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技術 スピントロニクスデバイス及び情報伝達方法

出願人 国立大学法人東北大学
発明者 梶原瑛祐内田健一安藤和也齊藤英治
出願日 2008年6月5日 (12年5ヶ月経過) 出願番号 2008-148556
公開日 2009年12月17日 (10年11ヶ月経過) 公開番号 2009-295824
状態 特許登録済
技術分野 ホール/MR素子
主要キーワード 内角度θ 非可逆過程 磁性誘電体 可逆過程 固定磁場 試料端 エネルギー散逸 参考試料
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (15)

課題

スピントロニクスデバイス及び情報伝達方法に関し、スピン波スピン流による長距離輸送を可能にする具体的手段を提供する。

解決手段

磁性誘電体層と、前記磁性誘電体層上に設けられたPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素等のスピン軌道相互作用の大きな元素からなる少なくとも一つの金属電極とを備え、前記磁性誘電体層と前記金属電極との界面でスピン波スピン流−純スピン流交換を行う。

概要

背景

現在の半導体装置等のエクトロニクス分野においては、電子の有する電荷の自由度を利用しているが、電子は電荷以外にスピンという自由度を有している。近年、このスピンの自由度を利用したスピントロニクスが次世代の情報技術の担い手として注目を集めている。

このスピントロニクスでは電子の電荷とスピンの自由度を同時に利用することによって、従来にない機能や特性を得ることを目指している。

この様なスピントロニクスの具体的応用としてGMR素子或いはTMR素子に直接電流を流して電流の担い手となる電子のスピンによりフリー層磁化方向を制御するスピンRAMが提案されている(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)。

また、スピントロニクスの別の形態としては、量子コンピュータが挙げられ、この量子コンピュータにおいては、原子イオン、或いは、分子の有するスピンを利用して量子ビット(Qubit)とするものである(例えば、特許文献3参照)。

このように、磁気記録においてスピンのダイナミクスを利用した量子計算量子情報蓄積が可能であることが明らかにされるとともに、その読み出しや制御にスピン流を用いることが有効であることが知られている。

現在の情報処理装置における情報の伝達は電子流によって行われているが、電子流はジュール熱を伴う。このジュール熱の発生は情報処理単位高集積度化に伴い消費電力の増加として問題となるため、電子流に代えてスピン流による情報の伝達を検討されている。これは、固体中における伝導電子の電子流が時間的に非可逆過程であるのに対して、スピン流は可逆過程であり、エネルギー散逸が殆どないために消費電力の増大に繋がらないことを利用するものである。

このようなスピントロニクスにおけるスピンの作用による現象としては、スピンホール効果(spin−Hall effect)が知られており、試料中に電流を流すと、電流方向に垂直な向きに電荷の流を伴わない純スピン流が発生し、スピン流方向の試料端スピン偏極が生ずる(例えば、非特許文献1参照)。

また、本発明者等は、逆に、試料中に純スピン流を注入すると、純スピン流の方向と垂直方向に電流が流れることを見いだしている。この逆スピンホール効果を利用することによって、試料端に電位差が発生するので、この電位差を検出することによって、純スピン流の流れの有無の検出が可能になる(例えば、非特許文献2参照)。
特開2002−305337号公報
特開2007−059879号公報
特開2004−102330号公報
Science,Vol.301,p.1348,2003
Applied Physics Letters Vol.88,p.182509,2006

概要

スピントロニクスデバイス及び情報伝達方法に関し、スピン波スピン流による長距離輸送を可能にする具体的手段を提供する。磁性誘電体層と、前記磁性誘電体層上に設けられたPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素等のスピン軌道相互作用の大きな元素からなる少なくとも一つの金属電極とを備え、前記磁性誘電体層と前記金属電極との界面でスピン波スピン流−純スピン流の交換を行う。

目的

したがって、本発明は、スピン波スピン流による長距離輸送を可能にする具体的手段を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
2件

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請求項1

磁性誘電体層と、前記磁性誘電体層上に設けられたPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素のいずれかからなる少なくとも一つの金属電極とを備え、前記磁性誘電体層と前記金属電極との界面でスピン波スピン流純スピン流交換を行うスピントロニクスデバイス

請求項2

前記金属電極が少なくとも2個設けられ、1つの金属電極が前記磁性誘電体層へスピン波スピン流を注入するスピン流注入電極であり、他の少なくとも1つの金属電極が前記磁性誘電体層からのスピン波スピン流を電流として取り出す出力電極である請求項1記載のスピントロニクスデバイス。

請求項3

前記磁性誘電体層が、強磁性誘電体或いは反強磁性誘電体のいずれかからなる請求項1または2に記載のスピントロニクスデバイス。

請求項4

前記磁性誘電体層が強磁性誘電体からなるとともに、前記磁性誘電体層が該磁性誘電体層の磁化方向を固定する反強磁性層上に設けられたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピントロニクスデバイス。

請求項5

前記強磁性誘電体が、Y3 Fe5-x Gax O12(但し、x<5)からなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスピントロニクスデバイス。

請求項6

磁性誘電体層上にPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素のいずれかからなる少なくとも一対の金属電極を設け、前記一対の金属電極の一方に信号電流を流すことによって前記磁性誘電体層中に信号電流に対応したスピン波スピン流を注入し、前記一対の金属電極の他方において、前記磁性誘電体層中を輸送されたスピン波スピン流によって純スピン流を生起し、前記純スピン流と直交する方向に信号電流を取り出す情報伝送方法

技術分野

0001

本発明は、スピントロニクスデバイス及び情報伝達方法に関するものであり、特に、スピン流をmmオーダー以上の距離を輸送するためにスピン流をスピン波スピン流として伝達する磁性誘電体層を備えたスピントロニクスデバイスに関するものである。

背景技術

0002

現在の半導体装置等のエクトロニクス分野においては、電子の有する電荷の自由度を利用しているが、電子は電荷以外にスピンという自由度を有している。近年、このスピンの自由度を利用したスピントロニクスが次世代の情報技術の担い手として注目を集めている。

0003

このスピントロニクスでは電子の電荷とスピンの自由度を同時に利用することによって、従来にない機能や特性を得ることを目指している。

0004

この様なスピントロニクスの具体的応用としてGMR素子或いはTMR素子に直接電流を流して電流の担い手となる電子のスピンによりフリー層磁化方向を制御するスピンRAMが提案されている(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)。

0005

また、スピントロニクスの別の形態としては、量子コンピュータが挙げられ、この量子コンピュータにおいては、原子イオン、或いは、分子の有するスピンを利用して量子ビット(Qubit)とするものである(例えば、特許文献3参照)。

0006

このように、磁気記録においてスピンのダイナミクスを利用した量子計算量子情報蓄積が可能であることが明らかにされるとともに、その読み出しや制御にスピン流を用いることが有効であることが知られている。

0007

現在の情報処理装置における情報の伝達は電子流によって行われているが、電子流はジュール熱を伴う。このジュール熱の発生は情報処理単位高集積度化に伴い消費電力の増加として問題となるため、電子流に代えてスピン流による情報の伝達を検討されている。これは、固体中における伝導電子の電子流が時間的に非可逆過程であるのに対して、スピン流は可逆過程であり、エネルギー散逸が殆どないために消費電力の増大に繋がらないことを利用するものである。

0008

このようなスピントロニクスにおけるスピンの作用による現象としては、スピンホール効果(spin−Hall effect)が知られており、試料中に電流を流すと、電流方向に垂直な向きに電荷の流を伴わない純スピン流が発生し、スピン流方向の試料端スピン偏極が生ずる(例えば、非特許文献1参照)。

0009

また、本発明者等は、逆に、試料中に純スピン流を注入すると、純スピン流の方向と垂直方向に電流が流れることを見いだしている。この逆スピンホール効果を利用することによって、試料端に電位差が発生するので、この電位差を検出することによって、純スピン流の流れの有無の検出が可能になる(例えば、非特許文献2参照)。
特開2002−305337号公報
特開2007−059879号公報
特開2004−102330号公報
Science,Vol.301,p.1348,2003
Applied Physics Letters Vol.88,p.182509,2006

発明が解決しようとする課題

0010

しかし、導電体を用いたスピントロニクスデバイスにおいてはスピン流は伝導電子によって輸送されるが、スピン流の輸送に伴ってスピン或いは磁気モーメント歳差運動減衰を意味するスピン緩和が起こる。このスピン緩和時間は個々の部材に固有のスピン緩和時間で規定されてしまうため、純スピン流の輸送は数十〜数百nmの距離が限界であるという問題がある。

0011

そのため、エネルギーの散逸が殆どないために消費電力の増大に繋がらない純スピン流を情報伝達手段や電流輸送手段として用いようとしても、その輸送距離の短さが問題となる。

0012

一方、スピン流を低損失且つ長距離輸送するために、スピン波スピン流を利用することが可能であることは予言されている(例えば、応用物理, 第77巻, 第3号, p.255,2008参照)。このスピン波スピン流とは、図14に模式的に示すように、スピンが平衡位置周りで歳差運動し、その位相の変化が波としてスピン系を伝わっていくものである。

0013

このスピン波スピン流による輸送は、エネルギーの散逸が少ないため、長距離伝達が可能になる。しかし、スピン波スピン流の利用可能性は予言されているが、これをどの様に実現していくのかについては暗中模索の状況にある。

0014

したがって、本発明は、スピン波スピン流による長距離輸送を可能にする具体的手段を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

ここで、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
上記課題を解決するために、本発明は、スピントロニクスデバイスであって、磁性誘電体層と、前記磁性誘電体層上に設けられたPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素等のスピン軌道相互作用の大きな元素からなる少なくとも一つの金属電極とを備え、前記磁性誘電体層と前記金属電極との界面でスピン波スピン流−純スピン流の交換を行う。

0016

本発明者等は鋭意研究の結果、誘電体として磁性誘電体を用いるとともに、スピン波スピン流の注入手段或いは取り出し手段として、Pt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素等のスピン軌道相互作用の大きな元素からなる金属電極を用いることによって、磁性誘電体層と金属電極との界面でスピン波スピン流−純スピン電流の交換を行うことが可能であることを発見したものである。この場合、スピン波スピン流の注入に際してはスピンホール効果を用いることになり、スピン波スピン流の取り出しに際しては逆スピンホール効果を用いることになる。

0017

したがって、磁性誘電体とPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素のいずれかからなる金属電極との界面を利用することにより、低損失なスピン流輸送や、磁性誘電体を介した電流の輸送が可能になる。

0018

この場合の金属電極を少なくとも2個設け、1つの金属電極を磁性誘電体層へスピン波スピン流を注入するスピン流注入電極とし、他の少なくとも1つの金属電極を磁性誘電体層からのスピン波スピン流を電流として取り出す出力電極とすれば、情報伝達や電流輸送が可能になる。

0019

また、磁性誘電体層は、強磁性誘電体或いは反強磁性誘電体のいずれでも良く、強磁性誘電体を用いる場合には、磁性誘電体層の磁化方向を固定するために反強磁性層を設けることが望ましい。なお、反強磁性誘電体は、典型的には酸化ニッケルやFeOが挙げられるが、磁性誘電体の大半は反強磁性誘電体である。

0020

また、強磁性誘電体としては、FeやCoを含むものであれば何でも良いが、実用的には、入手が容易で且つエネルギーの散逸の小さいYIGイットリウム鉄ガーネット)やイットリウムガリウムガーネット、即ち、一般式表記するとY3 Fe5-x Gax O12(但し、x<5)を用いることが望ましい。これは、Y3 Fe5-x Gax O12はバンドギャップが大きいので伝導電子が非常に少なく、したがって、伝導電子によるエネルギーの散逸が小さいためである。

0021

また、本発明は、情報伝達方法であって、磁性誘電体層上にPt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素のいずれかからなる少なくとも一対の金属電極を設け、前記一対の金属電極の一方に信号電流を流すことによって前記磁性誘電体層中に信号電流に対応したスピン波スピン流を注入し、前記一対の金属電極の他方において、前記磁性誘電体層中を輸送されたスピン波スピン流によって純スピン流を生起し、前記純スピン流と直交する方向に信号電流を取り出すものである。

発明の効果

0022

提示されたスピントロニクスデバイスによれば、低損失なスピン流輸送や、磁性誘電体を介した電流の輸送が可能になる。

発明を実施するための最良の形態

0023

ここで、図1乃至図11を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、スピン流をスピン波スピン流として磁性誘電体中を非常に低損失で輸送し、Pt、Au、Pd、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素等のスピン軌道相互作用の大きな元素からなる金属電極との界面において、スピン波スピン流−純スピン流の交換を行うものである。

0024

このスピン波スピン流−純スピン流交換においては、金属電極中で電流により生起されたスピン流と磁性誘電体中におけるスピンとが交換されて磁性誘電体を伝搬するスピン波スピン流となる。一方、磁性誘電体中におけるスピン波スピン流が金属電極中のスピンと交換し金属電極中にスピン流が生起され、このスピン流により電流が生ずる。

0025

また、磁性誘電体層は、強磁性誘電体或いは反強磁性誘電体のいずれでも良く、強磁性誘電体を用いる場合には、強磁性誘電体としては、FeやCoを含むものであれば何でも良いが、実用的には、入手が容易で且つエネルギーの散逸の小さいYIG(イットリウム鉄ガーネット)やイットリウムガリウム鉄ガーネット、即ち、一般式で表記するとY3 Fe5-x Gax O12(但し、x<5)を用いる。

0026

図1は、YIG(Y3 Fe5 O12)の結晶構造図であり、結晶構造としては立方晶であり、磁気構造としてはフェリ磁性である。また、YIGにおける磁気イオンはFe3+のみであり、単位格子当たりFe↑(アップスピン)は24個、Fe↓(ダウンスピン)は16個存在する。したがって、YIGは単位格子値Fe8個分の磁気モーメントを持つことになる。なお、他のFeイオン反強磁性的に結合している。

0027

なお、Y3 Fe5-x Gax O12の場合には、Y3 Fe5 O12におけるFe原子の占めるサイトをGa原子でランダム置換した構造となり、Ga組成比xに応じて磁気モーメントを持つFe原子の数は減少する。

0028

また、反強磁性誘電体を用いる場合には、典型的には酸化ニッケルやFeOが挙げられるが、磁性誘電体の大半は反強磁性誘電体である。また、磁性誘電体層を強磁性誘電体で構成する場合には、磁性誘電体層の磁化方向を固定するために反強磁性層を設けることが望ましい。

0029

また、磁性誘電体層の成膜方法としては、スパッタ法MOD法、或いは、ゾルゲル法のいずれを用いても良い。また、磁性誘電体層の結晶性としては単結晶でも良いし或いは多結晶でも良い。

0030

ここで、まず、磁性誘電体から金属電極へのスピン波スピン流−純スピン流交換を説明する。図2は、本発明の実施の形態に用いる試料の製造工程の説明図であり、ここでは、MOD法により磁性誘電体としてY3 Fe4 GaO12を成膜した試料として説明する。

0031

まず、図2(a)に示すように、{100}面を主面とするGGG(Gd3 Ga5 O12)単結晶基板11上にY3 Fe4 GaO12組成MOD溶液12をスピンコート法で塗布する。この場合のスピンコート条件としては、まず、500rpmで5秒間回転させたのち、3000〜4000rpmで30秒間回転させてMOD溶液12を焼成後の膜厚が100nmになるように均一に塗布する。なお、MOD溶液12としては(株)高純度化学研究所製のMOD溶液を用いた。

0032

次いで、図2(b)に示すように、例えば、150℃に加熱したホットプレート上で5分間乾燥させて、MOD溶液12に含まれる余分な有機溶媒蒸発させる。
次いで、図2(c)に示すように、電気炉中において、例えば、550℃で5分間加熱する仮焼成によって酸化物層13とする。

0033

次いで、図2(d)に示すように、電気炉中において、750℃で1〜2時間加熱する本焼成において酸化物層13の結晶化を進めてYIG層14とする。なお、この場合のYIG層14の組成はY3 Fe4 GaO12であり、多結晶膜となる。

0034

次いで、図2(e)に示すように、スパッタ法を用いてYIG層14上に、厚さが、例えば、10nmのPt膜15を設ける。最後に、この試料を1.0mm×3.0mmのサイズに切り出すことによって試料が完成する。

0035

次に、成膜したYIG膜14の特性を検証するが、ここでは、図2(d)の状態においてファラデー効果強磁性共鳴FMR)特性を調べた。その結果、図3(a)に示すように、強磁性体としてはファラデー効果が確認されるとともに、図3(b)に示すように強磁性共鳴特性も確認された。したがって、上記の製造工程で形成したYIG層14は良好な強磁性体として特性を示しており、良好な結晶性を有することが分かる。

0036

次に、この試料を用いたYIG/Pt接合におけるスピン波スピン流−純スピン流の交換が行われていることを検証する。この際、YIGのスピン波スピン流が、Pt内に純スピン流に交換されたことを逆スピンホール効果によって検証する。図4(a)は試料の概念的構成図であり、試料の面内に磁界Hを印加した状態でPt膜15側からマイクロ波照射し、磁界Hと直交する方向の試料端における電位差Vを電圧計16によって検出する。

0037

図4(b)は、強磁性共鳴特性図であり、上述のように試料に用いたYIG層14が良好な結晶性を有していることを示している。また、図4(c)は出力電圧Vの印加磁場依存性であり、共鳴磁界強度においてμVオーダーの出力電圧が得られた。

0038

図5は、比較のためのYIG膜のみの参考試料における逆スピンホール効果の検証結果の説明図であり、ここでも、図5(a)に示すように、試料の面内に磁界Hを印加した状態でPt膜15側からマイクロ波を照射し、磁界Hと直交する方向の試料端における電位差Vを電圧計16によって検出する。

0039

図5(b)は、強磁性共鳴特性図であり、ここでも試料に用いたYIG層14が良好な結晶性を有していることを示している。また、図5(c)は出力電圧Vの印加磁場H依存性であり、有為な出力電圧が検出されなかった。なお、ここでは、出力電圧が小さいことを予想してロックイン法で測定しており、したがって、縦軸は出力電圧Vを印加磁場Hで微分した値となる。

0040

YIG/Pt接合で得られた信号が、Ptに純スピン流が生起され、逆スピンホール効果によって生じた起電力であることをさらに詳しく検証する。そのために、逆スピンホール効果の面内・面外角度依存性および物質依存性について検証した。図6は、逆スピンホール効果の面内角度依存性の説明図であり、図6(a)は試料系の構成説明図であり、印加磁場Hを電圧測定方向の法線に対してθ傾斜させて測定した。図6(b)は、出力電圧Vの面内角度θ依存性の説明図であり、電流方向とスピン流方向とスピンの向きとの関係から予測されるように、cos曲線を示している。また、図6(c)も、出力電圧Vの面内角度依存性の説明図であり、磁場Hの面内角度を変化させることで出力電圧が変化していることを示している。なお、ここでは、YIGの強磁性共鳴の磁界として、HRを原点にした磁場依存性として示しており、上記の図4(c)と同じ特性を示すものである。

0041

図7は、逆スピンホール効果の面外角度依存性の説明図であり、図7(a)は試料系の構成説明図であり、印加磁場Hを主平面に対してφ傾斜させて測定した。図7(b)は、出力電圧Vの面外角度φ依存性の説明図であり、ここでも、電流方向とスピン流方向とスピンの向きとの関係から予測されるように、cos曲線を示している。また、図7(c)も、出力電圧Vの面内角度依存性の説明図であり、磁場Hの面外角度を変化させることで出力電圧が変化していることを示している。

0042

以上の図4乃至図7による検証結果から、YIG/Pt界面においてスピン波スピン流−純スピン流の交換が行われていることが本発明者により初めて確認された。

0043

図8は、逆スピンホール効果の物質依存性の説明図であり、図8(a)は試料系の構成説明図であり、ここでは、出力電極17として、厚さが、例えば、10nmのPt膜、10nmのCu膜、及び、厚さが、例えば、30nmのSiO2 膜を介して10nmのPt膜を設けたSiO2 /Pt積層膜の3種類の試料を用意した。

0044

図8(b)は出力電圧V−マイクロ波電力相関特性の物質依存性の説明図であり、出力電極17として上述のようにPt膜を用いた場合には出力電圧がマイクロ波電力にほぼ比例して得られる。一方、Cu膜及びSiO2 /Pt積層膜の場合には殆ど出力が検出されなかった。

0045

これは、Ptはスピン軌道相互作用が大きな元素であるため、YIGからPtへ注入された純スピン流が大きな逆スピンホール効果を示すためである。一方、Cuの場合にはスピン軌道相互作用が非常に小さいため、YIG中のスピン波スピン流がCu中で純スピン流に交換しても、逆スピンホール効果が小さいため電流がほとんど生起されないためである。また、SiO2 /Pt積層膜の場合には、YIGとSiO2 の界面でスピン波スピン流の交換が行われないため、Ptに純スピン流は流れず逆スピンホール効果も生じない系であると考えられる。この系で、起電力が生じなかったことから、前記検証によって生じた起電力がPt内に純スピン流が生じ、逆スピンホール効果により生じた起電力であり、別の電気的な信号ではないことを実証するものである。

0046

図9は、図8の結果に基づいた出力電圧Vの物質ごとのマイクロ波電力依存性の説明図であり、図8の場合と同様に出力電極17としてPt膜を用いた場合にのみ出力電圧が検出された。このことから、出力電極としては、逆スピンホール効果が大きくなると考えられるスピン軌道相互作用の大きな元素を用いる必要があることが分かる。このようなスピン軌道相互作用の大きな元素としては、Pt以外には、PdやAu、Ag、Bi、またはそれらの合金、或いは、f軌道を有する元素を用いれば良い。

0047

次に、スピンホール効果を用いた金属から磁性誘電体へのスピン輸送を検証する。図10は、スピンホール効果を用いた金属から磁性誘電体へのスピン輸送を検証するための試料系と測定結果の説明図である。図10(a)と図10(b)は互いにバイアス磁場Hの向きを逆にしている。

0048

この場合の試料系は、図に示すように、厚さが1μmで、長さが8.0mmで幅が3.0mmのYIG層21上に、厚さが15nmで、幅が0.60mmの一対のPt電極22,23を1.0mmの間隔を隔てて設けたものである。なお、図においては説明の都合上、注入電極となる左側のPt電極22を強調して図示している。

0049

この試料系においては、実際にスピンホール効果が生じている場合には、左側のPt電極22にYIG膜21の幅方向(図における縦方向)に沿って電流Iを流すと、スピンホール効果によって、Pt電極22において電流方向と垂直な方向(図における横方向)に純スピン流が発生する。発生した純スピン流はPt/YIG界面で純スピン流からスピン波スピン流へ交換することによりYIG層21中にスピン波スピン流を生じさせる。

0050

このスピン波スピン流はYIG層21中を輸送されて、右側のPt電極23との界面において、Pt電極23中に純スピン流を発生させ、逆スピンホール効果により、純スピン流と直交する方向(図における縦方向)に電流が流れて、Pt電極23の両端に電位差Vが発生する。

0051

測定結果としては、Pt電極22に流した電流Iの値にほぼ比例した出力電圧Vが得られており、Pt電極22からYIG層21へスピンホール効果により生成されたスピン流がスピン波スピン流に変換されてスピン輸送が生じたことが確認された。また、得られたV−I特性からは、固定磁場の方向の正負に依存しないことが示された。

0052

図11は、出力電圧Vの電流極性依存性の説明図であり、印加磁場の方向が+Hの場合にも、−Hの場合にも、出力電圧Vは電流方向によって反転することが確認された。このことは、Pt電極23で検出された出力電圧Vが、熱、即ち、YIG層21の長さ方向の両端の温度差に起因して発生したスピン波スピン流によるものではないことを示している。したがって、この結果から、図10に示した測定結果は、Pt電極22からYIG層21へスピンホール効果によりスピン輸送が生じたことを保証することになる。

0053

このように、本発明者は、誘電体としてYIG等の磁性誘電体を用いるとともに、接合を形成する金属としてスピン軌道相互作用の大きなPtを用いることによって、金属/磁性誘電体界面においてスピンの輸送が行われることを初めて発見したものである。この発見を応用することによって、伝導電子を媒介とした純スピン流を用いた場合に比べてエネルギー損失の非常に少ないスピン波スピン流を用いた長距離の情報伝送或いはエネルギー伝送が可能になる。

0054

以上を前提として、次に、図12を参照して、本発明の実施例1のスピントロニクスデバイスを説明する。図12(a)は、本発明の実施例1のスピントロニクスデバイスの概念的構成図であり、GGG単結晶基板31上にスパッタ法を用いて厚さが、例えば、50nmのY3 Fe4 GaO12組成のYIG層32を形成し、その上に厚さが、例えば、10nmのPt膜をマスクスパッタ法堆積することによって、幅が1.0mmで、間隔が5.0mmのPt電極33,34を形成する。

0055

図12(b)は、スピントロニクスデバイスを用いた情報伝達方法の説明図であり、Pt電極33にパルス信号を印加すると、Pt電極33にパルス電流が流れ、スピンホール効果により、このパルス電流の方向に直交する方向にパルス純スピン流が生ずる。Pt電極33/YIG層32界面においてこのパルス純スピン流によりYIG層32中にパルス純スピン流の変化に対応して位相が変化したスピン波スピン流が発生する。

0056

このスピン波スピン流はYIG膜32中を輸送されてPt電極34に達し、YIG層32/Pt電極34界面におけるによってPt電極34内に、スピン波スピン流の位相変化に応じたパルス純スピン流が生ずる。このパルス純スピン流に起因して、逆スピンホール効果によりPt電極34内においてパルス純スピン流に直交する方向にパルス電流が発生し、Pt電極34の両端においてパルス電圧として検出される。

0057

この場合、YIG膜32中におけるスピン輸送はパルス波スピン流により、伝導電子が関与していないので、スピンの摩擦によるエネルギー散逸がなく、数mm以上、例えば、メートルオーダーの距離の情報伝達が可能になる。

0058

特に、スピン波スピン流によるスピン輸送は、直流低周波数帯ではスピンが応答しづらく、GHzオーダーの高周波帯において高効率で行われるので、GHzオーダーの高周波帯における情報伝達として有効となる。

0059

次に、図13を参照して、本発明の実施例2のスピントロニクスデバイスを説明する。図13は、本発明の実施例2のスピントロニクスデバイスの概念的構成図であり、GGG単結晶基板31上にスパッタ法を用いて厚さが、例えば、100nmのPdPtMn反強磁性層35を堆積させる。このPdPtMn反強磁性層35の堆積に際して面内の試料の幅方向に磁場を印加しておく。

0060

次いで、PdPtMn反強磁性層35上に、再び、スパッタ法を用いて厚さが、例えば、50nmのY3 Fe4 GaO12組成のYIG層32を形成し、その上に厚さが、例えば、10nmのPt膜をマスクスパッタ法で堆積することによって、幅が1.0mmで、間隔が5.0mmのPt電極33,34を形成する。

0061

この場合、YIG層32を構成する多結晶の各グレインの磁化方向はPdPtMn反強磁性層35により固定されて方向が揃うので、外部磁界により磁化方向を揃えることなくスピン輸送を行うことが可能になる。なお、この実施例2における情報伝達方法及びその原理は上記の実施例1と全く同様である。

0062

以上、本発明の実施の形態及び各実施例を説明したが、本発明は実施の形態及び各各実施例に記載された構成・条件に限られるものではなく、各種の変更が可能である。例えば、上記の各実施例においては、スピン輸送によって情報伝達を行っているが、スピン輸送によって電流輸送、即ち、エネルギー輸送を行っても良い。

0063

上述のように、スピン流は電流と直交する方向に流れるので、磁性誘電体の幅を大きくすることによって、スピン流量を大きくすることができ、大型化によるオームの法則に基づく抵抗増大による損失の増大を伴うことなく電流を輸送することができる。

0064

また、上記の各実施例においては、スピントロニクスデバイスそのものとして説明しているが、このようなスピントロニクスデバイスを半導体集積回路内に組み込んで三次元立体回路網を構成しても良い。この場合、スピン輸送媒体となる磁性誘電体として反強磁性誘電体を用いることによって、半導体デバイスの動作に対して磁性誘電体の磁性が影響を及ぼすことがない。

0065

本発明の活用例としては、情報伝達手段としてのスピントロニクスデバイスが典型的なものであるが、電流輸送或いはエネルギー輸送手段としても適用されるものである。

図面の簡単な説明

0066

YIG(Y3 Fe5 O12)の結晶構造図である。
本発明の実施の形態に用いる試料の製造工程の説明図である。
YIG膜の特性の説明図である。
YIG/Pt接合における逆スピンホール効果の検証結果の説明図である。
YIG膜のみの参考試料における逆スピンホール効果の検証結果の説明図である。
逆スピンホール効果の面内角度依存性の説明図である。
逆スピンホール効果の面外角度依存性の説明図である。
逆スピンホール効果の物質依存性の説明図である。
図8の結果に基づいた出力電圧Vの物質ごとのマイクロ波電力依存性の説明図である。
スピンホール効果を用いた金属から磁性誘電体へのスピン輸送の検証結果の説明図である。
出力電圧Vの電流極性依存性の説明図である。
本発明の実施例1のスピントロニクスデバイスの説明図である。
本発明の実施例2のスピントロニクスデバイスの概念的構成図である。
スピン波スピン流の模式的説明図である。

符号の説明

0067

11 GGG単結晶基板
12MOD溶液
13酸化物層
14YIG層
15Pt膜
16電圧計
17出力電極
21 YIG層
22,23Pt電極
31 GGG単結晶基板
32 YIG層
33,34 Pt電極
35 PdPtMn反強磁性層

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