷却を促進し凝固工程を維持するようにインゴットがモールドから出てくると、冷却液(または液体冷却剤)のジェット18がインゴットの外側表面に向けられる。冷却液は通常、水であるがしかし、アルミニウム−リチウム合金のような特別の合金用に例えばエチレングリコールのような他の液体を用いることも可能である。用いる冷却剤の流量は、例えば外周1センチメートルあたり毎分1.04リットル〜1.78リットル(毎分0.7ガロン(gpm)/外周1インチ〜1.2gpm/インチ)とDC鋳造として極めて通常の量でよい。

0040

環状のワイパー20が、モールドの出口17から距離Xだけ離されてインゴットの表面と接触し配置され、このワイパーは、インゴットが更に下降するとワイパーより下のインゴットの部分に液体冷却剤が無いように、液体冷却剤をインゴットの表面から取り除く(流れ22で表される)効果を有する。冷却剤の流れ22はワイパー20から流れているがしかし、インゴット16の表面から離れており、冷却効果を有しない。

0041

距離Xは、インゴットがまだエンブリオニックインゴット(すなわち、固体シェル26の内部に含まれ液体の中央部24をまだ含んでいる)である間に、インゴットからの液体冷却剤の除去が起こるように構成される。換言すれば、ワイパー20は、インゴットの進行方向Aに垂直な断面がエンブリオニックインゴットの液体金属コア24と交差する位置に置かれている。ワイパー20の上面より下の位置では、インゴットのコア内での連続した溶融金属の冷却および凝固が、凝固の潜熱と固体シェル26への顕熱を放出している。連続した強制(液体)冷却のない、この潜熱と顕熱の処理が固体シェル26(ワイパー20が冷却剤を除去している位置より下側)の温度に、上昇(そのワイパー直上の温度と比較して)と、金属がその場均質化を受ける変態温度より高くなるように構成される溶融コアの温度への収束とをもたらす。少なくともアルミニウム合金については、収束温度は概して425℃以上、より好ましくは450℃以上になるように構成される。温度測定に関する実用的な理由から、「収束温度」(溶湯コアと固体シェルが最初に到達する同一温度)は、液体冷却剤を除去して以降にこの工程において固体シェルが上昇する最高の温度である「回復温度(rebound temperature)」と同じとして取り扱う。

0042

回復温度は425℃よりも高い温度に成り得て、概して温度が高いほどより優れた所望のその場均質化の結果をもたらすが、しかし回復温度は、当然ながら金属の初期の融点には達しない。冷却され、凝固した外側シェルがコアからの熱を吸収し、回復温度の上限値を定める。ついでに言えば、回復温度は概して少なくとも425℃であり、通常、金属の焼鈍温度より高い(アルミニウム合金の通常の焼鈍温度は343〜415℃である)。

0043

425℃はほとんどの金属にとって臨界温度である。より低い温度では、凝固組織内の金属元素の拡散速度が結晶粒を横断して合金の化学成分を正常化または平準化するには遅過ぎるからである。この温度以上、とりわけ450℃以上では、拡散速度が金属の望ましいその場均質化効果をもたらすように所望の平準化を形成するのに適している。

0044

実際、収束温度が425℃より高い所定の最小温度に到達することを確実にすることはしばしば望ましい。特定の合金について、通常425℃とその合金の融点との間に例えばソルバス温度または変態温度のような遷移温度があり、その温度より高い温度で例えばβ相からα相に成分または金属間化合物の構造が変わるように、合金の微細組織変化が起こる。収束温度がこのような変態温度を超えるように構成されていれば、合金の構造に所望の変態のような変化(transformational change)をもたらすことができる。

0045

回復温度または収束温度は鋳造パラメータ、とりわけワイパー20のモールドから下方における位置(すなわち図1における距離Xの大きさ)により決定される。距離Xは好ましくは、(a)冷却剤を除去後十分な液体金属がコアに残存しており、インゴットのコアおよびシェルの温度が上述した所望の収束温度に到達するように十分な溶得金属の過剰温度(加熱(super heat))と潜熱を有する。(b)通常の鋳造速度で空気中での通常の冷却速度において、所望の微細組織の変化が起こるように、金属が冷却剤除去後に十分な時間425℃より高い温度に曝される。および(c)インゴットが安定になり内部からの溶融金属の滲み出(bleeding)または漏れ(break out)を避けるように、シェルが凝固するのに十分な時間、インゴットを冷却液(すなわち、冷却液を除去する前)に曝す。となるように選択される。

0046

液体冷却およびシェルの凝固のための十分なスペースを確保しつつ、ワイパー20をモールドの出口から50mmより近く配置するのは通常、困難であり、従ってこれが概して距離Xの実用的な下限(最小寸法)である。所望の回復温度を得るために、上限(最大寸法)は、インゴットのサイズによらず、実際問題として約150mmであることが見出されており、距離Xの好ましい範囲は通常50mm〜100mmである。ワイパーの最適位置は、合金により、および鋳造装置により(異なる寸法のインゴットが異なる鋳造速度で鋳造され得るために)変わり得るが、しかし常にインゴットのコアが完全に固体になる位置より上方である。この場合の適正な位置(または位置の範囲)を計算により(発熱および熱損失式(heat-generation and heat-loss equation)を用いて)または表面温度測定(例えば、表面に配置したもしくは表面に接触した標準的な熱電対または非接触プローブを用いて)により、または試行実験により決定できる。直径10〜60cmのインゴットを形成する通常の容積のDC鋳造モールドは、鋳造速度が少なくとも40mm/分であり、より好ましくは50〜75mm/分(または9.0×10−4〜4.0×10−3m/秒)で用いられる。

0047

場合によっては、鋳造工程の間で時間とともに距離Xを変える(即ち、ワイパー20をモールド14に近づけるようにまたはモールドから遠ざけるよう移動可能にすることにより)ことが望ましい。これにより鋳造工程の初期および終期過渡期に生ずる異なる熱的条件適応する。

0048

鋳造の初期、ボトムブロックはモールドの出口を塞ぎ、そして徐々に下降して鋳造インゴットの形成を開始する。熱は、出てくるインゴットの外側表面から失われるとともに、インゴットからボトムブロックへ(これは通常、金属の熱伝導による)失われる。しかしながら、鋳造が進行し、距離が増加することによりインゴットの出てくる部分がボトムブロックから離れると、熱はインゴットの外側表面のみから失われる。鋳造の終期、鋳造が終了する直前では、シェルの外側を通常より低くすることが望ましいであろう。モールドから出てくるインゴットの最後の部分は、インゴット全体を上昇できるように、通常吊り上げ装置により掴まれているからである。シェルがより低温でより厚ければ、吊り上げ装置は、吊り上げ作業を危険にし得る変形または破壊を起こし難い。これを実現するために、冷却液の流速を、鋳造の終期に増加してもよい。

0049

鋳造の初期、ボトムブロックへの熱の損失に起因し、通常の鋳造時と比較してより多くの熱がインゴットから除去される。このような場合、ワイパーを一時的にモールドに近づけ、インゴットの表面が冷却水に曝され時間を短くし、従って熱除去を減少させてもよい。所定の時間後、ワイパーを通常の操業時の通常の位置に戻してもよい。鋳造の終期、実用的にはワイパーを動かさなくてもよいがしかし、必要であれば冷却液の流速により付加的に除去される熱を補うようにワイパーを上昇させることが可能である。

0050

ワイパーを動かす距離(Xの変化、すなわちΔX)と移動を行った時間とは、理論的な熱損失式(heat-loss equation)により計算する、試行と実験とにより判断する、または(より好ましくは)適当なセンサーにより測定したワイパーの上方(または可能なら下方)のインゴットの表面温度を基に判断することが可能である。後者の場合、異常に低い温度は、距離Xを短く(冷却を少なく)する必要を示すことが可能であり、異常に高い温度は距離Xを長くする必要を示すことが可能である。この目的に適したセンサーは、Marc Augerらによる米国特許6,012,507号公報に開示されている(その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)。

0051

鋳造の初期において、最初の50cmから60cmの鋳造の進行のみのために、通常、ワイパーの位置の調整が必要である。例えばそれぞれ25mmのような、いくつかの小さな付加的な変更がなされ得る。厚さが68.5cmのインゴットについて、最初の調整は、インゴットとの最初の部分の150〜300mmの範囲で為されるであろう。そして、同様の変動は30cmと50〜60cmで為されるであろう。厚さ50cmのインゴットでは、調整は15cm、30cm、50cmおよび80cmで為されるであろう。ワイパーの最終位置は通常の鋳造の進行に必要な位置であり、よってワイパーはモールドに最も近い位置でスタートし、鋳造の進展とともに下方に移動される。これは、インゴットが出てくる部分が鋳造の進展に伴いボトムブロックからより遠く離れるために減少する熱損失に近い(または、熱損失を概算している)。従って、距離Xは通常の鋳造時より短い値で始まり、通常の鋳造で要する距離に向かって徐々に長くなる。

0052

鋳造の終期で、何らかの調整が必要である場合、それは、鋳造材の最後の25cmで為されるであろう。そして、通常は1〜2cmの調整を1回要するのみである。

0053

ワイパーのワイパー位置の調整は、手動で調整してもよい(例えば、ワイパーが、ワイパーの突起部(例えばフック)が中を貫く鎖の輪(link)または小穴(eyelet)を有する鎖により支持されている場合、該突起部が異なる鎖の輪または小穴を貫いて挿入できるようにワイパーを支持および上昇させることが可能である)。別の態様では、そしてより好ましくは、ワイパーは電気的に、空気圧ジャッキにより、または油圧(または液圧)により支持され、必要応じ、組み込まれたロジックによるフィードバックループによりワイパーは動くように、適宜コンピュータにより上述した種類のセンサー機器リンクされている。この主の構成を簡潔な形態で図2に示す。

0054

図2に示した装置は、ワイパー20の高さを調整(例えば、実線で示す上方の位置から破線で示す下方の位置に)することを除くと、図1に示した装置と同様である。従って、モールド14の出口からの距離XはΔX(上方または下方)で変えることができる。ワイパー20は、油圧機関23により操作するピストンシリンダーの配置である調整可能な支持体21により支持されていることから、この調整機能が可能となる。油圧機関23自体は、モールド14の出口17直下のインゴット16の表面温度をモニターする温度センサー27により得られる温度情報を基にコンピュータ25により制御されている。上述したように、センサー27により記録される温度が所定の値よりも低い場合、ワイパー20は上昇させることが可能であり、この温度が所定の値より高ければ、ワイパーを低くすることが可能である。

0055

望ましくは、例示的実施形態の全ての形態が、ワイパー20より下方のインゴットの収束温度は、その場均質化のための変態温度より高く、所望の微細組織の変態(または変化、transformation)が起こるのに十分な時間保持すべきである。実際の時間は合金に依存するであろうが、しかし好ましくは元素の拡散速度および回復温度がどの程度425℃を超えるかに応じて10分から4時間の範囲である。通常、望ましい変態は30分以内に起こり、しばしば10〜15分の範囲である。これは、通常、金属の変態温度(例えばソルバス)よりも高い温度(しばしば、550〜625℃)で、46〜48時間の範囲である、従来の均質化に要する時間と明らかに対照的である。従来の均質化と比較して、例示的実施形態の大幅な時間の減少にかかわらず、得られる金属の微細組織は、本質的に両方の場合で同じであり、即ち例示的実施形態の鋳造の結果物は従来の均質化なしに、均質化された金属の微細組織を有し、更なる均質化なしに、圧延または熱間加工することが可能である。本発明の本例示的実施形態を「その場均質化」と言い、すなわち、後ではなく鋳造の際に均質化される。

0056

冷却を適用し、その後除去した結果として、出てきたインゴットの表面は最初、膜沸騰および核膜沸騰(nucleate film boiling)の形態に特徴付けられる急冷を受け、これにより表面温度は確実に低いレベル(例えば150〜300℃)まで急激に低下するが、しかしその後、液体冷却剤が除去され、この結果、インゴットの溶融した中心部の過剰温度と潜熱(同様に固体金属の顕熱)とが、固体シェルの表面を再加熱する。これにより、所望の微細組織の構造遷移(または構造転移、structure transition)に必要な温度に確実に到達する。

0057

冷却剤が、それよりも前にインゴットの表面より除去することが望ましい時間よりも長い時間インゴットと接触させられた場合(または冷却剤が全く除去されない場合)、溶融コアの凝固の過熱および潜熱の実質的な効果を利用し、所望の金属学的変化を実現するようにインゴットのシェルを十分に再加熱することは不可能であることに留意されたい。このような手順によりインゴットのいくらかの部分は温度平衡に達するであろう、またこれにより有益な応力緩和およびクラック低減がもたらされるであろうが、しかし所望の金属学的変化は得られず、そしてインゴットを標準寸法および所望の厚さに圧延する前に従来の付加的な均質化の手順が必要である。冷却剤がインゴットの表面から所望の方法により取り除かれ、そしてインゴット全体が温度平衡(temperature equilibration)となり、金属内で所望の微細組織の変化が起こる前に更なる冷却剤がインゴット接触した場合、同じ問題が起こり得る。

0058

いくつかの場合、冷却剤(とりわけ、水ベースの冷却剤)は、金属表面に生成した蒸気が冷却剤をインゴットから引き離す、自然な核膜沸騰により一時的に少なくとも部分的にインゴットの表面から取り除かれ得る。しかしながら、更なる冷却が起こるに連れて、冷却液は概して表面に戻る。もしこの例示的実施形態において、この冷却剤の一時的な除去が用いられているワイパーより前で起これば、インゴット表面は、その温度プロファイルに二つの窪み(降下)を示すであろう。冷却剤は核膜沸騰により一時的に除去されるまで表面を冷却し、そしていくらか温度が上がり、その後インゴットの表面はワイパーの上面に保持されている冷却剤のプールを通り抜け(ワイパーは、冷却剤のプールを形成するのを促進するようにインゴットの方に内側に窪んでもよい)、そして温度が再び降下し、ワイパーがインゴットの表面から全ての冷却剤を除去した時にのみ再び上昇する。これはインゴットのシェルの冷却曲線に特徴的な「W」字型を形成する(図23と24で見られるように)。

0059

図1のワイパー20は、環状の硬いサポートハウジング32(例えば金属より成る)の内部に保持された環状の軟らかい耐熱エラストーマ材料30(例えば耐熱シリコンゴム)の形態であってもよい。

0060

図1物理的なワイパー20を示しているが、所望であれば他の冷却剤除去手段を用いてもよい。実際、冷却剤除去の非接触法を具備することはしばしば好都合である。例えば、インゴットに沿って流れる冷却材を除去するように所望の位置に、ガス又は異なる液体のジェットを具備してもよい。別の実施形態では、上述した核膜沸騰を用いることができる。即ち、核膜沸騰に起因し一時的に除去された後、冷却剤がインゴットの表面に戻るのを防止できる。このような冷却剤除去の非接触法の例が、例えばZeiglerによる米国特許第2,705,353号、Moritzによる独国特許DE1,289,987、Kilpatrickによる米国特許第2,871,529号およびBekeらによる米国特許第3,763,921号に示されている(その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)。例えば、Yuによる米国特許第4,474,225号またはWagstaffによる米国特許第4,693,298号と米国特許第5,040,595号に開示されるように、核膜沸騰は、二酸化炭素または空気のような、溶解または圧縮したガスを冷却液に加えることにより付勢される(その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)。

0061

他の実施形態では、流れ18での冷却剤の供給速度は、インゴットがモールドより下部の臨界点(距離X)に達する前、またはインゴットの表面が臨界表面温度よりも低くなる前に、全ての冷却剤インゴットの表面から蒸発する値に制御してもよい。これは、1996年12月10日に発行された、Wagastaffによる米国特許第5,582,230号 (その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)に示された冷却剤の供給方法を用いることにより可能となる。この構成において、液体冷却剤(冷却液)は異なる冷却剤供給源に接続された2列のノズルから供給し、冷却剤が所望の位置(距離X)で蒸発するのを確実にするようにインゴット表面に供給する冷却剤の量を変えることは容易である。他の実施形態で、あるいは加えて、蒸発する水の必要な供給量を確かにするように、モールドの環状部分の環状連続部をベースにする米国特許第6,546,995号と同様の方法により熱計算を行うことができる。

0062

例示的実施形態による鋳造可能なアルミニウム合金は、非熱処理型(non-heat-treatable)合金(例えばAA1000、3000、4000および5000シリーズ)と熱処理型(heat-treatable)合金(例えば、AA2000、6000および7000シリーズ)との両方を含む。知られた形態の熱処理型合金の場合、UchidaらはPCT/JP02/02900で、加熱および熱間圧延の前に、均質化工程の後300℃より低い温度に(好ましくは室温に)焼入れし、続いて溶体化熱処理および時効すると、通常の工程により加工された材料と比べ、優れた特性(耐窪み性(dent resistance)、ブランクフォーム値(blank formed value)の改善、および硬さ特性)を示すこと開示している。予想外に、この特性は、所望であれば、合金を均質化させる冷却液の除去後に十分な時間が経過した後(例えば、少なくと10〜15分)で、しかしインゴット(すなわち、ちょうどその場均質化された、インゴットの部分)の十分付加的な冷却の前にインゴットに焼入れ工程を行うことにより、例示的実施形態においても再現できる。

0063

最終焼入れ(その場焼入れ)を添付の図3に示す。図3では、DC鋳造操作(本質的に図1のDC鋳造操作と同じ)が行われるが、インゴットはインゴットから冷却剤が取り除かれるポイントから適切な距離Yだけ下方の水のポール34(ピットプールまたはピット水という)に浸漬される。距離Yは、既述のように、所望のその場均質化を有効な時間行うのに十分だが、しかし更なる冷却には十分でないようにしなければならない。例えば、プール34に浸漬する直前のインゴット外側表面の温度は、好ましくは425℃より高く、望ましくは450〜500℃の範囲でなければならない。そして、浸漬は、インゴットの温度を、感知できる速度では固体構造の変態が起こらない温度(例えば350℃)より低い温度に急速に水焼入れる。この後、インゴットは圧延または更なる加工に用いる標準長さとなるように切断してもよい。

0064

ちなみに、全長に亘りインゴットを水焼入れ可能とするように、鋳造ピット(インゴットがモールドから出てきて、中に降下するピット)がインゴットの長さより深くなければならず、更なる溶融金属がモールドに追加されなければ、完全に沈む(または水中に入る、submerge)までインゴットは連続してピット内およびプール34内を降下できる。別の実施形態では、インゴットはプール34の最大深さまで部分的に浸漬することでき、そしてインゴットが完全に沈むまでプールの表面を上昇させるように、更に水を鋳造ピットに導入してもよい。

0065

例示的実施形態は円柱形のインゴットに限定されるものではなく、例えば直方体インゴット、または2003年4月15日発行のWagstaffによる米国特許第6,546,995号(この特許の開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)の図9および図10に開示されている異形のDC鋳造モールドで形成されたインゴットのような他の形状のインゴットにも適用可能なことに留意すべきである。米国特許第6,546,995号の図10を本出願の図4として複製している。図4は鋳造モールドの中を見た上面図である。モールドは略「J」字型に見え、対応する断面形状を有するインゴットを製造することを意図している。このようなモールドから作られるエンブリオニックインゴットは、インゴットの外周の位置により異なる距離だけ外側表面から離れている溶融コアを有しているであろう。従って、インゴットの外周の周り(距離X)で同じように冷却を止めると、異なる凝固の過熱および潜熱がインゴットのシェルの異なる部分に供給されるであろう。

0066

実際、外周の周りの全てのシェルの部分が同じ収束温度となることが望ましい。米国特許第6,546,995号では、鋳造インゴットの形状を適合させるようにモールドの鋳造表面の形状を調整することによりモールドの周りで同じ鋳造特性保証している。例示的実施形態では、エンブリオニックインゴットのシェルのそれぞれの部分(冷却停止後)で、インゴットの外周をインゴットの形状に応じた仮想セグメントに分割し、異なるセグメントにおいてモールド出口から異なる距離で冷却流体を取り除くことで、溶融コアからの熱のインプットを同じにし、同じ収束温度にすることを確実にできる。いくつかのセグメント(コアから、より高い熱のインプットを受けるセグメント)は他のセグメント(より少ない熱を受けるセグメント)よりも長い時間冷却流体に曝される。従って、いくつかのセグメントは、冷却流体を除去した後より低い温度となり、このより低い温度は、コアからのこれらセグメントへのより高い熱のインプットにより補償され、インゴットの外周に亘り収束温度が等しくなる。

0067

このような手順は、例えば、ワイパーを(a)異形インゴットの周りにぴったりとフィット(または適合)するような形状にする。および(b)モールドに面しているワイパーの端部に異なる面または成形した輪郭(contour)を有し、異なる面または輪郭の断面がモールドの出口から異なる間隔を有している。ことにより、得ることができる。図5は、インゴットの周囲で同じ収束温度を生じるように設計した図4モールド外周の距離Xの変化を示すプロットである(プロットは図4のポイントSから始まり時計回りに進む。)。そして、インゴットの外周の周りに所望の同じ収束温度をもたらすように、対応する外周の形状を有するワイパーが用いられる。

0068

図6は、図4のインゴットと同様の形状を有するインゴットを鋳造するのに有効であろうワイパー20’を示す。ワイパー20’が他の部分より高くなっている複雑形状の部分を有していることを見出すであろう。これにより、ワイパー20’より下方でインゴットの周囲の収束温度が等しくなるように構成した位置において、出てくるインゴットの外側表面から冷却液が除去されるのを確実にする。

0069

冷却剤がいろいろなセグメントから除去されるおよびセグメント自身の幅は、鋳造したインゴット内部の熱流速コンピュータモデリングにより、または異なる形状のそれぞれのインゴットでの簡素な試行および試験により決定することができる。繰り返すが、ゴールはインゴットのシェルの外周の周りで同じまたは非常に近い収束温度を達成することである。

0070

既に詳しく述べたように、例示的実施形態、少なくともその好ましい態様、は従来の方法(液体冷却剤のワイピングを行わない)とその後に従来の均質化とを行った同じ金属の微細結晶構造と類似または同一の微細結晶構造有するインゴットを提供する。従って、例示的実施形態のインゴットは、更なる均質化処理を用いることなく圧延または熱間加工を行うことができる。通常、インゴットは最初、熱間加工を行い、これはインゴットを、例えば通常、少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも520℃のような適切な温度に予熱することを要する。熱間圧延後、得られた中間厚さのシートは通常、最終厚さに冷間加工される。

0071

例示的実施形態の更なる要旨として、少なくともいくつかの金属および合金は、インゴット形成後で熱間圧延前の必要に応じて為される特定の2段階予熱工程により恩恵を受ける。このようなインゴットは、理想的には上述した「その場均質化」工程により形成されるが、しかし代わりに、既に好都合な改善が得られている従来の鋳造法により形成されてもよい。この2段階予熱工程は、例えばMnとCuとを含むアルミニウム合金(例えば、1.5wt%Mnと0.6wt%Cuを含むAA3003アルミニウム合金)のような、「深絞り」特性を持たせることを意図した合金にとりわけ適している。これらの合金は、析出強化または分散強化に依っている。2段階予熱工程において、DC鋳造インゴットは通常、皮剥ぎされ、その後(1)用いる合金の通常の熱間圧延温度より低い中間核生成温度までゆっくり加熱し、そして(2)通常の熱間圧延予熱温度またはこれより低い温度までインゴットをゆっくり加熱し、その温度で何時間が保持する。ことを含む2段階予熱のために予熱炉に入れられる。この中間温度は、金属を核生成させ、不安定な核を再吸収および破壊し、それらをより顕著な析出成長のための中心を形成する安定な核に置き換える。高温での保持時間は、圧延が始まる前に安定な核からの析出物の成長のための時間を与える。

0072

加熱工程の工程(1)は、温度を核生成温度(核生成を開始する、ことを含んでもよく、またより好ましくは工程(2)のより高い温度に徐々に温度を上げることを含んでもよい。この工程の際の温度は、380〜450℃、より好ましくは400〜420℃であり、この範囲内で温度を保持またはゆっくりと上げてもよい。昇温速度は、好ましくは25℃/時間より遅く、より好ましくは20℃/時間より遅く、概して2〜4時間に及ぶ。核生成温度への加熱速度は例えば平均約50℃/時間のように速くてもよい(最初の30分程度の速度は、例えば100〜120℃/時間のように、より速くてもよいが、核生成温度が近づくと遅くする。)。

0073

工程(1)の後、インゴットの温度を熱間圧延温度まで、または通常480℃〜550℃、もしくはより好ましくは500〜520℃である、析出物の成長が起こる温度よりも低い温度まで更に高くする(必要があれば)。そして、2段階加熱全体が好ましくは10以上で24時間より短くなる時間、温度を一定にするまたはゆっくりとさらに上げる(例えば熱間圧延まで)。

0074

インゴットを直接、圧延の予熱温度まで加熱することは2次結晶または析出物の数を増加させるが、得られる析出物は概して寸法が小さい。中間温度での予熱は核生成をもたらし、そして圧延予熱温度(例えば520℃)まで、またはこれより低い温度までの加熱は、例えばより多くのMnおよびCuが固溶体から出てきて、析出物が成長を続けることから、2次析出物の寸法の成長をもたらす。

0075

熱間圧延温度まで加熱後、通常、従来の熱間圧延が遅延なく行われる。

0076

本明細書のその場均質化を含む記述は、2004年6月23日出願の米国特許出願第10/875,978号(2005年1月20日にUS2005−0011630として公開)に示され、またに2004年3月16日発行の米国特許第6,705,384号にも示されている複合インゴットの鋳造にも用いることができる。なおこれらの特許の完全な開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。

0077

本発明は、説明のためのみに示され、限定するものと解してはならない、以下の実施例および比較例により詳細に示す。

0078

・実施例1
最終長さが3メートル以上ある3つのダイレクトチル鋳造インゴットを530mmおよび1,500mmのダイレクトチルロリングスラブインゴットモールド(Direct Chill Rolling Slab Ingot Mold)で鋳造した。インゴットは、米国特許第6,019,939号(その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)によるAl−1.5%Mn−6%Cu合金と同一の組成を有した。第1のインゴットは従来の方法によりDC鋳造し、第2のインゴットは、冷却剤を取り除いた後鋳造ピットから取り出してから室温まで冷却させる図7および図8に示した方法に従って、その場均質化を伴い鋳造し、第3のインゴットは冷却剤をインゴットから除去し、インゴットを再加熱しその後、モールドの下方約1メートルの水ピット焼き入れ図9の方法に従ったその場焼入れ均質化を伴いDC鋳造した。

0079

より詳細には、図7は、DC鋳造し、その後水冷し、冷却剤をワイピングしたAl−Mn−Cu合金の表面温度と中心(コア)温度とを時間に対して示す。表面温度のプロットは、インゴットが冷却剤と接触することから、鋳造直後の温度に深い窪みを示しているが、しかし中央の温度は僅かな変化で保持されている。表面温度は、冷却剤を除去する直前、約255℃まで下がっている。その後、表面温度は上昇し、576℃の収束または回復温度で中心温度と収束している。収束後(インゴットが完全に固体の場合)、温度はゆっくり下がり空冷と一致する。

0080

図8は、図7と同じ鋳造操作を示しているが、しかしより長い時間まで延長し、とりわけ温度が収束または回復した以降の冷却期間を示している。これより、凝固したインゴットの温度は1.5時間以上の間425℃よりも高く保持されており、これはインゴットの所望のその場均質化を達成するのに十分である。

0081

図9図7と同様であるが、しかし3つの僅かに異なる時間で実施した同じ鋳造の温度測定結果を示す。実線は3つのプロットの表面温度を示し、点線はインゴットの厚さの中心での温度を示す。表面温度が400℃および500℃より高く維持されている時間をそれぞれのプロットから求めることができ、それぞれの場合15分よりも長い。それぞれの場合、回復温度は563℃、581℃および604℃であることが示されている。

0082

3つのインゴットのサンプルは、熱間圧延温度までの通常の予熱をして圧延し、または例示的実施形態の性質を示すようにいろいろな予熱をして圧延した。

0083

鋳造の手順は例えば60mm/分、1.5リットル/分/cm、金属温度705℃のような、工業的に一般的な冷却条件で実施した。

0084

それぞれのインゴットを中心(中間部分)に沿って切断し、それぞれのインゴットの2つの部分の幅を250mmとし、その後、中心と表面との温度履歴を維持しながらそれぞれの250mmのスラブは厚さ75mm、幅250mm(オリジナルのインゴットの1/2の厚さ)および長さ150mm(鋳造方向)の複数の圧延用インゴットに切断した。

0085

圧延用インゴットはその後以下のように処理した。

0086

サンプルA(通常の熱履歴を伴うダイレクトチル鋳造と改良した従来の均質化)は、615℃の炉内においた。そこでは約2時間半(2.5時間)後、金属の温度は安定し、さらに615℃で8時間保持した。サンプルは3時間で480℃まで炉冷され、その後480℃で15時間ソーキングし、その後取り出し、厚さ6mmに熱間圧延した。この6mmのサンプルの一部分は、その後1mmまで冷間圧延し、50℃/時間の速度で400℃の焼鈍温度まで加熱し、2時間保持し、その後炉冷した。

0087

2次析出物の分布を示している透過電子顕微鏡写真は、6mmの材料(図10a)の両端部(表面と中心)から1インチ以内の部分から採取された長手方向の断面の特徴である。再結晶した結晶粒組織は、厚さ1mmの材料(図10b)の両端(表面と中心)から1インチ以内から採取された長手方向の断面の特徴である。

0088

このサンプルは、通常の従来の均質化工程が約48時間行われるのに対し、全体で26時間に短縮したことを除き、従来の鋳造および均質化を代表している。

0089

サンプルB(従来の鋳造熱履歴を伴うダイレクトチル鋳造と改良した2段階予熱)は、440℃の炉内に置いた。そこで、約2時間後、金属の温度は安定になり、更に440℃で2時間保持した。金属を2時間で520℃に加熱するように炉温を上げ、そしてサンプルを20時間保持し、その後取り出して厚さ6mmに熱間圧延した。この6mmのサンプルの一部分は、その後1mmまで冷間圧延し、50℃/時間の速度で400℃の焼鈍温度まで加熱し、2時間保持し、その後炉冷した。

0090

2次析出物の分布を示している透過電子顕微鏡写真は、厚さ6mmの材料(図11a)の両端部(表面と中心)から1インチ以内の部分から採取された長手方向の断面の特徴である。再結晶した結晶粒組織は、厚さ1mmの材料(図11b)の両端(表面と中心)から1インチ以内から採取された長手方向の断面の特徴である。

0091

サンプルC(その場均質化(図7および図8に従う)鋳造熱履歴を伴うダイレクトチル鋳造と改良した2段階予熱)は440℃の炉内に置いた。そこで、約2時間後、金属の温度は安定になり、更に440℃で2時間保持した。金属を2時間で520℃に加熱するように炉温を上げ、そしてサンプルを20時間保持し、その後取り出して厚さ6mmに熱間圧延した。この6mmのサンプルの一部分は、その後1mmまで冷間圧延し、50℃/時間の速度で400℃の焼鈍温度まで加熱し、2時間保持し、その後炉冷した。

0092

2次析出物の分布を示している透過電子顕微鏡写真は、厚さ6mmの材料(図12a)の両端部(表面と中心)から1インチ以内の部分から採取された長手方向の断面の特徴である。再結晶した結晶粒組織は、厚さ1mmの材料(図12b)の両端(表面と中心)から1インチ以内から採取された長手方向の断面の特徴である。

0093

サンプルD(その場溶体化を伴うダイレクトチル鋳造と2段階予熱を伴う急速焼入れ図9))は、440℃の炉内に置いた。そこで、約2時間後、金属の温度は安定になり、更に440℃で2時間保持した。金属を2時間で520℃に加熱するように炉温を上げ、そしてサンプルを20時間保持し、その後取り出して厚さ6mmに熱間圧延した。この6mmのサンプルの一部分は、その後1mmまで冷間圧延し、50℃/時間の速度で400℃の焼鈍温度まで加熱し、2時間保持し、その後炉冷した。

0094

2次析出物の分布を示している透過電子顕微鏡写真は、厚さ6mmの材料(図13a)の両端部(表面と中心)から25mm以内の部分から採取された長手方向の断面の特徴である。再結晶した結晶粒組織は、厚さ1mmの材料(図13b)の両端(表面と中心)25mm以内から採取された長手方向の断面の特徴である。

0095

サンプルF(従来の熱履歴を伴うダイレクトチル鋳造と改良した従来の均質化)は、615℃の炉内に置いた。そこで、約2時間半(2.5時間)後、金属の温度は安定になり、更に615℃で8時間保持した。サンプルは、3時間で480℃まで炉令し、その後480℃で38時間ソーキングし、そして取り出して厚さ6mmに熱間圧延した。この6mmのサンプルの一部分は、その後1mmまで冷間圧延し、50℃/時間の速度で400℃の焼鈍温度まで加熱し、2時間保持し、その後炉冷した。

0096

2次析出物の分布を示している透過電子顕微鏡写真は、6mmの材料(図14a)の両端部(表面と中心)から1インチ以内の部分から採取された長手方向の断面の特徴である。再結晶した結晶粒組織は、厚さ1mmの材料(図14b)の両端(表面と中心)から25mm以内から採取された長手方向の断面の特徴である。このサンプルは従来の鋳造および均質化を代表している。通常の従来の均質化は48時間実施されるけれども。

0097

サンプルG(改良した単一段階予熱を伴うダイレクトチル鋳造)は、520℃の炉内においた。そこでは約2時間後、金属の温度は安定し、さらに520℃で20時間保持し、その後取り出し、6mmに熱間圧延した。この6mmのサンプルの一部分は、その後1mmまで冷間圧延し、50℃/時間の速度で400℃の焼鈍温度まで加熱し、2時間保持し、その後炉冷した。

0098

2次析出物の分布を示している透過電子顕微鏡写真は、厚さ6mmの材料(図15a)の両端部(表面と中心)から1インチ以内の部分から採取された長手方向の断面の特徴である。再結晶した結晶粒組織は、厚さ1mmの材料(図14b)の両端(表面と中心)から25mm以内から採取された長手方向の断面の特徴である。

0099

・比較例1
例示的実施形態と既知の鋳造法との違いを示すように、Zieglerによる米国特許第2,705,353号またはZinnigerによる米国特許第4,237,961号に係るAl−4.5%Cu合金のインゴットと例示的実施形態に係るインゴットAl−4.5%Cu合金とを鋳造した。Ziegler/Zinnigerに従った鋳造では、僅か300℃の回復/収束温度を生じるように位置合わせしたワイパーを用いた。例示的実施形態の鋳造工程では、453℃の回復温度を生じるように位置合わせしたワイパーを用いた。3つの生じた結果物の走査型電子顕微鏡写真を得た。それぞれ、図16、17および18に示す。図19は、焼入れなしの例示的実施形態に従った鋳造方法のコアおよび表面の温度を示す。

0100

EMの結果は、例示的な実施形態に従わずに実施した鋳造法の結果物において、銅の濃度がセルを横切って如何に変化しているかを示している(図16および17、ピークの間のプロットの上方に向いた曲線に留意されたい。)。例示的実施形態の結果物の場合、しかしながら、SEMの結果は、セル内での銅の濃度の変化は、はるかに少ないことを示している(図18)。これは、従来の均質化を受けた金属の微細組織の典型である。

0101

・実施例2
本発明に係るAl−4.5%Cu合金インゴットを鋳造し、このインゴットを鋳造の最後に冷却(焼入れ)した。図20は、得られたインゴットの銅(Cu)ラインスキャンを伴うSEM像である。単位セルの中に如何なる銅のコアの形成(coring)も無いことに留意されたい。セルは図16のそれよりも僅かに大きいが、セルの交差部の鋳造による金属間化合物の量が減少しており、析出物は球状化している。

0102

図21は、鋳造の最終段階での最終焼入れを示す、インゴットの鋳造の熱履歴を示す。この場合の収束温度(425℃)は選択した組成のソルバス温度より低いが、しかし所望の特性を得た。

0103

・比較例2
図22は、鋳造による金属間化合物相の面積率についての上述した3つの多様な工程(従来のDC鋳造と冷却(DCと表記)、DC鋳造および最終焼入れのない例示的実施形態に係る冷却(その場サンプルIDと表記)、および最終焼入れを伴う例示的実施形態に係るDC鋳造(その場焼入れと表記))での比較を示す。より少ない面積の方が得られた合金の機械的特性にとってより良いと考えられる。この比較は、異なる鋳造方法に係る、鋳造による金属間化合物相面積率が、方法を示した順に減っていることを示している。最も広い相の面積は、従来のDC鋳造法ルートにより形成され、最も狭いのは最終焼入れを伴う本発明により形成されている。

0104

・実施例3
図23グラフに示す工程(またはプロセス)に係る、Al−0.5%Mg−0.45%Si合金(6063)のインゴットを鋳造した。これはインゴットのバルクが強制冷却されない場合の凝固および再加熱が起こる領域の熱履歴を示す。

0105

同じ合金を図24(焼入れを含む)に示す条件で鋳造した。これは、表面とコアの温度が570℃の温度で収束し、その後室温に強制冷却されるインゴットの温度変化を示している。これは、高い回復温度と緩冷却を伴い、セル内偏析のより速い是正が必要な場合または合金が遅い速度で拡散する元素を含む場合に望ましい図8に示す方法と比較することが可能である。長い時間保持される高い回復温度(合金のソルバスより相当高い)の使用は、結晶粒界近傍の元素を非常に素早く鋳造による金属間化合物相に拡散し、これにより有用なまたは有益な金属間化合物相に改良させ、またはより完全に変態させ、そして鋳造による金属間化合物相の周囲に析出物の無いゾーンを形成させる。図24は、ワイパーの先立つ核膜沸騰のシェル特性による「W」字型の冷却曲線を示していることに気が付くであろう。

0106

・比較例3
図25a、25b、25cは6063合金から得たX線回折パターンであり、従来のDC鋳造と図18および図19の2つのその場方法とを対比して、α相およびβ相の量の違いを示している。それぞれの図の上方のトレースは、従来通り鋳造したDC合金を示し、中間のトレースは回復温度が合金の変態温度より低いである場合を示し、下方のトレースは回復温度が合金の変態温度より高い場合を示す。

0107

・比較例4
図26a、26bおよび26cはFDC法をグラフで示したものであり、図26aは従来のDC鋳造インゴットについて示し、図26bは図23の合金について示し、図26cは図24の合金について示す。これらの図は、回復温度が変態温度を超えると所望のα相が増加することを示している。

0108

ちなみに、FDC法およびSiBut/XRD法についての更なる情報ならびにこれらの相変態研究への適用については、H.Cama、J.Worth、P.V.EvansおよびJ.M.Brownによる「Intermetallic Phase Selection and Transformation in Aluminum 3xxx alloys」Solidification Processing, Proceedings of the 4th Decennial International Conference on Solidification Processing, University of Sheffield, July 1997, edsJ. Beech and H. Jones, P 555 (その開示は、参照することにより本明細書に組み入れられる)より得ることができる。

0109

・実施例4
図27aと図27bは、本発明に係る方法で加工したAl−1.3%Mn合金(AA3003)の鋳造による金属間化合物の2つの光学顕微鏡写真を示す。金属間化合物(図中の暗い形態)にクラックが生じているまたは破壊されているのが認められる。

0110

図28は、図27aおよび27bと同様の光学顕微鏡写真であり、繰り返すが金属間化合物はクラックを生じまたは破壊されている。粒子の大きな領域はMnAl6である。リブ状の特徴部はAlMnSiを形成するSiの金属間化合物への拡散を示す。

0111

・実施例5
図29は、図31に示すように最終焼入れなしに鋳造したAA3104合金の鋳造状態の金属間化合物相の「透過型電子顕微鏡TEM)像である。金属間化合物相は、枯渇層(または欠乏層、denuded zone)を示すシリコンの粒子への拡散により改良されている。このサンプルは、冷却剤の最初の適用により粒子が核生成する表面より得た。しかしながら、回復温度が粒子を改良し、組織(または構造)を改良する。

0112

・比較例5
図30は従来の方法で加工されたAl−7%Mg合金の熱履歴を示す。連続して冷却剤が存在することに起因してシェル温度の回復が無いことが認められる。

0113

図31および32は、インゴットが鋳造中冷却されないAl−7%Mg合金の熱履歴を示す。この合金は図30基礎を形成する。

0114

・比較例6
図33図30の基礎を形成する従来のダイレクトチル鋳造合金の450℃付近でベータ(β)相の存在を示す走査示差熱量測定DSC)のトレースである。β相は圧延の際に問題を生じる。β相の存在は、β相からα相に変化するように熱が吸収される時の450℃直上でのトレースの小さな窪みから認めることができる。620℃まで下がる大きな窪みは合金の溶解に対応する。

0115

図34図33と同様のトレースであり、鋳造の際(図31参照)にインゴットを熱いまま保持する(最終焼入れなし)、本発明に係る鋳造材料にベータ(β)相が無いことを示している。

0116

図35もまた、図33と同様のトレースであり、鋳造の際(図32参照)にインゴットを熱いまま保持する(最終焼入れなし)、本発明に係る鋳造材料についてのトレースである。このトレースもまた、ベータ(β)相が無いことを示している。

図面の簡単な説明

0117

図1は、例示的実施形態にかかる工程の好ましい形態を示すダイレクトチル鋳造モールドの垂直断面図であり、とりわけ鋳造工程全体を通じインゴットが熱い状態である場合を示す。
図2図1と同様の断面図であり、鋳造の間にワイパーの位置が移動可能な好ましい変更を示している。
図3図1と同様の断面図であり、鋳造の際にインゴットがその低端部で付加的に冷却(焼入れ)される場合を示している。
J型の鋳造モールドの平面図であり、例示的実施形態の好ましい形態を示している。
図5図4に示す種類のモールドの図1の距離Xを示すグラフである。X値は図4のS点から時計回りの方向に測定したモールドの外周を囲む点に対応する。
図6図4の鋳造モールドために設計したワイパーの斜視図である。
図7は例示的実施形態の1つの形態に係る鋳造手順を示すグラフであり、DC鋳造し、水冷して、冷却剤をワイピングしたAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の時間と表面温度およびコア温度と時間を示す。Al−1.5%Mn−0.6%Cu合金の凝固および再加熱が起こる領域の熱履歴は、インゴットのバルク部分が強制的に冷却されていない場合(下方の温度トレースは表面であり、上方の温度トレース(点線)は中央)の米国特許第6,019,939号の温度履歴と同様である。
図8図7と同じ鋳造操作を示すがしかし、より長い間の時間まで延ばし、とりわけ温度が収束または回復した後の冷却期間を示している。
図9図7と同様のグラフであるがしかし、わずかに時間の異なる3つの時間で実施した同じ鋳造を示している(図に示すようにインゴットの長さが異なる)。実線は、3つのプロットの表面温度を示し、点線はコアの温度を示す。表面温度が400℃および500℃より高い時間をそれぞれのプロットから決定でき、それはそれぞれの場合15分より長い。それぞれの場合、回復温度(rebound temperature)は、563℃、581℃および604℃であることが示されている。
図10aは米国特許6,019,939号公報に記載の合金と同様で、商業的なダイレクトチル方法による凝固および冷却履歴と、実施例のサンプルAと同じ熱および機械加工履歴とを有するAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の透過電子顕微鏡写真を示しており、厚さ6mmにおいて、一般的な析出物の集団がインゴットの表面および中心から25mmのところに見出された。
図10b図10aのシートと同じ領域の組織写真であるが、再結晶セルサイズを明らかにするように偏光させて示している。
図11aは米国特許第6,019,319号記載の合金と同様で、商業的なダイレクトチル方法による凝固および冷却履歴と、実施例のサンプルBと同じ熱加工および機械加工の履歴とを有するAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の透過型電子顕微鏡写真を示しており、厚さ6mmにおいて、一般的な析出物の集団がインゴットの表面および中心から25mmのところに見出された。
図11b図11aのシートと同じ領域の組織写真であるが、再結晶セルサイズを明らかにするように偏光させて示している。
図12aは米国特許第6,019,319号公報記載の合金と同様で、図7および図8で示した凝固および冷却履歴と、実施例のサンプルCと同じ熱間加工および機械加工の履歴とを有するAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の透過型電子顕微鏡写真を示しており、厚さ6mmにおいて、一般的な析出物の集団がインゴットの表面および中心から25mmのところに見出された。
図12b図12aのシートと同じ領域の組織写真であるが、再結晶セルサイズを明らかにするように光学的に偏光させて示している。
図13aは米国特許第6,019,319号公報記載の合金と同様で、図9で示した凝固および冷却履歴と、実施例のサンプルDと同じ熱間加工および機械加工の履歴とを有するAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の透過型電子顕微鏡写真を示しており、厚さ6mmにおいて、一般的な析出物の集団がインゴットの表面および中心から25mmのところに見出された。
図13b図13aのシートと同じ領域の組織写真であるが、再結晶セルサイズを明らかにするように偏光させて示している。
図14aは米国特許第6,019,319号公報記載の合金と同様で、商業的なダイレクトチル方法による凝固および冷却履歴と、実施例のサンプルEと同じ熱加工および機械加工の履歴とを有するAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の透過型電子顕微鏡写真を示しており、厚さ6mmにおいて、一般的な析出物の集団がインゴットの表面および中心から25mmのところに見出された。
図14b図14aのシートと同じ領域の組織写真であるが、再結晶セルサイズを明らかにするように偏光させて示している。
図15aは米国特許第6,019,319号公報記載の合金と同様で、商業的なダイレクトチル方法による凝固および冷却履歴と、実施例のサンプルFと同じ熱加工および機械加工の履歴とを有するAl−1.5%Mn−0.6%Cu合金の透過型電子顕微鏡写真を示しており、厚さ6mmにおいて、一般的な析出物の集団がインゴットの表面および中心から25mmのところに見出された。
図15b図15aのシートと同じ領域の組織写真であるが、再結晶セルサイズを明らかにするように偏光させて示している。
図16は、従来のダイレクトチル鋳造法で一般的な典型的なミクロ偏析を示す凝固結晶粒構造の中央を通る銅(Cu)のラインスキャンを伴う、Al−4.5%Cu合金の走査電子顕微鏡写真である。
図17はワイパーを行い、Zieglerによる米国特許第2,705,353号またはZinnigerによる米国特許第4,237,961号が示す範囲の回復/収束温度(300℃)を示したAl−4.5%Cu合金の銅(Cu)のラインスキャンを伴うSEM像である。
図18はインゴットのバルクを強制冷却しない場合(図19参照)の例示的実施形態に係るAl−4.5%Cu合金の銅(Cu)のラインスキャンを伴うSEM像である。
図19はインゴットのバルクを強制冷却しない場合(図18参照)のAl−4.5%Cu合金の凝固と再加熱が起こる領域における熱履歴を示すグラフである。
図20はインゴットのバルクを意図的な遅延の後、強制冷却する場合(図21参照)の例示的実施形態に係るAl−4.5%Cu合金の銅(Cu)のラインスキャンを伴うSEM像である。
図21はインゴットのバルクを意図的な遅延の後、強制冷却する場合(図20参照)のAl−4.5%Cu合金の凝固と再加熱が起こる領域における熱履歴を示すグラフである。
図22は鋳造材の金属間化合物の代表的な面積率を3つの方法の間で比較して示すグラフである。
図23はインゴットのバルクを強制冷却しない場合のAl−0.5%Mg−0.4%Si合金(6063)の凝固と再加熱が起こる領域における熱履歴を示すグラフである。
図24はインゴットのバルクを意図的な遅延の後、強制冷却する場合のAl−0.5%Mg−0.4%Si合金(6063)の凝固と再加熱が起こる領域における熱履歴を示すグラフである。
図25a、25bおよび25cはそれぞれ、図23および24に従って処理した合金の回折パターンであり、XRDによる相の同定である。
図26a、26bおよび26cは、従来の方法により鋳造したインゴットと図23および図24に従ったインゴットに実施したFDC法を、それぞれグラフで示している。
図27a、27bは例示的実施形態に従い加工したAl−1.3%Mn合金の鋳造状態での金属間化合物の光学顕微鏡写真であり、破砕している。
図28は例示的実施形態に従い加工したAl−1.3%Mn合金の鋳造状態での金属間化合物の光学顕微鏡写真であり、改良されている。
図29はこの例示的実施形態に従い鋳造した、鋳造状態での金属間化合物相の透過電子顕微鏡写真であり、粒子へのSiの拡散により改良されており、枯渇層を示している。
図30は従来の方法により加工されたAl−7%Mg合金の熱履歴を示すグラフである。
図31はインゴットのバルクを強制冷却しない場合でベータ(β)相の溶解温度よりも低い回復温度を伴う、Al−7%Mg合金の凝固と再加熱が起こる領域における熱履歴を示すグラフである。
図32はインゴットのバルクを強制冷却しない場合でベータ(β)相の溶解温度よりも高い回復温度を伴う、Al−7%Mg合金の凝固と再加熱が起こる領域における熱履歴を示すグラフである。
451〜453℃の領域(従来のダイレクトチル鋳造をした材料)(図30参照)でベータ(β)相の存在を示す、走査示差熱量測定(DSC)の出力トレースを示すグラフである。
ベータ(β)相が存在しないことを示す、走査示差熱量測定(DSC)の出力トレースを示すグラフである(図31参照)。
ベータ(β)相が存在しないことを示す、走査示差熱量測定(DSC)の出力トレースを示すグラフである(図32参照)。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ