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技術 非ヒトES動物の新規作成方法

出願人 国立研究開発法人理化学研究所
発明者 大田浩坂出祐子山縣一夫若山照彦
出願日 2008年1月4日 (11年1ヶ月経過) 出願番号 2008-000089
公開日 2009年7月23日 (9年7ヶ月経過) 公開番号 2009-159878
状態 未査定
技術分野 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖 微生物、その培養処理
主要キーワード 二重電極 出産率 子育て 顕微授精 存在頻度 腹部ヘルニア 混入率 PI溶液
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2009年7月23日)のものです。
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図面 (3)

課題

倍体胚をホストとする非ヒトES動物作成方法において、効率的に非ヒトES動物を得る方法を開発する。

解決手段

本発明は、非ヒトES動物を作成する方法であって、3個または4個の4倍体胚にES細胞移入してキメラ胚を作成し、次いでキメラ胚を偽妊娠非ヒト動物移植することを含む方法を提供する。

概要

背景

遺伝子改変動物の作成による遺伝子機能解析は、基礎生物学および医学分野発展に大きな貢献を果たしてきた。遺伝子改変は主にES細胞において行われ、遺伝子改変動物を作成するためには、遺伝子改変後のES細胞を生殖細胞分化させる必要がある。一般的に、ES細胞の生殖細胞への分化は、キメラ動物を作成することにより行われている。すなわち、ES細胞(ドナー)を初期胚(ホスト)へ注入させることによりキメラ動物を作出し、キメラ個体内でドナー由来の生殖細胞分化を誘導するという方法である(非特許文献1)。しかしながら、この方法ではホスト由来の生殖細胞も数多く存在するため、ES細胞由来子孫を得るために多数の交配が必要な場合が多く、遺伝子改変動物の作出において大きな障壁となっていた。

この問題を回避するため、4倍体胚由来のをホストとして用いる方法が開発されてきた。4倍体胚由来の細胞は体を構成する細胞へ分化できないが、胎盤を形成できることが知られている。この特徴を利用してES細胞と4倍体胚のキメラ胚を作出すると、その産仔の胎盤は4倍体胚由来で、体は全てES細胞由来となる(以下「ES動物」という)。ES動物ではほぼ全ての細胞がES細胞由来であるため、その生殖細胞も全てES細胞由来となる(非特許文献2および3)。このようにES動物を作出することにより、ES細胞由来の産仔を効率的に得ることが可能であるが、この技術の問題点はES動物の作成効率自身が非常に低いことであった。なお、本明細書において「ES動物」とは、ES細胞および4倍体胚から作成されるキメラ胚に由来し、体が実質的に全てES細胞に由来する細胞からなる動物をいう。

これまでにES動物の作成効率を改善するために行われてきた方法は、主にES細胞の樹立という観点からであった。例えば、F1由来のES細胞を樹立することにより、ES動物の作成効率の改善が可能であると報告されている(非特許文献4)。この方法により確かにES動物の作成効率は改善したが、この方法ではこれまで樹立されているES細胞には適用できない。すなわち、大部分のES細胞に対しては依然として有効な方法は存在していなかった。
CapecchiMR. The new mouse genetics: altering the genome by gene targeting. TrendsGenet 1989;5:70-76
Nagy A, Gocza E, DiazEMet al. Embryonic stem cells alone are able to support fetal development in the mouse. Development 1990;110:815-821
Nagy A, Rossant J, Nagy R et al. Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells. Proc Natl Acad Sci USA 1993;90:8424-8428
Eggan K, Akutsu H, Loring J et al. Hybrid vigor, fetal overgrowth, and viability of mice derived by nuclear cloning and tetraploid embryo complementation. Proc Natl Acad Sci USA 2001;98:6209-6214

概要

4倍体胚をホストとする非ヒトES動物の作成方法において、効率的に非ヒトES動物を得る方法を開発する。本発明は、非ヒトES動物を作成する方法であって、3個または4個の4倍体胚にES細胞を移入してキメラ胚を作成し、次いでキメラ胚を偽妊娠非ヒト動物移植することを含む方法を提供する。なし

目的

したがって、本発明の解決課題は、4倍体胚をホストとする非ヒトES動物の作成方法において、効率的に非ヒトES動物を得る方法の開発であり、かつこれまでに樹立されているあらゆるES細胞に対して適用可能にすることである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

非ヒトES動物を作成する方法であって、下記工程:(a)3個または4個の4倍体胚ES細胞移入してキメラ胚を作成すること;次いで(b)該キメラ胚を偽妊娠非ヒト動物移植することを含む方法。

請求項2

該4倍体胚が3個である、請求項1に記載の方法。

請求項3

該4倍体胚の発生時期が2細胞期または4細胞期である、請求項1または2に記載の方法。

請求項4

該ES細胞が近交系のES細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られうる、非ヒトES動物。

技術分野

0001

本発明は、4倍体胚をホストとして用いる非ヒトES動物作成方法およびその方法により作成された動物に関する。

背景技術

0002

遺伝子改変動物の作成による遺伝子機能解析は、基礎生物学および医学分野発展に大きな貢献を果たしてきた。遺伝子改変は主にES細胞において行われ、遺伝子改変動物を作成するためには、遺伝子改変後のES細胞を生殖細胞分化させる必要がある。一般的に、ES細胞の生殖細胞への分化は、キメラ動物を作成することにより行われている。すなわち、ES細胞(ドナー)を初期胚(ホスト)へ注入させることによりキメラ動物を作出し、キメラ個体内でドナー由来の生殖細胞分化を誘導するという方法である(非特許文献1)。しかしながら、この方法ではホスト由来の生殖細胞も数多く存在するため、ES細胞由来子孫を得るために多数の交配が必要な場合が多く、遺伝子改変動物の作出において大きな障壁となっていた。

0003

この問題を回避するため、4倍体胚由来のをホストとして用いる方法が開発されてきた。4倍体胚由来の細胞は体を構成する細胞へ分化できないが、胎盤を形成できることが知られている。この特徴を利用してES細胞と4倍体胚のキメラ胚を作出すると、その産仔の胎盤は4倍体胚由来で、体は全てES細胞由来となる(以下「ES動物」という)。ES動物ではほぼ全ての細胞がES細胞由来であるため、その生殖細胞も全てES細胞由来となる(非特許文献2および3)。このようにES動物を作出することにより、ES細胞由来の産仔を効率的に得ることが可能であるが、この技術の問題点はES動物の作成効率自身が非常に低いことであった。なお、本明細書において「ES動物」とは、ES細胞および4倍体胚から作成されるキメラ胚に由来し、体が実質的に全てES細胞に由来する細胞からなる動物をいう。

0004

これまでにES動物の作成効率を改善するために行われてきた方法は、主にES細胞の樹立という観点からであった。例えば、F1由来のES細胞を樹立することにより、ES動物の作成効率の改善が可能であると報告されている(非特許文献4)。この方法により確かにES動物の作成効率は改善したが、この方法ではこれまで樹立されているES細胞には適用できない。すなわち、大部分のES細胞に対しては依然として有効な方法は存在していなかった。
CapecchiMR. The new mouse genetics: altering the genome by gene targeting. TrendsGenet 1989;5:70-76
Nagy A, Gocza E, DiazEMet al. Embryonic stem cells alone are able to support fetal development in the mouse. Development 1990;110:815-821
Nagy A, Rossant J, Nagy R et al. Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells. Proc Natl Acad Sci USA 1993;90:8424-8428
Eggan K, Akutsu H, Loring J et al. Hybrid vigor, fetal overgrowth, and viability of mice derived by nuclear cloning and tetraploid embryo complementation. Proc Natl Acad Sci USA 2001;98:6209-6214

発明が解決しようとする課題

0005

したがって、本発明の解決課題は、4倍体胚をホストとする非ヒトES動物の作成方法において、効率的に非ヒトES動物を得る方法の開発であり、かつこれまでに樹立されているあらゆるES細胞に対して適用可能にすることである。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして驚くべきことに、3個または4個の4倍体胚にES細胞を移入する方法を試みたところ、ホストとして使用する4倍体胚の機能が大幅に改善されることを見出した。さらに、本発明者らは、この方法がこれまで樹立されているES細胞に適用されうることを示した。

0007

すなわち、本発明は:
(1)非ヒトES動物を作成する方法であって、下記工程:
(a)3個または4個の4倍体胚にES細胞を移入してキメラ胚を作成すること;次いで
(b)該キメラ胚を偽妊娠非ヒト動物移植すること
を含む方法、
(2)該4倍体胚が3個である、(1)に記載の方法、
(3)該4倍体胚の発生時期が2細胞期または4細胞期である、(1)または(2)に記載の方法、
(4)該ES細胞が近交系のES細胞である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法、
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法により得られうる、非ヒトES動物を提供するものである。

発明の効果

0008

本発明によれば、きわめて効率的に非ヒトES動物を得ることができ(従来法と比べて数倍の効率)、しかも従来は困難とされていた近交系ES細胞などからでもES動物を作成することができる。

発明を実施するための最良の形態

0009

本発明は、非ヒトES動物の作成方法に関するものである。本発明の方法に使用される動物はヒトを除く動物であってよいが、好ましいのは哺乳類である。適する動物の例として、マウスラットモルモットウサギウシヒツジヤギウマ、ならびにアカゲザルチンパンジーなどの霊長類が挙げられるが、これらだけに限定されない。現在、トランスジェニック動物ノックアウト動物に関して研究が進んでいる実験動物としてマウスが挙げられ、本発明の方法を適用するのに最も好ましい動物の一例である。

0010

本発明の方法を、手順を追って説明する。
本発明では、まず、ホスト胚として4倍体胚を作成する。ここで、「ホスト」とはES細胞を導入する動物と同種類の動物に由来することをいう。4倍体胚は、当業者間で周知の方法によって作成することができ、例えば、胚の融合によって得られてよい。胚の融合を、電気融合法注入法などのごとき一般的な手法を用いて行ってもよい。本発明で用いられうる胚の融合の方法は、好ましくは電気融合法である。また、電気融合を、当該技術分野で一般的に用いられる電気融合装置を用いて行ってもよい。一般的な電気融合では、例えば、複数の2細胞期胚を直線状に並べ、両側を平行二重電極で挟み、電気融合を行ってよい。その後、電気融合に成功した胚を選別し、培養して4倍体胚を得ることができる。4倍体胚の培養は、例えば、CZB培地にて一晩行ってもよい。これらの条件は当業者が適宜定めうる。

0011

本発明では、例えば、4倍体胚を2種類の胚を融合して作成してもよい。一方の胚を、当該技術分野において一般的な手法である顕微授精(IVF)を用いて作成してもよい。例えば、BDF1マウスの精子および卵子から、IVFにより胚を得てもよい。ここで、「BDF1マウス」はC57BL/6の雌とDBA/2Nの雄の交配によって作出される当該技術分野で一般的な系統をいう。IVFは、例えば、卵子を過排卵処理を施した雌から採取し、TYH培地にて培養し、精子を約1×105細胞/mlのごとき一定濃度となるように添加して行うことができる。その後、授精した胚を培養して2細胞期の胚を得てもよい。この時の培養は、例えば、CZB培地にて24時間行ってもよい(Chatot CL, Ziomek CA, Bavister BD et al. An improved culture medium supports development of random-bred 1-cell mouse embryos in vitro. J Reprod Fertil 1989;86:679-688)。もう一方の胚を、例えば、動物を交配させることにより得てもよい。例えば、ICRマウスの雄および雌を一晩交配させ、翌交配を確認し、その24時間後に卵管を採取して2細胞期の胚を回収することにより胚を得てもよい。「ICRマウス」とは、一般的に使用される系統のマウスで、仔を多く産み、子育てを得意とする性質を有する。好ましくは、ICRマウスの雄がGFP遺伝子を有する。例えば、pCAG−EGFPベクターを有するICRバックグランドのGFPトランスジェニックマウス(ICRGFP)を含むが、これだけに限らない。これにより、ES動物を作成した際に、ホスト4倍体胚に由来する細胞をGFPタンパク質発現で確認できることが好ましい。

0012

また、本発明に用いられる4倍体胚は、1種類のみの胚から作成されてもよい。1種類の胚は、例えば、前記のようにIVFまたは交配により作成される2細胞期の胚を含んでよいが、それらだけに限らない。所望により胚の融合は前記の方法と同様に行ってもよい。

0013

次いで、4倍体胚をディッシュなどの適当な容器に入れ、ES細胞を移入し、培養してキメラ胚を作成する。4倍体胚をホストとしてES動物を作成する際に、一般的には、1個または2個の4倍体胚が使用されている(非特許文献2および3)。本発明における4倍体胚の個数は、好ましくは3個または4個であり、最も好ましくは3個である。本発明において、3個の4倍体胚をホストとしてES動物を作成する場合には、1個または2個の4倍体胚を用いる場合に比較して、目的とするES動物の作成効率が2.5〜8.5倍程度上昇する。一方、5個またはそれ以上の4倍体胚を用いる場合には、ES動物の作成効率は3個または4個の場合より低下する。また、本発明で用いられる4倍体胚の発生時期は、電気融合直後の1細胞期以上であってよく、好ましくは、2細胞期から柔実胚期までである。最も好ましくは、4倍体胚の発生時期が2細胞期または4細胞期である。本発明では、4倍体胚を適当な容器に入れる前に、アシッドタイロード溶液などの当業者間で一般的な溶液を用いて透明帯を除去してもよい。本発明において、ES細胞の移入工程でディッシュを用いる場合には、当該分野で一般的に用いられるものであってよく、例えば、プラスチックディッシュを用いてもよい。その場合において、好ましくは1ウェルごとに小さな窪みを作成し、ES細胞の移入の際に4倍体胚を支持できるようにすることにより作成効率を向上させることができる。従って、本発明は、このような4倍体胚を支持できる窪みを有する容器、ならびに該容器を必須構成成分として含むES動物作成用キットなども提供する。

0014

本明細書で用いられる「ES細胞」は、胚盤胞期受精卵内部細胞(ICM)に由来する、インビトロ未分化状態を保ったまま培養維持できる細胞を意味する。これまで、ホストとして4倍体胚を用いる効率的なES動物の作成においては、樹立されたF1由来のES細胞が使用されている(非特許文献4)。しかし、本発明では、ES細胞はあらゆる種類のものであってよく、当業者間で一般的に用いられるものを適用することができる。例えば、E14、R1またAB−1などの129系統に由来する細胞株、あるいはTT2などの市販されている細胞株を含むが、これだけに限らない。また、本発明で用いるES細胞は、近交系または交雑系に由来する上記のごとき一般的なES細胞株であってよく、好ましくは近交系に由来するものである。本明細書で用いられる「近交系」とは、20世代またはそれ以上にわたり兄妹交配が行われてきた系統のことをいう。また、129B6F1G1、BDmt2またはDFC3Hのごとき核移植胚由来のES細胞(ntES細胞)を本発明の方法に用いることができる。これらのntES細胞は発明者らの研究室にて樹立された。ここで、129B6F1G1はGFPを発現する129B6F1系統のセルトリ細胞であり、BDmt2はBDF1系統の繊維芽細胞を用いた核移植胚由来のntES細胞であり、ならびにDFC3HはC3Hの脳細胞から樹立した近交系に由来するntES細胞である。

0015

さらに、本発明に用いられうるES細胞は、ES細胞に類似した性質(本発明でドナーのES細胞として用いることができる性質)を有する細胞であってもよく、例えば、人工多能性(iPS)細胞などを含むが、それだけに限らない。

0016

また、本発明に用いられるES細胞において、特定の遺伝子が導入されているか、または特定の遺伝子がノックアウトされていてもよい。

0017

ES細胞を適当な条件で培養してから、4倍体胚に移入することができる。ES細胞の培養は、当該技術分野において一般的な方法を用いて行われてよい。例えば、基本培地として、KNOCKOUT登録商標DMEM(Invitrogen, CA, USA)を用いてよい。また、添加物として20%胎児ウシ血清(Sigma-Aldrich, MO, USA)、白血病抑制因子(LIF)(1000ユニット/ml,Invitrogen)、1%ペニシリンストレプトマイシン(invitrogen)、1%L−グルタミン(Specialty Media, NJ, USA)、1%非必須アミノ酸(Specialty Media)、1%ヌクレオシド(Specialty Media)、または1% β−メルカプトエタノール(Specialty Media)を添加して培養したものであってよい。

0018

また、本発明では、ES細胞の培養は、ゼラチンでコートしたディッシュ(フィーダー細胞非存在)上で行われてもよい。

0019

本発明では、4倍体胚に移入されるES細胞の数は、1個以上であってよい。また、4倍体胚に移入されるES細胞の数は、好ましくは8〜15個である。移入されるES細胞は細胞塊として移入されてよい。本発明における移入は、例えば、ES細胞を4倍体胚に接触させる、あるいは注入することによって行ってもよい。これらの操作は、顕微鏡またはマイクロマニピュレータを使って行われるのが一般的である。

0020

本明細書で用いられる「キメラ胚」は、由来の異なる2個以上の胚由来の細胞の結合により得られた胚を意味する。本発明に用いられうるキメラ胚は、好ましくは3個または4個の4倍体胚にES細胞を移入して培養した胚である。キメラ胚の培養は、例えば、CZB培地にて約24時間行われてよい。これらの条件は当業者が適宜定めうる。

0021

次に、3個または4個の4倍体胚にES細胞を移入し、適当な条件で培養することにより得られたキメラ胚を偽妊娠非ヒト動物に移植して、子供を産ませ、ES動物を得る。キメラ胚を、偽妊娠非ヒト動物の卵管内または子宮内に移植してもよい。偽妊娠非ヒト動物は、ES細胞が由来する動物と同種の動物であればよく、系統が異なっていてもまたは同一であってもよい。例えば、偽妊娠非ヒト動物は、偽妊娠2.5日目のICRマウスであってもよいが、これだけに限定しない。本発明で用いられるキメラ胚の移植は、当業者間で一般的に用いられる方法によって行われうる。次いで、当業者間で一般的な方法に従って仮親(キメラ胚を移植された偽妊娠非ヒト動物)を飼育し、出産させてES動物を得ることができる。

0022

前記のごとく、3個または4個、とりわけ3個の4倍体胚をホストとしてES動物を作成すると、従来の方法と比較して作成効率を高めることができる。また、この本発明の方法では、あらゆるES細胞が使用でき、例えば近交系由来のES細胞でも使用可能という利点を有する。さらに本発明の方法により得られたES動物は、奇形頻度が従来のESマウスと同程度であり、十分に実用に供することができる。

0023

次に、下記の実施例に用いた主な材料および方法を示すが、本発明を限定するものではない。

0024

使用したマウスおよびES細胞
BDF1およびICRマウスはSLC(浜松、日本)から購入し使用した。ICRバックグラウンドのGFPトランスジェニックマウスはpCAG−EGFPをベクターとして以前発明者らの研究室で樹立したものを使用した。使用したES細胞は4種類で、一般的なES細胞としてE14(Hooper M, Hardy K, Handyside A et al. HPRT-deficient (Lesch-Nyhan) mouse embryos derived from germline colonization by cultured cells. Nature 1987;326:292-295)、核移植胚由来のES細胞(ntES細胞)として、129B6F1G1、BDmt2およびDFC3Hを使用した。E14は、1985年にMartin Hooper博士(Edinburgh, Scotland)らにより樹立され、Peter Mombaerts博士(Rockefeller University)が培養・保存していたものを分与して頂いた。129B6F1G1は、GFPを発現する129B6F1系統のセルトリ細胞、BDmt2はBDF1系統の繊維芽細胞を用いた核移植胚由来のntES細胞で、以前発明者らの研究室で樹立されたものを使用した。また近交系由来のntES細胞として、C3Hの脳細胞から樹立したntES細胞(DFC3H)を10株ランダムにESマウスの作成に使用した。

0025

ES細胞の培養条件
ES細胞の培養は一般的な条件に従って行った。基本培地としてKNOCKOUT(登録商標)DMEM(Invitrogen, CA, USA)を用い、下記の添加物を加えたものを培養液として使用した:20%胎児ウシ血清(Sigma-Aldrich,MO,USA)、白血病抑制因子(LIF)(1000ユニット/ml,Invitrogen)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(invitrogen)、1% L−グルタミン(Specialty Media, NJ, USA)、1%非必須アミノ酸(Specialty Media)、1%ヌクレオシド(Specialty Media)、1% β−メルカプトエタノール(Specialty Media)。ES細胞はゼラチンコートを施したディッシュ上においてフィーダー細胞非存在下で培養した。

0026

4倍体胚の作成とESマウスの作成
実験で使用した4倍体胚は2種類の胚から作成した。1つはBDF1の精子と卵子を顕微授精(IVF)させた胚(BDF2)であり、もう1つはICRGFP雄とICR雌を交配させた胚を使用した。後者の胚(ICRGFP)ではGFPを発現するため、4倍体胚に由来する細胞の存在を緑色蛍光により確認できる。IVFは一般的に用いられている方法を用いて行った。具体的には、BDF1マウスの精巣上体尾部から精子を回収し、TYH培地(Toyoda Y, Yokoyama M, Hoshi T. Studies on fertilization of mouse eggs in vitro: I. In vitro fertilization of eggs by fresh epididymal sperm. Jpn J Anim Reprod 1971;16:147151)にて培養した。卵子は過排卵処理を施した雌BDF1から採取し、TYH培地を用いて培養した。ここに精子を1x105細胞/mlになるように添加することによりIVFを行った。IVF後、授精した胚を回収し、2細胞期胚を得るため、CZB培地(Chatot CL, Ziomek CA, Bavister BD et al. An improved culture medium supports development of random-bred 1-cell mouse embryos in vitro. J Reprod Fertil 1989;86:679-688)において24時間培養した。一方、ICRGFP胚を得るためには、過排卵処理を施したメスICRと、オスICRGFPマウスを一晩交配させた。翌朝、交配を確認し、その24時間後に卵管を採取し、2細胞期の胚を回収した。BDF2およびICRGFPの2細胞期の胚を、電気融合装置(ModelLF101、ネッパジーン(株)、千葉)を用いて電気融合させ、4倍体胚を作成した。電気融合に成功した胚を選別し、CZB培地にて一晩培養した。

0027

2〜4細胞期に発生した4倍体胚を選別し、アシッドタイロード溶液を用いて透明帯を除去した。次いで、プラスチックディッシュ上に作成した小さな窪みに、1個(1x)から3個(3x)の4倍体胚を入れた。さらにその上から8〜15個のES細胞の細胞塊を入れることにより、ES細胞と4倍体胚のキメラ胚を作成した。CZB培地にて24時間培養後、得られたキメラ胚を偽妊娠マウス(偽妊娠2.5日目)の子宮内に戻した。これらのマウスを妊娠18日目で帝王切開し、産仔の有無を解析した。

0028

胚盤胞期胚細胞数の解析
胚盤胞期の細胞数を数えるため、ヨウ化プロピジウム(PI)染色およびCdx2の免疫染色を行った。PIでは全ての細胞が染まるため、全細胞数の指標として使用し、抗Cdx2抗体では栄養外胚葉(TE)細胞のみが染まるため、TE細胞の細胞数の指標として使用した。細胞内部魂(ICM)の細胞数を、全細胞数(PI陽性細胞)からTE細胞数(Cdx2陽性細胞)を差し引いた細胞数として計算した。具体的には、1xから3xの4倍体胚を胚盤胞期まで発生させ、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し(室温で45分間)、PBSで3回洗浄後、抗Cdx2抗体(1:200; BioGenex, CA, USA)を室温で1時間反応させた。PBSで3回洗浄後、2次抗体(goat anti-mouseIgGconjugated with Alexa Fluor 488; Molecular Probes, Eugene, OR, USA)と室温で30分間反応させた。PBSで3回洗浄後、1μg/mlのPI溶液に移し、共焦点顕微鏡を用いてそれぞれの胚盤胞期胚を撮影した。細胞数のカウントには、焦点写真をMetaMorph software(Universal Imaging Co., Downingtown, PA, USA)を用いて立体構築し、PI陽性細胞数およびTE陽性細胞数をカウントした。この解析には、正常胚(1x2n)および1xないし3xの4倍体胚に由来する胚盤胞期の胚をそれぞれ10個ずつ使用してカウントした。

0029

新生仔ESマウスの解析
ESマウスを妊娠18日目で帝王切開し、体重、胎盤重量の測定、および奇形(腹部ヘルニア開眼巨大産仔)の有無を観察した。また、ホストとしてICRGFPの4倍体胚を用いた実験では、ESマウスにおいて4倍体胚由来の細胞の有無を調べるため、ESマウスの肝臓および脳組織を用いてフローサイトメトリーを行った。具体的には、新生仔ESマウスから肝臓および脳を摘出し、ハサミ細切後、0.25%トリプシンEDTA溶液で培養した(37℃で15分間)。10%FBSを含むDMEMを等量添加後、遠心分離し(300gで7分間)、上清を捨てた後、PBSで同様に2回洗浄した。細胞を10%FBS含有のDMEMに懸濁し、フローサイトメトリーに使用した。フローサイトメトリーにはFACSaria(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を用い、それぞれの組織における主要細胞群側方散乱SSC)および前方散乱FSC)を指標として同定した。主要細胞群中のGFP陽性細胞数を測定することにより、4倍体胚由来の細胞を同定した。

0030

以下に実施例を示して本発明を具体的かつ詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。

0031

A.倍化ESマウスの出産率の比較
本実験の目的は、複数の4倍体胚を用いることによりESマウスの作成効率の向上を図ることである。そのためにまず、正常胚を用いて、倍化胚(3xおよび5x)を作成し、その発生能を解析した。その結果、3x正常胚では正常な範囲内で産仔を得ることに成功したが(50%;8/16)、5x正常胚からは産仔を得るにいたらなかった(0%;0/8)。以上の結果から、過剰な胚の数は発生能を障害することが示唆された。この結果を元に本実験では1xから3xの4倍体胚とES細胞のキメラ胚を作成し、ESマウスの出産率を比較検討した。

0032

B.倍化4倍体胚の細胞数の解析
ESマウスの作成の前に、まず、倍化した4倍体胚の細胞数が実際に増加しているのかを検討した。授精後96時間の1xから3xの4倍体胚をそれぞれ10個ずつPIとCdx2の2重染色を行った。以前の報告(Koizumi N, Fukuta K. Preimplantation development of tetraploid mouse embryo produced by cytochalasin B. Exp Anim. 1995;44(2):105-109)と一致して、1x4倍体胚では正常胚(1x2n)と比較して総細胞数の減少が認められた(表1および図1A−A”、D−D”)。一方で、2x4倍体胚および3x4倍体胚では、総細胞数の増加が確認された(表1および図1B−B”、C−C”)。これらの2x4倍体胚および3x4倍体胚では、TE細胞数およびICM細胞数もそれぞれ増加していることが示された(表1)。また、3x4倍体胚を抗Oct3/4抗体で免疫染色したところ、正常にICM細胞が染色された(図1E−E”)。以上の結果から、胚盤胞期の倍化4倍体胚では、予想通り細胞数が増加しており(表1)、ICMなどへの分化も正常に行われることが証明された(図1E−E”)。
(表1.倍化4倍体胚の細胞数の解析)

0033

C.倍化4倍体胚を用いたESマウスの作成効率の検討
先の実験で倍化4倍体胚の細胞数の増加が確認されたので、次にESマウスの作成効率の検討を行った。使用したES細胞は、一般的なES細胞株であるE14、ntES細胞として129B6F1G1(GFP陽性)およびBDmt2、ならびに近交系由来のES細胞株としてDFC3H(合計10株をランダムに使用)を用いた。図2に示したように、GFPを発現する129B6F1G1を用いてキメラ胚を作成したところ、3x4倍体胚にES細胞が正常に取り込まれることが示された(図2D−F)。

0034

次に、各ES細胞と1xないし3xの4倍体胚とのキメラ胚を作成し、胚移植後の発生能の検討を行った。1xおよび2x4倍体胚をホスト胚として用いた場合では、3系統のES細胞(E14、129B6F1G1およびBDmt2)は、ESマウスの作成効率が約1−3%と非常に低頻度であった(表2)。一方、3x4倍体胚を用いた場合では、その作成効率が約2.5−8.5倍に向上した(8.6%:表2)。また、従来作成が困難と考えられていた近交系由来のESマウスでも、3x4倍体胚を用いることにより約7%の成功率で作成可能であることが示された(表2)。

0035

以上の結果から、2x4倍体胚では正常胚と同程度の細胞数を有するが(表1)、ESマウスの作成効率は、3x4倍体胚を使用したものが最も効率がよく(表2)、従来法の1xもしくは2x4倍体胚では不十分であることが示された。
(表2.倍化4倍体胚を用いたESマウスの作成効率の検討)



*:E14;一般的に用いられているES細胞。129B6F1G1およびBDmt2;ntES細胞。DFC3H;近交系由来ntES細胞。

0036

D.倍化4倍体胚より作成された新生仔ESマウスの解析
ESマウスは奇形仔の頻度が高いことが知られているので、次に3x4倍体胚より作成されたESマウスの表現型を観察した。3x4倍体胚由来のESマウスは、体重・胎盤重量とも1xまたは2x4倍体胚由来のESマウスと同程度であった(表3)。また開眼・腹部ヘルニア・巨大産仔の出現率なども差は認められなかった(表3)。以上の結果から、3x4倍体胚を用いた場合であってもESマウスの奇形頻度は、少なくとも従来のESマウスと同程度であることが示された。

0037

ESマウスの最大の特徴は、体を構成しているほぼ全ての細胞がES細胞由来であるという点である。表1に示したように、3x4倍体胚では、総細胞数のみならず、体を構成しうるICM細胞も増加している。最後に、3x4倍体胚由来のESマウスが実際にES細胞由来の細胞で構成されているかを検討した。

0038

ホストである4倍体胚由来の細胞とES細胞を区別するため、ES細胞にはE14、ホストにはICRGFP由来の4倍体胚を使用した。このことにより、4倍体胚由来の細胞がGFPを発現するため、ESマウスにて4倍体由来の細胞を容易に確認することが可能となる。この方法を用いて、3x4倍体胚から合計15匹のESマウスを作成し、蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。図3に示すように、得られた15匹すべてにおいて、胎盤でGFPが発現し、産仔では発現していなかった(図3A−C)。これらの結果から、3x4倍体胚を使用してもESマウスに4倍体胚由来の細胞が大きく混入する可能性は低いと考えられる。次に、より詳細な解析を行うため、フローサイトメトリーによるGFP細胞の検出を行った。1xおよび3x4倍体胚より作成したESマウスをそれぞれ2匹ずつ使用し、脳および肝臓におけるGFP陽性細胞を検出した。解析の結果、1xおよび3x4

0039

倍体胚由来のESマウスとも、4倍体胚由来のGFP細胞の混入率は1%未満であった。
以上の結果から、3x4倍体胚を用いたESマウスは、従来法に由来するESマウスと同様に、ほぼ全ての構成細胞がES細胞由来であることが証明された。
(表3、ESマウスの表現型の解析)



a平均±SD(g)。
bOE:開眼、AH:腹部ヘルニア、LO:巨大産仔、OELO:開眼および巨大産仔を併発した仔、OEAH:開眼および腹部ヘルニアを併発した仔。

0040

本発明は、トランスジェニック動物やノックアウト動物のごとき遺伝子改変非ヒト動物を効率的に作成する方法およびこの方法により作成された遺伝子改変非ヒト動物を提供する。そのため、病理学的な研究や新治療法の開発に用いる実験動物の製造、新薬の開発をはじめとする多くの産業分野において利用可能である。

図面の簡単な説明

0041

図1は、倍化4倍体胚の細胞数の解析結果を示す。A−Eは1xから3x4倍体胚および正常胚(1x2n)をPI染色した写真、A’−D’は1xから3x4倍体胚および正常胚(1x2n)をCdx2で免疫染色した写真、A”−D”はそれぞれの写真を合成した写真である。A−A”は1x4倍体胚、B−B”は2x4倍体胚、C−C”は3x4倍体胚、D−D”は正常胚(1x2n)、E−E”は3x4倍体胚をPI(E)、Oct3/4 (E’)で染色した写真、およびその合成写真をE”として示した。スケールバー:A”−D”100μm。E”200μm。
図2は、129B6F1G1を用いた4倍体胚とのキメラ胚の作成を示す。A−Cは1x4倍体胚とES細胞(129B6F1G)のキメラ胚、D−Fは3xx4倍体胚とES細胞(129B6F1G)のキメラ胚を示す。A、Dは可視光写真、B、Eは蛍光写真、C、Fはそれぞれの合成写真である。スケールバー:200μm。
図3は、3x4倍体胚から作出されたESマウスの解析である。(A−C)GFPを発現する3x4倍体胚とE14 ES細胞を用いたESマウスである。(A)可視光写真を示す。(B)蛍光写真を示す。(C)AとBの合成写真を示す。胎盤においてのみ4倍体胚由来(GFP陽性)の細胞が確認される。(D、E)フローサイトメトリーによる解析結果である。1x4倍体胚由来のESマウス(D)および3x4倍体胚由来のESマウス(E)の脳(左パネル)および肝臓(右パネル)におけるGFP陽性細胞の存在頻度を解析した。1xおよび3x4倍体胚由来のESマウスともGFP陽性細胞の存在頻度は1%未満であった。

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