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図面 (7)

課題

植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材の効果を評価する、簡易評価方法を提供する。

解決手段

アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、植物免疫安定化資材の被評価物質とを接触させた植物試料からの発光量に基づいて、当該植物免疫安定化資材が、病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価する。

概要

背景

植物の病害による被害を低減するために、植物の病害抵抗性反応誘導する病害抵抗性誘導剤が用いられている。植物の病害抵抗性反応には様々な植物ホルモンシグナル伝達関与しているが、病害抵抗性誘導剤は、このような植物ホルモンのシグナルに作用して植物の病害抵抗性反応を誘導するものである。病害抵抗性誘導剤は環境への負荷が少ないため、その重要性が高まっている。

植物は、その生命活動に基づき、バイオフォトンという、肉眼では確認できないほどの非常に弱い光を発している。バイオフォトンの発生メカニズムの詳細は未だ不明な点も多いが、植物の病害抵抗性反応が誘導されると、植物からのバイオフォトンの発光量が増加することが知られている。そして、病害抵抗性反応の誘導による植物からの発光量の増加は、病害抵抗性反応の誘導により植物中に生成される活性酸素種(ROS:Reactive oxygen species)の影響であることが明らかにされている(非特許文献1)。さらに、病害抵抗性反応に基づくバイオフォトンは、病害抵抗性誘導剤の前処理により増強される(プライミング現象)ことも知られている(非特許文献2)。このような病害抵抗性反応の誘導によるバイオフォトンの波長別発光量の変化やバイオフォトンのプライミング現象に基づいて病害抵抗性誘導剤を評価する方法が、特許文献1及び2に記載されている。

ところで、植物が、乾燥、高塩濃度低温等の環境ストレスに曝されると、病害抵抗性反応の誘導が抑制され、病害抵抗性誘導剤の作用が低下してしまう。環境ストレスによって病害抵抗性反応の誘導が抑制される原因として、植物が環境ストレスに応答して植物体内に生成するアブシジン酸が関与していることが示唆されている(非特許文献3及び4)。しかしながら、アブシジン酸は、植物の病害抵抗性反応を誘導する代表的な植物ホルモンの1つであるジャスモン酸シグナル伝達経路に作用して、病害抵抗性反応を誘導することが報告されている(非特許文献5)。このようにアブシジン酸は、植物において病害抵抗性反応の誘導及び抑制の両方の機能を担っており、環境ストレスにより病害抵抗性反応の誘導が抑制される詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。

このような病害抵抗性誘導剤の作用の低下を防ぎ、病害抵抗性誘導剤の機能を最大限に発揮させるために、植物免疫安定化資材と称される物質を、病害抵抗性誘導剤と併用する技術の開発が進められている。植物免疫安定化資材は、植物の病害抵抗性反応の誘導の抑制を阻害する物質であり、病害抵抗性誘導剤と併用することによって、病害抵抗性誘導剤の使用量を最小限に押さえ、かつ効果的に植物の病害を防止することができる物質として注目されつつある。

植物免疫安定化資材を実用化するためには、植物免疫安定化資材の候補物質が、病害抵抗性の抑制を阻害することが可能か否かを確認し、その効果を評価する必要がある。植物免疫安定化資材の効果を評価する方法としては、病害抵抗性関連遺伝子の定量、病原菌接種した植物の観察等が考えられる。特許文献3には、病原菌を接種した植物の葉面に、病害抵抗性誘導剤及びアブシジン酸の生成を抑えるアバミン噴霧し、葉面に現れる病斑数の変化によって、病害抵抗性反応に及ぼすアブシジン酸及びアバミンの効果を判定している。
特開2001−99830号公報(2001年4月13日公開
特開2004−279276号公報(2004年10月7日公開)
特開2006−117608号公報(2006年5月11日公開)
特開2003−113148号公報(2003年4月18日公開)
Kageyama C.ら、Plant Physiol Biochem.,44(11−12):901−909,2006
伊代住ら、Physiol.Mol.Plant Pathol.,66:68−74,2005
Anderson J.P.ら、The Plant Cell,16:3460−3479,2004
仲下英雄ら、Regulation of Plant Growth&Development,39(2):203−213,2004
Bruce A.T.ら、The Plant Cell,19:1665−1681,2007
Navarroら、Science,312:436−439,2006
Kuchitsu K.ら、Protoplasma,174:79−81,1993

概要

植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材の効果を評価する、簡易評価方法を提供する。アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、植物免疫安定化資材の被評価物質とを接触させた植物試料からの発光量に基づいて、当該植物免疫安定化資材が、病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価する。なし

目的

本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価かつ簡便に植物免疫安定化資材の効果を評価する方法を提供し、植物免疫安定化資材の開発の効率化を実現することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

被評価物質が植物免疫安定化資材として植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価する方法であって、第1の植物試料に、(1)アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシン、と(2)サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質、と(3)被評価物質、とを接触させる第1の工程を包含し、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量に基づいて、前記被評価物質が植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価することを特徴とする、方法。

請求項2

前記アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシン、を、前記植物試料に環境ストレスを与えることにより前記植物試料中に生成させることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項3

前記環境ストレスが、乾燥、塩濃度、温度、浸透圧、光及び栄養からなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。

請求項4

前記誘導物質が、サリチル酸、ジャスモン酸、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、ASM(acibenzolar−S−methyl)、チアニル、INA(2,6−dichloroisonicotinicacid)、NCI(N−cyanomethyl−2−chloroisonicotinamide)、CMPA(3−chloro−1−methyl−1H−pyrazole−5−carboxylic acid)、NPSI(N−phenylsulfonyl−2−chloroisonicotinamide)、カルプロパミド、バリダマイシンA、バリドキシルアミンAからなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

前記植物試料が、植物体植物器官植物組織又は植物細胞であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

前記第1の植物試料と同種の第2の植物試料に、(1)前記アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシン、と(2)前記誘導物質、とを接触させる第2の工程をさらに包含し、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量が、第2の工程により得られた第2の植物試料からの発光量よりも多い場合に、前記被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンの作用を抑制すると評価することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

請求項7

第1の工程において、前記被評価物質を接触させた第1の植物試料に環境ストレスを与えた後に、前記誘導物質を接触させ、第2の工程において、第2の植物試料に環境ストレスを与えた後に、前記誘導物質を接触させ、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量が、第2の工程により得られた第2の植物試料からの発光量よりも多い場合に、前記被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンの生成を抑制すると評価することを特徴とする、請求項6に記載の方法。

請求項8

植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキットであって、(1)アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシン、と(2)サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質、とを含むことを特徴とする、キット。

請求項9

前記誘導物質が、サリチル酸、ジャスモン酸、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、ASM(acibenzolar−S−methyl)、チアジニル、INA(2,6−dichloroisonicotinicacid)、NCI(N−cyanomethyl−2−chloroisonicotinamide)、CMPA(3−chloro−1−methyl−1H−pyrazole−5−carboxylic acid)、NPSI(N−phenylsulfonyl−2−chloroisonicotinamide)、カルプロパミド、バリダマイシンA、バリドキシルアミンAからなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載のキット。

技術分野

0001

本発明は、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材評価方法及びキットに関するものである。

背景技術

0002

植物の病害による被害を低減するために、植物の病害抵抗性反応を誘導する病害抵抗性誘導剤が用いられている。植物の病害抵抗性反応には様々な植物ホルモンシグナル伝達関与しているが、病害抵抗性誘導剤は、このような植物ホルモンのシグナルに作用して植物の病害抵抗性反応を誘導するものである。病害抵抗性誘導剤は環境への負荷が少ないため、その重要性が高まっている。

0003

植物は、その生命活動に基づき、バイオフォトンという、肉眼では確認できないほどの非常に弱い光を発している。バイオフォトンの発生メカニズムの詳細は未だ不明な点も多いが、植物の病害抵抗性反応が誘導されると、植物からのバイオフォトンの発光量が増加することが知られている。そして、病害抵抗性反応の誘導による植物からの発光量の増加は、病害抵抗性反応の誘導により植物中に生成される活性酸素種(ROS:Reactive oxygen species)の影響であることが明らかにされている(非特許文献1)。さらに、病害抵抗性反応に基づくバイオフォトンは、病害抵抗性誘導剤の前処理により増強される(プライミング現象)ことも知られている(非特許文献2)。このような病害抵抗性反応の誘導によるバイオフォトンの波長別発光量の変化やバイオフォトンのプライミング現象に基づいて病害抵抗性誘導剤を評価する方法が、特許文献1及び2に記載されている。

0004

ところで、植物が、乾燥、高塩濃度低温等の環境ストレスに曝されると、病害抵抗性反応の誘導が抑制され、病害抵抗性誘導剤の作用が低下してしまう。環境ストレスによって病害抵抗性反応の誘導が抑制される原因として、植物が環境ストレスに応答して植物体内に生成するアブシジン酸が関与していることが示唆されている(非特許文献3及び4)。しかしながら、アブシジン酸は、植物の病害抵抗性反応を誘導する代表的な植物ホルモンの1つであるジャスモン酸シグナル伝達経路に作用して、病害抵抗性反応を誘導することが報告されている(非特許文献5)。このようにアブシジン酸は、植物において病害抵抗性反応の誘導及び抑制の両方の機能を担っており、環境ストレスにより病害抵抗性反応の誘導が抑制される詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。

0005

このような病害抵抗性誘導剤の作用の低下を防ぎ、病害抵抗性誘導剤の機能を最大限に発揮させるために、植物免疫安定化資材と称される物質を、病害抵抗性誘導剤と併用する技術の開発が進められている。植物免疫安定化資材は、植物の病害抵抗性反応の誘導の抑制を阻害する物質であり、病害抵抗性誘導剤と併用することによって、病害抵抗性誘導剤の使用量を最小限に押さえ、かつ効果的に植物の病害を防止することができる物質として注目されつつある。

0006

植物免疫安定化資材を実用化するためには、植物免疫安定化資材の候補物質が、病害抵抗性の抑制を阻害することが可能か否かを確認し、その効果を評価する必要がある。植物免疫安定化資材の効果を評価する方法としては、病害抵抗性関連遺伝子の定量、病原菌接種した植物の観察等が考えられる。特許文献3には、病原菌を接種した植物の葉面に、病害抵抗性誘導剤及びアブシジン酸の生成を抑えるアバミン噴霧し、葉面に現れる病斑数の変化によって、病害抵抗性反応に及ぼすアブシジン酸及びアバミンの効果を判定している。
特開2001−99830号公報(2001年4月13日公開
特開2004−279276号公報(2004年10月7日公開)
特開2006−117608号公報(2006年5月11日公開)
特開2003−113148号公報(2003年4月18日公開)
Kageyama C.ら、Plant Physiol Biochem.,44(11−12):901−909,2006
伊代住ら、Physiol.Mol.Plant Pathol.,66:68−74,2005
Anderson J.P.ら、The Plant Cell,16:3460−3479,2004
仲下英雄ら、Regulation of Plant Growth&Development,39(2):203−213,2004
Bruce A.T.ら、The Plant Cell,19:1665−1681,2007
Navarroら、Science,312:436−439,2006
Kuchitsu K.ら、Protoplasma,174:79−81,1993

発明が解決しようとする課題

0007

特許文献3に記載されている方法や、病害抵抗性関連遺伝子を定量する方法を用いて植物免疫安定化資材の効果を評価する場合、費用や労力がかかる。また、特許文献1及び2に記載の病害抵抗性誘導剤の効果を評価する方法は、病害抵抗性反応が誘導されたときに生成されるROSに関連して植物からの発光量が増加するというメカニズムや病害抵抗性誘導剤の作用によるバイオフォトンのプライミング現象に基づいたものであり、植物免疫安定化資材が病害抵抗性反応の抑制を阻害するか否かを評価することはできない。

0008

本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価かつ簡便に植物免疫安定化資材の効果を評価する方法を提供し、植物免疫安定化資材の開発の効率化を実現することにある。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、病害抵抗性反応が誘導されたときに生成されるROSに関連して増加した発光量が何らかの要因によって低減したときに、病害抵抗性反応の誘導が抑制されたと判定し、さらに評価すべき植物免疫安定化資材の存在によって、低減した発光量が回復したときに、植物免疫安定化資材が病害抵抗性反応の抑制を阻害し得ると評価することができると考え、鋭意検討をおこなった。

0010

その結果、病害抵抗性反応を誘導するサリチル酸経路及びジャスモン酸経路の誘導シグナルに作用する物質によって病害抵抗性反応が誘導されたときに増加した発光量が、病害抵抗性反応の誘導及び抑制の両方の機能を担うアブシジン酸の作用により低減することを見出し、本発明を完成させるに至った。

0011

本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、植物免疫安定化資材であろうと考えられる被評価物質が、植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価する方法であって、第1の植物試料に、(1)アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、(2)サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、(3)被評価物質とを接触させる第1の工程を包含し、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量に基づいて、上記被評価物質が、植物の病害抵抗性に及ぼす効果を評価することを特徴としている。

0012

また、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法において、アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンを、上記植物試料に環境ストレスを与えることにより上記植物試料中に生成させることが好ましい。

0013

さらに、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法において、上記環境ストレスが、乾燥、塩濃度、温度、浸透圧、光及び栄養からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。

0014

また、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法において、上記誘導物質が、サリチル酸、ジャスモン酸、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、ASM(acibenzolar−S−methyl)、チアニル、INA(2,6−dichloroisonicotinic acid)、NCI(N−cyanomethyl−2−chloroisonicotinamide)、CMPA(3−chloro−1−methyl−1H−pyrazole−5−carboxylic acid)、NPSI(N−phenylsulfonyl−2−chloroisonicotinamide)、カルプロパミド、バリダマイシンA、バリドキシルアミンAからなる群より選択されることが好ましい。

0015

さらに、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法において、上記植物試料が、植物体植物器官植物組織又は植物細胞であることが好ましい。

0016

また、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、上記第1の植物試料と同種の第2の植物試料に、(1)上記アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、(2)上記誘導物質とを接触させる第2の工程をさらに包含し、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量が、第2の工程により得られた第2の植物試料からの発光量よりも多い場合に、上記被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンの作用を抑制すると評価することが好ましい。

0017

さらに、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、第1の工程において、上記被評価物質を接触させた第1の植物試料に環境ストレスを与えた後に、上記誘導物質を接触させ、第2の工程において、第2の植物試料に環境ストレスを与えた後に、上記誘導物質を接触させ、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量が、第2の工程により得られた第2の植物試料からの発光量よりも多い場合に、上記被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンの生成を抑制すると評価することが好ましい。

0018

本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキットは、植物の病害抵抗性の低下を抑制する植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキットであって、アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを備えていることを特徴としている。

0019

また、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキットにおいて、上記誘導物質が、サリチル酸、ジャスモン酸、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、ASM(acibenzolar−S−methyl)、チアジニル、INA(2,6−dichloroisonicotinic acid)、NCI(N−cyanomethyl−2−chloroisonicotinamide)、CMPA(3−chloro−1−methyl−1H−pyrazole−5−carboxylic acid)、NPSI(N−phenylsulfonyl−2−chloroisonicotinamide)、カルプロパミド、バリダマイシンA、バリドキシルアミンAからなる群より選択されることが好ましい。

発明の効果

0020

本発明によれば、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材の効果を、安価かつ簡便に評価することが可能であり、植物免疫安定化資材の開発を効率化することが可能である。

発明を実施するための最良の形態

0021

〔植物免疫安定化資材の効果を評価する方法〕
本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材の被評価物質が、植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価する方法であって、(1)植物の病害抵抗性反応を抑制する物質と、(2)植物の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、(3)植物免疫安定化資材の被評価物質とを植物試料に接触させる工程を包含し、上記工程により得られた植物試料からの発光量に基づいて、当該植物免疫安定化資材の被評価物質が、植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価することを特徴としている。本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法によれば、例えば、植物免疫安定化資材の被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンの作用を抑制するか否か、アブシジン酸又はオーキシンの生成を抑制するか否か等を評価することができる。

0022

(植物免疫安定化資材)
本発明において評価する植物免疫安定化資材は、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する物質であり、特に、病害抵抗性反応を誘導する物質と共に植物に投与することによって、病害抵抗性反応を誘導する物質の効果を最大限に発揮させる物質である。植物免疫安定化資材を用いれば、病害抵抗性反応を誘導する物質を効果的に作用させることが可能であり、病害抵抗性反応を誘導する物質の使用量を低減させることができるため、植物の病害防除のための重要な物質として今後の開発が期待されるものである。このような植物免疫安定化資材としては、植物の病害抵抗性反応を抑制する物質の生成を阻害する物質、植物の病害抵抗性反応を抑制する物質が病害抵抗性反応の誘導に作用するのを防ぐ物質等が挙げられる。より具体的には、例えば、植物の病害抵抗性反応を抑制する物質であるアブシジン酸の生合成を阻害する、アバミン、フルリドン等の物質を、植物免疫安定化資材として、本発明に係る評価方法により効果を評価する対象物質として用いることができる。

0023

(病害抵抗性反応)
ここで、植物の病害抵抗性反応は、病原体によって引き起こされる病害に対して、植物が応答する自己防御反応であり、植物が病原体に侵されたときに、病原体の感染及び増殖を抑制するものである。植物の病害抵抗性反応の詳細は、非特許文献4に記載されている。植物の病害抵抗性反応には、病原体に侵された部位に局所的に起きる抵抗性反応の他に、様々な刺激契機として全身に誘導される全身誘導抵抗性反応がある。このような全身誘導抵抗性反応としては、主に、植物が病原体に1次感染したときに誘導され、2次感染に対して免疫的に誘導される全身獲得抵抗性反応(Systemic acquired resistance;SAR)と、植物体の一部に傷害が生じたときに誘導される全身性の抵抗性反応(Wound−induced systemic resistance;WSR)とが挙げられる。

0024

植物ホルモンであるサリチル酸、ジャスモン酸、エチレン等は、上述した全身誘導抵抗性反応の誘導に重要な働きを担っている。特に、サリチル酸は、SARの誘導シグナルとして機能し、ジャスモン酸は、WSRの誘導シグナルとして機能している。サリチル酸を介して誘導されるSARと、ジャスモン酸を介して誘導されるWSRとは、相互に抑制し合う関係にあることが知られている。

0025

(病害抵抗性反応を誘導する誘導物質)
本発明において使用される病害抵抗性を誘導する誘導物質は、上述したような植物の病害抵抗性反応を誘導して、植物の病害を防除する物質である。具体的には、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の全身誘導抵抗性反応を誘導する誘導物質を好適に使用し得る。本明細書中において、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質は、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路において、サリチル酸又はジャスモン酸の近傍の誘導シグナル、あるいは当該誘導シグナルに作用する誘導化合物を意図しており、単に、誘導物質と称することもある。特に、サリチル酸経路におけるサリチル酸とその下流、又はジャスモン酸経路におけるジャスモン酸とその下流の誘導シグナル、又は当該誘導シグナルに作用する誘導化合物であることが好ましい。

0026

このようなサリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質としては、サリチル酸、ジャスモン酸等を使用することができる。また、病害抵抗性反応を誘導する公知の誘導剤を使用することが可能である。例えば、サリチル酸経路の誘導剤である、BIT(benzisothiazole)、ASM(acibenzolar−S−methyl)、チアジニル、INA(2,6−dichloroisonicotinic acid)、NCI(N−cyanomethyl−2−chloroisonicotinamide)、NPSI(N−phenylsulfonyl−2−chloroisonicotinamide)等を好適に使用することが可能である。

0027

(病害抵抗性反応を抑制する物質)
本発明において使用される植物の病害抵抗性反応を抑制する物質は、病害抵抗性反応が誘導されたときに生成されるROSに関連して増加した発光量を低減させる物質であり得る。このような植物の病害抵抗性反応を抑制する物質として、例えば、アブシジン酸、アブシジン酸誘導体、オーキシン等を好適に使用することができる。ここで、本明細書において、アブシジン酸誘導体とは、植物体内においてアブシジン酸と同様の挙動を示す化学的誘導体をいう。また、オーキシンとは、主に植物の成長伸長成長)を促す作用を持つ植物ホルモンの総称であるが、アブシジン酸と同様に、病害抵抗性反応を誘導するサリチル酸のシグナル伝達経路に作用して病害抵抗性反応を抑制する作用をもつことが示されている(非特許文献6参照のこと)。以下の説明においては、植物の病害抵抗性反応を抑制する物質として、アブシジン酸を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

0028

(植物試料)
本発明においては、植物試料として、植物体、植物器官(例えば、葉、花弁、根等)、植物組織(例えば、表皮師部柔組織木部維管束柵状組織海綿状組織等)又は植物細胞(例えば、カルスプロトプラスト等)を使用することが可能である。調製又は処理の簡便さ、評価の再現性等を考慮すると、植物細胞を用いることがより好ましい。また、植物の種類は特に限定されず、例えば、単子葉植物及び双子葉植物試料を使用することが可能である。特に、イネ、タバコブドウバレイショコムギシロイヌナズナ等の植物の試料を好適に使用することができる。植物試料として、植物細胞を用いる場合、植物片から誘導したカルスを適切な培地中で培養することによって調製することができる。

0029

(植物試料の処理工程)
本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、植物試料に、アブシジン酸と、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、植物免疫安定化資材の被評価物質とを接触させる工程を包含している。

0030

本工程においては、植物試料に、アブシジン酸と、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを接触させるが、このときアブシジン酸及び上記誘導物質が植物試料中に吸収されている状態にあることが好ましい。植物試料として植物細胞を用いる場合、例えば、植物細胞を培養する培地中にアブシジン酸を添加することによって、アブシジン酸を外的に付加して植物細胞中に吸収させた状態において、植物細胞に対する処理を行う。また、生長した植物体を用いる場合、例えばアブシジン酸を灌注又は葉面に噴霧することによって、植物体中にアブシジン酸を吸収させてもよい。

0031

アブシジン酸は、乾燥、塩濃度、温度、浸透圧、光、栄養等の環境ストレスに応答して植物体内に生成される物質であるため、本工程においては、植物試料に環境ストレスを与えることにより植物試料中にアブシジン酸を生成させてもよい。植物試料として植物細胞を用いる場合、例えば植物細胞を培養する培地中に塩化ナトリウムを添加して高塩濃度とし、植物細胞に塩ストレスを与えた状態において植物細胞に対する処理を行う。このとき植物細胞内においては、塩ストレスに応答してアブシジン酸が生成され、植物細胞内にアブシジン酸が存在した状態にある。また、植物試料として生長した植物体を用いる場合、例えば土壌に塩化ナトリウムを灌注して高塩濃度とするか、又は塩化ナトリウムを高濃度で含む溶液を葉面に噴霧してもよい。

0032

本工程において、植物試料に、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質を接触させるとき、植物試料中に当該誘導物質が吸収されるように行うことが好ましい。植物試料として植物細胞を用いる場合、例えば植物細胞を培養する培地中に誘導物質を添加することによって、植物細胞に当該誘導物質を吸収させてもよい。また、植物試料として生長した植物体を用いる場合、例えば誘導物質を灌注又は葉面に噴霧することによって、植物体に当該物質を吸収させてもよい。

0033

本工程において用いられる被評価物質は、本発明に係る方法によって植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果が評価される植物免疫安定化資材である。特に、SAR及びWSRのような全身誘導抵抗性反応の抑制を阻害する可能性がある物質、及びその誘導体を好適に評価することが可能である。また、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路において、サリチル酸又はジャスモン酸の近傍の誘導シグナルの作用の抑制を阻害する可能性がある物質をより好適に評価できる。特に、サリチル酸経路におけるサリチル酸とその下流、又はジャスモン酸経路におけるジャスモン酸とその下流の誘導シグナルの作用の抑制を阻害する可能性のある物質であればさらに好適に評価できる。

0034

本工程において、植物試料に被評価物質を接触させるとき、植物試料中に被評価物質が吸収されるように行うことが好ましい。植物試料として植物細胞を用いる場合、例えば植物細胞を培養する培地中に被評価物質を添加することによって、植物細胞に被評価物質を吸収させてもよい。また、植物試料として生長した植物体を用いる場合、例えば被評価物質を灌注又は葉面に噴霧することによって、植物体に被評価物質を吸収させてもよい。

0035

なお、本工程において、アブシジン酸、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質、及び被評価物質を植物試料に吸収させる順序は特に限定されず、被評価物質の評価すべき効果に応じて適宜変更することが可能である。また、アブシジン酸、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質及び被評価物質を植物試料に十分に吸収及び作用させるために、これらの物質を接触させた植物試料を一定時間インキュベートすることが好ましい。植物試料をインキュベートする時間は、用いる植物試料の種類、吸収させる物質の種類等に応じて適宜変更することができる。

0036

(測定工程)
本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、植物試料に、アブシジン酸と、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、植物免疫安定化資材の被評価物質とを接触させる上記植物試料の処理工程により得られた植物試料からの発光量を測定する工程を含むことが好ましい。上述したように、植物は、バイオフォトンという微弱光を発生している。本工程においては、植物試料から発生する微弱光の発光量をフォトンカウンティング光子計数)法により測定することが好ましい。フォトンカウンティング法は、光電子増倍管により光子の数を計数することによって光の発光量を測定する方法であり、光の発光量を、一定時間毎に計数される光子の数(例えば、count/sec)として表す方法である。

0037

本工程において植物試料からの発光量は、従来公知のフォトンカウンター等の測定装置を用いて測定することができる。例えば、ターンテーブルに複数の植物試料をセットし、ターンテーブルを回転させて測定位置にある植物試料を順次移動させることによって、複数の植物試料から発生する光を順に連続して測定することが可能な測定装置を用いることが好ましい。植物試料からの発光量の測定装置は、各植物試料の測定時間及び各植物試料間の測定間隔を適宜変更し得ることが好ましい。

0038

本工程においては、上記植物試料の処理工程において植物試料が処理される前から、上記工程における植物試料の処理が完了するまでの植物試料からの発光量を継続して測定してもよい。これにより上述した各物質を植物試料に接触させたときの発光量の変化を確認することができるので、各物質が植物試料からの発光量に及ぼす影響を詳細に評価することができる。

0039

(比較工程)
本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、上記植物試料の処理工程により得られた植物試料からの発光量に基づいて、当該植物免疫安定化資材が、植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価する。ここで、説明の便宜上、上記植物試料の処理工程を第1の工程とし、当該工程において処理する植物試料を第1の植物試料とする。第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量に基づく評価は、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量と、植物試料からの発光量についての所定の閾値とを比較することによって行うことができる。したがって、本発明は、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量と、植物試料からの発光量についての所定の閾値とを比較する工程を包含していることが好ましい。

0040

上述したように、病害抵抗性反応が誘導された植物においては、植物からの発光量が増加する。本発明者らは、特定の物質によって病害抵抗性反応が誘導されたときに増加した発光量が、アブシジン酸の作用により低減することを見出した。したがって、アブシジン酸と、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質と、被評価物質とを接触させた第1の植物試料からの発光量と、アブシジン酸と、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを接触させた植物試料からの発光量とを比較して、第1の植物試料からの発光量が多い場合に、当該被評価物質が、アブシジン酸による病害抵抗性反応の抑制を阻害する効果を有すると判定することができる。

0041

本工程における、植物試料からの発光量についての所定の閾値は、アブシジン酸と、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを接触させた植物試料からの発光量を測定することによって得られる。第1の工程により処理された植物試料において、被評価物質を吸収させる前の発光量を、植物試料からの発光量についての閾値として設定することができる。この閾値の測定は、本発明において植物試料を処理する前に行われてもよい。また、本発明の植物試料の処理工程において、アブシジン酸、並びにサリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質を吸収させた植物試料からの発光量を測定して閾値を設定し、その後当該植物試料に被評価物質を吸収させてもよい。この閾値の測定に用いられる植物試料は、本発明の第1の工程において用いられる植物試料と同じ種類の植物試料を用いることが好ましく、同時期に調製された植物試料を用いることがより好ましい。

0042

また、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、第2の植物試料に、アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、上記誘導物質とを接触させる第2の工程と、当該工程により得られた第2の植物試料からの発光量を測定する工程を含んでいてもよい。これにより、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量が、第2の工程により得られた第2の植物試料からの発光量よりも多い場合に、被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンの作用を抑制すると評価することができる。第2の植物試料は、第1の植物試料と同じ種類の植物試料である。

0043

さらに、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法は、第1の工程において、被評価物質を接触させた第1の植物試料に環境ストレスを与えた後に、誘導物質を接触させ、第2の工程において、第2の植物試料に環境ストレスを与えた後に、誘導物質を接触させてもよい。これにより、第1の工程により得られた第1の植物試料からの発光量が、第2の工程により得られた第2の植物試料からの発光量よりも多い場合に、被評価物質が、植物の病害抵抗性反応の誘導を阻害するアブシジン酸又はオーキシンの生成を抑制すると評価することができる。

0044

本発明によれば、例えば、(1)アブシジン酸、(2)SARやWSRのような全身誘導抵抗性反応を誘導する物質、及び(3)被評価物質を吸収させた植物試料からの発光量が、所定の閾値よりも多い場合、当該被評価物質が、アブシジン酸による全身誘導抵抗性反応の誘導の抑制を阻害する、と判定することができる。また、例えば、(1)アブシジン酸、(2)サリチル酸経路におけるサリチル酸とその下流の誘導シグナルを誘導する物質、及び(3)被評価物質を吸収させた植物試料からの発光量が、所定の閾値よりも多い場合、当該被評価物質が、SAR誘導経路におけるサリチル酸及びその下流の誘導シグナルの誘導を抑制するアブシジン酸の作用を阻害する、と判定することができる。さらに、例えば、(1)アブシジン酸、(2)ジャスモン酸経路におけるジャスモン酸とその下流の誘導シグナルを誘導する物質、及び(3)被評価物質を吸収させた植物試料からの発光量が、所定の閾値よりも多い場合、当該被評価物質が、WSR誘導経路におけるジャスモン酸及びその下流の誘導シグナルの誘導を抑制するアブシジン酸の作用を阻害する、と判定することができる。

0045

このように、本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価する方法を用いれば、植物からの発光量の変化に基づいて植物免疫安定化資材の効果を評価するので安価かつ簡便に植物免疫安定化資材の効果を評価することが可能である。

0046

(植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキット)
本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキットは、植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害する植物免疫安定化資材が、植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を評価するためのキットであって、(1)アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、(2)サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを備えていることを特徴としている。本キットを用いれば、アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを植物試料に接触させたときの植物試料からの発光量と、さらに被評価物質を接触させたときの植物試料からの発光量とを比較して、被評価物質を接触させた後の発光量が、被評価物質を接触させる前の発光量よりも多い場合に、被評価物質が植物の病害抵抗性反応の抑制を阻害すると判定することができる。

0047

また、本キットは、アブシジン酸若しくはアブシジン酸誘導体又はオーキシンと、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質とを接触させる植物試料をさらに備えていてもよい。さらに、本キットが備えるサリチル酸経路又はジャスモン酸経路の病害抵抗性反応を誘導する誘導物質は、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路において、サリチル酸又はジャスモン酸の近傍の誘導シグナル、あるいは当該誘導シグナルであることが好ましく、特に、サリチル酸経路におけるサリチル酸とその下流、又はジャスモン酸経路におけるジャスモン酸とその下流の誘導シグナル、あるいは当該誘導シグナルに作用する誘導化合物であることがより好ましい。具体的には、サリチル酸、ジャスモン酸、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、ASM(acibenzolar−S−methyl)、チアジニル、INA(2,6−dichloroisonicotinic acid)、NCI(N−cyanomethyl−2−chloroisonicotinamide)、CMPA(3−chloro−1−methyl−1H−pyrazole−5−carboxylic acid)、NPSI(N−phenylsulfonyl−2−chloroisonicotinamide)、カルプロパミド、バリダマイシンA、バリドキシルアミンAからなる群より選択されることが好ましい。

0048

本発明に係る植物免疫安定化資材の効果を評価するためのキットを用いれば、植物免疫安定化資材が、植物の病害抵抗性反応に及ぼす効果を簡便に評価することが可能である。

0049

本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。

0050

(実施例1:アブシジン酸による微弱発光の抑制)
イネ品種「金風」の培養細胞改変N6培地において5日間培養した。培養細胞は、から誘導したカルスを用いた。改変N6培地は、非特許文献7の記載に従って作製した。培養条件を闇条件とし、100rpmで振とう培養した。5日間の培養後の培地に100μM (±)アブシジン酸(和光純薬工業社製)を添加し、さらに4〜5日間培養した。本実施例において使用した(±)アブシジン酸は、アブシジン酸とその異性体とを含むものである。アブシジン酸の代わりに終濃度0.1%のエタノールを添加したものを、コントロールとして用いた。培養後の培養細胞1gと、培養液2mlをプラスチックシャーレ上に分注してサンプルを作製した。サンプルをフォトンカウンター(MSPC、浜松ホトクス社製)内にセットし、サンプルから発生する微弱発光の発光量を約1時間測定し、発光量のベースラインを得た。

0051

ついで、各サンプルに、それぞれ200μMサリチル酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、200μMジャスモン酸メチル(SIGMA−ALDRICH社製)、200μM ASM(acibenzolar−S−methyl)(和光純薬工業社製)、又は200μMプロベナゾール(PBZ)(和光純薬工業社製)を添加し、サンプルからの発光量の測定を継続して行った。上記の病害抵抗性反応を誘導する物質の代わりにDMF(N,N−ジメチルフォルムアミド)20μlを添加したサンプルを、コントロールとして用いた。培養温度及び測定温度は、24〜25℃とした。各試験区に対して3反復の実験を行った結果を図1〜4に示す。

0052

図1は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びサリチル酸の影響を表す発光曲線を示す図であり、図2は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びジャスモン酸の影響を表す発光曲線を示す図であり、図3は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びASMの影響を表す発光曲線を示す図であり、図4は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びプロベナゾールの影響を表す発光曲線を示す図である。

0053

図1に示すように、測定開始から1時間後にサリチル酸を添加して間もなく、アブシジン酸を添加せず、サリチル酸を添加したサンプル(L1)からの発光量が増加している。そして、アブシジン酸を添加して、さらにサリチル酸を添加したサンプル(L2)においては、サリチル酸を添加していないサンプル(L3及びL4)からの発光量と同様に、発光量の増加が見られなかった。この結果から、サリチル酸による病害抵抗性反応の誘導がアブシジン酸により阻害されたことによって、植物細胞からの発光量が抑制されたことが確認された。アブシジン酸を添加せず、サリチル酸を添加したサンプル(L1)におけるピーク時の発光量と、アブシジン酸及びサリチル酸を添加したサンプル(L2)からの発光量とを比較した場合、アブシジン酸による発光量の抑制率は75%であった。

0054

図2〜4においても、同様にアブシジン酸による発光量の抑制が観察された。各病害抵抗性反応を誘導する物質による発光量はアブシジン酸により抑制され、ピーク時における発光量が、ジャスモン酸においては88%、ASMにおいては79%、及びプロベナゾールにおいては76%抑制された。

0055

このように、サリチル酸等の各病害抵抗性反応を誘導する物質により植物の病害抵抗性反応が誘導されて発光量が増加するが、アブシジン酸の作用により発光量が抑制されることが確認された。したがって、アブシジン酸により抑制された発光量が、植物免疫安定化資材の被評価物質の存在により増加すれば、当該物質が病害抵抗性反応の抑制を阻害する効果を有すると判定し得ることが理解される。

0056

(比較例1:キチンエリシターとアブシジン酸とが、植物からの発光量に及ぼす影響)
一方、本発明の比較例として、キチンエリシターとアブシジン酸とが、植物からの発光量に及ぼす影響を検討した。キチンエリシターは、イネに病害抵抗性反応を誘導する病原菌由来の物質であるが、その誘導経路は明らかにされていない。5μM キチンエリシターを添加した植物細胞からの発光量は増加したが、33μM (±)アブシジン酸及び5μM キチンエリシターを添加した植物細胞からの発光量はさらに増加した。すなわち、アブシジン酸は、キチンエリシターにより増加した発光量を抑制しなかった。この結果が得られたのは、病害抵抗性反応の誘導及び抑制の両方の機能を担うアブシジン酸が、病原菌由来のキチンエリシターに対しては誘導的に作用したことが原因であると予想される。上記の結果から、アブシジン酸は、サリチル酸経路又はジャスモン酸経路を誘導する物質のような特定の物質によって病害抵抗性反応が誘導されたときに増加した発光量を低減するものであると言える。

0057

(実施例2:塩化ナトリウム処理に対する植物免疫安定化資材の効果)
イネ品種「金南風」の培養細胞を改変N6培地において10日間培養した。培養細胞は、胚から誘導したカルスを用いた。改変N6培地は、非特許文献7の記載に従って作製した。培養条件を闇条件とし、100rpmで振とう培養した。10日間の培養後、培養物から培養細胞1g及び培養液2mlをプラスチックシャーレに分注し、サンプルを作製した。分注したサンプルに10μMアバミンを添加した。アバミンとして、特許文献4の例3に記載された方法により合成した、アバミン〔[[3−(3,4−ジメトキシフェニル)−アリル]−(4−フルオロベンジル)−アミノ]−酢酸メチルエステル〕を用いた。アバミンの代わりにジメチルスルフォキシドDMSO)5μlを添加したサンプルを、コントロールとして用いた。アバミンを添加して5分後に150mM 塩化ナトリウムを添加し、培養細胞に塩ストレスを与えた。塩化ナトリウムの代わりに滅菌蒸留水200μlを添加したサンプルを、コントロールとして用いた。各サンプルをフォトンカウンター(CCSPC−01、浜松ホトニクス社製)内にセットし、サンプルから発生する微弱発光の発光量を約3時間測定し、発光量のベースラインを得た。

0058

ついで、各サンプルに、それぞれ200μMジャスモン酸メチル(SIGMA−ALDRICH社製)、又は200μM ASM(和光純薬工業社製)を添加し、サンプルからの発光量の測定を継続して行った。上記の病害抵抗性反応を誘導する物質の代わりにDMF20μlを添加したサンプルを、コントロールとして用いた。培養温度及び測定温度は、24〜25℃とした。各試験区に対して2反復の実験を行った結果を図5〜7に示す。

0059

図5は、植物からの発光量に及ぼす塩ストレス、ジャスモン酸及びアバミンの影響を表す発光曲線を示す図であり、図6は、植物からの発光量に及ぼす塩ストレス、ASM及びアバミンの影響を表す発光曲線を示す図であり、図7は、植物からの発光量に及ぼす塩ストレスの影響を表す発光曲線を示す図である。

0060

図5及び6に示すように、塩ストレスを与えたサンプル(L2)からの発光量は抑制され、ジャスモン酸又はASMが添加されても発光量が増加しなかった。一方、アバミンを添加してから塩ストレスを与えたサンプル(L3)においては、ジャスモン酸又はASMの添加により発光量が増加し、塩ストレスにより抑制された発光量が回復した。図5に示すように、ジャスモン酸を添加したサンプル(L1)におけるピーク時の発光量は、塩ストレスにより32%抑制されたが(L2)、アバミン処理により回復して抑制率が12%となった(L3)。また図6に示すように、ASMを添加したサンプル(L1)におけるピーク時の発光量は、塩ストレスにより45%抑制されたが(L2)、アバミン処理により回復して抑制率が18%となった(L3)。

0061

塩ストレスを植物に与えると、植物細胞内にアブシジン酸が生合成される。その結果、植物に直接アブシジン酸処理した場合と同様に、ジャスモン酸又はASMにより増加した発光量の抑制が認められた。そしてこの発光量の抑制は、植物免疫安定化資材の一つであるアバミンの投与によって回復した。アバミンは、アブシジン酸の生合成阻害剤である。この結果、本発明に係る評価方法によって、植物免疫安定化資材の効果判定を行い得ることが確認された。

0062

本発明を用いれば、病害抵抗性誘導剤の機能を最大限に発揮させる植物免疫安定化資材の効果を、安価かつ簡便に評価することができるので、特に農産業分野発展に貢献し得る。

図面の簡単な説明

0063

図1は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びサリチル酸の影響を表す発光曲線を示す図である。
図2は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びジャスモン酸の影響を表す発光曲線を示す図である。
図3は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びASMの影響を表す発光曲線を示す図である。
図4は、植物からの発光量に及ぼすアブシジン酸及びプロペナゾールの影響を表す発光曲線を示す図である。
図5は、植物からの発光量に及ぼす塩ストレス、ジャスモン酸及びアバミンの影響を表す発光曲線を示す図である。
図6は、植物からの発光量に及ぼす塩ストレス、ASM及びアバミンの影響を表す発光曲線を示す図である。
図7は、植物からの発光量に及ぼす塩ストレスの影響を表す発光曲線を示す図である。

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