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課題

本発明は、臓器再生のための細胞移植に非常に適した多能性細胞であるMOMCを効率よく、大量に作製しうる実用的な方法を提供することを目的とする。

解決手段

本発明者らは、フィブロネクチン上での末梢血単球インビトロ培養をSDF−1存在下で行うことによって、より効率的にMOMCを作製し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、CD14を発現する末梢血単球をフィブロネクチン上でインビトロ培養することによりMOMCを作製する方法であって、前記のインビトロ培養をSDF−1存在下で行うことを特徴とするMOMCの作製方法である。

概要

背景

現在の医学に残された大きな課題は疾患、外傷などによる臓器欠失機能障害の克服といわれている。このような状態に対する治療として現時点施行しうる唯一の方法は臓器移植であるが、脳死判定やドナー供給の問題のため現実的な治療法として普及するには多くの障害がある。一方、最近の幹細胞および発生生物学の進歩に伴って臓器再生を目指した再生医学が注目され、21世紀に進むべき医療の方向性として期待されている。動物実験ベルでは胚性幹細胞ES細胞)の移植により臓器の機能回復報告されているが、ヒトへの応用を考えた場合には拒絶反応やES細胞使用による倫理的な問題で行き詰まっているのが現状である。また、成人の各種組織幹細胞(間葉系、血管、肝など)も生体内にきわめて少数しか存在せず、その単離は技術的に難しく、移植に十分な細胞数を得ることは現時点で困難とされている。したがって、ES細胞や組織幹細胞を用いた再生医療実地医療に応用されるためには解決しなければならない多くの問題が山積しており、特に、細胞移植による再生医療が現実のものとなるためには、分化能を有する細胞の安定供給が必要不可欠である。

本願発明者らは、ヒト末梢血単球由来細胞が特定の培養条件下で骨,軟骨骨格筋脂肪心筋血管内皮,神経へと分化する能力を持つことを世界に先駆けて見い出し(非特許文献1〜4、特許文献1)、この新規細胞を単球由来多能性細胞(monocyte-derived multipotent cell; MOMC)と名付けた。単球は末梢血から大きな侵襲なく簡単に採取することができるため、入手が比較的簡便であり、また、末梢血単核球の約20%を占めているため、必要十分量の細胞を安定供給することができる。また、MOMCは、投与対象に由来する単球から作製できることから、ドナー確保や拒絶反応の問題がなく、倫理的な問題も少ない。すなわち、MOMCは、現実的な臓器再生のための細胞移植に非常に適した多能性細胞であるといえる。本発明者らの出願に係る特許文献1には、CD14−細胞を用いて、末梢血単球からMOMCへと分化誘導することによって、MOMCを作製する方法が記載されている。本方法を用いると、特殊な装置を用いることなく、単球からMOMCへの分化誘導を簡単、迅速、安価に行うことができる。また、本願発明者らは、末梢血単球からのMOMCの誘導には、リンパ球でなく血小板との共培養が必要であることをこれまで見い出している(非特許文献5)。

一方、特許文献2には、活性単核細胞蛋白質キナーゼCのbIIにより、単核細胞をP幹細胞に変換することを特徴とするP幹細胞の形成方法が教示されており、蛋白質キナーゼC条件剤として、GMCSFやSDF或いはその組み合わせを用い得ることが記載されている。特許文献2にはさらに、P幹細胞が軟骨細胞神経細胞骨細胞に分化しうると記載されている。また、P幹細胞は、コラーゲン上、フィブロネクチン上のいずれで培養しても得られる細胞である(特許文献2の「実施例1の具体例3」参照)。

また、SDF−1(Stromal Derived Factor 1;ストローマ由来因子)は、細胞の増殖、分化、機能発現を行うサイトカインの1種である(非特許文献6)。サイトカインには、極めて多様なタンパク質が含まれており、インターロイキンIL)、コロニー刺激因子(CSF)、幹細胞因子(SCF)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(IFN)、変換成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)、角質細胞増殖因子(KGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、肝細胞増殖因子HGF)、血管内皮細胞増殖因子VEFG)、マクロファージ炎症タンパク質(MIP)、単球遊走タンパク質(MCP)、ランテス(RANTES)などがよく知られており、中でも、特定の白血球サブセットの遊走作用・活性化を支配する一連のサイトカインとして発見されたものは、ケモカイン(chemokine)と特に呼ばれている。ケモカインは分子内に保存されたシステイン残基(Cys)をもち、この分子構造上の位置よりCXC,CC,C,CX3Cの4つのサブファミリー分類されている。SDF−1はCXCタイプのケモカインであり、SDF−1の受容体は、CXCケモカインレセプターの1つであるCXCR4であることが知られている。

前述のように、MOMCの作製方法は特許文献1により知られていたが、MOMCへの分化効率のより高い、より実用的なMOMC作製方法が求められていた。しかし、SDF−1が、末梢血単球からMOMCへの分化誘導効率に影響するかどうかは全く知られていなかった。

特許第3762975号公報
特開2006−333866号公報
J Leukoc Biol, 2003, 74, 833-45
Stem Cell Dev, 2005, 14, 676-86
Immunol Cell Biol, 2006, 84, 209-17
Stem Cells, 2006, 24, 2733-43
第28回 日本炎症・再生医学会抄録集「W−7−4ヒト単球由来多能性細胞の誘導過程の検討」、2007年7月発行
Science, 1993, 261, 600-603

概要

本発明は、臓器再生のための細胞移植に非常に適した多能性細胞であるMOMCを効率よく、大量に作製しうる実用的な方法を提供することを目的とする。本発明者らは、フィブロネクチン上での末梢血単球のインビトロ培養をSDF−1存在下で行うことによって、より効率的にMOMCを作製し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、CD14を発現する末梢血単球をフィブロネクチン上でインビトロ培養することによりMOMCを作製する方法であって、前記のインビトロ培養をSDF−1存在下で行うことを特徴とするMOMCの作製方法である。なし

目的

本発明の課題は、臓器再生のための細胞移植に非常に適した多能性細胞であるMOMCを効率よく、大量に作製しうる実用的な方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

CD14を発現する末梢血単球フィブロネクチン上でインビトロ培養することにより単球由来多能性細胞(MOMC)を作製する方法であって、前記のインビトロ培養をSDF−1存在下で行うことを特徴とするMOMCの作製方法

請求項2

CD14を発現する末梢血単球として、さらにCXCR4を高発現する単球を用いることを特徴とする請求項1に記載のMOMCの作製方法。

請求項3

SDF−1を有効成分として含有することを特徴とする、単球由来多能性細胞(MOMC)への分化誘導促進剤

請求項4

CD14を発現する末梢血単球を被検物質存在下で培養して得られた単球のCXCR4の発現レベルを測定する工程;と、測定して得られたCXCR4の発現レベルを評価する工程;とを有することを特徴とする、単球由来多能性細胞(MOMC)への分化誘導を促進する物質スクリーニングする方法。

技術分野

0001

本発明は、単球由来多能性細胞(MOMC)の作製方法や、MOMCへの分化誘導剤に関する。

背景技術

0002

現在の医学に残された大きな課題は疾患、外傷などによる臓器欠失機能障害の克服といわれている。このような状態に対する治療として現時点施行しうる唯一の方法は臓器移植であるが、脳死判定やドナー供給の問題のため現実的な治療法として普及するには多くの障害がある。一方、最近の幹細胞および発生生物学の進歩に伴って臓器再生を目指した再生医学が注目され、21世紀に進むべき医療の方向性として期待されている。動物実験ベルでは胚性幹細胞ES細胞)の移植により臓器の機能回復報告されているが、ヒトへの応用を考えた場合には拒絶反応やES細胞使用による倫理的な問題で行き詰まっているのが現状である。また、成人の各種組織幹細胞(間葉系、血管、肝など)も生体内にきわめて少数しか存在せず、その単離は技術的に難しく、移植に十分な細胞数を得ることは現時点で困難とされている。したがって、ES細胞や組織幹細胞を用いた再生医療実地医療に応用されるためには解決しなければならない多くの問題が山積しており、特に、細胞移植による再生医療が現実のものとなるためには、分化能を有する細胞の安定供給が必要不可欠である。

0003

本願発明者らは、ヒト末梢血単球由来細胞が特定の培養条件下で骨,軟骨骨格筋脂肪心筋血管内皮,神経へと分化する能力を持つことを世界に先駆けて見い出し(非特許文献1〜4、特許文献1)、この新規細胞を単球由来多能性細胞(monocyte-derived multipotent cell; MOMC)と名付けた。単球は末梢血から大きな侵襲なく簡単に採取することができるため、入手が比較的簡便であり、また、末梢血単核球の約20%を占めているため、必要十分量の細胞を安定供給することができる。また、MOMCは、投与対象に由来する単球から作製できることから、ドナー確保や拒絶反応の問題がなく、倫理的な問題も少ない。すなわち、MOMCは、現実的な臓器再生のための細胞移植に非常に適した多能性細胞であるといえる。本発明者らの出願に係る特許文献1には、CD14−細胞を用いて、末梢血単球からMOMCへと分化誘導することによって、MOMCを作製する方法が記載されている。本方法を用いると、特殊な装置を用いることなく、単球からMOMCへの分化誘導を簡単、迅速、安価に行うことができる。また、本願発明者らは、末梢血単球からのMOMCの誘導には、リンパ球でなく血小板との共培養が必要であることをこれまで見い出している(非特許文献5)。

0004

一方、特許文献2には、活性単核細胞蛋白質キナーゼCのbIIにより、単核細胞をP幹細胞に変換することを特徴とするP幹細胞の形成方法が教示されており、蛋白質キナーゼC条件剤として、GMCSFやSDF或いはその組み合わせを用い得ることが記載されている。特許文献2にはさらに、P幹細胞が軟骨細胞神経細胞骨細胞に分化しうると記載されている。また、P幹細胞は、コラーゲン上、フィブロネクチン上のいずれで培養しても得られる細胞である(特許文献2の「実施例1の具体例3」参照)。

0005

また、SDF−1(Stromal Derived Factor 1;ストローマ由来因子)は、細胞の増殖、分化、機能発現を行うサイトカインの1種である(非特許文献6)。サイトカインには、極めて多様なタンパク質が含まれており、インターロイキンIL)、コロニー刺激因子(CSF)、幹細胞因子(SCF)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(IFN)、変換成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)、角質細胞増殖因子(KGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、肝細胞増殖因子HGF)、血管内皮細胞増殖因子VEFG)、マクロファージ炎症タンパク質(MIP)、単球遊走タンパク質(MCP)、ランテス(RANTES)などがよく知られており、中でも、特定の白血球サブセットの遊走作用・活性化を支配する一連のサイトカインとして発見されたものは、ケモカイン(chemokine)と特に呼ばれている。ケモカインは分子内に保存されたシステイン残基(Cys)をもち、この分子構造上の位置よりCXC,CC,C,CX3Cの4つのサブファミリー分類されている。SDF−1はCXCタイプのケモカインであり、SDF−1の受容体は、CXCケモカインレセプターの1つであるCXCR4であることが知られている。

0006

前述のように、MOMCの作製方法は特許文献1により知られていたが、MOMCへの分化効率のより高い、より実用的なMOMC作製方法が求められていた。しかし、SDF−1が、末梢血単球からMOMCへの分化誘導効率に影響するかどうかは全く知られていなかった。

0007

特許第3762975号公報
特開2006−333866号公報
J Leukoc Biol, 2003, 74, 833-45
Stem Cell Dev, 2005, 14, 676-86
Immunol Cell Biol, 2006, 84, 209-17
Stem Cells, 2006, 24, 2733-43
第28回 日本炎症・再生医学会抄録集「W−7−4ヒト単球由来多能性細胞の誘導過程の検討」、2007年7月発行
Science, 1993, 261, 600-603

発明が解決しようとする課題

0008

本発明の課題は、臓器再生のための細胞移植に非常に適した多能性細胞であるMOMCを効率よく、大量に作製しうる実用的な方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

本願発明者らは、末梢血単球からのMOMCの誘導には、リンパ球でなく血小板との共培養が必要であるとの知見をこれまでに得ていた(非特許文献5)。そのため、血小板が産生することが知られる多数のサイトカイン等の中から、MOMCへの分化誘導活性を有する物質検索を行ったが、目的の活性を有する物質は見い出されなかった。そこで、血小板が産生しなくても血小板の活性化に伴って放出されるサイトカイン等まで検索の対象を拡大し、鋭意検討を重ねた結果、SDF−1を用いることによって、末梢血単球からより効率的にMOMCを作製し得ることをようやく見い出し、本発明を完成するに至った。

0010

すなわち本発明は、(1)CD14を発現する末梢血単球をフィブロネクチン上でインビトロ培養することにより単球由来多能性細胞(MOMC)を作製する方法であって、前記のインビトロ培養をSDF−1存在下で行うことを特徴とするMOMCの作製方法や、(2)CD14を発現する末梢血単球として、さらにCXCR4を高発現する単球を用いることを特徴とする上記(1)に記載のMOMCの作製方法に関する。

0011

また本発明は、(3)SDF−1を有効成分として含有することを特徴とする、単球由来多能性細胞(MOMC)への分化誘導促進剤に関する。

0012

さらに本発明は、(4)CD14を発現する末梢血単球を被検物質存在下で培養して得られた単球のCXCR4の発現レベルを測定する工程;と、測定して得られたCXCR4の発現レベルを評価する工程;とを有することを特徴とする、単球由来多能性細胞(MOMC)への分化誘導を促進する物質をスクリーニングする方法に関する。

発明の効果

0013

本発明の方法を用いると、末梢血単球からMOMCをより効率的に作製することができ、MOMCをより低コストで作製しうる。作製したMOMCから所望の細胞へと分化誘導することによって、移植用の細胞を安定的に確保することが可能となり、再生医療の進歩に大きく貢献しうる。

発明を実施するための最良の形態

0014

本発明の単球由来多能性細胞(MOMC)の作製方法(以下、単に「本発明の作製方法」ともいう。)は、CD14を発現する末梢血単球をフィブロネクチン上でインビトロ培養することによりMOMCを作製する方法であって、前記のインビトロ培養をSDF−1存在下で行うことを特徴とする。ここで、SDF−1存在下とは、インビトロ培養の際に用いる培地に、SDF−1を添加することや、SDF−1含有組成物を添加することを意味する。SDF−1の濃度を必要に応じて特異的に向上させることができることから、培地に添加するのは、SDF−1であることが好ましい。前記培地中のSDF−1の濃度は特に制限されないが、好ましくは10〜200ng/mlであり、より好ましくは50〜200ng/mlとすることができる。

0015

前述のCD14を発現する末梢血単球(以下、「CD14陽性末梢血単球」ともいう。)の起源としてはマウスラットイヌブタサル、ヒトなど特に限定されないが、ヒトを好適に例示することができ、ヒト単球の場合、ドナー由来であってもよいが自己由来であることが特に好ましい。これら末梢血単球は、起源となる動物静脈血から常法により単離することができる。また、末梢血単球から前述のCD14陽性末梢血単球を分離する方法としては特に制限されないが、例えば抗CD14抗体結合磁気ビーズを用いるなどして、末梢血単球からCD14陽性末梢血単球を容易に分離することができる。

0016

本発明に用いるCD14陽性末梢血単球として、CXCR4を高発現するCD14陽性末梢血単球を用いることがより好ましい。具体的には、採取したCD14陽性末梢血単球のうち、CXCR4の発現数の多い上位70%の単球を用いることが好ましく、上位50%の単球を用いることがより好ましい。CXCR4の発現数は、標識化抗CXCR4抗体及びフローサイトメトリーを用いるなどして、容易に測定することができ、さらに、CXCR4の発現数の高い単球を選別することができる。

0017

また、前述のインビトロ培養の方法としては、CD14陽性末梢血単球を、SDF−1存在下、フィブロネクチン上でインビトロ培養する方法であれば特に制限されないが、フィブロネクチンでコートしたプラスチックプレート上で、SDF−1存在下、CD14陽性末梢血単球を、37℃、5%CO2、湿気下にて密度104〜107/ml、例えば2×106/mlで培養し、2〜4日毎に、特に好ましくは3日毎に非接着細胞を除去するとともに、新鮮培地を補充しつつ、好ましくは5〜14日間、特に好ましくは7〜10日間培養してMOMCを採取する方法を好適に例示することができる。このようにして得られる本発明のMOMCは、その元来のフェノタイプを5世代継代するまで維持しつつ、培養によって増殖させることが可能である。

0018

また、前述のインビトロ培養する際の培地としては、SDF−1を含む細胞培養用培地であれば特に制限されないが、SDF−1を含む血小板培養上清(10%ウシ胎児血清(FBS)添加低グルコースDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)培地)を好適に例示することができる。本発明に用いるSDF−1は、特に制限されず、市販のものを用いることができる。また、SDF−1の由来としては、培養するCD14陽性末梢血単球の由来に応じて、その由来と同種のSDF−1、例えばヒト由来のCD14陽性末梢血単球を用いるときはヒト由来のSDF−1を用いることが好ましい。

0019

また、前記培地中には、MOMCへの分化誘導を行い得る限り、SDF−1以外のサイトカイン等の他の任意成分を含んでいてもよい。上記SDF−1以外のサイトカインとして、TGF−β、PDGF−AA、PDGF−AB、bFGFなどのMOMCへの誘導を阻害する活性を有するサイトカインを含む培地を用いてもよいが、培地中のこれらのサイトカインのいずれか1種又は2種以上の濃度が1ng/ml以下であることが好ましく、100pg/ml以下であることがより好ましく、10pg/ml以下であることがさらに好ましく、1pg/ml以下であることがさらにより好ましい。

0020

本発明の作製方法により得られた細胞がMOMCであることは、以下に示すMOMCの性質を確認することにより容易に特定することができる。
MOMCは、CD14を発現する単球に由来し、CD14とCD34とCD45とI型コラーゲンとを発現する紡錘形の細胞又は細胞群である。上記CD14とCD45とは単球及び単球由来細胞のマーカーとして、CD34は幹細胞のマーカーとして、I型コラーゲンは間葉系細胞のマーカーとして知られている。本発明のMOMCとしては、幹細胞マーカーとしてのCD105、Sca−1や、間葉系細胞のマーカーとしてのIII型コラーゲン、フィブロネクチンや、血管内皮マーカーとしてのVEカドヘリン、Flt−1を発現するものが好ましい。かかるMOMCは、上記タンパク質の発現パターンから、単球、マクロファージ、樹状細胞とは異なる細胞であり、間葉系細胞、血管内皮細胞、幹細胞の特徴をあわせ持つ細胞群といえる。

0021

本発明の分化誘導促進剤は、SDF−1を有効成分として含有することを特徴とする。CD14陽性末梢血単球をフィブロネクチン上でインビトロ培養する際の培地に本発明の分化誘導促進剤を添加すると、MOMCへの誘導効率が向上し、より低コストでMOMCを作製することができる。

0022

本発明の分化誘導剤に含まれるSDF−1の濃度は、上記培地に添加することによってMOMCへの誘導効率を向上させ得る限り特に制限されない。また、本発明の分化誘導剤は、SDF−1のみを含有していてもよいが、MOMC誘導を阻害しない限り、SDF−1以外の任意成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、水等の溶媒や、炭素源窒素源等の単球の培養成分や、SDF−1以外のMOMC分化誘導物質を例示することができる。

0023

本発明の分化誘導剤の剤型は、特に制限されず、粉末状等の固形剤であってもよいし、液体状の液剤であってもよい。

0024

本発明のMOMCへの分化誘導を促進する物質をスクリーニングする方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」ともいう。)は、工程(A):CD14を発現する末梢血単球を被検物質存在下で培養して得られた単球のCXCR4の発現レベルを測定する工程;と、工程(B):測定して得られたCXCR4の発現レベルを評価する工程;とを有することを特徴とする。CXCR4の発現レベルが高いCD14陽性末梢血単球は、CXCR4の発現レベルが低いものに比べてMOMCへの誘導効率が高いため、CXCR4の発現レベルを向上させる物質は、MOMCへの分化誘導も促進すると考えられる。

0025

上記工程(A)としては、CD14を発現する末梢血単球(CD14陽性末梢血単球)を被検物質存在下で培養して得られた単球のCXCR4の発現レベルを測定する工程である限り特に制限されない。上記工程における、単球のCXCR4の発現レベルを測定する方法としては特に制限されず、例えば、標識化抗CXCR4抗体及びフローサイトメトリーを用いるなどして容易に測定することができる。

0026

上記工程(B)としては、測定して得られたCXCR4の発現レベルを評価する工程である限り特に制限されないが、例えば、CD14陽性末梢血単球を被検物質非存在下で培養して得られた単球のCXCR4の発現レベルを基準として、被検物質存在下における発現レベルがより高い場合は、その被検物質を、MOMCへの分化誘導を促進する物質と評価することができる。

0027

前述の本発明の作製方法によって作製されるMOMCは多能性を有している。MOMCの有する多能性としては、中胚葉系細胞に間葉系幹細胞MSC)を分化させることが知られている誘導条件下で中胚葉系細胞に分化する多能性を例示することができ、より具体的には、間葉系組織へと分化誘導する条件下での培養により骨芽細胞骨格筋芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞等の間葉系細胞に分化しうる多能性や、培養心筋細胞との共培養等の心筋へと分化誘導する条件下での培養により心筋細胞に分化しうる多能性や、血管内皮細胞を維持する条件下での培養等の血管内皮へと分化誘導する条件下での培養により血管内皮細胞に分化しうる多能性の他、培養神経細胞との共培養等の神経へと分化誘導する条件下での培養により、外胚葉系細胞である神経細胞に分化しうる多能性などを好適に例示することができる。

0028

本発明におけるMOMC、並びに/又は、前記MOMCから分化・誘導された、前記中胚葉系前駆細胞、中胚葉系細胞及び/若しくは中胚葉系組織や、前記神経前駆細胞、神経細胞及び/若しくは神経組織等を投与、例えば障害、欠損部位およびその近傍へ直接注入、又は末梢血へ投与することにより、前記組織の先天性疾患変性疾患や外傷を治療しうる。MOMC又は分化誘導処理したMOMCのいずれが治療剤として適しているかは、細胞の種類や疾病の種類や投与方法を考慮して適宜決定することが好ましい。また、MOMCは遺伝子導入が比較的簡単な細胞であることから、ヒトへの細胞移植の前に特定の遺伝子を導入した後に組織再生治療等に用いることもできる。例えば、ある種の先天性疾患で骨の形成に障害がある場合に、その遺伝子を是正した上で移植することや、あるいは、特定の蛋白(サイトカイン、成長因子、ホルモンなど)を産生するように調製した上で移植することもできる。

0029

前述のように、本発明におけるMOMCは、前記組織の組織再生治療における細胞供給源としてきわめて有用である。具体的に本発明におけるMOMCを用いた治療剤や治療方法の対象となる疾患又は病態としては、骨形成不全骨折関節リウマチなど変性疾患による骨破壊や、軟骨が破壊される関節リウマチ、変形性関節症や、ジストロフィーなどの先天性疾患や筋炎などの後天性疾患による筋萎縮や、心筋梗塞心筋症による心筋障害や、脳梗塞パーキンソン病などの脳障害脊髄損傷などの外傷や、動脈硬化膠原病による血管障害を挙げることができ、便宜上、豊胸をはじめとした美容形成等も本発明における治療剤や治療方法に含まれる。このようなMOMC又は分化誘導処理したMOMCを使用する細胞治療には、現在提案されている組織特異的幹細胞及びES細胞を用いる再生治療等にはない大きな利点がある。すなわち、血液採取という低侵襲的に患者本人から大量の単球を採取できることから、循環単球は比較的容易に入手可能な自己細胞供給源ということができ、さらに、単球からMOMCを作製することは技術的に簡便で迅速に実施でき、また、ES細胞を使用する際の倫理上のジレンマも回避することができる。

0030

以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。

0031

MOMCは、CD14陽性末梢血単球(末梢血中のCD14+単球)をインビトロ培養することにより誘導される多分化能を有する細胞であり、そのフェノタイプはCD14+CD45+CD34+I型コラーゲン+である。従来のMOMC作製法(日本特許第3762975号公報)では、末梢血中CD14+単球からMOMCへの分化誘導過程で、CD14+単球が固相化したフィブロネクチンに接着すること、及びCD14−単球細胞由来の液性因子培養液中に存在することが必須であった。さらに、日本特許第3762975号公報の明細書中の実施例19では、末梢血CD14+単球細胞がすべてMOMCに分化するのではなく、その一部の細胞しか分化能を有していないことが明らかにされている。また、本願発明者らは、末梢血単球からのMOMCの誘導には、リンパ球でなく血小板との共培養が必要であることをこれまで見い出している(非特許文献5)。本願発明者らは、より効率的なMOMC作製法を確立するため、MOMC分化誘導に必須の「接着因子」及び「液性因子」を特定するとともに、MOMC作製に適した単球細胞の特性を検討した。

0032

[MOMC分化誘導に関与する接着因子の同定]
まず、フィブロネクチンとI型コラーゲンについて、それらのMOMC分化誘導能を比較した。成人健常ドナーから得た静脈血について密度勾配遠心分離を行い、末梢血単球(PBMC)を単離し、更に抗CD14抗体結合磁気ビーズを用いてPBMCからCD14+単球を分離した。得られたCD14+単球を、SDF−1を含む血小板培養上清(10%ウシ胎児血清(FBS)添加低グルコースDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)培地)に懸濁し、フィブロネクチン又はI型コラーゲンでコートしたプレート上で7−10日間培養した。その結果、I型コラーゲン上の培養で得られた細胞は、フィブロネクチンと比べて付着細胞数の著しい増加が見られたが(図1A)、フローサイトメトリーで解析した結果、MOMCに特徴的なフェノタイプのひとつであるCD34の発現は見られなかった(図1B)。また、フィブロネクチン上で培養した細胞(MOMC)は、少なくとも6回目の継代までは細胞数が増加していくのに対して、I型コラーゲンで作製した細胞は継代の度に細胞数が減少した(図2A)。また、様々なマーカー遺伝子の発現を、RTPCR法により解析した結果、I型コラーゲン上で培養した細胞は、MOMCとは異なりCD34を発現せず、また、MOMCに比べてI型コラーゲンとIII型コラーゲンの発現が高いことが明らかなった(図2B)。さらに、MOMCを他の細胞に分化誘導する既知培養法を用いて、I型コラーゲン上で培養した細胞の分化能を検討した結果、I型コラーゲンで作製した細胞はいずれの細胞にも分化しなかったことから(図2C)、この細胞はMOMCと異なる性質を持つ細胞であることが明らかとなった。これらの結果から、I型コラーゲンはMOMC分化誘導能を有しておらず、CD14+単球からMOMCへの分化には、細胞の培養プレートへの接着だけでなく、フィブロネクチンに特異的なドメインによる刺激が必要であることが示された。
なお、背景技術に記載された特許文献2に教示されているP幹細胞が、コラーゲン上、フィブロネクチン上のいずれで培養しても得られる細胞である(特許文献2の「実施例1の具体例3」参照)ことを考慮すると、コラーゲン上で培養したときは全く得ることのできないMOMCは、P幹細胞とは明らかに異なる細胞だといえる。

0033

次に、MOMCの誘導に関与する単球上の接着分子の同定を試みた。
フィブロネクチンと結合する細胞接着分子は、インテグリンファミリーの中の、VLA−3、VLA−4、VLA−5であることが知られている。このうち、末梢血単球にはVLA−4とVLA−5が発現しており、VLA−3は発現していない(図3)。インテグリンα鎖β鎖の2つのサブユニットからなるヘテロ二量体であり、VLA−4はβ鎖(β1)とα鎖(CD49d)からなり、VLA−5はβ鎖(β1)とα鎖(CD49e)からなっている。そこで、VLA−4とVLA−5をそれぞれ構成するα鎖であるCD49dとCD49eに対する抗体を用いてブロッキングを行い、MOMCの誘導に関与する単球上の接着分子の同定を行った。コントロールとして単球に発現が見られないVLA−3のα鎖であるCD49cに対する抗体を用いた。

0034

成人健常ドナーから得た静脈血について密度勾配遠心分離を行い、末梢血単核球(PBMC)を単離した。そして、抗CD61抗体結合ビーズを用いて、混入している血小板を完全に除去し、さらに抗CD14抗体結合ビーズを用いてCD14+細胞を単離した。得られたCD14+単球を、MOMC分化誘導因子を含む血小板培養上清に懸濁し、フィブロネクチンをコートしたプレート上に1x106/mlの細胞密度播種した。培養液に、抗CD49d抗体(Beckman Coulter社製)、抗CD49e抗体(Beckman Coulter社製)、又は抗CD49c抗体(Beckman Coulter社製)をそれぞれ20μg/mlとなるように添加し、7−10日間培養した。培養終了時の各プレートにおける付着細胞数をカウントして比較することで、各種抗体がMOMC分化誘導に及ぼす影響を検討した。その結果、抗CD49e抗体によりVLA−5をブロックした場合、MOMCの誘導が著しく阻害されたことから、フィブロネクチンによるMOMC分化誘導に関与する細胞接着分子はVLA−5であることが明らかとなった(図4)。一方、抗CD49d抗体によりVLA−4をブロックした培養細胞は、ネガティブコントロールである抗CD49c抗体を添加した区と比較して差が認められなかったことから、VLA−4はMOMC誘導には関与しないことが示された(図4)。

0035

次に、MOMCの誘導に関与するフィブロネクチンのドメインの同定を行った。図5に示すように、フィブロネクチンのドメインのうち、VLA−5と結合する可能性が考えられるのはRGDとCS−1の2つのドメインである。そこで、これらのRGDドメインとCS−1ドメインに対する競合ペプチドを、MOMCを誘導する培養液に添加して、MOMCの誘導に対する影響を検討した。ネガティブコントロールとして、それぞれの競合ペプチドの1アミノ酸を他のアミノ酸に置換したペプチドを用いた(配列番号1〜4に示す)。

0036

成人健常ドナーから得た静脈血について密度勾配遠心分離を行い、末梢血単核球(PBMC)を単離した。混入している血小板を抗CD61抗体結合ビーズを用いて前述のPBMCから完全に除去し、さらに抗CD14抗体結合ビーズを用いてCD14+単球を単離した。得られたCD14+単球を、MOMC分化誘導因子を含む血小板培養上清に懸濁し、フィブロネクチンをコートしたプレート上に1´106/mlの細胞密度で播種した。培養液にRGDペプチド(GRGDSP;配列番号1)、CS−1ペプチド(EILDV;配列番号2)、RGDペプチドに対するコントロールペプチド(GRGESP;配列番号3)、又はCS−1ペプチドに対するコントロールペプチド(EILAV;配列番号4)を500μg/mlとなるように添加し、7−10日間培養した。培養終了時に付着細胞数をカウントして競合ペプチドを添加した付着細胞数と、コントロールペプチドを添加した付着細胞数とを比較することで、各競合ペプチドがMOMC分化誘導に及ぼす影響を検討した。その結果、CS−1ドメインと競合するペプチドを添加してもほとんど影響はなかったが、RGDドメインと競合するペプチドを加えるとコントロールペプチドと比べてMOMCの誘導が著しく阻害された(図6)。これらのことから、MOMCの誘導にはフィブロネクチンのRGDドメインが関与していることが明らかとなった。より詳細にいえば、VLA−5とフィブロネクチンとの結合にはフィブロネクチンのRGDドメインが深く関与していること、及び、RGDドメインの競合ペプチド存在下では、VLA−5とフィブロネクチンとの結合が阻害され、その結果MOMCの誘導が阻害されることが示唆された。

0037

[MOMC分化誘導に関与する液性因子の同定]
本願発明者らは、末梢血単球からのMOMC分化誘導には、リンパ球でなく血小板との共培養が必要であることをこれまで見い出している(非特許文献5)。本発明者らは、15種類の調節因子(PDGF−AA、PDGF−AB、bFGF、EGF、IL−7、TGF−β、ENA78、GRO−α、IL−8、MIP−1α、NAP−2、PF−4、MCP−3、TARC、SDF−1)に関して分化誘導活性を検討した。この15種類の調節因子のうち、SDF−1以外の調節因子は、血小板が産生する調節因子として知られている。

0038

成人健常ドナーから得た静脈血について密度勾配遠心分離を行い、末梢血単核球(PBMC)を単離した。更に抗CD14抗体結合磁気ビーズを用いて前述のPBMCからCD14+単球を分離した。得られたCD14+単球を、10%ウシ胎児血清(FBS)添加低グルコースDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)培地に懸濁し、フィブロネクチンをコートしたプレートに2x105/mlの細胞密度で播種した。各被検物質を0−100ng/mlの濃度となるよう培養液に添加し、7−10日間培養した。その結果、図7に示すように、100ng/mlのSDF−1(R&D Systems社製)を添加した場合、高頻度でMOMC様の紡錘形細胞が出現し(図7A)、またそのMOMC様細胞への誘導活性は濃度依存的(5,10,50,100,200ng/ml)であることが明らかとなった(図7B)。一方、SDF−1以外の14種の調節因子は、いずれもMOMC様細胞への分化誘導活性を示さず、TGF−βやPDGF−AAやPDGF−ABやbFGFは、むしろMOMCへの誘導を阻害する活性を示した(図8〜11)。

0039

[SDF−1により誘導された紡錘形細胞の性質の特定]
実施例5でSDF−1により分化誘導された紡錘形細胞がMOMCであるかどうかを検討した。まず、紡錘形細胞のフェノタイプを、フローサイトメトリーで解析したところCD14+CD45+CD34+であり、これら分子の発現強度は、従来の方法で誘導されたMOMCと同等であることが判明した(図12)。さらに、本培養法(誘導物質としてSDF−1を用いる)で得られた紡錘形細胞が、多分化能を有するMOMCであるかどうかを確認するために、以下に示す細胞への分化誘導を試みた。

0040

間葉系幹細胞を骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞へとそれぞれ分化誘導する既知の培養法と血管内皮細胞を維持する既知の培養法に従い(Arthritis Rheum 2001, 44, 1928-42;Circulation 2003, 108, 2511-16)、SDF−1で作製した紡錘形細胞を培養した。1週間培養した後、培養細胞の形態を検討するとともに、免疫染色法によりCD45と各細胞に特異的なマーカー遺伝子の発現を調べた。その結果を図13に示す。なお、各細胞への分化の評価に用いたマーカー遺伝子としては、骨芽細胞用としてPEBP2αAを、軟骨細胞用としてSOX9を、脂肪細胞用としてPPARγを、血管内皮細胞用としてeNOS及びTie−2を用いた。

0041

(1)骨芽細胞への誘導条件では、細胞は類円形の形態を示し、培養1週間後には骨芽細胞に特異的な転写因子であるPEBP2αA遺伝子の発現を認めた(図13A)。
(2)軟骨細胞への誘導条件では、細胞は細胞質富むやや大型の類円形の形態を示し、培養1週間後には軟骨細胞に特異的な転写因子であるSox9遺伝子の発現を認めた(図13B)。
(3)脂肪細胞への誘導条件では、脂肪滴が出現し、培養1週間後には脂肪細胞に特異的な転写因子であるPPARγ2遺伝子の発現を認めた(図13C)。
(4)血管内皮細胞を維持する既知の条件でMOMC様の紡錘形細胞を培養したところ、小突起を有する多型性の形態となり、血管内皮に特異的なeNOS遺伝子及びTie−2遺伝子の発現が確認された(図13D及びE)。
上記(1)〜(4)の結果から、SDF−1により誘導された紡錘形細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞及び血管内皮細胞への分化能を有することが明らかとなった。

0042

実施例5及び6記載の実験結果より、SDF−1によりCD14+単球から誘導された細胞は、(1)紡錘形の形態を示すこと、(2)CD14+CD45+CD34+であること、さらに(3)多分化能を有することが明らかとなった。これらの性質はMOMCの特徴と一致していることから、SDF−1がMOMC分化誘導能を有する液性因子であることが明らかとなった。

0043

[末梢血単球のCXCR4発現レベルがMOMC分化能に及ぼす影響]
SDF−1の受容体は、膜貫通型ケモカインレセプターCXCR4であることが知られている。そこで、発明者らは、CXCR4を含む4種類のケモカインレセプター及び1種類のサイトカインレセプターLNGFR)の単球細胞膜上における発現レベルが、MOMC分化誘導効率に影響を及ぼすかどうかを検討した。検討したケモカインレセプターを以下に示す;
CXCR4(SDF−1のレセプター)
CCR1(MIP1α、RANTES、MCP3、MCP4のレセプター)
CCR5(MIP1α、MIP1β、RANTES、MCP2のレセプター)
CX3CR1(Fractalkineのレセプター)
LNGFR(nerve growth factorの低親和性レセプター)

0044

成人健常ドナーから得た静脈血について密度勾配遠心分離を行い、PBMCを単離した。更に抗CD14抗体結合磁気ビーズを用いて前述のPBMCからCD14+単球を分離した。得られた末梢血単球上のCD14と前述の各ケモカインレセプターの発現レベルをフローサイトメトリーにより評価した。代表的な結果として、CXCR4の発現をフローサイトメトリーで評価した結果を図14に示す。

0045

また、フローサイトメトリーを用いて、前述のCD14+単球を、前述の各ケモカインレセプターを高発現するCD14+単球細胞群と、それらのケモカインレセプターを低発現するCD14+単球細胞群とに分離した。また、コントロールとして、CD14+CD11b+細胞群を、フローサイトメトリーを用いて前述のCD14+単球から分離した。それぞれの細胞群(細胞集団)を10%FBS添加低グルコースDMEM培地に懸濁したのち、フィブロネクチンをコートしたプレート上で血小板と共培養した。培養7〜10日後にそれぞれの細胞群の紡錘形細胞数をカウントし、MOMCへの分化能を比較した。CXCR4レセプターに関していうと、CD14+CXCR4low細胞群では、0.1mm2あたりの紡錘形細細胞は、コントロール細胞群の場合(6.0±0.6個)とほぼ同等の5.7±0.4個であった(図15)のに対し、CD14+CXCR4high細胞群では11.5±0.9個と顕著に高い値を示した(図15)。一方、図16〜19に示すように、CXCR4以外のケモカインレセプターに関しては、それらのケモカインレセプターが高発現している細胞群においてMOMC分化能が向上しているという関係は認められなかった。例えば、CCR1及びLNGFRでは、それらのケモカインレセプターを高発現する細胞と低発現する細胞とでは、MOMC分化能はほぼ同じであり、CCR5及びCX3CR1では、それらのケモカインレセプターを高発現する細胞の方がむしろやや低い(有意ではない;P>0.05)MOMC分化能を示した。
これらの結果は、単球細胞のMOMC分化能がCXCR4発現レベルに依存することを示すとともに、血小板由来の液性因子によるMOMC誘導に、SDF−1/CXCR4シグナルが重要な役割を果たしていることを裏付けるものである。

0046

上記の結果から、末梢血単球からのMOMC分化誘導には、1)接着因子としてフィブロネクチン中のRGEドメインが、2)さらに液性因子としてSDF−1が必須であることが明らかとなった。また、3)CXCR4を高発現するCD14+単球細胞は、MOMC分化能が高く、MOMC作製に適した細胞であることが明らかとなった。

図面の簡単な説明

0047

I型コラーゲンとフィブロネクチンのMOMC分化能を比較検討した結果を示す図である。
I型コラーゲンとフィブロネクチンのMOMC分化能を比較検討した結果を示す図である。
接着分子であるインテグリンファミリーの種類とその性質を示す図である。
単球のインテグリンを、抗CD49d抗体、抗CD49e抗体、又は抗CD49c抗体によりブロックした時の、MOMC分化能を比較検討した結果を示す図である。
フィブロネクチンの構造を示す図である。
フィブロネクチンのRGD又はCS−1ドメインと競合するペプチドを添加した時の、MOMC分化効率の変化を示す図である。
SDF−1を用いた培養により出現したMOMC様紡錘形細胞と、その出現頻度が添加したSDF−1濃度依存的に増加することを示す図である。
PDGF−AA、PDGF−AB、bFGF、及びEGFのMOMC誘導活性を調べた結果を示す図である。
IL−7、TGF−β、ENA78、及びGRO−αのMOMC誘導活性を調べた結果を示す図である。
IL−8、MIP−1α、NAP−2、及びPF−4のMOMC誘導活性を調べた結果を示す図である。
MCP−3及びTARCのMOMC誘導活性を調べた結果を示す図である。
SDF−1により作製したMOMC様紡錘形細胞におけるCD14とCD34の発現を、従来の方法で作製したMOMCでの発現と比較した結果を示す図である。
SDF−1により作製したMOMC様紡錘形細胞の多分化能を検討した結果を示す図である。
CD14+単球細胞集団におけるCXCR4の発現を調べた結果である。
CD14+CXCR4low細胞とCD14+CXCR4high細胞のMOMCへの分化効率を比較検討した結果を示す図である。
CD14+CCR1low細胞とCD14+CCR1high細胞のMOMCへの分化効率を比較検討した結果を示す図である。
CD14+CCR5low細胞とCD14+CCR5high細胞のMOMCへの分化効率を比較検討した結果を示す図である。
CD14+CX3CR1low細胞とCD14+CX3CR1high細胞のMOMCへの分化効率を比較検討した結果を示す図である。
CD14+LNGFRlow細胞とCD14+LNGFRhigh細胞のMOMCへの分化効率を比較検討した結果を示す図である。

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