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技術 転動疲労特性に優れた機械構造用部品およびその製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 平井康正日野善道林透木村秀途
出願日 2008年3月31日 (12年8ヶ月経過) 出願番号 2008-093826
公開日 2009年10月22日 (11年2ヶ月経過) 公開番号 2009-242923
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理 熱処理 物品の熱処理
主要キーワード 試験応力 破損確率 介在物サイズ 円盤状試験片 残留炭化物 加熱保持後 破壊起点 成分コスト
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2009年10月22日)のものです。
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図面 (2)

課題

十分な転動疲労特性をする機械構造用部品を提供するための方途について提案する。

解決手段

C:0.35〜0.75%、Si:0.15〜1.1%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.06%以下、Al:0.005〜0.25%、Cr:0.2%以下およびMo:0.05〜0.6%を含有し、残部が不可避的不純物からなる鋼組成を有し、焼入れ後硬化層平均旧オーステナイト粒径を12μm以下でかつ予測最大介在物径を11μm以下とする。

概要

背景

従来、自動車ドライブシャフト等速ジョイントおよびハブなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼熱間鍛造、あるいは切削および冷間鍛造等により所定の形状に加工した後、高周波焼入れ−炉加熱焼戻しを行い、機械構造用部品としての重要な特性である、すべり転動疲労特性を確保しているのが一般的である。

ところで、近年の省資源化への対応として、自動車部品長寿命化による部品交換頻度の低減などにも要求があり、この点から自動車用部品転動疲労寿命を向上することが要望されている。

ここに、転動疲労強度を向上させるためには、Siなどの成分添加が考えられるが、一定量以上を添加すると加工性劣化させるなど問題が発生するため、限界がある。

また、特許文献1には、高周波焼入れによる硬化層における旧オーステナイト粒微細化が、曲げ疲労の向上に有効であることが記載されている。
特開2005−126817号公報

概要

十分な転動疲労特性をする機械構造用部品を提供するための方途について提案する。C:0.35〜0.75%、Si:0.15〜1.1%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.06%以下、Al:0.005〜0.25%、Cr:0.2%以下およびMo:0.05〜0.6%を含有し、残部が不可避的不純物からなる鋼組成を有し、焼入れ後の硬化層の平均旧オーステナイト粒径を12μm以下でかつ予測最大介在物径を11μm以下とする。

目的

そこで、本発明は、十分な転動疲労特性を有する機械構造用部品を提供するための方途について提案することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

質量%でC:0.35〜0.75%、Si:0.15〜1.1%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.06%以下、Al:0.005〜0.25%、Cr:0.2%以下およびMo:0.05〜0.6%を含有し、残部が不可避的不純物からなる鋼組成を有し、181.4mm3に相当する予測最大介在物径が11μm以下、かつ焼入れ後硬化層平均旧オーステナイト粒径が12μm以下であることを特徴とする転動疲労特性に優れた機械構造用部品

請求項2

請求項1において、前記鋼組成がさらに質量%でCu:1.0%以下、Ni:0.05〜3.5%、Co:0.01〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.01〜0.5% 、Ti:0.1%以下およびB:0.006%以下から選ばれる1種または2種以上を含有する転動疲労特性に優れた機械構造用部品。

請求項3

請求項1または2に記載の鋼組成を有し、かつ181.4mm3に相当する予測最大介在物径が11μm以下の鋼素材熱間加工を施し、加熱温度を800℃以上1000℃以下として高周波焼入れを行うことを特徴とする転動疲労特性に優れた機械構造用部品の製造方法。

請求項4

請求項3において、前記高周波焼入れを2回以上繰り返す転動疲労特性に優れた機械構造用部品の製造方法。

請求項5

請求項3または4において、前記高周波焼入れの加熱時間を5秒以下とする転動疲労特性に優れた機械構造用部品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、高周波焼入れによる硬化層を有する、転動疲労特性に優れた機械構造用部品、例えば自動車用部品などに代表される機械構造用部品およびその製造方法に関するものである。

背景技術

0002

従来、自動車ドライブシャフト等速ジョイントおよびハブなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼熱間鍛造、あるいは切削および冷間鍛造等により所定の形状に加工した後、高周波焼入れ−炉加熱焼戻しを行い、機械構造用部品としての重要な特性である、すべり転動疲労特性を確保しているのが一般的である。

0003

ところで、近年の省資源化への対応として、自動車部品長寿命化による部品交換頻度の低減などにも要求があり、この点から自動車用部品の転動疲労寿命を向上することが要望されている。

0004

ここに、転動疲労強度を向上させるためには、Siなどの成分添加が考えられるが、一定量以上を添加すると加工性劣化させるなど問題が発生するため、限界がある。

0005

また、特許文献1には、高周波焼入れによる硬化層における旧オーステナイト粒微細化が、曲げ疲労の向上に有効であることが記載されている。
特開2005−126817号公報

発明が解決しようとする課題

0006

自動車部品においては、曲げ疲労の向上も重要であるが、特に、ドライブシャフトや等速ジョイントおよびハブなどの用途においては転動疲労特性に優れることが、必要である。

0007

そこで、本発明は、十分な転動疲労特性を有する機械構造用部品を提供するための方途について提案することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

さて、発明者らは、さらなる転動疲労強度の向上の観点から鋭意検討を行った。その結果、鋼の化学組成鋼中介在物のサイズ、焼入れ条件および焼入れ後硬化層粒径を最適化することにより、優れた転動疲労特性が得られるという知見を得た。
すなわち、化学成分を所定の組成に規定した鋼において、鋼中の介在物サイズを規定することにより、転動疲労寿命が大幅に向上することが判明した。具体的には、新規な方法で算出した鋼材における予測最大介在物径を11μm以下とする。

0009

また、鋼材に焼入れ処理を施し、焼入れ後の硬化層の粒径を12μm以下とすることによって、転動疲労強度が大幅に向上することも判明した。具体的には、特にSiおよびMoを所定の範囲で添加すると、焼入れのための加熱時に、オーステナイト核生成数が増加することに加え、オーステナイト粒成長が抑制されることにより焼入れ硬化層の粒径が微細化する効果が大きくなる。

0010

さらに、上記成分組成の鋼材を使用し、高周波焼入れ条件(加熱温度、時間および焼入れ回数)を適正範囲に制御することによって、硬化層粒径が微細化され、転動疲労寿命を向上できることが判明した。具体的には、加熱温度:800℃以上1000℃以下および加熱時間:5秒以下とすることによって、硬化層粒径12μm以下の微細粒が得られる。そして、旧オーステナイト粒径が12μm以下に微細化することにより、転動疲労寿命は向上する。また、上記条件での焼入れ処理を2回以上繰り返すことによって、1回の焼入れに比べてさらに微細な硬化層粒が得られる。

0011

本発明は以上の知見に基いて成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
(1)質量%で
C:0.35〜0.75%、
Si:0.15〜1.1%、
Mn:0.2〜2.0%、
P:0.020%以下、
S:0.06%以下、
Al:0.005〜0.25%、
Cr:0.2%以下および
Mo:0.05〜0.6%
を含有し、残部が不可避的不純物からなる鋼組成を有し、181.4mm3に相当する予測最大介在物径が11μm以下、かつ焼入れ後の硬化層の平均旧オーステナイト粒径が12μm以下であることを特徴とする転動疲労特性に優れた機械構造用部品。

0012

ここで、181.4mm3に相当する予測最大介在物径の算出方法は、島津製の超音波疲労試験機(USF-2000)を用いて、同一鋼材より長手方向に採取した13本の試験片(1本当りの危険体積14.14mm3で計算)に対して超音波疲労試験を実施し、破壊起点に観察される13個の介在物から181.4mm3に相当する最大介在物径極値統計処理により予測する。なお、破面上の介在物については、酸化物系、窒化物系の区別無く観察された介在物で整理している。

0013

(2)前記(1)において、前記鋼組成がさらに質量%で
Cu:1.0%以下、
Ni:0.05〜3.5%、
Co:0.01〜1.0%、
Nb:0.005〜0.1%、
V:0.01〜0.5%、
Ti:0.1%以下および
B:0.006%以下
から選ばれる1種または2種以上を含有する転動疲労特性に優れた機械構造用部品。

0014

(3)前記(1)または(2)に記載の鋼組成を有し、かつ181.4mm3に相当する予測最大介在物径が11μm以下の鋼素材熱間加工を施し、加熱温度を800℃以上1000℃以下として高周波焼入れを行うことを特徴とする転動疲労特性に優れた機械構造用部品の製造方法。

0015

(4)前記(3)において、前記高周波焼入れを2回以上繰り返す転動疲労特性に優れた機械構造用部品の製造方法。

0016

(5)前記(3)または(4)において、前記高周波焼入れの加熱時間を5秒以下とする転動疲労特性に優れた機械構造用部品の製造方法。

発明の効果

0017

本発明によれば、高周波焼入れ後には優れた転動疲労特性を有する機械構造用部品を安定して得ることができ、その結果、とりわけ自動車部品の軽量化の要求に対し偉効を奏する。

発明を実施するための最良の形態

0018

以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼の成分組成を上記範囲に限定した理由について説明する。なお、以下に示す成分に関する「%」は特に断らない限りは「質量%」を意味する。
C:0.35〜0.75%、
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて、転動疲労強度を向上させる上で有用である。C含有量が0.35%に満たないと、必要とされる転動強度を確保するためには焼入れ硬化深さを飛躍的に高めねばならず、その際、焼割れの発生が顕著となる。さらに、ベイナイト組織も生成し難くなるために、0.35%以上で含有させる。一方、0.75%を超えて含有させると、粒界強度が低下し転動疲労強度が低下する。さらに、切削性冷間鍛造性および耐焼き割れ性も低下する。このため、0.35〜0.75%の範囲とする。好ましくは、0.4%以上0.68%以下である。

0019

Si:0.15〜1.1%、
Siは、焼入れ加熱時にオーステナイト核生成数を増加させるとともに、オーステナイト粒成長を抑制し焼入れ硬化層の粒径を微細化する作用を有する。また、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。さらに、ベイナイト組織の生成にも有用な元素であり、これらのことにより転動疲労強度を向上させる。かように、Siは非常に重要な元素であり、0.15%以上は必要であるが、1.1%を超えて添加すると、フェライトの固溶硬化により硬さが上昇し切削性および冷間鍛造性の低下を招く。従って、Siの含有量は0.15〜1.1%とする。好ましくは、0.4%以上1%以下である。

0020

Mn:0.2〜2.0%
Mnは、焼入れ性を向上させて焼入れ時の硬化深さを確保する上で必須の成分であり、積極的に添加するが、0.2%未満の添加ではその効果に乏しく、一方2.0%を超えて添加すると、焼入れ後の残留オーステナイトを大幅に増加させることによりかえって表面硬度を低下させ、すべり転動疲労強度を低下させるため、2.0%以下とする。好ましくは、0.3%以上1.2%以下である。

0021

P:0.020%以下
Pは、オーステナイトの粒界偏析し、粒界強度を低下させることによりすべり転動疲労強度を低下させ、また、焼割れを助長する。したがって、その含有量は極力低下させるのが望ましいが、0.020%までは許容される。

0022

S:0.06%以下
Sは、鋼中でMnSを形成して切削性を向上させる成分であり、好ましくは0.01%以上で含有させるが、0.06%を超えると、粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、0.06%以下とする。好ましくは、0.04%以下とする。

0023

Al:0.005〜0.25%
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時のオーステナイト粒成長を抑制することにより焼入れ硬化層の粒径を微細化するのに有効な元素である。0.005%未満の添加ではその効果が小さく、一方0.25%を超えて添加してもその効果が飽和し、成分コストの上昇を招くため、0.005%以上0.25%以下とする。好ましくは、0.02%以上0.06%以下とする。

0024

Cr:0.2%以下
Crは、炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を促進し、すべり転動疲労特性を向上させるが、添加量が多いとコストの上昇をまねくため、0.2%を上限とする。好ましくは、0.10%以下である。

0025

Mo:0.05〜0.6%
Moは、焼入れ前組織においてベイナイト組織の生成を促進することにより焼入れ加熱時のオーステナイト粒径を微細化し、焼入れ硬化層を細粒化する作用がある。さらに、焼入れ加熱時のオーステナイト粒成長を抑制することにより、焼入れ硬化層の粒径を微細化する。また、焼入れ性の向上に有用な元素であり、焼入れ性を調整するためにも用いる。さらに、Moは炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。このように、Moは、非常に重要な元素であるが、0.05%未満ではその効果が小さいため、下限を0.05%とする。しかし、Moは、0.6%を超えて添加すると圧延材の硬さが著しく増加して加工性を低下させるため、上限を0.6%とする。好ましくは、0.1%以上0.6%以下とする。

0026

さらに、本発明では、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:1.0%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶して強化に寄与するため、母材(未焼入れ部)の疲労強度を向上させる。そのためには、0.2%以上で添加することが好ましい。ただし、1.0%を超えて添加すると、熱間加工性阻害するため、1.0%以下で添加することが好ましい。さらに好ましくは、0.5%以下とする。

0027

Ni:0.05〜3.5%
Niは、焼入れ性を向上させる元素であり、焼入れ性を調整する場合に用いることができる。その際、0.05%未満の添加では、その効果が小さいことから、0.05%以上で添加することが好ましい。一方、Niは極めて高価な元素であるため、3.5%を超えて添加すると、鋼材のコストが上昇するため3.5%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.1%以上1.0%以下である。また、Cuの熱間脆性を抑制するため、Cu添加時にはその1/2以上の量のNiを添加することが望ましい。

0028

Co:0.01〜1.0%
Coは、炭化物生成を抑制することにより炭化物による粒界強度の低下を抑制し、焼入れ部の曲げ疲労強度などを向上させる元素であり、0.01%以上で添加してもよい。一方、極めて高価な元素であり、1.0%を超えて添加すると、鋼材のコストが上昇するため1.0%以下の添加とすることが望ましい。さらに、好ましくは、0.02%以上0.5%以下とする。

0029

Nb:0.005〜0.1%
Nbは、焼入れ性を向上するとともに、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼戻し軟化抵抗を向上させる元素である。これらのことにより焼入れ部の曲げ疲労強度を向上させる。0.005%未満の添加ではその効果が小さく、また0.1%を超えて添加してもその効果が飽和するため、0.005〜0.1%の添加とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01%以上0.05%以下とする。

0030

V:0.01〜0.5%
Vは、鋼中でCおよびNと結合し、析出強化元素として作用する。また焼戻し軟化抵抗を向上させる元素である。これらのことにより焼入れ部の曲げ疲労強度を向上させる。0.01%未満の添加ではその効果が小さく、また0.5%を超えて添加しても、その効果が飽和するため、0.01〜0.5%の範囲で添加することが好ましい。さらに好ましくは、0.03%以上0.3%以下とする。

0031

Ti:0.1%以下
Tiは、Nと結合することにより、転動疲労寿命を劣化させることがあるため、0.1%を上限とすることが好ましい。ただし、BがBNとなりBの焼入れ性を向上する効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分発揮させるために、0.01%以上で添加してもよい。さらに好ましくは、0.07%以下とする。

0032

B:0.006%以下
Bは、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織の生成を促進する効果を有する。また、Bは微量の添加により焼入れ性を向上させ、焼入れ時の焼入れ深さを高めて、すべり転動疲労強度を向上させるために、0.0015%以上で添加してもよい。しかし、0.006%を超えて添加しても、その効果が飽和し成分コストの上昇を招くため、0.006%以下で添加することが好ましい。さらに好ましくは、0.004%以下とする。

0033

以上、成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定することに加えて、鋼材の少なくとも一部表面に施す、高周波焼入れ後の硬化層の平均旧オーステナイト粒径を12μm以下、かつ181.4mm3に相当する予測最大介在物径が11μm以下であることも重要である。

0034

ここで言う、焼入れ硬化層部の平均旧オーステナイト粒径は、表面より0.2mm深さ位置での平均旧オーステナイト粒径を指すこととする。

0035

次に、上記した平均旧オーステナイト粒径および予測最大介在物径を導くに到った実験結果について、それぞれ詳しく説明する。
C:0.41%、Si:0.50%、Mn:0.78%、Mo:0.46%、Ti:0.02%およびB:0.0021%を含み、残部Feおよび不可避不純物の組成になる供試鋼から、60mmφ×5mm厚さの円盤状試験片を作製した。この試験片は、850℃で15分の加熱保持後、高周波焼入れを行うか、あるいはさらに170℃で80分間保持する焼戻し処理を行って、いずれも試験面を鏡面に仕上げた。かくして得られた試験片は、日産アルティア製のスラスト転動疲労試験機を用いて、直径約38mmの円周上を試験体である鋼球が転がるようにし、5.8GPaのヘルツ最大接触応力がかかるようにして転動疲労試験に供した。

0036

評価は、試験片に剥離が発生するまでの応力負荷回数を10枚〜15枚の試験片に対して求め、ワイブル紙を用いて累積破損確率と応力負荷回数との関係で整理した後、累積破損確率10%(以下、B10寿命と示す)を求めた。この評価結果を、図1に示す。

0037

また、上記の供試鋼から超音波疲労試験片を採取し、予測最大介在物径の算出を行った。すなわち、181.4mm3に相当する予測最大介在物径の算出方法は、島津製の超音波疲労試験機(USF-2000)を用いて、同一鋼材より長手方向に採取した13本の試験片(1本当りの危険体積14.14mm3で計算)に対して超音波疲労試験を実施し、破壊起点に観察される13個の介在物から181.4mm3に相当する最大介在物径を極値統計処理により予測した。

0038

図1中には、平均旧オーステナイト粒径17μm(通常焼入れ材)の場合および、平均旧オーステナイト粒径11.5μmの場合について、B10寿命を示す。平均旧オーステナイト粒径17μmの場合、鋼中介在物の予測最大径とB10寿命との関係は直線的に整理でき、予測最大介在物径が微細になるに連れてB10寿命が向上することがわかる。さらに、平均旧オーステナイト粒径が微細になると、B10寿命は向上し、平均旧オーステナイト粒径が11.5μmの場合、同17μmの場合に比べて2倍程度向上する。しかも、この平均旧オーステナイト粒を微細化した鋼に特徴的な現象として、鋼中の予測最大介在物径を11μm以下にした場合、この粒径で予測されるB10寿命(図中の点線)より実際には1.5倍以上も向上するのである。
すなわち、平均旧オーステナイト粒径12μm以下にするとともに、予測最大介在物径を11μm以下にすることによって、B10寿命を格段に向上させることが可能になるのである。

0039

なお、本発明においては、焼入れ前の素材の組織は限定しない。焼入れ硬化層の粒径微細部に関しては、主となる組織がマルテンサイト組織で、それ以外の組織は炭化物、析出物、残留オーステナイトとする。これは、マルテンサイト組織以外に、ベイナイトパーライト、フェライトなどの組織が混ざった場合、十分な硬度が得られず、転動疲労寿命が劣化するからである。一方、炭化物、析出物は焼入れ部の硬度を低下させることは無く無害であること、また残留オーステナイトは20%以下であれば、転動疲労寿命に大きな影響を与えない。

0040

次に、本発明の機械構造用部品の製造方法について説明する。
本発明の機械構造用部品は、前述した成分組成を有する鋼素材を溶製し、これに、熱間圧延や熱間鍛造等の熱間加工を施し、機械構造用部品の形状に成形され、転動疲労が要求される部位に対して焼入れ焼戻し処理が施されて、さらに必要に応じて切削等の仕上加工が施されて製品となる。

0041

上述のとおり、予測最大介在物径が11μm以下であることが必要である。ここで、この予測最大介在物径を11μm以下とする方法は特に規定しないが、例えばRH脱ガス時間を通常の1.5倍以上(1時間以上)とすることで実現できる。

0042

次に、本発明においては、成形品に、加熱温度800℃以上1000℃以下で1回あるいは2回以上の高周波焼入れを行うことにより表面硬化させる。加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、硬化層組織の生成も不十分となるために、すべり転動疲労強度が低下する。加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒の成長が促進されて粗大化し、硬化層粒径も粗大となるため、転動疲労強度が低下する。
また、2回以上の繰り返し焼入れを行うことによって、1回の焼入れの場合に比べて、さらに微細な硬化層粒径が得られる。なお、加熱温度は、800℃以上950℃以下とすることが好ましい。

0043

さらに、上記の高周波焼入れは、上記加熱温度において加熱時間を5秒以下として行うことが、硬化層の微細化に有利である。加熱時間を5秒以下とした場合、5秒を超える場合に比べ、オーステナイト粒成長がさらに抑制される結果、非常に微細な硬化層粒径が得られる。より好ましくは、3秒以下とする。

0044

ちなみに、焼入れ深さに関しては、特に限定する必要はなく、用途に応じて随時焼入れ深さを変えても問題はない。

0045

以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
表1に示す化学組成の鋼を、転炉連続鋳造プロセスにより溶製し、断面が300×400mmの鋳片を得た。この鋳片を、ブレークダウン工程にて175mm丸ビレット圧延したのち、65mmφの棒鋼に圧延した。次いで、鋼中介在物の予測最大径を求めるために、この棒鋼の中心部より長手方向に超音波疲労試験片を13本採取し、850℃で15分間加熱した後、焼入れを行い、さらに170℃で80分間焼戻して、スケールを除去した後、超音波疲労試験に供した。

0046

超音波疲労試験は、20kHz で1000MPaの試験応力破壊するまで試験を行った。破壊したサンプルは起点部を電子顕微鏡(SEM)で観察し、このSEM像より介在物の長径短径を求め、介在物径=(長径×短径)1/2として、個々の介在物径を求めた。予測最大介在物径は、1本の試験片の危険体積を14.14mm3、予測体積を181.4mm3として極値統計処理により算出した。

0047

また、上記した鋼材から60mmφ×5mm厚さの円盤状試験片を作製した。この試験片は、850℃で15分の加熱保持後、高周波焼入れを行うか、あるいはさらに170℃で80分間保持する焼戻し処理を行って、いずれも試験面を鏡面に仕上げた。かくして得られた試験片は、日産アルティア製のスラスト転動疲労試験機を用いて、直径約38mmの円周上を試験体である鋼球が転がるようにし、5.8GPaのヘルツ最大接触応力がかかるようにして転動疲労試験に供した。

0048

旧オーステナイト粒径は、焼入れ後のサンプルにオーステナイト粒界エッチング液腐食し、組織を光学顕微鏡の1000倍で3枚写真撮影した後、切断法を用いて平均オーステナイト粒径を算出した。

0049

転動疲労についての評価は、試験片に剥離が発生するまでの応力負荷回数を10枚〜15枚の試験片に対して求め、ワイブル紙を用いて累積破損確率と応力負荷回数の関係で整理した後、B10寿命を求めた。その結果を、表2に示す。

0050

なお、同一成分組成、同一旧オーステナイト粒径毎に、図1に示したような、予測最大介在物径とB10寿命の関係をプロットしたグラフを作成して、旧オーステナイト粒径12μm超の領域について、回帰式一次関数)を求め、旧オーステナイト粒径が12μm以下となったデータについては、この回帰式から得られるB10寿命の比(実際のB10寿命/予測されるB10寿命)を求めた。
表2には、この値についても示す。

0051

0052

0053

図面の簡単な説明

0054

予測最大介在物径および焼入れ硬化層の平均旧オーステナイト粒径とB10寿命との関係を示す図である。

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